JP3667086B2 - インクジェット記録装置およびインクジェット記録方法 - Google Patents

インクジェット記録装置およびインクジェット記録方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、被記録媒体にインクおよび処理液を吐出して画像を形成するインクジェット記録装置およびインクジェット記録方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
各種カラー記録方式としては、例えば、熱エネルギーによりインクリボンのインクを転写する熱転写方式、あるいは飛翔させた記録液滴を紙等の被記録媒体に付着させて記録を行うインクジェット記録方式などが知られている。これらの中でも、インクジェット記録方式は、低騒音、低ランニングコスト、装置の小型化が容易、カラー化が容易、等の理由から、プリンタや複写機などに広く利用されている。
【0003】
インクジェット記録装置においては、近年、より高品位は画像を得るために、記録液滴を小液滴としての高解像度化が図られている。しかしながら、このような高解像度化にともない、処理すべき記録データサイズが膨大な量になり、ホストコンピュータでのデータ処理時間、およびホストコンピュータから記録装置に転送するデータ転送時間が長くなり、システム全体のスループットを大幅に低下させてしまうという問題があった。
【0004】
この問題を解決するために、従来より、マトリクスパターンを使って記録する方法が考えられている。これは、ホストコンピュータにて比較的低解像度、高値量子化で処理したデータをプリンタ本体に転送し、プリンタ本体にて、受信したデータを所定のマトリクスに展開して記録を行う方法である。例えば、ホストコンピュータにて、300×300dpiの解像度で5値に量子化(3bit)し、プリンタ本体にて、そのデータを600×600dpi(2×2のマトリクス)の2値に展開して記録を行うことにより、ホストコンピュータでの処理は、300dpiとなるために負担が軽減される。また、データ転送量が300×300dpi、3bitであるため、600×600dpi、2値のデータに比べて約75%のデータ量で済むというメリットがある。このようなマトリクスパターンを使う方法は、写真など、シャープさよりも階調性が重視される画像において有効である。
【0005】
ところで、インクジェット記録方法において、いわゆる普通紙と呼ばれる被記録材上に画像を記録する場合には、画像の耐水性が不十分であったり、またカラー画像の記録に際し、フェザリングの生じない高濃度の画像と色間のにじみの生じない画像とを両立させることができず、良好な画像堅牢性や良好な品位のカラー画像が得られなかった。
【0006】
近年、画像の耐水性を向上させる方法として、インク中に含まれる色材に耐水性を持たせたインクも実用化されてきている。しかしながら、そのインクは耐水性がまだまだ不十分であるとともに、原理的に乾燥後、水に溶解しにくいインクであるために、記録ヘッドのノズル詰まり、つまりインク吐出口の詰まりが生じやすく、これを防止しようとした場合には、装置構成が複雑になってしまうという欠点があった。
【0007】
また、従来より、被記録物の堅牢性を向上させる技術が多数提案されている。例えば、特開昭58−128862号公報には、被記録物上の記録すべき画像位置をあらかじめ識別し、記録インクと処理インクとを重ねて記録するインクジェット記録方法が開示されている。その方法の場合には、記録インクに先立って処理インクによって画像を描いたり、先に描かれた記録インクの画像上に処理インクを重ねたり、あるいは、先に描かれた処理インクの画像上に記録インクを重ねてから、さらに処理インクを重ねたりする。また、特開平8−52867号公報には、処理液を各画素に対して所定の割合で吐出する方法が開示されている。さらに、特開平9−226154号公報には、特にプリントする画像のエッジ部に着目し、そのエッジ部以外の画像には処理液を所定の割合で吐出するのに対し、画像のエッジ部には必ず処理液を吐出する構成が開示されており、処理液を必要以上に消費することを防ぎつつ耐水性をより確実なものとするようになっている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開平9−226154号公報に開示されているように、効果的な処理液付与を行うために、プリントする画像のエッジ部を抽出し、エッジ部とエッジ以外の画像に対して、それぞれ所定の割合で処理液を付与するには、電気ハード的手段として非常に複雑で大規模な回路構成を必要とし、コストの増大につながる。また、このような処理をソフト的に行うには、高解像度の記録装置において非現実的な膨大な時間を要するといった問題があった。
【0009】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、n値化されたインクの量子化データから処理液用の量子化データを生成して、それらのデータに基づいていわゆるマトリクスパターン方式による記録を行うことにより、電気ハード的コストを抑えると共に、ソフト的処理時間の増大を防ぎ、また、十分な量の処理液を付与することで十分な耐水性などを得ると共に、必要以上の処理液の付与を避けて、処理液使用量の増大によるランニングコストの増加を防ぐことのできるインクジェット記録装置およびインクジェット記録方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明のインクジェット記録装置は、複数種のインクを吐出可能なインク用ヘッド部と、前記インクの色剤を不溶化または凝集させる処理液を吐出可能な処理液用ヘッド部を用いて、被記録媒体に画像を記録するインクジェット記録装置において、前記複数種のインクのそれぞれに対応するn値(n≧3)の各インク用の量子化データに基づいて、各インク用の量子化データのそれぞれに対応する複数の処理液用の量子化データを生成する処理液用データ生成手段と、前記複数の処理液用の量子化データの内の少なくとも1つおよび前記各インク用の量子化データを、マトリクスパターンを用いて、処理液用のビットマップデータおよび各インク用のビットマップデータに展開するパターン展開手段と前記各インク用のビットマップデータに基づいて、前記インク用ヘッド部による前記複数種のインクの吐出を制御する第1制御手段と、前記処理液用のビットマップデータに基づいて、前記処理液用ヘッド部による前記処理液の吐出を制御する第2の制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0011】
本発明のインクジェット記録方法は、複数種のインクを吐出可能なインク用ヘッド部と、前記インクの色剤を不溶化または凝集させる処理液を吐出可能な処理液用ヘッド部を用いて、被記録媒体に画像を記録するインクジェット記録方法において、前記複数種のインクのそれぞれに対応するn値(n≧3)の各インク用の量子化データに基づいて、各インク用の量子化データのそれぞれに対応する複数の処理液用の量子化データを生成し、前記複数の処理液用の量子化データの内の少なくとも1つおよび前記各インク用の量子化データを、マトリクスパターンを用いて、処理液用のビットマップデータおよび各インク用のビットマップデータに展開し前記各インク用のビットマップデータに基づいて、前記インク用ヘッド部による前記複数種のインクの吐出を制御し、前記処理液用のビットマップデータに基づいて、前記処理液用ヘッド部による前記処理液の吐出を制御することを特徴とする。
【0012】
なお、本明細書において、処理液とはインクと接触することでインクに作用する液体であって、例えばインク中の色剤を不溶化、または凝集させる作用を有する成分を含有する液体である。このような液体としては、記録された画像の耐水性を向上させたり、濃度を増加させたり、にじみを防いだり、フェザリング現象を低減する等のプリント性を向上させる効果を奏する液体とすることができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
(基本構成)
まず、本発明を適用可能なインクジェット記録装置の基本構成の一例を図10から図12により説明する。
【0015】
図10において、記録装置100の給紙位置に挿入された記録媒体106は、送りローラ109によって、記録ヘッドユニット103の記録可能領域に向って副走査方向へ搬送される。記録可能領域における記録媒体の下部には、プラテン108が設けられている。キャリッジ101は、2つのガイド軸104,105によって定められた方向に移動可能な構成となっており、記録領域を主走査方向に往復走査する。キャリッジ101には、複数の色インクを吐出するインク用ヘッド部、および処理液を吐出する処理液用ヘッド部を備えた記録ヘッドと、それぞれの記録ヘッドにインクや処理液を供給するインクタンクとを含む記録ヘッドユニット103が搭載されている。この例のインクジェット記録装置に設けられる複数の色のインクは、ブラック(Bk)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の4色である。
【0016】
キャリッジ101が移動可能な領域の左端下部には、回復系ユニット110が備えられており、非記録時に、記録ヘッドの吐出口部をキャップしたりする。キャリッジ101の移動可能な領域左端を記録ヘッドの「ホームポジション」と呼ぶ。107はスイッチ部と表示素子部であり、スイッチ部は記録装置の電源のオン/オフや各種記録モードの設定時等に使用され、スイッチ部は記録装置の状態を表示する役割をする。
【0017】
図11は、記録ヘッドユニット103の斜視図である。この例は、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローの各色インクと、処理液のタンクが全て独立に交換可能な構成となっている。キャリッジ101にはBk、C、M、Yと処理液を吐出する記録ヘッド102と、Bk用タンク20K、C用タンク20C、M用タンク20M、Y用タンク20Y、および処理液のタンク21が搭載される。各タンク20K、20C、20M、20Y、21は記録ヘッド102との接続部を介して記録ヘッド102と接続し、記録ヘッド102の吐出口にインクや処理液を供給する。
【0018】
記録ヘッド102の他の構成としては、例えば、後述する図7(a)のように、処理液SのタンクとBkのタンクを一体構成、かつC、M、Yのタンクを一体構造として、処理液Sを吐出する処理液用ヘッド部を2つのBk吐出用ヘッド部によるサンドイッチ構造にしてもよく、また、図7(b)のようにCとMとYのBkのタンクを一体構造として、それらのヘッドを縦並びのヘッド構成としてもよい。
【0019】
図12は、本発明を適用可能なインクジェット記録装置における制御系のブロック図である。ホストコンピュータから、記録すべき文字や画像のデータ(以下「画像データ」という)が記録装置100の受信バッファ401に入力される。また、正しくデータが転送されているかを確認するデータや、記録装置100の動作状態を知らせるデータが、記録装置100からホストコンピュータに返される。受信バッファ401のデータは、CPU402の管理下において、メモリ部403に転送されて、そのRAM(ランダムアクセスメモリ)に一次的に記憶される。メカコントロール部404は、CPU402からの指令により、キャリッジモータやラインフィードモータ等のメカ部405を駆動する。センサ/SWコントロール部406は、各種センサやSW(スイッチ)からなるセンサ/SW部407からの信号をCPU402に送る。表示素子コントロール部408は、CPU402からの指令により、表示パネル群のLEDや液晶表示素子等からなる表示素子部409を制御する。記録ヘッドコントロール部410は、CPU402からの指令により記録ヘッド102を制御し、また記録ヘッド102の状態を示す温度情報等を検知してCPU402に伝える。
【0020】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態の要部を説明するためのブロック図である。
【0021】
図1において1000は、入力データを量子化して各色インクの量子化データを生成する量子化手段、1001は、各インク用の量子化データから処理液の量子化データを生成する処理液用データ生成手段である。1002は、それら各色インク用および処理液用の量子化データを受信する受信バッファ、1004は、マトリクスパターンを記憶しておくパターン記憶手段である。1003は、パターン記憶手段1004に記憶されているマトリクスパターンを参照して、入力された量子化データをビットマップに展開するデータ割り付け手段としてのパターン展開手段である。1005は、その展開されたデータにより、記録ヘッド102を駆動するヘッド制御手段である。ヘッド制御手段は、後述する記録ヘッドにおけるインク吐出用ヘッド部および処理液用ヘッド部を制御する第1および第2制御手段として機能する。通常、量子化手段1000は、ホストコンピュータにある。
【0022】
以下、本例では、量子化手段1000において、300×300dpiの解像度で5値化された各色インクの量子化データを生成し、記録装置100の内部において、その量子化データを2×2ドットのマトリクスを用いて600×600dpiの解像度のデータに展開して記録する場合について説明する。
【0023】
図2は、5値化の方法を概念的に示した説明図であり、各画素はその入力レベルに応じて、ある決まったスレッショルドによってLEVEL0〜LEVEL4に量子化される。図3は、各出力レベルに対応するマトリクスパターンである。2×2のマトリクスを用いるため、マトリクス内の記録画素数によって5値の表現が可能である。
【0024】
図7(a)は、本発明の第1の実施形態の記録装置における記録ヘッドの構成図である。
【0025】
図7(a)の記録ヘッドは、同図中左右の2つのヘッドがキャリッジ101の走査方向に並ぶ構成とされており、左側の一方のヘッドには、2つのブラックインク(Bk1、Bk2)吐出用のノズル群の間に、処理液(S)吐出用のノズル群が配置され、右側の他方のヘッドには、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の各色インクを吐出するノズル群が配置されている。ここで、Y、M、C、Bkインク吐出用のノズル群は、それらのインクを吐出可能な吐出口の列を成して、インク吐出用ヘッド部を構成している。同様に、処理液吐出用のノズル群は、処理液を吐出可能な吐出口の列を成して、処理液吐出用ヘッド部を構成している。記録媒体106上において、処理液ドットをブラックインクドットによってサンドイッチすることにより、濃度が高く高品位なBk(ブラック)テキストやBk(ブラック)グラフィックの記録が可能となる。
【0026】
図4は、図1中の手段1001による処理液用データ生成処理を説明するためのフローチャートである。
【0027】
まず、量子化手段1000により、処理すべき入力画像の1画素を各色インク(Y、M、C、Bk)用の量子化データ(DY、DM、DC、DK)に量子化する(S1001)。量子化レベルは前述したようなLEVEL0〜LEVEL4の5値である。図7(a)の本例のヘッド構成の場合、2つのBkインク(Bk1、Bk2)吐出用のノズル群が構成されているため、Bkインクに関しては、図3中の各LEVELにおいて、記録媒体106上の同一位置にBk1とBk2の2ドットが形成されることになる。ここでは、例えば、DY=LEVEL0、DM=LEVEL3、DC=LEVEL2、DK=LEVEL0である場合を想定する。
【0028】
次に、各色インク用の量子化データ(DY、DM、DC、DK)と、それに対応する各色の処理液データ(DSY、DSM、DSC、DSK)との対応テーブル(図5(a)、(b)、(c)、(d))を参照して、DSY、DSM、DSC、DSKを決定する(S1002)。そして、DY、DM、DC、DKの内の最大値のものに対応する処理液データ(DSY、DSM、DSC、DSK)をDSとする(S1003)。ここでの想定例においては、DS=DSM=LEVEL2となる。また、DSY、DSM、DSC、DSKを直接比較して、それらの最大値をDSとしてもよい。
【0029】
図6は、各レベルのDSY、DSM、DSC、DSKによって、処理液のドットがどのように形成されるかの説明図であり、同図中の右側は、DSY、DSM、またはDSCの内のいずれかによってDSが決定された場合であり、同図中の左側は、DSKによってDSが決定された場合である。
【0030】
図6中の左側のようなDS=DSKの場合、Bkインクのブラックドットに関しては、全LEVELにおいて、インクドット数(Bk1+Bk2=2ドット)に対して2:1の割合で処理液ドットが形成される。また、このマトリクスの中にカラーデータが存在して、Y、M、Cインクのカラードットが形成される場合、それらのドットに対しては、処理液が多少多めに打ち込まれることにはなるものの、耐水性の観点における実画像上の問題はない。
【0031】
一方、図6中の右側のようなDS=DSYorDSMorDSCの場合、Y、M、Cインクのカラードットに関しては、LEVEL1およびLEVEL2では、インクドット数に対して1:1の割合で同一画素に処理液ドットが形成される。また、LEVEL3では、カラーの3ドットに対して、処理液ドットが2ドット形成されて、それらが3:2の割合で形成される。さらに、LEVEL4では、カラーの4ドットに対して、処理液の2ドットが形成されて、それらの割合が4:2となる。
【0032】
また、このようなDS=DSYorDSMorDSCの場合、すなわちカラードットが記録される場合には、それが単色で記録されるときと、2色同時に記録されるときとが存在する。単色の場合には上述した割合で処理液が付与され、2次色の場合には、その半分の割合で処理液が付与されることになる。一般に、カラーインクの染料濃度は、Bkインクよりも低いため、処理液の付与量が少なくても十分な耐水性が得られる。例えば、DYとDCがともにLEVEL4であった場合、カラーインクドット数と処理液のドット数の比は8:2となるが、それでも実使用上問題なく耐水性が得られる。
【0033】
さらに、DYとDMとDCが全てLEVEL4になることは極めてまれであるため、実質上問題はない。もちろん、染料濃度や染料の種類に応じて、DY、DM、DC、DKに対応する各色の処理液テーブルを変更し、例えば、DY、DM、DCがLEVEL4の場合に、DSY、DSM、DSCをLEVEL3とすることも可能である。
【0034】
このようなS1001〜S1004処理を全画素について実行し、処理液データ生成処理を終了する(S1005、S1006)。
【0035】
このように生成された処理液データに基づき、画像記録に際して処理液を付与することにより、どのような記録デューティーに対しても必要十分な処理液を付与することが可能となる。この結果、処理液の打ち込みすぎによるコックリングや、インク溢れ(ビーディング)による不均一なムラや定着性の悪化を防止することができ、また低デューティー領域においても十分な処理液ドットを付与して、十分な耐水性を得ることができる。
【0036】
(第2の実施形態)
図7(b)は、本発明の第2の実施形態に適応される記録ヘッドの構成図である。
【0037】
本例の記録ヘッドは、図7(b)中の左右のノズル列がキャリッジ101の走査方向に並ぶように配置された構成となっている。同図中右側のノズル列は、Y、M、C、Bkの各色インクを吐出するノズルの列であり、同図中左側のノズル列は、それら各色インクのノズルに対応するように処理液Sを吐出するノズルの列である。本例の記録ヘッドは、その1つから複数色のインクを吐出可能な複数色一体型記録ヘッドである。
【0038】
このように構成されたいわゆる縦並びの記録ヘッドは、図7(a)のようないわゆる横並びタイプの記録ヘッドを用いる場合よりも装置全体のコンパクト化が可能となる。また、記録ヘッドの往走査時と復走査時の双方において、いわゆる双方向記録を行ってもその往走査時と復走査時における各色インクの記録順序が変わらないため、走査周期毎に色ムラが発生するという問題もないなどのメリットがある。
【0039】
このような構成の記録ヘッドを用いる場合には、各色インク毎に1対1に対応する処理液ノズル用の吐出データを独立して生成する必要がある。
【0040】
本実施形態では前述した第1の実施形態と同様に、図1中の量子化手段1000において300×300dpiの解像度で5値化された量子化データを生成し、記録装置100の内部において、その量子化データを2×2ドットのマトリクスを用いて600×600dpiの解像度のデータに展開して記録する場合について説明する。
【0041】
図8は、本発明の第2の実施形態における処理液用データ生成処理を説明するためのフローチャートである。
【0042】
まず、量子化手段1000により、処理すべき入力画像の1画素を各色インク(Y、M、C、Bk)用の量子化データ(DY、DM、DC、DK)に量子化する(S2001)。量子化レベルは、前述したようなLEVEL0〜LEVEL4の5値である。ここでは、例えば、DY=LEVEL0、DM=LEVEL3、DC=LEVEL2、DK=LEVEL0である場合を想定する。次に、各色インクの量子化データ(DY、DM、DC、DK)に基づいて、各色インクに対応する処理液用量子化データ(DSY、DSM、DSC、DSK)を図5(a)、(b)、(c)、(d)に示したテーブルを参照して生成する(S2002)。ここでの想定例においては、DSY=LEVEL0、DSM=LEVEL2、DSC=LEVEL2、DSK=LEVEL0となる。
【0043】
量子化された各色インクの量子化データDY、DM、DC、DKおよび処理液用の量子化データDSY、DSM、DSC、DSKは図3に示したマトリクスパターンに展開され、対応する記録ヘッドのノズル群により、カラードットおよび処理液ドットとして形成される。本例の図7(b)の記録ヘッドを用いた場合には、単一色のデータ毎に対して処理液データが生成されるため、2次色の記録領域には、多少多めの処理液が付与される可能性がある。しかし、図7(b)のように、各色インクのノズルが縦並びに配置されているため、実際の2次色の記録には、1スキャン以上のオフセットが生じ、つまり記録ヘッドの1走査以上の時間的なずれが生じ、インク溢れなどの不都合は生じない。また、処理液の付与量を各色インクに対応して最適化することにより、その処理液の打ち込みすぎによる不具合の回避が可能である。
【0044】
このように、本発明は、各色インクのノズル群が縦並びに構成された図7(b)のような記録ヘッドに対しても適応可能であり、双方向記録を行っても濃度ムラのない高品位な画像から形成可能な上、どのような記録デューティーにおいても十分な耐水性を得ることができる。
【0045】
(第3の実施形態)
図7(c)は、本発明の第3の実施形態に適応される記録ヘッドの構成図である。
【0046】
本例の場合は、キャリッジ101の走査方向に並ぶ図7(c)中左右の2つの記録ヘッドがそれぞれ2つのチップによって構成されている。同図中左側の記録ヘッドは、処理液Sを吐出するノズル群が形成されたチップと、Bkインクを吐出するノズル群が形成されたチップとを組み合せて構成される。一方、同図中右側の記録ヘッドは、C、M、Yの濃インクを吐出するノズル群が形成されたチップと、C、M、Yの淡インクを吐出するノズル群が形成されたチップとを組み合せて構成される。これら2つの記録ヘッドを用いて記録が行われる。濃インクと淡インクとを組み合せて記録をすることにより、粒状感のない写真調の画像が記録できることは公知である。また、ノズル群をカラー各色のノズル数より多くすることにより、ブラックテキストの高速記録が可能な構成となっている。カラー画像を記録する際には、Bkインク吐出用のBkノズルとして、各カラーインクと同等なノズル数を使用する。本例では、その際のBkノズルとして、Yノズルと同じ領域のもの、つまり図7(c)中のYノズルの左方側のものを使用するものとする。
【0047】
図9は、本発明の第3の実施形態における処理液用データ生成処理を説明するためのフローチャートである。
【0048】
まず、量子化手段1000により、入力画像の1画素を各色(Y、M、C、Bk)の濃インク用および淡インク用の量子化データ(DNY、DNM、DNC、DNK、およびDTY、DTM、DTC)に量子化する(S3001)。量子化レベルは、前述したようなLEVEL0〜LEVEL4の5値である。この処理を、Bkノズルのみを用いて記録可能なラスター分行う(S3001、S3002)。ここでは、Bkノズルが600dpiで300ノズルであるため、300dpiの入力画像に換算して150ラスターとなる。この150ラスター分の各色の量子化データ(カラー量子化データ)中に、DNK(ブラックインク用データ)以外のデータであって、かつLEVEL0ではないデータが存在するか否かを判定する(S3003)。
【0049】
(1)150ラスター中に、DNK以外のLEVEL0ではないデータが存在する場合
この場合には、DNK(ブラックインク用データ)とDNY(濃イエローインク用データ)とDTY(淡イエローインク用データ)の量子化データの内、最も大きいデータをDmax1とする(S3004)。次に、DNM(濃マゼンタインク用データ)とDTM(淡マゼンタインク用データ)の量子化データの内、大きい方をDmax2とする(S3005)。さらに、DNC(濃シアンインク用データ)とDTC(淡シアンインク用データ)の量子化データの内、大きい方をDMAX3とする(S3006)。図5(e)のDmax−DSテーブルを参照して、Dmax1、Dmax2、Dmax3に対応する処理液データDS1、DS2、DS3を生成する(S3007、S3009)。
【0050】
いま、1画素目のデータとして、例えば、DNY=LEVEL0、DNM=LEVEL3、DNC=LEVEL2、DNK=LEVEL0、DTY=LEVEL1、DTM=LEVEL2、DTC=LEVEL3を想定する。この想定例においては、Dmax1=LEVEL1、Dmax2=LEVEL2、Dmax3=LEVEL3、DS1=LEVEL1、DS2=LEVEL2、DS3=LEVEL2となる。
【0051】
(2)150ラスター中に、DNK以外のLEVEL0ではないデータは存在しない場合
図5(d)のテーブルを参照して、DNKの値に応じた処理液データDSKを生成する(S3008)。
【0052】
以上のようにして生成された各色インクの量子化データDNY、DNM、DNC、DNK、DTY、DTM、DTCおよび処理液用の量子化データDS1、DS2、DS3或はDSKは、図3に示したマトリクスパターンに展開され、そのデータに基づいて、対応するノズル群から各色インクおよび処理液が吐出される。
【0053】
このように、本発明は、各色インクのノズル群が縦並びに構成された複数の記録ヘッド、つまり図7(c)のような構成の記録ヘッドに対しても適応可能であり、高品位な写真調画像が記録可能となり、またブラックテキストやグラフィック画像が高速で十分な耐水性を持った画像として記録可能となる。
【0054】
(その他)
なお、本発明は、特にインクジェット記録方式の中でも、インク吐出を行わせるために利用されるエネルギとして熱エネルギを発生する手段(例えば電気熱変換体やレーザ光等)を備え、前記熱エネルギによりインクの状態変化を生起させる方式の記録ヘッド、記録装置において優れた効果をもたらすものである。かかる方式によれば記録の高密度化,高精細化が達成できるからである。
【0055】
その代表的な構成や原理については、例えば、米国特許第4723129号明細書,同第4740796号明細書に開示されている基本的な原理を用いて行うものが好ましい。この方式は所謂オンデマンド型,コンティニュアス型のいずれにも適用可能であるが、特に、オンデマンド型の場合には、液体(インク)が保持されているシートや液路に対応して配置されている電気熱変換体に、記録情報に対応していて核沸騰を越える急速な温度上昇を与える少なくとも1つの駆動信号を印加することによって、電気熱変換体に熱エネルギを発生せしめ、記録ヘッドの熱作用面に膜沸騰を生じさせて、結果的にこの駆動信号に一対一で対応した液体(インク)内の気泡を形成できるので有効である。この気泡の成長,収縮により吐出用開口を介して液体(インク)を吐出させて、少なくとも1つの滴を形成する。この駆動信号をパルス形状とすると、即時適切に気泡の成長収縮が行われるので、特に応答性に優れた液体(インク)の吐出が達成でき、より好ましい。このパルス形状の駆動信号としては、米国特許第4463359号明細書,同第4345262号明細書に記載されているようなものが適している。なお、上記熱作用面の温度上昇率に関する発明の米国特許第4313124号明細書に記載されている条件を採用すると、さらに優れた記録を行うことができる。
【0056】
記録ヘッドの構成としては、上述の各明細書に開示されているような吐出口,液路,電気熱変換体の組合せ構成(直線状液流路または直角液流路)の他に熱作用部が屈曲する領域に配置されている構成を開示する米国特許第4558333号明細書,米国特許第4459600号明細書を用いた構成も本発明に含まれるものである。加えて、複数の電気熱変換体に対して、共通するスリットを電気熱変換体の吐出部とする構成を開示する特開昭59−123670号公報や熱エネルギの圧力波を吸収する開孔を吐出部に対応させる構成を開示する特開昭59−138461号公報に基いた構成としても本発明の効果は有効である。すなわち、記録ヘッドの形態がどのようなものであっても、本発明によれば記録を確実に効率よく行うことができるようになるからである。
【0057】
さらに、記録装置が記録できる記録媒体の最大幅に対応した長さを有するフルラインタイプの記録ヘッドに対しても本発明は有効に適用できる。そのような記録ヘッドとしては、複数記録ヘッドの組合せによってその長さを満たす構成や、一体的に形成された1個の記録ヘッドとしての構成のいずれでもよい。
【0058】
加えて、上例のようなシリアルタイプのものでも、装置本体に固定された記録ヘッド、あるいは装置本体に装着されることで装置本体との電気的な接続や装置本体からのインクの供給が可能になる交換自在のチップタイプの記録ヘッド、あるいは記録ヘッド自体に一体的にインクタンクが設けられたカートリッジタイプの記録ヘッドを用いた場合にも本発明は有効である。
【0059】
また、本発明の記録装置の構成として、記録ヘッドの吐出回復手段、予備的な補助手段等を付加することは本発明の効果を一層安定できるので、好ましいものである。これらを具体的に挙げれば、記録ヘッドに対してのキャッピング手段、クリーニング手段、加圧或は吸引手段、電気熱変換体或はこれとは別の加熱素子或はこれらの組み合わせを用いて加熱を行う予備加熱手段、記録とは別の吐出を行なう予備吐出手段を挙げることができる。
【0060】
また、搭載される記録ヘッドの種類ないし個数についても、例えば単色のインクに対応して1個のみが設けられたものの他、記録色や濃度を異にする複数のインクに対応して複数個数設けられるものであってもよい。すなわち、例えば記録装置の記録モードとしては黒色等の主流色のみの記録モードだけではなく、記録ヘッドを一体的に構成するか複数個の組み合わせによるかいずれでもよいが、異なる色の複色カラー、または混色によるフルカラーの各記録モードの少なくとも一つを備えた装置にも本発明は極めて有効である。
【0061】
さらに加えて、以上説明した本発明実施例においては、インクを液体として説明しているが、室温やそれ以下で固化するインクであって、室温で軟化もしくは液化するものを用いてもよく、あるいはインクジェット方式ではインク自体を30℃以上70℃以下の範囲内で温度調整を行ってインクの粘性を安定吐出範囲にあるように温度制御するものが一般的であるから、使用記録信号付与時にインクが液状をなすものを用いてもよい。加えて、熱エネルギによる昇温を、インクの固形状態から液体状態への状態変化のエネルギとして使用せしめることで積極的に防止するため、またはインクの蒸発を防止するため、放置状態で固化し加熱によって液化するインクを用いてもよい。いずれにしても熱エネルギの記録信号に応じた付与によってインクが液化し、液状インクが吐出されるものや、記録媒体に到達する時点ではすでに固化し始めるもの等のような、熱エネルギの付与によって初めて液化する性質のインクを使用する場合も本発明は適用可能である。このような場合のインクは、特開昭54−56847号公報あるいは特開昭60−71260号公報に記載されるような、多孔質シート凹部または貫通孔に液状又は固形物として保持された状態で、電気熱変換体に対して対向するような形態としてもよい。本発明においては、上述した各インクに対して最も有効なものは、上述した膜沸騰方式を実行するものである。
【0062】
さらに加えて、本発明インクジェット記録装置の形態としては、コンピュータ等の情報処理機器の画像出力端末として用いられるものの他、リーダ等と組合せた複写装置、さらには送受信機能を有するファクシミリ装置の形態を採るもの等であってもよい。
【0063】
インク染料を不溶化する処理液は、一例として以下のようにして得ることができる。
【0064】
すなわち、下記の成分を混合溶解した後、さらにポアサイズが0.22μmのメンブレンフィルタ(商品名:フロロポアフィルタ、住友電気工業株式会社製)にて加圧濾過した後、NaOHでpHを4.8に調整し、処理液A1を得ることができる。
【0065】
Figure 0003667086
また、上記処理液と混合し不溶化するインクの好適な例として以下のものを挙げることができる。
【0066】
すなわち、下記の成分を混合し、さらにポアサイズが0.22μmのメンブレンフィルタ(商品名:フロロポアフィルタ、住友電気工業株式会社製)にて加圧濾過してイエロー,マゼンタ,シアン,ブラックのインクY1,M1,C1,K1を得ることができる。
【0067】
Y1
C.I.ダイレクトイエロー142 2部
チオジグリコール 10部
商品名;アセチレノールEH 0.05部
(川研ファインケミカル株式会社製)
水 残部
M1
染料をC.I.アシッドレッド289;2.5部に代えた以外はY1と同じ組成
C1
染料をC.I.アシッドブルー9;2.5部に代えた以外はY1と同じ組成
K1
染料をC.I.フードブラック2;3部に代えた以外はY1と同じ組成なお、本発明を実施するにあたって、使用するインクは特に染料インクに限るものではなく、顔料を分散させた顔料インクを用いることもできるし、使用する処理液はその顔料を凝集させるものを用いることができる。前記した無色液体A1と混合して凝集を引き起こす顔料インクの一例として以下のものを挙げることができる。すなわち、下記に述べるようにして、それぞれ顔料とアニオン性化合物とを含むイエロー,マゼンタ,シアン,ブラックの各色インク、Y2,M2,C2およびK2を得ることができる。
【0068】
ブラックインクK2
アニオン系高分子P−1(スチレン−メタクリル酸−エチルアクリレート、酸価400、重量平均分子量6,000、固形分20%の水溶液、中和剤:水酸化カリウム)を分散剤として用い、以下に示す材料をバッチ式縦型サンドミル(アイメックス株式会社製)に仕込み、1mm径のガラスビーズをメディアとして充填し、水冷しつつ3時間分散処理を行った。分散後の粘度は9cps、pHは10.0であった。この分散液を遠心分離機にかけ粗大粒子を除去し、重量平均粒径100nmのカーボンブラック分散体を作製した。
【0069】
(カーボンブラック分散体の組成)
・P−1水溶液(固形分20%) 40部
・カーボンブラック 24部
(商品名;Mogul L、キャブラック株式会社製)
・グリセリン 15部
・エチレングリコールモノブチルエーテル 0.5部
・イソプロピルアルコール 3部
・水 135部
次に、上記で得られた分散体を充分に拡散して顔料が含有されたインクジェット用のブラックインクK2を得た。最終調製物の固形分は、約10%であった。
【0070】
イエローインクY2
アニオン系高分子P−2(スチレン−アクリル酸−メチルメタアクリレート、酸価280、重量平均分子量11,000、固形分20%の水溶液、中和剤:ジエタノールアミン)を分散剤として用い、以下に示す材料を用いて、ブラックインクK2の作製の場合と同様に分散処理を行い、重量平均粒径103nmのイエロー色分散体を作製した。
【0071】
(イエロー分散体の組成)
・P−2水溶液(固形分20%) 35部
・C.I.ピグメントイエロー180 24部
(商品名;ノバパームイエロー PH−G、
Hoechst Aktiengesellschaft製)
・トリエチレングリコール 10部
・ジエチレングリコール 10部
・エチレングリコールモノブチルエーテル 1.0部
・イソプロピルアルコール 0.5部
・水 135部
上記で得られたイエロー分散体を充分に拡散して、顔料が含有されたインクジェット用のイエローインクY2を得た。最終調製物の固形分は、約10%であった。
【0072】
シアンインクC2
ブラックインクK2の作製の際に使用したアニオン系高分子P−1を分散剤として用い、以下に示す材料を用いて、前記したカーボンブラック分散体の場合と同様の分散処理を行い、重量平均粒径120nmのシアン色分散体を作製した。
【0073】
(シアン色分散体の組成)
・P−1水溶液(固形分20%) 30部
・C.I.ビグメントブルー15:3 24部
(商品名;ファストゲンブル−FGF、
大日本インキ化学工業株式会社製)
・グリセリン 15部
・ジエチレングリコールモノブチルエーテル 0.5部
・イソプロピルアルコール 3部
・水 135部
上記で得られたシアン色分散体を充分に攪拌して、顔料が含有されたインクジェット用のシアンインクC2を得た。最終調製物の固形分は、約9.6%であった。
【0074】
マゼンタインクM2
ブラックインクK2の作製の際に使用したアニオン系高分子P−1を分散剤として用い、以下に示す材料を用いて、前記したカーボンブラック分散体の場合と同様の分散処理を行い、重量平均粒径115nmのマゼンタ色分散体を作製した。
【0075】
(マゼンタ色分散体の組成)
・P−1水溶液(固形分20%) 20部
・C.I.ピグメントレッド122 24部
(大日本インキ化学工業株式会社製)
・グリセリン 15部
・イソプロピルアルコール 3部
・水 135部
上記で得られたマゼンタ色分散体を充分に拡散して、顔料が含有されたインクジェット用のマゼンタインクM2を得た。最終調製物の固形分は、約9.2%であった。
【0076】
以上示したそれぞれ処理液(液体組成物)とインクとの混合において、本発明では、上述した処理液とインクが被プリント材上あるいは被プリント材に浸透した位置で混合する結果、反応の第1段階として処理液中に含まれているカチオン性物質の内、低分子量の成分またはカチオン性オリゴマーとインクに使用しているアニオン性基を有する水溶性染料または顔料インクに使用しているアニオン性化合物とがイオン的相互作用により会合を起こし、瞬間的に溶液相から分離を起こす。この結果顔料インクにおいては分散破壊が起こり、顔料の凝集体ができる。
【0077】
次に、反応の第2段階として、上述した染料と低分子カチオン性物質またはカチオン性オリゴマーとの会合体または顔料の凝集体が処理液中に含まれる高分子成分により吸着されるために、会合で生じた染料の凝集体または顔料の凝集体のサイズがさらに大きくなり、被プリント材の繊維間の隙間に入り込みにくくなり、その結果として固液分離した液体部分のみが記録紙中にしみこむことにより、プリント品位と定着性との両立が達成される。同時に上述したようなメカニズムにより生成したカチオン物質の低分子成分またはカチオン性オリゴマーとアニオン性染料とカチオン性物質とで形成される凝集体または顔料の凝集体は粘性が大きくなり、液媒体の動きとともに移動することがないので、フルカラーの画像形成時のように隣接したインクドットが異色のインクで形成されていたとしても互いに混じり合うようなことはなく、ブリーデイングも起こらない。また、上記凝集体は本質的に水不溶性であり形成された画像の耐水性は完全なものとなる。また、ポリマーの遮蔽効果により形成された画像の耐光堅牢性も向上するという効果も有する。
【0078】
本明細書において使用される不溶化または凝集として、その一例は前記第1段階のみの現象であり、他の例は第1段階と第2段階の両方を含んだ現象である。
【0079】
また、本発明の実施にあたっては、従来技術のように分子量の大きいカチオン性高分子物質や多価の金属塩を使用する必要がないか、あるいは使用する必要があっても本発明の効果をさらに向上させるために補助的に使用するだけで良いので、その使用量を最小限に抑えることができる。その結果として、従来のカチオン性高分子物質や多価金属塩を使用して耐水化効果を得ようとした場合の問題点であった染料の発色性の低下がなくなるということを本発明の別の効果として挙げることができる。
【0080】
なお、本発明を実施するにあたって使用する被プリント材については特に制限されるものではなく、従来から使用されているコピー用紙、ボンド紙等のいわゆる普通紙を好適に用いることができる。もちろんインクジェットプリント用に特別に作製したコート紙やOHP用透明フィルムも好適に使用でき、また、一般の上質紙や光沢紙も好適に使用可能である。
【0081】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、n値化されたインク用データから処理液用データを生成して、それらのデータに基づいて、いわゆるマトリクスパターン方式による記録を行うことにより、電気ハード的コストを抑えると共に、ソフト的処理時間の増大を防ぐことができ、また、十分な量の処理液を付与することによる十分な耐水性および画質向上が可能となり、しかも必要以上の処理液の付与を避けて、処理液使用量の増大によるランニングコストの増加やコックリングやビーディングによる画質劣化を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態を説明するための要部のブロック構成図である。
【図2】本発明の第1の実施形態における量子化の説明図である。
【図3】本発明の第1の実施形態におけるマトリクスパターンの説明図である。
【図4】本発明の第1の実施形態におけるデータ処理を説明するためのフローチャートである。
【図5】本発明の実施形態におけるデータの変換テーブルの説明図である。
【図6】本発明の第1の実施形態におけるインクドットと処理液ドットの配置図である。
【図7】(a)、(b)、(c)は、本発明の実施形態における記録ヘッドの異なる構成図である。
【図8】本発明の第2の実施形態におけるデータ処理を説明するためのフローチャートである。
【図9】本発明の第3の実施形態におけるデータ処理を説明するためのフローチャートである。
【図10】本発明を適用可能なインクジェット記録装置の構成例を示す概略斜視図である。
【図11】図10におけるインクジェット記録ヘッドの構成例を示す概略斜視図である。
【図12】図10のインクジェット記録装置における制御系のブロック構成図である。
【符号の説明】
1000 量子化手段
1001 処理液用データ生成手段
1002 受信バッファ
1003 パターン展開手段
1004 パターン記憶手段
1005 ヘッド制御手段

Claims (8)

  1. 複数種のインクを吐出可能なインク用ヘッド部と、前記インクの色剤を不溶化または凝集させる処理液を吐出可能な処理液用ヘッド部を用いて、被記録媒体に画像を記録するインクジェット記録装置において、
    前記複数種のインクのそれぞれに対応するn値(n≧3)の各インク用の量子化データに基づいて、各インク用の量子化データのそれぞれに対応する複数の処理液用の量子化データを生成する処理液用データ生成手段と、
    前記複数の処理液用の量子化データの内の少なくとも1つおよび前記各インク用の量子化データを、マトリクスパターンを用いて、処理液用のビットマップデータおよび各インク用のビットマップデータに展開するパターン展開手段と
    前記各インク用のビットマップデータに基づいて、前記インク用ヘッド部による前記複数種のインクの吐出を制御する第1制御手段と、
    前記処理液用のビットマップデータに基づいて、前記処理液用ヘッド部による前記処理液の吐出を制御する第2の制御手段と
    を備えたことを特徴とするインクジェット記録装置。
  2. 前記処理液用データ生成手段は、前記各インク用の量子化データのそれぞれを所定の変換テーブルに基づいて前記複数の処理液用の量子化データに変換することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
  3. 前記変換テーブルは、前記各インク用の量子化データ毎に設定されることを特徴とする請求項2に記載のインクジェット記録装置。
  4. 前記パターン展開手段は、前記複数の処理液用の量子化データの内の最大値の1つを前記処理液用のビットマップデータに展開し、
    前記第2制御手段は、前記1つの処理液用の量子化データから展開された前記処理液用のビットマップデータに基づいて、前記処理液用ヘッド部による前記処理液の吐出を制御する
    ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
  5. 前記インク用ヘッド部および前記処理液用ヘッド部と前記被記録媒体とを主走査方向に相対移動させる第1の移動手段と、
    前記インク用ヘッド部および前記処理液用ヘッド部と前記被記録媒体とを前記主走査方向と交差する副走査方向に相対移動させる第2の移動手段と、
    を備え、
    前記インク用ヘッド部は、前記主走査方向と交差する方向に沿って複数のインク吐出口が配列されたインク吐出口列を前記主走査方向に平行に複数列備え、当該複数の異なる吐出口列の前記インク吐出口から異種のインクの吐出が可能であり
    前記処理液用ヘッド部は、前記処理液を吐出可能な複数の処理液吐出口を前記主走査方向と交差する方向に沿って列状に備えた
    ことを特徴とする請求項4に記載のインクジェット記録装置。
  6. 前記パターン展開手段は、前記複数の処理液用の量子化データの全てを前記処理液用のビットマップデータに展開し、
    前記第2制御手段は、前記全ての処理液用の量子化データから展開された前記処理液用のビットマップデータの全てに基づいて、前記処理液用ヘッド部による前記処理液の吐出を制御する
    ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
  7. 前記インク用ヘッド部および前記処理液用ヘッド部と前記被記録媒体とを主走査方向に相対移動させる第1の移動手段と、
    前記インク用ヘッド部および前記処理液用ヘッド部と前記被記録媒体とを前記主走査方向と交差する副走査方向に相対移動させる第2の移動手段と、
    を備え、
    前記インク用ヘッド部は、異種のインクを吐出可能な複数のインク吐出口を前記主走査方向と交差する方向に沿う同一の列状に備え
    前記処理液用ヘッド部は、前記処理液を吐出可能な複数の処理液吐出口を前記主走査方向と交差する方向に沿って列状に備える
    ことを特徴とする請求項6に記載のインクジェット記録装置。
  8. 複数種のインクを吐出可能なインク用ヘッド部と、前記インクの色剤を不溶化または凝集させる処理液を吐出可能な処理液用ヘッド部を用いて、被記録媒体に画像を記録するインクジェット記録方法において、
    前記複数種のインクのそれぞれに対応するn値(n≧3)の各インク用の量子化データに基づいて、各インク用の量子化データのそれぞれに対応する複数の処理液用の量子化データを生成し、
    前記複数の処理液用の量子化データの内の少なくとも1つおよび前記各インク用の量子化データを、マトリクスパターンを用いて、処理液用のビットマップデータおよび各インク用のビットマップデータに展開し
    前記各インク用のビットマップデータに基づいて、前記インク用ヘッド部による前記複数種のインクの吐出を制御し、
    前記処理液用のビットマップデータに基づいて、前記処理液用ヘッド部による前記処理液の吐出を制御する
    ことを特徴とするインクジェット記録方法。
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