JP3665747B2 - 軌道除雪車 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、線路上の積雪を除雪するための軌道除雪車に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
線路(軌道)上に降り積もった雪を除雪するための軌道除雪車は周知である。一般的な軌道除雪車は、軌道上を走行するための台車の上に車輌本体を搭載し、その車輌端部に除雪装置を備えている。
【0003】
除雪装置としてはラッセル式除雪装置又はロータリ式除雪装置があり、積雪状況等に応じていずれかが使用される。しかし、各方式ごとに軌道除雪車を用意することは費用がかかり、また、保管場所も必要となる。このため、1台でラッセル除雪とロータリ除雪の両方式の除雪作業に対応できる軌道除雪車が求められている。
【0004】
このような要求に対し、例えば、特開平8−165623号公報には、ラッセル式除雪装置及びロータリ式除雪装置を備える軌道用除雪車が開示されている。また、上記公報には、路線の往復除雪などに対応できるよう、車輌の前部と後部とに除雪装置を備えることが記載されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、ラッセル式除雪装置とロータリ式除雪装置の双方を備える軌道除雪車においては、ラッセル除雪を行う際には大馬力が必要であるが、ロータリ除雪及び軽量索引時にはそこまでの大馬力を必要とせず、ラッセル除雪に対応する大馬力の機関を搭載することは燃料消費の増大につながる。すなわち、ラッセル除雪に必要な馬力を仮に1200psとすると、ロータリ除雪及び軽量索引には600psで充分と考えられる。ここで、ラッセル式除雪装置とロータリ式除雪装置の両方を備える軌道除雪車に1200psの機関を搭載したとすると、1200psの機関でロータリ除雪も行うことになる。ロータリ除雪作業時には、必要な投雪距離及び除雪能力を得るために機関を高出力回転域で使用しなければならず、大馬力の機関を高出力で運転することで無駄な燃料を消費することになるという問題がある。
【0006】
また、ラッセル式除雪に対応する大馬力の機関(1200ps級)は汎用製品が少ないため特注製品となる可能性が高く、開発費用も必要となり除雪車の価格上昇の原因となる。
【0007】
本発明は、ラッセル式除雪装置とロータリ式除雪装置を備える従来の軌道除雪車における上述の問題を解決し、燃料消費の低減を計り且つコストを抑えてラッセル除雪及びロータリ除雪の双方に対応できる軌道除雪車を提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記の課題は、本発明により、軌道上を走行する車両にラッセル式除雪装置とロータリ式除雪装置を装着した軌道除雪車において、2基の機関と、2つの台車と、1基の機関の動力をそれぞれ1つの台車に伝達する2系統の動力伝達系統を備えるとともに、前記各動力伝達系統出力の連結と開放が可能な出力軸連結機構を設け、1つの機関の動力を2つの台車に伝達可能に構成したことにより解決される。
【0009】
また、前記の課題を解決するため、本発明は、前記車輌の前後にロータリ式除雪装置が装着されていることを提案する。
また、前記の課題を解決するため、本発明は、前記車輌の前後にラッセル式除雪装置が装着されていることを提案する。
【0010】
また、前記の課題を解決するため、本発明は、前記車輌の前後にラッセル式除雪装置及びロータリ式除雪装置が装着されていることを提案する。
また、前記の課題を解決するため、本発明は、前記車輌の前後一方にラッセル式除雪装置を装着し他方にロータリ式除雪装置を装着することを提案する。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態の外観を示す側面図である。この図に示すように、本実施形態の軌道除雪車は、車輌本体1の前部と後部の両方にロータリ式除雪装置2及びラッセル式除雪装置3を装着している。図1において右側のラッセル式除雪装置3は、内側に位置するロータリ式除雪装置2の構成が分るように枠線だけを示している。ロータリ式除雪装置2は、オーガ4,ブロワ5,シュート6を備え、オーガ4により雪を切り崩して掻き込むとともにブロワ5によりシュート6を介して線路脇等へ投雪する。
【0012】
ラッセル式除雪装置3は、図3に示すように、車輌幅方向の左右一対の主翼7と、その後方に位置する一対の補助翼8とを備えている。主翼7は、回転軸11により回動可能に支持され、図示しない油圧シリンダにより回動できるようになっている。また、補助翼8も同じ回転軸11に枢着され、図示しない油圧シリンダにより回動できるようになっている。左右一対の主翼7の先端部を車輌幅方向の中央で合致させることにより、図4に示すような車輌進行方向に尖った逆V字形プラウを構成する。このとき、補助翼8を外側に開くことで車輌から離れた位置に排雪することができる。また図示はしないが、主翼7の先端部を車輌幅の外側に斜め前方に開くと、ロータリ除雪の際に車輌前方の雪を幅広くロータリ式除雪装置2に掻き込むための掻き込み翼となる。さらに、左右どちらか一方の主翼7を車輌外側に斜めに開き、他方の主翼7の先端部を一方の主翼7の中間部に合致させることで、車輌進行方向に対して斜めに傾斜した片流れのラッセル翼を形成することもできる。なお、回送時には左右の主翼7で逆V字形プラウを構成し補助翼8を車輌進行方向と平行に保持する形態をとることもできる。
【0013】
図2は、図1に示す軌道除雪車の動力伝達システムの構成を概念的に示すブロック図である。この図に示すように、本実施形態の軌道除雪車は機関としてのエンジン11を2基搭載し、それぞれに動力分配器(エンジン11の動力を走行用動力と作業(ロータリ除雪)用動力に分配する歯車装置)12と、油圧を利用した無段変速機であるHST(Hydrostatic transmission)システム13と、走行用トランスミッションである変速機16とを装備している。HST13は、少なくとも一方が可変容量型の油圧ポンプ14と油圧モータ15から構成されている。この図では、図1の左側のロータリ式除雪装置2を駆動するエンジン11を機関I、図1の右側のロータリ式除雪装置2を駆動するエンジン11を機関IIとし、また、図1の左側の台車10を台車I、右側の台車10を台車IIとして説明する。左右(車輌の前後)各系統のエンジン11,動力分配器12,HSTシステム13,変速機16及び台車10の構成は同一である。
【0014】
エンジン11で発生した動力は、動力分配器12に伝達され作業用動力(ロータリ動力)と走行用動力に2分される。走行用動力は動力分配器12からHST13を経て変速機16へ伝達され、台車10に設けられた図示しないディファレンシャルを経て車軸/車輪9を回転させる。なお、本実施形態では、各エンジン11は600psの出力を有するものを採用している。
【0015】
ところで、本実施形態では、前後の走行用変速機16,16の出力軸は図示しないクラッチを介して連結できる構成となっている。この前後の走行用変速機16,16の出力軸を連結(接続)/開放(分離)できる構成を出力軸連結機17として破線の両矢印で示す。このような構成により、ラッセル除雪および重量牽引等の大きな動力を必要とする場合は、2基の機関I・IIを始動し、出力軸連結機17を開放して、エンジン回転数及び走行速度(HST速度)を同調制御しながら各動力系統を分離して各台車車輪ごとに駆動する。これにより、2基のエンジン11による600ps×2の大馬力でラッセル除雪及び重量牽引を行うことができる。なお、ラッセル除雪時及び牽引時は、図示しないクラッチ(動力分配器12とロータリ式除雪装置2の間に配置される)が切断されることによりロータリ式除雪装置2は駆動されない。
【0016】
一方、ロータリ除雪及び軽量牽引時は、車輌進行方向前側のエンジン11のみを始動し(600ps)、そのエンジンに対応する動力系統の機器で走行する。このとき、出力軸連結機17を接続し、変速機16の出力軸を介して後側の台車の車軸/車輪9も駆動することにより、全輪駆動で走行する。すなわち、図2の機関Iのみを使用する場合、台車Iに加えて台車IIの車軸/車輪9も駆動することにより全輪駆動で走行する。もちろん、反対方向への走行においては、機関IIのみを始動して、台車IIに加えて台車Iの車軸/車輪9も駆動して全輪駆動で走行する。ロータリ除雪及び軽量牽引時は、600psの機関1基のみで作業・走行でき、無駄な燃料消費を防いで燃料使用量を低減することができる。
【0017】
このように、本実施形態の軌道除雪車は2基の機関を搭載して各機関ごとに動力伝達系統を備え、さらに、各動力伝達系統出力の連結(接続)と開放(分離)が可能な出力軸連結機構を備えているので、走行及び作業形態に応じて、2基の機関による大馬力での走行・作業あるいは1基の機関による燃料使用量を抑えた走行・作業を選択的に実行することができる。
【0018】
また、機関及び動力系統を2系等備えることにより、一方の系統で主要機器の故障等が発生した場合でも暫定的に作業を継続することができる。また作業が継続できない場合でも、回送走行及び主要線路からの回遊走行が可能となる。
【0019】
なお、使用する機関は上記600psのものに限らず、400psの機関を2機搭載しても良い。もちろん、それ以外の出力のものを搭載することもできる。さらには、2基の機関の出力が異なるものを用いることも可能である。
そして、本実施形態で使用している400〜600ps級の機関は、機関メーカの汎用的製品(通常は舶用として使用されている)であるため、部品の入手性等に問題は無く、安心して使用することができる。1基の機関でラッセル除雪及び重量牽引に対応しようとすれば1200ps級の機関が必要となるが、1200ps級の機関は汎用製品が少なく特注製品となる可能性が高く、その開発費用もかかってくる。また、保守整備での部品交換等に通常以上の費用が発生することも考えられるが、汎用的製品である600ps級の機関を用いることで、これらのコストを抑えることができる。また、1200ps級の機関を使用する場合から比べればHST13や変速機16等に要求される性能・耐久性等もきびしくなく、従来製品の利用を可能とすることで新規開発が最小限に抑えられ、工期及び費用の面でも有利となる。
【0020】
以上本発明を図示の実施形態により説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、機関から台車へ駆動力を伝達する動力系統の構成は上記実施形態と異なる構成にすることも可能である。また、ラッセル式除雪装置の構成も図3,4に示すものとは異なる構成でも構わない。
【0021】
さらに、上記実施形態では車輌前後にロータリ式除雪装置及びラッセル式除雪装置が装着されたものを示したが、各方式の除雪装置の装着方法は適宜組み合わせることができる。例えば、車輌前後の一方にロータリ式除雪装置他方にラッセル式除雪装置を装着することもできる。また、ロータリ式除雪装置を車輌の前後両方に備え、ラッセル式除雪装置は車輌の前後一方のみに備えることもできる。逆に、ラッセル式除雪装置を車輌の前後両方に備え、ロータリ式除雪装置は車輌の前後一方のみに備えることもできる。
【0022】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の軌道除雪車によれば、2基の機関と、2つの台車と、1基の機関の動力をそれぞれ1つの台車に伝達する2系統の動力伝達系統を備えるとともに、前記各動力伝達系統出力の連結と開放が可能な出力軸連結機構を設け、1つの機関の動力を2つの台車に伝達可能に構成したので、走行及び作業形態に応じて、2基の機関による大馬力での走行・作業あるいは1基の機関による燃料使用量を抑えた走行・作業を選択的に実行することができる。
【0023】
また、機関及び動力伝達系統を2系等備えることにより、一方の系統で主要機器の故障等が発生した場合でも暫定的に作業を継続することができる。作業が継続できない場合でも、回送走行及び主要線路からの回遊走行が可能となる。
【0024】
さらに、機関として汎用的製品を使用することができ、車輌価格及びメンテナンスコストを低減させることができる。
請求項2〜5の構成により、車輌に装着する除雪装置方式の多様な組み合わせができ、使用者の要求に適した軌道除雪車を構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態である軌道除雪車の外観を示す側面図である。
【図2】その軌道除雪車の動力伝達システムの構成を概念的に示すブロック図である。
【図3】その軌道除雪車の除雪装置の構成を示す平面図である。
【図4】逆V形プラウを形成した除雪装置を示す平面図である。
【符号の説明】
1 車両本体
2 ロータリ除雪装置
3 ラッセル除雪装置
10 台車
11 機関(エンジン)
12 動力分配機
13 HSTシステム(油圧無段変速機)
16 変速機
17 出力軸連結機
Claims (5)
- 軌道上を走行する車両にラッセル式除雪装置とロータリ式除雪装置を装着した軌道除雪車において、
2基の機関と、2つの台車と、1基の機関の動力をそれぞれ1つの台車に伝達する2系統の動力伝達系統を備えるとともに、
前記各動力伝達系統出力の連結と開放が可能な出力軸連結機構を設け、1つの機関の動力を2つの台車に伝達可能に構成したことを特徴とする軌道除雪車。 - 前記車輌の前後にロータリ式除雪装置が装着されていることを特徴とする、請求項1に記載の軌道除雪車。
- 前記車輌の前後にラッセル式除雪装置が装着されていることを特徴とする、請求項1に記載の軌道除雪車。
- 前記車輌の前後にラッセル式除雪装置及びロータリ式除雪装置が装着されていることを特徴とする、請求項1に記載の軌道除雪車。
- 前記車輌の前後一方にラッセル式除雪装置を装着し他方にロータリ式除雪装置を装着したことを特徴とする、請求項1に記載の軌道除雪車。
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