JP3665146B2 - ジエンを含有するビニルアルコール系重合体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は新規な変性ビニルアルコール系重合体に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリビニルアルコールは数少ない結晶性の水溶性高分子として優れた界面特性および強度特性を有する事から、紙加工、繊維加工およびエマルジョン用の安定剤に利用されているほか、ポリビニルアルコール系フィルムおよびポリビニルアルコール系繊維等の原料として重要な地位を占めている。一方で結晶性を制御したり、官能基を導入して特定の性能を向上させた高機能化の追求も行われており、いわゆる変性ポリビニルアルコールも種々開発されている。
【0003】
しかし、架橋性、特に低温下の温和な条件において、架橋性に優れたビニルアルコール系重合体(あるいは該重合体組成物)は、必ずしも満足のいく重合体が開発されていないことから、反応性に富むビニルアルコール系重合体が切望されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
このような状況の中で、本発明は、共役ジエンに由来する反応性を有する新規な変性ビニルアルコール系重合体を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、このような新規な変性ビニルアルコール系重合体について鋭意検討した結果、下記の化3または化4で表される単位を0.01〜30モル%含有するビニルアルコール系重合体を見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
【化3】
【0007】
【化4】
【0008】
(ここで、R1、R2、R3、R4およびR5は水素原子または置換基を有していてもよい炭素数8以下の炭化水素基を表し、Aは窒素原子または酸素原子を含んでいてもよい2価の炭化水素基を表し、Sは硫黄原子を表し、Xは共役ジエン構造を含有する一価の基を表す。)
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明のビニルアルコール系重合体は、分子鎖中に化3または化4で表される単位を0.01〜30モル%含有するビニルアルコール系重合体であり、該重合体中における化3または化4で表される単位の分布には特に制限はない。該単位の含有量が0.01モル%未満になると、導入効果が十分に発現されず、30モル%を越えるとビニルアルコール系重合体の保存安定性(たとえばゲル化)に問題を生じる。該単位の含有量のさらに好ましい範囲は、0.02〜20モル%であり、特に好ましい範囲は0.05〜15モル%である。
【0010】
化3または化4で表される単位中のR1 、R2 、R3 、R4 およびR5 は、水素原子または置換基を有していてもよい炭素数8以下の炭化水素基であれば特に制限はないが、R1 が水素原子であり、R2 が水素原子またはメチル基であり、R3 、R4 およびR5 が水素原子または炭素数8以下(好ましくは炭素数6以下)の炭化水素基が好んで使用される。なお、R3 とR4 (またはR5 )がいっしょになって環を形成することも差し支えない。
【0011】
化4で表される単位中のAは、窒素原子または酸素原子を含んでいてもよい2価の炭化水素基であればその構造に特に制限はなく、たとえば、−CH2OCH2−、−OCH2−、−CONH−φ−OCH2−、−CONHCH2−、−CONHCH2OCH2−、−CONHCH2OCH2CH2−、−CONHCH2OCH2CH2CH2−、−CONHCH2OCH2CH2CH2CH2−、−CONHCH2−φ(CH3)2−CH2−等が例示される。(なお、φはフェニレンを意味する。)
【0012】
化3または化4で表される単位中のXは、共役ジエン構造を有する一価の基であればその構造に特に制限はなく、たとえば、化5〜化8に示す構造が例示される。
【0013】
【化5】
【0014】
【化6】
【0015】
【化7】
【0016】
【化8】
【0017】
本発明のビニルアルコール系重合体は、化3または化4で表される単位を除くと、実質的にビニルアルコール単位またはビニルアルコール単位とビニルエステル単位からなる。ビニルエステル単位としては、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、トリフルオロ酢酸ビニル、2−エチルヘキサン酸ビニル等が挙げられる。
【0018】
また、本発明の主旨を損なわない範囲でこれら以外のモノマー単位を含有することは差し支えない。このような単位を例示するとエチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテンなどのオレフィン類;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、(無水)フタル酸、(無水)マレイン酸、(無水)イタコン酸などの不飽和酸類あるいはその塩あるいは炭素数1〜18のモノまたはジアルキルエステル類;アクリルアミド、炭素数1〜18のN−アルキルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、2−アクリルアミドプロパンスルホン酸あるいはその塩、アクリルアミドプロピルジメチルアミンあるいはその酸塩あるいはその4級塩などのアクリルアミド類;メタクリルアミド、炭素数1〜18のN−アルキルメタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、2−メタクリルアミドプロパンスルホン酸あるいはその塩、メタクリルアミドプロピルジメチルアミンあるいはその酸塩あるいはその4級塩などのメタクリルアミド類;N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミドなどのN−ビニルアミド類;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアン化ビニル類;炭素数1〜18のアルキルビニルエーテル、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、アルコキシアルキルビニルエーテルなどのビニルエーテル類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、臭化ビニルなどのハロゲン化ビニル類;トリメトキシビニルシランなどのビニルシラン類、酢酸アリル、塩化アリル、アリルアルコール、ジメチルアリルアルコール等があげられる。
【0019】
本発明のビニルアルコール系重合体の分子量には特に制限はないが、該重合体の4%のジメチルスルホキシド(DMSO)溶液の20℃の粘度(B型粘度計で測定)で表して、2〜10,000cpの範囲が好ましい。またビニルアルコール含量は10〜99.9モル%、好ましくは50〜99.9モル%である。
【0020】
本発明のビニルアルコール系重合体は、たとえば、ビニルエステルモノマーとエポキシ基を有するビニルモノマーとの共重合体に、共役ジエン構造を有するチオールを反応させた後に加水分解する方法により得る事ができる。
【0021】
エポキシ基を有するビニルモノマーとしては、アリルグリシジルエーテル、メタリルグリシジルエーテル、ブタジエンモノエポキサイド、1,2−エポキシ−5−ヘキセン、1,2−エポキシ−7−オクテン、1,2−エポキシ−9−デセン、8−ヒドロキシ−6,7−エポキシ−1−オクテン、8−アセトキシ−6,7−エポキシ−1−オクテン、N−(2,3−エポキシ)プロピルアクリルアミド、N−(2,3−エポキシ)プロピルメタクリルアミド、4−アクリルアミドフェニルグリシジルエーテル、3−アクリルアミドフェニルグリシジルエーテル、4−メタクリルアミドフェニルグリシジルエーテル、3−メタクリルアミドフェニルグリシジルエーテル、N−グリシドキシメチルアクリルアミド、N−グリシドキシメチルメタクリルアミド、N−グリシドキシエチルアクリルアミド、N−グリシドキシエチルメタクリルアミド、N−グリシドキシプロピルアクリルアミド、N−グリシドキシプロピルメタクリルアミド、N−グリシドキシブチルアクリルアミド、N−グリシドキシブチルメタクリルアミド、4−アクリルアミドメチル−2,5−ジメチル−フェニルグリシジルエーテル、4−メタクリルアミドメチル−2,5−ジメチル−フェニルグリシジルエーテル、アクリルアミドプロピルジメチル(2,3−エポキシ)プロピルアンモニウムクロリド、メタクリルアミドプロピルジメチル(2,3−エポキシ)プロピルアンモニウムクロリド、メタクリル酸グリシジル等が用いられる。
【0022】
共役ジエン構造を有するチオールとしては、化9〜化12に示すチオール等が例示され、これらの酢酸エステルや安息香酸エステル等のエステルも使用できる。
【0023】
【化9】
【0024】
【化10】
【0025】
【化11】
【0026】
【化12】
【0027】
本発明のビニルアルコール系重合体の製造には、チオール基もしくはチオエステル基とエポキシ基との反応を利用するが、該反応は、無溶媒、またはチオール基もしくはチオエステル基を有する化合物ならびにエポキシ基を有する化合物を溶解もしくは膨潤させる溶剤中で実施される。このような溶剤としては、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール等のアルコール類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル類やn−ヘキサン等の炭化水素類が挙げられ、単独もしくは混合して使用される。反応条件は、エポキシ基の構造やチオールもしくはチオエステルの構造により異なるが、通常、溶剤を使用する場合のポリマー濃度5〜90%、チオール基もしくはチオエステル基の濃度/エポキシ基濃度=1.0〜5.0(モル比)で、反応温度0〜250℃、反応時間0.01〜20時間である。ここで、チオールとの反応では3級アミン(例えばトリエチルアミン、ピリジン等)、ホスフィン(例えばトリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン等)、水酸化ナトリウム、テトラエチルアンモニウムヒドロオキサイド、ナトリウムメチラート等の塩基性化合物が、チオエステルとの反応ではトリブチルアンモニウムクロリド、トリブチルアンモニウムブロミド等の4級アンモニウム塩がそれぞれ反応触媒として有効である。また、チオールの酸化を防止するために、反応系を脱気あるいは窒素置換したり、酸化防止剤等を添加することもできる。
【0028】
チオール基もしくはチオエステル基とエポキシ基との反応に引き続く加水分解には、通常のポリビニルエステルのけん化で用いられる塩基性触媒または酸触媒を用いたけん化反応がそのまま適用できる。すなわち、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメチラート等の塩基性触媒やp−トルエンスルホン酸等の酸性触媒を用い、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール等のアルコールやグリコールを溶媒として反応が行われる。この場合、ビニルエステル系重合体や触媒の溶解性を向上するために、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメチルスルホキシド、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トルエン、アセトン、水等の溶剤が適宜混合して使用される。けん化反応の条件は、使用するビニルエステル系重合体の構造や目的とするビニルアルコール系重合体のけん化度によって適宜調整されるが、通常、けん化は触媒濃度/ビニルエステル単位濃度(モル比)=0.001〜1.2、反応温度:20〜180℃、反応時間:0.1〜20時間の範囲で実施される。
【0029】
本発明で得られる化3または化4で表される単位を含有するビニルアルコール系重合体は、共役ジエンの反応性を利用して、繊維糊剤、繊維処理剤、繊維加工剤、クリアーコーテイング、クレーコーティング等の紙コーティング剤用バインダー、感熱紙のオーバーコート用バインダー等の紙加工剤、有機、無機顔料用の分散剤、エマルジョン用重合分散安定剤、塩ビ用重合分散安定剤、セラミックス用バインダー、画像形成材料、感光性樹脂、ホルマール樹脂やブチラール樹脂等のポリビニルアセタール用原料、フィルム、繊維等に、共役ジエンの反応性を利用して、単独あるいは無変性PVAや他の変性PVAとの併用、でんぷん(およびその変性物)、セルロース誘導体、ガム類、ゼラチン、カゼイン他種ポリマーとの併用、可塑剤との併用、ビスマレイミド等の架橋剤との併用で利用される。
【0030】
【実施例】
以下、合成例や実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例により何等制限されるものではない。なお、合成例や実施例中の「部」や「%」は、特に断わりのない限りそれぞれ「重量部」および「重量%」を表わす。
【0031】
(エポキシ基を有するビニルエステル系重合体の合成例)
合成例1
攪拌機、還流冷却管、窒素導入管および温度計を備えた反応器に、酢酸ビニルモノマー405部、アリルグリシジルエーテル11部およびメタノール30部を仕込み、窒素ガスを15分バブリングして脱気した。別途、メタノール15部に2,2’−アゾビスイソブチロニトリル4.5部を溶解した開始剤溶液を調製し、窒素ガスのバブリングにより窒素置換した。
反応器の昇温を開始し、内温が60℃となったところで、別途調製した開始剤溶液を添加し重合を開始した。60℃で4時間重合し冷却して重合を停止した。この時の固形分濃度は54.8%であった。続いて30℃、減圧下にメタノールを時々添加しながら未反応の酢酸ビニルモノマーの除去を行い、ポリ酢酸ビニル共重合体のメタノール溶液(濃度44.5%)を得た。このメタノール溶液の一部をエーテル中に投入してポリマーを回収し、アセトン−エーテルで2回再沈精製した後、40℃で減圧乾燥した。この精製ポリマーについて、CDCl3を溶媒にしてプロトンNMR(日本電子製、GSX−270)測定およびアセトン中の極限粘度測定(JIS)を実施し粘度平均分子量を算出したところ、アリルグリシジルエーテル単位(エポキシ基)を2.1モル%含有する粘度平均分子量が80×103のポリ酢酸ビニル共重合体であった。
【0032】
合成例2〜7
合成例1と同様にして(ただし、ビニルエステルモノマーの種類や量、メタノール量、開始剤の種類や量、および未反応ビニルエステルモノマーの除去に一部n−ブタノールを使用等、適宜変更)、表1に示すエポキシ基を有するビニルエステル系重合体を得た。
【0033】
【表1】
【0034】
実施例1
攪拌機、還流冷却管、窒素導入管および温度計を備えた反応器に、合成例1で得たエポキシ基を有する重合体のメタノール溶液(濃度44.5%)100部を計り取り15分窒素ガスをバブリングした後、フルフリルメルカプタン2.9部と水酸化ナトリウム0.03部をメタノール48部に溶解したものを仕込んだ。攪拌しながら50℃で2時間反応させた後、40℃に冷却してから10%濃度の水酸化ナトリウムのメタノール溶液を40部添加し、けん化を行った。40℃で5時間放置した後粉砕し、酢酸8部を加えて中和してからソックスレー抽出器を用いてメタノールで48時間以上洗浄し、60℃で20時間以上乾燥して、変性ビニルアルコール系重合体を得た。該重合体のIRおよびプロトンNMR(d6−DMSO)を測定したところ、エポキシ基は完全に消失しており、2.1モル%のフラン環基の導入が確認でき、ビニルアルコール含量は97.0モル%であった。また、該ポリマーの4%DMSO溶液を調製し、20℃で粘度を測定したところ59.8cpであった。
【0035】
実施例2〜7
実施例1と同様にして、フラン環基を有する変性ポリビニルアルコールを得た。合成条件と結果を表2に示す。
【0036】
【表2】
【0037】
FM:フルフリルメルカプタン
VA:ビニルアルコール単位
【0038】
【発明の効果】
本発明によれば、反応性に富む共役ジエン構造を有するビニルアルコール系重合体が提供される。
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