JP3664349B2 - クランクピンの研削方法および研削装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、クランクシャフトのクランクピンを断面円形に研削するクランクピン研削技術の技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】
従来から広く実施されている技術としては、クランクピンの中心を割り出してクランクピンの中心軸周りにクランクシャフトを回転させながらクランクピンを砥石で研削する装置が一般的であった。同装置では、被研削中のクランクピンが自転するのみで公転(旋回運動)しないので、クランクピンの砥石に対して背向する側に撓み止めのレストを当接させて研削が行われている。それゆえ、同装置によれば、真円度が高いクランクピンの研削が可能である。
【0003】
かような研削盤の一例として、特開平8−90395号公報に開示されている研削盤がある。同研削盤には、クランクシャフトの両端を主軸等に固定しているチャックの偏心量を補正してピンストロークを補正するピンストローク補正装置が装備されている。その結果、上記公報の研削盤によれば、全自動で全てのクランクピンのピンストローク精度を向上させることができるようになっている。
【0004】
本明細書では、上記公報に開示されている研削装置を従来技術として、以下に本発明の課題を設定する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来技術では、次の二点の不都合があった。第1に、クランクピンの中心軸を割り出すための機構が主軸台に必要であるので、主軸台が大型化してしまうだけではなく研削装置が高価になるという不都合があった。第2に、位相(ジャーナル回転軸周りの角度位置)が異なるクランクピンを加工する度に、クランクピンの中心軸の割り出しを行う必要があるので、研削加工以前の段取りに工数がかかってしまい、生産性があまり良くないという不都合がある。
【0006】
そこで、ジャーナル回転軸だけを中心としてクランクシャフトを回転させ、旋回運動(公転運動)するクランクピンに同期させて砥石台を進退させて研削を行う研削盤(以下同期型研削盤と称する)が提案されている。このような研削盤によれば、上記不都合が解消され、比較的小型の研削装置で生産性がよい研削加工が可能になる。
【0007】
しかしながら、かような研削盤ではレストが使用されていないので、研削加工されるクランクピンの真円度が低下するという不都合がある。かといってクランクピンの旋回運動と同期して進退するレストを備えると、研削装置が大型化し高価になるというジレンマを抱えている。
そこで本発明は、同期型研削盤の生産性をあまり損なうことなく、生産されるクランクシャフトのピン部(クランクピン)の真円度を向上させることができるクランクピンの研削方法および研削装置を提供することを解決すべき課題とする。併せて、同装置に装備され同方法に使用されて好適なクランクシャフトの剛性測定装置を提供することをも課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段およびその作用・効果】
上記課題を解決するために、発明者は以下の手段を発明した。
(第1手段)
本発明の第1手段は、請求項1記載のクランクピンの研削方法である。
本手段では、クランクシャフトをジャーナル回転軸周りに回転させながら、クランクシャフトのクランクピンの旋回運動に同期させて砥石台を進退させ、砥石台が回転駆動する円盤状の砥石によってクランクピンの断面形状が円形になるように研削するクランクピンの研削方法において、剛性測定工程とデータ生成工程と研削工程とを備えていることを特徴としている。
【0009】
先ず剛性測定工程では、クランクピンに所定の荷重をかけ、クランクピンの変位を測定することにより、当該クランクピンの位置でのクランクシャフトの剛性を算出する剛性測定が、複数の所定の角度位置について行なわれる。剛性測定工程により、複数の角度位置でのクランクピンの剛性が測定されるので、砥石切り込み速度に対応して所定の押圧力が砥石からクランクピンにかかった場合に、どの程度の変位がクランクピンに生じるかを推算することが可能になる。
【0010】
次にデータ生成工程では、上記剛性測定工程での測定結果に基づいて各角度位置におけるクランクピンに研削時にかかる荷重によって生じる変位を推算し、変位に基づいてクランクピンの旋回運動に同期して砥石台を進退させるべき位置に補正を加えた補正位置データが生成される。
そして研削工程では、上記補正位置データに基づいてクランクピンが研削されるので、旋回運動をするクランクピンの各角度位置において常に適正量に補正された切り込み量で、砥石がクランクピンを研削加工し続ける。それゆえ、旋回運動するクランクピンの角度位置によってクランクピンの剛性が変化し撓み変位が変化するにも係わらず、クランクピンの全周に渡ってクランクピンの撓み分が補正されて研削加工される。その結果、研削加工の仕上がり時のクランクピンの断面形状の真円度は、撓み変位の補正がされている分だけ向上する。
【0011】
したがって本手段によれば、同期型研削盤の生産性をあまり損なうことなく、生産されるクランクシャフトのピン部(クランクピン)の真円度を向上させ得るクランクピンの研削方法を提供することができるという効果がある。
(第2手段)
本発明の第2手段は、請求項2記載のクランクピンの研削方法である。
【0012】
本手段では、上記第1手段のクランクピンの研削方法において、剛性測定工程およびデータ生成工程に限定が加えられている。
すなわち、剛性測定工程では、クランクピンにかかる所定の荷重の方向に対して、クランクピンの角度位置が0°または180°である場合と、同角度位置が90°または−90°である場合とで、剛性測定が行われる。一方、データ生成工程では、前者の場合の変位を曲げ変位とし、後者の場合の変位を曲げ変位と捻り変位との合成変位としてとらえられる。そして、押圧力によって生じる変位は、クランクピンの角度位置および砥石の押圧力の関数として、曲げ変位と捻り変位との合成変位として推算される。
【0013】
それゆえ、本手段では二箇所の角度位置での剛性測定が行われるだけでクランクピンの全ての角度位置での変位を推算することが可能となるので、剛性測定工程に要する工数が最小限で済む。しかも、比較的精密にクランクピンの全ての角度位置での変位を推算することが可能となるものと考えられるので、後述の他の手段に比べても真円度がそれほど劣ることはない。
【0014】
したがって本手段によれば、前述の第1手段の効果に加えて、剛性測定工程に要する工数が最小限で済むので生産性が向上するという効果がある。
(第3手段)
本発明の第3手段は、請求項3記載のクランクピンの研削方法である。
本手段では、上記第1手段において、剛性測定工程では、クランクピンの角度位置を多数取って剛性測定が行われ、データ生成工程では、これらの多数の角度位置での測定結果を補間して補正位置データが生成される。クランクピンの角度位置の多数に渡って剛性測定がなされるので、クランクピンの撓みが、一定の曲げ剛性および捻り剛性だけでとらえられるものではなく、曲げ剛性の異方性等によるモデル化が比較的難しい撓み成分が無視できない場合にも、精密な撓み補正が可能となる。
【0015】
したがって本手段によれば、前述の第1手段の効果に加えて、曲げ剛性および捻り剛性以外に起因する撓み成分が無視できない場合にも、より精密な補正ができるので、クランクピンの真円度がよりいっそう向上するという効果がある。
なお上記補間は、単純な線形補間であっても良いし、スプライン補間など他の補間方法による補間であっても良い。
【0016】
(第4手段)
本発明の第4手段は、請求項4記載のクランクピンの研削方法である。
本手段では、上記第1手段において、前記剛性測定工程では、クランクピンの角度位置を全周のうち第1象限〜第4象限のうちいずれかの象限で四分の一周に渡って剛性測定が行われ、データ生成工程では、その象限で計測された測定結果を補間し、他の三つの象限にも敷衍して補正位置データが生成される。すなわち、一つの象限と他の象限との角度位置による剛性の分布は、例えば象限の境界線を対称軸とする線対称の関係にあるものとの仮定が導入されている。
【0017】
それゆえ、一つの象限で多数の点(例えば両端部を含む三点以上)での剛性測定が行われて、その一つの象限での変位が推算されれば、その象限から例えば線対称であるとして推算された変位を折り返し、隣の象限の変位の推算に代えることができる。同様にして、上記一つの象限と対角位置にある象限に対しては、その隣の象限から線対称であるとして変位の分布を角度位置の折り返しにより、変位の推算に代えることができる。その結果、剛性測定をクランクピンの旋回運動の全周に渡る角度位置に関して行う必要がなく、四分の一周に渡って行うだけで済むので、剛性測定に要する工数が比較的少なくて済む。
【0018】
したがって本手段によれば、上記第3手段の効果に加えて、剛性測定工程に要する工数が比較的少なくて済むので生産性が向上するという効果がある。
(第5手段)
本発明の第5手段は、請求項5記載のクランクピンの研削装置である。
本手段には、通常の同期型研削盤と同様に、クランクシャフトを回転駆動する主軸台と、砥石を軸支する砥石台と、クランクピンの角度位置と砥石台の位置とを対応させて数値制御する制御装置とが、装備されている。本手段のクランクピンの研削装置の特徴は、クランクシャフトの剛性測定装置とデータ生成手段とが装備されており、制御装置が、補正位置データに基づいてクランクピンの旋回に同期して前記砥石台を進退させることである。
【0019】
より詳しく説明すると、クランクシャフトの剛性測定装置は、クランクピンの複数の所定の角度位置で、クランクピンに所定の荷重をかけてクランクピンの変位を測定する装置である。一方、データ生成手段は、上記剛性測定装置の測定結果に基づいてクランクピンに研削時にかかる荷重によって生じる変位を推算し、同変位に基づいてクランクピンの旋回運動に同期して砥石台を進退させるべき位置に補正を加えた補正位置データを生成する手段である。補正位置データが生成された結果、同補正位置データに基づき、制御装置はクランクピンの旋回に同期して砥石台を進退させることが可能になる。
【0020】
すなわち、本手段のクランクピンの研削装置は、前述の第1手段ないし第4手段のクランクピンの研削方法を実施することができるように構成されている。したがって本手段によれば、同期型研削盤の生産性をあまり損なうことなく、生産されるクランクシャフトのクランクピンの真円度を向上させ得るクランクピンの研削装置を提供することができるという効果がある。
【0021】
(第6手段)
本発明の第6手段は、請求項6記載のクランクシャフトの剛性測定装置である。
本手段では、当接子がクランクピンに当接して所定の押圧力を加える一方で、変位計測手段は、クランクピンの表面上の所定の測定点において、当接子の押圧力によってクランクピンに生じる変位を計測する。当接子は、砥石台に保持されているので、比較的小型軽量に構成することが可能である。一方、変位計測手段は、クランクピンの角度位置に合わせて測定点を移動できるように構成されているので、クランクピンの任意の角度位置での変位計測が可能である。また、同様の理由で、クランクピンの軸長方向の位置や旋回半径や断面の直径が異なる各種のクランクシャフトにも適用ができる。
【0022】
その結果、前述の第1手段ないし第4手段のクランクピンの研削方法において剛性測定工程が容易に実施できるようになる。同様に、上記第5手段のクランクシャフトの剛性測定装置を比較的容易に構成できるようになる。
したがって本手段によれば、本発明のクランクピンの研削方法および研削装置の剛性測定に好適なクランクシャフトの剛性測定装置を提供することができるという効果がある。
【0023】
なお、変位計測手段は、接触式の変位センサに限定されることはなく、光学式を含め多くの種類の非接触型の変位センサをも、変位計測手段として採用することができる。
【0024】
【発明の実施の形態および実施例】
本発明のクランクピンの研削方法および研削装置ならびにクランクシャフトの剛性測定装置の実施の形態については、当業者に実施可能な理解が得られるよう、以下の実施例で明確かつ十分に説明する。
[実施例1]
(実施例1のクランクピンの研削装置)
本発明の実施例1としてのクランクピンの研削装置は、図1に示すように、クランクシャフトSを軸支してジャーナル回転軸周りに回転駆動する主軸32を有する主軸台3と、円盤状の砥石55を回転駆動し砥石55をクランクシャフトSに対して進退可能に支持する砥石台5とを、ベッド1の上に移動可能に有する。
【0025】
より詳しく説明すると、工作物テーブル2は、一対のレール22に沿って図中横方向に移動可能にベッド1に搭載されている。工作物テーブル2の横方向への移動は、CNC装置8に制御されたテーブル移動モータ21が、図示しないボールねじを回転駆動することにより行われる。
工作物テーブル2の上には、一端(図中左端)に主軸台3が固定されており、他端(図中右端)には、軸長方向(図中横方向)に移動可能な心押台4が保持されていて、両者3,4のセンタ33,43は同軸に対向している。主軸台3には、クランクシャフトSの一端(図中左端)が主軸センタ33に軸支されており、主軸32に固定されている駆動チャック34を介して、クランクシャフトSは、主軸32ごと主軸回転モータ31により回転駆動される。一方、心押台4には、クランクシャフトSの他端(図中右端)が心押センタ43に押されて軸支されており、クランクシャフトSは心押軸42を連れて回転する。すなわち、クランクシャフトSは、主軸台3と心押台4とによって軸支されており、主軸台3によりジャーナル回転軸C(図2参照)周りに回転駆動される。
【0026】
砥石台5は、砥石台移動用モータ51に駆動されて、ベッド1の上を一対の案内レール56に沿ってクランクシャフトSの軸長方向と直交する方向(図中縦方向)に移動可能に装備されている。砥石台5は、円盤状の砥石55と、砥石55を回転自在に軸支している砥石軸54と、砥石軸54をベルト53を介して回転駆動する砥石回転モータ52とを備えている。
【0027】
また、本実施例のクランクピンの研削装置は、ジャーナル回転軸周りに旋回するクランクシャフトSのクランクピンPの角度位置と砥石台5の位置とから算出されるプロフィールデータに基づき、クランクピンPの角度位置と砥石台5の位置とを対応させて数値制御する制御装置としてのCNC装置8を有する。CNC装置8は、上記各モータ21,41,51,52等を、内蔵する研削加工プログラムに沿って数値制御する。
【0028】
さて、本実施例のクランクピンの研削装置の特徴は、クランクシャフトの剛性測定装置と補正位置データを生成するデータ生成手段とを有し、CNC装置8が上記補正位置データに基づいて砥石台5の位置を制御することである。
すなわち、クランクシャフトの剛性測定装置は、砥石台5に装備されている押圧装置6と、工作物テーブル2の上に移動可能に装備されている変位計測装置7とからなる。剛性測定装置を構成している押圧装置6および変位計測装置7の構成と作用とについては、項を改めて後述する。要するに剛性測定装置6,7は、クランクピンPの複数の所定の角度位置で、クランクピンPに所定の荷重をかけてクランクピンPの変位を測定する装置である。
【0029】
本実施例のクランクピンの研削装置はまた、砥石台5を進退させるべき位置に補正を加えた補正位置データを生成するさらにデータ生成手段を有する。データ生成手段は、剛性測定装置6,7の測定結果に基づいて、クランクピンPに研削時にかかる荷重によって生じる変位を推算する。さらにデータ生成手段は、同変位に基づいて、クランクピンPの旋回運動に同期して砥石台5を進退させるべき位置に補正を加えた補正位置データを生成する。そして制御装置8は、データ生成手段によって生成された補正位置データに基づいて、クランクピンPの旋回に同期させて砥石台5を進退させる。
【0030】
(実施例1のクランクシャフトの剛性測定装置)
本実施例のクランクシャフトの剛性測定装置は、図2に示すように、クランクピンPに当接して所定の押圧力を加える当接子としての押し付け板61を有する押圧装置6と、クランクピンPの変位を計測する変位計測手段としての変位計測装置7とからなる。
【0031】
押圧装置6は、砥石台5に搭載されており、砥石台5に固定されている油圧シリンダ63と、油圧シリンダ63に駆動されるピストン64と、ピストンの先端に固定されている押し付け板61と、押し付け板61にかかる押圧力を検出する押圧力センサ62とからなる。押し付け板61は、CNC装置8によって制御された油圧シリンダ63によって、破線の位置61’にまで押し出され、クランクピンPに当接して水平方向に所定の押圧力を及ぼす。同押圧力は、歪み計型の押圧力センサ62によって検出され、CNC装置8にフィードバックされる。
【0032】
一方、変位計測装置7は、クランクピンPの角度位置に合わせて測定点の移動ができるように、研削装置の工作物テーブル2の上面に対し摺動可能にベッド1に保持されており、押圧装置6と対向する位置に配設されている。そして変位計測装置7は、上記測定点において、押し付け板61の押圧力によってクランクピンPに生じる変位を計測する。すなわち変位計測装置7は、クランクピンPの表面にある測定点に軽く当接して同測定点の変位をピックアップする測定子72と、測定子72に連結され測定子72の変位を計測する差動コイル型の変位センサ71とを有する。
【0033】
変位計測装置7はまた、変位センサ71を上下方向に精密に移動可能に支持するボールねじ74、その送りモータ73、支柱75および台座76と、台座76を水平方向(図中左右方向)に精密に移動させるボールねじ77および送りモータ87とを有する。以上の構成の変位計測装置7はベッド1に摺動可能に搭載されており、クランクシャフトSの剛性測定時には、油圧シリンダ79およびピストン79’によって図中右方に突き出され、剛性測定が終わると図中左方へ撤退させられる。
【0034】
なお、再び図1に示すように、クランクシャフトSを支持している工作物テーブル2は軸長方向に移動可能であり、砥石台5に搭載されている押圧装置6およびベッド1に保持されている変位計測装置7の位置に、任意のクランクピンPを持ってくることができる。それゆえ、クランクシャフトSに複数あるクランクピンPのうち任意のものに押圧力を及ぼして変位を計測し、クランクシャフトSの剛性を測定することが可能である。
【0035】
(実施例1のクランクピンの研削方法)
実施例1としてのクランクピンの研削方法は、以上のクランクシャフトの剛性測定装置6,7を含む前述のクランクピンの研削装置を使用して実施される。本実施例のクランクピンの研削方法は、クランクシャフトSをジャーナル回転軸周りに回転させながら、クランクピンPの旋回運動に同期させて砥石台5を進退させ、回転する砥石55によってクランクピンPの断面形状が円形になるように研削する方法である。
【0036】
本実施例のクランクピンの研削方法の特徴は、以下に説明する剛性測定工程、データ生成工程および研削工程を有することである。
剛性測定工程では、クランクピンPに所定の荷重をかけ、クランクピンPの変位を測定することにより、当該クランクピンPの位置でのクランクシャフトSの剛性を算出する剛性測定が、複数の所定の角度位置について行われる。データ生成工程では、上記剛性測定工程での測定結果に基づいて、各角度位置におけるクランクピンPに研削時にかかる荷重によって生じる変位を推算し、推算された変位に基づいてクランクピンPの旋回運動に同期して砥石台5を進退させるべき位置に補正を加えた補正位置データが生成される。そして研削工程では、上記補正位置データに基づいて砥石台5の進退位置が制御され、クランクピンPの研削が行われる。
【0037】
上記剛性測定工程および上記データ生成工程は、具体的には以下のようにして実施される。
先ず剛性測定工程では、図3に示すように、押圧装置6の押し付け板61が及ぼす荷重の方向に対して、クランクピンPの角度位置が0°である場合(図中右方)と、同角度位置が90°である場合(図中上方)とで、剛性測定が行われる。この剛性測定により、クランクピンPの角度位置が0°である場合には水平方向に生じる変位dx0 が計測され、同角度位置が90°である場合には同じく水平方向に生じる変位dx1 が計測される。
【0038】
次にデータ生成工程では、クランクピンPの角度位置が0°である場合のクランクピンPの変位dx0 が曲げ変位としてとらえられる。一方、同角度位置が90°である場合の同変位dx1 は、曲げ変位dx0 と、捻り変位(dx1−dx0)=rS ・ξとの合成変位としてとらえられる。ここで、ξ rad =(dx1−dx0)/rS は、上記押圧力によって生じたクランクシャフトSのねじれ変形角度である。すなわち、クランクシャフトSのねじれ変形角度ξは、クランクピンPの旋回半径をrS として、次の数1で算出される。
【0039】
【数1】
ξ [rad] =(dx1−dx0)/rS
そして、図4に示すように、押圧力Fによって生じる上方への変位dxおよび水平方向への変位dyが定義されるものとする。すると変位dx,dyは、クランクピンPの角度位置θおよび砥石55の押圧力Fの関数として、曲げ変位と捻り変位との合成変位として推算される。
【0040】
すなわち、図5に示すように、角度位置θにあるクランクピンPの中心cと砥石55の中心C’とを通る直線が、クランクシャフトSのジャーナル回転軸Cと砥石55の回転軸C’との間に引かれた水平線となす角度φは、次の数2で算出される。
【0041】
【数2】
φ=sin-1{sinθ・rS/(r+R)}
すると、任意の角度位置θでのクランクピンPの変位dx,dyは、次の数3に従って曲げ変位と捻り変位との合成変位として推算される。
【0042】
【数3】
dx=dx0・cosφ+rS・ξ・sin(θ+φ)・sinφ
dy=dx0・sinφ+rS・ξ・sin(θ+φ)・cosφ
最後に、砥石台5をクランクシャフトSへ近づける方向へ移動させる位置補正量をfとすると、砥石半径Rとピン半径rとの和を底辺とする直角三角形に関して、ピタゴラスの定理から次の数4が成り立つ。
【0043】
【数4】
(R+r)2 ={(R+r)sinφ+dy}2+{(R+r)cosφ+dx−f}2
したがって、砥石台5の位置補正量fは、次の数5に従って算出される。
【0044】
【数5】
f=dx+(R+r)cosφ−[(R+r)2 −{(R+r)sinφ +dy}2 ]1/2
そして、クランクシャフトSの曲げ変形および捻り変形によって生じるクランクピンPの変位分の補正量fが、クランクピンPの旋回に同期した砥石台5の進退位置の理想プロフィルに加算されて、砥石台5の補正位置データが生成される。ここで理想プロフィルとは、クランクピンPの角度位置θに対し、クランクシャフトSを剛体と見た砥石台5の進退位置である。その結果、研削工程では、補正位置データに基づいて砥石台5の進退位置が制御され、クランクピンPの研削が行われる。
【0045】
ところで、砥石5の切り込み速度によるクランクピンPへの押圧力が、剛性測定工程での押圧力と異なる場合には、両押圧力の比率に等しい倍数を補正量fにかけて、補正位置データを生成すればよい。
なお、補正位置データの生成は、砥石台5に押圧力センサを装備させておき、研削加工を行いながらリアルタイムで行っても良い。
【0046】
(実施例1の作用)
本実施例のクランクピンの研削装置および研削方法とクランクシャフトの剛性測定装置とは、以上のように構成されているので、以下のような作用を有する。本作用については、図6および図7に示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0047】
図6に示すように、研削プログラムがスタートすると、先ず、ステップS11で、NC(数値制御)プログラムの1ブロックが制御装置8のメモリから演算処理装置によって読み出される。読み出されたNCプログラムの1ブロックがデータエンドであれば、続くステップS13の判定ブロックで、実行中の研削プログラムは終了させられるが、そうでない場合には、研削プログラムは次のステップS13に進む。
【0048】
ステップS13の判定ブロックでは、ステップS11で先ほど読み出されたNCプログラムの1ブロックが、砥石台進退位置のプロフィルデータを補正すべしという命令であるか否かが判定される。同プロフィルデータの補正命令であった場合には、研削プログラムはステップS21の処理ブロックに進み、砥石台進退位置のプロフィルデータの補正処理が行われる。この補正処理については、後ほど図7を参照して詳しく説明する。逆に、ステップS11で先ほど読み出されたNCプログラムの1ブロックが、上記プロフィルデータの補正命令でなかったと判定された場合には、次のステップS14へ研削プログラムは進む。
【0049】
ステップS14の判定ブロックでは、ステップS11で先ほど読み出されたNCプログラムの1ブロックが、砥石台5を移動させる命令であるか否かが判定される。砥石台移動命令であった場合には、ステップS31に進み、後ほど説明するように砥石台5の移動処理が行われる。逆に、砥石台移動命令でなかった場合には、研削プログラムは次のステップS15に進む。
【0050】
ステップS15の判定ブロックでは、ステップS11で先ほど読み出されたNCプログラムの1ブロックが、工作物テーブル2の移動命令であるか否かが判定される。工作物テーブル2の移動命令であった場合には、研削プログラムはステップS16の処理ブロックに進み、工作物テーブル2の移動動作が行われる。逆に、工作物テーブル2の移動命令でなかった場合には、ステップS17の処理ブロックに進み、砥石55の始動、回転速度の調整および停止や、研削液の吐出量の調整等の各種処理が行われる。
【0051】
ステップS16およびステップS17のうちいずれが行われた場合にも、研削プログラムは、再びステップS11のメモリからの読み込み処理ブロックから再スタートする。
さて、前述のように、ステップS14の判定ブロックで、ステップS11で先ほど読み出されたNCプログラムの1ブロックが、砥石台5を移動させる命令であると判定された場合には、研削プログラムはステップS31に進む。ステップS31の判定ブロックで、ステップS11で読み出されたNCプログラムの1ブロックが、砥石台5の早送り命令であるか否かが判定される。砥石台5の早送り命令であった場合には、研削プログラムはステップS41の処理ブロックに進み、砥石台5の早送り動作が実行されたのち、研削プログラムはステップS11から再スタートする。逆に、砥石台5の早送り命令でなかった場合には、研削プログラムは次のステップS32に進む。
【0052】
ステップS32の判定ブロックでは、ステップS11で読み出されたNCプログラムの1ブロックが、クランクピンPの研削命令であるか否かが判定される。そして、クランクピンPの研削命令であると判定された場合には、制御装置8のメモリから、ステップS51でクランクピンPの研削データ(理想プロフィル)が読み出され、ステップS52で砥石台5の進退位置の補正プロフィルデータが読み出される。そして次のステップS53で、上記研削データと補正プロフィルデータとが重合されて出力され、クランクピンPの精密な研削が行われる。
【0053】
逆に、ステップS32の判定ブロックで、クランクピンPの研削命令ではないと判定された場合には、ステップS33の処理ブロックで、通常の研削送り動作が行われ、クランクピンP以外の部分(例えばジャーナル部分)の研削が行われる。
ステップS33およびステップS51,52,53のいずれかが行われた場合にも、研削プログラムは、再びステップS11の読み込み処理ブロックから再スタートする。
【0054】
さて、前述のように、ステップS13の判定ブロックで、ステップS11で読み出されたNCプログラムの1ブロックが、砥石台5の進退位置のプロフィルデータを補正させる命令であると判定された場合には、研削プログラムはステップS21に進む。ステップ21の処理ブロックでは、図7に示すように、多数の処理ステップが実行されてプロフィルデータの補正処理が行われる。
【0055】
先ず、図7の左半分にわたる処理ステップS61〜70で、クランクシャフトの剛性測定装置によるクランクシャフトSの剛性の測定が行われる。
すなわち、ステップS61の処理ブロックで、押圧装置6が、砥石台5ごと前進させられてクランクシャフトSに接近させられる。続いてステップS62の処理ブロックで、クランクピンPの単位角度あたりの切り込み量が演算により求められ、同切り込み量に相当する研削加工時の砥石55による押圧力がテーブルデータ等から求められる。さらにステップS63の処理ブロックでは、変位計測装置7が、待機位置から当該のクランクピンPに測定子72を当接させる位置にまで移動させられる。
ステップS64では、クランクシャフトSがジャーナル回転軸と一致している主軸周りに回転させられて、θ(図4参照)=0°の角度位置(図3の右側参照)に、研削加工されるクランクピンPが固定される。そしてステップS65で、砥石55の切り込み量に対応した押圧力(ステップS62で算出済み)が、押圧装置6の押し付け板61から当該のクランクピンPに加えられる。その状態で、ステップS67でクランクピンPの水平変位dx0 が計測され、メモリに格納される。
【0056】
ステップS68では、クランクシャフトSが主軸周りに回転させられて、θ=90°の角度位置(図3の上側参照)に、研削加工されるクランクピンPが固定される。そしてステップS69で、砥石55の切り込み量に対応した押圧力が、押圧装置6の押し付け板61から当該のクランクピンPに加えられる。その状態で、ステップS70の処理ブロックでクランクピンPの水平変位dx1 が計測され、メモリに格納される。
【0057】
以上で剛性測定工程は終わり、砥石台5に搭載されている押圧装置6の押し付け板61は後退し、変位計測装置7もクランクピンPから離れて元あった待機位置まで後退する。
次に、図7の右半分に示されているステップS71〜78で、砥石台5の進退位置プロフィルデータの補正データが作成される。
【0058】
すなわち、ステップS71の処理ブロックで、上記数1に従って、クランクピンPの水平変位dx1 中に占めるクランクシャフトSの捻り変形によるクランクピンPの変位分(最大捻り変位)ξが求められる。続いてステップS72の処理ブロックで、クランクピンPの角度位置θがゼロに初期化される。
ステップS73の処理ブロックでは、上記数2に従って、砥石55とクランクピンPとの接触点(研削部位)とジャーナル回転軸とが砥石55の軸心周りになす角度φ(図5参照)が算出される。続いて、ステップS74の処理ステップでは、研削加工中のクランクピンPの水平方向の変位dxおよび上方への変位dyが、上記数3に従って推算される。さらに処理ステップS75では、上記数5に従って、砥石台5の進退位置の補正量fが算出され、続く処理ステップS76で、クランクピンPの角度位置θと一対一に対応付けられた表形式で補正量fがメモリに格納される。
【0059】
処理ステップS77および判断ステップS78で、角度位置θのΔθだけのインクリメントが行われ、角度位置θが360°に達しないうちはステップS73以降が繰り返される。その結果、角度位置θの一周分に相当する補正値データテーブル(各角度位置θに対応する補正量fの表)が、制御装置8のメモリ内に格納されるに至る。
【0060】
格納された上記補正値データテーブルは、前述のように、ステップS52(図6参照)でメモリから読み出され、続くステップS52で研削データ(理想プロフィル)と重合して出力される。それゆえ、クランクピンPの角度位置θによって砥石55の押圧力による変位が異なるにもかかわらず、クランクピンPに対する砥石台5の進退位置は上記変位分が補正されているので、クランクピンPの真円度が高い研削加工がなされる。
【0061】
(実施例1の効果)
以上詳述したように、本実施例のクランクピンの研削装置およびクランクシャフトの剛性測定装置を使用して、本実施例のクランクピンの研削方法を実施すれば、研削加工されたクランクピンPの真円度を向上させることができるという効果がある。
【0062】
これは、以下の理由による。すなわち、研削加工中に砥石55がクランクピンPに及ぼす押圧力によってクランクシャフトSが撓むことによって生じるクランクピンPの変位は、クランクシャフトSの曲げ変形による変位成分と捻り変形による変位成分との剛性変位である。そこで、クランクピンPの角度位置θが0°と90°との二つの場合について、本実施例のクランクシャフトの剛性測定装置を使用して両変位成分を割り出し、一周にわたる各角度位置θに対応した変位を推算することが可能になる。その結果、クランクシャフトSの曲げ変形および捻り変形に対応したクランクピンPの変位量を、砥石55の進退位置を補正することによって相殺することができるからである。
【0063】
(実施例1の変形態様1)
本実施例の変形態様1として、クランクシャフトの剛性測定装置の変位計測手段として、光変調法による光学変位計を採用したクランクピンの研削装置の実施が可能である。
本変形態様では、光学変位計が非接触型の変位計であり、計測対象であるクランクピンPの表面との距離の大小に関係なく変位の計測ができるので、光学変位計をクランクシャフトSに対して進退させる機構が不要になる。すなわち、図2において、台座76を水平方向(図中左右方向)に精密に移動させるボールねじ77および送りモータ87とは不要であり、同様に油圧シリンダ79およびピストン79’も不要である。
【0064】
その結果、光学変位計を水平に保ったまま、クランクシャフトSの軸長方向に動かす機構と上下方向に動かす機構とがあれば、変位計測装置を構成することができる。したがって本変形態様によれば、変位計測装置の構成が簡素になって可動部分が減るので、コストダウンとともに信頼性の向上が得られるという効果がある。
【0065】
あるいは、本変形態様のさらなる変形態様として、光学変位計は位置を変えることなく保持されており、同光学変位計の指向する方向だけをサーボモータにより変更して、当該クランクピンPの表面までの距離を測定するようにしたクランクシャフトの剛性測定装置を製作することもできる。当該クランクピンPまでの上記距離の変化は、簡単な幾何学の計算(三角関数の計算)により容易にクランクピンPの水平変位に換算できるので、同換算によりクランクピンPの水平変位が求められる。この変形態様によれば、可動部分が少なく故障しにくいクランクシャフトの剛性測定装置を、よりいっそう安価に製造することが可能になるという効果がある。
【0066】
(実施例1の変形態様2)
本実施例の変形態様2として、剛性測定工程では、クランクピンPの角度位置を多数取って剛性測定が行われ、データ生成工程では、これら多数の角度位置での測定結果を補間して補正位置データが生成される、クランクピンの研削方法の実施が可能である。
【0067】
本変形態様では、クランクピンPの角度位置θの一周分に渡ってその変位が実測されるので、前述の実施例1の推算の仮定が十分に近似しない場合においても、なお精密な変位の補正が可能になる。この場合は、たとえば、角度位置θが一周する間に起こるクランクピンPの変位の変化が、クランクシャフトSの曲げ変形および捻り変形にだけ起因するのではなく、クランクシャフトSの曲げ剛性の異方性による成分をも含んでいる場合などである。
【0068】
したがって本変形態様によれば、いかなる剛性特性をもつクランクシャフトSに対しても、クランクピンPの角度位置θの一周分に渡ってその変位が実測されるので、なお精密な変位の補正が可能になるという効果がある。
(実施例1の変形態様3)
本実施例の変形態様3として、剛性測定工程では、クランクピンの角度位置を全周のうち第1象限に限定して剛性測定が行われ、データ生成工程では、第1象限で計測された測定結果が他の三つの象限にも敷衍されて、補正位置データが生成される、クランクピンの研削方法の実施が可能である。
【0069】
本変形態様では、第2象限および第4象限では、第1象限の剛性測定データが線対称に折り返して使用され、第3象限では第2象限または第4象限のデータが線対称に折り返して使用される。
本変形態様によれば、上記変形態様2の四分の一の工数で剛性測定工程を完了することができるので、生産性を変形態様2よりも向上させることができるという効果がある。
【0070】
(実施例1のその他の変形態様)
前述の実施例1およびその各変形態様では、クランクシャフトSの撓みによるクランクピンPの変位は、研削加工中の砥石55からの押圧力によって生じる変位だけを補正対象としていた。しかし、実際の研削加工では、砥石55からの摩擦力によって生じる接線方向の力に起因するクランクピンPの変位も生じており、厳密にはこの摩擦力による変位をも補正対象とすることが望ましい。
【0071】
砥石55の押圧力による変位に加えて摩擦力による変位の補正を行う方法としては、たとえば次の二つの方法が考えられる。
第1に、研削加工中のクランクピンPの変位に関する統計データをたくさん取り、砥石台5の進退位置の補正値fに対して、補正係数aが付加ないし乗ぜられるようにする方法がある。この方法によっても、ある程度の摩擦力に起因する変位の補正が可能になり、仕上がったクランクピンPの真円度をより向上させることが可能である。
【0072】
第2に、研削加工中の砥石55がクランクピンPに及ぼす摩擦力を推定し、押圧力による変位と同様に幾何学的な計算をして摩擦力による変位成分を算出して補正する方法がある。摩擦力を推定する方法としては、切り込み速度から統計的に割り出す方法と、砥石55を一定の回転数で回転駆動している砥石回転モータ52の電流を計測して摩擦力によるトルクから推算する方法とがある。いずれの方法によっても、仕上がったクランクピンPの真円度を、上記第1の方法よりもさらに向上させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1としてのクランクピンの研削装置の構成を示す平面図
【図2】 実施例1のクランクピンの研削装置の要部構成を示す要部側面図
【図3】 角度位置0°および90°でのクランクピンの変位を示す模式図
【図4】 クランクピンの撓み変位の座標変換を示す模式図
【図5】 研削加工中のクランクピンの撓み変位を示す模式図
【図6】 実施例1としてのクランクピンの研削方法の研削プログラムを示すフローチャート
【図7】 実施例1としてのクランクピンの研削方法の補正プログラムを示すフローチャート
【符号の説明】
1:研削装置のベッド
2:工作物テーブル 21:テーブル移動モータ 22:レール
3:主軸台
31:主軸回転モータ 32:主軸
33:主軸センタ 34:駆動チャック
4:心押台
41:心押台移動モータ 42:心押軸 43:心押センタ
7:変位計測装置(剛性測定装置の変位計測手段として)
71:変位センサ(差動コイル接触型センサ) 72:測定子
73:送りモータ 74:ボールねじ 75:支柱
76:台座 77:ボールねじ 78:送りモータ
79:油圧シリンダ 79’:ピストン
5:砥石台
51:砥石台移動モータ 52:砥石回転モータ 53:ベルト
54:砥石軸 55:砥石 56:案内レール
6:押圧装置(剛性測定装置の一部として)
61,61’:押し付け板(当接子として)
62:押圧力センサ 63:油圧シリンダ 64:ピストン
8:CNC装置(制御装置として)
S:クランクシャフト P:クランクピン
C:ジャーナル回転軸 T:クランクピンの旋回軌道
Claims (5)
- クランクシャフトをジャーナル回転軸周りに回転させながら、該クランクシャフトのクランクピンの旋回運動に同期させて砥石台を進退させ、該砥石台が回転駆動する円盤状の砥石によって該クランクピンの断面形状が円形になるように研削するクランクピンの研削方法において、
前記クランクピンに所定の荷重をかけて該クランクピンの変位を測定することにより、該クランクピンの位置での前記クランクシャフトの剛性を算出する剛性測定を、複数の所定の角度位置について行う剛性測定工程と、
該剛性測定工程での測定結果に基づいて各角度位置における該クランクピンに研削時にかかる荷重によって生じる変位を推算し、該変位に基づいて該クランクピンの前記旋回運動に同期して前記砥石台を進退させるべき位置に補正を加えた補正位置データを生成するデータ生成工程と、
該補正位置データに基づいて該クランクピンを研削する研削工程と、
を有することを特徴とする、
クランクピンの研削方法。 - 前記剛性測定工程は、前記荷重の方向に対して前記クランクピンの角度位置が0°または180°である場合と、該角度位置が90°または−90°である場合との、二箇所の角度位置で、前記剛性測定を行う工程であり、
前記データ生成工程は、前者の場合の前記変位を曲げ変位とし、後者の場合の前記変位を該曲げ変位と捻り変位との合成変位としてとらえ、該クランクピンの角度位置および前記砥石の押圧力の関数として、該押圧力によって生じる変位を該曲げ変位と該捻り変位との合成変位として推算する工程である、
請求項1記載のクランクピンの研削方法。 - 前記剛性測定工程は、前記クランクピンの角度位置の一周分に渡って前記剛性測定を行う工程であり、
前記データ生成工程は、各該角度位置での測定結果を補間して前記補正位置データを生成する工程である、
請求項1記載のクランクピンの研削方法。 - 前記剛性測定工程は、前記クランクピンの角度位置を全周のうち第1象限(該角度位置が0°以上90°以下)、第2象限(同90°以上180°以下)、第3象限(同180°以上270°以下)および第4象限(同270°以上360°以下)のうちいずれかの象限で、四分の一周に渡って前記剛性測定が行われる工程であり、
前記データ生成工程は、該象限で計測された測定結果を補間し、他の三つの象限にも敷衍して前記補正位置データを生成する工程である、
請求項1記載のクランクピンの研削方法。 - クランクシャフトを軸支してジャーナル回転軸周りに回転駆動する主軸を有する主軸台と、
円盤状の砥石を回転駆動し、該砥石を該クランクシャフトに対して進退可能に支持する砥石台と、
該ジャーナル回転軸周りに旋回するクランクピンの角度位置と該砥石台の位置とから算出されるプロフィールデータに基づき、該クランクピンの該角度位置と該砥石台の該位置とを対応させて数値制御する制御装置と、
を有するクランクピンの研削装置において、
前記クランクピンの複数の所定の角度位置で、該クランクピンに所定の荷重をかけて該クランクピンの変位を測定するクランクシャフトの剛性測定装置と、
該剛性測定装置の測定結果に基づいて該クランクピンに研削時にかかる荷重によって生じる変位を推算し、該変位に基づいて該クランクピンの前記旋回運動に同期して前記砥石台を進退させるべき位置に補正を加えた補正位置データを生成するデータ生成手段とを有し、
前記制御装置は、該補正位置データに基づいて、該クランクピンの前記旋回に同期して前記砥石台を進退させることを特徴とする、
クランクピンの研削装置。
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