JP6102502B2 - 研削盤および研削方法 - Google Patents

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本発明は、研削盤および研削方法に関するものである。
特開2000−218479号公報(特許文献1)には、円筒研削において、被加工物の真円度を測定して、真円度誤差に基づいて補正量を作成し、当該補正量により補正しながら研削することが記載されている。また、クランクピンを研削する場合には、クランクジャーナルの回転位相に応じてクランクピンの剛性が異なることにより、クランクピンの撓み量が変化する。
そこで、特開2000−107902号公報(特許文献2)および特開平11−90800号公報(特許文献3)には、回転位相に応じてクランクピンの剛性が異なることによる撓み量に基づいて補正量を作成し、当該補正量により補正しながら研削することが記載されている。これにより、クランクピンの真円度を高精度にすることができる。
また、被加工物の研削方法として、荒研削の後に被加工物に対して砥石車を後退させながら研削する後退研削を行い、後退研削の後に仕上研削を行うことについて、特開2011−093017号公報(特許文献4)、特開2011−140089号公報(特許文献5)に記載されている。
特開2000−218479号公報 特開2000−107902号公報 特開平11−90800号公報 特開2011−093017号公報 特開2011−140089号公報
後退研削においても、被加工物の真円度を高精度にすることができれば、研削時間を短縮しつつ高精度な被加工物を得ることができるようになる。ここで、砥石車を前進させる荒研削では、定常状態であれば、切込量が一定となるようにされる。これに対して、後退研削では、砥石車を後退させながら被加工物を研削するため、切込量が徐々に変化する。切込量の相違によって、後退研削における撓み量と荒研削における撓み量とは相違する。そのため、後退研削を行う際に、特許文献2,3に記載の補正方法をそのまま適用することはできない。つまり、後退研削において、真円度を高精度にすることが容易ではない。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、後退研削において真円度を高精度にすることができる研削盤および研削方法を提供することを目的とする。
(研削盤)
(請求項1)本手段に係る研削盤は、砥石車を被加工物に向かって相対的に前進させる前進研削を行い、前記前進研削に続いて砥石車を被加工物から相対的に後退させる後退研削を行う研削盤であって、前記被加工物の位相θに応じた前記後退研削における前記被加工物の撓み量εb(θ)を推定し、前記後退研削における撓み量εb(θ)に基づいて前記後退研削を行う。
以下に、本手段に係る研削盤の好ましい態様を記載する。
(請求項2)好ましくは、前記後退研削における撓み量εb(θ)は、前記被加工物の位相θに応じた前記前進研削における前記被加工物の撓み量εa(θ)と、前記前進研削の終了時の位相θ0eにおける研削抵抗Fna(θ0e)と、前記後退研削の開始から終了までの目標切込量d(θ)とに基づいて推定される。
(請求項3)好ましくは、前記研削盤は、前記前進研削の際に位置指令値に基づいて前記被加工物に対する前記砥石車の位置を制御する前進研削制御部と、前記後退研削の際に位置指令値としての基本後退量ΔXmaster(θ)と、前記被加工物の位相θに応じた前記前進研削における前記被加工物の撓み量εa(θ)と前記後退研削における撓み量εb(θ)との差Δεa-b(θ)とに基づいて、前記被加工物に対する前記砥石車の位置を制御する後退研削制御部と、前記前進研削の際に前記前進研削における撓み量εa(θ)に基づいて前記前進研削制御部による制御に対する補正を行うと共に、前記後退研削の際に前記前進研削における撓み量εa(θ)に基づいて前記後退研削制御部による制御に対する補正を行う補正部と、を備える。
(請求項4)好ましくは、前記研削盤は、前記前進研削の際に位置指令値に基づいて前記被加工物に対する前記砥石車の位置を制御する前進研削制御部と、前記後退研削の際に位置指令値としての基本後退量ΔXmaster(θ)に基づいて前記被加工物に対する前記砥石車の位置を制御する後退研削制御部と、前記前進研削の際に前記被加工物の位相θに応じた前記前進研削における前記被加工物の撓み量εa(θ)に基づいて前記前進研削制御部による制御に対する補正を行うと共に、前記後退研削の際に前記後退研削における撓み量εb(θ)に基づいて前記後退研削制御部による制御に対する補正を行う補正部と、を備える。
(研削方法)
本発明は、上述した研削盤の他に、研削方法としても把握することができる。
(請求項5)本手段に係る研削方法は、砥石車を被加工物に向かって相対的に前進させる前進研削を行い、前記前進研削に続いて砥石車を被加工物から相対的に後退させる後退研削を行う研削方法であって、前記被加工物の位相θに応じた前記後退研削における前記被加工物の撓み量εb(θ)を推定し、前記後退研削における撓み量εb(θ)に基づいて前記後退研削を行う。
(請求項1,5)本手段によれば、後退研削における撓み量εb(θ)に基づいて後退研削を行っている。従って、後退研削における被加工物の真円度を高精度にすることができる。ここで、後退研削は、被加工物が1回転または数回転の間に行うものである。そのため、後退研削を行っている際に、後退研削における撓み量εb(θ)を取得することは容易ではない。そこで、後退研削における撓み量εb(θ)を推定している。つまり、推定した後退研削における撓み量εb(θ)に基づいて、後退研削を行っている。
(請求項2)ここで、本発明者らは、前進研削における撓み量εa(θ)と後退研削における撓み量εb(θ)とが異なるが、両者に相関があることを見出した。そのため、後退研削における撓み量εb(θ)は、前進研削における撓み量εa(θ)に基づいて推定することができる。
さらに、前進研削における撓み量εa(θ)は、前進研削を行っている最中に取得することができる。従って、後退研削における撓み量εb(θ)は、前進研削における撓み量εa(θ)に基づいて推定することによって、確実に得ることができる。
さらに、後退研削においては、その間に切込量を徐々に減少させていく。この切込量に応じて、後退研削における撓み量εb(θ)は変化する。つまり、後退研削における撓み量εb(θ)は、切込量に依存する。そこで、後退研削における撓み量εb(θ)は、前進研削における撓み量εa(θ)の他に、前進研削の終了時の位相θ0eにおける研削抵抗Fnb(θ0e)と後退研削における目標切込量d(θ)とを用いることで、確実に推定できる。
(請求項3)後退研削における補正部による補正は、前進研削と同様に、前進研削における撓み量εa(θ)に基づいて行われる。従って、補正部による補正処理は、後退研削と前進研削とにおいて同様の処理とすることができる。ただし、後退研削において上記補正を行うと、過剰な補正を行うことになる。そこで、後退研削制御部が、基本後退量ΔXmaster(θ)に加えて、撓み量差Δεa-b(θ)を考慮した位置制御を行う。このようにすることで、確実に、後退研削において、被加工物を高精度な真円度とすることができる。
(請求項4)後退研削における補正部による補正は、前進研削とは異なり、後退研削における撓み量εb(θ)に基づいて行われる。このようにすることで、後退研削において、確実に被加工物を高精度な真円度にすることができる。この場合、後退研削制御部は、基本後退量ΔXmaster(θ)に基づいて制御することになる。
本発明の実施形態における研削盤1の平面図である。 クランクシャフトWの位相θが0°の場合に、クランクシャフトWの回転中心Oと、クランクピンWaのピン中心Owと、砥石車15との位置関係を示す図である。ただし、クランクシャフトWが撓んでいないとして図示する。 クランクシャフトWの位相θが90°の場合に、クランクシャフトWの回転中心Oと、クランクピンWaのピン中心Owと、砥石車15との位置関係を示す図である。 クランクシャフトWの位相θが180°の場合に、クランクシャフトWの回転中心Oと、クランクピンWaのピン中心Owと、砥石車15との位置関係を示す図である。 クランクシャフトWの位相θが270°の場合に、クランクシャフトWの回転中心Oと、クランクピンWaのピン中心Owと、砥石車15との位置関係を示す図である。 上段に、砥石車15のX軸位置、クランクシャフトWの外径Dt、下段に、クーラントの供給量Qについての時間変化を示すグラフである。 図3の荒前進研削の開始時T0sにおけるクランクピンWaと砥石車15を示す。 図3の後退研削の開始時T1s(=T0e)におけるクランクピンWaと砥石車15を示す。 図3の後退研削の終了時T1e(=バックオフ動作の開始時T2s)におけるクランクピンWaと砥石車15を示す。 本実施形態における研削盤1の機能ブロック構成図を示す。 第一実施形態における補正部182による補正処理を示すフローチャートである。 補正部182による第一の補正量D1(θ)の算出手順を示すブロック図である。 研削能率Zrealと、クランクピンWaが砥石車15から受ける切込方向の実際の押付力Frealとの関係を示す。 クランクシャフトWの回転位相θに応じた研削点速度v(θ)を示す。 クランクシャフトWの回転位相θに応じた理論的な研削能率Zlogical(θ)を示す。 クランクシャフトWの回転位相θに応じた、クランクピンが砥石車から受ける切込方向の押付力Fa(θ)、研削抵抗Fna(θ)、クーラント動圧Fp(θ)を示す。 クランクシャフトWの回転位相θに応じて撓み量εa(θ)を示す。 クランクシャフトWの回転位相θに応じた第一の補正量D1(θ)を示す。 第一実施形態における補正部182による第二の補正量D2の算出手順を示すフローチャートである。 第一実施形態における後退研削制御部としての基本研削制御部181による、後退量ΔXの算出手順を示すブロック図である。 後退研削の開始から終了までにおける目標切込量d(θ)を示す。 後退研削における研削抵抗Fnb(θ) および荒前進研削における研削抵抗Fna(θ)を示す。 後退研削におけるクーラント動圧Fp(θ)を示す。 後退研削における押付力Fb(θ)および荒前進研削における押付力Fa(θ)を示す。 後退研削における総撓み量εb(θ)、荒前進研削における研削抵抗による撓み量εna(θ)および総撓み量εa(θ)を示す。 撓み量差Δεa-b(θ)を示す。 第一実施形態において、後退研削における基本後退量ΔXmaster(θ)と後退量ΔXを示す。 第二実施形態における後退研削制御部としての基本研削制御部181による処理を示すフローチャートである。 第二実施形態において、後退研削における基本後退量ΔXmaster(θ)を示す。 第二実施形態における補正部182による補正処理を示すフローチャートである。 後退研削におけるクランクシャフトWの回転位相θに応じた第三の補正量D3(θ)を示す。
以下に、本発明に係る研削盤および研削方法を適用した実施形態について説明する。
<第一実施形態>
(1.研削盤の構成)
本実施形態の研削盤の一例として、砥石台トラバース型円筒研削盤を例に挙げて説明する。ただし、本発明に係る研削盤は、例えば、テーブルトラバース型研削盤を適用することもできる。また、当該研削盤の加工対象である被加工物は、クランクシャフトWを例に挙げ、その研削部位は、クランクピン(偏心円筒部)Waとする。また、被加工物の研削面であるクランクピンWaには、油穴などの凹所A(図2Cに示す)が形成されている。例えば、当該油穴は、径方向に貫通形成される。なお、被加工物は、クランクシャフトに限定されず、位相θに応じて撓み量が異なる被加工物であれば適用できる。
当該研削盤について、図1を参照して説明する。研削盤1は、以下のように構成される。床上にベッド11が固定され、ベッド11には、クランクシャフトWを回転可能に両端支持する主軸12および心押装置13が取り付けられる。クランクシャフトWは、ジャーナル中心に回転するように、主軸12および心押装置13に支持される。つまり、研削部位であるクランクピンWaは、回転中心から偏心した位置を中心とした円形状をなす。主軸12は、駆動モータ12aにより駆動され、回転検出器12bによって主軸12の位相θが検出される。
さらに、ベッド11上には、Z軸方向およびX軸方向に移動可能な砥石台14が設けられる。砥石台14は、駆動モータ14aによりX軸方向に駆動され、砥石台14のX軸方向の位置検出器14bが砥石台14のX方向位置を検出する。位置検出器14bは、回転検出器やリニアスケールなどである。この砥石台14には、砥石車15が回転可能に支持されると共に、クーラントを研削点に向かって供給するためのクーラントノズル19(図2A〜図2Dに示す)が設けられている。
また、主軸12には、主軸12に加わるX軸方向成分の力(切込方向の押付力)Fを計測する力センサ16が設けられる。さらに、ベッド11には、クランクピンWaの径を計測する定寸装置17が設けられる。さらに、研削盤1には、主軸12および砥石車15を回転しかつクランクシャフトWに対する砥石車15の位置を制御する制御装置18が設けられる。
(2.クランクピンと砥石車との位置の説明)
上述したように、研削部位であるクランクピンWaは、回転中心から偏心した位置を中心とした円形状である。そこで、図2A〜図2Dを参照して、クランクシャフトWの回転中心O、および、クランクシャフトWの位相θに応じたピン中心Owの位置について説明する。ただし、図2A〜図2Dにおいては、クランクシャフトWが撓み変形していないものとして図示する。また、図2A〜図2Dにおいては、クーラントノズル19および研削点Pを図示する。クーラントノズル19は、砥石台14における研削点Pより上方に設けられている。
位相θが0°のときは、図2Aに示すように、ピン中心Owは、回転中心Oに対して砥石車15とは反対側(砥石車15による切込方向)に位置する。クーラントは、砥石車15の上側から研削点Pに向かって供給される。位相θが90°のときは、図2Bに示すように、ピン中心Owは回転中心Oに対して下方に位置する。位相θが180°のときは、図2Cに示すように、ピン中心Owは回転中心Oに対して砥石車15側(反切込方向)に位置する。位相θが270°のときは、図2Dに示すように、ピン中心Owは回転中心Oに対して上方に位置する。
(3.研削方法の概要)
次に、本実施形態における研削方法の概要について、図3および図4A〜図4Cを参照して説明する。ここで、図4A〜図4Cにおいて、Osは、クランクシャフトWが撓んでいないと仮定した場合のピン中心Ow(仮ピン中心と称する)である。Orは、実際のピン中心Ow(実ピン中心と称する)である。すなわち、図4A〜図4Cに示すように、クランクシャフトWが撓んでいる状態において、OsとOrはずれている。
本実施形態においては、荒前進研削→後退研削→バックオフ動作→仕上前進研削→スパークアウトの順に実行する。また、各研削工程においては、常にクーラントを供給する。ここで、荒前進研削および後退研削の際には、クーラントの供給量Qを大流量Qmaxとし、仕上前進研削およびスパークアウトの際には、クーラントの供給量Qを小流量Qminとする。以下に、詳細に説明する。
まず、制御装置18がクランクシャフトWに対して砥石車15をX軸方向に前進させることで、荒前進研削を開始する(図3のT0s〜T0e)。荒前進研削では、図3の上段のT0s〜T0eに示すように、砥石車15のX軸マイナス方向(切込方向)へ一定速度で前進する。つまり、荒前進研削では、砥石車15をクランクピンWaに押し付ける方向へ相対移動させる。ここで、荒前進研削では、研削能率Z(単位時間単位幅当たりの研削量)を大きくするために、仕上前進研削よりも移動速度を大きくする。つまり、図3のT0s〜T0eの砥石車15のX軸位置の時間変化が大きい。
そして、図3の荒前進研削の開始時T0sでは、図4Aに示すように、実ピン中心Orは、仮ピン中心Osに対し、クーラント動圧Fp(θ0s)による撓み量εp(θ0s)だけずれている。この状態から砥石車15をクランクピンWaへ押し付けると、クランクピンWaがさらに撓みながら、クランクピンWaが研削される。図3の荒前進研削の終了時T0eに至るまでの間、研削抵抗Fna(θ)が大きくなる。つまり、クランクピンWaが砥石車15から受ける押付力Fa(θ)には、クーラント動圧Fp(θ)と研削抵抗Fna(θ)との総和が作用する。
そして、終了時T0eにおける総撓み量εa(θ0e)は、図4Bに示すように、研削抵抗Fna(θ0e)による撓み量εna(θ0e)とクーラント動圧Fp(θ0e)による撓み量εp(θ0e)との総和値となる。このように、荒前進研削においては、クランクピンWaの位相θに応じた荒前進研削におけるクランクピンWaの総撓み量εa(θ)に基づいて荒前進研削を行う。
荒前進研削を行っている間、定寸装置17によって計測されるクランクピンWaの外径Dtが、予め設定された値Dthに達したか否かを判定する。クランクピンWaの外径Dtが設定値Dthに達すると、荒前進研削から後退研削に切り替える。後退研削とは、砥石車15をクランクピンWaから引き離す方向(X軸プラス方向)へ相対移動させて、研削抵抗Fna(θ)によるクランクピンWaの撓み量εna(θ)を減少させながら行う研削である。
後退研削の開始時T1s(=T0e)には、図4Bに示すように、クランクピンWaの外周面の半径は、クランクピンWaの位相に応じて異なる。これは、砥石車15を前進しながらクランクピンWaを回転させているためである。そして、クランクピンWaの外周面の半径の差は、クランクピンWaの位相に対してほぼ線形の関係にある。そこで、後退研削において、砥石車15を後退させながら、位相に応じた半径差を解消するように当該部分を削り取るようにする。
具体的には、後退研削において、クランクピンWaを例えば1回転させたときに、研削抵抗Fnb(θ)がゼロになるようにする。つまり、後退研削の終了時T1eにおいて、砥石車15によるクランクピンWaに対する切込量がゼロとなるように制御される。なお、クランクピンWaを2回転以上の間、後退研削を行うようにしてもよい。後退研削の終了時T1eには、図4Cに示すように、クランクピンWaの外周面の半径差が解消される。このとき、研削抵抗Fnb(θ1e)がゼロとなるため、クランクピンWaの撓み量εb(θ1e)は、クーラント動圧Fp(θ1e)による撓み量εp(θ1e)に一致する。
ここで、後退研削においては、クランクピンWaの位相θに応じた荒前進研削におけるクランクピンWaの撓み量εa(θ)に基づいて、クランクピンWaの位相θに応じた後退研削におけるクランクピンWaの撓み量εb(θ)を推定し、推定した後退研削における撓み量εb(θ)に基づいて後退研削を行う。
後退研削を終了すると、研削抵抗Fnb(θ)をゼロとしたまま、非研削状態でバックオフ動作を行う(図3のT2s〜T2e)。バックオフ動作とは、後退研削の終了時T1eよりも砥石車15をさらに後退させて、砥石車15をクランクピンWaから離れさせるようにする動作である。バックオフ動作を行っている際、または、バックオフ動作を終了した時点T2eにおいて、クーラントの供給量Qを小流量Qminに切り替える。
バックオフ動作の後であって、かつ、クーラントの供給量Qが小流量Qminに切り替えられた後には、仕上前進研削(図3のT3s〜T3e)を行う。仕上前進研削では、制御装置18は、クランクピンWaに対して砥石車15を前進(X軸マイナス方向へ移動)させることで、仕上前進研削を開始する。仕上前進研削では、図3に示すように、荒前進研削における砥石車15の移動速度(切込速度)より遅くする。従って、仕上前進研削では、クランクピンWaに研削焼けを生じないようにできる。さらに、クーラントの供給量Qを小流量Qminにすることで、油穴などの凹所Aによる研削精度への悪影響を抑制できる。
仕上前進研削を行っている間、定寸装置17によって計測されるクランクピンWaの外径Dtが仕上径Dfに達すると、仕上前進研削からスパークアウトに切り替える。スパークアウトは、砥石車15によるクランクピンWaに対する切込量をゼロの状態として行う。つまり、スパークアウトにおいては、仕上前進研削において研削残しの分を研削することになる。そして、このスパークアウトは、予め設定されたクランクピンWaの回転数だけ行う。図3においては、T4s〜T4eである。
(4.研削盤の機能ブロック構成)
次に、研削盤の機能ブロック構成について図5を参照しながら説明する。図5に示すように、制御装置18は、基本研削制御部181と、補正部182とを備える。基本研削制御部181は、荒前進研削、後退研削、仕上前進研削、バックオフ動作およびスパークアウトのそれぞれにおいて、基本制御を行う荒前進研削制御部、後退研削制御部、仕上前進研削制御部、バックオフ制御部およびスパークアウト制御部として機能する。
基本研削制御部181は、NCデータに基づく位置指令値と砥石台14の位置検出器14bによる検出値とに基づいて、砥石台14を駆動する駆動装置としての駆動モータ14aを駆動する。そして、基本研削制御部181は、定寸装置17によって計測されるクランクピンWaの外径Dtが規定値に達した場合に、工程切替を行う。
本実施形態においては、各制御部としての基本研削制御部181は、各工程における研削の際に、各工程における位置指令値に基づいてクランクピンWaに対する砥石台14の位置を制御する。ただし、後退研削制御部としての基本研削制御部181は、後退研削における位置指令値としての基本後退量ΔXmaster(θ)に加えて、後退研削における撓み量εb(θ)を考慮して、砥石台14の位置を制御する。後退研削制御部による処理は、以下に詳細に説明する。
補正部182は、基本研削制御部181による基本制御に対して補正処理を行う。従って、駆動装置としての駆動モータ14aは、基本研削制御部181による制御指令値に加えて、補正部182による補正値に基づいて、駆動される。この補正部182は、荒前進研削、後退研削および仕上前進研削において補正処理を行う。また、補正部182は、基本研削制御部181と同様に、定寸装置17によって計測されるクランクピンWaの外径Dtが規定値に達した場合に、補正処理の切替を行う。
(5.補正処理)
図5に示す補正部182による補正処理について、図6のフローチャートを参照して説明する。荒前進研削を開始すると(S11:Y)、補正部182は、基本研削制御部181による制御に対して、第一の補正量D1(θ)および第二の補正量D2(θ)による補正を行う(S12)。このとき、荒前進研削制御部としての基本研削制御部181は、荒前進研削における位置指令値に基づいて砥石台14の位置を制御する。
ここで、第一の補正量D1(θ)は、荒前進研削による押付力Fa(θ)に応じたクランクピンWaの撓み量εa(θ)から算出される補正量である。第二の補正量D2(θ)は、真円度計測によって得られた真円度誤差から算出される補正量である。なお、第一,第二の補正量D1(θ),D2(θ)の詳細は、後述する。
そして、荒前進研削における補正は、荒前進研削が終了するまでの間行う(S13:N)。荒前進研削が終了すると、図3に示したように、後退研削が開始される。そして、荒前進研削が終了すると(S13:Y)、補正部182は、荒前進研削にて用いた第一の補正量D1(θ)および第二の補正量D2(θ)による補正を行う(S14)。ここで、補正部182は、後退研削において、後退研削におけるクランクピンWaの撓み量εb(θ)による補正を行うのではなく、荒前進研削におけるクランクピンWaの撓み量εa(θ)による補正を行う。
このとき、後退研削制御部としての基本研削制御部181は、後退研削における位置指令値と後退研削におけるクランクピンWaの撓み量εb(θ)とに基づいて、砥石台14の位置を制御する。
後退研削における補正は、後退研削が終了するまでの間行う(S15:N)。後退研削が終了すると、図3に示したように、バックオフが開始され、その後に仕上前進研削が開始される。後退研削が終了し(S15:Y)、さらに仕上前進研削が開始されると(S16:Y)、補正部182は、第二の補正量D2(θ)による補正を行う(S17)。仕上前進研削における補正は、仕上前進研削が終了するまでの間行う(S18:N)。ここで、仕上前進研削中は荒前進研削中に比べて一般的に研削抵抗が小さいので、補正量も異なる。そのため、補正部182は、仕上研削を行っている際に、第一の補正量D1(θ)による補正を行わない。そして、仕上前進研削が終了すると(S18:Y)、補正部182は補正処理を終了する。
(6.第一の補正量D1(θ)の算出)
次に、補正部182による第一の補正量D1(θ)の算出手順について、図7〜図13を参照しながら説明する。ここで、荒前進研削において、クランクピンWaは、砥石車15から受ける切込方向の押付力Fa(θ)によって、切込方向(図2A〜図2Dの左方向)に撓み変形する。ここで、荒前進研削における押付力Fa(θ)は、式(1)に示すように、研削抵抗Fna(θ)とクーラント動圧Fp(θ)との総和値となる。つまり、クランクピンWaの撓み量εa(θ)は、押付力Fa(θ)による撓み量である。
[数1]
Fa(θ) = Fna(θ) + Fp(θ) ・・・ (1)
第一の補正量D1(θ)は、この撓み量εa(θ)に基づいて決定される。ここで、撓み量εa(θ)は、クランクシャフトWの位相θに応じて異なる。そのため、第一の補正量D1(θ)は、クランクシャフトWの位相θに応じて異なる値に設定されている。
まずは、荒前進研削における研削抵抗Fna(θ)を算出する。研削抵抗Fna(θ)は、式(2)に示すように、研削能率Z、砥石車15の切れ味係数α、および、研削幅に相当する係数H(以下、「研削幅係数H」と称する)の乗算により表される。研削幅係数Hは、例えば、最小幅を1とした場合の比を表す。すなわち、研削幅が全周に亘って同一の場合には、Hは1となる。
[数2]
Fna = Z × α × H ・・・ (2)
そこで、図7に示すように、荒前進研削の際に、実際の切込量dを元に実際の研削能率Zrealを取得すると共に(図7の符号111)、力センサ16の検出値を元に実際の押付力Frealを取得する(図7の符号112)。また、研削幅係数Hは、クランクピンWaおよび砥石車15の形状から導き出すことができる。切込量dは、研削条件から導き出すことができる。なお、切込量dは、定寸装置17の信号を用いて演算により求めてもよい。
図8に示すように、研削能率Zrealを横軸とし、押付力Frealを縦軸として、複数の場合における点をプロットする。この場合に、式(1)(2)の関係より、点群の最小二乗近似直線の傾きが、切れ味係数αと研削幅係数Hとの乗算値となる。すなわち、図8の近似直線の傾きを求めて、研削幅係数Hで除算することにより、切れ味係数αを算出できる(図7の符号113)。
切れ味係数αは、砥石車15によるクランクピンWaへの切込方向の押付力Faと研削能率Zとの関係を示す。切れ味係数αは、砥石車15の砥粒の状態によって変化する。そこで、クランクシャフトWを多数研削する際において、適宜、荒前進研削にて計測することで、切れ味係数αを更新する。
ここで、図2A〜図2Dに示すように、回転中心Oから研削点Pまでの距離は、位相θに応じて異なる。そのため、図9に示すように、研削点速度v(θ)は、位相θに応じて変化する。例えば、位相θが180°の場合には、図2Cに示すように研削点Pが最も回転中心Oから離れており、図9に示すように研削点速度v(180°)は最も大きな値となる。このようにして、研削点速度v(θ)は、クランクシャフトWの形状および研削条件から幾何学的に算出できる(図7の符号114)。
続いて、研削点速度v(θ)を用いて、理論的な研削能率Zlogical(θ)を算出する(図7の符号115)。研削能率Zlogical(θ)は、式(3)に示すように、研削点速度v(θ)と切込量dとを乗算することにより得ることができる。ただし、式(3)は、凹所Aによる影響分γ(θ)を考慮している。研削能率Zlogical(θ)は、図10に示すように、位相θに応じて変化する。図10において、位相θが180°付近において、研削能率Zlogical (θ)が急に低下している部分は、凹所Aの影響分γ(θ)による。
[数3]
Zlogical(θ) = d × v(θ) + γ(θ) ・・・ (3)
次に、研削抵抗Fna(θ)は、切れ味係数α、理論的な研削能率Zlogical(θ)および研削幅係数Hより、式(4)に従って算出する(図7の符号116)。式(4)は、式(2)におけるFnaおよびZを位相θの関数にしたものに相当する。研削抵抗Fna(θ)は、図11の二点鎖線にて示すように、位相θに応じて変化する。
[数4]
Fna(θ) = Zlogical(θ) × α × H ・・・ (4)
続いて、クーラント動圧Fp(θ)を算出する(図7の符号117)。クーラント動圧Fp(θ)は、研削抵抗Fna(θ)がゼロとなる状態、すなわちスパークアウト時における実際の押付力Freal(θ)に相当する。つまり、仕上前進研削の後に行うスパークアウトの際にクーラント動圧Fp(θ)を取得しても良いし、荒前進研削を開始する直前にスパークアウトを行って、このときにクーラント動圧Fp(θ)を取得しても良い。クーラント動圧Fp(θ)は、図11の破線に示すように、位相θに応じて異なる。
ここで、図2A〜図2Dに示すように、位相θが異なると、研削点Pは、クーラントノズル19の位置に対して異なる。そのため、位相θに応じて、クーラントの供給量が異なる。その結果、クーラント動圧Fp(θ)は、位相θに応じて異なる。例えば、図2Bおよび図11の破線に示すように、位相θが90°におけるクーラント動圧Fp(90°)は、最も小さくなる。一方、図2Dおよび図11の破線に示すように、位相θが270°におけるクーラント動圧Fp(θ)は、最も大きくなる。また、位相θが180°のときには、凹所Aの影響によって、前後の位相に比べてクーラント動圧Fp(180°)が小さくなっている。
研削抵抗Fna(θ)およびクーラント動圧Fp(θ)を得ることができたので、式(1)より、これらの和である押付力Fa(θ)を算出する(図7の符号118)。つまり、図11の太実線にて示すように、位相θに応じて異なる。図11より、位相θが250°付近が最も大きく、70°付近が最も小さくなる。また、位相θが180°前後では、凹所Aの影響により低下している。
続いて、図7に示すように、クランクシャフトWの形状から、クランクピンWa部分における切込方向の剛性K(θ)を算出する(図7の符号119)。これは、剛性K(θ)は、実測値に基づいて算出することもできるし、構造解析により取得することもできる。クランクピンWaの剛性K(θ)も、位相θに応じて異なる。
そして、押付力Fa(θ)および剛性K(θ)を用いて、押付力Fa(θ)によるクランクピンWaの撓み量εa(θ)(以下、総撓み量と称する)を式(5)に従って算出する(図7の符号120)。すなわち、総撓み量εa(θ)は、押付力Fa(θ)を剛性K(θ)により除算する。押付力Fa(θ)による総撓み量εa(θ)は、図12に示すように、位相θに応じて変化する。
[数5]
εa(θ) = Fa(θ) / K(θ) ・・・ (5)
そして、総撓み量εa(θ)が位相θに応じて異なることによって、クランクピンWaの真円度誤差が生じるおそれがある。そこで、総撓み量εa(θ)による真円度誤差をゼロにするための第一の補正量D1(θ)を算出する(図7の符号121)。つまり、総撓み量εa(θ)の位相θ毎の差をゼロとするように、第一の補正量D1(θ)が決定される。ここでは、第一の補正量D1(θ)は、図13に示すようにする。
荒前進研削において、補正部182がこのようにして決定された第一の補正量D1(θ)により補正することで、クーラント動圧Fp(θ)および研削能率Z(θ)が位相θに応じて異なることを原因とする研削誤差を低減することができる。つまり、荒前進研削を終了した時点において、クランクピンWaの真円度を高精度にすることができる。
(7.第二の補正量D2(θ)の算出)
次に、第二の補正量D2(θ)の算出手順について図14のフローチャートを参照して説明する。上述したように、第二の補正量D2(θ)による補正は、荒前進研削、後退研削および仕上前進研削において行われる。
第二の補正量D2(θ)は、実際に研削終了したクランクピンWaの真円度を計測して(S21)、真円度誤差を取得する。この真円度誤差をゼロにするような第二の補正量D2(θ)を算出する(S22)。算出した第二の補正量D2(θ)を用いて、次回以降にクランクピンWaを研削する際に補正することで、荒前進研削および仕上前進研削におけるクランクピンWaの真円度をより高精度にすることができる。
(8.後退研削制御部による基本制御)
次に、後退研削において、後退研削制御部としての基本研削制御部181による基本制御について、図15〜図22を参照しながら説明する。上述したように、後退研削制御部としての基本研削制御部181は、後退研削における位置指令値としての基本後退量ΔXmaster(θ)に加えて、後退研削における総撓み量εb(θ)を考慮して、砥石台14の位置を制御する。
そこで、後退研削制御部としての基本研削制御部181は、以下のようにして、各位相θにおける後退量ΔX(θ)を算出する。まずは、基本研削制御部181は、後退研削の開始から終了までにおいて、位相θに応じた目標切込量d(θ)を取得する(図15の符号211)。目標切込量d(θ)は、図16に示すように、後退研削の開始時の位相θ1sにおける切込量dを100%とした場合に、後退研削の終了時の位相θ1eにおける切込量dを0%とし、開始から終了に至るまで位相θに対して線形で減少する。これは、図4Bを参照して説明したように、後退研削の開始時T1sにおいて、クランクピンWaの外周面の半径の差は、クランクピンWaの位相に対してほぼ線形の関係にあるためである。
また、基本研削制御部181は、荒前進研削における研削抵抗Fna(θ)を取得する(図15の符号212)。研削抵抗Fna(θ)は、荒前進研削において図7の符号116にて、既に算出されている。この研削抵抗Fna(θ)は、図17において、細線にて示すような挙動となる。
続いて、基本研削制御部181は、目標切込量d(θ)および荒前進研削における研削抵抗Fna(θ)に基づいて、後退研削における研削抵抗Fnb(θ)を推定する(図15の符号213)。ここで、図17に示すように、後退研削は、開始時の位相θ1sからクランクシャフトWが1回転したときの位相θ1eに終了するものとする。この場合、後退研削における研削抵抗Fnb(θ)は、図17の太線にて示すように、位相θ1sからθ1eまでの間、荒前進研削における研削抵抗Fna(θ)に対して、目標切込量d(θ)に応じた割合で減少する。なお、図17において、後退研削を開始する位相θ1sは、約50°程度としているが、開始位相θ1sは、図3に示すように、クランクピンWaの外径DtがDthに到達した時の位相となる。
続いて、基本研削制御部181は、クーラント動圧Fp(θ)を取得する(図15の符号214)。クーラント動圧Fp(θ)は、荒前進研削において図7の符号117にて、既に算出されている。このクーラント動圧Fp(θ)は、位相θ1sからθ1eまでの間、図18に示すような挙動となる。
続いて、基本研削制御部181は、後退研削における研削抵抗Fnb(θ)とクーラント動圧Fp(θ)との総和を、後退研削における押付力Fb(θ)として推定する(図15の符号215)。後退研削における押付力Fb(θ)は、図19の太線にて示すような挙動となる。図19では、荒前進研削における押付力Fa(θ)を細線にて図示している。図19に示すように、研削抵抗Fnb(θ)の減少分に応じて、押付力Fb(θ)が減少している。
そして、押付力Fb(θ)および剛性K(θ)を用いて、押付力Fb(θ)によるクランクピンWaの総撓み量εb(θ)を式(6)に従って推定する(図15の符号216)。すなわち、総撓み量εb(θ)は、押付力Fb(θ)を剛性K(θ)により除算する。押付力Fb(θ)による総撓み量εb(θ)は、図20の太実線にて示すように、位相θに応じて変化する。
[数6]
εb(θ) = Fb(θ) / K(θ) ・・・ (6)
また、基本研削制御部181は、荒前進研削における総撓み量εa(θ)を取得する(図15の符号217)。この総撓み量εa(θ)は、荒前進研削において図7の符号120にて、既に算出されている。この総撓み量εa(θ)は、図20の細線にて示すような挙動となる。
また、荒前進研削の終了時T0eにおける研削抵抗Fna(θ0e)による撓み量εna(θ0e)を算出する(図15の符号218)。図15の符号212にて取得した荒前進研削における研削抵抗Fna(θ)を、剛性K(θ)で除算することにより、研削抵抗Fna(θ)による撓み量εna(θ)を得ることができる。そして、位相θ0eのときの研削抵抗Fna(θ0e)による撓み量εna(θ0e)を算出する。
ここで、研削抵抗Fna(θ)による撓み量εna(θ)は、図20の細二点鎖線にて示すような挙動となる。つまり、この挙動(細二点鎖線)における位相θ0eの撓み量が、εna(θ0e)となる。この撓み量εna(θ0e)は、後退研削の開始時の位相θ1sにおける、研削抵抗Fnb(θ1s)による撓み量εnb(θ1s)と同一である。つまり、撓み量εna(θ0e)は、後退研削において研削抵抗Fnb(θ1s)による撓み量εnb(θ1s)として算出することもできる。
続いて、基本研削制御部181は、荒前進研削における総撓み量εa(θ)と後退研削における総撓み量εb(θ)との差Δεa-b(θ)を、式(7)に従って算出する(図15の符号219)。この撓み量差Δεa-b(θ)は、図21にて示すような挙動となる。
[数7]
Δεa-b(θ) = εa(θ)−εb(θ) ・・・ (7)
続いて、荒前進研削の終了時T0eにおける研削抵抗Fna(θ0e)による撓み量εna(θ0e)に基づいて、後退研削における位置指令値としての基本後退量ΔXmaster(θ)を算出する(図15の符号220)。基本後退量ΔXmaster(θ)は、図22の二点鎖線にて示すように、後退研削の開始時の位相θ1sにおいてゼロとし、終了時の位相θ1eにおいて撓み量εna(θ0e)(図20に示す)となるように、線形で増加する。
続いて、基本後退量ΔXmaster(θ)に総撓み量差Δεa-b(θ)を加算することにより、後退研削における後退量ΔX(θ)を算出する(図15の符号221)。算出された後退量ΔX(θ)は、図22の太実線にて示すような挙動となる。そして、基本研削制御部181は、算出された後退量ΔX(θ)に基づいて、駆動装置としての駆動モータ14aを駆動する。つまり、駆動モータ14aが後退量ΔX(θ)と第一の補正量D1(θ)とに基づいて駆動されることによって、クランクピンWaに対して後退研削が行われる。
(9.まとめ)
以上説明したように、上記研削盤は、荒前進研削における総撓み量εa(θ)と後退研削における総撓み量εb(θ)との差Δεa-b(θ)を考慮して、後退研削を行っている。つまり、研削盤は、後退研削における総撓み量εb(θ)を考慮して、後退研削を行っている。従って、後退研削におけるクランクピンWaの真円度を高精度にすることができる。ここで、後退研削は、クランクシャフトWが1回転または数回転の間に行うものである。そのため、後退研削を行っている際に、後退研削における総撓み量εb(θ)を取得することは容易ではない。
そこで、上記のように、後退研削における総撓み量εb(θ)は、荒前進研削における総撓み量εa(θ)に基づいて推定している。ここで、図20に示したように、荒前進研削における総撓み量εa(θ)と後退研削における総撓み量εb(θ)とは相違するが、図16〜図20を参照して説明したように、両者に相関があることが分かる。そのため、後退研削における総撓み量εb(θ)は、荒前進研削における総撓み量εa(θ)に基づいて推定することができる。
さらに、荒前進研削における総撓み量εa(θ)は、荒前進研削を行っている最中に取得した研削力Fa(θ)から得ることができる(図7の符号120)。従って、後退研削における総撓み量εb(θ)は、荒前進研削における総撓み量εa(θ)に基づいて推定することによって、確実に得ることができる。
また、後退研削においては、図16に示すように、その間に切込量を徐々に減少させていく。この切込量に応じて、後退研削における総撓み量εb(θ)は変化する。つまり、後退研削における総撓み量εb(θ)は、切込量に依存する。ここで、切込量は、目標切込量d(θ)と、後退研削の開始時の位相θ1sにおける研削抵抗Fnb(θ1s)による撓み量εnb(θ1s)とにより決定される。
そこで、後退研削における総撓み量εb(θ)は、前進研削における総撓み量εa(θ)の他に、前進研削の終了時の位相θ0eにおける研削抵抗Fna(θ0e)と後退研削における目標切込量d(θ)とを用いることで、確実に推定できる。なお、後退研削の開始時の位相θ1sにおける研削抵抗Fnb(θ1s)と、荒前進研削の終了時の位相θ0eにおける研削抵抗Fna(θ0e)とは、同一である。
さらに、後退研削における補正部182による補正は、荒前進研削と同様に、荒前進研削における総撓み量εa(θ)に基づいて行われる。従って、補正部182による補正処理は、後退研削と荒前進研削とにおいて同様の処理とすることができる。
ただし、後退研削において、荒前進研削における総撓み量εa(θ)による補正を行うと、過剰な補正を行うことになる。そこで、後退研削制御部としての基本研削制御部181が、位置指令値としての基本後退量ΔXmaster(θ)に加えて、撓み量差Δεa-b(θ)を考慮した位置制御を行う。このようにすることで、確実に、後退研削において、クランクピンWaを高精度な真円度とすることができる。
<第二実施形態>
次に、第二実施形態について説明する。本実施形態は、上記実施形態に対して、後退研削における制御装置18の処理が異なる。後退研削制御部としての基本研削制御部181の処理は、図23に示すように行われる。
まず、荒前進研削の終了時の位相θ0eにおける研削抵抗Fna(θ0e)による撓み量εna(θ0e)を算出する(S41)。この撓み量εna(θ0e)は、上記実施形態における図15の符号219にて算出される。続いて、この撓み量εna(θ0e)と、図16に示す目標切込量d(θ)とに基づいて、後退研削における位置指令値としての基本後退量ΔXmaster(θ)を算出する(S42)。この基本後退量ΔXmaster(θ)は、図24に示すような挙動となる。そして、後退研削制御部としての基本研削制御部181は、この基本後退量ΔXmaster(θ)に基づいて、駆動装置としての駆動モータ14aを駆動する。
補正部182は、後退研削において、図25に示す処理を行う。図25におけるS51からS53までと、S55からS58までは、図6のS11からS13までと、S15からS18までと同様の処理である。つまり、図25におけるS54が、図6のS14と相違する。
荒前進研削が終了すると(S53:Y)、補正部182は、荒前進研削にて用いた第一の補正量D1(θ)および第二の補正量D2(θ)ではなく、第三の補正量D3(θ)および第二の補正量D2(θ)による補正を行う(S54)。第三の補正量D3(θ)については、後退研削による押付力Fb(θ)に応じたクランクピンWaの総撓み量εb(θ)から算出される補正量である。
上記実施形態において、第一の補正量D1(θ)は、荒前進研削における総撓み量εa(θ)(図12に示す)に基づいて算出される。具体的には、第一の補正量D1(θ)は、荒前進研削における総撓み量εa(θ)の位相θ毎の差をゼロとするように決定される。ここでは、図13に示すように、第一の補正量D1(θ)は、図12に示す総撓み量εa(θ)を上下反転させた関係となる。
そして、本実施形態における第三の補正量D3(θ)は、後退研削における総撓み量εb(θ)を上下反転させた関係となるようにする。ここで、後退研削における総撓み量εb(θ)は、図15の符号216にて算出され、図20の太実線に示す挙動となる。そこで、図26の太実線に示すように、第三の補正量D3(θ)は、図20に示す総撓み量εb(θ)を上下反転させた関係となるようにする。
さらに、補正部182は、荒前進研削における補正に引き続き、後退研削における補正を行う。そこで、補正部182は、研削工程が切り替えられる瞬間の補正値を同一とする。つまり、切り替えられる位相θ1s(=θ0e)において、図26の細実線にて示す荒前進研削における第一の補正量D1(θ0e)と、第三の補正量D3(θ1s)とを一致させる。このようにすることで、研削工程が切り替えられることに伴って補正部182による補正処理が切り替わる際に、補正値が急激に変化することを防止できる。
以上のように、後退研削における補正部182による補正は、荒前進研削における補正部182による補正とは異なり、後退研削における総撓み量εb(θ)に基づいて行われる。このようにすることで、後退研削において、確実にクランクピンWaを高精度な真円度にすることができる。この場合、後退研削制御部としての基本研削制御部181は、基本後退量ΔXmaster(θ)に基づいて制御することになる。
1:研削盤、 12:主軸、 12a:駆動モータ、 12b:回転検出器、 14:砥石台、 14a:駆動モータ、 15:砥石車、 18:制御装置、 181:基本研削制御部(前進研削制御部、後退研削制御部)、 182:補正部、 216:撓み量εb(θ)の推定手段、 d(θ):目標切込量、 D1(θ):第一の補正量、 D3(θ):第三の補正量、 Fna(θ):荒前進研削における研削抵抗、 Fnb(θ):後退研削における研削抵抗、 P:研削点、 W:クランクシャフト、 Wa:クランクピン、 ΔX(θ):後退量、 ΔXmaster(θ):基本後退量、 Δεa-b(θ):撓み量差、 εa(θ):前進研削における撓み量、 εb(θ):後退研削における撓み量、 θ0e:荒前進研削の終了時の位相、 θ1s:後退研削の開始時の位相、 θ1e:後退研削の終了時の位相

Claims (5)

  1. 砥石車を被加工物に向かって相対的に前進させる前進研削を行い、前記前進研削に続いて砥石車を被加工物から相対的に後退させる後退研削を行う研削盤であって、
    前記被加工物の位相θに応じた前記後退研削における前記被加工物の撓み量εb(θ)を推定し、
    前記後退研削における撓み量εb(θ)に基づいて前記後退研削を行う、研削盤。
  2. 前記後退研削における撓み量εb(θ)は、前記被加工物の位相θに応じた前記前進研削における前記被加工物の撓み量εa(θ)と、前記前進研削の終了時の位相θ0eにおける研削抵抗Fna(θ0e)と、前記後退研削の開始から終了までの目標切込量d(θ)とに基づいて推定される、請求項1の研削盤。
  3. 前記研削盤は、
    前記前進研削の際に位置指令値に基づいて前記被加工物に対する前記砥石車の位置を制御する前進研削制御部と、
    前記後退研削の際に位置指令値としての基本後退量ΔXmaster(θ)と、前記被加工物の位相θに応じた前記前進研削における前記被加工物の撓み量εa(θ)と前記後退研削における撓み量εb(θ)との差Δεa-b(θ)とに基づいて、前記被加工物に対する前記砥石車の位置を制御する後退研削制御部と、
    前記前進研削の際に前記前進研削における撓み量εa(θ)に基づいて前記前進研削制御部による制御に対する補正を行うと共に、前記後退研削の際に前記前進研削における撓み量εa(θ)に基づいて前記後退研削制御部による制御に対する補正を行う補正部と、
    を備える、請求項1または2の研削盤。
  4. 前記研削盤は、
    前記前進研削の際に位置指令値に基づいて前記被加工物に対する前記砥石車の位置を制御する前進研削制御部と、
    前記後退研削の際に位置指令値としての基本後退量ΔXmaster(θ)に基づいて前記被加工物に対する前記砥石車の位置を制御する後退研削制御部と、
    前記前進研削の際に前記被加工物の位相θに応じた前記前進研削における前記被加工物の撓み量εa(θ)に基づいて前記前進研削制御部による制御に対する補正を行うと共に、前記後退研削の際に前記後退研削における撓み量εb(θ)に基づいて前記後退研削制御部による制御に対する補正を行う補正部と、
    を備える、請求項1または2の研削盤。
  5. 砥石車を被加工物に向かって相対的に前進させる前進研削を行い、前記前進研削に続いて砥石車を被加工物から相対的に後退させる後退研削を行う研削方法であって、
    前記被加工物の位相θに応じた前記後退研削における前記被加工物の撓み量εb(θ)を推定し、
    前記後退研削における撓み量εb(θ)に基づいて前記後退研削を行う、研削方法。
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