JP3664263B2 - 布状物 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、紙おむつ、生理用ナプキン等の衛生材料、ガーゼ、包帯等の医療用材料、ふきん等の繊維材料、及び各種衣料用材料等に好適に用いることができる布状物に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリプロピレン等のポリオレフィンを素材とする不織布等は、紙おむつ、生理用ナプキン等の衛生材料の表皮材、各種医療材料等多くの分野で広く用いられている。これらの不織布等は、最近では特に低目付での需要が増大している(特公昭63−282351号)。
また、従来の長繊維不織布の場合、嵩高性と弾性回復性の面で必ずしも満足すべきものではなかった。
このような問題を解決する手段として、ポリプロピレン系ポリマーを芯成分とし、ポリエチレン系ポリマーを鞘成分とした複合構造を有する不織布(特公平1−60577号)や、中空構造を有する不織布(特開平3−241055号および特開平3−287848号)が開示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、これらの不織布は、鞘成分として、高密度ポリエチレン等を用いているため、熱接着性が必ずしも十分でなく、また、芯や鞘の構成成分であるポリエチレン系ポリマー、及びポリプロピレン系ポリマーは、それ自体の弾性回復性が小さいため伸縮性に乏しいという問題があった。さらに、鞘及び芯を有する複合構造であるため製造が複雑なものとならざるを得ず、製造コストの上昇を避け得なかった。
本発明は上述の問題に鑑みなされたものであって、弾性回復性、伸縮性、柔軟性に優れ、かつ低温で熱接着が可能であるとともに、製造が簡易で、製造コストの低減を図ることができる不織布等の布状物を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明によって、α−オレフィンと環状オレフィンとを付加重合してなる共重合体及びこの水素添加物からなる群から選ばれる、引張弾性率が2,000Kg/cm2未満であり、ガラス転移温度(Tg)が50℃以下である、環状オレフィン系樹脂を用いて形成した繊維からなることを特徴とする布状物が提供される。
【0006】
また、前記環状オレフィンが下記式[X]で表わされる繰り返し単位を与えるものであることを特徴とする布状物が提供される。
【化2】
(式[X]中、Rb〜Rmは、それぞれ水素原子、炭素数1〜20の炭化水素基又はハロゲン原子、酸素原子もしくは窒素原子を含む置換基を示し、nは0以上の整数を示す。Rj又はRkとRl又はRmとは互いに環を形成してもよい。また、Rb〜Rmはそれぞれ互いに同一でも異なっていてもよい。)
【0007】
さらに、前記繊維が、前記環状オレフィン系樹脂と、他の熱可塑性樹脂とからなる組成物で形成されたものであることを特徴とする布状物が提供される。
【0008】
以下、本発明を具体的に説明する。本発明の布状物は、環状オレフィン系樹脂、又はこの樹脂と他の熱可塑性樹脂とからなる組成物で形成された繊維から形成される。
1.環状オレフィン系樹脂
本発明に用いられる環状オレフィン系樹脂は、前述のようにα−オレフィンと環状オレフィンとを付加重合してなる共重合体及びこの水素添加物からなる群から選ばれる。
(i)α−オレフィン
本発明に用いられる環状オレフィン系樹脂の製造に用いられるα−オレフィンとしては特に制限はなく、エチレン、プロピレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−エイコセン等を挙げることができる。中でも、エチレンもしくはプロピレン、またはエチレンとプロピレンが好適である。
( ii )環状オレフィン
本発明に用いられる環状オレフィンとしては、特に制限はないが、例えば前記一般式[X]で表わされる繰り返し単位を与えるものを挙げることができる。
【0009】
上記一般式[X]で表わされる繰り返し単位において、Rb〜Rmは、それぞれ水素原子、炭素数1〜20の炭化水素基、又はハロゲン原子,酸素原子若しくは窒素原子を含む置換基を示している。
ここで、炭素数1〜20の炭化水素基として、具体的には、例えばメチル基,エチル基,n−プロピル基,イソプロピル基,n−ブチル基,イソブチル基,t−ブチル基,ヘキシル基等の炭素数1〜20のアルキル基、フェニル基,トリル基,ベンジル基等の炭素数6〜20のアリール基,アルキルアリール基又はアリールアルキル基を挙げることができる。
【0010】
また、ハロゲン原子を含む置換基として具体的には、例えば、フッ素,塩素,臭素,ヨウ素等のハロゲン基、クロロメチル基,ブロモメチル基,クロロエチル基等の炭素数1〜20のハロゲン置換アルキル基等を挙げることができる。
酸素原子を含む置換基として具体的には、例えば、メトキシ基,エトキシ基,プロポキシ基,フェノキシ基等の炭素数1〜20のアルコキシ基、メトキシカルボニル基,エトキシカルボニル基等の炭素数1〜20のアルコキシカルボニル基等を挙げることができる。
窒素原子を含む置換基として具体的には、例えば、ジメチルアミノ基,ジエチルアミノ基等の炭素数1〜20のアルキルアミノ基やシアノ基等を挙げることができる。
【0011】
一般式[X]で表わされる繰り返し単位を与える環状オレフィンの具体例としては、例えば、ノルボルネン、5−メチルノルボルネン、5−エチルノルボルネン、5−プロピルノルボルネン、5,6−ジメチルノルボルネン、1−メチルノルボルネン、7−メチルノルボルネン、5,5,6−トリメチルノルボルネン、5−フェニルノルボルネン、5−ベンジルノルボルネン、1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2−メチル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2−エチル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2,3−ジメチル−1、4、5、8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2−ヘキシル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2−フルオロ−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、1,5−ジメチル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2−シクロヘキシル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2,3−ジクロロ−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2−イソブチル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、1,2−ジヒドロジシクロペンタジエン、5−クロロノルボルネン、5,5−ジクロロノルボルネン、5−フルオロノルボルネン、5,5,6−トリフルオロ−6−トリフルオロメチルノルボルネン、5−クロロメチルノルボルネン、5−メトキシノルボルネン、5,6−ジカルボキシルノルボルネンアンハイドライド、5−ジメチルアミノノルボルネン、5−シアノノルボルネン等を挙げることができる。
【0012】
また、下記式[Y]で表わされる繰り返し単位を与えるものであってもよい。
【0013】
【化3】
(式中、lは0または1の整数であり、mおよびnは、0、1または2であり、R1〜R15はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基またはアルコキシ基である。)
【0014】
前記式[Y]で表わされる繰り返し単位を与える環状オレフィンの具体例としては、
5−メチル−5−フェニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−トリル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−(エチルフェニル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−(イソプロピルフェニル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
1,4−メタノ−1,1a,4,4a−テトラヒドロフルオレン、
1,4−メタノ−1,4,4a,5,10,10a−ヘキサヒドロアントラセン、
シクロペンタジエン−アセナフチレン付加物、
5−(α−ナフチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−(アントラセニル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
を挙げることができる。
【0016】
▲3▼α−オレフィンと環状オレフィンとの共重合体
本発明で用いられる繊維を形成するための、環状オレフィン系樹脂に用いられるα−オレフィンと環状オレフィンとを付加重合してなる共重合体の、α−オレフィンと環状オレフィンとの組成割合は、モル%で、80:20〜99.9:0.1である。α−オレフィンが80モル%未満であると、Tg、弾性率が高くなり、得られる不織布等の弾性回復性や柔軟性が低下する。また、環状オレフィンが0.1モル%未満であると共重合体の結晶性が高くなり、弾性回復性等の面で環状オレフィンを導入した効果が不十分となる。
さらに好ましくは、モル比で、82:18〜99.5:0.5で、中でも、モル比で85:15〜98:2が最も好ましい。
【0017】
なお、エチレンの他に、下記一般式[z]
【化4】
(Rpは炭素数1〜20の炭化水素基、好ましくは、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ブテン、1−オクテンである。)で示されるα−オレフィンとの二種類を用いる場合、その組成割合は、エチレン5〜99.8モル%、及び一般式[z]のα−オレフィン75〜0.1モル%、並びに環状オレフィン20〜0.1モル%とすることが好ましい。さらに好ましくは、エチレン32〜99モル%、及びα−オレフィン[z]50〜0.5モル%、並びに環状オレフィン18〜0.5モル%である。中でも、エチレン55〜98モル%、及びα−オレフィン[z]30〜1モル%、並びに環状オレフィン15〜1モル%であることが最も好ましい。なお、この場合、エチレンとα−オレフィン[z]は、共重合体の全体の80〜99.9モル%であることが好ましい。
【0018】
α−オレフィンと環状オレフィンとを付加重合する方法は、下記化合物(A)及び(B)を主成分とする触媒又は下記化合物(A)、(B)及び(C)を主成分とする触媒を用いてα−オレフィンと環状オレフィンとの共重合を行なうことにより、効率的に製造することができる。
【0019】
(A)一般式(I)〜(IV)で示される遷移金属化合物
(B)遷移金属化合物(A)、又はその派生物からからイオン性錯体を形成しうる化合物
(C)有機アルミニウム化合物
【0020】
CpM1R1 aR2 bR3 c …(I)
Cp2M1R1 aR2 b …(II)
(Cp−Ae−Cp)M1R1 aR2 b …(III)
M1R1 aR2 bR3 cR4 d …(IV)
【0021】
[(I)〜(IV)式中、M1 はTi,Zr又はHf原子を示し、Cpはシクロペンタジエニル基,置換シクロペンタジエニル基,インデニル基,置換インデニル基,テトラヒドロインデニル基,置換テトラヒドロインデニル基,フルオレニル基又は置換フルオレニル基等の環状不飽和炭化水素基又は鎖状不飽和炭化水素基を示す。R1 ,R2 ,R3及びR4はそれぞれそれぞれσ結合性の配位子,キレート性の配位子,ルイス塩基等の配位子を示し、σ結合性の配位子としては、具体的に水素原子,酸素原子,ハロゲン原子,炭素数1〜20のアルキル基,炭素数1〜20のアルコキシ基,炭素数6〜20のアリール基,アルキルアリール基若しくはアリールアルキル基,炭素数1〜20のアシルオキシ基,アリル基,置換アリル基,けい素原子を含む置換基等を例示でき、またキレート性の配位子としてはアセチルアセトナート基,置換アセチルアセトナート基等を例示できる。Aは共有結合による架橋を示す。a,b,c及びdはそれぞれ0〜4の整数、eは0〜6の整数を示す。R1 ,R2 ,R3及びR4はその2以上が互いに結合して環を形成していてもよい。上記Cpが置換基を有する場合には、当該置換基は炭素数1〜20のアルキル基が好ましい。(II)式及び(III)式において、2つのCpは同一のものであってもよく、互いに異なるものであってもよい。]
【0022】
上記(I)〜(III)式における置換シクロペンタジエニル基としては、例えば、メチルシクロペンタジエニル基、エチルシクロペンタジエニル基、イソプロピルシクロペンタジエニル基、1,2−ジメチルシクロペンタジエニル基、テトラメチルシクロペンタジエニル基、1,3−ジメチルシクロペンタジエニル基、1,2,3−トリメチルシクロペンタジエニル基、1,2,4−トリメチルシクロペンタジエニル基、ペンタメチルシクロペンタジエニル基、トリメチルシリルシクロペンタジエニル基等を挙げることができる。また、上記(I)〜(IV)式におけるR1〜R4の具体例としては、例えば、ハロゲン原子としてフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子;炭素数1〜20のアルキル基としてメチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基;炭素数1〜20のアルコキシ基としてメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、フェノキシ基;炭素数6〜20のアリール基、アルキルアリール基若しくはアリールアルキル基としてフェニル基、トリル基、キシリル基、ベンジル基;炭素数1〜20のアシルオキシ基としてヘプタデシルカルボニルオキシ基;けい素原子を含む置換基としてトリメチルシリル基、(トリメチルシリル)メチル基:ルイス塩基としてジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類、テトラヒドロチオフェン等のチオエーテル類、エチルベンゾエート等のエステル類、アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、N,N−ジメチルアニリン、ピリジン、2,2’−ビピリジン、フェナントロリン等のアミン類、トリエチルホスフィン、トリフェニルホスフィン等のホスフィン類;鎖状不飽和炭化水素としてエチレン、ブタジエン、1−ペンテン、イソプレン、ペンタジエン、1−ヘキセン及びこれらの誘導体;環状不飽和炭化水素としてベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘプタトリエン、シクロオクタジエン、シクロオクタトリエン、シクロオクタテトラエン及びこれらの誘導体等を挙げることができる。また、上記(III)式におけるAの共有結合による架橋としては、例えばメチレン架橋、ジメチルメチレン架橋、エチレン架橋、1,1’−シクロヘキシレン架橋、ジメチルシリレン架橋、ジメチルゲルミレン架橋、ジメチルスタニレン架橋等を挙げることができる。
【0023】
このような化合物として、例えば下記のもの及びこれら化合物のジルコニウムをチタニウム又はハフニウムで置換した化合物を挙げることができる。
( I )式の化合物
(ペンタメチルシクロペンタジエニル)トリメチルジルコニウム、
(ペンタメチルシクロペンタジエニル)トリフェニルジルコニウム、
(ペンタメチルシクロペンタジエニル)トリベンジルジルコニウム、
(ペンタメチルシクロペンタジエニル)トリクロロジルコニウム、
(ペンタメチルシクロペンタジエニル)トリメトキシジルコニウム、
(シクロペンタジエニル)トリメチルジルコニウム、
(シクロペンタジエニル)トリフェニルジルコニウム、
(シクロペンタジエニル)トリベンジルジルコニウム、
(シクロペンタジエニル)トリクロロジルコニウム、
(シクロペンタジエニル)トリメトキシジルコニウム、
(シクロペンタジエニル)ジメチル(メトキシ)ジルコニウム、
(メチルシクロペンタジエニル)トリメチルジルコニウム、
(メチルシクロペンタジエニル)トリフェニルジルコニウム、
(メチルシクロペンタジエニル)トリベンジルジルコニウム、
(メチルシクロペンタジエニル)トリクロロジルコニウム、
(メチルシクロペンタジエニル)ジメチル(メトキシ)ジルコニウム、
(ジメチルシクロペンタジエニル)トリクロロジルコニウム、
(トリメチルシクロペンタジエニル)トリクロロジルコニウム、
(トリメチルシリルシクロペンタジエニル)トリメチルジルコニウム、
(テトラメチルシクロペンタジエニル)トリクロロジルコニウム、
【0024】
( II )式の化合物
ビス(シクロペンタジエニル)ジメチルジルコニウム、
ビス(シクロペンタジエニル)ジフェニルジルコニウム、
ビス(シクロペンタジエニル)ジエチルジルコニウム、
ビス(シクロペンタジエニル)ジベンジルジルコニウム、
ビス(シクロペンタジエニル)ジメトキシジルコニウム、
ビス(シクロペンタジエニル)ジクロロジルコニウム、
ビス(シクロペンタジエニル)ジヒドリドジルコニウム、
ビス(シクロペンタジエニル)モノクロロモノヒドリドジルコニウム、
ビス(メチルシクロペンタジエニル)ジメチルジルコニウム、
ビス(メチルシクロペンタジエニル)ジクロロジルコニウム、
ビス(メチルシクロペンタジエニル)ジベンジルジルコニウム、
ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ジメチルジルコニウム、
ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ジクロロジルコニウム、
ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ジベンジルジルコニウム、
ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)クロロメチルジルコニウム、
ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ヒドリドメチルジルコニウム、
(シクロペンタジエニル)(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ジクロロジルコニウム、
【0025】
( III )式の化合物
エチレンビス(インデニル)ジメチルジルコニウム、
エチレンビス(インデニル)ジクロロジルコニウム、
エチレンビス(テトラヒドロインデニル)ジメチルジルコニウム、
エチレンビス(テトラヒドロインデニル)ジクロロジルコニウム、
ジメチルシリレンビス(シクロペンタジエニル)ジメチルジルコニウム、
ジメチルシリレンビス(シクロペンタジエニル)ジクロロジルコニウム、
イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(9−フルオレニル)ジメチルジルコニウム、
イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(9−フルオレニル)ジクロロジルコニウム、
[フェニル(メチル)メチレン](9−フルオレニル)(シクロペンタジエニル)ジメチルジルコニウム、
ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(9−フルオレニル)ジメチルジルコニウム、
エチレン(9−フルオレニル)(シクロペンタジエニル)ジメチルジルコニウム、
シクロヘキシリデン(9−フルオレニル)(シクロペンタジエニル)ジメチルジルコニウム、
シクロペンチリデン(9−フルオレニル)(シクロペンタジエニル)ジメチルジルコニウム、
シクロブチリデン(9−フルオレニル)(シクロペンタジエニル)ジメチルジルコニウム、
ジメチルシリレン(9−フルオレニル)(シクロペンタジエニル)ジメチルジルコニウム、
ジメチルシリレンビス(2,3,5−トリメチルシクロペンタジエニル)ジクロロジルコニウム、
ジメチルシリレンビス(2,3,5−トリメチルシクロペンタジエニル)ジメチルジルコニウム、
ジメチルシリレンスビス(インデニル)ジクロロジルコニウム
【0026】
上記一般式(I),(II),(III)で示されるシクロペンタジエニル化合物以外の化合物の例としては、前記(IV)式の化合物が挙げられ、例えば下記化合物あるいはこれらのジルコニウムをハフニウム、チタニウムに置き換えた化合物等のアルキル基、アルコキシ基及びハロゲン原子の一種又は二種以上を持つジルコニウム化合物、ハフニウム化合物、チタニウム化合物を挙げることができる。
テトラメチルジルコニウム、
テトラベンジルジルコニウム、
テトラメトキシジルコニウム、
テトラエトキシジルコニウム、
テトラブトキシジルコニウム、
テトラフェノキシジルコニウム、
テトラ(2−エチルヘキシロキシ)ジルコニウム、
テトラクロロジルコニウム、
テトラブロモジルコニウム、
ブトキシトリクロロジルコニウム、
ジブトキシジクロロジルコニウム、
ビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノキシ)ジメチルジルコニウム、
ビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノキシ)ジクロロジルコニウム、
ジルコニウムテトラキス(アセチルアセトナート)、
【0031】
また、遷移金属化合物として、下記一般式[w]で示すものを挙げることができる。
【化5】
[式中、Rqは水素原子、炭素数1〜20の炭化水素基であり、Yaは−O−、−S−、−NRs−、−PRs−、またはORs、SRs、NRs 2、PRs 2から選ばれた中性の2個の原子の供与体リガンドであり、M1は周期律表IVB族から選ばれる元素であり、Zaは、SiRs 2、CRs 2、SiRs 2−SiRs 2、CRs 2−CRs 2、CRs=CRs、またはGeRs 2、BRs、BRs 2、である。
Rsは水素原子、炭素数1〜20の炭化水素基、ハロゲン原子、酸素もしくは窒素もしくはケイ素原子を含む置換基、および20個までの非水素原子をもつそれらの組合せから選ばれた部分であるか、あるいはYa,ZaまたはYaとZaの双方からの2個またはそれ以上のRs基は縮合環を形成する。]
【0032】
化合物(B)としては、必ずしも制限されないが、遷移金属化合物(A)、又はその派生物からカチオン種を形成し得る化合物であればいずれのものでも使用できる。たとえば、遷移金属化合物(A)又はその派生物からイオン性錯体を形成しうるイオン性化合物(B−1)、具体的にはカチオンと複数の基が元素に結合したアニオンとからなる化合物、特にカチオンと複数の基が元素に結合したアニオンとからなる配位錯化合物を好適に使用することができる。このようなカチオンと複数の基が元素に結合したアニオンとからなる化合物としては、下記式(V)あるいは(VI)で示される化合物を好適に使用することができる。
([L1−R7]k+)p([M3Z1Z2…Zn](n-m)-)q …(V)
([L2]k+)p([M4Z1Z2…Zn](n-m)-)q …(VI)
(但し、L2 はM5,R8R9M6,R10 3C又はR11M6である)
【0033】
[(V),(VI)式中、L1 はルイス塩基、M3及びM4はそれぞれ周期律表のVB族,VIB族,VIIB族,VIII族,IB族,IIB族,IIIA族,IVA族及びVA族から選ばれる元素、好ましくは、IIIA族,IVA族及びVA族から選ばれる元素、M5及びM6はそれぞれ周期律表のIIIB族,IVB族,VB族,VIB族,VIIB族,VIII族,IA族,IB族,IIA族,IIB族及びVIIA族から選ばれる元素、Z1〜Zn はそれぞれ水素原子,ジアルキルアミノ基,炭素数1〜20のアルコキシ基,炭素数6〜20のアリールオキシ基,炭素数1〜20のアルキル基,炭素数6〜20のアリール基,アルキルアリール基,アリールアルキル基,炭素数1〜20のハロゲン置換炭化水素基,炭素数1〜20のアシルオキシ基,有機メタロイド基又はハロゲン原子を示し、Z1〜Znはその2以上が互いに結合して環を形成していてもよい。R7は水素原子,炭素数1〜20のアルキル基,炭素数6〜20のアリール基,アルキルアリール基又はアリールアルキル基を示し、R8及びR9はそれぞれシクロペンタジエニル基,置換シクロペンタジエニル基,インデニル基又はフルオレニル基、R10は炭素数1〜20のアルキル基,アリール基,アルキルアリール基又はアリールアルキル基をを示す。R11はテトラフェニルポルフィリン、フタロシアニン等の大環状配位子を示す。mはM3 ,M4の原子価で1〜7の整数、nは2〜8の整数、kは[L1−R7],[L2]のイオン価数で1〜7の整数、pは1以上の整数、q=(p×k)/(n−m)である。]
【0034】
上記ルイス塩基の具体例としては、アンモニア、メチルアミン、アニリン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、N−メチルアニリン、ジフェニルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、N,N−ジメチルアニリン、メチルジフェニルアミン、ピリジン、p−ブロモ−N,N−ジメチルアニリン、p−ニトロ−N,N−ジメチルアニリン等のアミン類、トリエチルフォスフィン、トリフェニルフォスフィン、ジフェニルフォスフィン等のフォスフィン類、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、ジエチルチオエーテル、テトラヒドロチオフェン等のチオエーテル類、エチルベンゾエート等のエステル類等を挙げることができる。M3 及びM4 の具体例としてはB,Al,Si,P,As,Sb等,好ましくはB又はP、M5 の具体例としてはLi,Na,Ag,Cu,Br,I,I3 等,M6 の具体例としてはMn,Fe,Co,Ni,Zn等を挙げることができる。
【0035】
Z1 〜Zn の具体例としては、例えば、ジアルキルアミノ基としてジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基;炭素数1〜20のアルコキシ基としてメトキシ基、エトキシ基、n−ブトキシ基;炭素数6〜20のアリールオキシ基としてフェノキシ基、2,6−ジメチルフェノキシ基、ナフチルオキシ基;炭素数1〜20のアルキル基としてメチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基;炭素数6〜20のアリール基、アルキルアリール基若しくはアリールアルキル基としてフェニル基、p−トリル基、ベンジル基、4−ターシャリ−ブチルフェニル基、2,6−ジメチルフェニル基、3,5−ジメチルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基、2,3−ジメチルフェニル基;炭素数1〜20のハロゲン置換炭化水素基としてp−フルオロフェニル基、3,5−ジフルオロフェニル基、ペンタクロロフェニル基、3,4,5−トリフルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル基;ハロゲン原子としてF、Cl、Br、I;有機メタロイド基として五メチルアンチモン基、トリメチルシリル基、トリメチルゲルミル基、ジフェニルアルシン基、ジシクロヘキシルアンチモン基、ジフェニル硼素基を挙げることができる。R7 ,R10の具体例としては、先に挙げたものと同様なものを挙げることができる。R8 及びR9 の置換シクロペンタジエニル基の具体例としては、メチルシクロペンタジエニル基、ブチルシクロペンタジエニル基、ペンタメチルシクロペンタジエニル基等のアルキル基で置換されたものを挙げることができるここで、アルキル基は通常炭素数が1〜6であり、置換されたアルキル基の数は1〜5の整数で選ぶことができる。
(V),(VI)式の化合物の中では、M3 ,M4 が硼素であるものが好ましい。
【0036】
(V),(VI)式の化合物の中で、具体的には、下記のものを特に好適に使用できる。
( V )式の化合物
テトラフェニル硼酸トリエチルアンモニウム、
テトラフェニル硼酸トリ(n−ブチル)アンモニウム、
テトラフェニル硼酸トリメチルアンモニウム、
テトラフェニル硼酸テトラエチルアンモニウム、
テトラフェニル硼酸メチルトリ(n−ブチル)アンモニウム、
テトラフェニル硼酸ベンジルトリ(n−ブチル)アンモニウム、
テトラフェニル硼酸ジメチルジフェニルアンモニウム、
テトラフェニル硼酸メチルトリフェニルアンモニウム、
テトラフェニル硼酸トリメチルアニリニウム、
テトラフェニル硼酸メチルピリジニウム、
テトラフェニル硼酸ベンジルピリジニウム、
テトラフェニル硼酸メチル(2−シアノピリジニウム)、
テトラフェニル硼酸トリメチルスルホニウム、
テトラフェニル硼酸ベンジルジメチルスルホニウム、
【0037】
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸トリエチルアンモニウム、
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸トリ(n−ブチル)アンモニウム、
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸トリフェニルアンモニウム、
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸テトラブチルアンモニウム、
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸(テトラエチルアンモニウム)、
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸(メチルトリ(n−ブチル)アンモニウム)、
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸(ベンジルトリ(n−ブチル)アンモニウム)、
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸メチルジフェニルアンモニウム、
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸メチルトリフェニルアンモニウム、
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸ジメチルジフェニルアンモニウム、
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸アニリニウム、
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸メチルアニリニウム、
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸ジメチルアニリニウム、
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸トリメチルアニリニウム、
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸ジメチル(m−ニトロアニリニウム)、
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸ジメチル(p−ブロモアニリニウム)、
【0038】
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸ピリジニウム、
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸(p−シアノピリジニウム)、
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸(N−メチルピリジニウム)、
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸(N−ベンジルピリジニウム)、
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸(O−シアノ−N−メチルピリジニウム)、
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸(p−シアノ−N−メチルピリジニウム)、
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸(p−シアノ−N−ベンジルピリジニウム)、
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸トリメチルスルホニウム、
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸ベンジルジメチルスルホニウム、
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸テトラフェニルホスホニウム、
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸トリフェニルホスホニウム、
テトラキス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]硼酸ジメチルアニリニウム、
ヘキサフルオロ砒素酸トリエチルアンモニウム、
【0039】
( VI )式の化合物
テトラフェニル硼酸フェロセニウム、
テトラフェニル硼酸銀、
テトラフェニル硼酸トリチル、
テトラフェニル硼酸(テトラフェニルポルフィリンマンガン)、
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸フェロセニウム、
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸(1,1’−ジメチルフェロセニウム)、
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸デカメチルフェロセニウム、
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸アセチルフェロセニウム、
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸ホルミルフェロセニウム、
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸シアノフェロセニウム、
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸銀、
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸トリチル、
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸リチウム、
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸ナトリウム、
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸(テトラフェニルポルフィリンマンガン)、
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸(テトラフェニルポルフィリン鉄クロライド)、
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸(テトラフェニルポルフィリン亜鉛)、
テトラフルオロ硼酸銀、
ヘキサフルオロ砒素酸銀、
ヘキサフルオロアンチモン酸銀、
【0040】
また、(V),(VI)式以外の化合物、例えばトリス(ペンタフルオロフェニル)硼素、トリス(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)硼素、トリフェニル硼素等も使用可能である。
また、化合物(B)としては、アルミノキサン類(B−2)を用いることもできる。アルミノキサン類としては、具体的には、
【0041】
【化6】
(R16は、炭素数1〜20、好ましくは1〜12のアルキル基,アルケニル基,アリール基,アリールアルキル基等の炭化水素基、水素原子、ハロゲン原子を示し、これらはそれぞれ独立に、同じでも異なっていてもよい。sは重合度を示し、通常3〜50、好ましくは7〜40である。)
で示される鎖状アルミノキサン。
【0042】
【化7】
(R16は、式(VII)と同じものを示す。また、sは重合度を示し、好ましい繰り返し単位数は3〜50、好ましくは7〜40である。)
で示される繰り返し単位を有する環状アルミノキサン。
(VII)〜(VIII)式の化合物の中で、好ましいのは重合度7以上のメチルアルミノキサン,エチルアルミノキサン,イソブチルアルミノキサンである。さらにアルミノキサンとしては、アルミノキサンを水等の活性水素を有する化合物で変性してなる、一般の溶剤に不溶の変性アルミノキサンであってもよい。
【0043】
前記アルミノキサンの製造法としては、アルキルアルミニウムと水等の縮合剤とを接触させる方法を挙げることができるが、その手段に特に限定はなく、公知の方法に準じて反応させればよい。例えば、▲1▼有機アルミニウム化合物を有機溶剤に溶解しておき、これを水と接触させる方法、▲2▼重合時に当初有機アルミニウム化合物を加えておき、後に水を添加する方法、▲3▼金属塩等に含有されている結晶水、無機物や有機物への吸着水を有機アルミニウム化合物と反応させる方法、▲4▼テトラアルキルジアルミノキサンにトリアルキルアルミニウムを反応させ、さらに水を反応させる方法等がある。
【0044】
さらに、化合物(B)としてはルイス酸を用いてもよい。
このルイス酸(B−3)としては、特に制限はなく、有機物でも、固体状無機物でもよい。有機物としては、硼素化合物、アルミニウム化合物、無機物では、マグネシウム化合物、アルミニウム化合物等が好適に用いられる。
アルミニウム化合物としては、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウムメチル、(1,1’−ビ−2−ナフトキシ)アルミニウムメチル、マグネシウム化合物としては、塩化マグネシウム、ジエトキシマグネシウム、アルミニウム化合物としては、酸化アルミニウム、塩化アルミニウム、硼素化合物としては、トリフェニル硼素、トリス(ペンタフルオロフェニル)硼素、トリス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]硼素、トリス[(4−フルオロメチル)フェニル]硼素、トリメチル硼素、トリエチル硼素、トリ(n−ブチル)硼素、トリス(フルオロメチル)硼素、トリス(ペンタフルオロエチル)硼素、トリス(ノナフルオロブチル)硼素、トリス(2,4,6−トリフルオロフェニル)硼素、トリス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]硼素、トリス(3,5−ジフルオロフェニル)硼素、ビス(ペンタフルオロフェニル)フルオロ硼素、ジフェニルフルオロ硼素、ビス(ペンタフルオロフェニル)クロロ硼素、ジメチルフルオロ硼素、ジエチルフルオロ硼素、ジ(n−ブチル)フルオロ硼素、(ペンタフルオロフェニル)ジフルオロ硼素、フェニルジフルオロ硼素、(ペンタフルオロフェニル)ジフルオロ硼素、フェニルジフルオロ硼素、(ペンタフルオロフェニル)ジクロロ硼素、メチルジフルオロ硼素、エチルジフルオロ硼素、(n−ブチル)ジフルオロ硼素を挙げることができる。
【0045】
ここで、化合物(A)と化合物(B)との混合割合(モル比)は、化合物(B)として化合物(B−1)を用いた場合は10:1〜1:100、好ましくは2:1〜1:10、化合物(B−2)を用いた場合は1:1〜1:100,000、好ましくは1:10〜1:10,000である。
【0046】
化合物(A)と化合物(B−3)との混合割合(モル比)は1:0.1〜1:2,000、好ましくは1:0.2〜1:1,000、特に好ましくは1:0.5〜1:500である。また、化合物(B)としては、(B−1)、(B−2)及び(B−3)等を単独で用いることができるが、これらの二種以上を組合せて用いることもできる。
【0047】
(C)成分である有機アルミニウム化合物としては、下記一般式(IX)で示されるものを挙げることができる。
R17 rAlQ3-r …(IX)
(R17は炭素数1〜20、好ましくは1〜12のアルキル基、Qは水素原子,ハロゲン原子,炭素数1〜20のアルコキシ基又は炭素数6〜20のアリール基を示す。rは0〜3の整数である。)
式(IX)の化合物として、具体的には、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、メチルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムジクロリド,ジメチルアルミニウムフルオリド,ジイソブチルアルミニウムハイドライド,ジエチルアルミニウムハイドライド,エチルアルミニウムセスキクロリド等を挙げることができる。
【0048】
また、(C)成分の使用量は、(A)成分1モルに対し通常0〜2,000モル、好ましくは5〜1,000モル、特に好ましくは10〜500モルである。(C)成分を用いると重合活性の向上を図ることができるが、あまり多いと有機アルミニウム化合物が重合体中に多量に残存し好ましくない。
【0049】
触媒成分の使用態様には制限はなく、例えば(A)成分,(B)成分を予め接触させ、あるいはさらに接触生成物を分離,洗浄して使用してもよく、重合系内で接触させて使用してもよい。また、(C)成分は、予め(A)成分、(B)成分あるいは(A)成分と(B)成分との接触生成物と接触させて用いてもよい。接触は、あらかじめ接触させてもよく、重合系内で接触させてもよい。さらに、触媒成分は、モノマー、重合溶媒に予め加えたり、重合系内に加えることもできる。なお、触媒成分は、必要により無機あるいは有機の担体に担持して用いることもできる。
【0050】
反応原料に対する触媒の使用割合は、原料モノマー/上記(A)成分(モル比)あるいは原料モノマー/上記(B)成分(モル比)が1〜109、特に100〜107となることが好ましい。
【0051】
重合方法としては、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、気相重合等のいずれの方法を用いてもよい。また、バッチ法でも連続法でもよい。
重合溶媒をとしては、非芳香族系溶媒を用いる。例えば、シクロペンタン,メチルシクロペンタン,シクロヘキサン,メチルシクロヘキサン,シクロオクタン等の脂環式炭化水素、ヘキサン,オクタン,デカン,ドデカン等の脂肪族炭化水素、クロロホルム,ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素等を用いることができる。これらの溶媒は一種を単独で用いてもよく、二種以上のものを組合せてもよい。また、α−オレフィン等のモノマーを溶媒として用いてもよい。
【0052】
重合条件に関し、重合温度は50〜250℃が好ましく、70〜220℃とすることがさらに好ましく、中でも80〜200℃が最も好ましい。
重合時間は通常1分〜10時間、反応圧力は常圧〜100kg/cm2G、好ましくは常圧〜50kg/cm2Gである。
共重合体の分子量の調節方法としては、各触媒成分の使用量や重合温度の選択、さらには水素存在下での重合反応によることができる。なお、得られる共重合体の濃度は、5〜500グラム/リットルが好ましく10〜400グラム/リットルがさらに好ましい。
【0053】
本発明の環状オレフィン系樹脂においては、上記のエチレンと環状オレフィンとの付加共重合体中に存在する二重結合の少なくとも一部を水素化することによって得られる水添物をも使用することができる。
【0054】
この環状オレフィン共重合体を、水素化(水添)する方法は、通常ポリマーの有機溶剤溶液中において行なう。この溶剤としては、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの炭化水素溶剤が使用される。環状オレフィン系共重合体溶液の濃度は適宜定めうるが、通常0.1〜30重量%、好ましくは1〜20重量%の濃度で水素化が実施される。
本発明の方法において使用される水素化触媒としては、オレフィン化合物の水素化に際して一般に使用されている触媒であれば使用可能であり、特に制限されないが、たとえば次のようなものを挙げることができる。
不均一系触媒としては、ニッケル、パラジウム、白金またはこれらの金属をカーボン、シリカ、ケイソウ土、アルミナ、酸化チタン等の担体に担持させた固体触媒、例えばニッケル/シリカ、ニッケル/ケイソウ土、パラジウム/カーボン、パラジウム/シリカ、パラジウム/ケイソウ土、パラジウム/アルミナなどを挙げることができる。また、ニッケル系触媒としては、ラネーニッケル触媒など、白金系触媒では、酸化白金触媒、白金黒などを挙げることができる。均一系触媒としては、周期律表VIII族の金属を基体とするもの、例えばナフテン酸コバルト/トリエチルアルミニウム、オクテン酸コバルト/n−ブチルリチウム、ニッケルアセチルアセトネート/トリエチルアルミニウムなどのNi,Co化合物と周期律表IA,IIA,IIIB 族から選ばれる金属の有機金属化合物からなるもの、又はRh化合物などを挙げることができる。
また、エム・エス・サロアン(M.S.Saloan)らが開示しているチーグラー系水素化触媒(J.Am.Chem.Soc.,85,4014(1983))も有効に使用できる。これらの触媒としては、例えば、次のようなものを挙げることができる。
Ti(O−iC3 H7 )4 −(iC4 H9 )3 Al、
Ti(O−iC3 H7 )4 −(C2 H5 )3 Al、
(C2 H5 )2 TiCl2 −(C2 H5 )3 Al、
Cr(acac)3 −(C2 H5 )3 Al、
Na(acac)3 −(iC4 H9 )3 Al、
Mn(acac)3 −(C2 H5 )3 Al、
Fe(acac)3 −(C2 H5 )3 Al、
Ca(acac)2 −(C2 H5 )3 Al、
(C2 H5 COO)3 Co−(C2 H5 )3 Al、
水素添加(水素化)反応は、触媒の種類により均一系または不均一系で、1〜150気圧の水素圧化、0〜180℃、好ましくは20〜120℃の反応温度で実施される。水素添加率は、水素圧、反応温度、反応時間、触媒濃度等の反応条件を変えることによって0〜100%の範囲で任意に調節することができるが、上記環状オレフィン系共重合体水添物が優れた熱安定性を示すためには、共重合体中の不飽和結合の30%以上が水素添加されるのが好ましく、より好ましくは50%以上、更に好ましくは80%以上の水添率である。
後処理としては、水素化反応後、遠心分離、濾過あるいはチーグラー系触媒の場合は酸による触媒失活等によって触媒を除去し、次いで反応生成物を多量のアセトンまたはアルコールなどの極性溶剤中で沈殿させ、その後溶剤を除去、乾燥することによりオレフィン系共重合体の水素化物を得ることができる。
【0056】
▲4▼環状オレフィン系樹脂の諸物性
本発明で用いられる環状オレフィン系樹脂は、ガラス転移温度(Tg)が50℃以下であることが好ましい。このような樹脂を用いれば、ガラス転移温度(Tg)以上の温度において柔らかく、優れた弾性回復性を有する繊維を得ることができるという効果がある。より好ましいガラス転移温度(Tg)は−30〜40℃、中でも−30〜35℃が最も好ましい。このガラス転移温度(Tg)は、目的とする用途、要求される物性に応じて重合体又は共重合体の単量体の種類、組成を変更することにより、任意に変えることができる。
【0057】
本発明で用いられる環状オレフィン系樹脂は、135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が0.01〜20dl/gであることが好ましい。極限粘度[η]が0.01dl/g未満であると繊維の強度が低下することがあり、20dl/gを超えると繊維への成形性が悪くなることがある。より好ましい極限粘度[η]は0.05〜10dl/gである。
【0058】
本発明で用いられる環状オレフィン系樹脂は、メルトインデックス(MI)[190℃,2.16kg]が0.001〜10,000g/10分であることが好ましい。
0.001g/10分未満だと成形性が著しく悪化することがあり、10,000g/10分を超えると繊維の強度が低下する場合がある。
さらに好ましくは、0.01〜5,000であり、中でも0.1〜2,000が最も好ましい。
【0059】
また、環状オレフィン系樹脂の分子量は特に制限されるものではないが、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)によって測定した重量平均分子量Mwが1,000〜2,000,000、特に5,000〜1,000,000、数平均分子量Mnが500〜1,000,000、特に2,000〜800,000であり、分子量分布(Mw/Mn)が1.3〜4、特に1.4〜3であることが好ましい。分子量分布(Mw/Mn)が4より大きくなると低分子量体の含有量が多くなり、繊維にしたときにべたつきの原因となることがある。
【0060】
また、環状オレフィン系樹脂は、X線回折法により測定した結晶化度が0〜40%であることが好ましい。結晶化度が40%を超えると、繊維の弾性回復性,透明性が低下することがある。より好ましい結晶化度は0〜30%、特に0〜25%である。
【0061】
さらに、環状オレフィン系樹脂は、DSCによるブロードな融解ピークが90℃未満であることが好適である。DSCによるシャープな融解ピークが90℃以上にあるような樹脂は、重合成分の配列のランダム性が不充分で、繊維に成形したときに弾性が不充分になることがある。なお、DSCによるブロードな融解ピークは、10〜85℃の範囲にあることがより好ましい。
DSC測定おいて、本発明で用いられる環状オレフィン系樹脂の融点(融解)ピークはシャープにはみられず、特に低結晶化度のものにあっては、通常のポリエチレンの測定条件レベルではほとんどピークがでない。
【0062】
また、本発明で用いられる環状オレフィン系樹脂は、引張弾性率が2,000Kg/cm2未満である。引張弾性率が2,000Kg/cm2以上であると、繊維に用いた場合、耐衝撃性が不充分となることがある。より好ましい引張弾性率は50〜1,500Kg/cm2である。
【0063】
本発明で用いられる環状オレフィン系樹脂としては、上述した範囲の物性を有するもののみからなる樹脂であってもよく、上記範囲外の物性を有する樹脂が一部含まれているものであってもよい。前者の場合には、ガラス転移温度(Tg)が50℃以下である異なるTgを有する樹脂の混合物であってもよい。後者の場合には、全体の物性値が上記範囲に含まれていればよい。
【0064】
2.熱可塑性樹脂
本発明においては、前述のように繊維として前記環状オレフィン系樹脂と、他の熱可塑性樹脂とからなる組成物をも用いることができる。
このような熱可塑性樹脂としては、特に制限はないが、具体的には、高密度ポリエチレン,低密度ポリエチレン,直鎖低密度ポリエチレン等のポリエチレン、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・4−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン・1−ヘキセン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体およびその金属塩、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体、プロピレン・1−ブテン共重合体、ポリ1−ブテン、1−ブテン・4−メチル−1ペンテン共重合体、ポリ4−メチル−1−ペンテン、ポリ3−メチル−1−ブテン等を挙げることができる。
また、熱可塑性樹脂としては、その他に、ポリスチレン、ABS樹脂、AS樹脂、ポリビニルアルコール、ポリメタクリル酸メチル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、フッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン等)、ポリカーボネート、ポリアリーレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルスルホン、ポリアミド、ポリイミド、ポリフェニレンオキサイド、ポリアセタール等を使用することができる。
熱可塑性樹脂として特に好ましいのは、HDPE、LDPE、L−LDPE、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル等である。
なお、熱可塑性樹脂は必要により二種以上を併用することができる。
このような熱可塑性樹脂を含有する組成物を用いることによって繊維の嵩高性,目付,耐熱性,接着性を改良することができる。
この熱可塑性樹脂の配向割合については特に制限はなく、他の成分である環状オレフィン系樹脂の物性にもよるが、組成物全体の0.1〜99.9重量%特に0.5〜90重量%とすることが好ましい。
また、本発明においては、必要により、この熱可塑性樹脂のほかに他の樹脂、エラストマー等を配合することもできる。例えば、極性基含有ポリマーの添加により、染色性,帯電防止性,親水性を付与することができ、また、充填剤あるいは安定剤等の種々の添加剤を配合することもできる。配合可能な添加剤として、具体的には、下記のものを例示することができる。
充填剤としては、無機充填剤あるいは有機充填剤があり、特に制限なく公知のものを用いることができる。使用可能な充填剤として、例えば、シリカ,けい藻土,アルミナ,酸化チタン,酸化マグネシウム,軽石粉,軽石バルーン,水酸化アルミニウム,窒化アルミニウム,水酸化マグネシウム,塩基性炭酸マグネシウム,ドロマイト,硫酸カルシウム,チタン酸カリウム,チタン酸バリウム,硫酸バリウム,亜硫酸カルシウム,タルク,クレー,マイカ,ケイ酸カルシウム,モンモリロナイト,ベントナイト,カーボンブラック,グラファイト,アルミニウム粉,硫化モリブデンなどを例示することができる。
また、各種添加剤としては、耐熱安定剤,耐候安定剤,耐電防止剤,スリップ剤,アンチブロッキング剤,防曇剤,滑剤,発泡剤,染料,顔料,天然油,合成油,ワックス等を配合することができ、その配合割合は適宜決定することができる。例えば、任意成分として配合される安定剤として、具体的には、テトラキス(メチレン−3(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)メタン、β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸アルキルエステル、2,2’−オキザミドビス(エチル−3(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)などのフェノール系酸化防止剤、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、1,2−ヒドロキシステアリン酸カルシウムなどの脂肪酸金属塩、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノラウレート、グリセリンジステアレート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート等の多価アルコール脂肪酸エステルなどを挙げることができる。これらは単独で配合してもよいが、組合わせて配合してもよく、例えばテトラキス(メチレン−3(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)メタンとステアリン酸亜鉛及びグリセリンモノステアレートとの組合わせ等を例示することができる。
【0065】
3.繊維
本発明に用いられる繊維は上述した環状オレフィン系樹脂等を含むものである。
この場合、繊維の形状は特に限られず、円形断面状、異形断面状、フラット形断面状等の任意の形状とすることができる。繊維径にも制限はなく、目的、用途に応じて任意の径にすることができる。また、繊維としては、長繊維のみでなく、短繊維、綿状繊維、さらには不織布として形成される繊維などを含む。
【0066】
本発明に用いられる繊維の製造方法に限定はなく、前記環状オレフィン系樹脂等を用いて常法によって製造することができるが、例えば下記の紡糸工程、必要により実施される延伸工程、熱処理工程を好適に採用することができる。
紡糸
公知の溶融紡糸法を採用することができるが、紡糸温度は環状オレフィン系樹脂の溶融点よりも10〜70℃高い温度、特に20〜50℃高い温度とすることが好ましい。紡糸温度が環状オレフィン系樹脂の溶融点より10℃高い温度未満であると、紡糸口金からの吐出量が減少し、糸径の調節が困難になることがある。一方、紡糸温度が環状オレフィン系樹脂の溶融点より70℃高い温度を超えると、紡出糸の品質低下を招くおそれがある。
また、紡出糸が1,000デニール以上の太デニール糸である場合には、紡糸口金直下に冷却用液浴を設けて、この冷却用液浴内で紡出糸を冷却固化した後、トルクワインダーなどで紡出糸を巻き取ることが好ましい。冷却用液浴を設ける場合、冷却用液浴内の温度は紡糸温度よりも20〜100℃低い温度に設定することが望ましい。一方、紡出糸が1,000デニール未満の細デニール糸である場合には、必ずしも冷却用液浴を設ける必要はなく、空気中で良好に冷却固化することができる。
なお、紡糸方法としては、前記溶融紡糸の他、樹脂溶液を用いた湿式による紡糸であってもよい。
本発明に用いられる繊維の製造において使用することのできる紡糸装置、巻取装置等に特に制限はなく、従来法で使用されているいずれのものでも好適に使用することができる。
【0067】
延伸
以上のようにして環状オレフィン系樹脂の紡糸を行なった後、必要に応じ延伸を行なうことができる。
この場合、紡糸によって得られた未延伸糸の延伸には、公知の延伸装置のいずれのものでも使用することができる。具体的には、例えば加熱水蒸気、熱線電熱ヒータ等を用いた非接触式延伸装置、接触式ヒータを一段以上設けた加熱多段延伸装置等を好適に使用することができる。
延伸においては、延伸温度が環状オレフィン系樹脂のガラス転移温度よりも5〜30℃高い温度範囲にあることが好ましい。延伸温度が環状オレフィン系樹脂のガラス転移温度より5℃高い程度未満であると、延伸性が低下して十分な延伸効果が得られないことがある。一方、延伸温度が環状オレフィン系樹脂のガラス転移温度より30℃高い温度を超えると、延伸途上において毛羽やラップが発生し、安定した延伸ができないことがある。
また、延伸倍率は1.5以上、特に2〜10とすることが好ましい。延伸倍率が1.5未満であると、所定の強度を有する繊維が得られないことがある。
【0068】
熱処理
本発明に用いられる繊維の製造においては、以上のようにして環状オレフィン系樹脂の紡糸及び延伸を行なった後、所望により熱処理を行なうことができる。熱処理を行なうことにより、得られる繊維の強度をさらに向上させることができる。
この場合、熱処理は、環状オレフィン系樹脂の溶融点よりも低い温度領域で行なうことが望ましく、環状オレフィン系樹脂が結晶化温度を示す場合は、結晶化温度よりも高く、かつ溶融点よりも低い温度領域で行なうことが望ましい。なお、熱処理は延伸を行なって得られた延伸糸の緊張下に行なってもよく、弛緩下に行なってもよい。
【0069】
4.布状物
上述の方法によって得られた繊維は、常法により織布編布及び不織布などの布状物とすることができる。
たとえば不織布を製造する方法としてはスパンボンド法、メルトブロー法等の溶融押出し法を用いることができる。この方法で得られたウェブを接着、又は熱ロールによって融着、もしくは無荷重下で熱風処理等を行い、不織布シートを得ることができる。
また、前述の紡糸用装置を用いて紡糸した後、一段延伸、または多段延伸を行って、繊維強度を高めた繊維を用いて不織布にすることもできる。
【0070】
【実施例】
以下、本発明を実施例によってさらに具体的に説明する。なお、物性の測定は下記によった。
引張弾性率
オートグラフを用いてJIS−K7113に従って行なった。
引張破断強度
オートグラフを用いてJIS−K7113に従って行なった。
引張破断伸び
オートグラフを用いてJIS−K7113に従って行なった。
弾性回復率
オートグラフを用い、引張速度62mm/分で、幅6mm,クランプ間50mm(L0 )の測定片を150%伸ばして引張り、5分間そのままの状態を保った後、はね返させることなく急に収縮させ、1分間後にクランプ間のシートの長さ(L1 )を測定し、下記式により求めた。
弾性回復率(%)=[1−{L1 −L0 }/L0 ]×100
メルトインデックス(MI)
190℃,2.16kgの条件でJIS−K7210に準じて測定を行なった。
実施例1
エチレン−ノルボルネン共重合体(ノルボルネン含有量10モル%,メルトインデックス40g/10分)を220℃で溶融押出しを行い、連続的に紡糸し、エアーサッカーで延伸後ベルトコンベアーの上に捕集、ウェブ状とし、これをローラーで網目状にヒートシールして不織布を得た。得られた不織布の物性を表1に示す。
【0071】
実施例2
エチレン−ノルボルネン共重合体(ノルボルネン含有量10モル%,メルトインデックス40g/10分)を80重量%,およびポリプロピレン(出光石油化学社製,メルトインデックス60g/10分(230℃,2.16kg))20重量%からなる環状オレフィン系共重合体組成物を用いた以外は実施例1と同様にして不織布を得た。得られた不織布の物性を表1に示す。
【0072】
比較例1
エチレン−ノルボルネン共重合体の代わりに実施例2で用いたポリプロピレンのみを用いた以外は実施例1と同様にして不織布を得た。得られた不織布の物性を表1に示す。
【0073】
実施例3
エチレン−ノルボルネン共重合体(ノルボルネン含有量10モル%,メルトインデックス5.2)25重量%,および、上記実施例2で用いたポリプロピレン75重量%から成る環状オレフィン系共重合体組成物を用いた以外は実施例1と同様にして不織布を得た。得られた不織布の物性を表1に示す。
【0074】
【表1】
【0075】
【発明の効果】
以上説明したように本発明の織布及び不織布は、弾性回復性、伸縮性、柔軟性に優れ、かつ低温で熱接着が可能であり、紙おむつ等の衛生材料に好適に用いることができる。また、製造が簡易で製造コストの低減を図ることができる。
Claims (3)
- α−オレフィンと環状オレフィンとを付加重合してなる共重合体及びこの水素添加物からなる群から選ばれる、引張弾性率が2,000Kg/cm2未満であり、ガラス転移温度(Tg)が50℃以下である、環状オレフィン系樹脂を用いて形成した繊維からなることを特徴とする布状物。
- 前記繊維が、前記環状オレフィン系樹脂と、他の熱可塑性樹脂とからなる組成物で形成したものであることを特徴とする請求項1又は2記載の布状物。
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