JP3662980B2 - ピボット軸受装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、アキシャル荷重を軸端で受けるピボット軸受装置に関し、例えばステッピングモータのリードスクリューを受ける軸受装置に応用される。
【0002】
【従来の技術】
従来、ステッピングモータのリードスクリューシャフトの軸端を支持するピボット軸受として、図2に示すものが使用されている。同図は、ビデオカメラのオートフォーカスにおける移動レンズの進退駆動に使用されるステッピングモータを示す。リードスクリューシャフト51は、外周に永久磁石52が取付けられてモータ50のロータを構成するものであり、軸端がピボット軸受装置53を介してフレーム54に支持されている。
この種のピボット軸受装置53としては、同図に示すようにケース55内に数個の鋼球56を納め、リードスクリューシャフト51の軸端の鋼球57を当接させる形式のものが一般的である。
この他の形式として、軸受装置53を樹脂製としてフレーム54に取付け、あるいはフレーム54を樹脂製としてフレーム54に軸受部を一体に形成したもの等が使用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
前記の鋼球タイプのピボット軸受は、シャフト51の回転に伴って多数の鋼球56の転がりが生じるために、騒音が生じるという問題点がある。また、部品点数が多くて組み立てに時間がかかるうえ、位置決め精度や軸心精度の確保が難しく、さらにコストが高く、フレーム54への取り付けも難しい。
前記の樹脂製のピボット軸受は、樹脂のために軸心精度や位置決め精度が出ず、温度に対する寸法変化が大きいという問題点がある。また、剛性が低いために取付け強度が弱いという問題点もある。前記のフレーム54を樹脂製としてその一部に軸受部を形成するものでは、やはり樹脂製のために軸心精度や位置決め精度が出ず、温度に対する寸法変化が大きいという問題点がある。また、摩擦係数も大きい。
【0004】
この発明の目的は、軸心精度、位置決め精度の向上、騒音の低減、および組み立ての簡単化を図ることのできるピボット軸受装置を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
この発明のピボット軸受装置は、焼結合金の多孔質体からなる軸受主部材と、鋼板等の金属製のスラスト板と、鋼球等のボールとで構成される。軸受主部材は、正面に軸端遊嵌凹部を有しこの凹部の底面にボール嵌合孔が貫通したものとする。スラスト板は、軸受主部材の裏面に固定されてそのボール嵌合孔を蓋するものとする。前記ボールは、鋼球等からなり、スラスト板に接して前記ボール嵌合孔内に嵌め込まれ、軸の先端の凹面を当接させる。多孔質体の軸受主部材は、油を含浸させた焼結含油合金として使用する。
軸受主部材は、前記ボール嵌合孔の裏面側の開口周縁にスラスト板嵌合凹部を有するものとし、前記スラスト板を、前記スラスト板嵌合凹部に嵌合させて軸受主部材の裏面の加締めによる塑性変形部で前記軸受主部材に固定する。
また、前記軸受主部材は、正面側の外周に鍔を有するリング状に形成し、フレームに形成した孔に嵌め込んで前記鍔を前記フレームに当接させ、かつ裏面に周方向複数に加締凹部が生じるように施した加締による塑性変形部で前記フレームの前記孔の内径面に圧接状態に固定する。
のピボット軸受装置は、ステッピングモータに応用でき、その場合、リードスクリューシャフトが前記軸となる。軸受主部材は、正面側の外周に鍔を有するリング状に形成し、ステッピングモータのフレームに形成した孔に嵌め込んで前記鍔を前記フレームに当接させ、かつ裏面の加締めによる塑性変形部で前記フレームに固定する。
【0006】
軸受主部材は、焼結合金からなるため、内径、外径、長さ等の精度を高精度に仕上げることができ、その中に金属製のスラスト受け板および鋼球等のボールを取付けるため、この軸受装置は位置決め精度および軸心精度の高いものとなる。軸受主部材が焼結合金からなるため、温度による寸法,形状の変化が少なく、スラスト受け板およびボールに鋼板,鋼球等を用いることで、熱変形の小さな精度の良いものとできる。焼結合金は加締ることができるため、この軸受のフレームへの組み立てが簡単である。
【0007】
【発明の実施の形態】
この発明の実施の形態の一例を図1に基づいて説明する。このピボット軸受装置1は、焼結合金の多孔質体からなる軸受主部材2と、鋼板等の金属製のスラスト板3と、鋼球等のボール4とで構成される。焼結合金からなる軸受主部材2は、油を含浸させた焼結含油合金として使用する。軸受主部材2はリング状に形成されたものであり、正面に円錐面状の軸端遊嵌凹部5を有し、この凹部5の平坦面となった底面の中央に、円筒面のボール嵌合孔6が貫通している。軸受主部材2におけるボール嵌合孔6の裏面側開口縁には、スラスト板嵌合凹部7が座ぐり状に形成され、かつ軸受主部材2の外径面の正面側には鍔2aが一体に形成されている。スラスト板3は、円板状に形成されて軸受主部材2のスラスト板嵌合凹部7に嵌め込まれ、ボール嵌合孔6を蓋している。軸受主部材2の周方向複数箇所には、ポンチ等の工具により円錐面状の加締凹部8が形成され、この加締凹部8の形成に伴ってスラスト板嵌合凹部7の開口縁に内径側へ突出状態に生じた塑性変形部8aにより、スラスト板3が軸受主部材2に固定される。ボール4は、スラスト板3に接してボール嵌合孔6内に嵌め込まれ、軸10の先端の円錐面状の凹面10aが当接する。ボール4は、ボール嵌合孔6の底面から軸受主部材2の正面位置付近まで突出している。軸10の先端外周は、テーパ状に細められていて、軸受主部材2の軸端遊嵌凹部5に遊嵌している。
【0008】
このピボット軸受装置1のフレーム11への取付けは、フレーム11に設けられた軸受取付孔12に軸受主部材2を嵌め込み、鍔2aをフレーム11の表面に当接させ、前記加締凹部8をポンチ加工することによって行われる。この凹部8の形成に伴って外径側に生じた塑性変形部8bにより、軸受主部材2はフレーム11の軸受取付孔12の内径面に圧接状態に固定される。前記塑性変形部8bは、図面では明確でないが、軸受主部材2の外径面が局部的に膨らんだ部分として生じている。
の軸受装置の組立に際しては、軸受主部材2にスラスト板3を嵌め込んで加締止めし、その後にボール4を組み込むことで行われる。スラスト板3の加締止めは、軸受主部材2のフレーム11への加締止めと同時に行っても良く、また先にスラスト板3を加締止めした後に、別工程で行っても良い。
【0009】
図1(B)は、このピボット軸受装置1を取付けたステッピングモータの一例を示す。ステッピングモータ13は、モータケース14内の内周にステータコイル15を取付けてステータとし、前記軸10の外周に永久磁石16を取付けてロータとしたものであり、前記フレーム11はコ字状に形成してモータケース14の前面に取付けてある。前記軸10は、モータケース14から突出した部分に雄ねじ部10bが形成され、リードスクリューシャフトとなっている。軸10は、モータケース14の前面板部を貫通する箇所で滑り軸受17を介して回転および軸方向移動自在にモータケース14に支持されると共に、前記ピボット軸受装置1で先端が支持されている。また、軸10は、モータケース14に取付けられた板ばね等のばね18で後端から付勢され、ピボット軸受装置1のボール4に押し付けられている。このステッピングモータ13をビデオカメラのオートフォーカス機構に組み込む場合、移動レンズ(図示せず)のレンズ枠に設けたナット部材を軸10の雄ねじ部に螺合させ、軸10の回転で移動レンズを進退させる。
【0010】
この構成のピボット軸受装置1によると、軸受主部材2が焼結合金からなるため、内径、外径、長さなどの各部の精度を高精度(例えば0.010mm以下)に仕上げることができる。この中に鋼板等の金属製のスラスト板3、および鋼球等の金属製のボール4を取付けるため、位置決め精度および軸心精度につき、高精度のものとできる。また、軸受主部材2の材質が焼結合金であり、またスラスト板3およびボール4も鋼板,鋼球等の金属製のものであるため、温度変化に伴う寸法や形状の変化が小さく、このことからも精度が良い。しかも、軸受主部材2は焼結合金からなるため、前記のように加締めることができ、フレーム11への取付けや、スラスト板3の取付け等が簡単に行える。また、このピボット軸受装置1は、ボールとして軸10を直接に接触させる1個のボール4だけを用いたものであるため、従来の複数の鋼球を使用した形式のピボット軸受に比べて、騒音が抑制され、かつ低コストとなる。
【0011】
なお、軸受主部材2の材質となる焼結合金としては、銅系、銅鉄系、鉄系等が使用できる。
【0012】
【発明の効果】
この発明のピボット軸受装置は、正面に軸端遊嵌凹部を有しこの凹部の底面にボール嵌合孔が貫通した焼結合金の多孔質体からなる軸受主部材と、この軸受主部材の裏面に固定されて前記ボール嵌合孔を蓋する金属製のスラスト板と、このスラスト板に接して前記ボール嵌合孔内に嵌め込まれ軸の先端の凹面を当接させるボールとを備えたものであるため、軸心精度、位置決め精度の向上、騒音の低減、および組み立ての簡単化を図ることができる。また、温度に対する寸法変化が小さく、このことからも精度が良い。しかも、部品点数が少なく、低コストで生産できる。
また、軸受主部材にスラスト板嵌合凹部を設け、この凹部にスラスト板を嵌合させて加締め止めするため、一層の組み立ての簡易化と精度の向上が図れる。
請求項2記載の発明は、請求項2の発明をステッピングモータのリードスクリューシャフトの支持に応用したものであり、この種の機器に要求される高精度、低騒音化を満足させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)はこの発明の実施の形態にかかるピボット軸受装置の断面図、(B)はその軸受装置を使用したステッピングモータの断面図である。
【図2】従来のステッピングモータの断面図である。
【符号の説明】
1…ピボット軸受装置、2…軸受主部材、2a…鍔、3…スラスト板、4…ボール、5…軸端遊嵌凹部、6…ボール嵌合孔、7…スラスト板嵌合凹部、8a,8b…塑性変形部、10…軸、11…フレーム、13…ステッピングモータ

Claims (2)

  1. 正面に軸端遊嵌凹部を有しこの凹部の底面にボール嵌合孔が貫通した焼結合金の多孔質体からなる軸受主部材と、この軸受主部材の裏面に固定されて前記ボール嵌合孔を蓋する金属製のスラスト板と、このスラスト板に接して前記ボール嵌合孔内に嵌め込まれ軸の先端の凹面を当接させるボールとを備え、前記軸受主部材は、前記ボール嵌合孔の裏面側の開口周縁にスラスト板嵌合凹部を有し、前記スラスト板は前記スラスト板嵌合凹部に嵌合させて前記軸受主部材の裏面の加締めによる塑性変形部で前記軸受主部材に固定し、前記軸受主部材は、正面側の外周に鍔を有するリング状に形成し、フレームに形成した孔に嵌め込んで前記鍔を前記フレームに当接させ、かつ裏面に周方向複数に加締凹部が生じるように施した加締による塑性変形部で前記フレームの前記孔の内径面に圧接状態に固定したピボット軸受装置。
  2. 前記軸はステッピングモータのリードスクリューシャフトであり、前記フレームは、ステッピングモータのフレームである請求項1記載のピボット軸受装置。
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