JP3662691B2 - スチレン系樹脂組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はスチレン系樹脂組成物に関する。詳しくは、特定の構造の結晶性ポリスチレンを配合してなる、剛性と衝撃のバランスに優れたスチレン系樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
結晶性ポリスチレンとしてアイソタクチック構造とシンジオタクチック構造を有するポリスチレンが知られている。従来結晶性ポリスチレンは製造方法が難しいため、工業的にはほとんど利用されていなかったが、近年、重合触媒の研究が進み、立体規則性のポリスチレンを工業的なレベルで製造することが可能になってきた。一般に非晶性のポリスチレンでは、その物性を改良する目的で種々の検討が行われており、ポリスチレンの分子量或いは分子量分布を所望のものとする他に、種々の添加物を添加することでその物性を改良しようとする試みも広く行われている。
【0003】
しかしながら結晶性のポリスチレンは、非晶性のポリスチレンに比べてはるかに優れた物性を有しているものの、最終的に使用され物性が測定される成形物での結晶化の様子によってその物性は大きく変化することが知られている。すなわち、成形条件のほんの僅かな違いで、結晶化の様子が大きく異なるため、成形して得られる成形物の機械特性などの物性のばらつきが大きい。実際には成形物の厚さや形状に違いがあり、成形条件により例えば金型内の温度にもごくわずかな違いがあるなど、冷却条件を成形物全体に渡って一定にすることはできない。すなわち結晶形が成形物の全ての範囲に渡って同じであるポリスチレンは有り得ない。
【0004】
従って、立体規則性のポリスチレンでは単純にその立体規則性を制御するとか分子量或いは分子量分布を所望のものとするとか特定の添加物を添加することではどのような物性を有する成形物が得られるのかは、成形するまで分からないのが実情である。これに対しては、成形物の結晶化度が成形物全体に渡って一定になるようにあるいは、球晶のサイズや形状が特定の大きさになるように制御することで一定の物性が実現されることが予想されるが、未だにそのような成形物は得られていない。
【0005】
結晶性ポリスチレンは、軽量で機械的強度に優れていることから、種々の用途に検討されているが、剛性や耐熱性は優れているものの、耐衝撃性などの物性が悪いために、ゴムをブレンドしたり、エチレンなどとの共重合体にすることが行われている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従来の方法でもある程度の物性改良効果が得られるものの、せいぜい耐衝撃強度の低下を防ぐことが出来る程度であり、物性のバランスで見ると剛性や耐熱性が大きく低下するためその改良効果は不十分である。剛性や耐熱性、衝撃強度のバランスの優れたポリスチレン樹脂組成物の開発が望まれていた。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記問題を解決して物性バランスの優れたスチレン系樹脂組成物について鋭意探索し本発明を完成した。
【0008】
即ち、本発明は、(A)結晶性ポリスチレン100重量部と(B)沸騰キシレン不溶部が10重量%以下で、且つ沸騰キシレン可溶部の分岐点間の分子量が1,000ないし300,000の範囲の分岐構造を有する結晶性ポリスチレン0.01乃至50重量部からなるスチレン系樹脂組成物を提供することである。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明で使用する結晶性ポリスチレン(A)は、結晶性を有するポリスチレンであれば特に制限はなく、スチレン系単量体として、スチレン、α−メチルスチレン、α−エチルスチレンのような側鎖アルキル置換スチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン、o−t−ブチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、p−メチルスチレンのような核アルキル置換スチレン、モノクロルスチレン、ジクロルスチレン、トリブロモスチレン、テトラヒドロスチレン等のハロゲン化スチレン及びp−ヒドロキシスチレン、o−メトキシスチレン等が挙げられる。特に好ましくは、スチレン、α−メチルスチレン、及びp−メチルスチレンである、スチレン系単量体はこれらのうちの一種又は二種以上を混合して用いることができる。
【0010】
また、本発明ではスチレン系単量体及びスチレン系単量体と共重合可能な単量体との共重合であっても良く、スチレン系単量体と共重合可能な単量体としてはアクリロニトリル、メタクリロニトリル、フマロニトリル、マレオニトリル、α−クロロアクリロニトリル、メチルメタクリレート等のアクリル酸エステル系単量体、マレイミド、N−フェニルマレイミド等のマレイミド系単量体、アクリル酸エステル等が挙げられ、特にアクリロニトリルやメタクリル酸メチルが好ましい。
【0011】
本発明の共重合体構成成分であるスチレン系単量体と共重合可能な単量体との使用割合としてはスチレン系単量体と共重合可能な単量体とのモル比は95/5〜5/95の範囲にあることが好ましい。また一部を単量体の総和に対して30重量%以下の割合において他の単量体の一種以上を持って置き換えても良い。これらの共重合体にはランダム共重合体、あるいはブロック共重合体も含まれる。
例えば、スチレンとエチレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、シクロペンテン、シクロヘキセン、3−メチルペンテン、4−メチルペンテンなどのオレフィンとの2元あるいは3元共重合体等が挙げられる。その他にポリプロピレン、ポリブテン、ポリペンテン、ポリヘキセン、ポリヘプテン、ポリオクテン等のポリ−α−オレフィンやポリシクロペンテン、ポリノルボルネン等の環状ポリオレフィンと結晶性ポリスチレンとの複合体等も使用することができる。これらのポリスチレンはすでに工業的に入手することが可能なものもあり、さらに触媒を用いて製造することもできる。
【0012】
結晶性ポリスチレンを製造するに用いる触媒としては、通常、工業的にポリプロピレンを製造するために用いられている触媒が使用される。例えば三塩化チタン触媒や塩化マグネシウム等の担体上に三塩化チタンや四塩化チタンを担持した担体触媒等が用いられる。さらにジシクロペンタジエニルジルコニウムジクロリドとアルミノキサンの組み合わせで代表されるような均一系の触媒も利用できる。重合方法は溶媒重合法、塊状重合法、気相重合法など従来の重合法が用いられる。
【0013】
本発明で結晶性とは立体規則性を有するポリスチレンの高分子鎖がある対称に従って規則正しく周期的に配列している構造を有するもので、合成方法あるいは成形方法によって異なるが、X線による回折現象が認められるものあるいは赤外吸収スペクトルから結晶バンドの吸収が観測されるもの、あるいは熱分析によって融点または結晶化温度が認められるものを言う。立体規則性は通常NMRスペクトルから求めたアイソタクチックペンダット分率あるいはシンジオタクチックペンタッド分率で表される。本発明ではアイソタクチックペンダット分率あるいはシンジオタクチックペンタッド分率が0.2以上、好ましくは0.3以上、より好ましくは0.4以上のポリスチレンである。アイソタクチックペンダット分率あるいはシンジオタクチックペンタッド分率が0.2より低くても、結晶性であれば本発明の対象である。
【0014】
本発明において用いる沸騰キシレン不溶部が10重量%以下で、且つ沸騰キシレン可溶部に分岐点間の分子量が1,000ないし300,000の範囲の分岐構造を有する結晶性ポリスチレン(以下、分岐構造を有する結晶性ポリスチレン(B)と記す)とはポリマー主鎖の途中で主鎖が2本以上に分岐している構造のポリスチレンやポリスチレンを架橋剤と反応させることによって化学架橋させたり、主鎖に反応性の官能基を導入して反応させることにより分岐架橋させた分岐構造を有するポリスチレンであり、後記のように分岐点から延びているそれぞれの主鎖の長さが十分長いものであればどのような構造のものでもよい。
【0015】
本発明で重要なことはこのようにして形成された分岐構造を有する結晶性ポリスチレン中の沸騰キシレン可溶部の分岐点間の分子量が1,000ないし300,000の範囲の分岐構造を有することである。
【0016】
本発明において分岐点間の分子量とは、その結晶性ポリマーの分子量をその結晶性ポリマー中に含まれる分岐点の数で除した値を表す。
【0017】
一方、結晶性ポリマーの絡み合い点間分子量は高分子化合物の一次構造によって決まる物質固有のものである。これは溶融時における粘弾性的性質を決定する重要な要素であり、古くから様々な物質について測定されており、分岐構造からそれを予測する理論により、計算により求めることもできることが知られている。例えばWu等の論文、(Polymer Engineering and Science, MID-JULY 1990, Vol.30, No13, P753-761)等にいくつかの高分子化合物の絡み合い点間分子量の値や計算方法が記載されている。
【0018】
絡み合い点間分子量の求め方の例としては、例えば以下のような方法が挙げられる。すなわち、単分散高分子の粘度の分子量依存性は実験的にある臨界分子量を越えると分子鎖同志が絡み合い、分子量の粘度依存性が大きくなることが知られており、多くの高分子については、この臨界分子量は絡み合い点間分子量の2ないし3倍になることが知られている。
【0019】
従って(1)種々の分子量を持つ試料について定常流粘度測定を行ない、臨界分子量を求める。(2)種々の分子量の試料について動的粘弾性測定を行ない、ゴム状平坦部が現れないものから臨界分子量を求める。(3)臨界分子量以上の分子量を持つ試料の動的粘弾性測定を行ない、G’の高さより絡み合い点間分子量を求めると言った方法が知られている。また分子量分布が広い場合には、G’がゴム状領域でも平坦とならないため、G”のピーク面積から計算する方法も知られている。また結晶性高分子においては、ゴム状平坦部を観測するために温度を下げて測定すると、結晶化が始まり、測定できないことがある。この様な場合には高温でもゴム状平坦部が観測されるような高分子量の試料を用いるか、G’とG”の交点の値GC を求めてから計算する方法が知られている。アイソタクチックポリスチレンを例にとって(3)の方法で絡み合い点間分子量を求めたところ28,000という値が得られた。
【0020】
本発明では結晶性ポリマー中の分岐点間あるいは主鎖を結ぶ橋架け点間の分子量と絡み合い点間分子量の割合が重要であるが、上述のように結晶性ポリマーの絡み合い点間分子量は高分子化合物の一次構造によって決まる物質固有のものであることから本発明では結晶性ポリマー中の分岐点間の分子量の大きさが非常に重要である。
【0021】
すなわち、ここで結晶性ポリマー中の分岐点間の分子量の大きさが長鎖分岐構造あるいは主鎖を結ぶ橋架け構造を有しない結晶性ポリマーの絡み合い点間分子量の0.1よりも小さいものは流動性が悪くなったり、ポリマー中にゲルが多くなってくるので好ましくない場合がある。
【0022】
特にゲル分が多いと、物性が低下して、また成形物も良好なものが得られなくなる。いずれの構造のものにしろ、分岐点の数が多くなってくるとポリマーがゲル化してしまうが、ゲル化したものでも結晶性の制御は可能であるが、最終的な物性や取扱い易さを考慮すれば、沸騰キシレン不溶部が10重量%以下の物が好ましく、リサイクル性などを考慮すると分岐度の低い、沸騰キシレン不溶部が0.1重量%以下のゲル化していないものがより好ましい。
【0023】
(B)の分岐構造を有する結晶性ポリスチレンの沸騰キシレン可溶部の分岐間の分子量は1,000〜300,000、好ましくは3,000〜100,000、さらに好ましくは3,000〜50,000である。
【0024】
すなわち、ここでポリスチレン中の架橋点間の分子量の大きさが1,000よりも小さいものは流動性が悪くなったり、ポリマー中にゲルが多くなってくるので好ましくない。特にゲル分が多いと、物性が低下して、また成形物も良好なものが得られなくなる。すなわち、分岐点間の分子量が300,000を越える分子量である場合には、物性向上効果が小さくなるので好ましくない。
【0025】
逆に結晶性ポリマー中の分岐点間の分子量が長鎖分岐構造あるいは主鎖を結ぶ橋架け構造を有しない結晶性ポリマーの絡み合い点間分子量の10倍を越える分子量である場合には、ポリマーの二つの分子鎖が接近して、二つの分子鎖間距離をその平行を保ちつつ近づけ、ポリマー主鎖に規則的な長距離構造をもたらすという効果が小さくなって、結晶性を制御することが困難となるので好ましくない。
【0026】
本発明では、結晶性ポリマー中の分岐点間の分子量の大きさは、例えば重合時の多官能性モノマーの量をコントロールすることにより任意の大きさとすることも可能である。あるいは高分子反応では、官能基の量をコントロールしたり反応の度合いをコントロールすることにより任意の大きさとすることが可能である。
【0027】
これらの方法で分岐点間の分子量の大きさを変えることにより結晶性ポリマーの結晶化度、結晶化温度、融点、結晶の大きさ、結晶化速度を制御することができるということは従来全く知られていなかったことである。すなわち高分子鎖中の分岐点間の分子量の大きさを小さくするほどポリマーの結晶化度は高くなり、融点も高くなる。結晶化速度は速くなって、結晶の大きさは分岐点を有しないポリマーに比べて小さくなる。分岐点間の分子量の大きさを大きくすれば、逆の結果が得られる。
【0028】
この様に本発明では高分子鎖中の分岐点間の分子量の大きさをコントロールすることにより成形物の結晶化度を任意に制御することが可能である。また結晶のサイズを所望の大きさになるように、あるいは融点を高めたり低めたり制御することで一定の物性を具現し、結晶化速度を制御することにより最適な成形加工性を得ることができる。
【0029】
具体的には分岐構造を有するポリスチレンは、通常はスチレンと共重合する事が可能な重合性不飽和結合を少なくとも2つ以上有する3官能以上の多官能性のモノマー(ビニル基は2官能と数える)を共重合させたり、反応性の官能基を有するポリスチレン同志を反応させることにより得られる。あるいは官能基を2つ以上有する低分子化合物を架橋剤として用いてポリスチレンをラジカル開始剤などで処理することによっても合成することができる。
【0030】
スチレンと共重合する事が可能な重合性不飽和結合を少なくとも2つ以上有する3官能以上の多官能性のモノマーとしては直鎖でも分岐があってもよく、酸素、硫黄、硼素等のヘテロ原子や原子団を含んでいてもよい種々のジエンやトリエン等の化合物が挙げられる。例えば多官能性のモノマーとして1,3−ブタジエン、1,4−ペンタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,6−ヘプタジエン、1,7−オクタジエン、1,8−ノナジエン、1,9−デカジエン、1,10−ウンデカジエン、1,11−ドデカジエン、1,13−テトラデカジエン、ジビニルベンゼン、などが例示される。
【0031】
これらの多官能性のモノマーの共重合体中の含量は多官能性のモノマー含有量が0.0001ないし5モル%の範囲で、より好ましくは0.0005ないし3モル%の範囲である。特に多官能性のモノマー含有量が0.0001モル%未満ではポリマーの結晶性にほとんど影響を与えないので本発明の目的が達成されない。また5モル%を越えて含有させると共重合体の分子量が非常に大きくなりポリマーが溶媒に不溶になり、また加熱しても不融部分が存在するようになり、成形加工性が悪化するとともに物性も悪くなるため工業的な利用価値がなくなる。これらの共重合体はランダム共重合体またはブロック共重合体であってもよい。
【0032】
これらモノマーと多官能性のモノマーとの共重合体の製造において、重合に用いる触媒は、特に制限はなくポリマーの製造に通常用いられるラジカル開始剤やカチオン重合開始剤、アニオン重合開始剤、あるいは遷移金属化合物と有機金属化合物からなる触媒等を用いて合成されるのが一般的であり、前述のポリオレフィンの場合には、チーグラー触媒として知られている遷移金属化合物としてハロゲン化チタン、有機金属化合物として有機アルミニウム化合物よりなる固体触媒、あるいは炭化水素溶剤に可溶な遷移金属触媒としてシクロペンタジエニル誘導体などの不飽和炭化水素化合物を配位子とする周期律表第3族、第4族、第5族のメタロセン化合物と、必要により有機アルミニウムと水または結晶水とを反応することで得られるオリゴマーないしポリマーであるアルミノキサン化合物よりなる活性化剤、あるいはシクロペンタジエニル化合物を配位子とする周期律表第3族、第4族、第5族の金属カチオン錯体と安定アニオンを形成する化合物より成る活性化剤を組み合わせた触媒等が利用できる。
【0033】
ポリスチレンを架橋剤と反応させることによって化学架橋させたり、主鎖に反応性の官能基を導入して反応させることにより分岐構造を導入させる方法では、導入する官能基として特に制限はなく、反応して分岐構造のポリスチレンを生成するものであれば良く、具体的には無水マイレン酸等の酸無水物、エポキシ基、水酸基、フェノール性水酸基、アルデヒド基、メルカプタン基、カルボキシル基、ハロゲン、アミノ基、アミド基、イミノ基、ビニル基やビニリデン基等の不飽和二重結合、あるいは不飽和三重結合、カルボニル基、シアノ基、ヒドロシリル基、アルコキシシリル基などの反応性の官能基、あるいはアセチルアセトナート基のように金属イオンとのキレート結合や塩を形成するキレート形成基、塩形成基などが挙げられる。分岐構造のポリスチレンはこれらの官能基を有するポリスチレン同志を反応させることにより得られる。あるいは官能基を2つ以上有する低分子化合物を架橋剤として用いて合成することができる。
【0034】
例えばポリスチレン中に官能基として水酸基を有している場合にはアルデヒド、N−メチロール化合物、ジカルボン酸、ジカルボン酸クロリド、ビスハロゲン化合物、ビスエポキシド、ビスアジリジン等が架橋剤となる。カルボキシル基を有するポリマーはその相互作用によって2次結合をつくるが、2価または多価金属酸化物や有機酸の金属塩と反応してもイオン結合の架橋を生成する。さらにジアミン、ジオール、ビスエポキシド等が架橋剤となる。イミノ基やアミノ基はエピクロロヒドリン、ジイソシアナート等が架橋剤となる。
【0035】
また、分岐点はかならずしも化学的な結合である必要はなく、比較的熱運動の容易なポリマー鎖の部分(ソフトセグメント)と分子間力の非常に強い部分(ハードセグメント)とが混在したポリマーのように二次結合的なものであってもよい。
【0036】
本発明のポリスチレン組成物において結晶性ポリスチレン(A)と分岐構造を有する結晶性ポリスチレン(B)の混合割合は、成分(A)100重量部に対して、成分(B)0.01ないし50重量部であり、物性の改良効果とコストのバランスを考えると0.5ないし30重量部の混合量が好ましい。
【0037】
本発明のポリスチレン組成物に通常ポリスチレンの安定剤、改質剤として用いられる酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、帯電防止剤、難燃剤、発泡剤、造核剤などの添加剤を添加することについては特に制限はない。
【0038】
これらの各成分の混合方法については特に制限はなく、ヘンシェルミキサー、ブレンダー等で混合後、一軸押出機、二軸押出機、ロール、バンバリーミキサー、ニーダー等で溶融混合することで組成物とすることができる。
【0039】
【実施例】
以下に実施例を示し本発明をさらに詳細に説明する。
【0040】
実施例1
[分岐構造を有する結晶性ポリスチレンの合成]
内容積7リットルのステンレス製オートクレーブにトルエン1リットルを入れ、さらにメチルアルミノキサン(東ソー・アクゾ社製、重合度16.2)0.86gとジビニルベンゼン4.8gを装入した。さらにスチレン導入して、常法にしたがって合成した(シクロペンタジエニル)チタニウムトリクロリド3mgを10mlのトルエンに溶解した溶液を加えて、75℃で重合した。重合終了後、イソプロパノールで触媒を失活させ、ポリマーをろ過して取り出し、80℃で8時間真空乾燥して秤量したところ50.4gのスチレン/ジビニルベンゼン共重合体を得た。重合前後の反応液の組成をガスクロマトグラフで分析してジビニルベンゼンの反応量を計算すると0.71gであった。得られた重合体の沸騰キシレン可溶部は99.5重量%であり、ゲルは生成していなかった。
【0041】
1H−NMRでは末端ビニル基のシグナルが観測され、その量は約0.02重量%であり、ほとんどの二重結合は反応しているものと考えられる。また13C−NMRから求めたmmmmペンタッド分率は0.98であり、135℃テトラリン溶液で測定した極限粘度数(以下、[η]と記す)は1.69、1,2,4−トリクロロベンゼンを用いてゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した重量平均分子量と数平均分子量との比(以下、Mw/Mnと記す。)は4.6であった。このスチレンの分岐点間分子量は反応したジビニルベンゼンの97.6%が分岐点となっているものとして計算すると7,340であった。
【0042】
さらにジビニルベンゼンの装入量を変えて重合したほかは同様にしてスチレンを重合して、沸騰キシレン可溶部が99.5重量%であり、分岐点間分子量が18200の分岐構造を有する結晶性ポリスチレンを得た。
【0043】
〔結晶性シンジオタクチックポリスチレンの製造〕
内容積200リットルのステンレス製オートクレーブにトルエン100リットルを入れ、さらにメチルアルミノキサン(東ソー・アクゾ社製、重合度16.2)64gを装入した。さらに20℃でスチレン30kgを導入してシクロペンタジエニルチタニウムトリクロリド0.2gを1リットルのトルエンに溶解した溶液を加えて、75℃で重合した。
【0044】
重合終了後、イソプロピルアルコールを加えて触媒を分解してポリマーを濾過して取り出し、80℃で8時間真空乾燥して秤量したところ1.5kgの結晶性ポリスチレンを得た。また、1,2,4−トリクロロベンゼン溶液で測定した13C−NMRからシンジオタクチックペンタッド分率は0.91であり、135℃テトラリン溶液で測定した極限粘度数(以下、〔η〕と記す。)は1.05、1,2,4−トリクロロベンゼンで測定した重量平均分子量と数平均分子量との比(以下、MW/MNと記す。)は2.2であった。さらに示差熱分析装置を用い10℃/minで昇温または降温することで融点および結晶化温度の最大ピークとして測定したところ融点268℃、結晶化温度230℃であった。
【0045】
[樹脂組成物の製造]
上記の2つの分岐共重合体を結晶性シンジオタクチックポリスチレン100重量部に対し20重量部を加え、さらに酸化防止剤0.1重量部、ステアリン酸カルシウム0.1重量部を加えヘンシェルミキサーで混合した後、押出機で230℃で加熱混合しペレットを得た。このペレットを用い射出成形機(小松製作所(株)社製、FSM55T)でテストピースを成形し物性を測定した。
【0046】
曲げ弾性率はASTM−D790に、引張強度はASTM−D638、アイゾット衝撃強度はASTM−D256に準拠して測定したところ、曲げ弾性率はそれぞれ2810MPa、2750MPa、引張強度はそれぞれ60MPa、58MPaであり、アイゾット衝撃強度はそれぞれ15KJ/m2、13KJ/m2であった。
【0047】
比較例1
分岐構造を有する結晶性ポリスチレンを加えずに結晶性シンジオタクチックポリスチレンだけを用いた他は実施例1と同様に物性の測定を行った。結果は、曲げ弾性率は2100MPa、引張強度は38MPa、アイゾット衝撃強度は6.5KJ/m2であった。
【0048】
実施例2
[触媒の合成]
直径12mmの鋼球9kgの入った内容積4リットルの粉砕用ポットを4個装備した振動ミルを用意する。各ポットに窒素雰囲気下で塩化マグネシウム300g、テトラエトキシシラン60mlおよびα,α,α−トリクロロトルエン45mlを入れ、40時間粉砕した。こうして得た共粉砕物300gを5リットルのフラスコに入れ、四塩化チタン1.5リットルおよびトルエン1.5リットルを加え、100℃で30分間攪拌処理し、次いで上澄液を除いた。再び四塩化チタン1.5リットルおよびトルエン1.5リットルを加え、100℃で30分間攪拌処理し、次いで上澄液を除いた。その後固形分をn−ヘキサンで繰り返し洗浄して遷移金属触媒スラリーを得た。一部をサンプリングしてチタン分を分析したところチタン分は1.9重量%であった。
【0049】
[結晶性アイソタクチックポリスチレンの製造]
内容積100リットルのオートクレーブに窒素雰囲気下トルエン800ml、上記で得られた遷移金属触媒2g、ジエチルアルミニウムクロライド2.56ml、p−トルイル酸メチル1.2mlおよびトリエチルアルミニウム4mlを入れ、スチレン30kg、水素濃度7.5%相当を圧入した後、60℃で2時間重合した。重合後未反応のスチレンを除き、パウダーを取り出し、乾燥して10.2kgのパウダーを得た。得られたパウダーは、[η]が0.86であり、融点230℃の結晶性アイソタクチックポリスチレンであった。
【0050】
[分岐構造を有する結晶性ポリスチレンの製造]
内容積100リットルのオートクレーブに窒素雰囲気下トルエン800ml、上記で得られた遷移金属触媒2g、ジエチルアルミニウムクロライド2.56ml、p−トルイル酸メチル1.2mlおよびトリエチルアルミニウム4mlを入れ、スチレン30kg、ジビニルベンゼン9.6g、水素濃度7.5%相当を圧入した後、60℃で2時間重合した。重合後未反応のスチレンを除き、パウダーを取り出し、乾燥して9.6kgのパウダーを得た。得られたパウダーは、[η]が0.89であり、融点230℃である結晶性のスチレン共重合体であった。また沸騰キシレンで6時間抽出した際の不溶分の割合は0.001重量%であり、分岐点間分子量を計算すると21,000であった。
【0051】
[樹脂組成物の製造]
上記のよに製造した分岐構造を有する共重合体を上記で合成した結晶性アイソタクチックポリスチレン100重量部に対し20重量部添加して、実施例1と同様に成形し評価したところ、曲げ弾性率はそれぞれ2280MPa、引張強度はそれぞれ56MPa、アイゾット衝撃強度は12KJ/m2であった。
【0052】
実施例3
[分岐構造を有する結晶性ポリスチレンの合成]
内容積100リットルのオートクレーブに窒素雰囲気下トルエン800ml、実施例2で製造した遷移金属触媒2g、ジエチルアルミニウムクロライド2.56ml、p−トルイル酸メチル1.2mlおよびトリエチルアルミニウム4mlを入れ、スチレン30kg、シリルエチレン200gを加え、水素濃度7.5%相当を圧入した後、60℃で2時間重合した。重合後未反応のスチレンを除き、パウダーを取り出し、乾燥して9.6kgのパウダーを得た。得られたパウダーは、[η]が0.89であり、融点230℃、である結晶性のスチレン共重合体であった。尚、元素分析によればシリルエチレン単位を0.068mol%含有していた。
【0053】
得られた結晶性のスチレン共重合体100重量部に対して安定剤として、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール0.1重量部、ステアリン酸カルシウム0.1重量部、テトラキス[2−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)エチルカルボニルオキシメチル]メタン0.05重量部を混合し、さらに無水マレイン酸を0.1重量部を混合し、ヘンシェルミキサーで混合したのち、220℃で押出機で加熱混合してペレット化して分岐構造を有する結晶性ポリスチレンを得た。得られた分岐構造を有する結晶性ポリスチレンの[η]は1.28であり、Mw/Mnは7.2であった。また、沸騰キシレンで6時間抽出した際の不溶分の割合は0.001重量%であった。赤外吸収スペクトルから反応したシリル基の濃度を求め、分岐点間分子量を求めたたところ13000であった。
【0054】
[樹脂組成物の製造]
実施例2で製造した結晶性アイソタクチックポリスチレン100重量部と上記の分岐構造を有する結晶性ポリスチレン20重量部から実施例1と同様に成形し、評価したところ、曲げ弾性率は2250MPa、引張強度は58MPa、アイゾット衝撃強度は13KJ/m2であった。
【0055】
【発明の効果】
本発明のスチレン系樹脂組成物は、剛性、耐衝撃性のバランスと耐熱性に優れた成形品を得ることが可能であり工業的に極めて価値がある。

Claims (1)

  1. (A)結晶性ポリスチレン100重量部と(B)沸騰キシレン不溶部が10重量%以下で、且つ沸騰キシレン可溶部の分岐点間の分子量が1,000ないし300,000の範囲の分岐構造を有する結晶性ポリスチレン0.01乃至50重量部からなるスチレン系樹脂組成物。
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