JP3662323B2 - 筆記具用蓄光性蛍光体含有インキ組成物 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐光性、残光特性に優れた蓄光性蛍光体を含有し、立体感があり、耐候性、機械的特性に優れる描線を残す筆記具用蓄光性蛍光体含有インキ組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、蛍光体の残光時間は、きわめて短く、外部刺激を停止すると速やかにその発光は減衰するが、まれに紫外線等で刺激した後、または、その刺激を停止した後もかなりの長時間(数10分〜数時間)に渡り残光が肉眼で認められるものがあり、これらを通常の蛍光体とは区別して蓄光性蛍光体あるいは燐光体と呼んでいる。
【0003】
この蓄光性蛍光体としては、CaS:Bi(紫青色発光)、CaSrS:Bi(青色発光)、ZnS:Cu(緑色発光)、ZnCdS:Cu(黄色〜橙色発光)等の硫化物蛍光体が知られているが、これらのいずれの硫化物も、化学的に不安定であったり、耐光性に劣るなど実用面での問題点が多い。
【0004】
現在市場でもっぱら用いられる硫化亜鉛系蓄光性蛍光体(ZnS:Cu)は、特に湿気が存在すると紫外線により光分解して黒変したり輝度低下を生ずるため、屋外で直射日光に曝されるような用途での使用は困難であり、夜光時計や避難誘導標識、屋内の夜間表示等その用途は限定されていた。また、肉眼で認識可能な残光時間は約30分から2時間程度であり、実用的には蛍光体に放射性物質を添加し、そのエネルギーで自発光させているのが現状である。
【0005】
ところで、従来の硫化物系蛍光体に較べて遥かに長時間の残光特性を有し、更には化学的にも安定であり、かつ長期にわたり耐光性に優れる蓄光性蛍光体も知られている(特開平7−11250号公報)。
【0006】
一方、従来蓄光性蛍光体を含有し、立体感のある描線を残すインキとしては、硫化亜鉛系蛍光体を蓄光性蛍光体物質、分散媒としてアクリル系樹脂、酢酸ビニル樹脂等の水系エマルジョン又は溶液が使用されていた。
しかしながら、蒸気アクリル系樹脂等の水系エマルジョン又は溶液の分散媒では、筆記した描線の耐光性や残光特性は不十分で、筆記後水や溶剤を揮発させるために描線が痩せて立体感に乏しくなり、描線の接着性の点で筆記面が限定される点に課題があり、また、乾燥固化した描線は低温では脆弱であり、高温では劣化しやすく、しかも、耐衝撃性・耐候性・耐薬品性・耐油性に劣るという点に課題がある。更に、用いた溶媒の種類や筆記後の環境によっては、溶媒が残留し、描線にベタツキが残ったり、前記課題点が拡大されてしまう欠点もある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来の蓄光性蛍光体を含有したインキの課題に鑑み、これを解消しようとするものであり、立体感が豊富で、筆記面が限定されず、しかも、固化した描線の耐寒性・耐熱性・耐衝撃性・耐候性・耐薬品性・耐油性に優れ、かつ、長時間の残光特性と耐光性を有する描線を得ることができる筆記具用蓄光性蛍光体含有インキ組成物を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために蓄光性蛍光体とその分散媒について鋭意検討した結果、特定の蓄光性蛍光体と特定の分散媒を用いることにより目的の筆記具用蓄光性蛍光体含有インキ組成物が得られることを見い出し、本発明を完成するに至ったのである。
【0009】
すなわち、本発明の筆記具用蓄光性蛍光体含有インキ組成物は、少なくとも蓄光性蛍光体と分散媒よりなる蛍光体含有インキにおいて、前記蓄光性蛍光体がMAl2O4で表される化合物で、Mはカルシウム、ストロンチウム、バリウムからなる群から選ばれる少なくとも1つ以上の金属元素からなる化合物を母結晶にした蓄光性蛍光体で、好ましくは該蓄光性蛍光体の平均粒径が0.1〜30μmであり、前記分散媒が一液性室温硬化型シリコーンゴムの未硬化物であることを特徴とする。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を詳しく説明する。
本発明で用いる蓄光性蛍光体は、MAl2O4で表される化合物で、Mはカルシウム、ストロンチウム、バリウムからなる群から選ばれる少なくとも1つ以上の金属元素からなる化合物を母結晶としたものである。
具体的に例を挙げると、CaAl2O4、SrAl2O4、BaAl2O4、SrxCa1-xAl2O4、SrrCA1-rAl2O4等である。
【0011】
また、この蓄光性蛍光体の平均粒子径としては、0.1〜30μmのものが用いられる。平均粒子径が0.1μm未満では照射されたエネルギーを蓄えにくくなるため残光特性が低下し、30μmを超えると分散媒中での分散安定性が悪化すると共に、描線から蓄光性蛍光体粒子が脱落するおそれもあり好ましくない。なお、インキ中における分散安定性を考慮すると0.1〜15μmのものが好ましい。
【0012】
更に、MAl2O4で表される蓄光性蛍光体において、Mがカルシウム、ストロンチウム、バリウムからなる群から選ばれる少なくとも1つ以上の金属元素にマグネシウムを添加した複数の金属元素からなる化合物を母結晶にした蓄光性蛍光体、例えばSrxMg1-xAl2O4等も用いることができる。
【0013】
更にまた、賦活剤としてユウロピウム(Eu)を、Mで表す金属元素に対して0.001〜10モル%添加した蓄光性蛍光体や、賦活剤の他に共賦活剤としてランタン、セリウム、プラセオジウム、ネオジウム、サマリウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム、マンガン、スズ、ビスマスからなる群から選ばれる少なくとも1つ以上の元素を、Mで表す金属元素に対して0.001〜10モル%添加した蓄光性蛍光体を使用することができる。
【0014】
本発明のインキ組成物では、上記蓄光性蛍光体をインキ組成(全量)に対して1〜70重量%、好ましくは、5〜50重量%の範囲で用いることができる。蓄光性蛍光体の含有量が1重量%未満であると、筆記描線の残光特性が不十分であり、また、含有量が70重量%を越えると、インキの粘度が上がり、流動性が低下しすぎるため好ましくない。
【0015】
本発明のインキ組成物において、インキを形成するための分散媒は、一液性室温硬化型シリコーンゴムの未硬化物が用いられる。
この一液性室温硬化型シリコーンゴムの未硬化物は、インキを形成するための分散媒として使用しても、上記蓄光性蛍光体の物性を損なうものではなく、シリコーンゴムの特性を発揮すると共に、立体感に富む描線を得ることができるものとなる。
【0016】
上記一液性室温硬化型シリコーンゴムの未硬化物は、その主成分は柔らかな半流動性を呈する末端反応性ジオルガノポリシロキサンであり、アセトキシシラン、アルコキシシラン、エノキシシラン、アミノシラン、アミドシラン及びアミノキシシラン等の架橋剤の存在の基に、主として空気中の水分と反応してそれぞれ微量の酢酸、オキシム、アセトン、アミン、アミド、ヒドロキシルアミン等の縮合生成物を放出して硬化し、加熱硬化型シリコーンゴムのように特別な装置や技術を必要とせずにゴム状弾性体を形成するものである。
なお、室温硬化型シリコーンゴムには、本発明で用いる一液性の他に、本体と硬化剤を二成分に分けて供給される二液性のものも知られているが、該二液性のものは本発明の目的を達成するものではなく、本発明には適さないので採用できないものである。
【0017】
本発明のインキ組成物では、上記分散媒としての一液性室温硬化型シリコーンゴムの未硬化物をインキ組成(全量)に対して30〜99重量%、好ましくは、50〜95重量%の範囲で用いることができる。
【0018】
なお、本発明のインキ組成物において、分散媒として上記一液性室温硬化型シリコーンゴムの未硬化物を用いたインキであれば、本発明の目的の一つである立体感のある描線を残すことが可能であるが、筆記面の状態、蓄光性蛍光体の種類や粒子径及びその配合量、または、筆記具のインキ流出機構によっては、筆記後硬化前に描線が流れることを防止するために、インキ組成物にチクソ性賦与剤を添加しても良い。
チクソ性賦与剤としては、一液性室温硬化型シリコーンゴムの未硬化物を使用前に硬化反応を促進させる水及び/又は水分を含むものでなければ、通常筆記具用インキに用いる物が使用でき、目的に応じてインキ組成(全量)に対して0.1〜50重量%用いることができる。
【0019】
本発明で用いる蓄光性蛍光体は、日光下、照明下では淡色を呈すので、本発明のインキ組成物では必要に応じて描線の視認性向上の目的で従来公知の有機顔料、無機顔料等の着色剤を添加することができる。その使用量は顔料により一概に決められないが、蓄光性蛍光体の残光特性が著しく低下しない範囲での添加が好ましい。
【0020】
本発明のインキ組成物では、蓄光性蛍光体の性能を劣化させたり、一液性室温硬化型シリコーンゴムの未硬化物を使用前に硬化反応を促進させる水及び/又は水分を含む材料を除いて、前記着色剤の他に、沈降防止剤、分散剤、粘弾性調整剤等の他、必要に応じて従来の筆記具用インキ組成物に用いられる各種添加剤を添加することができる。
【0021】
また、本発明のインキ組成物は、通常のインキ製造用の撹拌混合機、分散機等を使用して上記各配合成分を混合することにより製造することができる。
【0022】
このように構成される本発明の筆記具用蓄光性蛍光体含有インキ組成物によれば、下記(1)及び(2)の作用等を奏することとなる。
(1) 上記MAl2O4で表される化合物を母結晶にした蓄光性蛍光固体をインキに用いているので、化学的に安定であり、しかも長時間にわたり耐光性を有すると共に、長時間の残光特性を有する描線を得ることができることとなる。
(2) 上記一液性室温硬化型シリコーンゴムの未硬化物を分散媒としたインキは、縮合生成物を微量放出するだけで硬化するので痩せが殆どない立体感に富む描線を得ることができ、また、シリコーンゴムの特性である優れた接着性の点で筆記面を選ばず、しかも、硬化した描線は基本的にシリコーンゴムの性質を残すので耐寒性・耐熱性・耐衝撃性・耐候性・耐薬品性・耐油性に優れることとなる。
【0023】
【実施例】
次に、実施例及び試験例により更に本発明の内容を更に詳細に説明する。なお、本発明は下記実施例により制限されるものではない。
【0024】
(実施例1)
SrAl2O4:Eu蓄光性蛍光体(平均粒径10μm) 15重量%
脱オキシム型一液性室温硬化型シリコーンゴムの未硬化物 85重量%
上記配合物をミキサー中で混合分散させて筆記具用インキ組成物とした。
【0025】
(実施例2)
SrAl2O4:Eu蓄光性蛍光体(平均粒径5μm) 10重量%
脱アルコ−ル型一液性室温硬化型シリコーンゴムの未硬化物 89.5重量%
シアニンブルー 0.5重量%
上記配合物をミキサー中で混合分散させて筆記具用インキ組成物とした。
【0026】
(実施例3)
SrAl2O4:Eu蓄光性蛍光体(平均粒径5μm) 10重量%
脱アセトン型一液性室温硬化型シリコーンゴムの未硬化物 89.5重量%
キナクリドンレッド 0.5重量%
上記配合物をミキサー中で混合分散させて筆記具用インキとした。
【0027】
(比較例1)
上記実施例1においてSrAl2O4:Eu蓄光性蛍光体を用いる代わりに、
ZnS:Cu蓄光性蛍光体(根本特殊化学(株)製)15重量%を用いた他は、実施例1と同一の配合組成及び製造方法で筆記具用インキ組成物を調製した。
【0028】
(比較例2)
SrAl2O4:Eu蓄光性蛍光体(平均粒径10μm) 15重量%
固形分35重量%のアクリル樹脂のトルエン溶液 85重量%
上記配合物をミキサー中で混合分散させて筆記具用インキ組成物とした。
【0029】
(試験例)
上記実施例1〜3及び比較例1〜2で得られた各インキ組成物を先端がφ0.8mmのノズルとなっている流出機構を取付けた市販のチューブに充填して蓄光性蛍光体含有インキ組成物入りの筆記具を得た。
この筆記具を用いて断面が直径2mmの半円状の描線となるようにポリエチレンシートに筆記し、硬化或いは乾燥した描線について下記試験方法により残光特性、耐光性、描線断面、接着性及び耐折り曲げ性の評価を行った。その結果を下記表1に示す。
【0030】
(試験方法)
(1)残光特性
描線を15時間暗中に保管して残光を消去した後、D65標準光源により200ルックスの明るさで10分間刺激し、その後1時間および10時間後に描線が視認できるか観察した。
(2)耐光性
描線に300Wの水銀灯下30cmの位置で12時間光照射し、その時の輝度を測定し照射前の輝度との相対比を求めた。
【0031】
(3)描線断面
硬化又は乾燥した描線をナイフで切断し、断面をCCDカメラで観察した。
(4)接着性
描線を手で剥離し、その抵抗を官能で評価した。
(5)耐折り曲げ性
描線を筆記方向に対し直角に180度折り曲げを5回繰り返し、折り曲げ部の状態を目視で観察した。
【0032】
【表1】
【0033】
表1から明らかなように、本発明となる実施例1〜3の蓄光性蛍光体含有インキ組成物は、従来例となる比較例1〜2のものに較べて、描線の痩せが殆どないため立体感が豊富で、ポリエチレンのような筆記しにくい面にも実用性のある描線が得られ、固化した描線の機械的強度も優れ且つ残光性及び耐光性が著しく優れる描線を得ることができることが判明した。
【0034】
【発明の効果】
本発明によれば、立体感が豊富で、筆記面を選ばず、しかも、固化した描線は耐寒性・耐熱性・耐衝撃性・耐候性・耐薬品性・耐油性に優れ、長時間の残光特性と耐光性を有する描線を得ることができる筆記具用蓄光性蛍光体含有インキ組成物が提供される。
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐光性、残光特性に優れた蓄光性蛍光体を含有し、立体感があり、耐候性、機械的特性に優れる描線を残す筆記具用蓄光性蛍光体含有インキ組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、蛍光体の残光時間は、きわめて短く、外部刺激を停止すると速やかにその発光は減衰するが、まれに紫外線等で刺激した後、または、その刺激を停止した後もかなりの長時間(数10分〜数時間)に渡り残光が肉眼で認められるものがあり、これらを通常の蛍光体とは区別して蓄光性蛍光体あるいは燐光体と呼んでいる。
【0003】
この蓄光性蛍光体としては、CaS:Bi(紫青色発光)、CaSrS:Bi(青色発光)、ZnS:Cu(緑色発光)、ZnCdS:Cu(黄色〜橙色発光)等の硫化物蛍光体が知られているが、これらのいずれの硫化物も、化学的に不安定であったり、耐光性に劣るなど実用面での問題点が多い。
【0004】
現在市場でもっぱら用いられる硫化亜鉛系蓄光性蛍光体(ZnS:Cu)は、特に湿気が存在すると紫外線により光分解して黒変したり輝度低下を生ずるため、屋外で直射日光に曝されるような用途での使用は困難であり、夜光時計や避難誘導標識、屋内の夜間表示等その用途は限定されていた。また、肉眼で認識可能な残光時間は約30分から2時間程度であり、実用的には蛍光体に放射性物質を添加し、そのエネルギーで自発光させているのが現状である。
【0005】
ところで、従来の硫化物系蛍光体に較べて遥かに長時間の残光特性を有し、更には化学的にも安定であり、かつ長期にわたり耐光性に優れる蓄光性蛍光体も知られている(特開平7−11250号公報)。
【0006】
一方、従来蓄光性蛍光体を含有し、立体感のある描線を残すインキとしては、硫化亜鉛系蛍光体を蓄光性蛍光体物質、分散媒としてアクリル系樹脂、酢酸ビニル樹脂等の水系エマルジョン又は溶液が使用されていた。
しかしながら、蒸気アクリル系樹脂等の水系エマルジョン又は溶液の分散媒では、筆記した描線の耐光性や残光特性は不十分で、筆記後水や溶剤を揮発させるために描線が痩せて立体感に乏しくなり、描線の接着性の点で筆記面が限定される点に課題があり、また、乾燥固化した描線は低温では脆弱であり、高温では劣化しやすく、しかも、耐衝撃性・耐候性・耐薬品性・耐油性に劣るという点に課題がある。更に、用いた溶媒の種類や筆記後の環境によっては、溶媒が残留し、描線にベタツキが残ったり、前記課題点が拡大されてしまう欠点もある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来の蓄光性蛍光体を含有したインキの課題に鑑み、これを解消しようとするものであり、立体感が豊富で、筆記面が限定されず、しかも、固化した描線の耐寒性・耐熱性・耐衝撃性・耐候性・耐薬品性・耐油性に優れ、かつ、長時間の残光特性と耐光性を有する描線を得ることができる筆記具用蓄光性蛍光体含有インキ組成物を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために蓄光性蛍光体とその分散媒について鋭意検討した結果、特定の蓄光性蛍光体と特定の分散媒を用いることにより目的の筆記具用蓄光性蛍光体含有インキ組成物が得られることを見い出し、本発明を完成するに至ったのである。
【0009】
すなわち、本発明の筆記具用蓄光性蛍光体含有インキ組成物は、少なくとも蓄光性蛍光体と分散媒よりなる蛍光体含有インキにおいて、前記蓄光性蛍光体がMAl2O4で表される化合物で、Mはカルシウム、ストロンチウム、バリウムからなる群から選ばれる少なくとも1つ以上の金属元素からなる化合物を母結晶にした蓄光性蛍光体で、好ましくは該蓄光性蛍光体の平均粒径が0.1〜30μmであり、前記分散媒が一液性室温硬化型シリコーンゴムの未硬化物であることを特徴とする。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を詳しく説明する。
本発明で用いる蓄光性蛍光体は、MAl2O4で表される化合物で、Mはカルシウム、ストロンチウム、バリウムからなる群から選ばれる少なくとも1つ以上の金属元素からなる化合物を母結晶としたものである。
具体的に例を挙げると、CaAl2O4、SrAl2O4、BaAl2O4、SrxCa1-xAl2O4、SrrCA1-rAl2O4等である。
【0011】
また、この蓄光性蛍光体の平均粒子径としては、0.1〜30μmのものが用いられる。平均粒子径が0.1μm未満では照射されたエネルギーを蓄えにくくなるため残光特性が低下し、30μmを超えると分散媒中での分散安定性が悪化すると共に、描線から蓄光性蛍光体粒子が脱落するおそれもあり好ましくない。なお、インキ中における分散安定性を考慮すると0.1〜15μmのものが好ましい。
【0012】
更に、MAl2O4で表される蓄光性蛍光体において、Mがカルシウム、ストロンチウム、バリウムからなる群から選ばれる少なくとも1つ以上の金属元素にマグネシウムを添加した複数の金属元素からなる化合物を母結晶にした蓄光性蛍光体、例えばSrxMg1-xAl2O4等も用いることができる。
【0013】
更にまた、賦活剤としてユウロピウム(Eu)を、Mで表す金属元素に対して0.001〜10モル%添加した蓄光性蛍光体や、賦活剤の他に共賦活剤としてランタン、セリウム、プラセオジウム、ネオジウム、サマリウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム、マンガン、スズ、ビスマスからなる群から選ばれる少なくとも1つ以上の元素を、Mで表す金属元素に対して0.001〜10モル%添加した蓄光性蛍光体を使用することができる。
【0014】
本発明のインキ組成物では、上記蓄光性蛍光体をインキ組成(全量)に対して1〜70重量%、好ましくは、5〜50重量%の範囲で用いることができる。蓄光性蛍光体の含有量が1重量%未満であると、筆記描線の残光特性が不十分であり、また、含有量が70重量%を越えると、インキの粘度が上がり、流動性が低下しすぎるため好ましくない。
【0015】
本発明のインキ組成物において、インキを形成するための分散媒は、一液性室温硬化型シリコーンゴムの未硬化物が用いられる。
この一液性室温硬化型シリコーンゴムの未硬化物は、インキを形成するための分散媒として使用しても、上記蓄光性蛍光体の物性を損なうものではなく、シリコーンゴムの特性を発揮すると共に、立体感に富む描線を得ることができるものとなる。
【0016】
上記一液性室温硬化型シリコーンゴムの未硬化物は、その主成分は柔らかな半流動性を呈する末端反応性ジオルガノポリシロキサンであり、アセトキシシラン、アルコキシシラン、エノキシシラン、アミノシラン、アミドシラン及びアミノキシシラン等の架橋剤の存在の基に、主として空気中の水分と反応してそれぞれ微量の酢酸、オキシム、アセトン、アミン、アミド、ヒドロキシルアミン等の縮合生成物を放出して硬化し、加熱硬化型シリコーンゴムのように特別な装置や技術を必要とせずにゴム状弾性体を形成するものである。
なお、室温硬化型シリコーンゴムには、本発明で用いる一液性の他に、本体と硬化剤を二成分に分けて供給される二液性のものも知られているが、該二液性のものは本発明の目的を達成するものではなく、本発明には適さないので採用できないものである。
【0017】
本発明のインキ組成物では、上記分散媒としての一液性室温硬化型シリコーンゴムの未硬化物をインキ組成(全量)に対して30〜99重量%、好ましくは、50〜95重量%の範囲で用いることができる。
【0018】
なお、本発明のインキ組成物において、分散媒として上記一液性室温硬化型シリコーンゴムの未硬化物を用いたインキであれば、本発明の目的の一つである立体感のある描線を残すことが可能であるが、筆記面の状態、蓄光性蛍光体の種類や粒子径及びその配合量、または、筆記具のインキ流出機構によっては、筆記後硬化前に描線が流れることを防止するために、インキ組成物にチクソ性賦与剤を添加しても良い。
チクソ性賦与剤としては、一液性室温硬化型シリコーンゴムの未硬化物を使用前に硬化反応を促進させる水及び/又は水分を含むものでなければ、通常筆記具用インキに用いる物が使用でき、目的に応じてインキ組成(全量)に対して0.1〜50重量%用いることができる。
【0019】
本発明で用いる蓄光性蛍光体は、日光下、照明下では淡色を呈すので、本発明のインキ組成物では必要に応じて描線の視認性向上の目的で従来公知の有機顔料、無機顔料等の着色剤を添加することができる。その使用量は顔料により一概に決められないが、蓄光性蛍光体の残光特性が著しく低下しない範囲での添加が好ましい。
【0020】
本発明のインキ組成物では、蓄光性蛍光体の性能を劣化させたり、一液性室温硬化型シリコーンゴムの未硬化物を使用前に硬化反応を促進させる水及び/又は水分を含む材料を除いて、前記着色剤の他に、沈降防止剤、分散剤、粘弾性調整剤等の他、必要に応じて従来の筆記具用インキ組成物に用いられる各種添加剤を添加することができる。
【0021】
また、本発明のインキ組成物は、通常のインキ製造用の撹拌混合機、分散機等を使用して上記各配合成分を混合することにより製造することができる。
【0022】
このように構成される本発明の筆記具用蓄光性蛍光体含有インキ組成物によれば、下記(1)及び(2)の作用等を奏することとなる。
(1) 上記MAl2O4で表される化合物を母結晶にした蓄光性蛍光固体をインキに用いているので、化学的に安定であり、しかも長時間にわたり耐光性を有すると共に、長時間の残光特性を有する描線を得ることができることとなる。
(2) 上記一液性室温硬化型シリコーンゴムの未硬化物を分散媒としたインキは、縮合生成物を微量放出するだけで硬化するので痩せが殆どない立体感に富む描線を得ることができ、また、シリコーンゴムの特性である優れた接着性の点で筆記面を選ばず、しかも、硬化した描線は基本的にシリコーンゴムの性質を残すので耐寒性・耐熱性・耐衝撃性・耐候性・耐薬品性・耐油性に優れることとなる。
【0023】
【実施例】
次に、実施例及び試験例により更に本発明の内容を更に詳細に説明する。なお、本発明は下記実施例により制限されるものではない。
【0024】
(実施例1)
SrAl2O4:Eu蓄光性蛍光体(平均粒径10μm) 15重量%
脱オキシム型一液性室温硬化型シリコーンゴムの未硬化物 85重量%
上記配合物をミキサー中で混合分散させて筆記具用インキ組成物とした。
【0025】
(実施例2)
SrAl2O4:Eu蓄光性蛍光体(平均粒径5μm) 10重量%
脱アルコ−ル型一液性室温硬化型シリコーンゴムの未硬化物 89.5重量%
シアニンブルー 0.5重量%
上記配合物をミキサー中で混合分散させて筆記具用インキ組成物とした。
【0026】
(実施例3)
SrAl2O4:Eu蓄光性蛍光体(平均粒径5μm) 10重量%
脱アセトン型一液性室温硬化型シリコーンゴムの未硬化物 89.5重量%
キナクリドンレッド 0.5重量%
上記配合物をミキサー中で混合分散させて筆記具用インキとした。
【0027】
(比較例1)
上記実施例1においてSrAl2O4:Eu蓄光性蛍光体を用いる代わりに、
ZnS:Cu蓄光性蛍光体(根本特殊化学(株)製)15重量%を用いた他は、実施例1と同一の配合組成及び製造方法で筆記具用インキ組成物を調製した。
【0028】
(比較例2)
SrAl2O4:Eu蓄光性蛍光体(平均粒径10μm) 15重量%
固形分35重量%のアクリル樹脂のトルエン溶液 85重量%
上記配合物をミキサー中で混合分散させて筆記具用インキ組成物とした。
【0029】
(試験例)
上記実施例1〜3及び比較例1〜2で得られた各インキ組成物を先端がφ0.8mmのノズルとなっている流出機構を取付けた市販のチューブに充填して蓄光性蛍光体含有インキ組成物入りの筆記具を得た。
この筆記具を用いて断面が直径2mmの半円状の描線となるようにポリエチレンシートに筆記し、硬化或いは乾燥した描線について下記試験方法により残光特性、耐光性、描線断面、接着性及び耐折り曲げ性の評価を行った。その結果を下記表1に示す。
【0030】
(試験方法)
(1)残光特性
描線を15時間暗中に保管して残光を消去した後、D65標準光源により200ルックスの明るさで10分間刺激し、その後1時間および10時間後に描線が視認できるか観察した。
(2)耐光性
描線に300Wの水銀灯下30cmの位置で12時間光照射し、その時の輝度を測定し照射前の輝度との相対比を求めた。
【0031】
(3)描線断面
硬化又は乾燥した描線をナイフで切断し、断面をCCDカメラで観察した。
(4)接着性
描線を手で剥離し、その抵抗を官能で評価した。
(5)耐折り曲げ性
描線を筆記方向に対し直角に180度折り曲げを5回繰り返し、折り曲げ部の状態を目視で観察した。
【0032】
【表1】
【0033】
表1から明らかなように、本発明となる実施例1〜3の蓄光性蛍光体含有インキ組成物は、従来例となる比較例1〜2のものに較べて、描線の痩せが殆どないため立体感が豊富で、ポリエチレンのような筆記しにくい面にも実用性のある描線が得られ、固化した描線の機械的強度も優れ且つ残光性及び耐光性が著しく優れる描線を得ることができることが判明した。
【0034】
【発明の効果】
本発明によれば、立体感が豊富で、筆記面を選ばず、しかも、固化した描線は耐寒性・耐熱性・耐衝撃性・耐候性・耐薬品性・耐油性に優れ、長時間の残光特性と耐光性を有する描線を得ることができる筆記具用蓄光性蛍光体含有インキ組成物が提供される。
Claims (2)
- 少なくとも蓄光性蛍光体と分散媒よりなる蛍光体含有インキ組成物において、前記蓄光性蛍光体がMAl2O4で表される化合物で、Mはカルシウム、ストロンチウム、バリウムからなる群から選ばれる少なくとも1つ以上の金属元素からなる化合物を母結晶にした蓄光性蛍光体であり、前記分散媒が一液性室温硬化型シリコーンゴムの未硬化物であることを特徴とする筆記具用蓄光性蛍光体含有インキ組成物。
- 前記蓄光性蛍光体の平均粒径が0.1〜30μmである請求項1記載の筆記具用蓄光性蛍光体含有インキ組成物。
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