JP3662055B2 - 熱安定性および加工性に優れたスチレン系樹脂組成物 - Google Patents

熱安定性および加工性に優れたスチレン系樹脂組成物 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、優れた加工性および熱安定性を有するスチレン系樹脂組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
スチレン系樹脂は無色透明で硬く、水に対する抵抗性、電気的性質に優れるなどの多くの長所を有している上に、成形品を容易に大量生産することが可能であることなどのため、射出成形、押出成形などの種々の成形法によって成形され、電気部品、雑貨、食品容器等に幅広く、かつ、大量に用いられている。
スチレン系樹脂は主として熱開始または開始剤を使用したラジカル重合によって製造されている。重合方法は主に塊状重合と懸濁重合のふたつであるが、重合方法が簡単なことと懸濁剤等の不純物混入の可能性がない等のために塊状重合が主流となっている。
【0003】
総説文献(Encyclopedia of Chemical Technology、Kirk−Othmer、Third Edition、JohnWiley & Sons、21巻、817頁)によれば、100℃以上の熱開始重合においては、スチレンダイマーやスチレントリマー等のオリゴマーの副生が伴い、その量は約1重量%になり、主として1−フェニル−4−(1’−フェニルエチル)テトラリンと1,2−ジフェニルシクロブタンからなり、その他としては2,4−ジフェニル−1−ブテンと2,4,6−トリフェニル−1−ヘキセンが存在することが述べられている。
【0004】
また、文献(G.Jones、II、V.Chew、J.Org.Chem.、1974年、39巻、1447頁)にはテトラクロロエチレン溶媒中、230℃での1,2−ジフェニルシクロブタンからモノマーへの熱分解速度について記載されている。しかし、ポリスチレンの製造工程や成形工程において、ポリマー中に存在する1,2−ジフェニルシクロブタンや他のオリゴマー成分の熱安定性への影響については何ら述べられていない。
【0005】
これらのことから、ポリマー中のオリゴマーは未反応モノマーや溶媒の回収工程あるいは造粒工程で高温にさらされると、一部が熱分解を起こしてペレット中の残留モノマーを増加させる原因となる可能性が示唆される。
しかしながら、熱安定性を向上させるために、ラジカル重合法によって製造されたスチレン系樹脂を精製すると、スチレン系樹脂の高温良流動性を損なうという問題があった。
【0006】
一方、アニオン重合によって製造されたスチレン系樹脂はオリゴマーを含んでおらず、熱安定性がラジカル重合のものよりも高いことは公知であるが、経済的理由からアニオン重合によって得られたポリスチレンは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー標準樹脂に用いる等の特殊な用途を除き、ラジカル重合ほどには工業的に製造されていなかった。
【0007】
ラジカル重合によるスチレン系樹脂とアニオン重合によるスチレン系樹脂との組み合わせにより中間的コストと性能の組成物が得られることは容易に考えられる。アニオン重合とラジカル重合によるポリスチレンの組み合わせとしては、特開平4−226142号公報に技術の開示が見られる。ここではラジカル重合法によって得られたポリスチレン60〜99重量部と、特定分子量のアニオン重合ポリスチレン1〜40重量部からなる組成物が機械的性質と熱成形安定性を低下させることなく、加工性を向上させられると述べている。しかしながら、ここで記載されている熱成形安定性は軟化温度の意味であり、我々の目的とする耐熱分解性を意味する熱安定性の向上効果を示唆する記載は見られない。
【0008】
さらに、我々の目的に従って、二次加工時のモノマー発生を低減し改善された熱安定性を得るためには、ラジカル重合ポリスチレン側の工夫無くしては、アニオン重合によるスチレン系樹脂の配合量を相当多くしなければならない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、造粒工程や加工成形工程等の高温に曝されるところで熱分解し難く、かつ、加工性に優れたスチレン系樹脂組成物を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために、ラジカル重合過程において副生するスチレン系由来の環状ダイマーおよび環状トリマーに着目し鋭意探索を繰り返した結果、開始剤を用いたラジカル重合によるスチレン系樹脂の重合において、熱重合に比較して重合温度を下げることにより、環状ダイマーを低減したラジカル重合ポリスチレンを得、これとアニオン重合ポリマーを組み合わせることで更に環状ダイマーを減らすことによって熱安定性の向上したスチレン系樹脂組成物を得た。同時に環状トリマーは熱安定性に関しては問題なく、むしろ可塑剤として寄与している事実を見出し、本発明を完成した。すなわち、本発明はラジカル重合とアニオン重合により、スチレンのみを重合、スチレンとα−メチルスチレンを、或いはスチレンと共重合可能なビニルモノマーを共重合させて得られたスチレン系樹脂混合物であって、重合温度60〜140℃の範囲で重合開始剤を用いラジカル重合して得られた樹脂(A)50〜95重量部とアニオン重合により得られた重量平均分子量が10〜60万の範囲の樹脂(B)5〜50重量部とを配合し、スチレン系由来の環状トリマー500〜8000ppm、スチレン系由来の環状ダイマー300ppm以下含有してなるスチレン系樹脂組成物である。
【0011】
スチレン系由来の環状トリマーが熱的に安定であり、かつ流動性付与に寄与することは、従来全く知られておらず、かかる知見に基づいて、以下詳細に述べる熱安定性と加工性の優れたスチレン系樹脂組成物の製造が可能になったものである。
以下、本発明の内容を順を追って説明する。
【0012】
本発明におけるスチレン系由来の環状ダイマーとは次式(1)で表される1,2−ジフェニルシクロブタンである。
【化1】
Figure 0003662055
【0013】
また、本発明におけるスチレン系由来の環状トリマーとは次式(2)で表される1−フェニル−4−(1’−フェニルエチル)テトラリンである。
【化2】
Figure 0003662055
【0014】
本発明におけるスチレン系樹脂とは、スチレンのみを重合させて、またはスチレンとα−メチルスチレンを、あるいはスチレンと共重合可能なビニルモノマー(ビニルコモノマー)を共重合させて得られる。
ビニルコモノマーとしては、アクリル酸、メタアクリル酸、ブチルアクリレート等のアクリル酸エステル、メチルメタクリレート等のメタクリル酸エステル、アクリロニトリルやメタクリロニトリル等のα、β−不飽和ニトリル化合物、N−フェニルマレイミド等のマレイミド等が挙げられる。これらを一種または二種以上の混合物として使用しても良い。
【0015】
従来のスチレン系樹脂製造法は主として塊状重合によるものである。塊状重合プロセスでは通常80℃〜180℃で重合を行い、続いて未反応モノマー回収工程で脱揮処理し、未反応モノマーや溶剤は重合工程にリサイクルされるが、副生した環状ダイマーや環状トリマーは、未反応モノマーと共にリサイクルされ、最終的には系内で平衡濃度となって、重合中に副生した量がそのままポリマーに含まれて脱揮工程を出ていくことになる。
【0016】
このようにして製造されたポリマーには、例えば、ポリスチレンを分析した結果、重合中での副生成物または原料からの残留物・不純物として、エチルベンゼン、スチレン、α−メチルスチレン、n−プロピルベンゼン、i−プロピルベンゼン、1,3−ジフェニルプロパン、2,4−ジフェニル−1−ブテン、1,2−ジフェニルシクロブタン、1−フェニルテトラリン、2,4,6−トリフェニル−1−ヘキセン、1,3,5−トリフェニルベンゼン、1−フェニル−4−(1’−フェニルエチル)テトラリン等が含まれていることがわかった。
【0017】
熱重合による製品ペレット中の主なオリゴマーの含有量は、二量体領域では、1,3−ジフェニルプロパン:50ppm、2,4−ジフェニル−1−ブテン:180ppm、1,2−ジフェニルシクロブタン:660ppm、1−フェニルテトラリン:10ppm、三量体領域では、2,4,6−トリフェニル−1−ヘキセン:1810ppm、1−フェニル−4−(1’−フェニルエチル)テトラリン:12600ppmであった。
【0018】
これらの化合物の熱安定性やポリマー中に含有している際のラジカル源としての影響を調べてみると、1,2−ジフェニルシクロブタンの影響がもっとも大きく、ついで2,4,6−トリフェニル−1−ヘキセン、2,4−ジフェニル−1−ブテンとなり、1−フェニル−4−(1’−フェニルエチル)テトラリンの熱安定性に対する影響はこれらに比較して小さかった。例えば、280℃、10minでの熱分解量は1,2−ジフェニルシクロブタン約50%、2,4,6−トリフェニル−1−ヘキセンと2,4−ジフェニル−1−ブテンは約1%であって、その他の成分はこれらよりも低く安定であった。
【0019】
本発明のラジカル重合によるスチレン系樹脂(A)の製造方法は、重合温度60〜140℃の範囲で重合開始剤を用いて重合するものである。開始剤を用いないで熱重合するのみでは環状ダイマーの副生が多く好ましくない。使用される開始剤としては、10時間半減期温度が30〜170℃の範囲のものであれば特に限定されず、重合温度と重合時間に関する当業者公知の技術範囲で、重合条件を設定できる。好ましい開始剤としては、アゾビスブチルニトリル(AIBN)、ベンゾイルパーオキサイド(BPO)、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、ポリ{ジオキシ(1,1,4,4−テトラメチル−1,4−ブタンジイル)ジオキシカルボニル−1,4−シクロヘキサンカルボニル}、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート等が挙げられる。
【0020】
ついで重合終了後、未反応モノマーや溶媒を回収するための脱揮処理がなされる。脱揮装置としては、大きく分けて、真空タンクへフラッシュさせるタイプと押出蒸発タイプとがあり(参考:新ポリマー製造プロセス、佐伯・尾見 編著、工業調査会出版、1994年、195頁)、どちらも用いることができる。温度を180〜260℃の範囲、真空度0.1〜50Torrの範囲にて、未反応モノマー等を揮発させる。脱揮装置を直列に接続して2段に並べる方法も知られており、また、1段目と2段目の間に水を添加して2段目のモノマーの揮発能力を高める方法も知られている。
【0021】
しかしながら、これら重合条件と脱気方法の工夫のみでは目的とする熱安定性の高い樹脂組成物を得るには十分ではなく、以下に述べるアニオン重合によるスチレン系樹脂(B)と配合することによって初めて目的とする組成物を得ることが出来る。
【0022】
アニオン重合によるスチレン系樹脂(B)の製造にあたっては、公知の製法を用いることができる。例えば、10〜80℃で不活性溶媒中にモノマーを溶解させて、開始剤としてアルキルメタル等を用いて重合させる。不活性溶媒としては、開始剤に対して安定であり、スチレン系樹脂を溶解することのできるものならばいかなる溶媒でもよく、例えば、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、デカリン、テトラリン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類等が好ましく、また、これらの溶媒を混合して使用してもよい。
【0023】
開始剤としてはアルキルリチウムが好適に使用される。重合速度を高めるためにテトラメチルエチレンジアミン等の3級アミン等を添加する場合もある。また、多官能の開始剤を用いて分岐構造を持たせても良い。
重合終了後、メタノール等の活性水素を有する溶媒を添加して活性成長末端を停止させる。この際にカップリング剤を用いて停止させ、分岐構造を持たせても良い。
【0024】
本発明のアニオン重合によるスチレン系樹脂(B)は重量平均分子量で8〜75万、好ましくは10〜60万である。詳細な仕組みは良く分からないが、アニオン重合によって低分子量の樹脂を得るには、その重合法の制約から多量の有機金属からなるアニオン重合開始剤を使用せねばならず、分子量8万未満のスチレン系樹脂(B)は、熱安定性において不十分である。また、75万以上では流動性に難点があり、本発明の目的にそぐわない。
【0025】
本発明の組成物は、上記のラジカル重合により得られる樹脂(A)40〜95重量部とアニオン重合により得られる樹脂(B)5〜60重量部とを配合することによって得られる。ただし、両者の配合比率は固定的なものでは無く、樹脂(A)中のスチレン系由来の環状ダイマー量に応じ変化する。例えば、重合温度を低く設定して得られ、環状ダイマー量の少ない(A)は少量の(B)と混合することにより、目的とする組成物が得られる。ただし、アニオン重合によるポリマーが5重量%未満では熱安定化効果が小さく、また、60重量%以上では環状トリマー含有量が不足となり、流動性等の加工性が低下する。
【0026】
配合方法としては樹脂の配合に用いられる公知な方法であれば、いずれをも用いることができる。例えば、ヘンシェルミキサー等でブレンドした後、二軸押出機等で溶融混練して製造することができる。ラジカル重合工程とアニオン重合工程を並列に設置した重合系を設置し、両者を反応途中において混合することもできる。
このようにして低減されたスチレン系由来の環状ダイマーはポリマー中では300ppm以下、好ましくは200ppm以下となる。
【0027】
本発明のスチレン系樹脂組成物に含有されるところの良流動特性を与える環状トリマー濃度は500〜15000ppmである。好ましくは500〜10000、より好ましくは500〜8000ppmである。500ppm未満では加工性を大きく向上させることができず、また15000ppmより多いと熱変形温度を低下させる等の問題が出てくる。
【0028】
さらに、本発明におけるスチレン系樹脂組成物は、ゴム変性したものやゴム状重合体を添加したものも好ましい。ゴム重合体としては、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン−イソプレン共重合体や、それらの水素添加物が好適に使用される。これらのゴム状重合体をスチレン系樹脂に溶融ブレンドしたり、これらのゴム状重合体の存在下でスチレン等を重合させることによってゴム変性スチレン系樹脂を得ることができる。これらのスチレン系樹脂は、一種または二種以上の混合物を用いても良い。
【0029】
本発明のスチレン系樹脂組成物中には、加工性および熱安定性を改良するという目的に反しない限り、各種安定剤、難燃剤、帯電防止剤、着色剤、ガラス繊維等の充填剤等のスチレン系樹脂に配合することが知られている任意の添加物を加えることができる。
【0030】
【発明の実施の形態】
次に、本発明を実施例および比較例によって具体的に説明する。
(実施例1)
温度調節できるステンレス製重合器に精製スチレン0.9kg、精製エチルベンゼン0.1kg、開始剤1,1−ビス(t-ブチルパーオキシ)−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン0.1gを入れ、撹拌しながら窒素ガス下で140℃、8時間保温して重合を行った。この後、5Torr減圧下で攪拌しながら250℃に上げて未反応スチレンやエチルベンゼン等を留去した。得られたポリマーを(A)とした。ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)による分子量測定では重量平均分子量は26万、分子量分布は2.4であった。
【0031】
つぎに、温度調節できるステンレス製重合器に窒素ガス下で乾燥した0.01%テトラヒドロフラン−シクロヘキサン溶媒1リットルと精製スチレン100gを入れ、攪拌しながら室温で、n−ブチルリチウム0.35ミリモルを添加した。10時間後、メタノール10ミリリットルを加えて重合停止した後、内容物をメタノール10リットルに滴下して析出したポリマーを集め、メタノールで洗浄を行い、乾燥した。得られたポリマーを(B)とした。重量平均分子量は28万、分子量分布は1.1であった。
【0032】
上記で得られたラジカル重合ポリマー(A)80gとアニオン重合ポリマー(B)20gとをプラストミルを用いて溶融混合した。この樹脂組成物を200mgを2ミリリットルの1、2−ジクロロエタンに溶かした。この溶液にメタノール2ミリリットルを添加してポリマーを析出させ、0.2μm孔径のフィルターで濾過し、ろ液をガスクロマトグラフィーで分析した。カラムはGLサイエンス社のTC−1(内径0.25mm、厚み0.25μm、長さ30m)を用いた。カラム温度は50℃で5min保持した後、20℃/minで320℃まで昇温し、さらに3min保持した。装置は島津GC−14B(FID検出)で、インジェクションは260℃、ディテクターは330℃に設定した。内標はアントラセンを用いた。スチレン系由来の環状ダイマーは270ppm、同環状トリマーは2880ppmであった。
【0033】
このスチレン系樹脂組成物70mgをガラスアンプル管に入れ、減圧下で封管した後、280℃で熱分解テストを行った。モノマーの発生は上記オリゴマー分析と同様にガスクロマトグラフィーで測定した。発生速度は20分までのモノマー発生量から求めた。モノマーの発生速度は1740ppm/hrであった。
また、加工性は流動性測定を行った。メルトフローレイト(MI値)はASTM D1238に従って条件G(200℃、5.0kg荷重)で測定した。その結果、MIは3.2g/10minであった。
【0034】
(実施例2)
実施例1において、ラジカル重合ポリマー(A)50gとアニオン重合ポリマー(B)50gをプラストミルを用いて溶融混合した以外は同様に実施した。
含有していた環状ダイマーは170ppm、環状トリマーは1870ppmであり、モノマー発生速度は1210ppm/hr、MIは3.1g/10minであった。
【0035】
(実施例3)
温度調節できるステンレス製重合器に精製スチレン0.56kg、精製アクリロニトリル0.26kg、精製エチルベンゼン0.19kg、開始剤t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート0.3gを入れ、撹拌しながら窒素ガス下で2時間掛けて150℃、8時間保温して重合を行った。この後、5Torr減圧下で攪拌しながら250℃に上げて未反応スチレンやエチルベンゼン等を留去した。得られたAS(アクリロニトリル−スチレン)ポリマー50gと実施例1で合成したアニオン重合ポリマー50gを溶融混合した。得られたポリマーの含有していた環状ダイマーは210ppm、環状トリマーは2470ppmであり、モノマー発生速度は1070ppm/hr、MIは26g/10min(220℃、10kg荷重)であった。
【0036】
(実施例4)
実施例1において、開始剤としてBPO0.5g添加し、105℃にて重合を行った。得られたポリマー(A)の重量平均分子量は33万、分子量分布は2.2であった。これ以外は実施例1と同様に実施した。
得られたポリスチレン中の環状ダイマーは55ppm、環状トリマーは720ppmであった。また、モノマーの発生速度は1080ppm/hrであり、MIは3.0g/10minであった。
【0037】
(比較例1)
実施例1で得られたラジカル重合ポリマーを用いて測定を行った。得られたポリマー中の環状ダイマーおよび環状トリマーの定量、熱分解テストおよび加工性測定は実施例1に従って行い、環状ダイマー350ppm、環状トリマー3600ppmの含有で、MIは3.3g/10minであったが、モノマー発生速度は2250ppm/hrと分解しやすかった。
【0038】
(比較例2)
実施例1で得られたラジカル重合ポリマーを用いて、これをテトラヒドロフランに溶かし、メタノール中に滴下することによって精製ポリマーを得た。このポリマー中の環状ダイマーおよび環状トリマーの定量、熱分解テストおよび加工性測定は実施例1に従って行い、環状ダイマー1ppm以下、環状トリマー170ppmの含有で、モノマー発生速度は1100ppm/hrであったが、MIは2.7g/10minと低かった。
【0039】
(比較例3)
実施例1で得られたアニオン重合品ポリマーを用いて測定を行った。環状ダイマー、環状トリマーは検出されなかった。モノマー発生速度300ppm/hrと熱安定性に優れたが、MIは2.5g/10minと低かった。
【0040】
(比較例4)
実施例3で得られたASポリマーの含有していた環状ダイマーは430ppm、環状トリマーは5100ppmであり、MIは27g/10min(220℃、10kg荷重)であったが、モノマー発生速度は1500ppm/hrと分解しやすかった。
【0041】
【発明の効果】
本発明により、従来のスチレン系樹脂よりも熱安定性および加工性に優れたスチレン系樹脂組成物を提供することができた。

Claims (1)

  1. ラジカル重合とアニオン重合により、スチレンのみを重合、スチレンとα−メチルスチレンを、或いはスチレンと共重合可能なビニルモノマーを共重合させて得られたスチレン系樹脂混合物であって、重合温度60〜140℃の範囲で重合開始剤を用いラジカル重合して得られた樹脂(A)50〜95重量部とアニオン重合により得られた重量平均分子量が10〜60万の範囲の樹脂(B)5〜50重量部とを配合し、スチレン系由来の環状トリマー500〜8000ppm、スチレン系由来の環状ダイマー300ppm以下含有してなるスチレン系樹脂組成物。
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