JP3658971B2 - エアバッグカバー - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、車両のステアリングホイール、シート、ドア等に配置されるエアバッグ装置において、折り畳まれたエアバッグを覆う合成樹脂製のエアバッグカバーに関し、特に、エアバッグを保持するバッグホルダに対して、係止されて保持されるエアバッグカバーに関する。
【0002】
【従来の技術とその課題】
従来、エアバッグを保持するバッグホルダに対して、係止されて保持されるエアバッグカバーとしては、特開平8−230593号公報に記載されたエアバッグ装置に使用されているものが知られている。
【0003】
上記公報記載のエアバッグカバーは、エアバッグの膨張時に破断するための破断予定部を備えた天井壁部と、破断予定部の周囲における天井壁部下面で、下方へ延びる前後左右の4つの側壁部と、を備えて、オレフィン系やスチレン系の熱可塑性エラストマー等の軟質の合成樹脂から形成されていた。破断予定部は、天井壁部の上方から見て、略H字形状に形成されていた。すなわち、破断予定部は、エアバッグの膨張時、「H」字の横棒部位を間にして「H」字の左右の縦棒部位で囲まれた前後の扉部を、「H」字の左右の縦棒部位の端部間をヒンジ部位として開かせるように、配設されていた。
【0004】
そして、エアバッグカバーは、各側壁部の内、前後の側壁部が、バッグホルダに挟持されるとともに、左右の側壁部が、内周面側に、上下で対向する突出壁の間に係止溝を備えた断面C字形状の係止部を突設させ、下突出壁をバッグホルダから延びる係止片部に係止させて、バッグホルダに保持されていた。
【0005】
しかし、従来のエアバッグカバーは、破断予定部の略「H」字形状の横棒部位の左右両端付近の外方に配置される左右の側壁部が、挟持される訳ではなく、単に、下突出壁をバッグホルダの係止片部に係止させているだけである。
【0006】
そのため、エアバッグの膨張時、破断予定部の「H」字の横棒部位が破断して「H」字の左右の縦棒部位が破断し始めるような場合、左右の側壁部は、「H」字の左右の縦棒部位が破断し始める直前までは、大きな引張力を受けて上方向に大きく伸び、そして、「H」字の左右の縦棒部位が破断し始めた直後には、その反動で、下方へ移動するような態様となり、左右の側壁部の下突出壁から係止片部が外れ易い。
【0007】
この外れを防止するために、従来は、バッグホルダの係止片部の係止力を高めるように、係止部の係止溝の開口幅を狭めたり、係止溝を下方へ深くして、係止片部の先端を下方へ大きく延ばすように構成していた。
【0008】
しかしながら、このような左右の側壁部に対するバッグホルダの係止片部の係止力を高める構造は、バッグホルダにエアバッグカバーを保持させる組付作業に手間がかかる事態を招く。
【0009】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、左右の側壁部のバッグホルダに対する組付作業性の低下を抑えて、エアバッグ膨張時の左右の側壁部のバッグホルダに対する係止力を向上させることができるエアバッグカバーを提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るエアバッグカバーは、折り畳まれたエアバッグを覆い、かつ、前記エアバッグの膨張時に破断するための左右の縦棒部位と該左右の縦棒部位の中央付近相互を連結する横棒部位とを有して構成される破断予定部を備えた天井壁部と、前記破断予定部の周囲における前記天井壁部下面から、下方へ延びる前後左右の4つの側壁部と、を備えた合成樹脂製として、
前記各側壁部の内、前後の前記側壁部が、バッグホルダに挟持されるとともに、左右の前記側壁部が、内周面側に、上下で対向する突出壁の間に係止溝を備えた断面C字形状の係止部を突設させ、前記下突出壁を前記バッグホルダから延びる係止片部に係止させて、前記バッグホルダに保持されるエアバッグカバーであって、
左右の前記側壁部に、前記上突出壁と前記天井壁部とを連結するリブが設けられるとともに、該リブの設けられている箇所に、上下の前記突出壁を連結して、前記係止溝の内周面を塞ぐリブも、設けられていることを特徴とする。
【0011】
【発明の効果】
本発明に係るエアバッグカバーでは、エアバッグの膨張時、破断予定部の横棒部位が破断して、左右の縦棒部位が破断し始めるような場合、左右の側壁部は、左右の縦棒部位が破断し始める直前までは、大きな引張力を受けて上方向に大きく伸びようとするが、左右の側壁部には、上突出壁と天井壁部とを連結するリブが設けられていることから、側壁部の上下方向の伸びが抑えられる。
【0012】
そのため、破断予定部の左右の縦棒部位が破断し始めた直後の下方へ反動で移動する量も抑えられて、左右の側壁部の下突出壁からのバッグホルダ係止片部の外れが防止される。
【0013】
その結果、バッグホルダ係止片部の左右の側壁部への係止力を高めるような、係止部の係止溝の開口幅を狭めたり、係止溝を下方へ深くして、係止片部の先端を下方へ大きく延ばす等の度合いを抑えることができ、バッグホルダにエアバッグカバーを保持させる組付作業に手間がかからない。
【0014】
したがって、本発明にかかるエアバッグカバーは、左右の側壁部のバッグホルダに対する組付作業性の低下を抑えて、エアバッグ膨張時の左右の側壁部のバッグホルダに対する係止力を向上させることができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
実施形態のエアバッグカバー14は、図1〜3に示すように、ステアリングホイールWの中央上部に配置されるエアバッグ装置Mに使用されるものである。
【0017】
エアバッグ装置Mは、折り畳まれた袋状のエアバッグ1と、エアバッグ1に膨張用のガスを供給するインフレーター3と、折り畳まれたエアバッグ1を覆うエアバッグカバー14と、エアバッグ1・インフレーター3・エアバッグカバー14を保持するバッグホルダ4と、を備えて構成されている。
【0018】
エアバッグ1やインフレーター3は、エアバッグ1内に配設されて下方へ突出する4本のボルト2aを備えた略円環状のリテーナ2と、ボルト2aに螺合するナット2bと、を利用して、バッグホルダ4に保持されている。
【0019】
その保持構造を具体的に述べれば、リテーナ2の各ボルト2aが、エアバッグ1の開口部1aの周縁と、インフレーター3の本体部3aの外周に形成されたフランジ部3bと、バッグホルダ4の底壁部5と、ブラケット11と、を挿通して、ナット2b止めされることにより、各部材がバッグホルダ4に保持されている。
【0020】
そして、実施形態のエアバッグ装置Mのバッグホルダ4について説明すれば、図2〜4に示すように、バッグホルダ4は、板金から形成され、略長方形形状の底壁部5と、底壁部5の周縁から上方へ延びる4つの縦壁部6・7・8・9と、を備えて構成されている。
【0021】
底壁部5には、インフレーター3の本体部3aを下方から挿入させる挿通孔5aと、挿通孔5aの周縁に形成されてリテーナ2の各ボルト2aを挿通させる挿通孔5bと、が形成されている。
【0022】
前後に配置される縦壁部6・7には、上端に、反転するように外周側の下方へ屈曲する係止片部6a・7aが形成され、左右に配置される縦壁部8・9にも、上端に、反転するように下方へ延びる係止片部8a・9aが形成されている。そして、各係止片部8a・9aには、各先端の3箇所に、下方へ突出する係止突起8b・9bが形成されている。
【0023】
また、左右に配置される縦壁部8・9には、貫通孔(図符号省略)が形成されて、その部位にナット10が固着されている。これらのナット10は、エアバッグ装置MをステアリングホイールWの本体側の図示しない部材に取付固定させる部位となる。
【0024】
そして、エアバッグカバー14は、図1〜5に示すように、オレフィン系若しくはスチレン系の熱可塑性エラストマー等の軟質の合成樹脂材料から射出成形により形成され、天井壁部15と、天井壁部15の下面から下方へ略四角筒形状に延びる側壁部16・17・18・19と、を備えて構成されている。
【0025】
天井壁部15には、エアバッグ1の膨張時に破断するための薄肉の破断予定部25が形成されている。破断予定部25は、上面から見て略H字形状となるように、一部に湾曲部位を有した横棒部位25aと、横棒部位25aの左右両端に配置される縦棒部位25b・25cと、を備えて構成され、エアバッグ1の膨張時、「H」字の横棒部位25aを間にして「H」字の左右の縦棒部位25b・25cで囲まれた前後の扉部15a・15bを、「H」字の左右の縦棒部位25b・25cの端部間をヒンジ部位15c・15cとして、開かせるように配設されている。
【0026】
各側壁部16・17・18・19には、その内周面側に、対応する縦壁部6・7・8・9の係止片部6a・7a・8a・9aを挿入係止させるための係止溝16a・17a・18c・19cが形成されている。
【0027】
また、前後の側壁部16・17におけるそれぞれの下端面には、ブラケット11を挿入させる挿入溝16b・17bが形成されている。ブラケット11は、板金製として、バッグホルダ4の底壁部5と略同形状の底壁部11aと、底壁部11aの前後の両端から上方へ延びて挿入溝16b・17bに挿入される挿入片部11bと、を備えて構成されている。底壁部11aは、インフレーター本体部3aを下方から挿入させる挿通孔(図符号省略)やリテーナ2の各ボルト2aを挿入させる挿入孔(図符号省略)を備えている。
【0028】
そして、このブラケット11は、前・後側壁部16・17を強固にバッグホルダ4に挟持させるためのものである。すなわち、エアバッグ1が膨張すれば、エアバッグカバー14における天井壁部15の破断予定部25が破断し、扉部15a・15bがヒンジ部位15cを回転中心として開くこととなり、その際、ヒンジ部位15cを介して前・後側壁部16・17には、上方への強い引張力が作用するため、側壁部16・17を、係止片部6a・7aと挿入片部11b・11bとを利用した挟持力で、バッグホルダ4に保持させるように、ブラケット11が使用されている。
【0029】
左右の側壁部18・19は、破断予定部25の略「H」字形状の横棒部位25aの左右両端付近の延長方向の外方に配置されて、相互に左右対称形として構成され、天井壁部15の下面から下方に延びる板状の本体18a・19aの内周面側に、係止部18b・19bを突設させている。各係止部18b・19bは、上下で対向する突出壁18d・19d・18e・19eの間に、係止片部8a・9aを係止させるための係止溝18c・19cを設けた断面C字形状に形成されている。また、各係止片部8a・9aを係止させる係止部18b・19bの下突出壁18e・19eには、対応する係止片部8a・9aに設けられた係止突起8b・9bを挿入させるための挿入孔18f・19fが、上下方向に貫通されている。
【0030】
そして、左右の側壁部18・19には、上突出壁18d・19dと天井壁部15の下面とを連結するように、リブ20が3箇所ずつに設けられている。なお、これらのリブ20が設けられている箇所には、実施形態の場合、係止溝18c・19cの内周面に塞ぐように、上下の突出壁18d・18e・19d・19eを連結するリブ21も設けられている。
【0031】
つぎに、エアバッグ装置Mの組み立てについて説明すると、予め、エアバッグ1とインフレーター3とを、リテーナ2のボルト2aを利用して、バッグホルダ4と一体化させておく。なお、エアバッグ1は折り畳んでおく。
【0032】
そして、前側壁部16の係止溝16aに対して、対応する前縦壁部6の係止片部6aを挿入し、係止片部6aを係止溝16aに係止させる。
【0033】
ついで、係止させた部位を支点として、バッグホルダ4を上方へ回転させたり下方へ回転させたりして、カバー14の左右側壁部18・19における係止溝18c・19cに、左右縦壁部8・9の係止片部8a・9aを挿入係止させつつ、各下突出壁18e・19eの挿入孔18f・19fに、各係止片部8a・9aの係止突起8b・9bをそれぞれ挿入させ、さらに、後側壁部17の係止溝17aに対して、対応する後縦壁部7の係止片部7aを挿入係止させれば、エアバッグカバー14をバッグホルダ4に係止させることができる。
【0034】
その後、各ボルト2aを挿通させつつバッグホルダ底壁部5の下面に底壁部11aを配置させつつ、ブラケット11の各挿入片部11bを前後側壁部16・17の挿入溝16b・17bに挿入させて、各ボルト2aにナット2bを螺合させれば、カバー14をバッグホルダ4に組み付けることができて、エアバッグ装置Mの組み立てが完了することとなる。
【0035】
その後、バッグホルダ4のナット10・10を利用して、エアバッグ装置Mを車両へ組み付け済みのステアリングホイールWの本体に取り付ければ、エアバッグ装置Mを車両に装着することができる。
【0036】
エアバッグ装置Mの車両への装着後、インフレーター3が作動して本体部3aの所定の開口から膨張用ガスが吐出されれば、エアバッグ1が膨張し、エアバッグカバー14の天井壁部15における破断予定部25がエアバッグ1に押されて破断し、扉部15a・15bが、ヒンジ部位15c・15cを回転中心として開き、エアバッグ1を大きく突出させることとなる。
【0037】
そして、実施形態のエアバッグカバー14では、破断予定部25の「H」字の横棒部位25aが破断して「H」字の左右の縦棒部位25b・25cが破断し始めるような場合、左右の側壁部18・19、特に、上突出壁18d・19dの上方の本体18a・19aの部位が、「H」字の左右の縦棒部位25b・25cが破断し始める直前までは、大きな引張力を受けて上方向に大きく伸びようとするが、その部位には、上突出壁18d・19dと天井壁部15とを連結するリブ20が設けられていることから、側壁部18・19の上下方向の伸びが抑えられる。
【0038】
そのため、「H」字の左右の縦棒部位25b・25cが破断し始めた直後の下方へ移動する量も抑えられて、左右の側壁部18・19の下突出壁18e・19eからのバッグホルダ係止片部8a・9aの外れが防止される。
【0039】
その結果、バッグホルダ係止片部8a・9aの左右の側壁部18・19への係止力を高めるような、係止部18b・19bの係止溝18c・19cの開口幅Bを狭めたり、係止溝18c・19cを下方へ深くするのと同様な態様となる挿入孔18f・19fを形成して、係止片部8a・9aの先端の係止突起8b・9bを下方へ大きく延ばす等の度合いを抑えることができ、バッグホルダ4にエアバッグカバー14を保持させる組付作業に手間がかからなくなる。
【0040】
したがって、実施形態のエアバッグカバー14では、左右の側壁部18・19のバッグホルダ4に対する組付作業性の低下を抑えて、エアバッグ1の膨張時の左右の側壁部18・19のバッグホルダ4に対する係止力を向上させることができる。
【0041】
また、実施形態のエアバッグカバー14では、左右の側壁部18・19の係止部18b・19bが、係止溝18c・19cを塞ぐように、上突出壁18d・19dと下突出壁18e・19eとを連結する所定数のリブ21を備えて、係止溝18c・19cの開口幅Bを広げるような変形を抑えることができるため、一層、エアバッグ1の膨張時の左右の側壁部18・19のバッグホルダ4に対する係止力を向上させることができる。
【0042】
なお、左右の側壁部18・19として、図6に示すように、上突出壁18d・19dと下突出壁18e・19eとを連結するようなリブ21を設けない構造としても、本発明の作用・効果を得ることができる。
【0043】
また、実施形態では、上突出壁18d・19dと天井壁部15とを連結するリブ20を、左右の側壁部18・19における前後方向の両端と略中央との3箇所に設けた場合を示したが、リブ20の配置位置や配置数は、インフレーター3の出力等に応じて、適宜、設定すれば良い。
【0044】
但し、実施形態のように、リブ20を、左右の側壁部18・19における前後方向の両端と略中央との3箇所に設ける場合には、カバー14の成形性の低下を抑えて、効果的に、エアバッグ1の膨張時の左右の側壁部18・19のバッグホルダ4に対する係止力を向上させることができる。
【0045】
さらに、実施形態では、破断予定部25の形状として、略H字形状の場合を示したが、破断予定部25は、左右の縦棒部位と25b・25cとその略中央付近相互を連結する横棒部位25aとを備えておれば、横向きの「H」字形状、すなわち、「I」字形状の破断予定部25としても良い。ちなみに、この場合のカバー14の左右方向は、「I」字の内の中央の横棒部位(横向き「H」字の中央の横棒部位)に沿う方向となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を示すエアバッグカバーが配置されたエアバッグ装置の平面図である。
【図2】同実施形態の断面図であり、図1のII−II部位を示す。
【図3】同実施形態の断面図であり、図1の III− III部位を示す。
【図4】同実施形態のバッグホルダとエアバッグカバーの側壁部とを示す分解斜視図である。
【図5】同実施形態のエアバッグカバーを示す底面図である。
【図6】エアバッグカバー側壁部の変形例を示す斜視図である。
【符号の説明】
1…エアバッグ、
4…バッグホルダ、
6a・7a・8a・9a…係止片部、
14…エアバッグカバー、
15…天井壁部、
16・17・18・19…側壁部、
18b・19b…係止部、
18c・19c…係止溝、
18d・19d…上突出壁、
18e・19e…下突出壁、
20…リブ、
25…破断予定部、
25a…横棒部位、
25b・25c…縦棒部位。
M…エアバッグ装置。
Claims (1)
- 折り畳まれたエアバッグを覆い、かつ、前記エアバッグの膨張時に破断するための左右の縦棒部位と該左右の縦棒部位の中央付近相互を連結する横棒部位とを有して構成される破断予定部を備えた天井壁部と、前記破断予定部の周囲における前記天井壁部下面から、下方へ延びる前後左右の4つの側壁部と、を備えた合成樹脂製として、
前記各側壁部の内、前後の前記側壁部が、バッグホルダに挟持されるとともに、左右の前記側壁部が、内周面側に、上下で対向する突出壁の間に係止溝を備えた断面C字形状の係止部を突設させ、前記下突出壁を前記バッグホルダから延びる係止片部に係止させて、前記バッグホルダに保持されるエアバッグカバーであって、
左右の前記側壁部に、前記上突出壁と前記天井壁部とを連結するリブが設けられるとともに、該リブの設けられている箇所に、上下の前記突出壁を連結して、前記係止溝の内周面を塞ぐリブも、設けられていることを特徴とするエアバッグカバー。
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