JP3658678B2 - 改質ポリウレタン弾性糸の製造法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は吸湿性と生分解性に優れた改質ポリウレタン弾性糸の製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ポリウレタン成形体に吸湿性・吸水性を付与するには、吸湿性・吸水性を有する粉粒体をポリウレタン溶液に添加する方法が知られており、例えば特開昭63−215768号公報にはウレタンプレポリマーに、界面活性能を有するコハク酸エステル化合物と、酢酸ビニルーアクリル酸エステル共重合体ケン化物やポリアクリル酸、デンプン−アクリル酸共重合体等の高吸水性樹脂を混合する方法が記載され、特開平8−113827号公報にはポリエステルとポリアルキレンエーテルまたは脂肪族ポリエステルの一方または両者と、調湿性を有する微細粒状シリカゲルとを含む混合組成物を溶融紡糸する方法が記載されている。
【0003】
しかしこれらの方法では、添加する粉粒体の添加量を多くしないと、吸湿性・吸水性が発現しにくく、この技術をポリウレタン弾性糸の製造に用いると、ノズル詰まりが起き易く、更に、添加量を多くするに伴い紡調が悪化し、得られたポリウレタン弾性糸の破断強伸度、応力等といった基本糸物性も低下するという欠点があった。
【0004】
また別の方法として、ポリマージオール成分の一部にポリエチレングリコールを用いる等、ポリウレタンを構成する成分に親水性の高いものを用い、吸湿性を有するセグメントをポリウレタン分子鎖中に導入する方法も知られており、例えば特開昭62−290714号公報には平均分子量200〜600のポリエチレングリコールと有機ジカルボン酸又は有機ジカルボン酸とε−カプロラクトン及び/または短鎖ポリオールを反応させてポリオキシエチレン含有率17〜70%、平均分子量500〜3000のポリエーテルエステルポリオールとなし、これを鎖伸長剤の存在下、有機ポリイソシアネートと反応させポリエチレングリコール含有量15〜62重量%のポリウレタン重合体とする方法が記載されている。しかしこの方法では、吸湿性を有するセグメントを分子鎖中に導入するため、この技術を繊維に適用した場合には、得られたポリウレタン弾性糸の耐加水分解性,耐熱性が劣ったり、破断強伸度,応力等といった基本糸物性も低下するという欠点があった。また、特開平10−251371号公報にはポリオール成分,イソシアネート成分にリグニンと浸透剤を均一分散させて成形し、吸水性と生分解性を有するポリウレタンフォームを得る方法が記載されているが、リグニンをポリウレタン分子鎖中に導入するため、この方法を繊維に適用した場合においても、得られたポリウレタン弾性糸の耐加水分解性,耐熱性が劣ったり、破断強伸度,応力等といった基本糸物性も低下するという欠点があった。
【0005】
一方、ポリウレタン成形体に生分解性を付与するには、前述の吸湿性・吸水性を有する粉粒体をポリウレタン溶液に添加する方法において、吸湿性・吸水性を有する粉粒体が生分解性を兼ね備えるものを用いる方法がある。また、ポリマージオール成分の一部に生体由来のものを用い、生分解性を有するセグメントを分子鎖中に導入する方法として、例えば特開平6−128348号公報にはヒドロキシル基を含有する植物質微粉末及び/または短繊維を糖蜜と2価または3価のアルコールとの混合液中に添加分散させ、得られた分散液にポリイソシアネートを添加し反応させる方法が記載されている。しかしこのような方法をポリウレタン繊維に適用した場合には、上述の吸湿性を付与する場合と同様に破断強伸度,応力等といった基本糸物性が低下するという欠点があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述の欠点を克服し、簡単な方法で、紡調を悪化させることなく紡糸することができ、得られるポリウレタン弾性糸の破断強伸度,応力等といった基本糸物性を損なうことなく、優れた吸湿性,生分解性を具備した改質ポリウレタン弾性糸の製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は上記欠点を克服するために鋭意検討を重ねた結果、キチン誘導体であるブチリルキチンがポリウレタン溶液の溶媒と同じ溶媒に溶解し、しかも、アルカリ処理により容易にキチンに再生可能であることに着目し、ブチリルキチンを液状にてポリウレタン紡糸原液に含有させ、これを紡糸した後にアルカリ処理して脱ブチリル化を行うことにより、得られたポリウレタン弾性糸がキチンの有する水酸基に由来する吸湿性,生分解性を発現することを見い出し、本発明に至った。
【0008】
即ち本発明は、下記(A)成分の溶液と(B)成分の溶液を混合して反応させるに際し、反応と同時に又は反応の後に、両反応溶液の溶媒と同じ溶媒に5〜40重量%の濃度で溶解させたブチリルキチン溶液を添加し、均一に混合して紡糸原液とし、該紡糸原液を紡糸した後、得られたブチリルキチン含有ポリウレタン弾性糸をアルカリ処理する改質ポリウレタン弾性糸の製造方法であり、ブチリルキチンの添加量が得られたポリウレタン弾性糸の全体に対して3〜15重量%であり、ポリウレタン弾性糸の紡糸法が乾式紡糸法である改質ポリウレタン弾性糸の製造方法である。
(A)数平均分子量1000〜2500のポリマージオールと、そのジオールに対して110〜210モル%の有機ジイソシアネートを反応して得られる末端にイソシアネート基を2個有するウレタンプレポリマー。
(B)イソシアネート基と反応しうる活性水素基を2個有する鎖伸長剤およびイソシアネート基と反応しうる活性水素基を1個有する末端停止剤。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明に用いられるポリマージオールとしては、ポリオキシエチレングリコール,ポリオキシプロピレングリコール,ポリオキシテトラメチレングリコール,ポリオキシペンタメチレングリコール,ポリオキシヘキサメチレングリコール,ポリオキシプロピレンテトラメチレングリコール等のポリエーテルジオールと、アジピン酸,セバシン酸,マレイン酸等のジカルボン酸の1種または2種以上とから構成されるポリエステルジオール,ポリエーテルポリエステルジオール,ポリラクトンジオール,ポリカーボネートジオール,ポリエステルポリカーボネートジオール等から選ばれる1種または2種以上の数平均分子量1000〜2500のポリマージオールが80重量%以上含まれているものであれば、特に限定されるものではないが、本発明では紡糸後にアルカリ処理をすることが必要であるため、耐アルカリ性を考慮して選定することが好ましい。
【0010】
なお、ポリマージオール中にエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール等の低分子ジオールが混在しているものであっても良いが、数平均分子量1000〜2500のポリマージオールがジオール成分全体の80重量%に満たないと、十分な鎖伸長ができなくなる為、好ましくない。
【0011】
本発明に用いられる有機ジイソシアネートとしては、例えば4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3´−ジクロロ−4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の1種又は2種以上の組み合わせが挙げられる。
【0012】
本発明は、先ず上記ジオール成分と上記有機ジイソシアネート成分を、夫々が固化しない温度にて混合し、90℃以下にて30分〜2時間反応を行い、末端にイソシアネート基を2個有するウレタンプレポリマーを得る。このとき、ジオール成分に対する有機ジイソシアネート成分の量は110〜210モル%の範囲、好ましくは150〜190モル%の範囲とする。ジオール成分に対する有機ジイソシアネートの量が110モル%未満の場合、得られるポリウレタン弾性糸の強度が十分でなく、紡調も悪化するため好ましくなく、また210モル%を越えると、重合体中に未反応の有機ジイソシアネートが多く残留するため、鎖伸長反応を行っても低分子鎖の発生が多くなり好ましくない。
【0013】
次にこのようにして得られた末端にイソシアネート基を2個有するウレタンプレポリマーに、イソシアネート基と反応しうる活性水素基を2個以上有する鎖伸長剤、及びイソシアネート基と反応しうる活性水素基を1個有する末端停止剤を反応させて、ポリウレタン重合体溶液を得る。このときの反応方法は特に限定されるものではなく、バッチ式、紡糸ノズルに直結して連続的に供給する方法等が採用できる。またこのときの反応時間は特に限定されないが、例えばバッチ式の場合は、通常30分〜90分で良い。反応温度は、0〜70℃にて行うのが好ましく、反応温度が低すぎると反応に長時間を要し、効率が悪くなり、逆に高すぎると副反応が促進されるため好ましくない。
【0014】
本発明に用いられるイソシアネート基と反応しうる活性水素基を2個有する鎖伸長剤としては、エチレンジアミン、1,2−プロピレンジアミン、1,3−プロピレンジアミン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、4,4´−ジフェニルメタンジアミン、シクロヘキシレンジアミン、2,4−トリレンジアミン、2,6−トリレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヒドラジン、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール等の1種または2種以上の組み合わせが挙げられる。また、イソシアネート基と反応しうる活性水素基を1個有する末端停止剤としては、ジメチルアミン、メチルエチルアミン、ジエチルアミン、メチル−n−プロピルアミン、メチルイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジ−n−ブチルアミン、ジ−n−ヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン等が挙げられる。
【0015】
本発明では、上述のポリウレタン重合体溶液を得る反応と同時にまたはこの反応の後に、反応溶媒と同じ溶媒に5〜40重量%溶解させたブチリルキチン溶液を、ブチリルキチンが全固形分の3〜15重量%になるように添加し、均一に混合して紡糸原液とする。得られた紡糸原液中のポリウレタンとブチリルキチンの合計の固形分濃度は、特に限定されるものではないが、紡糸可能な粘度の範囲から考慮すると、通常20〜40重量%とすることが好ましい。
【0016】
本発明に用いられるブチリルキチンは、特に限定されるものではなくモノブチリルキチン,ジブチリルキチン或いはこれらの混合物のいずれであってもよい。例えば蟹や海老,昆虫類の外骨格を塩酸等の有機酸により脱カルシウム処理し、更に水酸化ナトリウム等のアルカリ溶液により脱タンパク質処理して得たキチン質を、無水酪酸と過塩素酸の存在下にて20〜30℃に冷却しながら2時間程度反応させることにより得られる。ブチリルキチンの置換度は、溶媒への溶解性の面から、置換度1.5〜2.5のジブチリルキチンを用いるのが好ましい。
【0017】
本発明に用いられる反応溶媒は、上述したウレタンプレポリマー、鎖伸長剤、末端停止剤、ブチリルキチンを溶解することができ、通常用いられる条件にて実質的に上記物質および反応生成物に対し不活性な極性溶媒であれば特に限定されるものではなく、例えばN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。
【0018】
また、上述の紡糸原液中に必要に応じて耐光剤,紫外線吸収剤,ガス変色防止剤,染料,活性剤,艶消剤、油剤等を含有させても良い。
【0019】
続いて上述の如く得られた紡糸原液を、ノズルより高温雰囲気中に吐出してブチリルキチン含有ポリウレタン弾性糸を乾式紡糸法により紡糸するが、その紡糸条件は特に限定されるものではなく、通常の方法で行えばよい。また、湿式紡糸法にも適用できることはもちろんである。
【0020】
次いで、上述のようにして得られたブチリルキチン含有ポリウレタン弾性糸をアルカリ処理するが、該アルカリ処理に用いられるアルカリとしては、水酸化カリウム,水酸化ナトリウム等のアルカリ金属の水酸化物,水酸化カルシウム,水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物等が挙げられる。該アルカリ処理の方法はポリウレタン弾性糸中のブチリルキチンが十分脱ブチリル化する条件であれば特に限定されるものではなく、例えば、40〜100℃の3〜20%水酸化ナトリウム水溶液の浴中で20〜180分処理する方法で良い。次に得られたポリウレタン弾性糸を十分に水洗し、乾燥して、本発明の改質ポリウレタン弾性糸を得る。
【0021】
上述した本発明の方法により、ポリウレタン弾性糸中にキチンが一様に混在し、優れた吸湿性、生分解性を具備した改質ポリウレタン弾性糸を得ることができる。
【0022】
【実施例】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこの範囲に限定されるものではない。
なお、部はすべて重量部を示し、糸切数,弾性回復率,吸湿率,放湿率,生分解性能,強伸度,モジュラスは以下の方法により測定した。
【0023】
〈糸切数〉
紡糸した際の糸切数を計数し、1錘が24時間で切れる回数として算出した。
【0024】
〈弾性回復率〉
日本化学繊維協会発行の「ポリウレタンフィラメント糸試験方法」(昭和53年10月)に準じて、300%伸長時における瞬間伸長回復率を求めた。
【0025】
〈吸湿率・放湿率〉
予め105℃にて60分間乾燥しシリカゲルの入ったデシケータ中で30分間冷却した後、重量を測定しておいた秤量瓶に試料を約1gずつ入れ、蓋を開いた状態で105℃にて60分乾燥し、シリカゲル入りデシケータ中にて30分間放置して冷却し、重量(W0)を測定した。次いで湿度60%のデシケータ中に一晩放置した後、35℃、90%に調湿した恒温恒湿器内に秤量瓶の蓋を開けて入れ、60分後に秤量瓶を取り出し、重量(W1)を測定した。更に25℃、53%に調湿した恒温恒湿器内に蓋を開けて秤量瓶を入れ、60分後に秤量瓶を取り出し、重量(W2)を測定した。
これらの結果から、吸湿率・放湿率は次式により求めた。
吸湿率(%)=(W1−W0)÷W0×100
放湿率(%)=(W1−W2)÷W2×100
【0026】
〈生分解性能〉
ポリウレタン弾性糸を糸巻き器にて300回転巻き、三重に束ねて両端をタコ糸で結び、これを試料として地面より8cm下の土壌内に埋設し、2ケ月後に引張り強さT1(g/d)を測定して、次式により強度保持率を算出した。強度保持率が低いほど生分解性能が高いと判定する。
強度保持率(%)=T1/T0×100
但し、T0は土壌内に埋設する前の引張り強さ(g/d)
【0027】
〈強伸度〉
日本化学繊維協会発行の「ポリウレタンフィラメント糸試験方法」(昭和53年10月)に準じて、破断時の引張り強さ(g/d)及びそのときの伸度(%)を測定した。
【0028】
〈モジュラス〉
日本化学繊維協会発行の「ポリウレタンフィラメント糸試験方法」(昭和53年10月)に準じて、300%伸長時における繊維の引張抵抗度(g/d)を測定した。
【0029】
〔実施例1〕
数平均分子量1818のポリオキシテトラメチレングリコール2869部、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート631部を45℃にて混合した後、75℃にて80分間反応させて、ウレタンプレポリマー3500部を得た。このときのイソシアネート基含有量はウレタンプレポリマー100g中2.290gであった。
【0030】
これとは別に、鎖伸長剤としてエチレンジアミン56.4部と末端停止剤としてジエチルアミン2.1部を、0℃に冷やしたN,N−ジメチルアセトアミド136.4部に加えて良く攪拌し、鎖伸長剤と末端停止剤の混合溶液を得た。
【0031】
次に、先に得たウレタンプレポリマー3400部を、0℃に冷やしたN,N−ジメチルアセトアミド7933部に加え、良く攪拌した後、ウレタンプレポリマーのイソシアネート基に対して、鎖伸長剤と末端停止剤の活性水素基が等モルとなるように鎖伸長剤と末端停止剤の混合溶液を添加し反応させてポリウレタン重合体溶液とし、得られたポリウレタン重合体溶液を7等分した。
これとは別に、ジブチリルキチンをN,N−ジメチルアセトアミドに溶解させて、濃度10%のブチリルキチン溶液を得た。
【0032】
次いで、先に得たポリウレタン重合体溶液にブチリルキチン溶液を添加するが、添加したブチリルキチンが全固形分に対して1,3,5,10,15,20%の添加率となるように添加混合して、全固形分濃度が30%である6種類の紡糸原液を得た。得られた各紡糸原液を直径0.2mmのオリフィスを3個有する紡糸ノズルを用いて乾式紡糸し、500m/分の速度で、25%伸長して捲取り、繊度40デニールのブチリルキチン含有ポリウレタン弾性糸の6種類を得た。
【0033】
続いて、各ブチリルキチン含有ポリウレタン弾性糸を10%水酸化ナトリウム水溶液に80℃にて60分浸漬処理した後、十分水洗し、乾燥して、試料No.1〜No.6の改質ポリウレタン弾性糸を得た。
また、ブチリルキチン溶液を添加しない以外は全く同様にして、比較試料No.1のポリウレタン弾性糸を得た。
得られた各試料の糸切数,繊度,強度,伸度,モジュラス,弾性回復率,吸湿率,放湿率,強度保持率を測定し、結果を表1に示した。
【0034】
【表1】
【0035】
表1から明らかな如く、比較試料No.1はブチリルキチンを添加していないため、吸湿率,放湿率が低く、生分解性能も認められない。また、試料No.1はブチリルキチンの添加率が低いため吸湿率,放湿率,生分解性能に十分な効果が認められず、試料No.6はブチリルキチンの添加率が高すぎるために糸切数が多く、基本糸物性である強度,伸度,モジュラス,弾性回復率の低下も顕著である。これに対して、ブチリルキチンの添加率が3〜15重量%である本発明の試料No.2〜No.5は、優れた吸湿率,放湿率,生分解性能が得られ、且つ、強度,伸度,モジュラス,弾性回復率の基本糸物性の低下も認められない。更には、糸切数の結果から紡糸時の紡調も良好であることが明らかである。
【0036】
〔実施例2〕
数平均分子量1512のポリオキシテトラメチレングリコール2673部、1,4−ブタンジオール22部、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート805部を45℃にて混合した後、85℃にて60分間反応させて、ウレタンプレボリマー3500部を得た。このときのイソシアネート基含有量はウレタンプレポリマー100g中2.823gであった。
【0037】
これとは別に鎖伸長剤としてエチレンジアミン46.4部、1,2−プロピレンジアミン28.6部と末端停止剤としてジエチルアミン2.5部を、0℃に冷やしたN,N−ジメチルアセトアミド180.8部に加えて良く攪拌し、鎖伸長剤と末端停止剤の混合液を得た。
更に、これとは別に、ブチリルキチンをN,N−ジメチルアセトアミドに溶解させて、濃度10%のブチリルキチン溶液を得た。
【0038】
次に、先に得たウレタンプレポリマーを7つのステンレス容器に340部ずつ採り、夫々に0℃に冷やしたN,N−ジメチルアセトアミド793部を加え、良く攪拌した後に、7つの各ウレタンプレポリマーにウレタンプレポリマーのイソシアネート基に対して鎖伸長剤と末端停止剤の活性水素基が等モルとなるように鎖伸長剤と末端停止剤の混合溶液を添加し、更にブチリルキチン溶液を、添加したブチリルキチンが全固形分に対して、1,3,5,10,15,20%の添加率となるように添加混合して反応させて、全固形分濃度が30%である6種類の紡糸原液を得た。
【0039】
各紡糸原液を、直径0.2mmのオリフィスを3個有する紡糸ノズルを用いて乾式紡糸し、600m/分の速度で、120%伸長して捲取り、繊度40デニールのブチリルキチン含有ポリウレタン弾性糸の6種類を得た。続いて、得られた6種類のブチリルキチン含有ポリウレタン弾性糸を10%水酸化ナトリウム溶液に80℃にて60分浸漬処理した後、十分水洗し、乾燥して、試料No.7〜No.12の改質ポリウレタン弾性糸を得た。
【0040】
また、ブチリルキチン溶液を添加しない以外は全く同様にして、比較試料No.2のポリウレタン弾性糸を得た。
各試料の糸切数,繊度,強度,伸度,モジュラス,弾性回復率,吸湿率,放湿率,強度保持率を測定し、結果を表2に示した。
【0041】
【表2】
【0042】
表2から明らかな如く、比較試料No.2はブチリルキチンを添加していないため、吸湿率,放湿率が低く、生分解性も認められない。また、試料No.7はブチリルキチンの添加率が低いため、吸湿率,放湿率,生分解性能について十分な結果が得られず、試料No.12はブチリルキチンの添加率が高すぎるため、糸切数が多く、基本糸物性の低下も顕著である。これに対して、ブチリルキチンの添加率が3〜15重量%である本発明の試料No.8〜No.11は、基本糸物性である強度,伸度,モジュラス,弾性回復率を損うことなく、優れた吸湿率,放湿率,生分解性能を示し、更には、糸切数の結果から紡糸時の紡調が良好であることが明らかである。
【0043】
【発明の効果】
このように本発明は、吸湿性と生分解性を有するキチンをブチリルキチンとして、通常のポリウレタン弾性糸の乾式紡糸法に使用される溶媒に溶解し、液状にして紡糸原液に含有させるため、添加率を高めても紡調を悪化させにくく、さらに得られたブチリルキチン含有ポリウレタン弾性糸をアルカリ処理し、ブチリルキチンを脱ブチリル化してキチンに再生させることにより、ポリウレタン弾性糸内にキチンが一様に混在し、破断強伸度,応力等の基本糸物性を損うことなく、優れた吸湿性と生分解性を具備した改質ポリウレタン弾性糸を得ることができる。
Claims (2)
- 下記(A)成分の溶液と(B)成分の溶液を混合して反応させるに際し、該反応と同時に又は該反応の後に、ブチリルキチン含有ポリウレタン弾性糸の全体量に対して3〜15重量%となる量のブチリルキチンを、該両反応溶液の溶媒と同じ溶媒に5〜40重量%の濃度で溶解させて添加し、均一に混合して紡糸原液とし、該紡糸原液を紡糸した後、得られたブチリルキチン含有ポリウレタン弾性糸をアルカリ処理することを特徴とする改質ポリウレタン弾性糸の製造方法。
(A) 数平均分子量1000〜2500のポリマージオールと、該ジオールに対して1 10〜210モル%の有機ジイソシアネートを反応して得られる末端にイソシアネー ト基を2個有するウレタンプレポリマー。
(B) イソシアネート基と反応しうる活性水素基を2個有する鎖伸長剤およびイソシア ネート基と反応しうる活性水素基を1個有する末端停止剤。 - ポリウレタン弾性糸の紡糸法が、乾式紡糸法であることを特徴とする請求項1に記載の改質ポリウレタン弾性糸の製造方法。
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