JP4416818B2 - ポリウレタン弾性繊維の製造方法 - Google Patents
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Description
ポリウレタン弾性繊維を使用した水着を、水泳プール等の活性塩素濃度0.5〜3ppmの殺菌用塩素水中に繰り返し暴露すると、ポリウレタン弾性繊維の弾性機能が著しく損われたり、断糸を生じる。特に、ポリアミド繊維とポリウレタン弾性繊維とからなる水着の場合は固着染料の変退色が生じる。
(a)少なくともZn、Mgから選択された酸化物、水酸化物、またはZnとMgの複合酸化物のうち少なくとも1種の金属化合物粒子
(b)脂肪酸、スチレン/無水マレイン酸共重合体及びスチレン/無水マレイン酸共重合体のエステル化物から選ばれた少なくとも1種の表面処理剤。
本発明の表面処理剤が付着している特定の金属化合物を含有するポリウレタン紡糸原液は、フィルター目詰まりや紡糸時の糸切れが極めて少なく、長期にわたって安定した紡糸を行うことができる。
脂肪酸としては、炭素原子数10〜30の直鎖又は分岐したアルキル基を有するモノ又はジカルボン酸であり、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸等が挙げられる。また、脂肪酸エステルであってもよい。例としては、前記脂肪酸と炭素原子数1〜30の直鎖又は分岐したアルキル基を有するモノ又は多価アルコールとのエステルであり、グリセリルモノステアレート、ステアリルオレエート、ラウリルオレエート等が挙げられる。脂肪酸エステルよりは脂肪酸の方が効果があり、特に炭素数10〜20の直鎖又は分岐状の脂肪酸が好ましく、ステアリン酸が最も好ましい。
スチレン/無水マレイン酸共重合体の誘導体として、エステル化誘導体(無水マレイン酸部分のアルコールによるエステル化)、スルホン化誘導体(スチレン部分のスルホン化)、イミド化誘導体(無水マレイン酸部分のアミンによるイミド化)、不飽和アルコールとの共重合体等の各種がある。各種の誘導体の中で、エステル化誘導体が最も好ましく、望ましくはエステル化に用いるアルコールのアルキル基が3〜20の直鎖又は分岐状の炭素原子数のものがよい。下記(2)式にその一例を示す。
不飽和アルコールとの共重合体の例としては、下記(3)式で示されるスチレン/無水マレイン酸/アリルアルコールの共重合体とポリオキシアルキレングリコールとのグラフト重合体が挙げられる。
シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤も、本発明の金属化合物へ付着しその効果を発揮する。シラン系カップリング剤の例としては、γ−グリシドキシプロピル・トリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピル・トリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピル・トリメトキシシラン等が挙げられる。チタネート系カップリング剤の例としては、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロフォスフェート)チタネート、イソプロピルトリデシルベンゼンスルホニルチタネート等が挙げられる。
これらの表面処理剤の中で、脂肪酸、スチレン/無水マレイン酸共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体のエステル化物の使用が望ましい。
本発明中の金属化合物は、特公昭60−43444号公報、特公昭61−35283号公報、特開昭59−133248号公報、特開平6−81215号公報に、ポリウレタン弾性繊維の塩素劣化を防止する添加剤として開示されている。しかし、これらの塩素劣化防止剤は、酸性下での染色処理や、ポリアミド繊維との交編で幅広く行われている染料固着のためのタンニン処理によって、ポリウレタンから溶出したり、添加剤の活性が失活したりして、塩素耐久性の早期低下を招く。例えば、水着として水泳プールで使用される場合、弾性機能が損なわれ着用感が乏しくなったり、着用中に断糸が発生したりする。特公昭60−43444号公報の5頁には、染色下で酸化亜鉛が不活性化または溶解し塩素耐久性が低下することを示唆する記載もある。本発明者らは、ポリウレタン中で特定の表面処理剤が前記金属化合物粒子に付着しているポリウレタン弾性繊維は、染色処理やタンニン処理を行っても塩素耐久性の著しく向上するポリウレタン弾性繊維を得ることが出来るばかりでなく、紡糸以前に付着させた場合、紡糸原液中の金属化合物の二次凝集によるフィルター目詰まりや紡糸時の糸切れが極めて少なく、長期安定にポリウレタン弾性繊維が製造できることを初めて明らかにした。
本発明の表面処理剤を有効量付着している金属化合物粒子は小さい粒径ほど、ポリウレタン弾性繊維の塩素耐久性に一層効果を有し、紡糸以前の段階で付着させた場合には、フィルター詰まりや紡糸時の糸切れもより少なくなりポリウレタン弾性繊維の製造安定性が高くなる。好ましい平均粒径は5μm以下である。
ポリマーグリコールとしては、例えば、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール、ポリオキシペンタメチレングリコール等のホモポリエーテルジオール、又は炭素原子数2から6の2種以上のオキシアルキレンから構成される共重合ポリエーテルジオール、アジピン酸、セバチン酸、マレイン酸、イタコン酸、アゼライン酸、マロン酸等の二塩基酸の一種または二種以上とエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、ヘキサメチレングリコール、ジエチレングリコール、1,10−デカンジオール、1,3−ジメチロールシクロヘキサン、1,4−ジメチロールシクロヘキサン等のグリコールの一種または二種以上とから得られたポリエステルジオール、又は、ポリエステルアミドジオール、ポリエステルエーテルジオール、又はポリ−ε−カプロラクトンジオール、ポリバレロラクトンジオール等のポリラクトンジオール、ポリカーボネートジオール、ポリアクリルジオール、ポリチオエーテルジオール、ポリチオエステルジオール、又はこれらジオールの共重合物、混合物等を挙げられる。
ポリウレタンは、公知のポリウレタン化反応技術を用いることができる。例えば、ポリアルキレングリコールと芳香族ジイソシアネートとを、芳香族ジイソシアネート過剰の条件下で反応させ、極性溶媒であるジメチルアセトアミド等で溶解しポリウレタンプレポリマー溶液を作成し、次いでこれに鎖伸長剤と末端停止剤を反応させることによってポリウレタン溶液が得られる。
このポリウレタン溶液に、本発明の金属化合物以外に、ポリウレタン弾性繊維に通常用いられる他の化合物、例えば紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、耐ガス安定剤、着色剤、艶消し剤、充填剤等を添加してもよい。
[1]破断強度の測定
引張試験機(オリエンテック(株)製商品名UTM−III 100型)を使用し、20℃、湿度65%の条件下で試料長5cmの試験糸を50cm/分の速度で引張破断強度の測定を行う。
[2]有効塩素濃度の測定
塩素水試料25mlを100mlの三角フラスコに秤量し、乾燥済のヨウ化カリウム2gを加えてふり混ぜる。1/100Nのチオ硫酸ナトリウム溶液で滴定し、溶液が橙色から薄黄色に変化した時点で澱粉溶液を加える。ヨウ素澱粉反応による青色が消えるまで1/100Nのチオ硫酸ナトリウム溶液で滴定する。別に、イオン交換水25mlを採取し、同上の操作により滴定しブランク滴定量を求める。有効塩素濃度Hは、下記(4)式で求まる。
[3]染色処理
試料(染色される繊維)の量に対し2重量%の染料(Irgalan Black BGL200[バイエル(株)製])と硫安12gを9lイオン交換水に溶解し酢酸でpH4.5の染色液に調整する。50%伸長下の試料を185℃×1分間熱セット処理し、その後95℃×40分間染色処理する。処理後に10分間水道水の流水中で水洗する。この染色処理を行った試料を一昼夜20℃で風乾する。
[4]タンニン処理
イオン交換水6リットルにタンニン酸(商品名:ハイフィックスSLA、大日本製薬(株)製)4.5gに酢酸を加えてpH3.8とし、前述の染色条件処理を施した試料を50%伸長下に、処理液が25℃の時点で投入し、その後処理液を90℃まで昇温し、30分間浸漬処理を行う。この後10分間水道水の流水中で水洗する。このタンニン液処理を行った試験糸を一昼夜20℃で風乾する。
この強力保持率が大きいほど、染色処理、タンニン液処理による糸の弾性機能の低下が少ない。
[5]塩素耐久性評価
タンニン液処理を行った試料を、次亜塩素酸ナトリウム液(佐々木薬品製)をイオン交換水で希釈して有効塩素濃度3ppmとし、クエン酸と燐酸水素ナトリウムの緩衝液でpHを7に調整した液中に、水温30℃で、50%伸長下で浸漬し、1サイクル8時間にて経時的に試料を採取し、破断強度を測定し、下記(6)式で表される強力保持率ΔTを求める。
この強力保持率が50%になる時間τ1 / 2 (Hr)で塩素耐久性を評価する。
τ1 / 2 (Hr)が大きいほど、塩素耐久性が優れる。
[6]紡糸原液のフィルター詰まり性評価
ポリウレタン紡糸原液を2l/Hrの一定流量で、直径17mmの10μナスロンフィルター(日本精線(株)製)を通過させ、0.1Hr後と1Hr後の送液圧力から下記(7)式で表されるフィルター詰まり圧力上昇率ΔPを求める。
ΔPが大きいほど、フィルター詰まりが大きいことを表す。
[7]紡糸安定性評価
ポリウレタン紡糸原液を40μナスロンフィルター(日本精線(株)製)に通過させ、0.2mmφ×4個のノズルから吐出させ乾式紡糸を行い、40デニール/4フィラメントのポリウレタン弾性繊維を一旦巻き取り速度を300m/分に3分間固定後、巻き取り速度を徐々に上昇させ、紡糸筒内で糸切れが発生した時点の巻き取り速度がXm/分であった場合、(8)式にしたがって算出した1フィラメント当たりの極限単糸デニールで紡糸安定性を評価する。
1フィラメント当たりのデニール(極限単糸デニール)が小さいほど、そのポリウレタンは紡糸安定性が優れている。
平均分子量1,900のポリテトラメチレンエーテルグリコール1500g及び4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート312gを、窒素ガス気流中60℃において90分間攪拌しつつ反応させて、両末端にイソシアネート基を有するポリウレタンプレポリマーを得た。ついで、これを室温まで冷却した後、ジメチルアセトアミド2500gを加え、溶解してポリウレタンプレポリマー溶液を調製した。
ステアリン酸の5重量%エタノール溶液と、ZnO(白水化学(株)製、平均粒径1μ以下)をヘンシェルミキサーで室温下で混合後、100℃で乾燥して、ステアリン酸が1重量%付着したZnOを得た。
実施例1のZnOの代わりに、MgO、Mg(OH)2 を用いて実施例1と同様にしてポリウレタン弾性繊維を製造した。
〔実施例4、5〕
実施例1のステアリン酸の代わりに、ラウリン酸(ナカライテスク(株)製)、(2)式で示されるスチレン/無水マレイン酸共重合体のエステル化物(エルフ・アトケム・ジャパン(株)製)でZnOに対し2重量%付着させたZnOを用いて、実施例1と同様にしてポリウレタン弾性繊維を製造した。
実施例1において、ステアリン酸が付着されてないZnOを用いて、ポリウレタン紡糸原液を作成し、実施例1と同様にポリウレタン弾性繊維を製造した。
〔比較例2〕
実施例1において、ステアリン酸が付着したZnOを添加しないで、実施例1と同様にして、ポリウレタン弾性繊維を製造した。
実施例1において、ZnOに対して0.1重量%、20重量%のステアリン酸を付着したZnOを各々用いて、実施例1と同様にポリウレタン弾性繊維を製造した。
実施例1〜5及び比較例1〜4で得られたポリウレタン紡糸原液のフィルター詰まり性、紡糸安定性、及びポリウレタン弾性繊維の染色−タンニン液処理後の強力保持率、塩素耐久性の評価結果を表1、2に示す。
ZnO20重量%のジメチルアセトアミド中に、ZnOに対して4重量%の(2)式で示されるスチレン/無水マレイン酸共重合体のエステル化物をホモミキサーで2hr分散し、表面処理をする。この分散液を用いて、実施例1と同様にポリウレタン固形分に対して、4,4’−ブチリデンビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)を1重量%、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロ−ベンゾトリアゾールを0.5重量%、及び、ZnO3重量%となるようにホモミキサーで分散させて、実施例1のポリウレタン溶液と混合し、ポリウレタン紡糸原液を得た。実施例1と同様にして、ポリウレタン弾性繊維を製造した。
実施例1において、ステアリン酸が付着されてないZnOを用いてポリウレタン紡糸原液を作成し、ZnOに対して4重量%のステアリン酸をこの紡糸原液に添加し、混合した。実施例1と同様にして、ポリウレタン弾性繊維を製造した。
〔実施例8〕
比較例1のポリウレタン紡糸原液を巻き取る際に、ラウリン酸を油剤に対して2重量%を45℃で分散させた油剤を、ポリウレタン弾性繊維に対して6重量%付与した。
Claims (2)
- 下記(a)を満足する金属化合物粒子を含有するポリウレタン弾性繊維の製造において、下記(b)を満足する表面処理剤を溶解又は分散させた溶液を、金属化合物粒子に直接噴霧又は混合処理して、金属化合物に対して0.5〜10重量%となる量の表面処理剤を室温で付着させた後、溶媒を除去して得られた該金属化合物粒子が、ポリウレタンに対して0.5〜10重量%含有されているポリウレタン紡糸原液を紡糸することを特徴とするポリウレタン弾性繊維の製造方法。
(a)少なくともZn、Mgから選択された酸化物、水酸化物、またはZnとMgの複合酸化物のうち少なくとも1種の金属化合物粒子。
(b)脂肪酸、スチレンと無水マレインの酸共重合体及びスチレンと無水マレイン酸の共重合体のエステル化物から選ばれた少なくとも1種の表面処理剤。 - 下記(a)を満足する金属化合物粒子を含有するポリウレタン弾性繊維の製造において、下記(b)を満足する表面処理剤をポリウレタン溶剤中に溶解又は分散させ、金属化合物に対して0.5〜10重量%となる量の表面処理剤を室温で付着させた該金属化合物粒子が、ポリウレタンに対して0.5〜10重量%含有されているポリウレタン紡糸原液を紡糸することを特徴とするポリウレタン弾性繊維の製造方法。
(a)少なくともZn、Mgから選択された酸化物、水酸化物、またはZnとMgの複合酸化物のうち少なくとも1種の金属化合物粒子。
(b)脂肪酸、スチレンと無水マレインの酸共重合体及びスチレンと無水マレイン酸の共重合体のエステル化物から選ばれた少なくとも1種の表面処理剤。
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