JP2006342448A - ポリウレタン系弾性繊維及びその製造方法 - Google Patents

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裕司 植村
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Abstract

【課題】 優れた伸長回復特性を有し、かつ耐塩素水性、NOx耐黄変性、及び塩素耐黄変性がともに優れ、紡糸性が良好であり、特にスイミングプールなどで使用される水着用として好適なポリウレタン系弾性繊維を提供する。また、そのポリウレタン系弾性繊維を安定に製造する方法を提供する。
【解決手段】 下記の化学構造式1で表されるヒンダードアミン系化合物を0.1〜3重量%含有するポリウレタン系弾性繊維である。このヒンダードアミン系化合物を含む紡糸溶液を乾式紡糸することにより製造する。
【化1】
Figure 2006342448

【選択図】 なし

Description

本発明は、ポリウレタン系弾性繊維及びその製造方法に関する。さらに詳しくは、塩素処理水による糸物性の劣化に対して優れた耐性を備えると共に、NOxガス、塩素などによる黄変色に対し優れた耐性を備え、かつ優れた伸長回復特性を具備し、特にスイミングプールなどで使用される水着用に好適なポリウレタン系弾性繊維に関するものである。
ポリウレタンやポリウレタンウレアからなる弾性繊維(以下、ポリウレタン系弾性繊維という)は、高度のゴム弾性を有し、引張応力、回復性などの機械的性質、熱的性質に優れているため、レッグウェア、インナーウェア、スポーツウエアなどに広く使用されている。
しかし、ポリウレタン系弾性繊維が使用された衣料製品は、大気条件に曝したときにしばしば黄色に変色する問題がある。すなわち、ポリウレタン系弾性繊維を構成するポリウレタンやポリウレタンウレアはその化学構造から、特に窒素酸化物(NOx)により変色し易いという欠点がある。NOxは、燃焼ガスや排気ガス中に含まれ、極めて微量でもポリウレタン系弾性繊維の著しい黄変色を引き起こす。
さらに、ポリウレタン系弾性繊維が使用された衣料製品を塩素漂白剤に長時間浸せきし、洗濯を行うことを繰り返した場合、その製品中のポリウレタン系弾性繊維が変色し、しかも弾性機能が大きく低下するという問題点もある。例えば、ポリウレタン系弾性繊維を使用した水着を水泳プールなどの活性塩素濃度0.5〜3ppmの殺菌用塩素水中に繰り返し浸けると、ポリウレタン系弾性繊維は黄変色を引き起こし、さらに弾性機能が著しく損なわれたり、糸切れを生じるという問題がある。
ポリウレタン系弾性繊維のかかる問題のうち、NOxによる黄変色を改善するためにはヒンダードアミン系の劣化防止剤を繊維中に配合することが有効であり、これまでに数多くのヒンダードアミン化合物が検討されてきている。
例えば、ポリウレタンに配合するヒンダードアミン化合物としてポリジエチルアミノエチルメタクリレート(以下、DEAMと略す)が提案されている(特許文献1参照)。しかしながら、このDEAMは耐塩素水性及び塩素耐黄変性が劣っているので、DEAMを含有させたポリウレタン系弾性繊維を殺菌塩素水中に曝した際に繊維が黄色に変色し、さらに弾性機能が著しく損なわれるという問題があった。しかも、繰り返し伸長後の残留歪み率(以下、SET%と称する)が大きく、伸長回復特性が劣るという問題があった。
別のヒンダードアミン化合物として、ジイソプロピルアミノエチルメタクリレート及びn−デシルメタクリレートの共重合体(以下、DIPAM/DMと略す)が提案されている(特許文献2参照)。このDIPAM/DMを含有させたポリウレタン系弾性繊維は優れたNOx耐黄変性を示し、かつDEAMの場合に比べてSET%は小さく、優れた伸長回復特性を示す。しかしながら耐塩素水性が劣っており、殺菌塩素水中に曝した際にポリウレタン系弾性繊維の弾性機能が損なわれるという問題があった。しかも、DIPAM/DMは、ポリウレタン系重合体を製造する際の溶剤として多用されるN、N−ジメチルアセトアミド(以下、DMAcと略す)への溶解性が劣っているので、ポリウレタン系重合体溶液中にてDIPAM/DMが相分離、凝集を生じ易く、ポリウレタン弾性繊維中への均一な分散が困難であり、紡糸安定性を悪化させるという問題があった。
また、4−ピペリジルメタクリレート化合物と他のメタクリレート化合物とから重合された特定の構造を有するヒンダードアミン化合物、フェノール系酸化防止剤、及び、亜リン酸エステル系酸化防止剤を組み合わせて添加することによりポリウレタン系弾性繊維のNOx耐黄変性を向上させることが提案されている(特許文献3、4)。しかしながら、このポリウレタン系弾性繊維は、耐塩素水性が十分でないという問題があった。
一方、ポリウレタン系弾性繊維の耐塩素水性は、ポリエーテルジオールを原料に用いたポリエーテル系ポリウレタンウレアからなる弾性繊維よりも、脂肪族ポリエステルジオールを原料に用いたポリエステル系ポリウレタンウレアからなる弾性繊維の方が良好である。しかし、それでも耐塩素水性は実用上の要求水準を満たすことはできない。そこで、ポリウレタン系弾性繊維の耐塩素水性を改善するための添加剤が種々検討されてきている。
例えば、ポリエーテル系ポリウレタン系弾性繊維の耐塩素水性を改善するための無機系塩素劣化防止剤として、酸化亜鉛、酸化マグネシウムや酸化アルミニウム等、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ハイドロタルサイト等、酸化マグネシウムと酸化亜鉛の固溶体、酸化亜鉛の結晶にアルミニウムが固溶した酸化亜鉛系固溶体、亜鉛とアルミニウムの複合酸化物、また、フンタイト及びハイドロマグネサイトの鉱物混合物が提案されている(特許文献5〜12参照)。しかしながら、何れの無機系塩素劣化防止剤の場合でも耐塩素水性を改善させることはできるが、NOx耐黄化性を改善することは困難である。
そこで、NOx耐黄変性、塩素耐黄変性、及び耐塩素水性を満足するポリウレタン系弾性繊維を得るために、ヒンダードアミン化合物であるDEAMと無機系塩素劣化防止剤を組み合わせて添加することを先に提案した(特許文献13)。しかしながら、この場合、ポリウレタン系弾性繊維は、繰り返し伸長後の残留歪み率(SET%)が大きく、伸長回復特性が不十分であるという問題があった。
特公昭36−19491号公報 特公昭46−2904号公報 特開2000−239519号公報 特開2000−239520号公報 特公昭60−43444号公報 特公昭61−35283号公報 特開昭59−133248号公報 特許第2887402号公報 特許第3228351号公報 特開2002−121537公報 特開平10−292225号公報 特表平10−508916号公報 特開2000−282328号公報
本発明の目的は、かかる従来技術の問題点に鑑み、優れた伸長回復特性を有し、かつ耐塩素水性、NOx耐黄変性、及び塩素耐黄変性がともに優れ、紡糸性が良好であり、特にスイミングプールなどで使用される水着用として好適なポリウレタン系弾性繊維を提供すること、およびこのポリウレタン系弾性繊維を安定に製造する方法を提供することにある。
本発明のポリウレタン系弾性繊維は、上記目的を達成するため、下記の化学構造式1で表されるヒンダードアミン系化合物を含有することを特徴とするものである。
Figure 2006342448
(式中、R1は水素原子あるいはメチル基のいずれかを表し、R2は炭素数3〜15のアルキル基を表し、また、n、mは1.4≦(n/m)≦9となる正の数を表す。)
また、このポリウレタン系弾性繊維は、上記の化学構造式1で表されるヒンダードアミン系化合物を含有する紡糸溶液を溶液紡糸することにより製造することができるものである。
本発明によれば、優れた伸長回復特性を有し、かつ、塩素耐黄変性、NOx耐黄変性、及び耐塩素水性がともに優れているポリウレタン系弾性繊維とすることができ、特にスイミングプールなどで使用される水着用途に好適なポリウレタン系弾性繊維とすることができる。また、このポリウレタン系弾性繊維を良好な紡糸性でもって製造することができる。
以下、本発明について、さらに詳細に述べる。
本発明のポリウレタン系弾性繊維は、ポリウレタン系重合体を紡糸することにより得られる繊維である。
ここで、ポリウレタン系重合体は、主構成原料がポリマージオールとジイソシアネートとジアミンであるポリウレタンウレア重合体であってもよいし、主構成原料がポリマージオールとジイソシアネートとジオールであるポリウレタン重合体であってもよいし、またポリウレタンウレア重合体とポリウレタン重合体の混合物もしくは共重合体であってもよい。
ポリウレタン系重合体を製造する際の原料として用いられるポリマージオールには、ポリエーテル系グリコール、ポリエステル系グリコール、ポリカーボネートジオールなどが用いられる。
ポリウレタン系弾性繊維を特に水着に使用する場合に要求される、黴による脆化の防止という観点からすると、ポリマージオールとしてポリエーテル系グリコールが好ましい。
このポリエーテル系グリコールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(以下、PTMGと略す)、テトラヒドロフラン(以下、THFと略す)と環状エーテルやジオールとを共重合させた共重合ポリテトラメチレンエーテルグライコール(以下、共重合PTMGと略す)が挙げられる。この共重合PTMGとしては、例えば、THFと3−メチルTHFとの共重合体(以下、3M−PTMGと略す)、THFと2,3−ジメチルTHFとの共重合体、THFとエチレンオキシドとの共重合体がある。さらに、THFとネオペンチルグリコールとの共重合体なども用いることが出来る。また、これらのポリエーテル系グリコールの1種または2種以上を混合もしくは共重合させて使用するのも好ましい。
また、ポリウレタン系弾性繊維として耐摩耗性や耐光性が特に必要とされる場合には、ブチレンアジペート、ポリカプロラクトンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオールとアジピン酸より形成されるポリエステルポリマージオール、ネオペンチルグリコールと1,12−ドデカンジオン酸より形成されるポリエステルポリマージオールや、ポリカーボネートジオールなどが、ポリマージオールとして好ましい。
こうしたポリマージオールは単独で使用してもよいし、2種以上を混合もしくは共重合させて用いてもよい。伸度、強度、弾性回復力、耐熱性に優れたポリウレタン系弾性繊維を得る観点からすると、ポリウレタン系重合体の原料に用いられるポリマージオールの数平均分子量は1000以上8000以下の範囲にあるのが好ましく、1800以上6000以下の範囲にあるのがより好ましい。
また、ポリウレタン系重合体の原料として用いられるジイソシアネートとしては、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート、芳香脂肪族ジイソシアネート、これらのジイソシアネートの変性体(カーボジイミド変性体、ウレタン変性体、ウレトジオン変性体など)及びこれらの2種以上の混合物などが好ましい。
前記芳香族ジイソシアネートの具体例としては、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、MDIと略記する)、4,4’−ジイソシアナトビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン、1,5−ナフチレンジイソシアネート、1,4−ジイソシアネートベンゼン、キシリレンジイソシアネート、2,6−ナフタレンジイソシアネートなどが好ましい。
前記脂肪族ジイソシアネートの具体例としては、エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエート、ビス(2−イソシアナトエチル)カーボネート、2−イソシアナトエチル−2,6−ジイソシアナトヘキサノエートなどが好ましい。
前記脂環族ジイソシアネートの具体例としては、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、ビス(2−イソシアナトエチル)−4−シクロヘキシレン−1,2−ジカルボキシレート、2,5−ノルボルナンジイソシアネート、2,6−ノルボルナンジイソシアネート、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(以下、H12MDIと称する。)、メチルシクロヘキサン2,4−ジイソシアネート、メチルシクロヘキサン2,6−ジイソシアネート、シクロヘキサン1,4−ジイソシアネート、ヘキサヒドロキシリレンジイソシアネート、ヘキサヒドロトリレンジイソシアネート、オクタヒドロ1,5−ナフタレンジイソシアネートなどが好ましい。
前記芳香脂肪族ジイソシアネートの具体例としては、m−キシリレンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネート、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどが好ましい。
これらのうち、各種用途において、最終製品の強度を向上させ、優れた耐熱性や強度を得る観点から、芳香族ジイソシアネートが好ましく、特に好ましいものはMDIである。また、ポリウレタン系弾性繊維の黄変を抑制する観点からは脂肪族ジイソシアネートが好ましい。そして、これらのジイソシアネートは単独で使用されてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
本発明のポリウレタン系重合体の原料に用いられる鎖伸長剤は低分子量ジアミンが好ましい。低分子量ジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,3−ブタンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,3−ジアミノ−2,2−ジメチルブタン、N−メチルアミノビス(3−プロピルアミン)、1,5−ジアミノペンタン、1,3−ジアミノペンタン、3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、ヘキサメチレンジアミン、1,3−シクロヘキシルジアミン、ヘキサヒドロメタフェニレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、ビス(4−アミノフェニル)フォスフィンオキサイド、m−キシリレンジアミンなどが好ましい。これらの低分子量ジアミンから1種または2種以上を選択して使用するのが好ましい。特に伸度及び弾性回復性、さらに耐熱性に優れたものを得る観点からエチレンジアミンが好ましい。
また、鎖伸長剤として、低分子量ジオールを用いることもできる。低分子量ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1、3プロパンジオール、1、4ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,2−プロピレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジオール、パラキシリレンジオール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン、ビスヒドロキシエチレンテレフタレートなどが好ましい。これらの低分子ジオールから1種または2種以上が選ばれて用いられる。
さらに、鎖伸長剤として、エタノールアミンのような水酸基とアミノ基を分子中に有するものが使用されてもよい。これらの鎖伸長剤に、架橋構造を形成することのできるトリアミン化合物、例えば、ジエチレントリアミンなどが効果が失われない程度に使用されてもよい。
本発明のポリウレタン系弾性繊維には、特定のヒンダードアミン系化合物を含有させることが重要である。このヒンダードアミン系化合物は、下記の化学構造式1で表されるヒンダードアミン系化合物である。
Figure 2006342448
(式中、R1は水素原子あるいはメチル基のいずれかを表し、R2は炭素数3〜15のアルキル基を表し、また、n、mは1.4≦(n/m)≦9となる正の数を表す。)
具体的には、例えば、下記の化学構造式2で表される、ジエチルアミノエチルメタクリレート及びn−ドデシルメタクリレートの共重合体(以下、DEAM/DDMと略す)が挙げられる。
Figure 2006342448
(式中、n、mはn/m=2.54となる正の数である。)
上記した特定のヒンダードアミン系化合物は、DMAcへの溶解性が良好であるので、DMAc溶媒を用いたポリウレタン系重合体溶液中に均一に分散させることができ、ポリウレタン系弾性繊維中に均一に分散させることができる。しかも、このヒンダードアミン系化合物を含有させたポリウレタン系弾性繊維は、優れた伸長回復特性を有し、塩素処理水による糸物性の劣化に対する抑制効果に優れ、さらに、NOxガスや塩素などによる黄色化に対する抑制効果にも優れている。
このヒンダードアミン系化合物による効果を十分なものとし、かつ、繊維の物理的特性に悪影響を与えない観点から、上記ヒンダードアミン系化合物の含有量は、繊維重量に対し0.1〜3重量%であることが好ましく、特に0.2〜2重量%であることがより好ましい。
本発明のポリウレタン系弾性繊維を、特に高い耐塩素水性が要求される水着用途に用いる場合には、前記したヒンダードアミン系化合物とともに、無機系塩素劣化防止剤を使用することが好ましい。
かかる無機系塩素劣化防止剤としては、下記の群(1)〜4))から選択された少なくとも1種の金属化合物が用いられる。
1)ハイドロタルサイト類化合物、
2)フンタイト及びハイドロマグネサイトの混合物、
3)Ca、Mg、Zn、Al、Baから選択された金属の酸化物、複合酸化物、水酸化物のいずれか、並びに、
4)Ca、Mg、Zn、Al、Baから選択された金属の炭酸塩、酸化物、複合酸化物、及び水酸化物の群から選択された2種以上からなる固溶体。
かかる無機系塩素劣化防止剤としては、例えば、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、2価金属M(但し、MはZn、Ca、Mg、Baから選択される少なくとも1種を表す)とアルミニウムを含有しアルミニウムに対する2価金属Mのモル比が1〜5である複合酸化物、MgOとZnOの複合酸化物、2ZnO・ZnAl24、3ZnO・ZnAl24、4ZnO・ZnAl24、5ZnO・ZnAl24で表される複合酸化物、Mg6Al2(OH)16CO3・4H2OやMg4.5Al2(OH)13CO3・3.5H2Oに代表されるハイドロタルサイト類化合物、MgO/ZnO固溶体、ZnOにAlが固溶した酸化亜鉛系固溶体、MgO/ZnO/AlO固溶体、Mg2Ca(CO34(フンタイト)及びMg4(CO34・Mg(OH)3・4H2O(ハイドロマグネサイト)の混合物等が好ましい。
特に、フンタイト及びハイドロマグネサイトの混合物、ハイドロタルサイト類化合物、酸化亜鉛、MgO/ZnO固溶体、ZnOにAlが固溶した酸化亜鉛系固溶体、並びに、xZnO・ZnAl24(ただしxは2〜5の整数を示す。)が好ましい。
この無機系塩素劣化防止剤を含有させることにより、耐塩素劣化の効果を一層高めることができる。この効果を十分なものとし、かつ、繊維の物理的特性に悪影響を与えない観点から、無機系塩素劣化防止剤は繊維重量に対し0.1〜10重量%含有されるのが好ましく、1〜5重量%含有されるのがより好ましく、2〜4重量%含有されるのがさらに好ましい。
この無機系塩素劣化防止剤は紡糸溶液中に配合されて紡糸されるので、紡糸の安定性の観点から、無機系塩素劣化防止剤は、平均粒径2μm以下の微細な粉末であることが好ましく、平均粒径1μm以下の微細な粉末であることが一層好ましい。
この無機系塩素劣化防止剤を微細粉末化するためには、無機系塩素劣化防止剤を、DMAc、ジメチルホルムアミド(以下、DMFと略する)、ジメチルスルホキシド(以下、DMSOと略する)、N−メチルピロリドン(以下、NMPと略する)などやこれらを主成分とする溶剤、他の添加剤、例えば増粘剤等と混合し、スラリーを調製し、縦型または横型ミル等によって粉砕する方法を用いることが好ましい。
また、この無機系塩素劣化防止剤の繊維中への分散性を向上させ、紡糸を安定化させる等の目的で、例えば、脂肪酸、脂肪酸エステル、リン酸エステル、ポリマージオール系有機物等の有機物、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、水ガラス、脂肪酸金属塩またはこれらの混合物で表面処理された無機系塩素劣化防止剤を用いることも好ましい。
本発明のポリウレタン系弾性繊維の繊度、断面形状などは特に限定されるものではない。例えば、断面形状は円形であってよく、また扁平であってもよい。
本発明のポリウレタン系弾性繊維は、必要に応じ各種安定剤や顔料などが含有されていてもよい。例えば、耐光剤、酸化防止剤などとして、いわゆるBHTや住友化学工業(株)製の“スミライザー”GA−80やアメリカン・サイナミド社製の“Cyanox”1790やp−クレゾールとジビニルベンゼンの共重合体をはじめとする両ヒンダードフェノール系薬剤、クラリアント社製の“Hostanox”O3やグレイトレイクスケミカルズ(株)製の“Lowinox”CA22、“Lowinox”44B25をはじめとする片ヒンダードフェノール系薬剤、クラリアント社製の“Hostanox”SE10や“Hostanox”SE4、住友化学工業(株)製の”スミライザー”TP−Dや”スミライザー”TPMをはじめとする硫黄系薬剤、チバガイギー社製“チヌビン”等のベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系薬剤、住友化学工業(株)製の“スミライザー”P−16等のリン系薬剤、酸化チタン、カーボンブラック等の無機顔料、ポリフッ化ビニリデンなどを基とするフッ素系樹脂粉体またはシリコーン系樹脂粉体、ステアリン酸マグネシウムやステアリン酸カルシウム等の金属石鹸、銀や亜鉛やこれらの化合物などを含む殺菌剤、消臭剤、またシリコーン、鉱物油などの滑剤、硫酸バリウム、酸化セリウム、ベタインやリン酸化合物、リン酸エステル化合物などの各種の帯電防止剤などが添加され、またポリマと反応して存在することが挙げられる。そして、特に光や各種の酸化窒素などへの耐久性をさらに高めるには、酸化窒素捕捉剤、例えば日本ヒドラジン(株)製のHN−150、熱酸化安定剤、例えば、住友化学工業(株)製の“スミライザー”GA−80等、光安定剤、例えば、住友化学工業(株)製の“スミソーブ”300#622などの光安定剤などを含有させることが好ましい。
次に、本発明のポリウレタン系弾性繊維の製造方法について説明する。
本発明法においては、最初に、ポリウレタン系重合体を溶質とする溶液を調製するのが好ましい。
ポリウレタン系重合体を製造する方法はいずれの方法であってもよい。すなわち、溶融重合法でも溶液重合法のいずれでもよい。しかし、より好ましいのは溶液重合法である。溶液重合法の場合は、ポリウレタン系重合体にゲルなどの異物の発生が少なく、低繊度のポリウレタン系弾性繊維を得やすい。また、溶液重合法の場合、溶液にする労が省け、生産効率の観点からも好ましい。
本発明で使用されるポリウレタン系重合体としては、分子量が1000〜8000のポリマージオール(特に好ましくは、分子量が1800〜6000であるPTMG)、MDI、低分子量アミンや低分子量ジオールなどの鎖伸長剤から合成された重合体であることが好ましい。
本発明におけるポリウレタン系重合体の合成方法としては、例えば、ポリマージオールとMDIをまず溶融反応せしめた後、反応物をDMAc、DMF、DMSO、NMPなどやこれらを主成分とする溶剤に溶解し、次いで、前記鎖伸長剤と反応せしめ、ポリウレタン系重合体溶液とする方法が好ましい。また、DMAc、DMF、DMSO、NMPなどやこれらを主成分とする溶剤中に、各原料を投入、溶解せしめ、適正な温度に加熱し、反応せしめポリウレタン系重合体溶液を得る、いわゆるワンショット法も好ましい。
なお、このポリウレタン系重合体の合成に際し、アミン系触媒や有機金属触媒を1種または2種以上混合して使用してもよい。
このアミン系触媒としては、例えば、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、トリエチルアミン、N−メチルモルホリン、N,N−エチルモルホリン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−プロパンジアミン、N,N,N,’N’−テトラメチルヘキサンジアミン、ビス−2−ジメチルアミノエチルエーテル、N,N,N’,N’,N’−ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラメチルグアニジン、トリエチレンジアミン、N,N’−ジメチルピペラジン、N−メチル−N’−ジメチルアミノエチル−ピペラジン、N−(2−ジメチルアミノエチル)モルホリン、1−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、N,N−ジメチルアミノエタノール、N,N,N’−トリエチルアミノエチルエタノールアミン、N−メチル−N’−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノエチル)フェノール、N,N−ジメチルアミノヘキサノール、トリエタノールアミンなどが好ましい。
また、有機金属触媒としては、オクタン酸スズ、二ラウリン酸ジブチルスズ、オクタン酸鉛ジブチルなどが好ましい。
所望の分子量あるいは粘度に調整することを目的として、活性水素を有する一官能性化合物、例えばジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジ-イソプロピルアミン、ジブチルアミン、ジ-イソブチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロパノール、水などを反応停止剤として用いてもよい。これらは1種または2種以上混合して用いてもよい。
本発明法において溶液紡糸に供するポリウレタン系重合体溶液のポリマ濃度は、通常、25〜80重量%の範囲が好ましい。より好ましくは30〜60重量%の範囲であり、さらに好ましくは35〜55重量%の範囲である。25重量%に満たないと乾式紡糸の際、溶媒等の蒸発に必要な熱量が多くなるため紡糸が困難となる傾向がある。一方、80重量%を越えると原液の安定性が悪化し、その結果、紡糸性が悪化する。原液の安定性を向上させるため重合体の重合度を下げると糸質が低下する傾向がある。
また、このポリウレタン系重合体溶液の粘度は2500〜5500ポイズであることが好ましい。2500ポイズ以上の粘度があれば、乾式紡糸する際の粘度低下による糸切れも少なく紡糸性が良く、5500ポイズ以下の粘度であれば口金部分での圧損をある程度抑えることができるため、紡糸性や糸質を高めることができる。なお、粘度の値は40℃における鋼球落下式粘度測定法によるものである。
本発明法においては、ヒンダードアミン系化合物や無機系塩素劣化防止剤などの薬剤を、溶液紡糸前のポリウレタン系重合体溶液に添加する。その添加方法としては任意の方法を採用することができ、例えば、スタティックミキサーによる方法、攪拌による方法などが好ましい。各々の添加剤成分をそれぞれ単独に添加することでもよいし、あらかじめ他の数種類の添加剤を混合したスラリーを添加することでもよい。
この紡糸溶液中において、ヒンダードアミン系化合物の含有量は、ポリマに対する量が0.1〜3重量%となる量とする。また、無機系塩素劣化防止剤を添加する場合には、その含有量は、ポリマに対する量が0.1〜10重量%となる量とする。
本発明法においては、次いで、ポリウレタン系重合体を溶質とし、さらに、ヒンダードアミン化合物、無機系塩素劣化防止剤などの薬剤を含有する紡糸溶液を、溶液紡糸する。その紡糸方法としては乾式紡糸もしくは湿式紡糸が好ましい。乾式紡糸の方法は特に限定されるものではなく、任意の方法を採用することができる。
得られるポリウレタン系弾性繊維のセット性と応力緩和は、紡糸工程におけるゴデローラーと巻取機との間の速度比に特に影響を受けやすいので、その速度比条件は、繊維用途に応じて適宜決定するのが好ましい。本発明のポリウレタン系弾性繊維製造の場合は、ゴデローラーと巻取機との間の速度比(=巻取機/ゴデローラー)を1.15〜1.65として巻き取るのが好ましい。なかでも、特に高いセット性と、低い応力緩和のポリウレタン系弾性繊維を製造する場合には、前記速度比を1.15〜1.40として巻き取るのがより好ましく、1.15〜1.35として巻き取るのがさらに好ましい。一方、低いセット性と、高い応力緩和のポリウレタン系弾性繊維を製造する場合には、前記速度比を1.25〜1.65として巻き取るのがより好ましく、1.35〜1.65として巻き取るのがさらに好ましい。
また、製造するポリウレタン系弾性繊維の強度を向上させる観点から、紡糸速度は450m/分以上とするのが好ましい。
以下、本発明を実施例を用いてさらに詳細に説明する。
以下において、ヒンダードアミン系化合物のDMAcへの溶解性、ポリウレタン系弾性繊維のSET%、耐塩素水性、NOx耐黄変性、塩素耐黄変性は次の方法で測定した。
[DMAcへの溶解性]
ヒンダードアミン系化合物のDMAcへの溶解性は、次の方法により評価した。
濃度60wt%のヒンダードアミン化合物を含む溶液500gとなるように、ヒンダードアミン化合物及びDMAcを所定割合でガラス容器中にて混合し、温度35℃に保ちながら5分間、プロペラ型インペラを有する攪拌機によって攪拌する。この攪拌直後に溶液が透明であれば、溶解性が“良好”と判定し、溶液が濁っていれば、溶解性が”不良”と判定する。
[繰り返し伸長後の残留歪み率(SET%)]
残留歪み率(SET%)は、試料糸を“インストロン”4502型引張試験機を用い、引張テストを繰り返すことにより測定した値であり、下記により定義される。
5cm(L1)長の試料糸を50cm/分の引張速度で300%伸長させ回復させる操作を5回繰返す。次に、300%伸長状態を30秒間保持した後、伸長を回復せしめ応力が0になった際の試料糸の長さを(L2)とする。
SET%は下記式により与えられる。
SET%=100×((L2)−(L1))/(L1)
このSET%が小さいほど残留歪みが小さく、伸長回復特性が優れている。
[耐塩素水性]
次亜塩素酸ナトリウム液をイオン交換水で希釈して有効塩素濃度3ppmとし、さらに尿素を添加して尿素濃度3ppmとし、硫酸の緩衝溶液でpHを7.2に調整し、塩素水を準備する。この塩素水を28℃に温度調節した恒温槽に入れ、試料糸の下端に5gの荷重をかけて塩素水中に浸漬させ、試料糸が切れるまでの時間を測定する。切断までの時間が長いほど耐塩素水性が優れている。
[NOx耐黄変性]
ポリウレタン系弾性繊維をステンレス板に10g巻き取った試料カードを作製し、これをスコットテスターを使用して、NO2ガスが規定濃度(7ppm)となるように混合したガス(主成分は湿度60%RHの空気)中に常温で50時間放置する(NO2ガス暴露)。このガス暴露の前後に、カラーマスター(D25、DP−9000型シグナルプロセッサー)を使用して“b”カラーを測定する。“b”カラーの処理前後の差“△b”を求める。この値が小さいほどにNOx耐黄変性が優れている。
[塩素耐黄変性]
ポリウレタン系弾性繊維を“テフロン(登録商標)”板に10g巻き取った試料カードを作製し、これを40℃±2℃に恒温された塩素水(次亜塩素酸ナトリウム濃度が600ppm)中に30分間浸積し、続いて10分間純水で水洗する。この30分間の塩素水への浸積と10分間の水洗とを1サイクルとし、これを10サイクル繰り返し処理する。続いて、試料カードを自然乾燥させ、カラーマスター(D25、DP−9000型シグナルプロセッサー)を使用して“b”カラーを測定する。“b”カラーの処理前後の差“△b”を求める。この値が小さいほどに塩素耐黄変性が優れている。
[実施例1]
分子量1800のPTMGとMDIとをモル比にてMDI/PTMG=1.58/1となるように容器に仕込み、90℃で反応せしめ、得られた反応生成物をN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)に溶解させた。次に、エチレンジアミン及びジエチルアミンを含むDMAc溶液を前記反応物が溶解した溶液に添加して、ポリマ分が35重量%であるポリウレタンウレア溶液(溶液A1)を調製した。
次に、溶液A1に、下記の添加剤3種を加え、2時間攪拌し、紡糸溶液B1とした。
ヒンダードアミン系化合物: ポリウレタン系弾性繊維中の含有量が0.5重量%となる量の、下記化学構造式2で表されるDEAM/DDM(三洋化成工業(株)製のFHM−3)。ここで、DAEMとDDMの重量比は65:35である。分子量はスチレン換算にて数平均分子量(Mn)は3300、重量平均分子量(Mw)は5800である。
Figure 2006342448
(式中、n、mはn/m=2.54となる正の数である。)
無機系塩素劣化防止剤: ポリウレタン系弾性繊維中の含有量が3重量%となる量の微細酸化亜鉛(本荘ケミカル(株)製)(繊維中の平均粒径が1μm以下となる粒径を有するもの)、
ヒンダードフェノール系化合物: ポリウレタン系弾性繊維中の含有量が1.2重量%となる量の、パラクレゾールとジビニルベンゼンの共重合体
ゴテローラに対する巻取機の速度比が1.20、巻き取り速度が540m/分の条件で、紡糸溶液B1を乾式紡糸することにより、ポリウレタン系弾性繊維(44デシテックス、4フィラメント)を製造し、巻き取った。
溶液A1に添加したヒンダードアミン系化合物(DEAM/DDM)は、DMAcへの溶解性が良好であった。
紡糸溶液B1中における添加剤の分散状況に問題なく、順調に乾式紡糸することができた。また、得られたポリウレタン系弾性繊維は、伸長回復特性に優れ、かつ、塩素耐黄変性、NOx耐黄変性、及び耐塩素水性にも優れたものであった。その結果を表1に示す。
[実施例2]
無機系塩素劣化防止剤として、酸化亜鉛の代わりに、Mg3Ca(CO34(フンタイト)及びMg4(CO34・Mg(OH)2・4H2O(ハイドロマグネサイト)の50:50の混合物(英国 Microfine Minerals Ltd.製)(繊維中の平均粒径が1μm以下となる粒径を有するもの)を用い、ポリウレタン系弾性繊維中の含有量が4重量%となる量で添加した以外は、実施例1と同様にして紡糸溶液B2を調製した後、同様に乾式紡糸してポリウレタン系弾性繊維を製造した。
得られたポリウレタン系弾性繊維は、伸長回復特性に優れ、かつ、塩素耐黄変性、NOx耐黄変性、及び耐塩素水性にも優れたものであった。その結果を表1に示す。
[実施例3]
無機系塩素劣化防止剤として、酸化亜鉛の代わりに、3ZnO・ZnAl24の粉体(繊維中の平均粒径が1μm以下となる粒径を有するもの)を用い、ポリウレタン系弾性繊維中の含有量が4重量%となる量で添加した以外は、実施例1と同様にして紡糸溶液B3を調製した後、同様に乾式紡糸してポリウレタン系弾性繊維を製造した。
得られたポリウレタン系弾性繊維は、伸長回復特性に優れ、かつ、塩素耐黄変性、NOx耐黄変性、及び耐塩素水性にも優れたものであった。その結果を表1に示す。
[実施例4]
無機系塩素劣化防止剤として、酸化亜鉛の代わりに、ハイドロタルサイト(Mg6Al2(OH)16CO3・4H2O)の粉体(繊維中の平均粒径が1μm以下となる粒径を有するもの)を用い、ポリウレタン系弾性繊維中の含有量が4重量%となる量で添加した以外は、実施例1と同様にして紡糸溶液B3を調製した後、同様に乾式紡糸してポリウレタン系弾性繊維を製造した。
得られたポリウレタン系弾性繊維は、伸長回復特性に優れ、かつ、塩素耐黄変性、NOx耐黄変性、及び耐塩素水性にも優れたものであった。その結果を表1に示す。
実施例1と同様にして紡糸溶液B4を調製した後、同様に乾式紡糸してポリウレタン系弾性繊維を製造した。
得られたポリウレタン系弾性繊維は、伸長回復特性に優れ、かつ、塩素耐黄変性、NOx耐黄変性、及び耐塩素水性にも優れたものであった。その結果を表1に示す。
[比較例1]
実施例1で調製したポリウレタンウレア溶液A1に、下記の添加剤2種を加え、2時間攪拌し、紡糸溶液B5とした。
無機系塩素劣化防止剤: ポリウレタン系弾性繊維中の含有量が3重量%となる量の微細酸化亜鉛(本荘ケミカル(株)製)(繊維中の平均粒径が1μm以下となる粒径を有するもの)、
ヒンダードフェノール系化合物: ポリウレタン系弾性繊維中の含有量が1.2重量%となる量の、パラクレゾールとジビニルベンゼンの共重合体。
ゴテローラに対する巻取機の速度比が1.20、巻き取り速度が540m/分の条件で、紡糸溶液B5を乾式紡糸することにより、ポリウレタン系弾性繊維(44デシテックス、4フィラメント)を製造し、巻き取った。
得られたポリウレタン系弾性繊維は、ヒンダードアミン系化合物を含有しないものであり、NOx耐黄変性が非常に劣ったものであった。その結果を併せて表1に示す。
[比較例2]
ヒンダードアミン系化合物として、DEAM/DDMの代わりに、DEAM(三洋化成工業(株)製)を用い、ポリウレタン系弾性繊維中の含有量が0.5重量%となる量を添加した以外は、実施例1と同様にして紡糸溶液B6を調製した後、同様に乾式紡糸してポリウレタン系弾性繊維を製造した。
ここで用いたヒンダードアミン系化合物(DEAM)は、DMAcへの溶解性が良好であり、順調に乾式紡糸することができた。しかし、得られたポリウレタン系弾性繊維は、伸長回復特性が劣ったものであった。その結果を併せて表1に示す。
[比較例3]
ヒンダードアミン系化合物として、DEAM/DDMの代わりに、DIPAM/DM(デュポン社製)を用い、ポリウレタン系弾性繊維中の含有量が0.5重量%となる量を添加した以外は、実施例1と同様にして紡糸溶液B7を調製した後、同様に乾式紡糸してポリウレタン系弾性繊維を製造した。
得られたポリウレタン系弾性繊維は伸長回復特性、耐塩素水性、NOx耐黄変性、及び塩素耐黄変性ともに良好であった。しかし、ここで用いたヒンダードアミン系化合物(DIPAM/DM)はDMAcへの溶解性が不良であったので、紡糸溶液B7を乾式紡糸する際に糸切れが生じ易く、紡糸安定性が劣っていた。
[比較例4]
実施例1で調製したポリウレタンウレア溶液A1に、下記の添加剤1種を加え、2時間攪拌し、紡糸溶液B8とした。
ヒンダードフェノール系化合物: ポリウレタン系弾性繊維中の含有量が1.2重量%となる量の、パラクレゾールとジビニルベンゼンの共重合体。
ゴテローラに対する巻取機の速度比が1.20、巻き取り速度が540m/分の条件で、紡糸溶液B5を乾式紡糸することにより、ポリウレタン系弾性繊維(44デシテックス、4フィラメント)を製造し、巻き取った。
得られたポリウレタン系弾性繊維は、無機系塩素劣化紡糸剤もヒンダードアミン系化合物も含有しないものであり、耐塩素水性、NOx耐黄変性、及び塩素耐黄変性ともに非常に劣ったものであった。その結果を併せて表1に示す。
Figure 2006342448
本発明のポリウレタン系弾性繊維は、伸長回復特性、耐塩素水性、NOx耐黄変性、及び塩素耐黄変性がともに優れているので、種々の用途で使用することができる。なかでも、他の繊維と交編織して伸縮性布帛にする用途に用いることが好ましく、さらに、染色仕上げ加工後、縫製してスイミングプールなどで使用される水着等の製品用途に特に好ましい。

Claims (8)

  1. 下記の化学構造式1で表されるヒンダードアミン系化合物を含有することを特徴とするポリウレタン系弾性繊維。
    Figure 2006342448
    (式中、R1は水素原子あるいはメチル基のいずれかを表し、R2は炭素数3〜15のアルキル基を表し、また、n、mは1.4≦(n/m)≦9となる正の数を表す。)
  2. ヒンダードアミン系化合物を0.1〜3重量%含有することを特徴とする請求項1に記載のポリウレタン系弾性繊維。
  3. さらに無機系塩素劣化防止剤を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載のポリウレタン系弾性繊維。
  4. 無機系塩素劣化防止剤が、ハイドロタルサイト類化合物、フンタイト及びハイドロマグネサイトの混合物、Ca、Mg、Zn、Al、Baから選択された金属の炭酸塩、酸化物、複合酸化物、水酸化物のいずれか、並びに、Ca、Mg、Zn、Al、Baから選択された金属の炭酸塩、酸化物、複合酸化物及び水酸化物のうちの2種以上からなる固溶体、の群から選択された少なくとも1種の金属化合物であることを特徴とする請求項3に記載のポリウレタン系弾性繊維。
  5. 無機系塩素劣化防止剤が、フンタイト及びハイドロマグネサイトの混合物、ハイドロタルサイト類化合物、酸化亜鉛、MgOとZnO固溶体、ZnOにAlが固溶した酸化亜鉛系固溶体、並びに、ZnとAlの複合酸化物であるxZnO・ZnAl24(ただしxは2〜5の整数を示す。)から選択された少なくとも1種の金属化合物であることを特徴とする請求項3に記載のポリウレタン系弾性繊維。
  6. 無機系塩素劣化防止剤を0.1〜10重量%含有することを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載のポリウレタン系弾性繊維。
  7. 下記の化学構造式1で表されるヒンダードアミン系化合物を含有する紡糸溶液を溶液紡糸してポリウレタン系弾性繊維を製造することを特徴とするポリウレタン系弾性繊維の製造方法。
    Figure 2006342448
    (式中、R1は水素原子あるいはメチル基のいずれかを表し、R2は炭素数3〜15のアルキル基を表し、また、n、mは1.4≦(n/m)≦9となる正の数を表す。)
  8. 紡糸方法が乾式紡糸であることを特徴とする請求項7に記載のポリウレタン系弾性繊維の製造方法。
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