JP3826378B2 - ポリウレタン糸およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はポリウレタン糸およびその製造方法に関する。
【0002】
さらに詳しくは、衣服などに用いた際、適度な透明性と適度な伸びがあり、高い熱セット性があり、かつ、ある程度の機械セット性、着脱性、フィット性、着用感、外観品位、吸放湿性、制電性、耐変色性などに特に優れた特性を有するポリウレタン糸およびその製造方法に関する。
【0003】
【従来の技術】
ポリウレタン糸は、その優れた伸縮特性からレッグウエア、インナーウエア、スポーツウエアなどに広く使用されている。そしてポリウレタン糸は、こうしたウエアの伸縮特性をさらに向上せしめるため、布帛中の含有率がますます高くなっている。その代表的な例が、ストッキング市場におけるいわゆるゾッキである。ポリウレタン糸の混率が高いゾッキとすることにより、ストッキングの伸縮特性、着用感などを従来の交編品より良好なものとすることができるのである。
【0004】
そして、これはストッキング以外の他の用途でも同様である。しかし、ポリウレタン糸の混率を高くすると、二つの問題があった。第1の問題は着脱性とフィット性が悪化するということであった。
【0005】
すなわち、ポリウレタン糸の混率が高くなると、サイズが小さくなりがちとなり着脱性が悪化し、着圧もやや高くなりがちとなりフィット性が悪化するのである。第2の問題はポリウレタン糸は混用するハードヤーン、例えば、ポリアミド繊維に比べ吸放湿性が劣るためポリウレタン糸の混率が高くなると、布帛全体の吸放湿性が低下するということであった。これらの問題に対して原糸から高次加工まで幾つかの手段が試みられていた。
【0006】
第1の問題の解決法としては、特開平8−3815号公報に機械セット性および熱セット性が高いポリウレタン原糸を得る方法が開示されている。
【0007】
また、特開2000−73233号公報に機械セット性および熱セット性を適度に高める化合物としてポリフッ化ビニリデンをポリウレタンに配合する方法が開示されている。
【0008】
第2の問題の解決法としては、原糸面からの手段として、ポリウレタンに吸湿性を高める化合物としてマグネシウム塩を配合する方法が特開平5−271432号公報に開示されている。
【0009】
また、ポリエチレングリコールを原料としたポリウレタンを配合する方法が特開2000−144532号公報に開示されている。高次加工面からの手段としてはポリウレタン糸と混用するハードヤーンに特定の吸放湿性の高いポリアミド繊維を使用する方法が特開平9−41204号公報に開示されている。
【0010】
しかしながら、これらの方法では前述した2つの目的を同時に解決するにはその効果は不十分であり、とりわけ、ポリウレタン原糸に適度な機械セット性と熱セット性および吸放湿性を付与することはできていなかった。
【0011】
また、高次加工段階で吸放湿性の高いハードヤーンを使用する場合にもコストアップや総ての用途には対応し難いなどの問題点があった。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明のポリウレタン糸を衣服などに使用すると、得られた衣服などの、着用感、脱着性、フィット性、吸放湿性、外観品位、制電性、耐変色性などを優れたものとすることができる。
【0013】
本発明の目的は、適度な透明性と適度な伸びがあり、高い熱セット性があり、かつ、ある程度の機械セット性、吸放湿性および制電性、耐変色性を有するポリウレタン糸およびその製造方法を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明のポリウレタン糸は前記課題を解決するため、以下の解決手段を有する。
【0015】
すなわち、ポリオール、ジイソシアネート及び鎖伸長剤から重合されたポリウレタンに、ポリアクリル酸系共重合体を含有させた樹脂組成物からなるポリウレタン糸であり、かつ、ポリアクリル酸系共重合体が、アクリル酸ナトリウム−アクリルアミド共重合体、アクリル酸ナトリウム−スチレンスルホン酸ナトリウム共重合体、及びポリアクリル酸ナトリウム−のうちのいずれか1種以上であることを特徴とするポリウレタン糸である。
【0016】
本発明のポリウレタン糸の製造方法は前記課題を解決するため、以下の解決手段を有する。
【0017】
すなわち、アクリル酸ナトリウム−アクリルアミド共重合体、アクリル酸ナトリウム−スチレンスルホン酸ナトリウム共重合体、及びポリアクリル酸ナトリウムのうちのいずれか1種以上のポリアクリル酸系共重合体をポリウレタン溶液に添加した後、紡糸することを特徴とするポリウレタン糸の製造方法である。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下本発明について、さらに詳細に述べる。
【0019】
まず本発明で使用するポリウレタンについて述べる。
【0020】
本発明に使用されるポリウレタンは、ポリオール、ジイソシアネート及び鎖伸長剤から重合されるポリウレタンであれば特に限定されるものではない。また、その合成法も特に限定されるものではない。
【0021】
すなわち、例えば、ポリオールとジイソシアネートとジアミンからなるポリウレタンウレアであってもよく、また、ポリオールとジイソシアネートとジオールからなるポリウレタンであってもよい。
【0022】
また、鎖伸長剤として水酸基とアミノ基を分子内に有する化合物を使用したポリウレタンウレアであってもよい。
【0023】
なお、本発明の効果を妨げない範囲で3官能性以上の多官能性のグライコールやイソシアネート等が使用されることも好ましい。
【0024】
ここで、本発明のポリウレタン糸を構成する代表的な構造単位について述べる。
【0025】
本発明に使用されるポリオールはポリエーテル系グリコール、ポリエステル系グリコール、ポリカーボネートジオール等が好ましい。
【0026】
そして、特に柔軟性、伸度を糸に付与する観点からポリエーテル系グリコールが使用されることが好ましい。ポリエーテル系グリコールとしては、例えば、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールの誘導体、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(以下、PTMGと略す)、THFおよび3−MeTHFの共重合体である変性PTMG(以下、3M−PTMGと略する)、THFおよび2,3−ジメチルTHFの共重合体である変性PTMG、特許公報第2615131号公報などに開示される側鎖を両側に有するポリオール等が好ましく使用される。これらポリエーテル系グリコールを1種または2種以上混合もしくは共重合して使用してもよい。
【0027】
また、ポリウレタン糸として耐摩耗性や耐光性を得る観点から、ブチレンアジペート、ポリカプロラクトンジオール、特開昭61−26612号公報などに開示されている側鎖を有するポリエステルポリオールなどのポリエステル系グリコールや特公平2−289516号公報などに開示されているポリカーボネートジオール等が好ましく使用される。
【0028】
また、こうしたポリオールは単独で使用されてもよいし、2種以上混合もしくは共重合して使用されてもよい。本発明に使用されるポリオールの分子量は糸にした際の伸度、強度、耐熱性などを得る観点から数平均分子量は1000以上8000以下が好ましく、1800以上6000以下がより好ましい。この範囲の分子量のポリオールが使用されることにより、伸度、強度、弾性回復力、耐熱性に優れた弾性糸を得ることができる。
【0029】
次に本発明に使用されるジイソシアネートとしては、ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、MDIと略す)、トリレンジイソシアネート、1,4−ジイソシアネートベンゼン、キシリレンジイソシアネート、2,6−ナフタレンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネートが、特に耐熱性や強度の高いポリウレタンを合成するのに好適である。さらに脂環族ジイソシアネートとして、例えば、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(以下、H12MDIと称する。)、イソホロンジイソシアネート、メチルシクロヘキサン2,4−ジイソシアネート、メチルシクロヘキサン2,6−ジイソシアネート、シクロヘキサン1,4−ジイソシアネート、ヘキサヒドロキシリレンジイソシアネート、ヘキサヒドロトリレンジイソシアネート、オクタヒドロ1,5−ナフタレンジイソシアネートなどが好ましい。脂肪族ジイソシアネートは、特にポリウレタン糸の黄変を抑制する際に有効に使用できる。そして、これらのジイソシアネートは単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0030】
次に本発明における鎖伸長剤は、低分子量ジアミンおよび低分子量ジオールのうち少なくとも1種以上を使用するのが好ましい。
【0031】
なお、エタノールアミンのような水酸基とアミノ基を分子中に有するものであってもよい。好ましい低分子量ジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、1,3−プロパンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、p−フェニレンジアミン、p−キシリレンジアミン、m−キシリレンジアミン、p,p’−メチレンジアニリン、1,3−シクロヘキシルジアミン、ヘキサヒドロメタフェニレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、ビス(4−アミノフェニル)フォスフィンオキサイドなどが挙げられる。これらの中から1種または2種以上が使用されることも好ましい。特に好ましくはエチレンジアミンである。エチレンジアミンを用いることにより伸度および弾性回復性、さらに耐熱性に優れた糸を得ることができる。これらの鎖伸長剤に架橋構造を形成することのできるトリアミン化合物、例えば、ジエチレントリアミン等を効果を失わない程度に加えてもよい。
【0032】
また、低分子量ジオールとしては、エチレングリコール、1,3プロパンジオール、1,4ブタンジオール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン、ビスヒドロキシエチレンテレフタレート、1−メチル−1,2−エタンジオールなどは代表的なものである。これらの中から1種または2種以上が使用されることも好ましい。特に好ましくはエチレングリコール、1,3プロパンジオール、1,4ブタンジオールである。これらを用いると、ジオール伸長のポリウレタンとしては耐熱性が高く、また、強度の高い糸を得ることができるのである。
【0033】
また、本発明の弾性糸の分子量は、耐久性や強度の高い繊維を得る観点から、数平均分子量として40000以上150000以下の範囲であることが好ましい。
【0034】
なお、本発明における分子量はGPCで測定しており、ポリスチレンにより換算している。
【0035】
そして、本発明のポリウレタン糸として、工程通過性も含め、実用上の問題がなく、かつ、熱セット性に優れたものを得る観点から、特に好ましいものは、ジオールとジイソシアネートからなり、かつポリウレタン糸の高温側の融点が200℃以上260℃以下の範囲となるものである。本発明における高温側の融点とは、DSCで糸を測定した際のセカンドランの値をいい、ポリウレタンのいわゆるハードセグメントの融点が該当する。
【0036】
そして、ポリオールとして分子量が1800以上6000以下の範囲にあるPTMG、ジイソシアネートとしてMDI、ジオールとしてエチレングライコール、1,3プロパンジオールおよび1,4ブタンジオールからなる群から少なくとも1種選ばれたものが使用されて合成され、かつ、高温側の融点が200℃以上260℃以下の範囲であるポリウレタン糸は、特に伸度が高くなり、さらに上記のように、工程通過性も含め、実用上の問題はなく、かつ、熱セット性に優れるので好ましい。
【0037】
なお、ポリウレタン糸の高温側の融点を200℃以上260℃以下にする観点から、事前にテストをし、ジイソシアネートとポリオール、ジオールの比率を選択することが好ましく行われる。本発明のポリウレタンの構成は好ましくはかかるものからなるものである。
【0038】
本発明のポリウレタン糸は、特定のポリアクリル酸系共重合体を含有するものであり、このポリアクリル酸系共重合体は、アクリル酸ナトリウム−アクリルアミド共重合体、アクリル酸ナトリウム−スチレンスルホン酸ナトリウム共重合体、及びポリアクリル酸ナトリウムのうちのいずれか1種以上である。
【0039】
本発明においては、上記した特定のポリアクリル酸系共重合体を含有しないと、高い熱セット性と吸放湿性が得られないという問題がある。
【0040】
ポリアクリル酸および/またはポリアクリルアミドとは、下記一般式の化学構造単位を50モル%以上含有する重合体をいう。
【0041】
【化1】
【0042】
(式中において、X:−OH、−NH2、−O−Y+、−OZ
Y: アルカリ金属、NH4
Z: 炭素数1から3のアルキル基)
具体的には、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸カリウム、ポリアクリル酸アンモニウム、ポリアクリルアミド、アクリル酸−アクリルアミド共重合体、アクリル酸−アクリル酸ナトリウム−アクリルアミド共重合等が挙げられる。
【0043】
また、原料としてアクリル酸およびアクリルアミド以外のビニルモノマーが50モル%未満含有させられて製造されたポリアクリル酸系共重合体でもよい。そのビニルモノマーとしてはマレイン酸、スチレンスルホン酸、エチレンスルホン酸、メタクリル酸、マレイン酸ナトリウム、スチレンスルホン酸ナトリウム、メタクリル酸エステル、エチレン、アクリル酸ジメチルアミノエチルエステル、メタクリル酸ジメチルアミノエチルエステル、塩化ジアリルジメチルアンモニウムなどが挙げられる。
これらの中から、紡糸原液の粘度安定性と得られる糸の変色を少なくする観点から、本発明においては、アクリル酸ナトリウム−アクリルアミド共重合体、アクリル酸ナトリウム−スチレンスルホン酸ナトリウム共重合体、ポリアクリル酸ナトリウムを用いる。
【0044】
そして、ポリアクリル酸系共重合体の数平均分子量は、1000以上20000000以下の範囲が好ましい。ここでの数平均分子量はGPCで測定して求めることができ、ポリスチレン換算値である。
【0045】
本発明においては、ポリアクリル酸系共重合体の含有量は、良好な紡糸性を得る観点から、0.5重量%以上50重量%以下の範囲が好ましく、良好な熱セット性、吸放湿性を得る観点から、1重量%以上30重量%以下がより好ましい。
【0046】
なお、これらの含有量は、用途に応じて事前にテストし、適宜決定することも好ましく行われる。
【0047】
さらに、本発明で使用されるポリアクリル酸系共重合体は、ポリウレタンへの分散を速くし、製造されるポリウレタン糸の特性を目標の特性とせしめ、さらに適度な透明度のポリウレタン糸を得ること、および紡糸工程で熱などを受けて、ポリアクリル酸系共重合体の含有量が低下したり、糸が変色することを防止する観点から、5重量%DMAc溶液または懸濁液とした際、20℃での粘度が200cP以上10000P以下の範囲となるものが好ましい。なお、測定はブルックフィールド型粘度計で測定するのが好ましい。
【0048】
さらに、本発明で使用されるポリウレタンは、末端封鎖剤が1種または2種以上混合使用されることも好ましい。末端封鎖剤として、ジメチルアミン、ジイソプロピルアミン、エチルメチルアミン、ジエチルアミン、メチルプロピルアミン、イソプロピルメチルアミン、ジイソプロピルアミン、ブチルメチルアミン、イソブチルメチルアミン、イソペンチルメチルアミン、ジブチルアミン、ジアミルアミンなどのモノアミン、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロパノール、アリルアルコール、シクロペンタノールなどのモノオール、フェニルイソシアネートなどのモノイソシアネートなどが好ましい。
【0049】
また、本発明において、ポリウレタンに各種安定剤や顔料などが含有されていてもよい。例えば、耐光剤、酸化防止剤などにBHTや住友化学工業株式会社製の“スミライザーGA−80”などのヒンダードフェノール系薬剤、各種のチバガイギー社製“チヌビン”などのベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系薬剤、住友化学工業株式会社製の“スミライザーP−16”などのリン系薬剤、各種のヒンダードアミン系薬剤、酸化鉄、酸化チタンなどの各種顔料、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化マグネシウム、カーボンブラックなどの無機物、フッ素系またはシリコーン系樹脂粉体、ステアリン酸マグネシウムなどの金属石鹸、また、銀や亜鉛やこれらの化合物などを含む殺菌剤、消臭剤、またシリコーン、鉱物油などの滑剤、硫酸バリウム、酸化セリウム、ベタインやリン酸系などの各種の帯電防止剤などが含まれることも好ましく、またこれらがポリマと反応させられることも好ましい。そして、特に光や各種の酸化窒素などへの耐久性をさらに高めるには、例えば、日本ヒドラジン株式会社製のHN−150などの酸化窒素補足剤、例えば、住友化学工業株式会社製の“スミライザーGA−80”などの熱酸化安定剤、例えば、住友化学工業株式会社製の“スミソーブ300♯622”などの光安定剤が使用されることも好ましい。
【0050】
次に本発明のポリウレタン糸の製造方法について詳細に説明する。
【0051】
本発明においては最初にポリウレタン溶液を作製するのが好ましい。ポリウレタン溶液の製法、また、溶液の溶質であるポリウレタンの製法は溶融重合法でも溶液重合法のいずれであってもよく、他の方法であってもよい。しかし、より好ましいのは溶液重合法である。溶液重合法の場合には、ポリウレタンにゲルなどの異物の発生が少なく、紡糸しやすく、低繊度のポリウレタン糸を得やすい。
【0052】
また、当然のことであるが、溶液重合の場合、溶液にする操作が省けるという利点がある。
【0053】
そして本発明に特に好適なポリウレタンとしては、ポリオールとして分子量が1800以上6000以下のPTMG、ジイソシアネートとしてMDI、ジオールとしてエチレングライコール、1,3プロパンジオールおよび1,4ブタンジオールのうちの少なくとも1種を使用して合成され、かつ、高温側の融点が200℃以上260℃以下の範囲のものが挙げられる。
【0054】
かかるポリウレタンは、例えば、DMAc、DMF、DMSO、NMPなどやこれらを主成分とする溶剤の中で、上記の原料を用い合成することにより得られる。例えば、こうした溶剤中に、各原料を投入、溶解させ、適度な温度に加熱し反応させてポリウレタンとする、いわゆるワンショット法、また、ポリオールとジイソシアネートを、まず溶融反応させ、しかる後に、反応物を溶剤に溶解し、前述のジオールと反応させてポリウレタンとする方法などが、特に好適な方法として採用され得る。
【0055】
鎖伸長剤にジオールを用いる場合、ポリウレタンの高温側の融点を200℃以上260℃以下の範囲に調節する代表的な方法は、ポリオール、MDI、ジオールの種類と比率をコントロールすることにより達成され得る。ポリオールの分子量が低い場合には、MDIの割合を相対的に多くすることにより、高温の融点が高いポリウレタンを得ることができ、同様にジオールの分子量が低いときはポリオールの割合を相対的に少なくすることにより、高温の融点が高いポリウレタンを得ることができる。
【0056】
ポリオールの分子量が1800以上の場合、高温側の融点を200℃以上にするには、(MDIのモル数)/(ポリオールのモル数)=1.5以上の割合で、重合を進めることが好ましい。
【0057】
なお、かかるポリウレタンの合成に際し、アミン系触媒や有機金属触媒等の触媒が1種もしくは2種以上混合して使用されることも好ましい。アミン系触媒としては、例えば、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、トリエチルアミン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−プロパンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサンジアミン、ビス−2−ジメチルアミノエチルエーテル、N,N,N’,N’,N’−ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラメチルグアニジン、トリエチレンジアミン、N,N’−ジメチルピペラジン、N−メチル−N’−ジメチルアミノエチル−ピペラジン、N−(2−ジメチルアミノエチル)モルホリン、1−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、N,N−ジメチルアミノエタノール、N,N,N’−トリメチルアミノエチルエタノールアミン、N−メチル−N’−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、N,N−ジメチルアミノヘキサノール、トリエタノールアミン等が挙げられる。
【0058】
また、有機金属触媒としては、オクタン酸スズ、二ラウリン酸ジブチルスズ、オクタン酸鉛ジブチル等が挙げられる。
【0059】
こうして得られるポリウレタン溶液の濃度は、通常、30重量%以上80重量%以下の範囲が好ましい。
【0060】
本発明においては、かかるポリウレタン溶液にポリアクリル酸系共重合体を添加する。ポリアクリル酸系共重合体のポリウレタン溶液への添加方法としては、任意の方法が採用できる。その代表的な方法としては、スタティックミキサーによる方法、攪拌による方法、ホモミキサーによる方法、2軸押し出し機を用いる方法など各種の手段が採用できる。ここで、添加されるポリアクリル酸系共重合体は、ポリウレタン溶液への均一な添加を行う観点から、溶液にして添加することが好ましい。
【0061】
なお、ポリアクリル酸系共重合体のポリウレタン溶液への添加により、添加後の混合溶液の溶液粘度が添加前のポリウレタンの溶液粘度に比べ予想以上に高くなる現象が発生するおそれがあり、この現象を防止する観点からジメチルアミン、ジイソプロピルアミン、エチルメチルアミン、ジエチルアミン、メチルプロピルアミン、イソプロピルメチルアミン、ジイソプロピルアミン、ブチルメチルアミン、イソブチルメチルアミン、イソペンチルメチルアミン、ジブチルアミン、ジアミルアミンなどのモノアミン、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロパノール、アリルアルコール、シクロペンタノールなどのモノオール、フェニルイソシアネートなどのモノイソシアネートなどの末端封鎖剤が1種または2種以上混合して使用されることも好ましく行われる。
【0062】
ポリアクリル酸系共重合体のポリウレタン溶液への添加の際に、前記した、例えば、耐光剤、耐酸化防止剤などの薬剤や顔料などと同時に添加してもよい。
【0063】
本発明のポリウレタン糸の繊度、断面形状などは特に限定されるものではない。例えば、糸の断面形状は円形であってもよく、また扁平であってもよい。
【0064】
そして、乾式紡糸方式についても特に限定されるものではなく、任意の方法が採用できる。
【0065】
本発明のポリウレタン糸のセット性と応力緩和は、特にゴデローラーと巻取機の速度比の影響を受けやすいので、糸の使用目的に応じて適宜決定されるのが好ましい。
【0066】
すなわち、所望のセット性と応力緩和を有するポリウレタン糸を得る観点から、ゴデローラーと巻取機の速度比は1.15以上1.65以下の範囲として巻き取ることが好ましい。そして、特に高いセット性と、低い応力緩和を有するポリウレタン糸を得る際には、ゴデローラと巻取機の速度比は1.15以上1.4以下の範囲がより好ましく、1.15以上1.35以下の範囲がさらに好ましい。
【0067】
一方、低いセット性と、高い応力緩和を有するポリウレタン糸を得る際には、ゴデローラーと巻取機の速度比は1.25以上1.65以下の範囲として巻き取ることが好ましく、1.35以上1.65以下の範囲がより好ましい。
【0068】
また、紡糸速度は、得られるポリウレタン糸の強度を向上させる観点から、450m/分以上であることが好ましい。
【0069】
【実施例】
本発明を実施例によってさらに詳しく説明する。
【0070】
本発明におけるセット性、応力緩和、強度、伸度、熱セット性、吸放湿性、ポリアクリル酸およびポリアクリルアミドの定量法、耐変色性の測定法を説明する。
[セット性、応力緩和、強度、伸度、熱セット性]
セット性、応力緩和、強度、伸度は、ポリウレタン糸をインストロン4502型引張試験機を用い、引張テストすることにより測定した。
【0071】
5cm(L1)の試料を50cm/分の引張速度で300%伸長を5回繰返した。このときの応力を(G1)とした。次に試料の長さを30秒間保持した。30秒間保持後の応力を(G2)とした。次に試料の伸長を回復せしめ応力が0になった際の試料の長さを(L2)とした。さらに6回目に試料が切断するまで伸長した。この破断時の応力を(G3)、破断時の試料長さを(L3)とした。以下、上記特性は下記式により算出される。
【0072】
強度=(G3)
応力緩和=100×((G1)−(G2))/(G1)
セット性=100×((L2)−(L1))/(L1)
伸度 =100×((L3)−(L1))/(L1)
[熱セット性]
熱セット性は下記により測定した。
【0073】
試料糸をフリーで100℃のスチームで10分間処理し、次にフリーで100℃の沸騰水で2時間処理し、一日、室温で乾燥した。つぎに試料糸(長さ=(L5))を100%伸長した(長さ=2×(L5))。この長さのまま115℃のスチームで、1分間処理した。さらに同長さで、130℃の乾熱処理を施し、さらに同長さで、1日室温で放置した。次に、試料糸の伸長状態をはずし、その長さ(L6)を測定した。
熱セット性は下記式により算出される。
【0074】
熱セット性=100×((L6)−(L5))/(L5)
[吸放湿性]
吸放湿性を示す指標として吸放湿係数ΔMRを採用した。
【0075】
吸放湿係数ΔMRは、試料原糸を筒状に編成した約1gの編地を絶乾時(105±2℃の雰囲気下、ホットエアーオーブン中に2時間放置後、デシケーター中で30分間冷却)の重量と20℃×65%RHあるいは30℃×90%RHの雰囲気下、恒温恒湿器(タバイ製PR−2G)中に24時間放置後の重量との重量変化から、次式で求めた。
【0076】
吸湿率(%)=[(吸湿後の重量−絶乾時の重量)/絶乾時の重量]×100上記測定した20℃×65%RHおよび30℃×90%RHの条件での吸湿率(それぞれMR1およびMR2とする)から、
吸放湿係数ΔMR(%)=MR2−MR1を算出した。
【0077】
吸放湿係数ΔMRは衣服着用時の衣服内の湿気を外気に放出することにより快適性を得るためのドライビングフォースであり、軽〜中作業あるいは軽〜中運動を行った際の30℃×90%RHに代表される衣服内温度と20℃×65%RHに代表される外気温湿度との吸湿率差である。ΔMRは大きければ大きいほど吸湿性が高く、着用時の快適性が良好であることを示す。
[ポリアクリル酸もしくはポリアクリルアミドの含有量]
試料糸中のポリアクリル酸もしくはポリアクリルアミドの含有量の算出方法を下記に示す。
【0078】
まず、試料糸(A)1gにDMAc50mlを加え、試料糸を完全に溶解した後、アセトン100mlをゆっくりと加え、ポリアクリル酸もしくはポリアクリルアミドを沈殿させ、残るポリウレタン溶液を蒸発乾固し、試料糸中のポリウレタン(B)を単離した。次に、予め決定された重量比のポリウレタン(B)とポリアクリル酸もしくはポリアクリルアミドの混合物のIRスペクトルから検量線を作成した。その手順はポリアクリル酸もしくはポリアクリルアミド含有量が0重量%、1重量%、3重量%、6重量%、10重量%、20重量%、40重量%の試料を作製し、それぞれのIRスペクトルにおける特性吸収ν(CO)1700cm−1〜1800cm−1とν(CO)1500cm−1〜1700cm−1のピーク面積比(X)を求めた。IRスペクトル測定にはパーキンエルマー社製FT−IRを使用し、またその測定サンプルはDMAcによるキャストフィルムを使用した。ピーク面積比(X)に対するポリアクリル酸もしくはポリアクリルアミドの含有率(wt%)の検量線を作成し、その傾き(α)を得た。最後に、糸試料(A)をn−ヘキサンで洗浄後、同様の条件にて、IRスペクトルを測定した。得られたスペクトルにおいてν(CO)1700cm−1〜1800cm−1とν(CO)1500cm−1〜1700cm−1のピーク面積比(Xs)を求めた。
【0079】
含有量は下記式により算出した。
【0080】
含有量(重量%)=(α)×(Xs)
[耐変色性]
試料糸を5×5cmの試料板に、試料板の色の影響が現れない程度に密接に最小の荷重で巻き取り、試料とした。試料及び常用標準白色面(JIS Z 8722の4.3.4)の前面を均質平たんで透明な約1mmのガラス板で密着させて覆った。b値の測定は、JIS L 1013のC法(ハンターの方法)に準じ、ハンター形色差計を用い、下記式に基づき算出した。測定回数は、5回とし、その平均値を採用した。
【0081】
b=7.0(Y−0.847Z)/Y1/2
(但し、X、Y、ZはJIS Z 8701により算出した)
耐変色性は、試料を紫外線(UV)に暴露した際の黄変度、窒素酸化物(NOx)に暴露した際の黄変度によって評価した。各暴露処理の際、黄変度(以下Δbと略記)は下記のようにして算出した。
【0082】
Δb=暴露処理後のb値−暴露処理前のb値
各暴露処理は下記のとおり実施した。
(紫外線(UV)暴露処理)
スガ試験機(株)社製のカーボンアーク型ウェザーメーターを用い、63℃、60%RHの温湿度で試料を25時間暴露処理した。
(窒素酸化物(NOx)暴露処理)
試料スタンドが回転する密閉容器(スコットテスター)を用い、NO2ガス10ppm、40℃、60%RHの温湿度で試料を20時間暴露処理した。
【0083】
[実施例1]
分子量2900のPTMG、MDIおよびエチレングリコールからなるポリウレタンのDMAC溶液(35重量%)を重合し、ポリマ溶液A1とした(MDIのモル数)/(ポリオールのモル数)=3.97)。次に、三洋化成社製アクリル酸ナトリウム−アクリルアミド共重合体(サンフロック(R)、共重合モル比90対10、数平均分子量5000000、粘度8000P)のDMAc溶液を調整した。調整には水平ミルWILLYA.BACHOFEN社製DYNO−MIL KDLを用い、85%ジルコニアビーズを充填、50g/分の流速で均一な微分散液を調整し、これをB1(35重量%)とした。さらに、米国特許3555115号明細書に記載されているt−ブチルジエタノールアミンとメチレン−ビス−(4−シクロヘキシルイソシアネ−ト)の反応によって生成せしめたポリウレタンと米国特許3553290号明細書に記載されているp−クレゾ−ルとジビニルベンゼンの縮合重合体の2対1重量比の混合物のDMAc溶液(35重量%)を調整し、酸化防止剤溶液C1(35重量%)とした。
ポリマ溶液A1、B1、C1を93重量%、5重量%、2重量%で均一に混合し、溶液D1とした。これをゴデローラーと巻取機の速度比1.4として540m/分のスピードで乾式紡糸することにより、20デシテックス、モノフィラメント、ポリアクリル酸系共重合体の含有量が5重量%であるポリウレタン糸の200g巻糸体を得た。
【0084】
得られた糸の破断伸度、破断強度、セット性、応力緩和、熱セット性および融点を表1に示した。吸放湿係数ΔMRはB1未配合の比較例1に比べ、4.5倍に増加した。熱セット性はB1未配合の比較例1より増大し、機械セットも適度であった。
【0085】
また、破断伸度、破断強度はB1未配合の比較例1と同等以上であった。
得られた糸と東レ(株)製ナイロン糸“ミラコスモ”(22デシテックス)を用い、カバーリング糸(SCY)を形成し、ゾッキパンストを編んだところ、外観品位に優れたゾッキパンストを得ることができた。このゾッキパンストの吸放湿係数ΔMRは3.9であり、B1未配合の同一原糸を用いた比較例1のゾッキパンストの約1.4倍であった。
【0086】
【表1】
【0087】
紫外線(UV)、窒素酸化物(NOx)に対する耐変色性は、各比較例に比べて優れていた。
【0088】
[実施例2]
日本触媒社製アクリル酸ナトリウム−スルホン酸系モノマー共重合体(アクアリック(R)、数平均分子量60000、粘度200P)のDMAc分散液を調整した。調整は水溶液である原料をDMAc溶液に溶媒置換し、実施例1と同一の方法で均一な微分散DMAc溶液とした。これをB2(35重量%)とした。ポリマ溶液A1、B2、C1を78重量%、20重量%、2重量%で均一に混合し、溶液D2とした。
これをゴデローラーと巻取機の速度比1.40として540m/分のスピードで乾式紡糸することにより、20デシテックス、モノフィラメント、ポリアクリル酸系共重合体の含有量が20重量%であるポリウレタン糸の200g巻糸体を得た。この糸の破断伸度、破断強度、セット性、応力緩和、熱セット性および融点を併せて表1に示した。吸放湿係数ΔMRはB2未配合の比較例1に比べ、12倍に増加した。熱セット性はB2未配合の比較例1より増大し、機械セットも適度であった。
【0089】
また、破断伸度、破断強度はB2未配合の比較例1と同等または同等以上であった。得られた糸と東レ(株)製ナイロン糸“ミラコスモ”(22デシテックス)を用い、カバーリング糸(SCY)を形成し、ゾッキパンストを編んだところ、外観品位の優れた優れたゾッキパンストを得ることができた。このゾッキパンストの吸放湿係数ΔMRは4.4であり、B2未配合の同一原糸を用いた比較例1のゾッキパンストの約1.6倍であった。
【0090】
紫外線(UV)、窒素酸化物(NOx)に対する耐変色性は、各比較例に比べて優れていた。
【0091】
[実施例3]
分子量1800のPTMG、MDI、エチレンジアミンおよび末端封鎖剤としてジエチルアミンからなるポリウレタンウレアのDMAc溶液(35重量%)を重合し、溶液A2とした(MDIのモル数)/(ポリオールのモル数)=1.58)。次に、日本触媒社製ポリアクリル酸ナトリウム(アクアリック(R)、数平均分子量3500、粘度150P)の均一な微分散DMAc溶液を調整し、B3とした。調整は実施例1と同一の方法で実施した。A2、B3、C1を73重量%、25重量%、2.0重量%で均一に混合し、溶液D3とした。
溶液D3をゴデローラーと巻取機の速度比を1.20として600m/分のスピードで乾式紡糸することにより、20デシテックスのマルチフィラメント、ポリアクリル酸系共重合体の含有量が25重量%であるポリウレタン糸の500g巻糸体を得た。この糸の破断伸度、破断強度、セット性、応力緩和、熱セット性および融点を併せて表1に示した。吸放湿係数ΔMRはB3未配合の比較例2に比べ、7倍に増加した。熱セット性はB3未配合の比較例2より増大し、機械セットも適度であった。
【0092】
また、破断伸度、破断強度はB3未配合の比較例2と同等以上であり、本糸と東レ(株)製ナイロン糸“ミラコスモ”(22デシテックス)を用いカバーリング糸(SCY)を形成し、ゾッキパンストを編んだところ、外観品位の優れた優れたゾッキパンストを得ることができた。このゾッキパンストの吸放湿係数ΔMRは4.9であり、B3未配合の同一原糸を用いた比較例2のゾッキパンストの約1.8倍であった。
【0093】
紫外線(UV)、窒素酸化物(NOx)に対する耐変色性は、各比較例に比べて優れていた。
【0094】
[実施例4]
分子量1800のPTMG、MDI、モル比80/20のエチレンジアミンと1,3−シクロヘキシルジアミンおよび末端封鎖剤としてジエチルアミンからなるからなるポリウレタンウレアのDMAC溶液(35重量%)を重合し、溶液A3とした(MDIのモル数)/(ポリオールのモル数)=1.74)。A3、B3、C1を68重量%、30重量%、2.0重量%で均一に混合し、溶液D3とした。
溶液D3をゴデローラーと巻取機の速度比を1.30として600m/分のスピードで乾式紡糸することにより、20デシテックスのマルチフィラメント、ポリアクリル酸系共重合体の含有量が30重量%であるポリウレタン糸の500g巻糸体を得た。この糸の破断伸度、破断強度、セット性、応力緩和、熱セット性および融点を併せて表1に示した。吸放湿係数ΔMRはB3未配合の比較例3に比べ、13倍に増加した。熱セット性はB3未配合の比較例3より増大し、機械セットも適度であった。また、破断伸度、破断強度はB3未配合の比較例3と同等以上であった。
【0095】
得られた糸と東レ(株)製ナイロン糸“ミラコスモ”(22デシテックス)を用い、カバーリング糸(SCY)を形成し、ゾッキパンストを編んだところ、外観品位の優れた優れたゾッキパンストを得ることができた。このゾッキパンストの吸放湿係数ΔMRは4.7であり、B3未配合の同一原糸を用いた比較例3のゾッキパンストの約1.9倍であった。
【0096】
紫外線(UV)、窒素酸化物(NOx)に対する耐変色性は、各比較例に比べて優れていた。
【0097】
[比較例1]
ポリマ溶液A1、添加剤溶液C1を混合し、均一溶液E1とした。溶液E1をゴデローラーと巻取機の速度比を1.40として540m/分のスピードで乾式紡糸することにより、18デシテックス、モノフィラメントの糸を得た。この糸の破断伸度、破断強度、セット性、応力緩和、熱セット性、および糸の融点を表1に併せて示した。
【0098】
得られた糸を用い、東レ(株)製ナイロン糸“ミラコスモ”(22デシテックス)によるカバーリング糸(SCY)を形成し、ゾッキパンストを編んだ。このゾッキパンストの吸放湿係数ΔMRは2.7であった。
【0099】
紫外線(UV)、窒素酸化物(NOx)に対する耐変色性は、各実施例に比べて劣っていた。
【0100】
[比較例2]
ポリマ溶液A2、添加剤溶液C1を混合し、均一溶液E2とした。溶液E2をゴデローラーと巻取機の速度比を1.20として600m/分のスピードで乾式紡糸することにより、20デシテックスのマルチフィラメントの500g巻糸体を得た。この糸の破断伸度、破断強度、セット性、応力緩和、熱セット性、および糸の融点を併せて表1に示した。
【0101】
得られた糸を用い、東レ(株)製ナイロン糸“ミラコスモ”(22デシテックス)によるカバーリング糸(SCY)を形成し、ゾッキパンストを編んだ。このゾッキパンストの吸放湿係数ΔMRは2.8であった。
【0102】
紫外線(UV)、窒素酸化物(NOx)に対する耐変色性は、各実施例に比べて劣っていた。
【0103】
[比較例3]
ポリマ溶液A3、添加剤溶液C1を混合し、均一溶液E3とした。溶液E3をゴデローラーと巻取機の速度比を1.30として600m/分のスピードで乾式紡糸することにより、20デシテックスのマルチフィラメントの500g巻糸体を得た。この糸の破断伸度、破断強度、セット性、応力緩和、熱セット性、および糸の融点を併せて表1に示した。
【0104】
得られた糸を用い、東レ(株)製ナイロン糸“ミラコスモ”(22デシテックス)によるカバーリング糸(SCY)を形成し、ゾッキパンストを編んだ。このゾッキパンストの吸放湿係数ΔMRは2.5であった。
【0105】
紫外線(UV)、窒素酸化物(NOx)に対する耐変色性は、各実施例に比べて劣っていた。
【0106】
【発明の効果】
本発明のポリウレタン糸を使用した衣服などは、適度な透明性と適度な伸びがあり、高い熱セット性があり、かつ、ある程度の機械セット性、脱着性、フィット性、外観品位、着用感、吸放湿性、制電性、耐変色性などに優れたものとなる。これらの優れた特性を有することから、本発明のポリウレタン糸は単独での使用はもとより、各種繊維との組み合わせにより、例えば、ソックス、ストッキング、丸編、トリコット、水着、スキーズボン、作業服、煙火服、洋服、ゴルフズボン、ウエットスーツ、ブラジャー、ガードル、手袋や靴下等の各種繊維製品の締め付け材料、紙おしめなどサニタニー品の漏れ防止用締め付け材料、防水資材の締め付け材料、似せ餌、造花、電気絶縁材、ワイピングクロス、コピークリーナー、ガスケットなど、種々の用途に使用することが可能である。
Claims (7)
- ポリオール、ジイソシアネート及び鎖伸長剤から重合されたポリウレタンに、ポリアクリル酸系共重合体を含有させた樹脂組成物からなるポリウレタン糸であり、かつ、ポリアクリル酸系共重合体が、アクリル酸ナトリウム−アクリルアミド共重合体、アクリル酸ナトリウム−スチレンスルホン酸ナトリウム共重合体、及びポリアクリル酸ナトリウムのうちのいずれか1種以上であることを特徴とするポリウレタン糸。
- ポリアクリル酸系共重合体の数平均分子量が1000以上20000000以下であることを特徴とする請求項1に記載のポリウレタン糸。
- ポリアクリル酸系共重合体の含有量が0.5重量%以上50重量%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリウレタン糸。
- アクリル酸ナトリウム−アクリルアミド共重合体、アクリル酸ナトリウム−スチレンスルホン酸ナトリウム共重合体、及びポリアクリル酸ナトリウムのうちのいずれか1種以上のポリアクリル酸系共重合体をポリウレタン溶液に添加した後、紡糸することを特徴とするポリウレタン糸の製造方法。
- ポリウレタン溶液に添加するポリアクリル酸系共重合体の数平均分子量が1000以上20000000以下であることを特徴とする請求項4に記載のポリウレタン糸の製造方法。
- 紡糸方法が乾式紡糸であることを特徴とする請求項4または5に記載のポリウレタン糸の製造方法。
- 紡糸速度が450m/分以上であることを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載のポリウレタン糸の製造方法。
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