JP3658416B2 - シリカゾル、シリカ被膜及びシリカ粉体並びにそれらの製造方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、シリカゾル、シリカ被膜及びシリカ粉体並びにそれらの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、シリカ粉体は、ケイ酸ナトリウムを稀硫酸等の酸溶液中に加えて加水分解し、ゾルを形成させ、さらに熟成させてゲルを生成させ、乾燥することによって得られていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のような製造方法では、ゾルの熟成、粘度上昇が非常に速いために、均一な粒度のシリカ粒子を得ることが困難であった。また、このため、シリカ粉体を得る際には、一次粒子を均一な所望の粒度に制御することが困難なため、二次粒子の細孔径を制御することが困難であった。従って、シリカ粒子が均一な所望の粒度であるシリカゾルを形成し、かつ一次粒子が均一な所望の粒度で、二次粒子の細孔径が均一なシリカ粉体を得る簡易な製造方法が望まれていた。更に、新規なるシリカ被膜の製造が望まれていた。
【0004】
従って、本発明は上記課題を解消し、簡易に得ることが可能な、シリカ粒子が均一な所望の粒度であるシリカゾル及び一次粒子が均一な所望の粒度であるシリカ粉体並びに新規に製造されたシリカ被膜、さらにそれらの製造方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段及び作用】
上記の課題を解決するため、本第1発明のシリカゾルの製造方法は、
オルトケイ酸アルキルと、アルコールと、水と、ニトロ基を有する有機窒素化合物とを、酸の存在下で混合撹拌することを特徴とする。
【0006】
本第2発明のシリカゾルは、
オルトケイ酸アルキルと、アルコールと、水と、ニトロ基を有する有機窒素化合物とを、酸の存在下で混合撹拌することによって得られることを特徴とする。
本第3発明のシリカ被膜の製造方法は、
オルトケイ酸アルキルと、アルコールと、水と、ニトロ基を有する有機窒素化合物とを、酸の存在下で混合撹拌してシリカゾルを形成させ、次いで該シリカゾルを基材表面に塗布後乾燥することを特徴とする。
【0007】
本第4発明のシリカ被膜は、
オルトケイ酸アルキルと、アルコールと、水と、ニトロ基を有する有機窒素化合物(ただし、ニトロメタン、およびニトロベンゼンを除く)とを、酸の存在下で混合撹拌してシリカゾルを形成させ、次いで該シリカゾルを基材表面に塗布後乾燥することよって形成されることを特徴とする。
【0008】
本第5発明のシリカ粉体の製造方法は、
オルトケイ酸アルキルと、アルコールと、水と、ニトロ基を有する有機窒素化合物とを、酸の存在下で混合撹拌してシリカゾルを得る工程と、該シリカゾルを25時間〜1000時間静置熟成させる工程と、前記静置熟成後のシリカゾルを乾燥させ、シリカ粉体とする工程とからなることを特徴とする。
【0009】
本第6発明のシリカ粉体は、
オルトケイ酸アルキルと、アルコールと、水と、ニトロ基を有する有機窒素化合物とを、酸の存在下で混合撹拌してシリカゾルを得、該シリカゾルを25時間〜1000時間静置熟成させ、前記静置熟成後のシリカゾルを乾燥させ、シリカ粉体とすることによって得られることを特徴とする。
【0010】
以下に本発明の構成について詳述する。
オルトケイ酸アルキルのアルキル基としては、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、この中で特にメチル基、エチル基が好ましい。炭素数が5以上のアルキル基では、ゾルの調製時に粘度が上昇する傾向にあるため好ましくない。
【0011】
アルコールとしては、メタノール、エタノールが好ましい。また、アルコールの使用量は、オルトケイ酸アルキルに対する体積比が0.01〜1、特に0.1〜0.5であることが好ましい。これよりも量が多すぎると、シリカ濃度が低下しすぎ、また、これよりも量が少ないと、加水分解が起こり難い傾向にある。
【0012】
使用する水の量は、特に制限されないが、好ましくは、オルトケイ酸アルキルに対する体積比が、0.5〜4である。0.5以上である方が、加水分解に有利であり、また、4以上であっても、特に有利なことはなく、逆に嵩高く、かつ乾燥工程で無駄にエネルギーを消費するからである。さらに、水の量が多すぎると、加水分解反応やゲル化速度が速くなる。
【0013】
ニトロ基を有する有機窒素化合物としては、ニトロメタン、ニトロエタン、ニトロベンゼン、ニトロプロパン等が好ましい。ニトロ基を有する有機窒素化合物の添加量は、オルトケイ酸アルキルに対して2wt%〜30wt%、特に5wt%〜20wt%であることが好ましい。添加量が下限より少ないと、ゾルの粘度上昇を抑制する作用が減少する傾向にあり、上限より多いとアルコールへの溶存性が低下し、粘度上昇を抑制する作用をしないものが多くなるため好ましくない。さらに、経済的でない。
【0014】
通常、不純物をゾル形成時に混合すると、ゾルの熟成が促進されるが、本発明によれば、ゾル形成時にニトロ基を有する有機窒素化合物を混合させることにより、ゾルの熟成が抑制される。
使用する酸は、塩酸、硫酸、硝酸等に代表される無機酸、及び酢酸等に代表される有機酸を使用することができる。このうち、特に塩酸が好ましい。酸の使用量については、系内のpHが好ましくは1.0〜3.0、特に2.0付近となるように設定するのが好ましい。系内のpHが下限より低い、あるいは上限より高いと、熟成が促進されるので、好ましくない。
【0015】
混合撹拌を行う際の条件は好ましくは5〜70℃、より好ましくは15〜30℃で、好ましくは5〜120分、より好ましくは20〜90分行う。この条件範囲であることが、適正なシリカゾルを得るに有利である。
混合する順序は、いずれであってもよく、例えば、同時にすべてを混合してもよいし、またはニトロ基を有する有機窒素化合物が溶解可能な場合には、他の成分の混合後にニトロ基を有する有機窒素化合物を混合してもよい。
【0016】
このようにして得られるシリカゾルの生成直後のB型粘度計での測定値は、様々であるが、通常、1mPa・s〜10mPa・sである。例えば、体積比で、オルトケイ酸エチル:エタノール:水(pH2.0)=5:1:2の場合には、3mPa・sを示す。そして、シリカゾル形成時にニトロ基を有する有機窒素化合物を混合したことにより、生成後の粘度は、120時間までは通常、3mPa・s〜10mPa・sと極めてゆるやかに上昇する。このため、適当な熟成時にシリカゾルの熟成を抑制することができるので、シリカ粒子が均一な適当な粒度であるシリカゾルを得ることができる。従って、シリカ粒子が均一な所望の粒度であるシリカゾルを製造することにより、後に形成するシリカ被膜またはシリカ粒子の一次粒子を均一かつ所望の大きさにすることができる。
【0017】
続いて、第3発明及び第4発明の構成について詳述する。
使用する基材は、通常ステンレス、鉄板、アルミニウム、銅などの金属及びガラス、石英などの無機質のものが挙げられ、中でもステンレス、ガラス及び石英が好ましい。また、耐熱性及び耐溶媒性を有する合成樹脂を基材とすることもできる。これらの基材の形状は特に限定されないが、通常板状が好ましい。被膜を施す基材は、予め、通常の方法によりその表面を洗浄し脱脂しておくことが好ましい。
【0018】
上記のようにして得られたシリカゾルを用いて基材表面にシリカ被膜を形成する方法としては、特に限定するものではないが、例えばディッピング法、ドクターブレード法、スプレー又はローラーによる塗布等が挙げられ、この中で特にディッピング法が好ましい。
【0019】
ディッピング法の概要は、まずシリカゾルに基材を浸漬し、次いで引き上げ、最後に乾燥して被膜を形成する。以下にディッピング法について説明する。
<浸漬、引き上げ工程>
基材をシリカゾル中に浸漬する場合、通常、基材はゾル溶液面に対してほぼ垂直に浸漬し、またほぼ垂直に引き上げる。浸漬処理時の温度は、通常、10〜50℃であり、浸漬時間は、通常、5〜30分である。浸漬時間が前記下限より短い場合、基板とのなじみが悪くなる傾向にあり、一方、前記上限より長くしても被膜を形成する上で特に効果はない。
【0020】
浸漬処理を終えた基材は、上記シリカゾルより引き上げるが、この際の引き上げ速度は、液面に対してほぼ垂直に好ましくは0.01〜100mm/sec.、より好ましくは、0.1〜10mm/sec.である。この引き上げ速度は、基材の表面に均一に付着したシリカゾルの成分をそのままの状態を保ちながら引き上げる必要があるため、前記範囲内に設定するのが好ましい。また、この引き上げ速度は、形成する被膜の膜厚に関与する重要な要因であるため、所定の膜厚に応じて前記範囲内で引き上げ速度を選定する。
<乾燥工程>
引き上げられた基材は、次いで1〜20℃/min.、好ましくは3〜10℃/min.の昇温速度で60〜300℃、好ましくは110〜200℃まで昇温し乾燥することにより、シリカ被膜を基材表面上に完全に定着させる。急激な加熱はシリカ被膜の形成に悪影響を及ぼす可能性があるため、昇温速度がこの上限を超えないように注意することが好ましい。また、加熱温度が下限以上である方が、強度及び定着性の面から良好なシリカ被膜を得ることができ、上限より高い場合には、膜と基材の膨張係数または収縮係数が異なるので剥離の原因となる傾向にあり、好ましくない。なお、加熱処理に要する時間は、加熱温度に到達後、通常、5〜120分である。
【0021】
このようにして基材表面上にシリカ被膜が形成されるが、この被膜の膜厚は上記の条件の範囲を適宜選定することにより、通常0.1〜2.0μmで調節することが可能である。この際、上記のように、シリカゾル形成時にニトロ基を有する有機窒素化合物を混合し、ゾルの粘度上昇の速度を抑制しているので、ゾルのシリカ粒子を所望の粒度で基材に適用し、均一な所望の厚さの被膜を形成することができる。また、シリカ被膜の膜厚を厚くするために、上記した基材の浸漬処理、引き上げ、及び加熱処理の一連の操作を繰り返し実施しても差し支えない。
【0022】
更に、第5発明及び第6発明の構成について詳述する。
上記のようにして得られたシリカゾルを25時間〜1000時間静置熟成させることにより、所定の粒度に成長させる。25時間よりも熟成時間が少ないとポリメリゼーションが適度に進まず、また、1000時間よりも長すぎると、ポリメリゼーションが過度に進む傾向にあるため、好ましくない。この際、上記のように、ニトロ基を有する有機窒素化合物が混合されているので、ゾルの熟成がゆるやかである。このため、所定の均一な粒度にてゾルのシリカ粒子の熟成を抑制させることができる。
【0023】
次いで、熟成させたシリカゾルを、好ましくは1〜20℃/min.、より好ましくは3〜10℃/min.の昇温速度で好ましくは60〜300℃、より好ましくは110〜200℃まで昇温し乾燥することにより、シリカ粉体を形成させる。急激な加熱はシリカ粉体の形成に悪影響を及ぼす可能性があるため、昇温速度がこの上限を超えないように注意することが好ましい。また、加熱温度が下限以上である方が、乾燥、定着に有利であり、良好なシリカ粉体を得ることができ、上限よりも高い場合には、シリカ表面のシラノール基の一部が脱水現象により蒸発し、物性や化学的性質が変化するので好ましくない。なお、加熱処理に要する時間は、加熱温度に到達後、通常、0.5〜24時間である。
【0024】
このようにしてシリカ粉体が形成されるが、この粉体の粒子径は上記の条件の範囲を適宜選定することにより、通常0.01〜5000μmの範囲で調節することができる。この際、本発明によれば、上記のように、所望の均一な粒度にゾルのシリカ粒子の熟成を抑えることができるので、一次粒子が均一なシリカ粉体を得ることができる。この結果、二次粒子の細孔径を均一に制御することができる。
【0025】
【実施例】
以下に本発明の構成及び作用を一層明確にするために、好適な実施例について説明する。
[実施例1]
(第1、第2発明のシリカゾルとその製造方法の実施例)
オルトケイ酸テトラエチル50mlと、エタノール10mlと、蒸留水20mlと、ニトロメタン5gとを混合し、この系内に塩酸をpH2になるまで加えた後、20℃で30分間混合攪拌し、静置熟成することにより、透明なゾルを得た。このゾルの20℃における静置熟成中の粘度の経時変化を図1に示す。図1から、ゾルの粘度が立ち上がるのが150時間以後と極めてゆるやかであることがわかる。
【0026】
また、それぞれ25時間、50時間及び120時間熟成させたシリカゾル中のシリカ粒子の粒度を被膜FTIR測定によるSiOSiに帰属されるスペクトルの半値幅より求めたところ、ピークが鋭く、シリカ粒子が均一であることが示された。さらに、小角X線散乱で上記シリカゾル中のシリカ粒子の粒度を測定したところ、同様に均一であることが示された。
(第3発明のシリカ被膜の製造方法の実施例)
上記方法によりそれぞれ25時間、50時間及び120時間静置熟成させたシリカゾルを用いて、それらシリカゾル中に、それぞれ予め洗浄処理したSUS304ステンレス板(30mm×20mm×0.5mm)をほぼ垂直に全部浸漬し、20℃で30分間保持した後、0.5mm/sec.の速度でステンレス板をほぼ垂直に引き上げ、次いでこれを5℃/min.の昇温速度で170℃まで昇温し、同温度で30分間加熱処理することにより、シリカ被膜が形成されたステンレス板を得た。このときの膜厚は、それぞれ約0.8μm、約0.8μm及び約1.0μmの均一なものであった。即ち、シリカ被膜が形成されたステンレス板をエポキシ樹脂に包まいし、切断後、EPMAで切断面のSiのKαの面分析を行った。その結果、±0.1μm程度の均一な膜であった。従って、ゾルの熟成時間、即ちゾルの所定の粘度を選択することによって、所定の均一な厚さのシリカ被膜が得られることがわかった。
(第5、6発明のシリカ粉体とその製造方法の実施例)
上記方法によりそれぞれ25時間、50時間及び120時間静置熟成させたシリカゾルを、5℃/minの速度で170℃まで昇温し、この温度で2時間焼成することにより、シリカ粉体を得た。
【0027】
得られたシリカ粉体を電子顕微鏡写真で観察したところ、均一な一次粒子の凝集体が認められた。また、この凝集体の細孔径は均一であった。
[実施例2]
(第1、2発明のシリカゾルとその製造方法の実施例)
ニトロメタン5gをニトロエタン6.15gにした以外は、実施例1のシリカゾルの調製と同様にして、シリカゾルを得た。このゾルの20℃における静置熟成中の粘度の経時変化を図1に示す。図1から、ゾルの粘度の立ち上がりが150時間以後と極めてゆるやかであることがわかる。
【0028】
また、それぞれ25時間、50時間及び120時間熟成させたシリカゾル中のシリカ粒子の粒度を被膜FTIR測定によるSiOSiに帰属されるスペクトルの半値幅より求めたところ、ピークが鋭く、シリカ粒子が均一であることが示された。さらに、小角X線散乱で上記シリカゾル中のシリカ粒子の粒度を測定したところ、同様に均一であることが示された。
(第3、4発明のシリカ被膜とその製造方法の実施例)
実施例2のシリカゾルを用いた以外は、実施例1のシリカ被膜の調製と同様にして、シリカ被膜を得た。このときの膜厚は、それぞれ約0.8μm、約0.9μm及び約1.1μmの均一なものであった。従って、ゾルの熟成時間、即ちゾルの所定の粘度を選択することによって、所定の均一な厚さのシリカ被膜が得られることがわかった。
(第5、6発明のシリカ粉体とその製造方法の実施例)
実施例2のシリカゾルを用いた以外は、実施例1のシリカ粉体の調整と同様にして、シリカ粉体を得た。
【0029】
得られたシリカ粉体を電子顕微鏡写真で観察したところ、均一な一次粒子の凝集体が認められた。また、この凝集体の細孔径は均一であった。
[実施例3]
(第1、2発明のシリカゾルとその製造方法の実施例)
ニトロメタン5gを1ーニトロプロパン7.30gにした以外は、実施例1のシリカゾルの調製と同様にして、シリカゾルを得た。このゾルの20℃における静置熟成中の粘度の経時変化を図1に示す。図1から、ゾルの粘度の立ち上がりが120時間以後と極めてゆるやかであることがわかる。
【0030】
また、それぞれ25時間、50時間及び120時間熟成させたシリカゾル中のシリカ粒子の粒度を被膜FTIR測定によるSiOSiに帰属されるスペクトルの半値幅より求めたところ、ピークが鋭く、シリカ粒子が均一であることが示された。さらに、小角X線散乱で上記シリカゾル中のシリカ粒子の粒度を測定したところ、同様に均一であることが示された。
(第3、4発明のシリカ被膜とその製造方法の実施例)
実施例3のシリカゾルを用いた以外は、実施例1のシリカ被膜の調製と同様にして、シリカ被膜を得た。このときの膜厚は、それぞれ約0.8μm、約0.9μm及び約1.1μmの均一なものであった。従って、ゾルの熟成時間、即ちゾルの所定の粘度を選択することによって、所定の均一な厚さのシリカ被膜が得られることがわかった。
(第5、6発明のシリカ粉体とその製造方法の実施例)
実施例3のシリカゾルを用いた以外は、実施例1のシリカ粉体の調整と同様にして、シリカ粉体を得た。
【0031】
得られたシリカ粉体を電子顕微鏡写真で観察したところ、均一な一次粒子の凝集体が認められた。また、この凝集体の細孔径は均一であった。
[比較例1]
(シリカゾルの調製)
オルトケイ酸エチル50mlと、エタノール10mlと、蒸留水20mlとを混合し、この系内に塩酸をpH2になるまで加えた後、20℃で30分間混合攪拌し、静置熟成することにより、透明なゾルを得た。このゾルの20℃における静置熟成中の粘度の経時変化を図1に示す。図1から、ゾルの粘度の立ち上がりが100時間以後と比較的速いことがわかる。
(シリカ被膜の形成)
上記方法によりそれぞれ25時間、50時間及び120時間静置熟成させたシリカゾルを用いて、実施例1のシリカ被膜の形成と同様の条件により、シリカ被膜が形成されたステンレス板を得た。このときの膜厚はそれぞれ、約1.0μm、約1.2μm及び約2μmであった。しかし、ゾルの粘度上昇が非常に速いために被膜が目的とするものよりも厚くなり、また亀裂、欠落が生じ、均一な被膜を得ることができなかった。
(シリカ粉体の形成)
上記方法によりそれぞれ25時間、50時間及び120時間静置熟成させたシリカゾルを用いて、実施例1のシリカ粉体の形成と同様の条件により、シリカ粉体を得た。
【0032】
得られたシリカ粉体を電子顕微鏡写真で観察したところ、一次粒子の凝集体がきわめて不均一であり、細孔径も不均一であった。
尚、上記各実施例では、各成分を同時に混合しているが、ニトロメタン、ニトロエタンまたはニトロベンゼン等の有機窒素化合物を他の成分の混合後に混合してもよい。この場合には、シリカコロイド粒子をある程度まで成長させて、その粒子の大きさに所定時間保持することが可能となる。
【0033】
また、上記各実施例では、有機窒素化合物を1種のみ混合しているが、2種以上組み合わせて混合してもよい。
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明はこうした実施例により何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の態様で実施できることはいうまでもない。
【0034】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明の第1〜6発明によれば、簡易にシリカ粒子が所望の均一な粒度であるシリカゲルと、一次粒子が均一な所望の粒度であるシリカ粒子を得ることができる。また、新規に所望の均一な厚さのシリカ被膜を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 上記各実施例及び比較例のシリカゾルの粘度の経時変化を示すグラフ図である。
【産業上の利用分野】
本発明は、シリカゾル、シリカ被膜及びシリカ粉体並びにそれらの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、シリカ粉体は、ケイ酸ナトリウムを稀硫酸等の酸溶液中に加えて加水分解し、ゾルを形成させ、さらに熟成させてゲルを生成させ、乾燥することによって得られていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のような製造方法では、ゾルの熟成、粘度上昇が非常に速いために、均一な粒度のシリカ粒子を得ることが困難であった。また、このため、シリカ粉体を得る際には、一次粒子を均一な所望の粒度に制御することが困難なため、二次粒子の細孔径を制御することが困難であった。従って、シリカ粒子が均一な所望の粒度であるシリカゾルを形成し、かつ一次粒子が均一な所望の粒度で、二次粒子の細孔径が均一なシリカ粉体を得る簡易な製造方法が望まれていた。更に、新規なるシリカ被膜の製造が望まれていた。
【0004】
従って、本発明は上記課題を解消し、簡易に得ることが可能な、シリカ粒子が均一な所望の粒度であるシリカゾル及び一次粒子が均一な所望の粒度であるシリカ粉体並びに新規に製造されたシリカ被膜、さらにそれらの製造方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段及び作用】
上記の課題を解決するため、本第1発明のシリカゾルの製造方法は、
オルトケイ酸アルキルと、アルコールと、水と、ニトロ基を有する有機窒素化合物とを、酸の存在下で混合撹拌することを特徴とする。
【0006】
本第2発明のシリカゾルは、
オルトケイ酸アルキルと、アルコールと、水と、ニトロ基を有する有機窒素化合物とを、酸の存在下で混合撹拌することによって得られることを特徴とする。
本第3発明のシリカ被膜の製造方法は、
オルトケイ酸アルキルと、アルコールと、水と、ニトロ基を有する有機窒素化合物とを、酸の存在下で混合撹拌してシリカゾルを形成させ、次いで該シリカゾルを基材表面に塗布後乾燥することを特徴とする。
【0007】
本第4発明のシリカ被膜は、
オルトケイ酸アルキルと、アルコールと、水と、ニトロ基を有する有機窒素化合物(ただし、ニトロメタン、およびニトロベンゼンを除く)とを、酸の存在下で混合撹拌してシリカゾルを形成させ、次いで該シリカゾルを基材表面に塗布後乾燥することよって形成されることを特徴とする。
【0008】
本第5発明のシリカ粉体の製造方法は、
オルトケイ酸アルキルと、アルコールと、水と、ニトロ基を有する有機窒素化合物とを、酸の存在下で混合撹拌してシリカゾルを得る工程と、該シリカゾルを25時間〜1000時間静置熟成させる工程と、前記静置熟成後のシリカゾルを乾燥させ、シリカ粉体とする工程とからなることを特徴とする。
【0009】
本第6発明のシリカ粉体は、
オルトケイ酸アルキルと、アルコールと、水と、ニトロ基を有する有機窒素化合物とを、酸の存在下で混合撹拌してシリカゾルを得、該シリカゾルを25時間〜1000時間静置熟成させ、前記静置熟成後のシリカゾルを乾燥させ、シリカ粉体とすることによって得られることを特徴とする。
【0010】
以下に本発明の構成について詳述する。
オルトケイ酸アルキルのアルキル基としては、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、この中で特にメチル基、エチル基が好ましい。炭素数が5以上のアルキル基では、ゾルの調製時に粘度が上昇する傾向にあるため好ましくない。
【0011】
アルコールとしては、メタノール、エタノールが好ましい。また、アルコールの使用量は、オルトケイ酸アルキルに対する体積比が0.01〜1、特に0.1〜0.5であることが好ましい。これよりも量が多すぎると、シリカ濃度が低下しすぎ、また、これよりも量が少ないと、加水分解が起こり難い傾向にある。
【0012】
使用する水の量は、特に制限されないが、好ましくは、オルトケイ酸アルキルに対する体積比が、0.5〜4である。0.5以上である方が、加水分解に有利であり、また、4以上であっても、特に有利なことはなく、逆に嵩高く、かつ乾燥工程で無駄にエネルギーを消費するからである。さらに、水の量が多すぎると、加水分解反応やゲル化速度が速くなる。
【0013】
ニトロ基を有する有機窒素化合物としては、ニトロメタン、ニトロエタン、ニトロベンゼン、ニトロプロパン等が好ましい。ニトロ基を有する有機窒素化合物の添加量は、オルトケイ酸アルキルに対して2wt%〜30wt%、特に5wt%〜20wt%であることが好ましい。添加量が下限より少ないと、ゾルの粘度上昇を抑制する作用が減少する傾向にあり、上限より多いとアルコールへの溶存性が低下し、粘度上昇を抑制する作用をしないものが多くなるため好ましくない。さらに、経済的でない。
【0014】
通常、不純物をゾル形成時に混合すると、ゾルの熟成が促進されるが、本発明によれば、ゾル形成時にニトロ基を有する有機窒素化合物を混合させることにより、ゾルの熟成が抑制される。
使用する酸は、塩酸、硫酸、硝酸等に代表される無機酸、及び酢酸等に代表される有機酸を使用することができる。このうち、特に塩酸が好ましい。酸の使用量については、系内のpHが好ましくは1.0〜3.0、特に2.0付近となるように設定するのが好ましい。系内のpHが下限より低い、あるいは上限より高いと、熟成が促進されるので、好ましくない。
【0015】
混合撹拌を行う際の条件は好ましくは5〜70℃、より好ましくは15〜30℃で、好ましくは5〜120分、より好ましくは20〜90分行う。この条件範囲であることが、適正なシリカゾルを得るに有利である。
混合する順序は、いずれであってもよく、例えば、同時にすべてを混合してもよいし、またはニトロ基を有する有機窒素化合物が溶解可能な場合には、他の成分の混合後にニトロ基を有する有機窒素化合物を混合してもよい。
【0016】
このようにして得られるシリカゾルの生成直後のB型粘度計での測定値は、様々であるが、通常、1mPa・s〜10mPa・sである。例えば、体積比で、オルトケイ酸エチル:エタノール:水(pH2.0)=5:1:2の場合には、3mPa・sを示す。そして、シリカゾル形成時にニトロ基を有する有機窒素化合物を混合したことにより、生成後の粘度は、120時間までは通常、3mPa・s〜10mPa・sと極めてゆるやかに上昇する。このため、適当な熟成時にシリカゾルの熟成を抑制することができるので、シリカ粒子が均一な適当な粒度であるシリカゾルを得ることができる。従って、シリカ粒子が均一な所望の粒度であるシリカゾルを製造することにより、後に形成するシリカ被膜またはシリカ粒子の一次粒子を均一かつ所望の大きさにすることができる。
【0017】
続いて、第3発明及び第4発明の構成について詳述する。
使用する基材は、通常ステンレス、鉄板、アルミニウム、銅などの金属及びガラス、石英などの無機質のものが挙げられ、中でもステンレス、ガラス及び石英が好ましい。また、耐熱性及び耐溶媒性を有する合成樹脂を基材とすることもできる。これらの基材の形状は特に限定されないが、通常板状が好ましい。被膜を施す基材は、予め、通常の方法によりその表面を洗浄し脱脂しておくことが好ましい。
【0018】
上記のようにして得られたシリカゾルを用いて基材表面にシリカ被膜を形成する方法としては、特に限定するものではないが、例えばディッピング法、ドクターブレード法、スプレー又はローラーによる塗布等が挙げられ、この中で特にディッピング法が好ましい。
【0019】
ディッピング法の概要は、まずシリカゾルに基材を浸漬し、次いで引き上げ、最後に乾燥して被膜を形成する。以下にディッピング法について説明する。
<浸漬、引き上げ工程>
基材をシリカゾル中に浸漬する場合、通常、基材はゾル溶液面に対してほぼ垂直に浸漬し、またほぼ垂直に引き上げる。浸漬処理時の温度は、通常、10〜50℃であり、浸漬時間は、通常、5〜30分である。浸漬時間が前記下限より短い場合、基板とのなじみが悪くなる傾向にあり、一方、前記上限より長くしても被膜を形成する上で特に効果はない。
【0020】
浸漬処理を終えた基材は、上記シリカゾルより引き上げるが、この際の引き上げ速度は、液面に対してほぼ垂直に好ましくは0.01〜100mm/sec.、より好ましくは、0.1〜10mm/sec.である。この引き上げ速度は、基材の表面に均一に付着したシリカゾルの成分をそのままの状態を保ちながら引き上げる必要があるため、前記範囲内に設定するのが好ましい。また、この引き上げ速度は、形成する被膜の膜厚に関与する重要な要因であるため、所定の膜厚に応じて前記範囲内で引き上げ速度を選定する。
<乾燥工程>
引き上げられた基材は、次いで1〜20℃/min.、好ましくは3〜10℃/min.の昇温速度で60〜300℃、好ましくは110〜200℃まで昇温し乾燥することにより、シリカ被膜を基材表面上に完全に定着させる。急激な加熱はシリカ被膜の形成に悪影響を及ぼす可能性があるため、昇温速度がこの上限を超えないように注意することが好ましい。また、加熱温度が下限以上である方が、強度及び定着性の面から良好なシリカ被膜を得ることができ、上限より高い場合には、膜と基材の膨張係数または収縮係数が異なるので剥離の原因となる傾向にあり、好ましくない。なお、加熱処理に要する時間は、加熱温度に到達後、通常、5〜120分である。
【0021】
このようにして基材表面上にシリカ被膜が形成されるが、この被膜の膜厚は上記の条件の範囲を適宜選定することにより、通常0.1〜2.0μmで調節することが可能である。この際、上記のように、シリカゾル形成時にニトロ基を有する有機窒素化合物を混合し、ゾルの粘度上昇の速度を抑制しているので、ゾルのシリカ粒子を所望の粒度で基材に適用し、均一な所望の厚さの被膜を形成することができる。また、シリカ被膜の膜厚を厚くするために、上記した基材の浸漬処理、引き上げ、及び加熱処理の一連の操作を繰り返し実施しても差し支えない。
【0022】
更に、第5発明及び第6発明の構成について詳述する。
上記のようにして得られたシリカゾルを25時間〜1000時間静置熟成させることにより、所定の粒度に成長させる。25時間よりも熟成時間が少ないとポリメリゼーションが適度に進まず、また、1000時間よりも長すぎると、ポリメリゼーションが過度に進む傾向にあるため、好ましくない。この際、上記のように、ニトロ基を有する有機窒素化合物が混合されているので、ゾルの熟成がゆるやかである。このため、所定の均一な粒度にてゾルのシリカ粒子の熟成を抑制させることができる。
【0023】
次いで、熟成させたシリカゾルを、好ましくは1〜20℃/min.、より好ましくは3〜10℃/min.の昇温速度で好ましくは60〜300℃、より好ましくは110〜200℃まで昇温し乾燥することにより、シリカ粉体を形成させる。急激な加熱はシリカ粉体の形成に悪影響を及ぼす可能性があるため、昇温速度がこの上限を超えないように注意することが好ましい。また、加熱温度が下限以上である方が、乾燥、定着に有利であり、良好なシリカ粉体を得ることができ、上限よりも高い場合には、シリカ表面のシラノール基の一部が脱水現象により蒸発し、物性や化学的性質が変化するので好ましくない。なお、加熱処理に要する時間は、加熱温度に到達後、通常、0.5〜24時間である。
【0024】
このようにしてシリカ粉体が形成されるが、この粉体の粒子径は上記の条件の範囲を適宜選定することにより、通常0.01〜5000μmの範囲で調節することができる。この際、本発明によれば、上記のように、所望の均一な粒度にゾルのシリカ粒子の熟成を抑えることができるので、一次粒子が均一なシリカ粉体を得ることができる。この結果、二次粒子の細孔径を均一に制御することができる。
【0025】
【実施例】
以下に本発明の構成及び作用を一層明確にするために、好適な実施例について説明する。
[実施例1]
(第1、第2発明のシリカゾルとその製造方法の実施例)
オルトケイ酸テトラエチル50mlと、エタノール10mlと、蒸留水20mlと、ニトロメタン5gとを混合し、この系内に塩酸をpH2になるまで加えた後、20℃で30分間混合攪拌し、静置熟成することにより、透明なゾルを得た。このゾルの20℃における静置熟成中の粘度の経時変化を図1に示す。図1から、ゾルの粘度が立ち上がるのが150時間以後と極めてゆるやかであることがわかる。
【0026】
また、それぞれ25時間、50時間及び120時間熟成させたシリカゾル中のシリカ粒子の粒度を被膜FTIR測定によるSiOSiに帰属されるスペクトルの半値幅より求めたところ、ピークが鋭く、シリカ粒子が均一であることが示された。さらに、小角X線散乱で上記シリカゾル中のシリカ粒子の粒度を測定したところ、同様に均一であることが示された。
(第3発明のシリカ被膜の製造方法の実施例)
上記方法によりそれぞれ25時間、50時間及び120時間静置熟成させたシリカゾルを用いて、それらシリカゾル中に、それぞれ予め洗浄処理したSUS304ステンレス板(30mm×20mm×0.5mm)をほぼ垂直に全部浸漬し、20℃で30分間保持した後、0.5mm/sec.の速度でステンレス板をほぼ垂直に引き上げ、次いでこれを5℃/min.の昇温速度で170℃まで昇温し、同温度で30分間加熱処理することにより、シリカ被膜が形成されたステンレス板を得た。このときの膜厚は、それぞれ約0.8μm、約0.8μm及び約1.0μmの均一なものであった。即ち、シリカ被膜が形成されたステンレス板をエポキシ樹脂に包まいし、切断後、EPMAで切断面のSiのKαの面分析を行った。その結果、±0.1μm程度の均一な膜であった。従って、ゾルの熟成時間、即ちゾルの所定の粘度を選択することによって、所定の均一な厚さのシリカ被膜が得られることがわかった。
(第5、6発明のシリカ粉体とその製造方法の実施例)
上記方法によりそれぞれ25時間、50時間及び120時間静置熟成させたシリカゾルを、5℃/minの速度で170℃まで昇温し、この温度で2時間焼成することにより、シリカ粉体を得た。
【0027】
得られたシリカ粉体を電子顕微鏡写真で観察したところ、均一な一次粒子の凝集体が認められた。また、この凝集体の細孔径は均一であった。
[実施例2]
(第1、2発明のシリカゾルとその製造方法の実施例)
ニトロメタン5gをニトロエタン6.15gにした以外は、実施例1のシリカゾルの調製と同様にして、シリカゾルを得た。このゾルの20℃における静置熟成中の粘度の経時変化を図1に示す。図1から、ゾルの粘度の立ち上がりが150時間以後と極めてゆるやかであることがわかる。
【0028】
また、それぞれ25時間、50時間及び120時間熟成させたシリカゾル中のシリカ粒子の粒度を被膜FTIR測定によるSiOSiに帰属されるスペクトルの半値幅より求めたところ、ピークが鋭く、シリカ粒子が均一であることが示された。さらに、小角X線散乱で上記シリカゾル中のシリカ粒子の粒度を測定したところ、同様に均一であることが示された。
(第3、4発明のシリカ被膜とその製造方法の実施例)
実施例2のシリカゾルを用いた以外は、実施例1のシリカ被膜の調製と同様にして、シリカ被膜を得た。このときの膜厚は、それぞれ約0.8μm、約0.9μm及び約1.1μmの均一なものであった。従って、ゾルの熟成時間、即ちゾルの所定の粘度を選択することによって、所定の均一な厚さのシリカ被膜が得られることがわかった。
(第5、6発明のシリカ粉体とその製造方法の実施例)
実施例2のシリカゾルを用いた以外は、実施例1のシリカ粉体の調整と同様にして、シリカ粉体を得た。
【0029】
得られたシリカ粉体を電子顕微鏡写真で観察したところ、均一な一次粒子の凝集体が認められた。また、この凝集体の細孔径は均一であった。
[実施例3]
(第1、2発明のシリカゾルとその製造方法の実施例)
ニトロメタン5gを1ーニトロプロパン7.30gにした以外は、実施例1のシリカゾルの調製と同様にして、シリカゾルを得た。このゾルの20℃における静置熟成中の粘度の経時変化を図1に示す。図1から、ゾルの粘度の立ち上がりが120時間以後と極めてゆるやかであることがわかる。
【0030】
また、それぞれ25時間、50時間及び120時間熟成させたシリカゾル中のシリカ粒子の粒度を被膜FTIR測定によるSiOSiに帰属されるスペクトルの半値幅より求めたところ、ピークが鋭く、シリカ粒子が均一であることが示された。さらに、小角X線散乱で上記シリカゾル中のシリカ粒子の粒度を測定したところ、同様に均一であることが示された。
(第3、4発明のシリカ被膜とその製造方法の実施例)
実施例3のシリカゾルを用いた以外は、実施例1のシリカ被膜の調製と同様にして、シリカ被膜を得た。このときの膜厚は、それぞれ約0.8μm、約0.9μm及び約1.1μmの均一なものであった。従って、ゾルの熟成時間、即ちゾルの所定の粘度を選択することによって、所定の均一な厚さのシリカ被膜が得られることがわかった。
(第5、6発明のシリカ粉体とその製造方法の実施例)
実施例3のシリカゾルを用いた以外は、実施例1のシリカ粉体の調整と同様にして、シリカ粉体を得た。
【0031】
得られたシリカ粉体を電子顕微鏡写真で観察したところ、均一な一次粒子の凝集体が認められた。また、この凝集体の細孔径は均一であった。
[比較例1]
(シリカゾルの調製)
オルトケイ酸エチル50mlと、エタノール10mlと、蒸留水20mlとを混合し、この系内に塩酸をpH2になるまで加えた後、20℃で30分間混合攪拌し、静置熟成することにより、透明なゾルを得た。このゾルの20℃における静置熟成中の粘度の経時変化を図1に示す。図1から、ゾルの粘度の立ち上がりが100時間以後と比較的速いことがわかる。
(シリカ被膜の形成)
上記方法によりそれぞれ25時間、50時間及び120時間静置熟成させたシリカゾルを用いて、実施例1のシリカ被膜の形成と同様の条件により、シリカ被膜が形成されたステンレス板を得た。このときの膜厚はそれぞれ、約1.0μm、約1.2μm及び約2μmであった。しかし、ゾルの粘度上昇が非常に速いために被膜が目的とするものよりも厚くなり、また亀裂、欠落が生じ、均一な被膜を得ることができなかった。
(シリカ粉体の形成)
上記方法によりそれぞれ25時間、50時間及び120時間静置熟成させたシリカゾルを用いて、実施例1のシリカ粉体の形成と同様の条件により、シリカ粉体を得た。
【0032】
得られたシリカ粉体を電子顕微鏡写真で観察したところ、一次粒子の凝集体がきわめて不均一であり、細孔径も不均一であった。
尚、上記各実施例では、各成分を同時に混合しているが、ニトロメタン、ニトロエタンまたはニトロベンゼン等の有機窒素化合物を他の成分の混合後に混合してもよい。この場合には、シリカコロイド粒子をある程度まで成長させて、その粒子の大きさに所定時間保持することが可能となる。
【0033】
また、上記各実施例では、有機窒素化合物を1種のみ混合しているが、2種以上組み合わせて混合してもよい。
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明はこうした実施例により何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の態様で実施できることはいうまでもない。
【0034】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明の第1〜6発明によれば、簡易にシリカ粒子が所望の均一な粒度であるシリカゲルと、一次粒子が均一な所望の粒度であるシリカ粒子を得ることができる。また、新規に所望の均一な厚さのシリカ被膜を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 上記各実施例及び比較例のシリカゾルの粘度の経時変化を示すグラフ図である。
Claims (6)
- オルトケイ酸アルキルと、アルコールと、水と、ニトロ基を有する有機窒素化合物とを、酸の存在下で混合撹拌することを特徴とするシリカゾルの製造方法。
- オルトケイ酸アルキルと、アルコールと、水と、ニトロ基を有する有機窒素化合物とを、酸の存在下で混合撹拌することによって得られることを特徴とするシリカゾル。
- オルトケイ酸アルキルと、アルコールと、水と、ニトロ基を有する有機窒素化合物とを、酸の存在下で混合撹拌してシリカゾルを形成させ、次いで該シリカゾルを基材表面に塗布後乾燥することを特徴とするシリカ被膜の製造方法。
- オルトケイ酸アルキルと、アルコールと、水と、ニトロ基を有する有機窒素化合物(ただし、ニトロメタン、およびニトロベンゼンを除く)とを、酸の存在下で混合撹拌してシリカゾルを形成させ、次いで該シリカゾルを基材表面に塗布後乾燥することよって形成されることを特徴とするシリカ被膜。
- オルトケイ酸アルキルと、アルコールと、水と、ニトロ基を有する有機窒素化合物とを、酸の存在下で混合撹拌してシリカゾルを得る工程と、該シリカゾルを25時間〜1000時間静置熟成させる工程と、前記静置熟成後のシリカゾルを乾燥させ、シリカ粉体とする工程とからなることを特徴とするシリカ粉体の製造方法。
- オルトケイ酸アルキルと、アルコールと、水と、ニトロ基を有する有機窒素化合物とを、酸の存在下で混合撹拌してシリカゾルを得、該シリカゾルを25時間〜1000時間静置熟成させ、前記静置熟成後のシリカゾルを乾燥させ、シリカ粉体とすることによって得られることを特徴とするシリカ粉体。
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