JP3657400B2 - 巻き貝の身取出具 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、サザエやアカニシ等巻き貝の身を取り出す取出具に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、サザエの身を大量に取り出す取出作業は、家庭等で一般的に用いられる楊枝状の金属棒を使用した取出手段では非能率であることから、市販されている手鉤状の取出具等を使用して、その先鋭な鉤部でサザエの蓋を外したりこれを殻の中に差し込んで、身と殻とを連結している繋部(殻軸筋)を切り離して身の取り出しが行われている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
然し、上記従来のような取出手段では、手鉤状の取出具はフック状の鉤の先端部が先鋭な針部に形成されているので、繋部を切り離す掻取動作は不十分ながら行うことができるが、この状態から針部を押し上げて身を巻き方向に沿って掻き出そうとすると、先鋭な針部が身に刺傷や裂傷を与えると共に、押し上げ方向の力が有効に作用し難いために、身の掻出動作を能率よく円滑に行うことができず取出作業が煩雑になる等の問題がある。
また上記の手鉤状の取出具は取出操作し難い形状であると共に、厨房において他用途に使用することができず取扱が不便である等の欠点がある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明の巻き貝の身取出具は、第1に、柄3の前方から刃杆5aを巻き貝2の貝口21の内壁に接するように下向きに湾曲形成すると共に、該刃杆5aの下端部に掻取部5を設けてなる取出具において、上記掻取部5を掻取方向に沿う偏平状の広巾な下部刃先7aと、該下部刃先7aの縦側部に沿い先鋭で滑らかな側部刃7bとから形成したことを特徴としている。
【0005】
第2に、下部刃先7aの刃線を、掻取方向Kに対し鋭角状の掬角θを有すると共に刃杆芯Pに対し斜交させて形成したことを特徴としている。
【0006】
第3に、下部刃先7aを柄3の高さ内に位置させることを特徴としている。
【0007】
第4に、柄3の後方に針部6を延設して形成することを特徴としている。
【0008】
第5に、一本の線状部材で柄3を巻き曲げ加工することによって形成すると共に、その両端に掻取部5と針部6を一体的に成形したことを特徴としている。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1〜図6に示す1は、巻き貝2(図示例ではサザエを示す)の肉質部と内蔵部等からなる姿身(以下身という)20を取り出す際に用いられる本発明の第1実施形態に係わる取出具1であり、図示例の取出具1は握り用の柄3の一側に掻取部5を設けると共に他側に針部6を設け、これらを例えばステンレス材からなる一本の線材によって一体的に構成している。
尚、図7〜図14に示す取出具1はそれぞれ本発明の別実施形態を示す。
【0010】
上記取出具1は、直径3〜5ミリ程度の硬質な1本の線材によって、握部となる央部をベンダ等を用い巻き曲げ加工を行うことにより、長円形の柄3を略手のひら巾の長さで、且つ上下高さをその3分の1程度となして握りやすく偏平状に形成している。
また掻取部5は、柄高さH内において一側に延出させた線材部分(図示例では柄の下辺から延長させている)、即ち刃杆5aを一旦上方に向けて屈曲したのち、その先部を下向きに湾曲形成しこの下端部に偏平形状の広巾な刃先7を形成している。尚、巻き曲げ加工された柄3と刃杆5a等の接合部分は溶接等の手段で適宜固定することにより剛性を図りながら廉価に製作している。
【0011】
そして、図4に示すようにサザエ2を左手に持った状態において右手で把持した取出具1によって、該サザエ2の身20の掻取動作(矢印K)及び掻出動作(矢印T)を行って身20の取出作業を行う際には、図4に示すように左右の手は平面視でサザエ2内に挿入された掻取部5部分を中心としたハ字状になって操作され、上記刃先7は図1に示すように、その延長線(力の作用線)を柄高さH内に位置するようにしているので、柄3を把持している力を刃先7に効率よく働かせることができ、貝の大きさや形状に応じた良好な身の取出作業を適切且つ能率よく行うことができるものである。
【0012】
図3に示すように刃先7は下部刃先7aと側部刃7bとから形成しており、下部刃先7aを同図(B)の下方視の下面図で示すように、掻取方向Kに対し切角αを以て後下りとなる刃線にしていると共に、同図(C)の刃先7の断面図で示すように、下部刃先7aの刃線(7a)を上記掻取方向Kに対し掬角θを有して刃杆5aの刃杆芯Pに対し斜交形成している。
そして、下部刃先7aの両側に側部刃7b,7cを先鋭で滑らかに湾曲した縦方向に形成している。
【0013】
これにより、後述する態様によって掻取動作が行われるとき、図5,図6に示すように円形状の貝口21内に下向湾曲した刃先7を差し込んだ状態で、下部刃先7aをその内壁に密接した適正姿勢を有して沿わせることができ、掻取方向Kに肉質部や内蔵等を傷付けることのない円滑な掻取移動を可能にさせると共に、側部刃7bと下部刃先7aによって、身20と殻22とを繋ぐ繋部(殻軸筋)23を身20の損傷を防止した状態で殻22から良好に切り離すことができるようにし、さらに後述するように掻出動作時にも身20を損傷することなく良好に掻き出すことができるようにしているものである。
【0014】
また刃先7の表刃面70は、刃巾の央部が中高となるように滑らかな湾曲面に形成することにより、掻取動作時に身を傷つけることなく前側(離間方向)に押しやりながら、掻出動作時に広巾な表刃面70で身20を傷つけることなく具合よく押し出して殻22から円滑に取り出すことができるようにしている。
また裏刃面71は、略平坦面状に形成しており、これにより下部刃先7a及び側部刃7bを掻取動作時に同図(C)の点線で示す貝口21の内壁に密接(近接)させて、前記繋部23を残留片を残すことなく確実且つきれいに分離することができるようにしている。
【0015】
また、この図示例では刃先7を有する刃杆5aと柄3及び針部6を有する針杆6aとの3者を一本の線状体で曲げ加工によって形成するようにしているので、ベンダー等の加工機或いは手加工等によって簡単且つ廉価に製作することができる等の利点がある。
尚、針部6は図示例においてサザエ2の蓋25を剥ぎ取る際に便利に使用することができる他、魚類等を料理する際の差し針としても利用することができるものである。また柄3の形状は点線で示すように巻き曲げ加工によって使用しやすい適宜なデザインにするとよい。
【0016】
本発明に係わる巻き貝の身取出具は以上の用に構成したことにより、サザエ2の身20を取り出す際に、図4〜図6に示すように掻取動作と掻出動作を行うことにより身20を損傷させることなく簡単且つ能率よく取出作業を行うことができるものである。
この取出作業の一態様について説明すると、図4の点線で示すようにサザエ2と取出具1を左右の手で握り、先ず針部6を使って蓋25を除去する。
【0017】
次いで、円形状の貝口21内に刃先7を身20と殻22間に差し込み、下部刃先7aをその内壁に密接した適正姿勢を以て位置決めしてから掻取方向Kに掻取移動をさせると、側部刃7b及び下部刃先7aによって掻取方向Kの貝口21の円弧面に沿って身を傷付けることなく、身20と殻22とを繋ぐ繋部23を殻22から良好に切り離すことができる。
【0018】
次いで、取出具1の刃先7を、掻取り終端において接当している貝口21を支点に手元を下げてテコ作動させた状態で(この場合必要によってはひねりを加えてもよい。)、身20の巻き方向に沿う矢印Tの掻出方向に向けて押し上げるように反復状に移動させると、殻22内で自由な状態になっている身20は、巻き貝の巻き方向に沿いながら跳ね出す態様になって、殻22内から迅速且つスムースに身20を損傷させることなく取り出すことができるものである。
【0019】
即ち、この掻出動作において、刃先7は下部刃先7aに前述の掬角θ並びに切角αを有すると共に、表刃面70を刃巾の央部が中高となる滑らかな湾曲面に形成されていることにより、刃先7は掻出動作時に広巾で滑らかな表面によって身20を押し上げるように接して掻き出すので、身20は刃先7との接当による内蔵部等の損傷を防止されながら掻き出し方向の力を大きく受けて円滑に掻き出されるものでる。
尚、図1の点線で示すように表刃面70部位に滑り防止用の凹凸面7dを横方向に滑らかに形成してもよく、この場合には該凹凸面7dによっても身20を係止して掻き出しをより良好に行うことができるものである。
【0020】
またこのとき、刃先7は下部刃先7aの位置を柄3の高さ内に設けているので、柄3を握った状態で捻り操作等を行う掻取動作及び掻出動作の力を効率よく刃先7に伝えることができ、サザエ2の大きさ並びに形状に適応させた動作を適切に行うことが容易となり、身20の取出作業を簡単且つ能率よく行うことができるものである。
【0021】
尚、この実施形態において、刃先7は刃杆5aの径と略同巾に形成したものを図示したが、これに限ることなく図3に示すように、例えば刃先7を圧延することにより刃杆5aよりも広巾に形成すると一層効果的であり、また刃先7はその下部刃先7a側を刃杆芯Pより掻取方向側に偏寄させるようにすると、掻取作業時に刃先7の視認を良好に行うことができると共に作業を一層的確に行うことができる等の利点がある。
【0022】
次に、本発明に係わる掻取部を有する各種の実施形態について、先ず図7,図8に示す第2実施形態の取出具について説明する。
この取出具1は、刃先7を有する刃杆5aと柄3とを別体に形成した状態で両者を溶接等の手段で組付け固定したものである。
これによれば、刃杆5a及び柄3を個別に加工することができるので、その形状及び組付けを自由に行うことができると共に、簡単な加工装置を以て製作することができる等の利点がある。
【0023】
次に、図9,図10に示す第3実施形態に係わる取出具について説明する。
この取出具1は、真直な刃杆5aの下側に板状体で任意の形状に形成した柄3を一体的に固定することによって製作しており、これによれば上記第2実施形態と同様な効果を有すると共に、曲げ加工を少なくしてより簡単に製作することができる等の利点がある。
【0024】
次に、図11,図12に示す第4実施形態に係わる取出具について説明する。
この取出具1は、一枚の板状片の両側に刃先7と針部6をプレス加工等によって一体的に形成すると共に、その央部に合成樹脂材或いは木材等によって形成された柄材3aを両側から挟持状に固着することによって柄3を形成したものであり、この場合板状の掻取部5は捻り加工をしながらその先端部に刃先7を形成するとよい。
これによれば、掻取部5及び柄3並びに針部6の形状を自由な任意のデザインにすることができると共に、刃杆5a部分にナイフ状のカッター或いは鱗落し用の刃面等の所望の補助作業部を簡単に組合せ形成することができる等の利点がある。尚、針部6は図示例のように手元から下方に離間変位させると、取出作業時の操作をより行い易くすることができるものである。
【0025】
次に、図13,図14に示す第5実施形態に係わる取出具1は、第1実施形態と同様に形成された刃先7と針部6を有しながら、柄3を巻き曲げ加工によって製作すると共に、針部6を刃先7と同方向に延設している。
これによれば、取出具1の前後長さを短くコンパクトに形成することができる他、刃先7と針部6を取出具1を逆転させることなく使用することができる等の利点がある。
尚、上述の取出具1は柄3部分の重量を大きくすると、取出作業時の刃先7の操作をより行い易くすることができて、取出具1の取扱い性を向上することができるものである。
【0026】
【発明の効果】
本発明は以上のように構成したので次のような効果を奏することができる。
請求項1の発明により、柄の前方において巻き貝の貝口内壁に接する下向き湾曲状の掻取部を、掻取方向に沿った偏平状の広巾な下部刃先と滑らかな側部刃とからなる刃先を形成したことにより、サザエの身を取り出す際に、下部刃先を巻き貝の内壁に適正姿勢を以て位置決めしながら掻取移動を簡単に行うことができ、側部刃及び下部刃先によって身を傷付けることなく、身と殻とを繋ぐ繋部を的確に切り離すことができると共に、貝口を支点にテコ作動させながら偏平状の広巾な刃先で殻内で自由になった状態の身を巻き貝の巻き方向に沿わせて、身を損傷させることなく簡単且つスムースに取り出すことができる。
【0027】
請求項2の発明により、下部刃先の刃線を掻取方向に対し鋭角状の掬角を有して刃杆芯に対し斜交させることにより、刃先は掻出動作時に広巾で滑らかな表面によって掻き出し方向の力を大きく作用させて身に接して掻き出すので、身を刃先との接当による損傷を防止しながら良好に掻き出すことができる。
【0028】
請求項3の発明により、刃先は下部刃先を柄の高さ内に設けることにより、柄を握った状態でその掻取動作及び掻出動作の力を効率よく刃先に伝えて、身の取出作業を簡単且つ的確に行い能率を上げることができる。
【0029】
請求項4の発明により、一つの取出具によって柄を握りながら、針部による巻き貝の蓋を取り外しと、刃先による身の取出作業を簡単且つ能率よく行うことができる。
【0030】
請求項5の発明により、一本の線状部材で柄を巻き曲げ加工によって形成すると共に、その両端に掻取部と針部を一体的に成形したことにより、握部となる柄をベンダ等を用い簡単に形成することができると共に、廉価に製作することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1実施形態に係わる取出具の側面図。
【図2】 図1の平面図。
【図3】 (A)は図1の正面図。(B)は図1の刃先部を下方から見た下面図。(C)は刃先部の断面図。
【図4】 サザエの身の取出作業を示す作用図。
【図5】 図4の掻取動作及び掻出動作を示す斜視図。
【図6】 図5の断面図。
【図7】 本発明の第2実施形態に係わる取出具の側面図。
【図8】 図7の平面図。
【図9】 本発明の第3実施形態に係わる取出具の側面図。
【図10】 図9の平面図。
【図11】 本発明の第4実施形態に係わる取出具の側面図。
【図12】 図11の平面図。
【図13】 本発明の第5実施形態に係わる取出具の側面図。
【図14】 図13の平面図。
【符号の説明】
1 取出具
2 巻き貝(サザエ)
3 柄
5 掻取部
5a 刃杆
6 針部
7 刃先
7a 下部刃先
7b 側部刃
θ 掬角

Claims (5)

  1. 柄(3)の前方から刃杆(5a)を巻き貝(2)の貝口(21)の内壁に接するように下向きに湾曲形成すると共に、該刃杆(5a)の下端部に掻取部(5)を設けてなる取出具において、上記掻取部(5)を掻取方向に沿う偏平状の広巾な下部刃先(7a)と、該下部刃先(7a)の縦側部に沿い先鋭で滑らかな側部刃(7b)とから形成した巻き貝の身取出具。
  2. 下部刃先(7a)の刃線を、掻取方向Kに対し鋭角状の掬角(θ)を有すると共に刃杆芯(P)に対し斜交させて形成してなる請求項1の巻き貝の身取出具。
  3. 下部刃先(7a)を柄(3)の高さ内に位置させる請求項1又は2の巻き貝の身取出具。
  4. 柄(3)の後方に針部(6)を延設して形成する請求項1又は2又は3の巻き貝の身取出具。
  5. 一本の線状部材で柄(3)を巻き曲げ加工することによって形成すると共に、その両端に掻取部(5)と針部(6)を一体的に成形してなる請求項1又は2又は3又は4の巻き貝の身取出具。
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