JP3655487B2 - 反射率計測装置、温度計測装置および基板熱処理装置ならびに反射率計測方法、温度計測方法および基板熱処理方法 - Google Patents

反射率計測装置、温度計測装置および基板熱処理装置ならびに反射率計測方法、温度計測方法および基板熱処理方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、半導体ウエハ、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板、光ディスク用基板等の基板(以下、単に「基板」という。)の反射率を計測する反射率計測装置、それを用いた温度計測装置および基板熱処理装置ならびに反射率計測方法、温度計測方法および基板熱処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から基板に熱処理を施すランプアニール等の基板熱処理装置では、処理精度を上げるため基板の温度を計測して温度を制御しつつ熱処理を施している。そのうち、放射温度計により基板の温度を計測する基板熱処理装置では水平に保持された基板の上方にランプ等の熱源を備え、下方に基板に対向するように反射板を備え、その反射板に2つの口径または形状の異なる(したがって、実効反射率の異なる)キャビティ(空洞)を設け、それらキャビティ内のそれぞれに、基板に向けて導光ロッド等よりなるプローブを設け、さらに、それらにより捉えた放射光をそれぞれ放射温度計に導いて、基板の温度を求めている。
【0003】
そして、このような装置における従来の光の多重反射現象を用いた温度計測方法は、まず、2つの実効反射率のそれぞれにおいて、測定対象物の放射率と温度を未知数として各プローブによる出力と実効反射率を用いて方程式を立て、連立方程式という形で放射率(反射率)と温度を同時に計測するものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、この計測方法では測定対象物の表面状態に依存し、特に高反射率(低放射率)のものを計測する場合、あるいは粗面を計測する場合にはその拡散的な反射に起因して正確な反射率を求めることができず、そのことが測定温度の誤差につながつてしまうことになる。また、実効反射率が定数として固定されているため実効反射率の経時変化に対応できず誤差要因となってしまう。
【0005】
この発明は、従来技術における上述の問題の克服を意図しており、基板の正確な反射率を求めることができる反射率計測装置、温度計測装置および基板熱処理装置ならびに反射率計測方法、温度計測方法および基板熱処理方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、請求項1の発明は、基板の反射率を計測する反射率計測装置であって、(a)基板を保持する保持手段と、(b)保持手段に保持された基板に対向する反射面を有するとともに、穴を有する反射板と、(c)穴を通じて基板に対して発光する発光手段と、(d)発光手段を点灯状態と消灯状態とで切り替える切替え手段と、(e)基板側から見て発光手段の発光位置とほぼ同一位置を検出位置として点灯状態および消灯状態における基板側から穴に進入した光を捉えて、点灯時強度信号および消灯時強度信号をそれぞれ出力する検出手段と、(f) 前記点灯時強度信号および前記消灯時強度信号ならびに予め求められた前記発光手段の強度信号とに基づいて基板反射率を算出する反射率算出手段と、を備えている。
【0008】
また、請求項の発明は、(a)請求項に記載の反射率計測装置により実現される反射率計測機能と、(b)基板と穴または反射面との間の多重反射を考慮した反射率である実効反射率が互いに異なる第1状態および第2状態に切替える反射率切替え機能と、(c)予め求められた第1状態および第2状態のそれぞれにおける実効反射率の基板反射率に対する依存性情報である第1情報および第2情報に、反射率算出手段によって得られた基板反射率を適用することによって第1実効反射率および第2実効反射率を求める実効反射率導出機能と、を有するとともに、検出手段が消灯状態における第1状態および第2状態での光をそれぞれ捉えることにより、第1強度信号および第2強度信号をそれぞれ出力するものであり、さらに、(d)得られた第1強度信号および第2強度信号ならびに第1実効反射率および第2実効反射率に基づいて、基板の温度を求める温度算出機能を備えている。
【0009】
また、請求項の発明は、請求項に記載の温度計測装置であって、発光手段が、光源と、一端が光源の近傍に位置して設けられた第1光ファイバーとを備えるものであり、検出手段が、光を捉えて強度信号を出力する検出器と、一端が検出器に接続された第2光ファイバーとを備えるものであり、第1光ファイバーおよび第2光ファイバーのそれぞれの他端が束ねられて基板にほぼ直交するように対向することにより、発光手段の発光位置と検出手段の検出位置がほぼ同一位置に位置しており、切替え手段が、部分的に切り欠きが設けられた遮光板と、光源と第1ファイバーとの間における基板とほぼ平行な面内において遮光板を回転させる回転手段とを備えるとともに、回転手段による遮光板の回転に伴い、遮光板の切り欠きとそれ以外の部分とがそれぞれ光源と第1光ファイバーとの間を通過することによって点灯状態と消灯状態とに切り替えるものである。
【0010】
また、請求項の発明は、請求項に記載の温度計測装置であって、切替え手段が反射率切替え機能をも備えるものである。
【0011】
また、請求項の発明は、(a)請求項ないし請求項のいずれかに記載の温度計測装置よりなる温度計測手段と、(b)保持手段に保持された基板に熱を供給する熱源と、(c)温度計測手段により得られた基板の温度に基づいて熱源への供給電力を制御する制御手段と、を備えている。
【0012】
また、請求項の発明は、保持手段に保持された基板に対向する反射面を有する反射板と、反射板に設けられた穴を通じて基板に対して発光する発光手段と、基板側から穴に進入した光を捉えて強度信号を出力する検出手段とを備えた装置を用いて基板の反射率を計測する反射率計測方法であって、(a)発光手段を点灯状態と消灯状態とで切り替えつつ、検出手段により点灯状態および消灯状態における点灯時強度信号および消灯時強度信号をそれぞれ出力する計測工程と、(b)点灯時強度信号および消灯時強度信号ならびに予め求められた発光手段の発光強度とに基づいて基板反射率を算出する算出工程と、を備えている。
【0013】
また、請求項の発明は、(a)請求項に記載の反射率計測方法よりなる反射率計測工程と、(b)反射率切り替え手段によって切り替えられた第1状態および第2状態について、基板と反射板における穴または反射面との間の多重反射を考慮した反射率である実効反射率の基板反射率に対する依存性情報である第1情報および第2情報を求める依存性導出工程と、(c)前記各工程の後に得られた基板反射率と第1情報および第2情報とに基づき第1実効反射率および第2実効反射率を算出する実効反射率算出工程と、(d)消灯状態における第1状態および第2状態のそれぞれにおいて検出手段により放射光を捉え、第1強度信号および第2強度信号を出力する強度計測工程と、(f)得られた第1強度信号および第2強度信号と、実効反射率計測工程において得られた第1実効反射率および第2実効反射率とを用いて基板の温度を算出する温度算出工程と、を備えている。
【0014】
さらに、請求項の発明は、(a)基板に対して熱源による熱供給を伴う処理を施す熱処理工程と、(b)熱処理工程中に請求項に記載の温度計測方法により基板の温度を計測する温度計測工程と、(c)得られた基板の温度をもとに熱源への供給電力を制御する制御工程と、を備えている。
【0015】
ここで、「基板反射率」は基板の透過率を「0」と考え、基板の放射率と反射率との関係を用いて「基板放射率」を用いて間接的に表わしたものをも含むものとし、また、「点灯状態」と「消灯状態」とはそれぞれ発光手段が点灯した状態と消灯した状態を意味するのみでなく、常時発光する発光手段からの光が通過する状態と遮断する状態をも意味するものである。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0017】
<1.第1の実施の形態>
<<1−1.機構的構成と装置配列>>
図1はこの発明の第1の実施の形態である基板熱処理装置1の縦断面図である。以下、図1を参照しつつこの装置の構成を説明していく。
【0018】
第1の実施の形態である基板熱処理装置1は主に炉体10、ランプ20、石英ガラス30、基板保持回転部40、反射板45、温度・反射率計測部50、制御部60、ランプドライバ70、モータドライバ80を備えている。
【0019】
炉体10は上部をリフレクタ11、下部をハウジング12とする円筒形状の炉体10であり、それらの内部等には冷媒を通して冷却する多数の冷却管13が設けられている。また、炉体10の側面には基板搬出入口EWが設けられており、加熱処理の際には図示しない外部搬送装置により基板Wまたは基準基板SWの搬出入が行われる。
【0020】
ランプ20はリフレクタ11の下面に多数設けられ(図1,図5には一部にのみ参照番号を記載)点灯時にはその熱放射により基板Wまたは基準基板SWを加熱する。
【0021】
石英ガラス30はランプ20の下方に設けられ、それによる熱放射を透過する。
【0022】
基板保持回転部40は、基板Wまたは後述する基準基板SWの周縁部分を全周に渡って保持する保持リング41が、その直径より大きな内径の円筒の支持脚42により支持されるとともに、それら支持脚42の下端には、その外周に沿ってベアリング43が設けられている。そして、ベアリング43の外周に設けられたギアに基板回転モータ44の回転軸のギア44aがかみ合っており、その駆動により保持リング41が鉛直方向を軸として回転可能となっている。
【0023】
反射板45は、基板Wまたは後述する基準基板SWからの熱放射を反射し、それにより基板Wとの間で後述する多重反射を生じさせる。
【0024】
図2は第1の実施の形態における温度・反射率計測部50の構成を示す図である。図2に示すように、反射板45に設けられた円筒形状の穴45a内およびその下方には温度・反射率計測部50のケーシング51が設けられており、ケーシング51の上部には穴45a内面が円筒状の空洞部CPとなっている。そして、空洞部CPの底部には光を透過する石英ガラス板52が設けられている。また、空洞部CP下方には後述の回転セクタ53が設けられている。さらに、ケーシング51内部には前述の冷却管13と同様の冷却管51a(一部参照符号省略)が設けられ、ケーシング51内部の温度上昇を抑える。
【0025】
図3は図2のA−A断面から下方を見た状態を示した図である。回転セクタ53は、円盤を直交する2本の直径で4等分したうちの隣り合わない2つの扇形が表裏両面が鏡面(反射率がほぼ「1」)である反射部RPとなっており、また、他の扇形部分は除去された切り欠き部NPとなっている。また、反射部RPには弧状のスリットSLが設けられており、スリットSLが設けられたスリット領域SAと、スリットSLが設けられていない鏡面のみの反射領域RAとが存在する。そして、回転セクタ53の中心CEがモータ54の回転軸54aに取り付けられており(図2参照)、したがって、モータ54の回転により回転セクタ53は、その板面に平行な平面内で回転自在となっている。なお、図3において回転セクタ53は一部を切り欠いて図示した。
【0026】
また、回転セクタ53の下方のケーシング51の内面51bは黒化処理が施されており、回転セクタ53の切り欠き部NPまたは反射部RPのスリット部SLを通過した光のうちの光ファイバー束56の上端に至る光以外の光は内面51bにより吸収され、反射されることはない。また、内面51bには穴51c,51d(図2)が設けられており、穴51cには反射型の光センサであり、回転セクタ53の回転位置(位相角度)をモニタし、制御部60にその信号を伝えるセンサ55が設けられ、穴51dの内部には後述する光ファイバー束56がそれぞれ設けられている。穴51c(したがってセンサ55)は回転セクタ53の中心CEからの距離がスリットSLと異なる位置に設けられており、また、穴51d(したがって光ファイバー束56)はスリットSLとその距離が等しい位置に設けられている。
【0027】
図4は図2のB−B断面から下方を見た状態を示す図である。図4に示すように、光ファイバー束56は空洞部CPと同心に設けられており、図2に示すように回転セクタ53は空洞部CPと光ファイバー束56の上端との間を旋回するものとなっている。そして、上方から空洞部CPに進入した光は回転セクタ53の回転により、回転セクタ53の反射部RPのスリットSLまたは切り欠き部NPのいずれかを通過した後、光ファイバー束56上端に至る。
【0028】
2本の光ファイバー56a,56bの束である光ファイバー束56は、その先端部分が穴51dに挿入された状態でケーシング51に取り付けられている。また、光ファイバー56a,56bは発光・計測部57に接続されている。
【0029】
そのうち、光ファイバー56aの下端には検出部571が設けられており、検出部571には、ほぼ計測波長の光のみを透過するフィルタ571aおよびその光を集光するレンズ571bを挟んで、集光された光を受けてその放射強度の基になる信号を出力する検出器571cおよびその信号を放射強度信号を出力する演算部571dが設けられている。
【0030】
また、光ファイバー56bの下端には発光部572が設けられている。以下、発光部572の詳細について説明する。図5は補助セクタ572aの平面図である。図5に示すように補助セクタ572aは回転セクタ53と同様の外形を有しているが、スリットは設けられておらず、また、その表面は反射の必要性がないため鏡面にはなっていない。そして、補助セクタ572aはモータ572bの回転軸に取り付けられ、回転可能となっている。また、補助セクタ572aの直下にはランプ20より低出力の豆ランプである補助ランプ572cが設けられており、ランプドライバ572dを介した制御部60の制御に基づいて点灯する。また、モータドライバ572eを介した制御部60の制御によりモータ572bが補助セクタ572aを回転させると、補助ランプ572cから発せられた光は補助セクタ572aの遮断部IPが補助ランプと光ファイバー56bとの間に位置すると消灯状態となり、切り欠き部OPがそこに位置すると点灯状態となり、このようにして点灯状態と消灯状態を切替えることができるものとなっている。また、補助セクタ572aの下方にはセンサ55と同様のセンサ572fが設けられており、補助セクタ572aの回転位置を検出し、それを示す信号を制御部60に送信する。
【0031】
そして、このような構成により、後述する原理に基づき基板の反射率ρWや基板温度が計測される。すなわち、光ファイバー56a上方に回転セクタ53の切り欠き部NPが位置する状態では、空洞部CPからの放射光の多くは黒化処理が施された内面51bに吸収され、多重反射の効果が少ない状態で光ファイバー56aに進入する。また、反射部RPのうちスリット領域SAが光ファイバー束56上方に位置する(光ファイバー束56の直上にスリットSLが位置する)状態では、空洞部CPからの放射光の多くは基板Wと反射板45との間だけではなく、基板Wと反射部RPとの間でも多重反射し、多重反射の効果が多い状態で、スリットSLを通過した放射光が光ファイバー56aに進入する。これら2つの状態では後述する実効反射率が互いに異なるものとなり、従って検出器571cにより出力される放射強度信号も異なる2種類のものとなる。さらに、反射部RPのうち反射領域RAが光ファイバー56a上方に位置する回転セクタ53の回転位置では、空洞部CPからの放射光は完全に遮断され、光ファイバー56aの受光端にはその放射光は入射しない。そのため、この状態では放射強度信号は「0」となる。
【0032】
そして、演算部571dは内部にCPUおよびメモリ等(図示省略)を備えており、光ファイバー56aからの放射強度(放射エネルギー)信号をもとに後述の反射率および温度計測原理に基づいて、基板の反射率ρW、実効反射率R1、R2および温度T等を求め、温度Tの信号を制御部60に送る。
【0033】
制御部60は内部にCPUおよびメモリ等(図示省略)を備え、ランプ20へ電力を供給するランプドライバ70にランプ20の温度制御信号を送ったり、モータ54へ電力を供給するモータドライバ58に所定のタイミングで駆動信号を送ったりする。また、後述する原理に基づき実効反射率の基板の反射率依存性を求め、メモリにその結果を記憶する。
【0034】
ランプドライバ70は制御部60からの温度制御信号を受けて、それに応じた電力をランプ20に供給する。
【0035】
モータドライバ80は制御部60からの駆動信号を受けて、それに応じた電力を基板回転モータ44に供給する。
【0036】
<<1−2.温度計測および反射率計測の原理>>
つぎに、この基板熱処理装置1による基板熱処理時における基板温度の計測原理について説明する。
【0037】
図6は基板Wと反射板45との間の放射光の多重反射を説明するための図である。図6に示すように、基板Wが加熱されることにより放射された光は、基板Wと反射板45との間で反射を繰り返す。これを多重反射と呼び、これにより反射板45側で受ける光量が増幅される。
【0038】
このとき反射板45側からこの光量を計測するとした場合、下向きの光を合計したものが計測されることになる。つまり、計測される出力を放射強度(放射エネルギー)Iとし反射板の反射率をρr、基板の反射率をρW(放射率εW)とした場合、
【0039】
【数1】
Figure 0003655487
【0040】
という初項εWLb(T)、公比ρrρWの等比級数となる。ここでLb(T)は温度Tにおける黒体の放射強度である。ここで、基板が光を透過しないとする式、
【0041】
【数2】
Figure 0003655487
【0042】
を用い、さらに0<ρrρW<1よりnを無限大にすると、検出部571により計測される光の放射強度は基板Wの放射率εW、温度Tおよび反射板45の反射率ρrを用いて、
【0043】
【数3】
Figure 0003655487
【0044】
という形で表される。このとき、反射板45の反射率ρrは反射板45の形状および表面状態に非常に依存する。そこで、こういった材質のみでなくその形状等も含めた形での反射率を採用し、ここでは実効反射率と呼び、数3の式のρrの代わりに用いる。そして、この実施の形態では上記のような装置構成により、実際に温度計測をする際には2つの状態を実現し、それぞれについて基板Wの放射率εWと温度Tを未知数として方程式を立て温度Tを求める。ここで2つの状態というのは実効反射率が異なる状態を意味する。つまり、それぞれの状態での実効反射率をR1、R2とした場合に、数3の式から類推して、
【0045】
【数4】
Figure 0003655487
【0046】
【数5】
Figure 0003655487
【0047】
という式が成り立つ。ここでI1、I2はそれぞれの状態で検出部571により計測される放射強度(放射エネルギー)である。なお、放射強度I1およびI2の基になる検出器571cによる信号が、それぞれこの発明における第1強度信号および第2強度信号に相当する。この関係から
【0048】
【数6】
Figure 0003655487
【0049】
という関係が成り立ち、よって基板Wの放射率εWは
【0050】
【数7】
Figure 0003655487
【0051】
で表される。このようにして求めた基板Wの放射率εWを数4または数5の式に代入することで黒体の放射強度Lb(T)を求めることができ、黒体の放射強度Lb(T)が求まると、予め求まっている放射温度計固有の校正式(ここでは示さない)から温度Tを求めることができる。このことから基板Wの放射率εWと温度Tの計測精度の向上には、実効反射率R1,R2の計測精度の向上が重要であることが分かる。
【0052】
そこで、この実施の形態では、基板の種類に応じてその処理開始ごとに適正な実効反射率を用いるために反射率を計測する。さらに、基板の種類に応じた装置の校正を行うために、予め実効反射率の反射率依存性を計測する。以下、この実効反射率R1,R2の基板反射率依存性を求める原理を説明する。
【0053】
まず、数種の反射率ρW(放射率εw)が既知の反射率や表面粗度等の表面状態が異なる複数の校正用の基準基板SWを用意する。それら基準基板SWを順次、基板保持回転部40に保持した状態で加熱および放射強度を計測し、
【0054】
【数8】
Figure 0003655487
【0055】
【数9】
Figure 0003655487
【0056】
より、それぞれについて実効反射率R1およびR2を求める。
【0057】
そして、校正用基板の反射率と得られた実効反射率R1,R2の関係を変換テーブル(場合によっては関数R=f(ρW):これらが「依存性情報」に相当)の形で求めておく。
【0058】
このようにして予め実効反射率R1,R2の基板反射率依存性を求めておいた後、実際の基板Wの熱処理に際して、基板Wの種類を変更する際、すなわち、反射率ρWや表面粗度が異なる処理基板Wが基板保持回転部40に保持された際に、その種類の基板Wの反射率ρWの計測を行う。
【0059】
まず、基板Wの反射率ρWは回転セクタ53の切り欠き部NPの部分が空洞部CPの下方に位置する際の放射光を検出器571cで検出して求める。
【0060】
回転セクタ53の切り欠き部NPが穴51c(すなわち光ファイバー束56)上方を通過する間に、補助ランプ572cをパルス的に発光させ一定の放射強度ILの光を光ファイバー56bから基板Wに向かつて照射する。そのとき光ファイバー56aで検出される放射強度をI0(「点灯時強度信号」に相当)とすると、
【0061】
【数10】
Figure 0003655487
【0062】
となる。これを変形すると測定対象の反射率ρWは
【0063】
【数11】
Figure 0003655487
【0064】
で表される。ここで、放射強度I1(T)(「消灯時強度信号」に相当),I0,ILは補助ランプを常時点灯させつつ回転セクタ53および補助セクタ572aを回転させて、放射光を検出部において検出することにより、以下のようにして計測される。
【0065】
図7は回転セクタ53、補助セクタ572aそれぞれの各回転状態における光ファイバー56a上端に入射する光の放射強度を示す模式図である。
【0066】
図7(a)は回転セクタ53の切り欠き部NPが光ファイバー56a上端に位置する状態、すなわち上方から放射光が回転セクタ53の切り欠き部NPを通過する状態を表し、補助セクタ572aが遮断部IPが補助ランプ572c上方に位置し、光ファイバー56bに光が至らない消灯状態を表している。この状態では補助セクタ572aにより補助ランプ572cの光は遮断されるので光ファイバー56aの上端には基板W(基準基板SW)と反射板45や空洞部CP内面との多重反射後の切り欠き部NPを通過した放射光(このときの放射強度I1(T))のみが入射する。
【0067】
図7(b)は回転セクタ53が反射部RPのスリット領域SAが光ファイバー56a上方に位置する状態、すなわち、上方からの多重反射後の放射光が回転セクタ53のスリットSLを通過する状態を表し、補助セクタ572aが上述の消灯状態を表している。この状態では補助セクタ572aにより補助ランプ572cの光は遮断されるので光ファイバー56a上端には基板Wと反射板45との間、空洞部CPの内面、基板Wと反射部RPとの間での多重反射後のスリット領域SAを通過した放射光(このときの放射強度I2(T))のみが入射する。
【0068】
図7(c)は回転セクタ53が上述の状態で、補助セクタ572aも切り欠き部NPが補助ランプ572c上方に位置し、補助ランプ572cが発する光が基板Wで反射し光ファイバー56bの下端に進入する点灯状態を表している。この状態では補助ランプ572cからの光の基板Wでの反射光および上記多重反射後の切り欠き部NPを通過した放射光がともに光ファイバー56a上端に入射する。そのためその上端における入射光の放射強度I0はI0=I1(T)+ρW・ILとなる。
【0069】
図7(d)は回転セクタ53が反射部RPの反射領域RAが光ファイバー56a上端に位置する状態、すなわち、上方からの放射光が回転セクタ53により遮断される遮断状態を表し、補助セクタ572aが上述の点灯状態を表している。この状態では補助ランプ572cからの光は光ファイバー56a上端から出射すると回転セクタ53裏面で反射され、直接光ファイバー56a上端に入射する。そして、前述のように回転セクタ53裏面は反射率がほぼ「1」となっているため、光ファイバー56aに入射した光の放射強度は補助ランプ572cから発せられた光の放射強度ILと等しいものとなる。
【0070】
そして、以上の4つの状態を実現するために、制御部はセンサ55およびセンサ572fによる信号を基に回転セクタ53と補助セクタ572aの回転を制御する。具体的には補助セクタ572aの回転の位相を回転セクタ53の反射部RPの反射領域RAに相当する位相角θ(図3参照)だけ回転セクタ53より早め、かつ、回転セクタ53および補助セクタ572aともに同じ回転速度で回転させる制御を行うことにより実現することができる。
【0071】
図8は回転セクタ53、補助セクタ572aの回転および光ファイバー56a上端への入射光の放射強度の時間変化を示すタイミングチャートである。図中、時間t1〜t5のそれぞれで検出される放射強度が順に「0」、I2(T)、IL、I0、I1(T)であり、そのうち、時間t1での状態は、回転セクタ53が反射領域RA,補助セクタ572aが遮断部IPの状態であり、時間t2〜t5での状態はそれぞれ順に図7(b),(d),(c),(a)の状態である。なお、時間t1およびt3が位相角θ分の回転時間に相当している。
【0072】
このようなタイミング制御のもとに放射光の放射強度を計測すれば、放射強度I1(T),I0およびILがそれぞれ計測されるので、それを数11の式に用いることによって基板の反射率ρWが求まるのである。
【0073】
以上のようにして基板Wの反射率が求まると、前述のようにして予め求めておいた実効反射率R1,R2の基板反射率ρWへの依存性から、その処理基板Wに対する実効反射率R1,R2を決定することができるのである。そして、このようにして求めた実効反射率R1,R2を温度計測に用いて基板Wの温度を求め、それに基づいて基板温度の制御(ランプ20への供給電力のフィードバック制御)を行いつつ処理基板Wの熱処理を行う。こうすることにより種々の基板Wに対応した実効反射率R1,R2を用いた精密な温度計測に基づいた温度管理の基に熱処理を行うことができるのである。
【0074】
<<1−3.基板熱処理>>
つぎに、上記温度計測、反射率計測の原理で示した方法に基づく、第1および第2の処理例について順に説明する。
【0075】
図9は第1の処理例における実効反射率の反射率依存性の計測(変換テーブルの導出)手順を示すフローチャートである。以下、図9に基づいて、その計測手順を説明する。
【0076】
まず、作業者が図示しない接触式温度計が取り付けられた校正用の基準基板SWを基板熱処理装置1に搬入し、基板保持回転部40に保持させる(ステップS1)。なお、接触式温度計は制御部60に接続される。
【0077】
つぎに、基板熱処理装置1を稼働させ、基準基板SWを加熱しつつ、接触式温度計により実温度Trefを、検出器571cおよび演算部571dにおいて放射強度I1,I2をそれぞれ計測する(ステップS2)。
【0078】
つぎに、演算部571dは得られた実温度Trefと放射強度I1,I2とを、数8の式に用いて実効反射率R1,R2を求め、それらの値と校正基板の反射率ρWとを対応させた変換テーブルとして内部のメモリに記憶する(ステップS3)。
【0079】
つぎに、作業者が全基準基板SWについて上記の処理が終了したか否かを判定し(ステップS4)、終了していなければ基準基板SWを交換し、次の基準基板SWに対してステップS1〜S4の処理を繰り返し、終了していれば全種類の基準基板SWについて変換テーブルが求まったことになり、実効反射率の反射率依存性の計測処理を終了する。
【0080】
こうして全種類の基準基板SWに対する変換テーブルが求まったので、次にその変換テーブルを用いて基板Wの常温での実効反射率R1,R2を求めるとともに、それを用いて基板Wの温度を計測しつつ、熱処理を行う。図10は第1の処理例における実効反射率R1,R2の計測および基板Wの熱処理の手順を示すフローチャートである。以下、この処理手順について説明する。
【0081】
まず、図示しない外部の基板搬送装置により基板熱処理装置に基板Wが搬入され、基板保持回転部40に保持される(ステップS11)。
【0082】
つぎに、制御部60の制御により、補助ランプ572cを常時点灯し、回転セクタ53および補助セクタ572aを回転させ、検出器571cおよび演算部571dにより、前述の放射強度I0,I1およびILを計測する(ステップS12)。
【0083】
つぎに、演算部571dは得られた放射強度I0,I1およびILから基板Wの反射率ρWを算出する(ステップS13)。そして、得られた基板Wの反射率ρWから、既に求めたこの種類の基板Wに対応する変換テーブルを用いて実効反射率R1,R2を求める(ステップS14)。
【0084】
つぎに、基板Wの熱処理を実行する(ステップS15)。その際、放射強度I1,I2を計測し、演算部571dは、それらとステップS14で求められた対象となっている基板Wの種類に対応した実効反射率R1,R2とを数4および数5の式に用いて基板Wの温度Tを算出しつつ、制御部60は、演算部571dから送られた温度Tをもとにランプ20への供給電力をフィードバック制御して基板Wの温度Tを所定の処理温度に保ちつつ熱処理を行う。なお、この処理は同種の複数の基板について繰り返し行われる。
【0085】
つぎに、制御部60は全基板について熱処理が終了したか否かを判定し(ステップS16)、終了していなければ、次の基板Wに対してステップS11〜S16を繰り返す。ただし、処理基板Wの種類が変わる度にその種類に対応した変換テーブルを用いる。そして、全基板Wについて熱処理が終了すると、一連の処理を終了する。
【0086】
つぎに、第2の処理例について説明する。なお、以下の各処理における処理主体は第1の処理例と同様であるので省略する。
【0087】
図11は、第2の処理例における実効反射率R1,R2の反射率依存性の計測(変換テーブルの導出)手順を示すフローチャートである。上述の第1の処理例では各種基板Wの熱処理に先立って常温で反射率ρWを計測するものであったが、第2の処理例では各基板Wの熱処理中にも常時反射率を計測するというものである。これは、数11の式の右辺に用いた放射強度I1(T)が基板の温度Tに依存していること、すなわち、任意の温度Tで成立する式であることを利用している。以下、処理手順を説明する。
【0088】
まず、基準基板SWを基板保持回転部40に保持させる(ステップS21)。
【0089】
つぎに、基準基板SWを加熱しつつ、各時点での実温度Tref、放射強度I1,I2および基準基板SWの反射率ρWを計測する(ステップS22)。
【0090】
つぎに、各時点(すなわち各温度T)での実効反射率R1,R2を求め、その時点(温度T)での基準基板の反射率ρWと対応させて、変換テーブルとして記憶する(ステップS23)。
【0091】
つぎに、実際に熱処理が行われる際の処理温度に到達したか否かを判定し(ステップS24)、到達していなければステップS22に戻りステップS22〜S24の処理を、処理温度に到達するまで繰り返し、処理温度に到達すると次のステップに進む。
【0092】
つぎに、全基準基板SWについて上記の処理が終了したか否かを判定し(ステップS25)全基準基板SWについて終了していなければ、ステップS21に戻り、次の基準基板SWについてステップS21〜S25の処理を繰り返し、終了すれば全基準基板SWについて以上の処理が終了したことになるので、この処理を終了する。
【0093】
こうして各基板反射率ρWおよび各基板温度Tでの変換テーブルが求まったので、次にその変換テーブルを用いて基板Wの実効反射率R1,R2を求めて、それを用いて基板Wの温度Tを計測しつつ、熱処理を行う。図12は実効反射率の計測および基板の熱処理の手順を示すフローチャートである。
【0094】
まず、基板Wを基板保持回転部40に保持する(ステップS31)。
【0095】
つぎに、ランプ20を点灯し基板Wの加熱を開始する(ステップS32)。
【0096】
つぎに、補助ランプ572cを常時点灯させ、回転セクタ53および補助セクタ572aを回転させつつ放射強度I0,I1,I2およびILを計測する(ステップS33)。
【0097】
つぎに、放射強度I0,I1およびILから基板の反射率ρWを算出する(ステップS34)。
【0098】
つぎに、基板Wの反射率ρWから変換テーブルを用いて実効反射率R1,R2を求める(ステップS35)。
【0099】
つぎに、放射強度I1、I2および実効反射率R1,R2から、その時点での基板Wの温度Tを求める(ステップS36)。そして、得られた温度Tをもとにランプ20への供給電力をフィードバック制御して基板の温度Tを所定の処理温度に保ちつつ熱処理を行う。
【0100】
つぎに、基板Wの温度Tが所定の処理時間を経過したか否かを判定し(ステップS37)、経過していなければステップS33に戻り、ステップS33〜S37の処理を処理時間が経過するまで繰り返し、経過すると次のステップに進む。
【0101】
つぎに、全基板Wについて熱処理が終了したか否かを判定し(ステップS38)、終了していなければステップS31に戻り、次の基板WについてステップS31〜S38の処理を繰り返す。ただし、基板Wの種類が変わる度にその種類に対応した変換テーブルを用いる。そして、全基板について熱処理が終了すると一連の処理は終了する。
【0102】
このように、第2の処理例では基板熱処理中に基板の温度計測を行えるので、第1の処理例より基板の温度Tに対応した正確な反射率を計測し、それにより、より正確な実効反射率を求め、それを基に温度計測を行うことができ、したがって高品質な熱処理を行うことができる。
【0103】
以上、説明したように、第1の実施の形態によれば、補助ランプ572cを常時点灯し、補助セクタ572aを点灯状態と消灯状態とで切替えつつ、検出部571により放射強度I0およびI1(T)をそれぞれ計測し、それらの放射強度と補助ランプ572cの放射強度ILとに基づいて基板反射率ρW(数2より基板放射率εWに対応)を求めることができるので、基板反射率ρWを正確に計測できる。
【0104】
また、放射強度I0およびI1(T)をもとに演算部571dが基板反射率ρWを算出するため、自動的に基板反射率ρWを計測することができ、効率的に基板反射率ρWを求めることができ、また、それを作業者が求める場合に比べて作業負担を抑えることができる。
【0105】
また、予め求められた実効反射率R1,R2の基板反射率ρWに対する依存性情報である変換テーブルに、得られた基板反射率ρWを適用することによって実効反射率R1,R2を求め、それらと、消灯状態における第1および第2状態での光をそれぞれ捉えることにより得られた放射強度I1(T),I2(T)とに基づいて基板Wの温度Tを求めるため、基板反射率ρWに対応した正確な温度計測ができる。また、自動的に実効反射率R1,R2を計測して、それに基づいて自動的に温度計測を行うので、効率的に温度計測が行え、それを作業者が行う場合に比べて作業負担を抑えることができる。
【0106】
また、補助セクタ572aの回転により点灯状態と消灯状態とを切替えるため、補助ランプ572c自体を直接、点灯、消灯する制御を行う場合に比べて補助ランプ572cの特別な制御が不要であり、そのための制御手段が不要であるので装置構成が簡単なものとなり、装置の製造コストを抑えることができる。
【0107】
また、演算部571dにより得られた基板Wの温度Tをもとにランプ20への供給電力を制御するため、基板Wの温度管理を正確に行え、高品質の熱処理を行うことができる。
【0108】
<2.第2の実施の形態>
上記第1の実施の形態では実効反射率を切り替える回転セクタ53と補助ランプ572cの発光状態を切り替える補助セクタ572aとを備えるものであったが、第2の実施の形態では回転セクタ93が補助セクタの機能を兼ね備え、それにより実効反射率R1,R2の切り替えと補助ランプ572cによる発光のタイミング制御を自動的に行えるものとしている。したがって、第2の実施の形態の基板熱処理装置1は温度・反射率計測部90以外は第1の実施の形態の装置と同様である。
【0109】
図13は第2の実施の形態の基板熱処理装置1における温度・反射率計測部90の構成を示す図である。この温度・反射率計測部90では、第1の実施の形態における温度・反射率計測部50に対して、センサが設けられていないこと、および発光部572に相当する部分のみが異なる構成となっている。なお、第2の実施の形態の温度・反射率計測部90においては、第1の実施の形態の温度・反射率計測部50と同じ部材には同じ参照符号を付している。
【0110】
図13のように温度・反射率計測部90では補助ランプ572cが回転セクタ93の直上に設けられ、回転セクタ93を挟んで補助ランプ572cの下方に光ファイバー56bの受光端を位置させている。
【0111】
図14は第2の実施の形態の基板熱処理装置1における温度・反射率計測部90の回転セクタ93の形状および補助ランプ572c、光ファイバー束56の平面的位置関係を説明するための図である。回転セクタ93は第1の実施の形態における回転セクタ53とほぼ同様の形状および表面特性を有する中心部CAの外側に、一部に切り欠きNを設けた遮断帯CBを張り出させた形状の板状部材である。そして、切り欠きNは中心CEから見て中心部CAにおける切り欠き部NPの外周部の位置に設けられている。また、それに対応して、中心CEを基準にして平面視で光ファイバー束56とは反対側の位置に補助ランプ572cを設けている。これにより、切り欠き部NPが空洞部CP直下に位置すると必然的に補助ランプ572cが切り欠きNの直上に位置するものとなっている。したがって、補助ランプ572cを常時点灯しつつ回転セクタ93を回転させることにより、切り欠きNが補助ランプ572c直下を通過したときにバルス的に光ファイバー56bの先端から基準基板SWに向けて、第1の実施の形態と同様に放射強度ILの光を照射できるものとなっている。
【0112】
このような構成により、第2の実施の形態の装置では、補助ランプ572cを常時点灯しつつ回転セクタ93を回転させることにより、図7(a),(b),(c)の状態を形成することができる。
【0113】
図7(a)は回転セクタ93の切り欠き部NPが光ファイバー56a上端に位置する状態、すなわち上方から放射光が回転セクタ93の切り欠き部NPを通過する状態を表し、遮断帯(切り欠きN以外の部分)が補助ランプ572c下方に位置し、光ファイバー56bに光が至らない消灯状態を表している。この状態では遮断帯により補助ランプ572cの光は遮断されるので光ファイバー56aの上端に放射強度I1(T)の放射光が入射する。
【0114】
図7(b)は回転セクタ93の反射部RPのスリット領域SAが光ファイバー56a上方に位置する状態、すなわち、上方からの放射光が回転セクタ93のスリットSLを通過する状態を表し、また、補助ランプ572cによる光については上述の消灯状態を表している。この状態では放射強度I2(T)の放射光が光ファイバー56aの上端に入射する。
【0115】
図7(c)は回転セクタ93の中心部CAが上述の状態であり、切り欠きNが補助ランプ572c下方に位置し、補助ランプ572cが発する光が光ファイバー56bの端に進入する点灯状態を表している。この状態では放射強度I0(ここではI0=I1(T)+ρW・IL)の放射光が光ファイバー56aの上端に入射する。
【0116】
このように、放射強度I1(T),I2(T),I0を計測することができる。なお、第2の実施の形態では、放射強度ILは予め求めておいた補助ランプ572cへの供給電力(電流値による表現および電圧値による表現を含む)と放射強度ILとの関係に、実際に供給した電力値を用いることによって得られる。
【0117】
このように、第2の実施の形態でも放射強度I1(T),I2(T),I0,ILを求めることができる。したがって、第1の実施の形態と同様の反射率計測処理および温度計測処理を行うことができる。
【0118】
以上説明したように、第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の効果を有するのに加え、回転セクタ93が、切り欠きNが補助ランプ572cに対向する位置にあるときに、切り欠き部NPが光ファイバー56a上端の上方に位置するように設けられているとともに、実効反射率R1の状態とR2の状態とを切替えるため、第1の実施の形態のように回転セクタ53と補助セクタ572aとの同期をとる必要がなく、制御が一層容易であるとともに、装置構成も簡単なものとなるので、装置の製造コストを一層抑えることができる。
【0119】
<3.変形例>
上記第1および第2の実施の形態において基板熱処理装置1およびそれによる各種処理の例を示したが、この発明はこれに限られるものではない。
【0120】
上記第1および第2の実施の形態では、補助光源として豆ランプ(補助ランプ)を用いたが、LED等のその他の発光素子を用いてもよい。
【0121】
また、第1および第2の実施の形態では回転セクタの上面(基板W、基準基板SW)側の表面を鏡面とし、その下方の内面51bを黒化処理するするものとし、回転セクタを回転することで実効反射率を切り替えるものとしたが、逆に、回転セクタの上面を黒化処理し、その下方の内面51bを鏡面とすることで実効反射率を切り替えるものとしてもよい。
【0122】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1ないし請求項の発明によれば、発光手段を点灯状態と消灯状態とで切替えつつ、検出手段により点灯時強度信号および消灯時強度信号をそれぞれ出力するので、それらの強度信号に基づいて基板反射率(基板放射率)を求めることができるので、基板の反射率を正確に計測できる。また、点灯時強度信号および消灯時強度信号ならびに発光手段の強度信号をもとに基板反射率を算出する反射率算出手段を備えるため、自動的に基板反射率を計測することができ、効率的に基板反射率を求めることができ、また、それを作業者が求める場合に比べて作業負担を抑えることができる。
【0124】
また、特に請求項の発明によれば、予め求められた第1状態および第2状態のそれぞれにおける実効反射率の基板反射率に対する依存性情報である第1情報および第2情報に、反射率算出手段によって得られた基板反射率を適用することによって第1実効反射率および第2実効反射率を求め、それらと、消灯状態における第1および第2状態での光をそれぞれ捉えることにより得られた検出手段の第1強度信号および第2強度信号とに基づいて基板の温度を求めるため、基板反射率に対応した正確な温度計測ができる。また、自動的に第1実効反射率および第2実効反射率を計測して、それに基づいて自動的に温度計測を行うので、効率的に温度計測が行え、それを作業者が行う場合に比べて作業負担を抑えることができる。
【0125】
また、とくに請求項の発明によれば、遮光板の回転により点灯状態と消灯状態とを切替えるため、光源自体を点灯、消灯させる場合に比べて光源の特別な制御が不要であり、そのための制御手段が不要であるので装置構成が簡単なものとなり、装置の製造コストを抑えることができる。
【0126】
また、特に請求項の発明によれば、切替え手段が、反射率切替え機能をも備えるため、切替え手段と反射率切替え手段とを別々に設けた場合と比べて、それらの動作を制御手段により同期させる必要がなく、制御が一層容易であるとともに、装置構成も簡単なものとなるので、装置の製造コストを一層抑えることができる。
【0127】
また、とくに請求項の発明によれば、請求項ないし請求項のいずれかに記載の温度計測装置よりなる温度計測手段を備え、それにより得られた基板の温度をもとに熱源への供給電力を制御するため、基板の温度管理を正確に行え、高品質の基板熱処理を行うことができる。
【0128】
また、特に請求項の発明によれば、発光手段を点灯状態と消灯状態とで切り替えつつ、検出手段により点灯状態および消灯状態における点灯時強度信号および消灯時強度信号をそれぞれ出力し、それらの信号ならびに予め求められた発光手段の発光強度とから基板反射率を算出するため、正確な基板反射率の計測が行える。
【0129】
また、特に請求項の発明によれば、請求項の反射率計測方法により計測した基板反射率と、実効反射率の基板反射率に対する依存性情報である第1強度信号および第2情報とから第1実効反射率および第2実効反射率を算出するとともに、第1状態および第2状態のそれぞれにおいて検出手段により放射光を捉え、第1強度信号および第2強度信号を求め、それらを用いて基板の温度を算出するため、基板反射率に対応した正確な温度計測を行うことができる。
【0130】
また、とくに請求項の発明によれば、請求項の温度計測方法により基板の温度を計測し、それをもとに熱源への供給電力を制御するため、温度管理により高品質な基板熱処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の第1の実施の形態である熱処理装置の縦断面図である。
【図2】第1の実施の形態における温度・反射率計測部の構成を示す図である。
【図3】図2のA−A断面から下方を見た状態を示した図である。
【図4】図2のB−B断面から下方を見た状態を示した図である。
【図5】補助セクタの平面図である。
【図6】基板と反射板との間の放射光の多重反射を説明するための図である。
【図7】回転セクタ、補助セクタそれぞれの各回転状態における光ファイバーに入射する光の放射強度を示す模式図である。
【図8】回転セクタ、補助セクタの回転および光ファイバー上端への入射光の放射強度の時間変化を示すタイミングチャートである。
【図9】第1の処理例における実行反射率の反射率依存性の計測手順を示すフローチャートである。
【図10】第1の処理例における実効反射率の計測および基板の熱処理の手順を示すフローチャートである。
【図11】第2の処理例における実行反射率の反射率依存性の計測手順を示すフローチャートである。
【図12】第2の処理例における実効反射率の計測および基板の熱処理の手順を示すフローチャートである。
【図13】第2の実施の形態の基板熱処理装置における温度・反射率計測部の構成を示す図である。
【図14】第2の実施の形態の基板熱処理装置における温度・反射率計測部の回転セクタの形状および補助ランプ、光ファイバー束の平面的位置関係を説明する図である。
【符号の説明】
20 ランプ(熱源)
40 基板保持回転部(保持手段)
45 反射板
45a 穴
50,90 温度・反射率計測部(反射率計測装置、温度計測装置)
53 回転セクタ(54とともに反射率切替え機能)
93 回転セクタ(回転板、54とともに切替え手段)
54 モータ
56 光ファイバー束
56a 光ファイバー(第2光ファイバー)
56b 光ファイバー(第1光ファイバー)
60 制御部
571c 検出器
571d 演算部(反射率算出手段、温度算出手段)
572 発光部
572a 補助セクタ(遮断板、572bとともに切替え手段)
572b モータ(回転手段)
572c 補助ランプ(光源)
CB 遮断帯
I0,I1,I2,IL 放射強度
N 切り欠き(第1の切り欠き)
NP 切り欠き部(第2または第3の切り欠き)
RP 反射部
RA 反射領域
SA スリット領域
SL スリット(第2または第3の切り欠き)
IP 遮断部
OP 解放部
SW 基準基板
W 基板

Claims (8)

  1. 基板の反射率を計測する反射率計測装置であって、
    (a)基板を保持する保持手段と、
    (b)前記保持手段に保持された基板に対向する反射面を有するとともに、穴を有する反射板と、
    (c)前記穴を通じて基板に対して発光する発光手段と、
    (d)前記発光手段を点灯状態と消灯状態とで切り替える切替え手段と、
    (e)基板側から見て前記発光手段の発光位置とほぼ同一位置を検出位置として前記点灯状態および前記消灯状態における基板側から前記穴に進入した光を捉えて、点灯時強度信号および消灯時強度信号をそれぞれ出力する検出手段と、
    (f) 前記点灯時強度信号および前記消灯時強度信号ならびに予め求められた前記発光手段の強度信号とに基づいて基板反射率を算出する反射率算出手段と、
    を備えることを特徴とする反射率計測装置。
  2. (a) 請求項1に記載の反射率計測装置により実現される反射率計測機能と、
    (b) 基板と前記穴または前記反射面との間の多重反射を考慮した反射率である実効反射率が互いに異なる第1状態および第2状態に切替える反射率切替え機能と、
    (c) 予め求められた前記第1状態および前記第2状態のそれぞれにおける実効反射率の基板反射率に対する依存性情報である第1情報および第2情報に、前記反射率算出手段によって得られた前記基板反射率を適用することによって第1実効反射率および第2実効反射率を求める実効反射率導出機能と、
    を有するとともに、
    前記検出手段が前記消灯状態における前記第1状態および前記第2状態での光をそれぞれ捉えることにより、第1強度信号および第2強度信号をそれぞれ出力するものであり、さらに、
    (d) 得られた前記第1強度信号および前記第2強度信号ならびに前記第1実効反射率および前記第2実効反射率に基づいて、基板の温度を求める温度算出機能を備えることを特徴とする温度計測装置。
  3. 請求項2に記載の温度計測装置であって、
    前記発光手段が、
    光源と、一端が前記光源の近傍に位置して設けられた第1光ファイバーとを備えるものであり、
    前記検出手段が、
    光を捉えて強度信号を出力する検出器と、一端が前記検出器に接続された第2光ファイバーとを備えるものであり、
    前記第1光ファイバーおよび前記第2光ファイバーのそれぞれの他端が束ねられて基板にほぼ直交するように対向することにより、前記発光手段の前記発光位置と前記検出手段の前記検出位置がほぼ同一位置に位置しており、
    前記切替え手段が、
    部分的に切り欠きが設けられた遮光板と、前記光源と前記第1ファイバーとの間における基板とほぼ平行な面内において前記遮光板を回転させる回転手段とを備えるとともに、前記回転手段による前記遮光板の回転に伴い、前記遮光板の前記切り欠きとそれ以外の部分とがそれぞれ前記光源と前記第1光ファイバーとの間を通過することによって前記点灯状態と前記消灯状態とに切り替えるものであることを特徴とする温度計測装置。
  4. 請求項2に記載の温度計測装置において、
    前記切替え手段が前記反射率切替え機能をも備えるものであることを特徴とする温度計測装置。
  5. (a) 請求項2ないし請求項4のいずれかに記載の温度計測装置よりなる温度計測手段と、
    (b) 前記保持手段に保持された基板に熱を供給する熱源と、
    (c) 前記温度計測手段により得られた基板の温度に基づいて前記熱源への供給電力を制御する制御手段と、
    を備えることを特徴とする基板熱処理装置。
  6. 保持手段に保持された基板に対向する反射面を有する反射板と、前記反射板に設けられた穴を通じて基板に対して発光する発光手段と、基板側から前記穴に進入した光を捉えて強度信号を出力する検出手段とを備えた装置を用いて基板の反射率を計測する反射率計測方法であって、
    (a) 前記発光手段を点灯状態と消灯状態とで切り替えつつ、前記検出手段により前記点灯状態および前記消灯状態における点灯時強度信号および消灯時強度信号をそれぞれ出力する計測工程と、
    (b) 前記点灯時強度信号および前記消灯時強度信号ならびに予め求められた前記発光手段の発光強度とに基づいて基板反射率を算出する算出工程と、
    を備えることを特徴とする反射率計測方法。
  7. (a) 請求項6に記載の反射率計測方法よりなる反射率計測工程と、
    (b) 反射率切り替え手段によって切り替えられた第1状態および第2状態について、基板と前記反射板における前記穴または前記反射面との間の多重反射を考慮した反射率である実効反射率の前記基板反射率に対する依存性情報である第1情報および第2情報を求める依存性導出工程と、
    (c) 前記各工程の後に得られた前記基板反射率と前記第1情報および前記第2情報とに基づき第1実効反射率および第2実効反射率を算出する実効反射率算出工程と、
    (d) 前記消灯状態における前記第1状態および前記第2状態のそれぞれにおいて前記検出手段により放射光を捉え、第1強度信号および第2強度信号を出力する強度計測工程と、
    (f) 得られた前記第1強度信号および前記第2強度信号と、前記実効反射率計測工程において得られた前記第1実効反射率および前記第2実効反射率とを用いて基板の温度を算出する温度算出工程と、
    を備えることを特徴とする温度計測方法。
  8. (a) 基板に対して熱源による熱供給を伴う処理を施す熱処理工程と、
    (b) 前記熱処理工程中に請求項7に記載の温度計測方法により基板の温度を計測する温度計測工程と、
    (c) 得られた基板の温度をもとに前記熱源への供給電力を制御する制御工程と、
    を備えることを特徴とする基板熱処理方法。
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