以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について詳細に説明する。
<第1実施形態>
図1は、本発明に係る熱処理装置1の要部構成を示す図である。この熱処理装置1は、φ300mmの円形の半導体ウェハーWの裏面に光を照射することによって半導体ウェハーWの加熱処理(バックサイドアニール)を行うランプアニール装置である。図1および以降の各図においては、理解容易のため、必要に応じて各部の寸法や数を誇張または簡略化して描いている。
熱処理装置1は、主たる構成として、半導体ウェハーWを収容する略円筒形状のチャンバー6と、チャンバー6内にて半導体ウェハーWを保持する保持部7と、保持部7に保持された半導体ウェハーWに光を照射する光照射部4と、光照射される半導体ウェハーWの温度を検出する温度測定部8と、半導体ウェハーWの一部領域の温度を補正する温度補正部2と、を備えている。また、熱処理装置1は、これらの各部を制御して半導体ウェハーWの加熱処理を実行させる制御部3を備える。
チャンバー6は、上下が開口された略円筒形状の側壁を有している。チャンバー6は、例えば、ステンレススチール等の強度と耐熱性に優れた金属材料にて形成されている。チャンバー6の下側開口には石英窓64が装着されて閉塞されている。チャンバー6の下端に配置された石英窓64は、石英(SiO2)により形成された円板形状部材であり、光照射部4から照射された光をチャンバー6内に透過する。
また、チャンバー6の上側開口には赤外透過窓63が装着されて閉塞されている。チャンバー6の上端に配置された赤外透過窓63は、シリコン(Si)により形成された円板形状部材である。赤外透過窓63の径は半導体ウェハーWと同様のφ300mmである。このような赤外透過窓63としては、例えば半導体ウェハーWを切り出すシリコン単結晶のインゴットから所定厚さ(本実施形態では3mm)の円板を切り出したものを用いるようにすれば安価に製作することができる。後に詳述するように、シリコンは可視光に対しては不透明(可視光を透過しない)であるが、所定の温度以下であれば波長1μmを超える赤外線を透過する性質を有する。従って、光照射部4からの光照射を受けて昇温した半導体ウェハーWから放射された赤外線はチャンバー6上端の赤外透過窓63を透過してチャンバー6の上方に放出される。
石英窓64、赤外透過窓63およびチャンバー6の側壁によって囲まれる空間が熱処理空間65として規定される。熱処理空間65の気密性を維持するために、石英窓64および赤外透過窓63とチャンバー6とは図示省略のOリングによってそれぞれシールされており、これらの隙間から気体が流出入するのを防いでいる。具体的には、石英窓64の上面周縁部とチャンバー6との間にOリングを挟み込み、クランプリング66を石英窓64の下面周縁部に当接させ、そのクランプリング66をチャンバー6にネジ止めすることによって、石英窓64をOリングに押し付けている。同様に、赤外透過窓63の下面周縁部とチャンバー6との間にOリングを挟み込み、クランプリング62を赤外透過窓63の上面周縁部に当接させ、そのクランプリング62をチャンバー6にネジ止めすることによって、赤外透過窓63をOリングに押し付けている。
また、チャンバー6の側壁には、半導体ウェハーWの搬入および搬出を行うための搬送開口部67が設けられている。搬送開口部67は、図示を省略するゲートバルブによって開閉可能とされている。搬送開口部67が開放されると、図外の搬送ロボットによってチャンバー6に対する半導体ウェハーWの搬入および搬出が可能となる。また、搬送開口部67が閉鎖されると、熱処理空間65が外部との通気が遮断された密閉空間となる。
保持部7は、チャンバー6の内部に固定設置されており、保持プレート71および支持ピン72を備える。保持プレート71および支持ピン72を含む保持部7の全体は石英にて形成されている。保持プレート71は、水平姿勢となるようにチャンバー6の内部に固定設置されている。保持プレート71の上面には、複数(少なくとも3個)の支持ピン72が円周上に沿って立設されている。複数の支持ピン72によって形成される円の径は半導体ウェハーWの径よりも若干小さい。よって、複数の支持ピン72によって半導体ウェハーWを水平姿勢(半導体ウェハーWの法線が鉛直方向に沿う姿勢)に載置して支持することができる。なお、複数の支持ピン72に代えて、保持プレート71の上面に半導体ウェハーWの径よりも小さい石英のリングを設けるようにしても良い。
また、チャンバー6の内部には移載機構5が設けられている。移載機構5は、一対の移載アーム51と、各移載アーム51の上面に設けられたリフトピン52とを備える。2本の移載アーム51のそれぞれには、例えば2本のリフトピン52が設けられている。2本の移載アーム51および4本のリフトピン52はいずれも石英にて形成される。一対の移載アーム51は、図示省略の昇降駆動部によって鉛直方向に沿って昇降移動される。一対の移載アーム51が上昇すると、計4本のリフトピン52が保持プレート71に穿設された貫通孔を通過し、その上端が保持プレート71の上面から突き出て支持ピン72よりも上方にまで到達する。一方、移載アーム51が下降しているときには、図1に示すように、リフトピン52の上端が保持プレート71よりも下方に位置している。なお、移載アーム51が下降している状態において、開閉機構によって一対の移載アーム51を水平方向に沿って開閉するようにしても良い。
光照射部4は、チャンバー6の下方に設けられている。光照射部4は、複数本のハロゲンランプHLおよびリフレクタ43を備える。本実施形態では、光照射部4に40本のハロゲンランプHLを設けている。複数のハロゲンランプHLは、チャンバー6の下方から石英窓64を介して熱処理空間65への光照射を行う。図2は、複数のハロゲンランプHLの配置を示す平面図である。本実施形態では、上下2段に各20本ずつのハロゲンランプHLが配設されている。各ハロゲンランプHLは、長尺の円筒形状を有する棒状ランプである。上段、下段ともに20本のハロゲンランプHLは、それぞれの長手方向が保持部7に保持される半導体ウェハーWの主面に沿って(つまり水平方向に沿って)互いに平行となるように配列されている。よって、上段、下段ともにハロゲンランプHLの配列によって形成される平面は水平面である。
また、図2に示すように、上段、下段ともに保持部7に保持される半導体ウェハーWの中央部に対向する領域よりも周縁部に対向する領域におけるハロゲンランプHLの配設密度が高くなっている。すなわち、上下段ともに、ランプ配列の中央部よりも端部側の方がハロゲンランプHLの配設ピッチが短い。このため、光照射部4からの光照射による加熱時に温度低下が生じやすい半導体ウェハーWの周縁部により多い光量の照射を行うことができる。
また、上段のハロゲンランプHLからなるランプ群と下段のハロゲンランプHLからなるランプ群とが格子状に交差するように配列されている。すなわち、上段の各ハロゲンランプHLの長手方向と下段の各ハロゲンランプHLの長手方向とが直交するように計40本のハロゲンランプHLが配設されている。
ハロゲンランプHLは、ガラス管内部に配設されたフィラメントに通電することでフィラメントを白熱化させて発光させるフィラメント方式の光源である。ガラス管の内部には、窒素やアルゴン等の不活性ガスにハロゲン元素(ヨウ素、臭素等)を微量導入した気体が封入されている。ハロゲン元素を導入することによって、フィラメントの折損を抑制しつつフィラメントの温度を高温に設定することが可能となる。したがって、ハロゲンランプHLは、通常の白熱電球に比べて寿命が長くかつ強い光を連続的に照射できるという特性を有する。また、ハロゲンランプHLは棒状ランプであるため長寿命であり、ハロゲンランプHLを水平方向に沿わせて配置することにより上方の半導体ウェハーWへの放射効率が優れたものとなる。
また、リフレクタ43は、複数のハロゲンランプHLの下方にそれら全体を覆うように設けられている。リフレクタ43の基本的な機能は、複数のハロゲンランプHLから出射された光をチャンバー6内の熱処理空間65に反射するというものである。リフレクタ43は例えばアルミニウム合金板にて形成されており、その表面(ハロゲンランプHLに臨む側の面)はブラスト処理により粗面化加工が施されている。
また、チャンバー6の下方には温度補正部2も設けられている。図3は、温度補正部2の構成を示す図である。図3においては、図示の便宜上、光照射部4およびチャンバー6の構成を簡略化して描いている。温度補正部2は、レーザユニット21、レーザ光出射部25および回転モータ24を備える。本実施形態のレーザユニット21は、出力が500Wの非常に高出力の半導体レーザであり、波長が800nm〜820nmの可視光レーザを放出する。レーザユニット21から放出されたレーザ光は光ファイバー22によってコリメータレンズ23へと導かれる。コリメータレンズ23から出射された平行なレーザ光はレーザ光出射部25に入射する。
図4は、レーザ光出射部25の縦断面図である。レーザ光出射部25は、石英によって形成された略棒状の光学部材である。レーザ光出射部25は、上端に位置する投光部25aと、その下側に鉛直方向に沿って設けられた導光部25bと、を備えて構成される。導光部25bは円柱形状を有しており、本実施形態ではその径がφ15mmとされている。投光部25aには、反射面25cおよび出射面25dが形成されている。本実施形態においては、出射面25dは鉛直方向に沿って形成され、反射面25cと水平面とのなす角度は例えば56.7°とされている。なお、レーザ光出射部25は、1本の円柱状石英ロッドから反射面25cおよび出射面25dを切り出して作製するようにしても良いし、投光部25aと導光部25bとを別体の石英部材として接着するようにしても良い。
レーザ光出射部25は、保持部7に保持された半導体ウェハーWの中心軸CXに沿うようにウェハー中心の直下に配置されている。具体的には、保持部7が水平姿勢にて保持する半導体ウェハーWの中心を鉛直方向に貫く中心軸CX(図3)と円柱形状の導光部25bの中心軸とが一致するようにレーザ光出射部25が設けられている。
図3に示すように、レーザ光出射部25は、回転モータ24によって導光部25bの中心軸(つまり、半導体ウェハーWの中心軸CX)を回転中心として回転可能とされている。本実施形態の回転モータ24は、モータ軸が中空となっている中空モータであり、その中空部分に導光部25bの下端が挿通されている。そして、導光部25bの下端面に対向する位置にコリメータレンズ23が配置されている。回転モータ24にはエンコーダ24aが付設されており、そのエンコーダ24aによってレーザ光出射部25の回転角度を検出することができる。
また、レーザ光出射部25は、スライド駆動部26によって半導体ウェハーWの中心軸CXに沿って往復移動可能とされている。スライド駆動部26としては、例えば、導光部25bに連結された部材に螺合されたボールネジを回転させるパルスモータを用いることができる。スライド駆動部26にはエンコーダ26aが付設されており、そのエンコーダ26aによってレーザ光出射部25の高さ位置を検出することができる。
導光部25bの上端側は、光照射部4のリフレクタ43を貫通している。導光部25bがリフレクタ43を貫通する部位にはベアリングを設けるようにしても良い。導光部25bは、さらにハロゲンランプHLの配置の隙間を通り抜け(図2参照)、その上端が少なくとも上段のハロゲンランプHLよりも上側に位置するように設けられる。そして、導光部25bの上端に投光部25aが連設される。このため、レーザ光出射部25が回転したときにも、レーザ光出射部25とハロゲンランプHLとの接触が防止される。
図4に示すように、レーザユニット21から放出されてコリメータレンズ23からレーザ光出射部25の導光部25bの下端面に垂直に入射したレーザ光は、鉛直方向に沿って設けられた導光部25bの長手方向に沿って直進する。すなわち、入射したレーザ光は導光部25bの中心軸と平行に上方の投光部25aに向けて導かれる。そして、導光部25b内を導かれたレーザ光は投光部25aの反射面25cにて出射面25dに向けて全反射され、出射面25dから保持部7に保持された半導体ウェハーWの周縁部に向けて出射される。レーザ光は石英の投光部25aから大気中に出射される際に若干屈折される。その結果、レーザ光出射部25から出射されたレーザ光と水平面とのなす角度は約35°となる。本実施形態ではこの角度を約35°としているが、熱処理装置1の配置構成(レーザ光出射部25と半導体ウェハーWとの位置関係等)に応じて適宜の値とすることができ、具体的には反射面25cと水平面とのなす角度によって調整することができる。
レーザ光出射部25から出射されたレーザ光は、半導体ウェハーWの裏面周縁部の一部領域に照射される。レーザ光出射部25からレーザ光を出射しつつ、回転モータ24が中心軸CXを回転中心としてレーザ光出射部25を回転させることにより、レーザ光の照射スポットが半導体ウェハーWの裏面周縁部で旋回することとなる。また、スライド駆動部26がレーザ光出射部25を中心軸CXに沿って昇降させると、レーザ光の照射スポットが旋回する径が拡縮することとなる。なお、温度補正部2による半導体ウェハーWの周縁部へのレーザ光照射についてはさらに後述する。
図1に戻り、チャンバー6の上方には温度測定部8が設けられている。温度測定部8はパイロメータ81を備える。図5は、第1実施形態のパイロメータ81の構造を示す図である。パイロメータ81は、広角レンズ系82と受光部83とを備える。広角レンズ系82は、先頭から順に凹凸凸凹凸の5枚のレンズを接合して形成されている。第2レンズ(先頭から2番目の凸レンズ)中には図示省略の絞りが設けられている。広角レンズ系82は、無限遠方の物体に対する結像位置が受光部83の受光センサー84となるように構成されている。なお、広角レンズ系82としては、図3に例示するものに限定されず、公知の種々のレンズ系を採用することができる。
受光部83は、1個の受光センサー84と、一対の反射板85と、回転窓86と、を備える。受光センサー84は、広角レンズ系82によって導かれた光を受光してその強度に応じたレベルの電気信号を出力する。本実施形態のパイロメータ81においては、単一の受光センサー84に対して単一の広角レンズ系82を設けており、半導体ウェハーWからの放射光(赤外線)が広角レンズ系82によって受光センサー84に導かれる。受光センサー84は、広角レンズ系82の中心軸に沿った線上に設置されている。
また、回転窓86および一対の反射板85は、半導体ウェハーWの異なる複数箇所から放射されて広角レンズ系82によって導かれた放射光から当該複数箇所のうちの特定箇所から放射された放射光を選択して受光センサー84に導く光選択部として機能するものである。図6は、第1実施形態の回転窓86を示す平面図である。回転窓86は、半導体ウェハーWから放射される赤外線に対して不透明な材質(例えば、アルミニウムなどの金属)にて形成された回転自在な円形の板状部材である。回転窓86の一部には半導体ウェハーWからの放射光が通過する開口86aが形設されている。開口86aは、回転窓86の回転中心に対して偏心して設けられている。
回転窓86は、表面が広角レンズ系82に対向するように設置されている。回転窓86は回転モータ87によって回転される。また、回転窓86は、その回転中心を広角レンズ系82の中心軸が貫くように設けられている。回転モータ87が回転窓86を回転させることによって、偏心して設けられた開口86aも回転窓86の回転中心の周りで旋回することとなる。開口86aがいずれの位置であったとしても、広角レンズ系82と対向している。
一対の反射板85は、回転窓86の裏面に固設されている。各反射板85は、一方面が鏡面の反射鏡である。一対の反射板85は、鏡面を相対向させつつ、回転窓86の主面に対して45°をなすように設けられている。一対の反射板85は、開口86aを挟む位置に設けられており、そのうちの一方は広角レンズ系82の中心軸に沿って設けられた受光センサー84に対向する位置に設けられている。これにより、図5に示すように、回転窓86の回転に伴う開口86aの位置の変化に関わらず、開口86aを通過した光は一対の反射板85によって多重反射されて受光センサー84に導かれる。なお、回転窓86に固設された一対の反射板85は、回転窓86に回転に連動して回転するが、受光センサー84は回転窓86の回転に連動しても良いし、しなくても良い。
パイロメータ81は、チャンバー6の上方において、広角レンズ系82の先頭の凹レンズ(受光部83が設けられている側と反対側のレンズ)が赤外透過窓63に対向するように設置されている。また、パイロメータ81は、保持部7によって保持される半導体ウェハーWの中心軸CX(図3参照)と広角レンズ系82の中心軸とが一致するように設けられている。パイロメータ81の受光センサー84は波長1μm以上の赤外線を検知する。シリコンにて形成された赤外透過窓63は波長1μm以上の赤外線を透過する。すなわち、チャンバー6内の熱処理空間65から放射された波長1μm以上の赤外線は赤外透過窓63を透過してパイロメータ81によって検出されることとなり、パイロメータ81は赤外透過窓63よりも下側の半導体ウェハーWから放射された放射光を検知することができるのである。
図7は、温度算定部91の構成を示すブロック図である。温度算定部91は、A/Dコンバータ92および演算部93を備える。A/Dコンバータ92は、受光センサー84から伝達された電気信号(アナログ)をデジタル信号に変換する。演算部93は、A/Dコンバータ92から出力されたデジタル信号に基づいて演算処理を行うことによって温度を算定する。演算部93は、例えば1つのICチップ上にCPU、メモリ、タイマなどを搭載したワンチップマイコンによって実現するようにすれば良い。ワンチップマイコンであれば、汎用処理を行うことはできないが、特定の処理を高速で行うことができる。
温度算定部91と制御部3とは通信回線を介して接続されている。制御部3は、熱処理装置1に設けられた上記の種々の動作機構を制御する。制御部3のハードウェアとしての構成は一般的なコンピュータと同様である。すなわち、制御部3は、各種演算処理を行うCPU、基本プログラムを記憶する読み出し専用のメモリであるROM、各種情報を記憶する読み書き自在のメモリであるRAMおよび制御用ソフトウェアやデータなどを記憶しておく磁気ディスクを備えて構成される。制御部3のCPUが所定の処理プログラムを実行することによって熱処理装置1における処理が進行する。また、制御部3には温度算定部91による半導体ウェハーWの温度算定結果が伝達されるとともに、それに基づいて制御部3は温度補正部2および光照射部4を制御する。なお、温度算定部91と制御部3とを接続する通信回線は、シリアル通信であっても良いし、パラレル通信であっても良い。
また、図1に戻り、熱処理装置1には赤外透過窓63を冷却する冷却部69が設けられている。本実施形態では、冷却部69として送風機を用いている。冷却部69は、チャンバー6の外部に設けられており、赤外透過窓63の上面に向けて送風することにより赤外透過窓63を空冷する。冷却部69は、送風する風を温調するための温調機構を備えていても良い。
上記の構成以外にも熱処理装置1は、熱処理空間65の雰囲気調整を行う機構、例えば窒素(N2)、酸素(O2)、水素(H2)、塩化水素(HCl)、アンモニア(NH3)などの処理ガスを熱処理空間65に供給する給気機構および熱処理空間65内の雰囲気を装置外に排気する排気機構を備えていても良い。また、光照射部4からの光照射によるチャンバー6の過剰な温度上昇を防止するための水冷管をチャンバー6の側壁に設けるようにしても良い。
次に、熱処理装置1における半導体ウェハーWの処理手順について説明する。以下に説明する熱処理装置1の処理手順は、制御部3が熱処理装置1の各動作機構を制御することにより進行する。
まず、図示省略のゲートバルブが開いて搬送開口部67が開放され、装置外部の搬送ロボットにより搬送開口部67を介して処理対象となるシリコンの半導体ウェハーWがチャンバー6内に搬入される。搬送ロボットによって搬入された半導体ウェハーWは保持部7の直上位置まで進出して停止する。そして、移載機構5の一対の移載アーム51が上昇することにより、計4本のリフトピン52が保持プレート71の貫通孔を通過して支持ピン72よりも上方に突き出て搬送ロボットから半導体ウェハーWを受け取る。
半導体ウェハーWがリフトピン52に載置された後、搬送ロボットが熱処理空間65から退出して搬送開口部67が閉鎖されることにより熱処理空間65が密閉空間とされる。そして、一対の移載アーム51が下降することにより、半導体ウェハーWは移載機構5から保持部7に受け渡され、支持ピン72によって下方より水平姿勢にて保持される。半導体ウェハーWは、パターン形成がなされた表面を上面として保持部7に保持される。つまり、パターン形成がなされていない裏面が下面となっている。
半導体ウェハーWが石英にて形成された保持部7によって水平姿勢にて下方より保持された後、光照射部4の40本のハロゲンランプHLが一斉に点灯して光照射加熱(ランプアニール)が開始される。ハロゲンランプHLから出射されたハロゲン光は、石英にて形成された石英窓64および保持プレート71を透過して半導体ウェハーWの裏面から照射される。
ハロゲンランプHLから出射されて石英の石英窓64および保持プレート71を透過した光は保持部7に保持された半導体ウェハーWの裏面に照射され、それによって半導体ウェハーWが加熱されて目標とする処理温度にまで昇温する。本実施形態においては、パターンの形成されていない半導体ウェハーWの裏面に光が照射されるため、均一な光照射加熱を行うことができる(いわゆるバックサイドアニール)。すなわち、パターン形成がなされていない半導体ウェハーWの裏面には光吸収率のパターン依存性が存在しないため、裏面全面にわたって光吸収率は均一であり、その結果ハロゲンランプHLの光が均一に吸収されるのである。なお、移載機構5の移載アーム51およびリフトピン52も石英にて形成されているため、ハロゲンランプHLによる光照射加熱の障害となることは無い。
ハロゲンランプHLからの光照射加熱によって昇温した半導体ウェハーWからは、その温度に応じた強度(エネルギー)の赤外線が放射される。半導体ウェハーWから放射される赤外線の強度は温度(絶対温度)の4乗に比例することが知られている(シュテファン=ボルツマンの法則)。そして、昇温した半導体ウェハーWの表面から放射された赤外線はチャンバー6の上端に設けられたシリコンの赤外透過窓63を透過する。
図8は、厚さ3mmのシリコンの分光透過率を示す図である。同図に示すように、可視光を含む波長1μm以下の光はシリコンを全く透過しないのに対して、波長1μmを超える赤外線はある程度シリコンを透過する。そして、本実施形態のパイロメータ81は波長1μm以上の赤外線を検知する。従って、昇温した半導体ウェハーWの表面から放射された波長1μm以上の赤外線はシリコンの赤外透過窓63を透過してパイロメータ81によって検出されることとなる。
半導体ウェハーWの表面から放射され、赤外透過窓63を透過した放射光(赤外線)は、パイロメータ81の広角レンズ系82によって受光部83に導かれる。このときに、半導体ウェハーWの表面の異なる複数の箇所から放射された放射光が広角レンズ系82によって受光部83に導かれる。パイロメータ81は広角レンズ系82を備えるため、半導体ウェハーWの広い範囲の異なる箇所からの放射光を受光部83に導くことができる。広角レンズ系82によって導かれた放射光の一部は回転窓86の開口86aを通過する。開口86aを通過した放射光は一対の反射板85によって受光センサー84に導かれる。
半導体ウェハーWの複数箇所から放射された放射光が広角レンズ系82によって受光部83に導かれるのであるが、それらのうち開口86aを通過するのは特定箇所から放射された放射光のみである。半導体ウェハーWの特定箇所以外から放射された放射光は回転窓86によって遮光され、受光センサー84には到達しない。すなわち、開口86aを形成した回転窓86は半導体ウェハーWの特定箇所から放射された放射光のみを選択し、その放射光が一対の反射板85によって受光センサー84に導かれるのである。
また、半導体ウェハーWの温度測定時には、受光部83の回転窓86が回転モータ87によって一定速度(例えば、1回転/秒)で回転されている。これに伴って、回転窓86の中心に対して偏心して設けられた開口86aも回転する(図6参照)。このため、回転窓86の回転にともなって、開口86aを通過する放射光が放射される半導体ウェハーWの特定箇所が順次に切り替えられることとなる。換言すれば、回転モータ87は、回転窓86によって選択される放射光が放射される半導体ウェハーWの特定箇所を順次に切り替える切替部として機能するものである。
図9は、第1実施形態のパイロメータ81によって測定対象となる半導体ウェハーWの領域を示す図である。第1実施形態においては、パイロメータ81が保持部7によって保持される半導体ウェハーWの中心部上方に設けられ、かつ、特定箇所を選択する開口86aを形成した回転窓86が一定速度で回転している。このため、パイロメータ81による測定対象となる領域は、図9に斜線で示した半導体ウェハーW表面の円環形状の領域となる。図9の斜線で示す円環形状の領域に含まれる複数箇所から放射された放射光が赤外透過窓63を透過してパイロメータ81に入射し、広角レンズ系82によって受光部83に導かれる。それら複数箇所のうち特定箇所から放射された放射光のみが開口86aを通過して一対の反射板85によって受光センサー84に導かれる。回転窓86が回転することにより、開口86aを通過する放射光が放射される特定箇所が図9の円環形状領域に含まれる複数箇所のいずれかに順次に切り替えられる。その結果、図9に斜線で示す円環形状の領域がパイロメータ81による温度測定の対象となるのである。
受光部83の受光センサー84は、図9に示す円環形状領域に含まれるいずれかの特定箇所から放射された放射光を受光し、その放射光の強度を検出する。特定箇所からの放射光を受光した受光センサー84は、受光した放射光の強度に応じたレベルの電気信号を出力する。受光センサー84から出力された電気信号は温度算定部91に伝達される(図7参照)。温度算定部91では、受光センサー84から出力された信号がA/Dコンバータ92によってデジタル信号に変換される。そして、そのデジタル信号に基づいて演算部93が演算処理を行うことにより、半導体ウェハーWの上記特定箇所の温度が算定される。半導体ウェハーWの放射光の強度から温度を算定するには、黒体輻射についてのプランクの法則或いはそれから導かれるステファン・ボルツマンの法則を利用した公知の演算手法用いることができる。或いは、半導体ウェハーWの表面温度と受光センサー84が出力する信号レベルとを予め対応付けたテーブルを作成して制御部3が備える記憶部に格納しておき、そのテーブルに基づいて特定箇所の温度を求めるようにしても良い。
回転モータ87が回転窓86を回転させることにより、温度測定の対象となる特定箇所が図9の円環形状領域に含まれる複数箇所のいずれかに順次に切り替えられる。演算部93は、受光センサー84からの信号を順次に処理し、受光センサー84が受光した放射光の強度に基づいて図9の円環形状領域に含まれる複数箇所の温度を順次に個別に算定する。これにより、図9に示す半導体ウェハーWの円環形状領域の温度が測定される。なお、例えば、回転窓86が1回転/秒で回転し、演算部93が10ミリ秒間隔で演算処理を行う場合には、図9の円環形状領域に含まれる100箇所の温度が個別に算定されることとなる。
このようにして、第1実施形態では、単一のパイロメータ81によって半導体ウェハーWの表面の異なる複数箇所の温度を測定している。温度算定部91にて算定された半導体ウェハーWの複数箇所の温度は制御部3に伝達される。制御部3は、温度算定部91による算定結果に基づいて、半導体ウェハーWの温度が所定の目標温度となるように光照射部4のハロゲンランプHLへの電力供給を制御するようにしても良い。また、制御部3は、温度算定部91による温度算定結果をディスプレイ等に表示するようにしても良い。
さらに、制御部3は、温度算定部91による算定結果に基づいて、図9の円環形状領域の一部を選択的に加熱するように温度補正部2を制御するようにしても良い。図10は、温度測定部8による温度測定結果に基づいて半導体ウェハーWの温度の補正を行う様子を概念的に示す図である。上述したように、ハロゲンランプHLから出射された光は石英窓64および石英の保持プレート71(図10では省略)を透過して半導体ウェハーWの裏面に照射され、それによって半導体ウェハーWが加熱されて処理温度にまで昇温する。昇温した半導体ウェハーWからはその温度に応じた強度の赤外線が放射される。半導体ウェハーWの表面から放射された放射光は赤外透過窓63を透過して温度測定部8のパイロメータ81によって検出され、図9に示した半導体ウェハーWの円環形状領域に含まれる複数箇所の温度が測定される。
ハロゲンランプHLからの光照射加熱によって昇温した半導体ウェハーWには、周辺の他の領域よりも相対的に温度が低い温度低下領域(コールドスポット)が局所的に現出することがある。このような温度低下領域は、半導体ウェハーWと支持ピン72との接触やチャンバー6内に形成される気流などによって生じる。本実施形態の温度測定部8は、半導体ウェハーWの円環形状領域に含まれる複数箇所の温度を個別に測定するため、そのような温度低下領域を検出することができる。ハロゲンランプHLへの電力供給制御では、半導体ウェハーW全面の温度は調整することができても、局所的な温度低下領域を加熱して解消することは困難である。
そこで、制御部3は、温度測定部8による温度低下領域の検出結果に基づいて、半導体ウェハーWの温度低下領域を選択的に加熱するように温度補正部2を制御する。温度補正部2においては、レーザユニット21から放出されたレーザ光がコリメータレンズ23からレーザ光出射部25の導光部25bに入射される。入射されたレーザ光はレーザ光出射部25の投光部25aから石英窓64を介して保持部7に保持された半導体ウェハーWの裏面周縁部に照射される。このときには、回転モータ24が半導体ウェハーWの中心軸CXを回転中心としてレーザ光出射部25を回転させる。これにより、レーザ光出射部25から出射されたレーザ光の照射スポットは半導体ウェハーWの裏面周縁部に沿って旋回する。レーザ光の照射スポットは円形の軌道を描くこととなるが、この円軌道が図9の円環形状領域と一致するようにスライド駆動部26がレーザ光出射部25の高さを調整している。従って、レーザ光出射部25から出射されたレーザ光の照射スポットは図9の円環形状領域に沿って旋回する。
温度算定部91による算定の結果、図9の円環形状領域の一部に温度低下領域が現出していた場合には、制御部3の制御下にてレーザユニット21がレーザ光出力の変調を行う。具体的には、レーザ光出射部25の回転角度がレーザ光の照射スポットが温度低下領域に位置する角度となっているときには、制御部3の制御によってレーザユニット21のレーザ光出力を高める。また、レーザ光の照射スポットが温度低下領域から外れているときには、レーザユニット21のレーザ光出力を低くする。レーザユニット21は、レーザ光出力を0%から100%の範囲で高速に制御することができる。なお、レーザ光出射部25の回転角度はエンコーダ24aによって検出することができる。
このようにすれば、ハロゲンランプHLからの光照射加熱の結果として半導体ウェハーWの一部に温度低下領域が生じたとしても、その温度低下領域のみにレーザ光出射部25から強いレーザ光を照射して加熱することができる。その結果、温度低下領域を解消して半導体ウェハーWの全面を均一に処理温度に加熱することができる。
ところで、上記のような温度測定部8による温度測定時に、半導体ウェハーWから放射された光の一部は赤外透過窓63を透過するものの、残部は赤外透過窓63に吸収され、赤外透過窓63自体が加熱される。すなわち、光照射加熱によって昇温した半導体ウェハーWからの輻射熱によって、半導体ウェハーWと同じ材質(シリコン)の赤外透過窓63が加熱されるのである。シリコンは、常温のときには図8に示すような分光透過率特性を示すが、加熱されて昇温するとほとんど赤外線を透過しなくなるという性質を有する。従って、半導体ウェハーWが昇温してからの経過時間が長くなるにつれて赤外透過窓63も昇温し、半導体ウェハーWから放射された赤外線が赤外透過窓63を透過しにくくなってパイロメータ81による検出が困難となる。
このため、赤外透過窓63を冷却するための冷却部69が設けられている。冷却部69は、少なくともハロゲンランプHLが点灯している間は赤外透過窓63の上面に向けて継続して送風する。これにより、ハロゲンランプHLからに光照射加熱によって半導体ウェハーWが昇温しても、赤外透過窓63の温度は冷却部69によって150℃以下に維持されることとなる。150℃以下であれば赤外透過窓63は波長1μm以上の赤外線を透過することができる。なお、より確実に赤外線を透過するためには、冷却部69によって赤外透過窓63を100℃以下に冷却しておくのが好ましい。
所定時間の光照射加熱が終了した後、ハロゲンランプHLが消灯して半導体ウェハーWの降温が開始される。ハロゲンランプHLが消灯して所定時間が経過し、半導体ウェハーWが十分に降温した後、移載機構5の一対の移載アーム51が上昇し、リフトピン52が保持プレート71に保持されていた半導体ウェハーWを突き上げて支持ピン72から離間させる。その後、搬送開口部67が再び開放され、装置外部の搬送ロボットのハンドが搬送開口部67からチャンバー6内に進入して半導体ウェハーWの直下で停止する。続いて、移載アーム51が下降することによって、半導体ウェハーWがリフトピン52から搬送ロボットに渡される。そして、半導体ウェハーWを受け取った搬送ロボットのハンドがチャンバー6から退出することにより、半導体ウェハーWがチャンバー6から搬出され、熱処理装置1における光照射加熱処理が完了する。
第1実施形態においては、1つのパイロメータ81に単一の受光センサー84および単一の広角レンズ系82を設けている。そして、開口86aを形成した回転窓86を設けることにより、半導体ウェハーWの複数箇所から放射されて単一の広角レンズ系82によって導かれた放射光から複数箇所のうちの特定箇所から放射された放射光のみを選択している。回転窓86によって選択された特定箇所からの放射光は一対の反射板85によって受光センサー84に導かれ、その特定箇所の温度が求められる。回転モータ87によって回転窓86が回転することにより、温度測定される特定箇所が図9の円環形状領域に含まれる複数箇所のいずれかに順次に切り替えられる。その結果、図9の円環形状領域に含まれる複数箇所の温度が非接触にて測定されることとなる。
単一の受光センサー84に単一の広角レンズ系82を設けた1個のパイロメータ81によって複数箇所の温度を測定しているため、パイロメータを複数設けた場合における測定対象領域からのパイロメータまで距離、パイロメータの設置角度、および、パイロメータが備えるレンズ系等に起因した機差を解消することができ(そもそも機差が存在しない)、半導体ウェハーWの異なる複数箇所の温度を非接触にて正確に測定することができる。
このように、本実施形態においては、パイロメータの機差を無くすことによって半導体ウェハーWの異なる複数箇所の温度を正確に測定することができる。そして、従来は繁雑な作業となっていたパイロメータの機差の解消に要する負担を最小限のものとすることができる。
また、パイロメータ81による測定の結果、半導体ウェハーWの一部に温度低下領域が現出していることが判明した場合には、温度補正部2によってその温度低下領域を選択的に加熱することにより、温度低下領域を解消して半導体ウェハーWの全面を均一に加熱することができる。
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第1実施形態では保持部7によって保持される半導体ウェハーWの中心部直上に温度測定部8のパイロメータ81を設けていたのに対して、第2実施形態においては半導体ウェハーWの斜め上方にパイロメータ81を設けている。
図11は、第2実施形態における半導体ウェハーWとパイロメータ81との位置関係を示す図である。第2実施形態においては、例えばチャンバー6の側壁にパイロメータ81を取り付けることにより、保持部7に保持される半導体ウェハーWの斜め上方にパイロメータ81が設けられる。パイロメータ81の設置位置を除く第2実施形態の残余の点は第1実施形態と同じである。
また、第2実施形態における半導体ウェハーWの処理手順についても第1実施形態と同様である。第2実施形態においても、ハロゲンランプHLからの光照射加熱によって昇温した半導体ウェハーWの表面から放射された放射光をパイロメータ81の単一の広角レンズ系82が受光部83に導く。開口86aを形設した回転窓86は、単一の広角レンズ系82によって導かれた放射光から半導体ウェハーWの複数箇所のうちの特定箇所から放射された放射光のみを選択する。回転窓86によって選択された放射光は一対の反射板85によって受光センサー84に導かれ、半導体ウェハーWの特定箇所の温度が算定される。
また、回転モータ87が回転窓86を回転させることによって、温度測定される特定箇所が順次に切り替わる。但し、第2実施形態では、パイロメータ81が半導体ウェハーWの斜め上方に設けられているため、測定対象領域は楕円の環状となる。図12は、第2実施形態のパイロメータ81によって測定対象となる半導体ウェハーWの領域を示す図である。第2実施形態においては、パイロメータ81が保持部7によって保持される半導体ウェハーWの斜め上方に設けられ、かつ、特定箇所を選択する開口86aを形成した回転窓86が一定速度で回転している。このため、パイロメータ81による測定対象となる領域は、図12に斜線で示した半導体ウェハーW表面の楕円環形状の領域となる。
図12の斜線で示す楕円環形状の領域に含まれる複数箇所から放射された放射光が赤外透過窓63を透過してパイロメータ81に入射し、広角レンズ系82によって受光部83に導かれる。それら複数箇所のうち特定箇所から放射された放射光のみが開口86aを通過して一対の反射板85によって受光センサー84に導かれる。回転窓86が回転することにより、開口86aを通過する放射光が放射される特定箇所が図12の楕円環形状領域に含まれる複数箇所のいずれかに順次に切り替えられる。その結果、図12に斜線で示す楕円環形状の領域がパイロメータ81による温度測定の対象となるのである。
このようにしても、単一の受光センサー84に単一の広角レンズ系82を設けた1個のパイロメータ81によって複数箇所の温度を個別に測定しているため、パイロメータの機差を無くすことができことができ、半導体ウェハーWの異なる複数箇所の温度を非接触にて正確に測定することができる。
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態について説明する。図13は、第3実施形態のパイロメータ181の構造を示す図である。図13において、第1実施形態と同一の要素には同一の符号を付している。パイロメータ181は、広角レンズ系82と受光部183とを備える。広角レンズ系82は、第1実施形態と同様のものである。
受光部183は、1個の受光センサー84と、凹面鏡185と、回転窓186と、楕円マスク187と、を備える。受光センサー84は、広角レンズ系82によって導かれた光を受光してその強度に応じたレベルの電気信号を出力する。第3実施形態のパイロメータ181においても、単一の受光センサー84に対して単一の広角レンズ系82を設けており、半導体ウェハーWからの放射光が広角レンズ系82によって受光センサー84に導かれる。受光センサー84は、広角レンズ系82の中心軸に沿った線上に設置されている。
第3実施形態においては、楕円マスク187、回転窓186および凹面鏡185が、半導体ウェハーWの異なる複数箇所から放射されて広角レンズ系82によって導かれた放射光から当該複数箇所のうちの特定箇所から放射された放射光を選択して受光センサー84に導く光選択部として機能する。図14は、第3実施形態の回転窓186を示す平面図である。回転窓186は、半導体ウェハーWからの放射光に対して不透明な材質にて形成された回転自在な円形の板状部材である。回転窓186の一部には半導体ウェハーWからの放射光が通過する開口186aが形設されている。開口186aは、回転窓186の回転中心に対して偏心して設けられている。第3実施形態の開口186aは、第1実施形態の開口86aよりも大きい。
回転窓186と広角レンズ系82との間には楕円マスク187が設けられている。図15は、第3実施形態の楕円マスク187を示す図である。楕円マスク187は、赤外線を透過する材質(例えば、シリコン)にて形成された円形の板状部材である。楕円マスク187は、固定設置されており、回転しない。楕円マスク187の一方面のうち図15の斜線で示す領域には、赤外線に対して不透明な金属板が貼着されている。その結果、楕円マスク187には、楕円環状の放射光透過領域187aが形成されることとなる。広角レンズ系82によって楕円マスク187に導かれた放射光のうち放射光透過領域187aに到達した光のみが楕円マスク187を通過する。
楕円マスク187は、表面が広角レンズ系82に対向するように設置されている。回転窓186は、広角レンズ系82との間に楕円マスク187を挟み込み、表面が楕円マスク187に対向するように設置されている。回転窓186は回転モータ87によって回転される。また、回転窓186は、その回転中心を広角レンズ系82の中心軸が貫くように設けられている。回転モータ87が回転窓186を回転させることによって、偏心して設けられた開口186aも回転窓186の回転中心の周りで旋回することとなる。開口186aがいずれの位置であったとしても、楕円マスク187の放射光透過領域187aの一部と対向している。
凹面鏡185は、回転窓186を挟んで楕円マスク187と反対側に設けられている。凹面鏡185は、内面に金メッキが施された半楕円体(楕円体を半分に切断した形状)の反射鏡である。受光センサー84は、凹面鏡185の半楕円体の頂上部近傍に設けられている。図13に示すように、回転窓186の回転に伴う開口186aの位置の変化に関わらず、開口186aを通過した光は凹面鏡185の内面にて反射されて受光センサー84に導かれる。なお、凹面鏡185および受光センサー84は、回転窓186の回転に連動して回転しなくても良い。
第3実施形態においては、第2実施形態と同様に、保持部7に保持される半導体ウェハーWの斜め上方にパイロメータ181が設けられる(図11参照)。パイロメータ181の構造および設置位置を除く第3実施形態の残余の点は第1実施形態と同じである。
また、第3実施形態における半導体ウェハーWの処理手順についても第1実施形態と同様である。第3実施形態においても、ハロゲンランプHLからの光照射加熱によって昇温した半導体ウェハーWの表面から放射された放射光は、パイロメータ181に入射し、単一の広角レンズ系82によって受光部183に導かれる。単一の広角レンズ系82によって導かれた放射光のうち、楕円マスク187の放射光透過領域187aに到達した光は楕円マスク187を透過し、残りの光は楕円マスク187によって遮光される。楕円マスク187を透過した放射光のうち半導体ウェハーWの特定箇所から放射された光のみが回転窓186の開口186aを通過する。すなわち、開口186aを形設した回転窓186は、半導体ウェハーWの複数箇所から放射されて単一の広角レンズ系82によって導かれた放射光から当該複数箇所のうちの特定箇所から放射された放射光のみを選択する。回転窓186によって選択された特定箇所からの放射光は凹面鏡185によって受光センサー84に導かれ、その特定箇所の温度が求められる。
第3実施形態においても、回転モータ87によって回転窓186が回転される。これによって、温度測定される半導体ウェハーWの特定箇所が順次に切り替わる。但し、第3実施形態では、パイロメータ181が半導体ウェハーWの斜め上方に設けられるとともに、楕円環状の放射光透過領域187aを有する楕円マスク187が設けられている。パイロメータ181が半導体ウェハーWの斜め上方に設けられ、かつ、楕円マスク187が存在していない場合には、第2実施形態の図12に示したように、温度測定の対象となる領域が楕円環状となる。楕円マスク187は、図12の楕円環状領域のうち短径端部に位置する特定箇所から放射された放射光が透過する放射光透過領域187aの部位が放射光透過領域187aの長径端部となる向きに設置されている。これにより、第3実施形態のパイロメータ181によって測定領域のなる半導体ウェハーWの領域は、図12に示した楕円環状の測定領域の短径が長径に比較して相対的に拡張されたものとなり、第1実施形態と同様の円環形状の領域となる(図9参照)。
半導体ウェハーWの円環形状の領域に含まれる複数箇所から放射された放射光が赤外透過窓63を透過してパイロメータ181に入射し、広角レンズ系82によって受光部183に導かれる。それら複数箇所のうち特定箇所から放射された放射光のみが放射光透過領域187aおよび開口186aを通過して凹面鏡185によって受光センサー84に導かれる。回転窓186が回転することにより、開口186aを通過する放射光が放射される特定箇所が上記円環形状の領域に含まれる複数箇所のいずれかに順次に切り替えられる。その結果、図9に示す如き円環形状の領域がパイロメータ181による温度測定の対象となるのである。
このようにしても、単一の受光センサー84に単一の広角レンズ系82を設けた1個のパイロメータ181によって複数箇所の温度を個別に測定しているため、パイロメータの機差を無くすことができことができ、半導体ウェハーWの異なる複数箇所の温度を非接触にて正確に測定することができる。
<変形例>
以上、本発明の実施の形態について説明したが、この発明はその趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記各実施形態においては、チャンバー6の下方に光照射部4を設け、半導体ウェハーWの裏面に光を照射して加熱するバックサイドアニールを行っていたが、チャンバー6の上方に光照射部4を設け、パターン形成がなされた半導体ウェハーWの表面に光照射を行うようにしても良い。また、チャンバー6の下方にハロゲンランプHLを備えた光照射部4を設け、チャンバー6の上方にフラッシュランプを設けたフラッシュランプアニール装置に本発明に係る温度測定部8を設けるようにしても良い。チャンバー6の上方にランプを設ける場合には、第2実施形態および第3実施形態のように半導体ウェハーWの斜め上方にパイロメータを設けるのが好適である。
また、上記各実施形態においては、赤外透過窓63をシリコンにて形成していたが、これに限定されるものではなく、パイロメータ81,181の検出波長域の赤外線を透過する素材であれば良く、例えばゲルマニウム(Ge)またはサファイア(Al2O3)にて形成するようにしても良い。もっとも、シリコンの円板は比較的容易に入手できるため、製造コストの観点からはシリコンを用いるのが好ましい。また、光照射部4からの光照射が外乱とならなければ、赤外透過窓63を石英ガラスにて形成するようにしても良い。
また、赤外透過窓63を空冷するの代えて、水冷によって冷却するようにしても良い。水冷によって赤外透過窓63を冷却する場合にも、半導体ウェハーWから放射された赤外線が透過する150℃以下に冷却する。
また、パイロメータ81,181を半導体ウェハーWの下方または斜め下方に設置し、半導体ウェハーWの裏面の異なる複数箇所の温度を測定するようにしても良い。
また、温度補正部2において、棒状の光学部材であるレーザ光出射部25を回転させるのに代えて、レーザ光を2次元面内で(XY方向に)走査させる機構を用いるようにしても良い。このような機構としては、例えばガルバノミラーを用いることができる。ガルバノミラーを用いれば、半導体ウェハーWの全面の任意の箇所について温度補正を行うことができる。もっとも、上記各実施形態のレーザ光出射部25は、ハロゲンランプHLの配列の隙間を貫通するように設けられ、上段のハロゲンランプHLよりも上方からレーザ光を出射するため、ハロゲンランプHLと干渉するおそれがない。
また、本発明に係る熱処理装置によって処理対象となる基板は半導体ウェハーに限定されるものではなく、液晶表示装置などのフラットパネルディスプレイに用いるガラス基板や太陽電池用の基板であっても良い。さらに、本発明に係る温度測定装置である温度測定部8によって測定対象となるのは半導体ウェハーやガラス基板に限定されるものではなく、従来より放射温度計によって非接触にて温度測定される基材(例えば、高温の金属板やセラミックスなど)であっても良い。