JP6574344B2 - 熱処理装置および熱処理方法 - Google Patents

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Description

本発明は、半導体ウェハー等の薄板状精密電子基板(以下、単に「基板」と称する)にフラッシュ光を照射することによって該基板を加熱する熱処理装置および熱処理方法に関する。
半導体デバイスの製造プロセスにおいて、不純物導入は半導体ウェハー内にpn接合を形成するための必須の工程である。現在、不純物導入は、イオン打ち込み法とその後のアニール法によってなされるのが一般的である。イオン打ち込み法は、ボロン(B)、ヒ素(As)、リン(P)といった不純物の元素をイオン化させて高加速電圧で半導体ウェハーに衝突させて物理的に不純物注入を行う技術である。注入された不純物はアニール処理によって活性化される。この際に、アニール時間が数秒程度以上であると、打ち込まれた不純物が熱によって深く拡散し、その結果接合深さが要求よりも深くなり過ぎて良好なデバイス形成に支障が生じるおそれがある。
そこで、極めて短時間で半導体ウェハーを加熱するアニール技術として、近年フラッシュランプアニール(FLA)が注目されている。フラッシュランプアニールは、キセノンフラッシュランプ(以下、単に「フラッシュランプ」とするときにはキセノンフラッシュランプを意味する)を使用して半導体ウェハーの表面にフラッシュ光を照射することにより、不純物が注入された半導体ウェハーの表面のみを極めて短時間(数ミリ秒以下)に昇温させる熱処理技術である。
キセノンフラッシュランプの放射分光分布は紫外域から近赤外域であり、従来のハロゲンランプよりも波長が短く、シリコンの半導体ウェハーの基礎吸収帯とほぼ一致している。よって、キセノンフラッシュランプから半導体ウェハーにフラッシュ光を照射したときには、透過光が少なく半導体ウェハーを急速に昇温することが可能である。また、数ミリ秒以下の極めて短時間のフラッシュ光照射であれば、半導体ウェハーの表面近傍のみを選択的に昇温できることも判明している。このため、キセノンフラッシュランプによる極短時間の昇温であれば、不純物を深く拡散させることなく、不純物活性化のみを実行することができるのである。
フラッシュ加熱に限らず熱処理では半導体ウェハーの温度を適切に管理することが重要であり、そのためには熱処理中の半導体ウェハーの温度を正確に測定する必要がある。典型的には、半導体ウェハーの熱処理では非接触の放射温度計によって温度測定が行われる。放射温度計で正確に温度測定を行うためには、被測定物体の放射率を知る必要がある。ところが、半導体ウェハーの放射率は、表面に形成されているパターンや膜によって大きく異なることが知られている。このため、従来では、処理対象となる半導体ウェハーの種類毎に放射率を設定した放射率テーブルを装置のコントローラに保存しておき、処理の都度適切な放射率を選択するようにしていた。
処理毎に放射率を選択することは煩雑である。特許文献1には、熱処理を実行する前のアライメント部にて半導体ウェハーの反射率を測定し、その反射率から放射率を求めてフラッシュ加熱時の半導体ウェハーの表面温度を算定することが開示されている。特許文献1に開示される技術によれば、半導体ウェハーの放射率が自動で算定されるため、処理毎に放射率を選択する必要は無い。
特開2005−207997号公報
しかしながら、特許文献1に開示される技術では、常温(室温)のアライメント部にて半導体ウェハーの反射率を測定し、その測定値から放射率を求めている。シリコンの半導体ウェハーの放射率には温度依存性があることが知られており、常温で測定された反射率から算定された放射率を用いて温度測定を行うと誤差が生じるおそれがある。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、熱処理時の基板の温度を正確に測定することができる熱処理装置および熱処理方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、基板にフラッシュ光を照射することによって該基板を加熱する熱処理装置において、基板を収容するチャンバーと、前記チャンバー内にて基板を保持する保持部と、前記保持部に保持された基板にフラッシュ光を照射するフラッシュランプと、前記フラッシュランプからフラッシュ光を照射する前に前記基板に光を照射して前記基板を予備加熱する連続点灯ランプと、前記基板の表面から到達する光を受光する光検出素子と、前記光検出素子によって受光された光の強度を測定する光強度測定部と、前記基板の表面にパルス光を照射する参照光源と、前記保持部に保持された反射率が既知の基準基板を前記連続点灯ランプによって当該基準基板の透過率がゼロとなる所定温度に加熱しつつ、前記参照光源から前記基準基板にパルス光を照射したときに前記基準基板の表面で反射されて前記光検出素子によって受光された反射光の強度と、前記保持部に保持された処理対象基板を前記連続点灯ランプによって前記所定温度に加熱しつつ、前記参照光源から前記処理対象基板にパルス光を照射したときに前記処理対象基板の表面で反射されて前記光検出素子によって受光された反射光の強度と、の比較により得られた前記処理対象基板の反射率から前記処理対象基板の放射率を算定する放射率算定部と、前記フラッシュランプから前記処理対象基板にフラッシュ光を照射したときに前記処理対象基板の表面から放射されて前記光検出素子によって受光された放射光の強度と、前記放射率算定部によって算定された前記処理対象基板の放射率とに基づいて前記処理対象基板の表面の温度を算定する温度算定部と、を備えることを特徴とする。
また、請求項2の発明は、請求項1の発明に係る熱処理装置において、前記温度算定部は、前記フラッシュランプによるフラッシュ光照射が開始された後に前記光強度測定部によって時系列的に測定された前記処理対象基板の表面からの放射光の強度に基づいて前記基板の表面温度履歴を求めることを特徴とする。
また、請求項3の発明は、請求項1または請求項2の発明に係る熱処理装置において、前記光検出素子はInSb光導電素子を含み、前記チャンバーには、前記フラッシュランプから出射されたフラッシュ光を透過する石英窓を設けることを特徴とする。
また、請求項4の発明は、基板にフラッシュ光を照射することによって該基板を加熱する熱処理方法において、反射率が既知の基準基板を連続点灯ランプからの光照射によって当該基準基板の透過率がゼロとなる所定温度に加熱しつつ、前記基準基板にパルス光を照射したときに前記基準基板の表面で反射された反射光の強度を測定する第1反射強度測定工程と、処理対象基板を前記連続点灯ランプからの光照射によって前記所定温度に加熱しつつ、前記処理対象基板にパルス光を照射したときに前記処理対象基板の表面で反射された反射光の強度を測定する第2反射強度測定工程と、第1反射強度測定工程および第2反射強度測定工程にて得られた反射光の強度の比較により得られた前記処理対象基板の反射率から前記処理対象基板の放射率を算定する放射率算定工程と、前記処理対象基板にフラッシュ光を照射したときに前記処理対象基板の表面から放射された放射光の強度と、前記放射率算定工程にて算定された前記処理対象基板の放射率とに基づいて前記処理対象基板の表面の温度を算定する温度算定工程と、を備えることを特徴とする。

また、請求項5の発明は、請求項4の発明に係る熱処理方法において、前記温度算定工程では、フラッシュ光照射が開始された後に時系列的に測定された前記処理対象基板の表面からの放射光の強度に基づいて前記基板の表面温度履歴を求めることを特徴とする。
請求項1から請求項3の発明によれば、透過率がゼロとなる温度で処理対象基板の反射率を求め、その反射率から放射率を求めているため、正確に放射率を求めることができ、その結果熱処理時の基板の温度を正確に測定することができる。
特に、請求項3の発明によれば、光検出素子はInSb光導電素子を含み、チャンバーには、フラッシュランプから出射されたフラッシュ光を透過する石英窓を設けるため、フラッシュ光に含まれる光検出素子の測定波長域の成分は石英窓によってカットされ、フラッシュ光による測定への影響を排除することができる。
請求項4および請求項5の発明によれば、透過率がゼロとなる温度で処理対象基板の反射率を求め、その反射率から放射率を求めているため、正確に放射率を求めることができ、その結果熱処理時の基板の温度を正確に測定することができる。
本発明に係る熱処理装置の構成を示す縦断面図である。 保持部の全体外観を示す斜視図である。 保持部を上面から見た平面図である。 保持部を側方から見た側面図である。 移載機構の平面図である。 移載機構の側面図である。 複数のハロゲンランプの配置を示す平面図である。 光強度測定部および制御部の構成を示すブロック図である。 ベアウェハーの反射強度を測定する手順を示すフローチャートである。 参照光源から出力されるパルス光の波形を示す図である。 ベアウェハーについての光の強度プロファイルを示す図である。 処理対象となる半導体ウェハーの処理手順を示すフローチャートである。 処理対象となる半導体ウェハーの処理手順を示すフローチャートである。 処理対象となる半導体ウェハーについての光の強度プロファイルを示す図である。 反射率と反射光の強度との相関を示す図である。 黒体温度テーブルおよび変換テーブルの一例を示す図である。 処理対象となる半導体ウェハーの表面の温度プロファイルを示す図である。
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本発明に係る熱処理装置1の構成を示す縦断面図である。本実施形態の熱処理装置1は、基板として円板形状の半導体ウェハーWに対してフラッシュ光照射を行うことによってその半導体ウェハーWを加熱するフラッシュランプアニール装置である。処理対象となる半導体ウェハーWのサイズは特に限定されるものではないが、例えばφ300mmやφ450mmである。熱処理装置1に搬入される前の半導体ウェハーWには不純物が注入されており、熱処理装置1による加熱処理によって注入された不純物の活性化処理が実行される。なお、図1および以降の各図においては、理解容易のため、必要に応じて各部の寸法や数を誇張または簡略化して描いている。
熱処理装置1は、半導体ウェハーWを収容するチャンバー6と、複数のフラッシュランプFLを内蔵するフラッシュ加熱部5と、複数のハロゲンランプHLを内蔵するハロゲン加熱部4と、を備える。チャンバー6の上側にフラッシュ加熱部5が設けられるとともに、下側にハロゲン加熱部4が設けられている。また、熱処理装置1は、チャンバー6の内部に、半導体ウェハーWを水平姿勢に保持する保持部7と、保持部7と装置外部との間で半導体ウェハーWの受け渡しを行う移載機構10と、を備える。また、熱処理装置1は、熱処理中の半導体ウェハーWの温度を非接触で測定するための光検出素子150および参照光源170を備える。さらに、熱処理装置1は、ハロゲン加熱部4、フラッシュ加熱部5およびチャンバー6に設けられた各動作機構を制御して半導体ウェハーWの熱処理を実行させる制御部3を備える。
チャンバー6は、筒状のチャンバー側部61の上下に石英製のチャンバー窓を装着して構成されている。チャンバー側部61は上下が開口された概略筒形状を有しており、上側開口には上側チャンバー窓63が装着されて閉塞され、下側開口には下側チャンバー窓64が装着されて閉塞されている。チャンバー6の天井部を構成する上側チャンバー窓63は、石英により形成された円板形状部材であり、フラッシュ加熱部5から出射されたフラッシュ光をチャンバー6内に透過する石英窓として機能する。また、チャンバー6の床部を構成する下側チャンバー窓64も、石英により形成された円板形状部材であり、ハロゲン加熱部4からの光をチャンバー6内に透過する石英窓として機能する。
また、チャンバー側部61の内側の壁面の上部には反射リング68が装着され、下部には反射リング69が装着されている。反射リング68,69は、ともに円環状に形成されている。上側の反射リング68は、チャンバー側部61の上側から嵌め込むことによって装着される。一方、下側の反射リング69は、チャンバー側部61の下側から嵌め込んで図示省略のビスで留めることによって装着される。すなわち、反射リング68,69は、ともに着脱自在にチャンバー側部61に装着されるものである。チャンバー6の内側空間、すなわち上側チャンバー窓63、下側チャンバー窓64、チャンバー側部61および反射リング68,69によって囲まれる空間が熱処理空間65として規定される。
チャンバー側部61に反射リング68,69が装着されることによって、チャンバー6の内壁面に凹部62が形成される。すなわち、チャンバー側部61の内壁面のうち反射リング68,69が装着されていない中央部分と、反射リング68の下端面と、反射リング69の上端面とで囲まれた凹部62が形成される。凹部62は、チャンバー6の内壁面に水平方向に沿って円環状に形成され、半導体ウェハーWを保持する保持部7を囲繞する。
チャンバー側部61および反射リング68,69は、強度と耐熱性に優れた金属材料(例えば、ステンレススチール)にて形成されている。また、反射リング68,69の内周面は電解ニッケルメッキによって鏡面とされている。
また、チャンバー側部61には、チャンバー6に対して半導体ウェハーWの搬入および搬出を行うための搬送開口部(炉口)66が形設されている。搬送開口部66は、ゲートバルブ185によって開閉可能とされている。搬送開口部66は凹部62の外周面に連通接続されている。このため、ゲートバルブ185が搬送開口部66を開放しているときには、搬送開口部66から凹部62を通過して熱処理空間65への半導体ウェハーWの搬入および熱処理空間65からの半導体ウェハーWの搬出を行うことができる。また、ゲートバルブ185が搬送開口部66を閉鎖するとチャンバー6内の熱処理空間65が密閉空間とされる。
また、チャンバー6の内壁上部には熱処理空間65に処理ガス(本実施形態では窒素ガス(N))を供給するガス供給孔81が形設されている。ガス供給孔81は、凹部62よりも上側位置に形設されており、反射リング68に設けられていても良い。ガス供給孔81はチャンバー6の側壁内部に円環状に形成された緩衝空間82を介してガス供給管83に連通接続されている。ガス供給管83は窒素ガス供給源85に接続されている。また、ガス供給管83の経路途中にはバルブ84が介挿されている。バルブ84が開放されると、窒素ガス供給源85から緩衝空間82に窒素ガスが送給される。緩衝空間82に流入した窒素ガスは、ガス供給孔81よりも流体抵抗の小さい緩衝空間82内を拡がるように流れてガス供給孔81から熱処理空間65内へと供給される。なお、処理ガスは窒素ガスに限定されるものではなく、アルゴン(Ar)、ヘリウム(He)などの不活性ガス、または、酸素(O)、水素(H)、塩素(Cl)、塩化水素(HCl)、オゾン(O)、アンモニア(NH)などの反応性ガスであっても良い。
一方、チャンバー6の内壁下部には熱処理空間65内の気体を排気するガス排気孔86が形設されている。ガス排気孔86は、凹部62よりも下側位置に形設されており、反射リング69に設けられていても良い。ガス排気孔86はチャンバー6の側壁内部に円環状に形成された緩衝空間87を介してガス排気管88に連通接続されている。ガス排気管88は排気部190に接続されている。また、ガス排気管88の経路途中にはバルブ89が介挿されている。バルブ89が開放されると、熱処理空間65の気体がガス排気孔86から緩衝空間87を経てガス排気管88へと排出される。なお、ガス供給孔81およびガス排気孔86は、チャンバー6の周方向に沿って複数設けられていても良いし、スリット状のものであっても良い。また、窒素ガス供給源85および排気部190は、熱処理装置1に設けられた機構であっても良いし、熱処理装置1が設置される工場のユーティリティであっても良い。
また、搬送開口部66の先端にも熱処理空間65内の気体を排出するガス排気管191が接続されている。ガス排気管191はバルブ192を介して排気部190に接続されている。バルブ192を開放することによって、搬送開口部66を介してチャンバー6内の気体が排気される。
さらに、チャンバー6の内壁上部には、半導体ウェハーWの表面から到達する光を受光する光検出素子150、および、半導体ウェハーWの表面にパルス光を照射する参照光源170が設けられている。図1に示すように、光検出素子150および参照光源170は、保持部7よりも上側、つまり保持部7に保持された半導体ウェハーWの表面側に設けられている。また、光検出素子150および参照光源170は、ともに先端が保持部7に保持された半導体ウェハーWの表面に向かうように水平面から傾斜してチャンバー6の内壁に設けられている。光検出素子150および参照光源170の水平面に対する傾斜角度は等しく(本実施形態では8°)、参照光源170から半導体ウェハーWの表面に投射された光の反射光が光検出素子150によって受光されるように光検出素子150および参照光源170は対向配置されている。
本実施形態においては、光検出素子150として高速で測定可能なInSb(インジウム・アンチモン)放射温度計を採用しているが、これに限定されるものではなく、例えばCCD、フォトダイオードなどの応答速度の速い素子を用いるようにしても良い。また、参照光源170としてはパルス発振によってパルス光を投射可能なレーザー光源を採用しているが、これに限定されるものではなく、例えば連続点灯のフィラメント光源に光を断続的に遮光するチョッパー機構を組み合わせてパルス光を投射する機構を用いるようにしても良い。
図2は、保持部7の全体外観を示す斜視図である。また、図3は保持部7を上面から見た平面図であり、図4は保持部7を側方から見た側面図である。保持部7は、基台リング71、連結部72およびサセプター74を備えて構成される。基台リング71、連結部72およびサセプター74はいずれも石英にて形成されている。すなわち、保持部7の全体が石英にて形成されている。
基台リング71は円環形状の石英部材である。基台リング71は凹部62の底面に載置されることによって、チャンバー6の壁面に支持されることとなる(図1参照)。円環形状を有する基台リング71の上面に、その周方向に沿って複数の連結部72(本実施形態では4個)が立設される。連結部72も石英の部材であり、溶接によって基台リング71に固着される。なお、基台リング71の形状は、円環形状から一部が欠落した円弧状であっても良い。
平板状のサセプター74は基台リング71に設けられた4個の連結部72によって支持される。サセプター74は石英にて形成された略円形の平板状部材である。サセプター74の直径は半導体ウェハーWの直径よりも大きい。すなわち、サセプター74は、半導体ウェハーWよりも大きな平面サイズを有する。サセプター74の上面には複数個(本実施形態では5個)のガイドピン76が立設されている。5個のガイドピン76はサセプター74の外周円と同心円の周上に沿って設けられている。5個のガイドピン76を配置した円の径は半導体ウェハーWの径よりも若干大きい。各ガイドピン76も石英にて形成されている。なお、ガイドピン76は、サセプター74と一体に石英のインゴットから加工するようにしても良いし、別途に加工したものをサセプター74に溶接等によって取り付けるようにしても良い。
基台リング71に立設された4個の連結部72とサセプター74の周縁部の下面とが溶接によって固着される。すなわち、サセプター74と基台リング71とは連結部72によって固定的に連結されており、保持部7は石英の一体成形部材となる。このような保持部7の基台リング71がチャンバー6の壁面に支持されることによって、保持部7がチャンバー6に装着される。保持部7がチャンバー6に装着された状態においては、略円板形状のサセプター74は水平姿勢(法線が鉛直方向と一致する姿勢)となる。チャンバー6に搬入された半導体ウェハーWは、チャンバー6に装着された保持部7のサセプター74の上に水平姿勢にて載置されて保持される。半導体ウェハーWは、5個のガイドピン76によって形成される円の内側に載置されることにより、水平方向の位置ずれが防止される。なお、ガイドピン76の個数は5個に限定されるものではなく、半導体ウェハーWの位置ずれを防止できる数であれば良い。
また、図2および図3に示すように、サセプター74には、上下に貫通して開口部78および切り欠き部77が形成されている。切り欠き部77は、熱電対を使用した接触式温度計130のプローブ先端部を通すために設けられている。一方、開口部78は、放射温度計120がサセプター74に保持された半導体ウェハーWの下面から放射される放射光(赤外光)を受光するために設けられている。さらに、サセプター74には、後述する移載機構10のリフトピン12が半導体ウェハーWの受け渡しのために貫通する4個の貫通孔79が穿設されている。なお、放射温度計120および接触式温度計130は、予備加熱時等に半導体ウェハーWの全体の温度を計測するものであって、フラッシュ加熱時における半導体ウェハーWの表面温度を計測するものではない。
図5は、移載機構10の平面図である。また、図6は、移載機構10の側面図である。移載機構10は、2本の移載アーム11を備える。移載アーム11は、概ね円環状の凹部62に沿うような円弧形状とされている。それぞれの移載アーム11には2本のリフトピン12が立設されている。各移載アーム11は水平移動機構13によって回動可能とされている。水平移動機構13は、一対の移載アーム11を保持部7に対して半導体ウェハーWの移載を行う移載動作位置(図5の実線位置)と保持部7に保持された半導体ウェハーWと平面視で重ならない退避位置(図5の二点鎖線位置)との間で水平移動させる。水平移動機構13としては、個別のモータによって各移載アーム11をそれぞれ回動させるものであっても良いし、リンク機構を用いて1個のモータによって一対の移載アーム11を連動させて回動させるものであっても良い。
また、一対の移載アーム11は、昇降機構14によって水平移動機構13とともに昇降移動される。昇降機構14が一対の移載アーム11を移載動作位置にて上昇させると、計4本のリフトピン12がサセプター74に穿設された貫通孔79(図2,3参照)を通過し、リフトピン12の上端がサセプター74の上面から突き出る。一方、昇降機構14が一対の移載アーム11を移載動作位置にて下降させてリフトピン12を貫通孔79から抜き取り、水平移動機構13が一対の移載アーム11を開くように移動させると各移載アーム11が退避位置に移動する。一対の移載アーム11の退避位置は、保持部7の基台リング71の直上である。基台リング71は凹部62の底面に載置されているため、移載アーム11の退避位置は凹部62の内側となる。なお、移載機構10の駆動部(水平移動機構13および昇降機構14)が設けられている部位の近傍にも図示省略の排気機構が設けられており、移載機構10の駆動部周辺の雰囲気がチャンバー6の外部に排出されるように構成されている。
図1に戻り、チャンバー6の上方に設けられたフラッシュ加熱部5は、筐体51の内側に、複数本(本実施形態では30本)のキセノンフラッシュランプFLからなる光源と、その光源の上方を覆うように設けられたリフレクタ52と、を備えて構成される。また、フラッシュ加熱部5の筐体51の底部にはランプ光放射窓53が装着されている。フラッシュ加熱部5の床部を構成するランプ光放射窓53は、石英により形成された板状の石英窓である。フラッシュ加熱部5がチャンバー6の上方に設置されることにより、ランプ光放射窓53が上側チャンバー窓63と相対向することとなる。フラッシュランプFLはチャンバー6の上方からランプ光放射窓53および上側チャンバー窓63を介して熱処理空間65にフラッシュ光を照射する。
複数のフラッシュランプFLは、それぞれが長尺の円筒形状を有する棒状ランプであり、それぞれの長手方向が保持部7に保持される半導体ウェハーWの主面に沿って(つまり水平方向に沿って)互いに平行となるように平面状に配列されている。よって、フラッシュランプFLの配列によって形成される平面も水平面である。
キセノンフラッシュランプFLは、その内部にキセノンガスが封入されその両端部にコンデンサーに接続された陽極および陰極が配設された棒状のガラス管(放電管)と、該ガラス管の外周面上に付設されたトリガー電極とを備える。キセノンガスは電気的には絶縁体であることから、コンデンサーに電荷が蓄積されていたとしても通常の状態ではガラス管内に電気は流れない。しかしながら、トリガー電極に高電圧を印加して絶縁を破壊した場合には、コンデンサーに蓄えられた電気がガラス管内に瞬時に流れ、そのときのキセノンの原子あるいは分子の励起によって光が放出される。このようなキセノンフラッシュランプFLにおいては、予めコンデンサーに蓄えられていた静電エネルギーが0.1ミリセカンドないし100ミリセカンドという極めて短い光パルスに変換されることから、ハロゲンランプHLの如き連続点灯の光源に比べて極めて強い光を照射し得るという特徴を有する。すなわち、フラッシュランプFLは、1秒未満の極めて短い時間で瞬間的に発光するパルス発光ランプである。なお、フラッシュランプFLの発光時間は、フラッシュランプFLに電力供給を行うランプ電源のコイル定数によって調整することができる。
また、リフレクタ52は、複数のフラッシュランプFLの上方にそれら全体を覆うように設けられている。リフレクタ52の基本的な機能は、複数のフラッシュランプFLから出射されたフラッシュ光を熱処理空間65の側に反射するというものである。リフレクタ52はアルミニウム合金板にて形成されており、その表面(フラッシュランプFLに臨む側の面)はブラスト処理により粗面化加工が施されている。
チャンバー6の下方に設けられたハロゲン加熱部4は、筐体41の内側に複数本(本実施形態では40本)のハロゲンランプHLを内蔵している。ハロゲン加熱部4は、複数のハロゲンランプHLによってチャンバー6の下方から下側チャンバー窓64を介して熱処理空間65への光照射を行って半導体ウェハーWを加熱する光照射部である。
図7は、複数のハロゲンランプHLの配置を示す平面図である。40本のハロゲンランプHLは上下2段に分けて配置されている。保持部7に近い上段に20本のハロゲンランプHLが配設されるとともに、上段よりも保持部7から遠い下段にも20本のハロゲンランプHLが配設されている。各ハロゲンランプHLは、長尺の円筒形状を有する棒状ランプである。上段、下段ともに20本のハロゲンランプHLは、それぞれの長手方向が保持部7に保持される半導体ウェハーWの主面に沿って(つまり水平方向に沿って)互いに平行となるように配列されている。よって、上段、下段ともにハロゲンランプHLの配列によって形成される平面は水平面である。
また、図7に示すように、上段、下段ともに保持部7に保持される半導体ウェハーWの中央部に対向する領域よりも周縁部に対向する領域におけるハロゲンランプHLの配設密度が高くなっている。すなわち、上下段ともに、ランプ配列の中央部よりも周縁部の方がハロゲンランプHLの配設ピッチが短い。このため、ハロゲン加熱部4からの光照射による加熱時に温度低下が生じやすい半導体ウェハーWの周縁部により多い光量の照射を行うことができる。
また、上段のハロゲンランプHLからなるランプ群と下段のハロゲンランプHLからなるランプ群とが格子状に交差するように配列されている。すなわち、上段に配置された20本のハロゲンランプHLの長手方向と下段に配置された20本のハロゲンランプHLの長手方向とが互いに直交するように計40本のハロゲンランプHLが配設されている。
ハロゲンランプHLは、ガラス管内部に配設されたフィラメントに通電することでフィラメントを白熱化させて発光させるフィラメント方式の光源である。ガラス管の内部には、窒素やアルゴン等の不活性ガスにハロゲン元素(ヨウ素、臭素等)を微量導入した気体が封入されている。ハロゲン元素を導入することによって、フィラメントの折損を抑制しつつフィラメントの温度を高温に設定することが可能となる。したがって、ハロゲンランプHLは、通常の白熱電球に比べて寿命が長くかつ強い光を連続的に照射できるという特性を有する。すなわち、ハロゲンランプHLは少なくとも1秒以上連続して発光する連続点灯ランプである。また、ハロゲンランプHLは棒状ランプであるため長寿命であり、ハロゲンランプHLを水平方向に沿わせて配置することにより上方の半導体ウェハーWへの放射効率が優れたものとなる。
また、ハロゲン加熱部4の筐体41内にも、2段のハロゲンランプHLの下側にリフレクタ43が設けられている(図1)。リフレクタ43は、複数のハロゲンランプHLから出射された光を熱処理空間65の側に反射する。
図8は、光検出素子150によって受光された光の強度を測定する光強度測定部160および制御部3の構成を示すブロック図である。光検出素子150は、チャンバー6の内壁上部に設置されており、保持部7に保持された半導体ウェハーWの表面から到達する光を受光する。本実施形態では、光検出素子150にInSb放射温度計を用いており、その測定波長域は5μm以上である。なお、光検出素子150に所定波長域(例えば、光検出素子150の測定波長域である5μm以上)の赤外光のみを選択的に透過するフィルターを設けるようにしても良い。
光検出素子150は、受光した光の強度に応じた抵抗変化を発生する。InSb放射温度計を用いた光検出素子150は、応答時間が極めて短く高速測定が可能である。光検出素子150は光強度測定部160と電気的に接続されており、受光に応答して生じた信号を光強度測定部160に伝達する。
光強度測定部160は、信号変換回路161、増幅回路162、高速A/Dコンバータ163およびCPU164を備える。信号変換回路161は、光検出素子150にて発生した抵抗変化を電流変化、電圧変化の順に信号変換を行い、最終的に取り扱いの容易な電圧の信号に変換する回路である。信号変換回路161は、例えばオペアンプを用いて構成することができる。
増幅回路162は、信号変換回路161から出力された電圧信号を増幅して高速A/Dコンバータ163に出力する。高速A/Dコンバータ163は、増幅回路162によって増幅された電圧信号をデジタル信号に変換する。CPU164は、演算処理を行う回路であり、予め設定された処理プログラムを実行することによって、高速A/Dコンバータ163から出力されたデジタル信号を所定間隔でサンプリングして図示省略の記憶部(例えば、メモリ)に順次格納する。すなわち、光強度測定部160は、光検出素子150から伝達された信号のレベルを時系列的に測定して複数の信号レベルデータを取得する。光強度測定部160のCPU164を光検出素子150からの信号のサンプリング処理に特化したものとすることにより、サンプリング間隔を数マイクロ秒程度とすることができる。なお、CPU164、高速A/Dコンバータ163、メモリなどを1つのワンチップマイコンに組み込んでも良い。
光強度測定部160のCPU164は制御部3と通信回線を介して接続されている。制御部3は、熱処理装置1に設けられた上記の種々の動作機構を制御する。制御部3のハードウェアとしての構成は一般的なコンピュータと同様である。すなわち、制御部3は、各種演算処理を行う回路であるCPU、基本プログラムを記憶する読み出し専用のメモリであるROM、各種情報を記憶する読み書き自在のメモリであるRAMおよび制御用ソフトウェアやデータなどを記憶しておく磁気ディスク31を備えて構成される。また、制御部3は参照光源170および表示部35と接続されており、参照光源170の動作を制御するとともに、表示部35に演算結果等を表示することができる。表示部35は、例えば液晶ディスプレイ等を用いて構成すれば良い。
制御部3は、汎用処理を行うことが可能であるものの、光強度測定部160のCPU164ほど短時間間隔でサンプリングを行うことはできない。CPU164によってメモリに格納された信号レベルデータは制御部3に転送されて磁気ディスク31に記憶される。また、制御部3は、放射率算定部33および温度算定部34を備える。放射率算定部33および温度算定部34は、制御部3のCPUが所定の処理プログラムを実行することによって実現される機能処理部であり、その処理内容についてはさらに後述する。なお、光強度測定部160と制御部3とを接続する通信回線は、シリアル通信であっても良いし、パラレル通信であっても良い。
上記の構成以外にも熱処理装置1は、半導体ウェハーWの熱処理時にハロゲンランプHLおよびフラッシュランプFLから発生する熱エネルギーによるハロゲン加熱部4、フラッシュ加熱部5およびチャンバー6の過剰な温度上昇を防止するため、様々な冷却用の構造を備えている。例えば、チャンバー6の壁体には水冷管(図示省略)が設けられている。また、ハロゲン加熱部4およびフラッシュ加熱部5は、内部に気体流を形成して排熱する空冷構造とされている。また、上側チャンバー窓63とランプ光放射窓53との間隙にも空気が供給され、フラッシュ加熱部5および上側チャンバー窓63を冷却する。
次に、熱処理装置1における半導体ウェハーWの処理手順について説明する。ここで処理対象となる半導体ウェハーWはイオン注入法により不純物(イオン)が添加されたシリコンの半導体基板である。その添加された不純物の活性化が熱処理装置1によるフラッシュ光照射加熱処理(アニール)により実行される。以下に説明する熱処理装置1の処理手順は、制御部3が熱処理装置1の各動作機構を制御することにより進行する。
まず、処理対象となる半導体ウェハーWの処理に先立って、放射率算定の基礎となるベアウェハーの反射強度を測定しておく。図9は、ベアウェハーの反射強度を測定する手順を示すフローチャートである。この測定は、処理対象となる半導体ウェハーWのロットの処理を開始する前(例えば、メンテナンス時等)に一度行っておけば足りる。
装置外部の搬送ロボットまたは手動によりベアウェハーがチャンバー6内の熱処理空間65に搬入される(ステップS11)。ベアウェハーとは、処理対象となる半導体ウェハーWと同じシリコンのウェハーであるが、パターン形成も成膜処理も行われていないウェハーである。このような如何なる処理も施されていないベアウェハーについては、反射率や放射率等の種々の物性値が既知である。チャンバー6内に搬入されたベアウェハーは、保持部7のサセプター74に載置されて保持される。
次に、ハロゲン加熱部4の40本のハロゲンランプHLが点灯してサセプター74に保持されたベアウェハーが加熱される(ステップS12)。ハロゲンランプHLから出射されたハロゲン光は、石英にて形成された下側チャンバー窓64およびサセプター74を透過してベアウェハーに照射される。ハロゲンランプHLからの光照射を受けることによってベアウェハーの温度が上昇する。
ベアウェハーの温度は接触式温度計130によって測定されている。すなわち、熱電対を内蔵する接触式温度計130が保持部7に保持されたベアウェハーの下面にサセプター74の切り欠き部77を介して接触して昇温中のウェハー温度を測定する。測定されたベアウェハーの温度は制御部3に伝達される。制御部3は、接触式温度計130による接触結果に基づいて、ベアウェハーの温度が後述する予備加熱温度T1となるようにハロゲンランプHLの出力を制御する。本実施形態においては、予備加熱温度T1は600℃である。
続いて、参照光源170がベアウェハーの表面にパルス光を照射する(ステップS13)。図10は、参照光源170から出力されるパルス光の波形を示す図である。同図において、横軸には時刻を示し、縦軸には光の強度を示す。図10に示すように、参照光源170は、矩形波のパルス光を出射する。すなわち、参照光源170は、一定強度の光をパルス幅に相当する時間だけ出射した後、光の出射をパルス間隔に相当する時間だけ停止することを繰り返す。パルス幅に相当する時間およびパルス間隔に相当する時間はいずれも1ミリ秒未満である。また、参照光源170が出射するパルス光の波長は、光検出素子150の測定波長域に対応する5μm以上である(本実施形態では5μm)。
参照光源170は、予備加熱温度T1に加熱されているベアウェハーの表面にパルス光を照射する。参照光源170から照射されたパルス光はベアウェハーの表面で反射し、その反射光は光検出素子150へと向かい、光検出素子150によって受光される。また、予備加熱温度T1に加熱されているベアウェハー自体からも、その表面温度に応じた強度の放射光が放射されており、光検出素子150はそのようなベアウェハーからの放射光も受光することとなる。そして、光検出素子150が受光した光の強度が光強度測定部160によって測定される。
より詳細には、光検出素子150は、受光した光の強度に応じた抵抗変化を発生する。光検出素子150にて発生した抵抗変化は信号変換回路161によって電流変化、電圧変化の順に信号変換が行われ、最終的に取り扱いの容易な電圧信号に変換される。信号変換回路161から出力された電圧信号は、増幅回路162によって増幅された後、高速A/Dコンバータ163によってコンピュータが取り扱うのに適したデジタル信号に変換される。そして、高速A/Dコンバータ163から出力されるデジタル信号のレベルがCPU164への入力電圧となり、これが光検出素子150の出力として取得される。光強度測定部160のCPU164が取得した信号のレベルは、光検出素子150が受光した光の強度を示すものであり、その信号レベルのデータが制御部3に伝達される。制御部3は、伝達された光検出素子150の出力信号レベルを磁気ディスク31などの記憶部に格納する。
このようにして光強度測定部160による光強度の測定が1回実行される。そして、予め定められた所定時間が経過するまでの間、光強度測定部160による光強度の測定が複数回繰り返される。すなわち、光検出素子150が受光した光の強度が時系列的にサンプリングされることとなる。なお、サンプリングを行う所定時間としては、ベアウェハーの温度が予備加熱温度T1に維持されている期間内の適宜の時間とすれば良い。
光強度測定部160が光強度を時系列的にサンプリングすることによって、光検出素子150が受光した光の強度プロファイルを取得することができる。図11は、ベアウェハーについて光検出素子150が受光した光の強度プロファイルを示す図である。ここで、光検出素子150が受光する光には、参照光源170から照射されてベアウェハーの表面で反射された反射光と、予備加熱温度T1に昇温しているベアウェハー自体から放射された放射光とが含まれる。すなわち、光強度測定部160が測定する光の強度は、ベアウェハーによる反射光の強度と、ベアウェハーから放射された放射光の強度との合計となる。
ベアウェハーの温度は一定の予備加熱温度T1に維持されているため、そのベアウェハーの表面から放射される放射光の強度も一定である。これに対して、参照光源170から照射されてベアウェハーの表面で反射された反射光の強度はゼロと所定値との間で周期的に変動する。すなわち、図11に示す光強度プロファイルにおける強度の変動は、全てベアウェハーの表面で反射された反射光の強度変動によるものである。従って、図11の光強度プロファイルにおける強度の変動の大きさであるパルス高さPbは、予備加熱温度T1に昇温されているベアウェハーによるパルス光の反射光の強度を示すものである。
制御部3は、光強度測定部160が光強度を時系列的にサンプリングすることによって取得された図11に示す如き光強度プロファイルからパルス高さPbを計測し(ステップS14)、その計測したパルス高さPbを磁気ディスク31などの記憶部に保存する(ステップS15)。このようして、パルス高さPbの計測、つまり予備加熱温度T1のベアウェハーの反射強度の計測が終了した後、ハロゲン加熱部4のハロゲンランプHLが消灯し、ベアウェハーの温度が降温する。そして、ベアウェハーが所定温度にまで降温した後、チャンバー6からベアウェハーが搬出される(ステップS16)。
次に、処理対象となる半導体ウェハーWの処理手順について説明する。図12および図13は、処理対象となる半導体ウェハーWの処理手順を示すフローチャートである。まず処理の準備として、給気のためのバルブ84が開放されるとともに、排気用のバルブ89,192が開放されてチャンバー6内に対する給排気が開始される。バルブ84が開放されると、ガス供給孔81から熱処理空間65に窒素ガスが供給される。また、バルブ89が開放されると、ガス排気孔86からチャンバー6内の気体が排気される。これにより、チャンバー6内の熱処理空間65の上部から供給された窒素ガスが下方へと流れ、熱処理空間65の下部から排気される。
また、バルブ192が開放されることによって、搬送開口部66からもチャンバー6内の気体が排気される。さらに、図示省略の排気機構によって移載機構10の駆動部周辺の雰囲気も排気される。なお、熱処理装置1における半導体ウェハーWの熱処理時には窒素ガスが熱処理空間65に継続的に供給されており、その供給量は処理工程に応じて適宜変更される。
続いて、ゲートバルブ185が開いて搬送開口部66が開放され、装置外部の搬送ロボットにより搬送開口部66を介して処理対象となる半導体ウェハーWがチャンバー6内の熱処理空間65に搬入される(ステップS21)。搬送ロボットによって搬入された半導体ウェハーWは保持部7の直上位置まで進出して停止する。そして、移載機構10の一対の移載アーム11が退避位置から移載動作位置に水平移動して上昇することにより、リフトピン12が貫通孔79を通ってサセプター74の上面から突き出て半導体ウェハーWを受け取る。
半導体ウェハーWがリフトピン12に載置された後、搬送ロボットが熱処理空間65から退出し、ゲートバルブ185によって搬送開口部66が閉鎖される。そして、一対の移載アーム11が下降することにより、半導体ウェハーWは移載機構10から保持部7のサセプター74に受け渡されて水平姿勢にて下方より保持される。半導体ウェハーWは、パターン形成がなされて不純物が注入された表面を上面として保持部7に保持される。また、半導体ウェハーWは、サセプター74の上面にて5個のガイドピン76の内側に保持される。サセプター74の下方にまで下降した一対の移載アーム11は水平移動機構13によって退避位置、すなわち凹部62の内側に退避する。
処理対象の半導体ウェハーWが石英にて形成された保持部7によって水平姿勢にて下方より保持された後、ハロゲン加熱部4の40本のハロゲンランプHLが一斉に点灯して予備加熱(アシスト加熱)が開始される(ステップS22)。ハロゲンランプHLから出射されたハロゲン光は、石英にて形成された下側チャンバー窓64およびサセプター74を透過して半導体ウェハーWの裏面(表面とは反対側の主面)から照射される。ハロゲンランプHLからの光照射を受けることによって半導体ウェハーWが予備加熱されて温度が上昇する。なお、移載機構10の移載アーム11は凹部62の内側に退避しているため、ハロゲンランプHLによる加熱の障害となることは無い。
ハロゲンランプHLによる予備加熱を行うときには、半導体ウェハーWの温度が接触式温度計130によって測定されている。すなわち、熱電対を内蔵する接触式温度計130が保持部7に保持された半導体ウェハーWの下面にサセプター74の切り欠き部77を介して接触して昇温中のウェハー温度を測定する。測定された半導体ウェハーWの温度は制御部3に伝達される。制御部3は、ハロゲンランプHLからの光照射によって昇温する半導体ウェハーWの温度が所定の予備加熱温度T1に到達したか否かを監視しつつ、ハロゲンランプHLの出力を制御する。すなわち、制御部3は、接触式温度計130による測定値に基づいて、半導体ウェハーWの温度が予備加熱温度T1となるようにハロゲンランプHLの出力をフィードバック制御する。予備加熱温度T1は、半導体ウェハーWに添加された不純物が熱により拡散する恐れのない、200℃ないし800℃程度、好ましくは350℃ないし600℃程度とされる。但し、本発明に係る技術においては、予備加熱温度T1をシリコンの透過率がゼロとなる温度以上(600℃以上)とする必要があり、本実施形態では予備加熱温度T1は600℃とされる。なお、ハロゲンランプHLからの光照射によって半導体ウェハーWを昇温するときには、放射温度計120による温度測定は行わない。これは、ハロゲンランプHLから照射されるハロゲン光が放射温度計120に外乱光として入射し、正確な温度測定ができないためである。
半導体ウェハーWの温度が予備加熱温度T1に到達した後、制御部3は半導体ウェハーWをその予備加熱温度T1に暫時維持する。具体的には、接触式温度計130によって測定される半導体ウェハーWの温度が予備加熱温度T1に到達した時点にて制御部3がハロゲンランプHLの出力を調整し、半導体ウェハーWの温度をほぼ予備加熱温度T1に維持している。
このようなハロゲンランプHLによる予備加熱を行うことによって、半導体ウェハーWの全体を予備加熱温度T1に均一に昇温している。ハロゲンランプHLによる予備加熱の段階においては、より放熱が生じやすい半導体ウェハーWの周縁部の温度が中央部よりも低下する傾向にあるが、ハロゲンランプハウス4におけるハロゲンランプHLの配設密度は、半導体ウェハーWの中央部に対向する領域よりも周縁部に対向する領域の方が高くなっている。このため、放熱が生じやすい半導体ウェハーWの周縁部に照射される光量が多くなり、予備加熱段階における半導体ウェハーWの面内温度分布を均一なものとすることができる。さらに、チャンバー側部61に装着された反射リング69の内周面は鏡面とされているため、この反射リング69の内周面によって半導体ウェハーWの周縁部に向けて反射する光量が多くなり、予備加熱段階における半導体ウェハーWの面内温度分布をより均一なものとすることができる。
また、予備加熱を行うのと並行して参照光源170から処理対象となる半導体ウェハーWの表面にパルス光を照射する(ステップS23)。このときに照射されるパルス光の波形、強度、波長はステップS13にてベアウェハーに照射されたパルス光の波形、強度、波長と全く同じである(図10参照)。なお、参照光源170からのパルス光照射を開始するタイミングは、遅くとも半導体ウェハーWの温度が予備加熱温度T1に維持されている期間内であれば良く、予備加熱により昇温中であっても良いし、予備加熱より前であっても良い。
半導体ウェハーWの温度が予備加熱温度T1に到達して所定時間が経過した時点にてフラッシュランプFLが半導体ウェハーWの上面にフラッシュ光照射を行う(ステップS24)。このとき、フラッシュランプFLから放射されるフラッシュ光の一部は直接にチャンバー6内へと向かい、他の一部は一旦リフレクタ52により反射されてからチャンバー6内へと向かい、これらのフラッシュ光の照射により半導体ウェハーWのフラッシュ加熱が行われる。
フラッシュ加熱は、フラッシュランプFLからのフラッシュ光(閃光)照射により行われるため、半導体ウェハーWの表面温度を短時間で上昇することができる。すなわち、フラッシュランプFLから照射されるフラッシュ光は、予めコンデンサーに蓄えられていた静電エネルギーが極めて短い光パルスに変換された、照射時間が0.1ミリセカンド以上100ミリセカンド以下程度の極めて短く強い閃光である。そして、フラッシュランプFLからのフラッシュ光照射によりフラッシュ加熱される半導体ウェハーWの表面温度は、瞬間的に1000℃以上の処理温度T2まで上昇し、半導体ウェハーWに注入された不純物が活性化された後、表面温度が急速に下降する。このように、半導体ウェハーWの表面温度を極めて短時間で昇降することができるため、半導体ウェハーWに注入された不純物の熱による拡散を抑制しつつ不純物の活性化を行うことができる。また、フラッシュランプFLからフラッシュ光を照射する前にハロゲンランプHLによって半導体ウェハーWを予備加熱温度T1に予備加熱しているため、極めて短時間のフラッシュ光照射によって半導体ウェハーWの表面を1000℃以上の処理温度T2にまで昇温することができる。なお、不純物の活性化に必要な時間はその熱拡散に必要な時間に比較して極めて短いため、0.1ミリセカンドないし100ミリセカンド程度の拡散が生じない短時間であっても活性化は完了する。
フラッシュランプFLからフラッシュ光を照射するときにも、参照光源170から半導体ウェハーWの表面にパルス光を照射している。参照光源170は、加熱されて昇温している処理対象の半導体ウェハーWの表面にパルス光を照射することとなる。参照光源170から照射されたパルス光は半導体ウェハーWの表面で反射し、その反射光は光検出素子150へと向かい、光検出素子150によって受光される。また、予備加熱およびフラッシュ加熱によって昇温している半導体ウェハーW自体からも、その表面温度に応じた強度の放射光が放射されており、光検出素子150はそのような半導体ウェハーWからの放射光も受光することとなる。そして、光検出素子150が受光した光の強度が光強度測定部160によって測定される。
光強度測定部160による光強度の測定は、上述したベアウェハーについての測定と同様である。すなわち、光検出素子150は、受光した光の強度に応じた抵抗変化を発生する。光検出素子150にて発生した抵抗変化は信号変換回路161によって電流変化、電圧変化の順に信号変換が行われ、最終的に取り扱いの容易な電圧信号に変換される。信号変換回路161から出力された電圧信号は、増幅回路162によって増幅された後、高速A/Dコンバータ163によってコンピュータが取り扱うのに適したデジタル信号に変換される。そして、高速A/Dコンバータ163から出力されるデジタル信号のレベルがCPU164への入力電圧となり、これが光検出素子150の出力として取得される。光強度測定部160のCPU164が取得した信号のレベルは、光検出素子150が受光した光の強度を示すものであり、その信号レベルのデータが制御部3に伝達される。制御部3は、伝達された光検出素子150の出力信号レベルを磁気ディスク31などの記憶部に格納する。
このようにして光強度測定部160による光強度の測定が1回実行される。そして、予め定められた所定時間が経過するまでの間、光強度測定部160による光強度の測定が複数回繰り返される。すなわち、光検出素子150が受光した光の強度が時系列的にサンプリングされることとなる。本実施形態においては、参照光源170からのパルス光照射を開始してから、フラッシュランプFLによるフラッシュ光照射を開始してそのフラッシュ加熱が終了するまで、光検出素子150が受光した光の強度が時系列的に測定されてサンプリングされる。
制御部3は、光強度測定部160によって時系列的に測定された光の強度に基づいて、処理対象となる半導体ウェハーWの熱処理中に光検出素子150が受光した光の強度プロファイルを取得する(ステップS25)。図14は、処理対象となる半導体ウェハーWについて光検出素子150が受光した光の強度プロファイルを示す図である。同図の横軸には時刻を示し、縦軸にはCPU164に入力される信号のレベルを示す。上述のように、当該信号レベルは、光検出素子150が受光した光の強度を示す。
ベアウェハーについての測定時と同様に、光検出素子150が受光する光には、参照光源170から照射されて半導体ウェハーWの表面で反射された反射光と、加熱処理によって昇温している半導体ウェハーW自体から放射された放射光とが含まれる。すなわち、光強度測定部160が測定する光の強度は、半導体ウェハーWによる反射光の強度と、半導体ウェハーW自体から放射された放射光の強度との合計となる。よって、図14に示す光の強度プロファイルは、半導体ウェハーWによる反射光の強度プロファイルと、半導体ウェハーW自体から放射された放射光の強度プロファイルとが重ね合わされたものである。なお、InSb放射温度計を用いた光検出素子150の測定波長域は5μm以上であり、フラッシュランプFLおよびハロゲンランプHLから熱処理空間65内に入射される光からはそれぞれ石英の上側チャンバー窓63および下側チャンバー窓64によって5μm以上の波長域の成分がカットされている。従って、フラッシュランプFLおよびハロゲンランプHLから出射された光が外乱光として光検出素子150によって検知されるおそれはなく、上記の測定結果には影響を与えない。
フラッシュ光照射前の予備加熱段階では、半導体ウェハーWの温度が一定の予備加熱温度T1に維持されている。従って、予備加熱段階では、半導体ウェハーWの表面から放射される放射光の強度も一定である。これに対して、参照光源170から照射されて半導体ウェハーWの表面で反射された反射光の強度はゼロと所定値との間で周期的に変動する。よって、図14に示す光強度プロファイルのうち、ハロゲンランプHLによる予備加熱によって半導体ウェハーWの温度が予備加熱温度T1に到達してからフラッシュランプFLによるフラッシュ光照射が行われるまでの間(図14の時刻t0から時刻t1の間)の期間における強度の変動は全て反射光強度の変動によるものである。そして、参照光源170から照射されるパルス光の強度はゼロと一定強度とを繰り返すため、その反射光の強度もゼロと所定値の間で周期的に変動する。すなわち、当該期間における光強度プロファイルの強度の変動の大きさであるパルス高さPdは、予備加熱温度T1に昇温されている処理対象の半導体ウェハーWによるパルス光の反射光の強度を示すものである。制御部3は、図14に示すような光強度プロファイルからパルス高さPdを計測し(ステップS26)、その計測したパルス高さPdを磁気ディスク31などの記憶部に保存する。
次に、制御部3の放射率算定部33は、ステップS14で計測したパルス高さPbおよびステップS26で計測したパルス高さPdに基づいて処理対象となる半導体ウェハーWの反射率を算定する(ステップS27)。ステップS14で計測したパルス高さPbは、予備加熱温度T1に昇温されているベアウェハーによるパルス光の反射光の強度を示すものである。一方、ステップS26で計測したパルス高さPdは、予備加熱温度T1に昇温されている処理対象の半導体ウェハーWによるパルス光の反射光の強度を示すものである。また、如何なる処理も施されていないベアウェハーについては、反射率が既知である。例えば、本実施形態における測定条件(測定波長、ウェハー温度、光検出素子150および参照光源170の設置角度)では、ベアウェハーの反射率Rb=0.424である。
図15は、反射率と反射光の強度との相関を示す図である。参照光源170から照射される入射光の強度が同じであれば、反射光の強度は被照射物体の反射率に比例する。よって、図15に示すように、反射光の強度を示す指標であるパルス高さとウェハー表面の反射率とには比例関係が成立する。これに基づき、放射率算定部33は、次の式(1)より処理対象となる半導体ウェハーWの反射率Rを算定する。すなわち、予備加熱温度T1に昇温されているベアウェハーによる反射光の強度と、同じく予備加熱温度T1に昇温されている処理対象の半導体ウェハーWによる反射光の強度との比較により半導体ウェハーWの反射率Rを算定する。なお、式(1)において、Rbはベアウェハーの反射率である。
Figure 0006574344
次に、制御部3の放射率算定部33は、処理対象となる半導体ウェハーWの放射率を算定する(ステップS28)。物体の反射率、放射率および透過率には、それらの合計が1.0になるという関係が存在している。ここで、シリコンのウェハーの場合、600℃以上であれば波長5μm以上の赤外光の透過率がゼロとなる。シリコンウェハーは、常温であれば波長5μm以上の赤外光をある程度透過するのであるが、600℃以上に昇温された状態では波長5μm以上の赤外光を全く透過しなくなるのである。よって、600℃以上に昇温されたシリコンウェハーについては、反射率と放射率との合計が1.0になるという関係が成立する。これに基づき、放射率算定部33は、次の式(2)より処理対象となる半導体ウェハーWの放射率Eを算定する。
Figure 0006574344
続いて、制御部3の温度算定部34は、処理対象となる半導体ウェハーWから加熱処理時に放射される放射光の強度と、上記のようにして算定した放射率Eとに基づいて処理中の半導体ウェハーWの表面の温度を算定する(ステップS29)。具体的には、本実施形態では、制御部3が黒体温度テーブルと放射率Eとから処理対象となる半導体ウェハーWについての温度変換テーブルを求める。
図16は、黒体温度テーブルおよび変換テーブルの一例を示す図である。同図の横軸には温度を示し、縦軸には放射強度を示す。また、図16の実線にて示すのが黒体温度テーブルであり、点線にて示すのが半導体ウェハーWについての温度変換テーブルである。黒体温度テーブルは、完全放射体(放射率1.0)とみなされる黒体についての放射強度と温度との相関を示すテーブルである。黒体については、放射強度と温度との相関がプランクの法則より理論的に求められる。黒体温度テーブルは、その理論的に求められる相関をテーブルとしたものであり、予め制御部3の磁気ディスク31に格納されている(図8参照)。なお、図16に示す黒体温度テーブルは波長5μmでの黒体の放射強度と温度との相関を示すテーブルである。
制御部3は、この黒体温度テーブルと式(2)より算定した半導体ウェハーWの放射率Eとから半導体ウェハーWについての温度変換テーブルを求める。具体的には、制御部3は、次の式(3)に従って処理対象となる半導体ウェハーWの温度Tでの放射強度Fw(T)を算出する。式(3)において、Fb(T)は、温度Tの黒体の放射強度である。式(3)より各温度Tについて放射強度Fw(T)を算出することにより、図16の点線で示すような処理対象となる半導体ウェハーWについての温度変換テーブルが求められる。
Figure 0006574344
図16に点線で示す温度変換テーブルに基づいて、半導体ウェハーWの放射光の強度から半導体ウェハーWの表面温度を求めることができる。上述のように、フラッシュ加熱処理中に半導体ウェハーWの表面から放射された放射光の強度は、光強度測定部160によって測定されてその光強度プロファイルも取得されている(図14,ステップS25参照)。但し、図14に示した光強度プロファイルは、半導体ウェハーWによるパルス光の反射光の強度プロファイルと、加熱された半導体ウェハーW自体から放射された放射光の強度プロファイルとが重ね合わされたものである。このため、制御部3は、図14に示した光の強度プロファイルにデジタル信号処理を施してパルス光の反射光の成分を除去している。具体的には、参照光源170から照射されるパルス光の周波数については既知であり、パルス光の反射光の振幅についてはパルス高さPdとして求められているため、これらの値に基づいてパルス光の反射光の成分を図14の光強度プロファイルから演算処理によって除去することができる。
図14の光の強度プロファイルからパルス光の反射光成分を除去したものは、加熱処理中に半導体ウェハーWから放射された放射光の強度プロファイルである。なお、光検出素子150の測定波長域においては、フラッシュランプFLおよびハロゲンランプHLから出射された光は石英の上側チャンバー窓63および下側チャンバー窓64によってカットされているため、図14の光強度プロファイルに含まれていない。
制御部3の温度算定部34は、図16に点線で示す温度変換テーブルに基づいて、図14の光強度プロファイルからパルス光の反射光成分を除去したもの、つまり加熱処理中に半導体ウェハーWから放射された放射光の強度プロファイルから半導体ウェハーWの表面の温度を時系列的に算定して温度プロファイルを作成する(ステップS30)。図17は、処理対象となる半導体ウェハーWの表面の温度プロファイルを示す図である。同図の横軸には時刻を示し、縦軸には求められた半導体ウェハーWの表面温度を示す。この温度プロファイルは、フラッシュランプFLによるフラッシュ光照射が開始された後の半導体ウェハーWの表面温度履歴である。制御部3は、作成した図17に示す如き半導体ウェハーWの温度プロファイルを表示部35に表示する。また、制御部3は、フラッシュ加熱時における半導体ウェハーWの表面の最高到達温度を表示部35に出力するようにしても良い。
フラッシュ加熱処理が終了した後、所定時間経過後にハロゲンランプHLも消灯する。これにより、半導体ウェハーWが予備加熱温度T1から急速に降温する。降温中の半導体ウェハーWの温度は接触式温度計130または放射温度計120によって測定され、その測定結果は制御部3に伝達される。制御部3は、測定結果より半導体ウェハーWの温度が所定温度まで降温したか否かを監視する。そして、半導体ウェハーWの温度が所定以下にまで降温した後、移載機構10の一対の移載アーム11が再び退避位置から移載動作位置に水平移動して上昇することにより、リフトピン12がサセプター74の上面から突き出て熱処理後の半導体ウェハーWをサセプター74から受け取る。続いて、ゲートバルブ185により閉鎖されていた搬送開口部66が開放され、リフトピン12上に載置された半導体ウェハーWが装置外部の搬送ロボットにより搬出され、熱処理装置1における半導体ウェハーWの加熱処理が完了する。
本実施形態においては、600℃以上に加熱されたシリコンでは波長5μm以上の赤外光の透過率がゼロになるという特性を利用し、600℃以上に加熱された半導体ウェハーWの反射率Rを測定し、その反射率Rから放射率Eを算定してフラッシュ加熱処理時の半導体ウェハーWの表面温度を求めている。600℃以上に加熱されたシリコンの半導体ウェハーWでは波長5μm以上の赤外光の透過率がゼロになるため、600℃以上で半導体ウェハーWの反射率Rを測定すれば温度依存性を有する放射率Eを正確に求めることができ、その結果熱処理時の半導体ウェハーWの温度を正確に測定することができる。また、処理対象となる半導体ウェハーWの放射率Eが自動で算定されるため、処理毎に放射率を設定する作業は不要となる。
以上、本発明の実施の形態について説明したが、この発明はその趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態においては、半導体ウェハーWの予備加熱温度T1を600℃としていたが、これに限定されるものではなく、予備加熱温度T1はシリコンの半導体ウェハーWで波長5μm以上の赤外光の透過率がゼロになる温度であれば良い。ベアウェハーの反射強度を測定するときにも当該ベアウェハーを予備加熱温度T1と同じ温度に加熱する。シリコンの半導体ウェハーWおよびベアウェハーにて波長5μm以上の赤外光の透過率がゼロになる温度で処理対象となる半導体ウェハーWの反射率を測定することにより、半導体ウェハーWの放射率を正確に算定することができる。
また、上記実施形態においては、光検出素子150としてInSb放射温度計を採用していたが、これに限定されるものではなく、例えばCCD、フォトダイオードなどの応答速度の速い素子を用いるようにしても良い。但し、フラッシュランプFLおよびハロゲンランプHLから出射された光の影響を排除するためには、それらの光が石英窓によってカットされる4.5μm以上を測定波長域とする素子を用いることが好ましい。
また、上記実施形態においては、図14の光強度プロファイルからデジタル信号処理によってパルス光の反射光成分を除去したものから半導体ウェハーWの表面の温度を算定していたが、これに代えて、図14の光強度プロファイルから温度を求め、それにデジタル信号処理を施してパルス光の反射光による影響を除去するようにしても良い。或いは、フラッシュランプFLからフラッシュ光照射を開始する時点で参照光源170からのパルス光照射を停止するようにしても良い。このようにすれば、デジタル信号処理によるパルス光の反射光成分の除去は不要となる。
また、上記実施形態においては、フラッシュ加熱部5に30本のフラッシュランプFLを備えるようにしていたが、これに限定されるものではなく、フラッシュランプFLの本数は任意の数とすることができる。また、フラッシュランプFLはキセノンフラッシュランプに限定されるものではなく、クリプトンフラッシュランプであっても良い。また、ハロゲン加熱部4に備えるハロゲンランプHLの本数も40本に限定されるものではなく、任意の数とすることができる。
また、上記実施形態においては、ハロゲンランプHLからのハロゲン光照射によって半導体ウェハーWを予備加熱するようにしていたが、予備加熱の手法はこれに限定されるものではなく、ホットプレートに載置することによって半導体ウェハーWを予備加熱するようにしても良い。
また、本発明に係る熱処理技術によって処理対象となる基板はシリコンの半導体ウェハーに限定されるものではなく、所定温度以上に加熱されると赤外光の透過率がゼロとなる性質を有する基板であれば良い。このような基板としては、例えば加熱温度を上昇させると赤外光の透過率が減少する特性を有するSiC(シリコンカーバイド)の半導体ウェハーが例示される。
1 熱処理装置
3 制御部
4 ハロゲン加熱部
5 フラッシュ加熱部
6 チャンバー
7 保持部
10 移載機構
33 放射率算定部
34 温度算定部
35 表示部
65 熱処理空間
74 サセプター
150 光検出素子
160 光強度測定部
170 参照光源
FL フラッシュランプ
HL ハロゲンランプ
W 半導体ウェハー

Claims (5)

  1. 基板にフラッシュ光を照射することによって該基板を加熱する熱処理装置であって、
    基板を収容するチャンバーと、
    前記チャンバー内にて基板を保持する保持部と、
    前記保持部に保持された基板にフラッシュ光を照射するフラッシュランプと、
    前記フラッシュランプからフラッシュ光を照射する前に前記基板に光を照射して前記基板を予備加熱する連続点灯ランプと、
    前記基板の表面から到達する光を受光する光検出素子と、
    前記光検出素子によって受光された光の強度を測定する光強度測定部と、
    前記基板の表面にパルス光を照射する参照光源と、
    前記保持部に保持された反射率が既知の基準基板を前記連続点灯ランプによって当該基準基板の透過率がゼロとなる所定温度に加熱しつつ、前記参照光源から前記基準基板にパルス光を照射したときに前記基準基板の表面で反射されて前記光検出素子によって受光された反射光の強度と、前記保持部に保持された処理対象基板を前記連続点灯ランプによって前記所定温度に加熱しつつ、前記参照光源から前記処理対象基板にパルス光を照射したときに前記処理対象基板の表面で反射されて前記光検出素子によって受光された反射光の強度と、の比較により得られた前記処理対象基板の反射率から前記処理対象基板の放射率を算定する放射率算定部と、
    前記フラッシュランプから前記処理対象基板にフラッシュ光を照射したときに前記処理対象基板の表面から放射されて前記光検出素子によって受光された放射光の強度と、前記放射率算定部によって算定された前記処理対象基板の放射率とに基づいて前記処理対象基板の表面の温度を算定する温度算定部と、
    を備えることを特徴とする熱処理装置。
  2. 請求項1記載の熱処理装置において、
    前記温度算定部は、前記フラッシュランプによるフラッシュ光照射が開始された後に前記光強度測定部によって時系列的に測定された前記処理対象基板の表面からの放射光の強度に基づいて前記基板の表面温度履歴を求めることを特徴とする熱処理装置。
  3. 請求項1または請求項2記載の熱処理装置において、
    前記光検出素子はInSb光導電素子を含み、
    前記チャンバーには、前記フラッシュランプから出射されたフラッシュ光を透過する石英窓を設けることを特徴とする熱処理装置。
  4. 基板にフラッシュ光を照射することによって該基板を加熱する熱処理方法であって、
    反射率が既知の基準基板を連続点灯ランプからの光照射によって当該基準基板の透過率がゼロとなる所定温度に加熱しつつ、前記基準基板にパルス光を照射したときに前記基準基板の表面で反射された反射光の強度を測定する第1反射強度測定工程と、
    処理対象基板を前記連続点灯ランプからの光照射によって前記所定温度に加熱しつつ、前記処理対象基板にパルス光を照射したときに前記処理対象基板の表面で反射された反射光の強度を測定する第2反射強度測定工程と、
    第1反射強度測定工程および第2反射強度測定工程にて得られた反射光の強度の比較により得られた前記処理対象基板の反射率から前記処理対象基板の放射率を算定する放射率算定工程と、
    前記処理対象基板にフラッシュ光を照射したときに前記処理対象基板の表面から放射された放射光の強度と、前記放射率算定工程にて算定された前記処理対象基板の放射率とに基づいて前記処理対象基板の表面の温度を算定する温度算定工程と、
    を備えることを特徴とする熱処理方法。
  5. 請求項4記載の熱処理方法において、
    前記温度算定工程では、フラッシュ光照射が開始された後に時系列的に測定された前記処理対象基板の表面からの放射光の強度に基づいて前記基板の表面温度履歴を求めることを特徴とする熱処理方法。
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