JP3653919B2 - 筒内直接噴射式火花点火内燃機関の燃料噴射制御装置 - Google Patents

筒内直接噴射式火花点火内燃機関の燃料噴射制御装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、筒内直接噴射式火花点火内燃機関の燃料噴射制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の筒内直接噴射式火花点火内燃機関において、機関始動時は、冷却水温に基づいて、始動時噴射パルス幅を設定し、また噴射時期を適宜設定して、燃料噴射を行っている(特開平8−193536号公報参照)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、筒内直接噴射式火花点火内燃機関においては、機関のカム軸により駆動される高圧燃料ポンプにより燃料を高圧化して、燃料噴射弁より噴射しているため、始動時のように、エンジン回転が低く(ポンプ回転が低く吐出流量が小さい)、噴射パルス幅が長い(冷機状態のため要求噴射量が多い)場合に、噴射期間中、自噴射の影響により、燃料圧力が低下するため、噴射開始時点の燃料圧力で決定した始動時噴射パルス幅では、噴射率(単位時間当たりの噴射量)の低下により、実噴射量が減少してしまい、始動性が悪化するという問題点があった。
【0004】
尚、燃圧センサを備える場合でも、現状では応答性に限界があり、噴射期間中の燃料圧力の低下を検出して制御に反映させることは困難である。
本発明は、このような従来の問題点に鑑み、始動時における噴射率の低下を考慮して、噴射量が要求値通りになるようにすることで、始動性を向上させることを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
このため、請求項1に係る発明では、機関駆動される燃料ポンプと、噴射パルス信号により開弁して前記燃料ポンプからの高圧燃料を各気筒の燃焼室内に直接噴射する燃料噴射弁とを備える筒内直接噴射式火花点火内燃機関の燃料噴射制御装置において、図1に示すように、機関始動時に噴射期間中の自噴射による燃料圧力の低下により噴射率が低下する条件を検出する噴射率低下条件検出手段と、前記条件の検出時に、少なくとも噴射開始時の前記燃料ポンプによる燃料圧力に基づいて、噴射率の低下分を予測する噴射率低下分予測手段と、予測された噴射率の低下分に基づいて、前記燃料噴射弁への始動時噴射パルス幅を補正する始動時噴射パルス幅補正手段と、を設けたことを特徴とする。
【0006】
請求項2に係る発明では、前記噴射率低下条件検出手段は、少なくとも噴射開始時の燃料圧力が所定値以下の条件を検出するものであることを特徴とする。
請求項3に係る発明では、前記噴射率低下条件検出手段は、少なくとも機関回転数が所定値以下の条件を検出するものであることを特徴とする
請求項4に係る発明では、前記噴射率低下分予測手段は、更に、機関回転数に基づいて、噴射率の低下分を予測するものであることを特徴とする。
【0007】
請求項5に係る発明では、機関駆動される燃料ポンプと、噴射パルス信号により開弁して前記燃料ポンプからの高圧燃料を各気筒の燃焼室内に直接噴射する燃料噴射弁とを備える筒内直接噴射式火花点火内燃機関の燃料噴射制御装置において、図1に示すように、機関始動時に噴射期間中の燃料圧力の低下により噴射率が低下する条件として、少なくとも始動時噴射パルス幅が所定値以上の条件を検出する噴射率低下条件検出手段と、前記条件の検出時に噴射率の低下分を予測する噴射率低下分予測手段と、予測された噴射率の低下分に基づいて、前記燃料噴射弁への始動時噴射パルス幅を補正する始動時噴射パルス幅補正手段と、を設けたことを特徴とする。
請求項6に係る発明では、前記噴射率低下条件検出手段は、更に、噴射開始時の燃料圧力が所定値以下の条件を検出するものであることを特徴とする。
請求項7に係る発明では、前記噴射率低下条件検出手段は、更に、機関回転数が所定値以下の条件を検出するものであることを特徴とする。
【0008】
請求項8に係る発明では、機関駆動される燃料ポンプと、噴射パルス信号により開弁して前記燃料ポンプからの高圧燃料を各気筒の燃焼室内に直接噴射する燃料噴射弁とを備える筒内直接噴射式火花点火内燃機関の燃料噴射制御装置において、図1に示すように、機関始動時に噴射期間中の燃料圧力の低下により噴射率が低下する条件を検出する噴射率低下条件検出手段と、前記条件の検出時に、少なくとも始動時噴射パルス幅に基づいて、噴射率の低下分を予測する噴射率低下分予測手段と、予測された噴射率の低下分に基づいて、前記燃料噴射弁への始動時噴射パルス幅を補正する始動時噴射パルス幅補正手段と、を設けたことを特徴とする。
請求項9に係る発明では、前記噴射率低下分予測手段は、更に、機関回転数に基づいて、噴射率の低下分を予測するものであることを特徴とする。
【0009】
【発明の効果】
請求項1、5、8に係る発明によれば、機関始動時に噴射期間中の燃料圧力の低下により噴射率が低下する条件を検出して、噴射率の低下分を予測し、その分、始動時噴射パルス幅を長くするよう補正することで、始動時に要求噴射量を得ることができ、始動性を向上できるという効果が得られる。
【0010】
請求項2、6に係る発明によれば、噴射開始時の燃料圧力が所定値以下の条件では、噴射率の低下が顕著となるので、この条件にて補正することで、始動性を確実に向上できる。
請求項3、7に係る発明によれば、機関回転数が所定値以下の条件では、ポンプ吐出流量の低下による噴射率の低下が顕著となるので、この条件にて補正することで、始動性を確実に向上できる。
【0011】
請求項5に係る発明によれば、始動時噴射パルス幅が所定値以上の条件では、、自噴射による噴射率の低下が顕著となるので、この条件にて補正することで、始動性を確実に向上できる。
請求項1に係る発明によれば、噴射開始時の燃料圧力の低下に従って、噴射率の低下が大となるので、その燃料圧力に基づいて、噴射率の低下分を予測することで、正しく予測できる。
【0012】
請求項4、9に係る発明によれば、機関回転数の低下に従って、噴射率の低下が大となるので、その機関回転数に基づいて、噴射率の低下分を予測することで、正しく予測できる。
請求項8に係る発明によれば、始動時噴射パルス幅が長くなるに従って、噴射率の低下が大となるので、その始動時噴射パルス幅に基づいて、噴射率の低下分を予測することで、正しく予測できる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を説明する。
図2は筒内直接噴射式火花点火内燃機関のシステム図である。
各気筒の燃焼室1はシリンダヘッド2とピストン3との間に形成されている。そして、シリンダヘッド2側には中心部に点火栓4が配置されると共に、これを囲んで吸気ポート5及び排気ポート6が形成され、それぞれに吸気弁7及び排気弁(図示せず)が装着されている。
【0014】
燃料噴射弁(インジェクタ)8は、各気筒毎に、燃焼室1内に直接、燃料(ガソリン)を噴射するように備えられ、燃料は全気筒共通の燃料ギャラリ9より供給されるようになっている。
そして、高圧燃料ポンプ10が設けられ、この高圧燃料ポンプ10は機関のクランク軸11によりベルト駆動されるカム軸12により駆動され、燃料タンク内の燃料を吸入吐出する低圧燃料ポンプ(図示せず)からの燃料を更に加圧して、燃料ギャラリ9に供給する。尚、高圧燃料ポンプ10の吐出側には高圧レギュレータ(図示せず)が備えられ、燃料圧力が規定値以上であれば、リリーフ機能により、燃料圧力を規定値に調整し得る。
【0015】
前記燃料噴射弁8は、コントロールユニット13からの噴射パルス信号により通電されて開弁し、通電停止されて閉弁する電磁式燃料噴射弁であって、噴射パルス信号のパルス幅により燃料噴射量が制御される。
コントロールユニット13には、燃料噴射量等の制御のため、クランク角センサ14、気筒判別センサ15の他、吸入空気流量Qaを検出するエアフローメータ16、冷却水温Twを検出する水温センサ17、高圧燃料ポンプ10による燃料圧力Pfを検出する燃圧センサ18等から信号が入力されている。
【0016】
ここで、クランク角センサ14は、気筒数をnとすると、クランク角720°/n毎に、予め定めたクランク角位置で基準パルス信号REFを出力すると共に、1〜2°毎に単位パルス信号POSを出力するもので、基準パルス信号REFの周期などから機関回転数Neを算出可能である。また、気筒判別センサ15は、カム軸センサともいい、クランク角720°毎に、予め定めたクランク角位置で特定気筒に対応する気筒判別信号PHASEを出力するもので、これにより気筒判別が可能となる。
【0017】
次に、コントロールユニット13により行われる始動時の燃料噴射制御ルーチンについて、図3のフローチャートにより説明する。
尚、本ルーチンは、始動時(スタートスイッチON)であることを条件として、基準パルス信号REFに同期して、又は、基準パルス信号REFの発生から単位パルス信号POSを所定数カウントした時点で、割込み処理される。
【0018】
ステップ1(図にはS1と記す。以下同様)では、主に冷却水温Twに基づき、また機関回転数Ne及び燃料圧力Pfにより補正して、始動時噴射パルス幅TISTを演算する。
ステップ2では、燃料圧力(噴射開始時の燃料圧力)Pfを所定値と比較して、Pf≦所定値か否かを判定する。
【0019】
そして、Pf≦所定値のときは、更にステップ3へ進み、機関回転数Neを所定値と比較して、Ne≦所定値か否かを判定する。
そして、Ne≦所定値のときは、更にステップ4へ進み、始動時噴射パルス幅TISTを所定値と比較して、TIST≧所定値か否かを判定する。
これらの結果、Pf>所定値、Ne>所定値、又は、TIST<所定値のときは、噴射率低下条件ではないので、そのままステップ10へ進み、ステップ1にて演算した始動時噴射パルス幅TISTを補正することなく、所定のレジスタにセットして、本ルーチンを終了する。
【0020】
一方、Pf≦所定値、Ne≦所定値、かつ、TIST≧所定値のときは、噴射率低下条件であるので、後述するように、ステップ5〜9で補正処理を行った後、ステップ10へ進む。
ステップ5では、噴射開始時の燃料圧力Pfに基づき、予め定めた関数テーブルfを用いて、噴射率の低下分に対応する補正係数K1=f(Pf)を演算する。ここで、噴射開始時の燃料圧力Pfの低下に従って、噴射率の低下が大となるので、補正係数K1は大きくする。
【0021】
ステップ6では、機関回転数Neに基づき、予め定めた関数テーブルgを用いて、噴射率の低下分に対応する補正係数K2=g(Ne)を演算する。ここで、機関回転数Neの低下に従って、噴射率の低下が大となるので、補正係数K2は大きくする。
ステップ7では、始動時噴射パルス幅TISTに基づき、予め定めた関数テーブルhを用いて、噴射率の低下分に対応する補正係数K3=h(TIST)を演算する。ここで、始動時噴射パルス幅TISTが長くなるに従って、噴射率の低下が大となるので、補正係数K3は大きくする。
【0022】
ステップ8では、これらの補正係数K1〜K3を掛け合わせて、噴射率の低下分に対応する最終的な補正係数K=K1×K2×K3を算出する。
ステップ9では、次式のごとく、ステップ1で演算した始動時噴射パルス幅TISTを補正係数Kにより補正して、始動時噴射パルス幅TISTを更新する。
TIST=TIST×K
始動時噴射パルス幅TISTの補正後は、ステップ10へ進み、補正後の始動時噴射パルス幅TISTを所定のレジスタにセットして、本ルーチンを終了する。
【0023】
このようにして、始動時噴射パルス幅TISTが所定のレジスタにセットされると、所定の噴射時期(一般には各気筒の吸気行程)にて、そのパルス幅TISTの噴射パルス信号が燃料噴射弁8に対し出力されて、燃料噴射が行われる。
尚、ステップ2〜4の部分が噴射率低下条件検出手段に相当し、ステップ5〜8の部分が噴射率低下分予測手段に相当し、ステップ9に部分が始動時噴射パルス幅補正手段に相当する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の構成を示す機能ブロック図
【図2】 本発明の実施の形態を示すシステム図
【図3】 始動時の燃料噴射制御ルーチンのフローチャート
【符号の説明】
1 燃焼室
4 点火栓
8 燃料噴射弁
10 高圧燃料ポンプ
13 コントロールユニット
14 クランク角センサ
17 水温センサ
18 燃圧センサ

Claims (9)

  1. 機関駆動される燃料ポンプと、噴射パルス信号により開弁して前記燃料ポンプからの高圧燃料を各気筒の燃焼室内に直接噴射する燃料噴射弁とを備える筒内直接噴射式火花点火内燃機関の燃料噴射制御装置において、
    機関始動時に噴射期間中の自噴射による燃料圧力の低下により噴射率が低下する条件を検出する噴射率低下条件検出手段と、
    前記条件の検出時に、少なくとも噴射開始時の前記燃料ポンプによる燃料圧力に基づいて、噴射率の低下分を予測する噴射率低下分予測手段と、
    予測された噴射率の低下分に基づいて、前記燃料噴射弁への始動時噴射パルス幅を補正する始動時噴射パルス幅補正手段と、
    を設けたことを特徴とする筒内直接噴射式火花点火内燃機関の燃料噴射制御装置。
  2. 前記噴射率低下条件検出手段は、少なくとも噴射開始時の燃料圧力が所定値以下の条件を検出するものであることを特徴とする請求項1記載の筒内直接噴射式火花点火内燃機関の燃料噴射制御装置。
  3. 前記噴射率低下条件検出手段は、少なくとも機関回転数が所定値以下の条件を検出するものであることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の筒内直接噴射式火花点火内燃機関の燃料噴射制御装置。
  4. 前記噴射率低下分予測手段は、更に、機関回転数に基づいて、噴射率の低下分を予測するものであることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載の筒内直接噴射式火花点火内燃機関の燃料噴射制御装置。
  5. 機関駆動される燃料ポンプと、噴射パルス信号により開弁して前記燃料ポンプからの高圧燃料を各気筒の燃焼室内に直接噴射する燃料噴射弁とを備える筒内直接噴射式火花点火内燃機関の燃料噴射制御装置において、
    機関始動時に噴射期間中の燃料圧力の低下により噴射率が低下する条件として、少なくとも始動時噴射パルス幅が所定値以上の条件を検出する噴射率低下条件検出手段と、
    前記条件の検出時に噴射率の低下分を予測する噴射率低下分予測手段と、
    予測された噴射率の低下分に基づいて、前記燃料噴射弁への始動時噴射パルス幅を補正する始動時噴射パルス幅補正手段と、
    を設けたことを特徴とする筒内直接噴射式火花点火内燃機関の燃料噴射制御装置。
  6. 前記噴射率低下条件検出手段は、更に、噴射開始時の燃料圧力が所定値以下の条件を検出するものであることを特徴とする請求項5記載の筒内直接噴射式火花点火内燃機関の燃料噴射制御装置。
  7. 前記噴射率低下条件検出手段は、更に、機関回転数が所定値以下の条件を検出するものであることを特徴とする請求項5又は請求項6記載の筒内直接噴射式火花点火内燃機関の燃料噴射制御装置。
  8. 機関駆動される燃料ポンプと、噴射パルス信号により開弁して前記燃料ポンプからの高圧燃料を各気筒の燃焼室内に直接噴射する燃料噴射弁とを備える筒内直接噴射式火花点火内燃機関の燃料噴射制御装置において、
    機関始動時に噴射期間中の燃料圧力の低下により噴射率が低下する条件を検出する噴射率低下条件検出手段と、
    前記条件の検出時に、少なくとも始動時噴射パルス幅に基づいて、噴射率の低下分を予測する噴射率低下分予測手段と、
    予測された噴射率の低下分に基づいて、前記燃料噴射弁への始動時噴射パルス幅を補正する始動時噴射パルス幅補正手段と、
    を設けたことを特徴とする筒内直接噴射式火花点火内燃機関の燃料噴射制御装置。
  9. 前記噴射率低下分予測手段は、更に、機関回転数に基づいて、噴射率の低下分を予測するものであることを特徴とする請求項8記載の筒内直接噴射式火花点火内燃機関の燃料噴射制御装置。
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