JP3924991B2 - 内燃機関制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、気体燃料を燃焼室に直接噴射させる内燃機関の内燃機関制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、燃料を燃焼室に直接噴射する内燃機関に関するものとして、特開平5−288097号公報に記載されるように、燃焼室内に直接燃料を噴射する燃料噴射弁、その燃料噴射弁に高圧燃料を供給するための畜圧室及びその畜圧室内に燃料を供給する供給手段を備えたものが知られている。この内燃機関は、燃料供給手段から畜圧室への燃料供給量を調整することにより畜圧室内の燃料圧力が目標燃料圧となるように制御すると共に、目標燃料圧に対し畜圧室内の燃料圧力が低くなるほど燃料噴射時期を早めるものである。これにより、燃焼室に噴射された燃料が霧化分散時間を確保して、燃料の燃焼を良好なものとし、スモークの発生量を低減しようとするものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような内燃機関の制御技術を気体燃料により駆動する内燃機関に対して適用すると、内燃機関の性能を十分に発揮できないおそれがある。すなわち、燃焼室への噴射時期を圧縮行程から吸気行程に変えると、気体燃料の体積が大きいことから、十分な吸気が行えず、内燃機関の性能が低下するおそれがある。このため、気体燃料の供給により駆動する内燃機関においては、燃料噴射時期を安易に吸気行程とすることができない。その一方で、高負荷領域及び高回転領域における内燃機関の駆動時には圧縮行程だけでは時間的制約により必要な燃料量の供給が困難となるため、この不具合を解消すべく技術の開発が切望されている。
【0004】
そこで本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであって、気体燃料を燃焼室に直接噴射する内燃機関の性能低下の軽減が図れる内燃機関制御装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明に係る内燃機関制御装置は、燃焼室に気体燃料を直接噴射するインジェクタを具備する内燃機関の制御装置において、内燃機関の回転状態に基づいてインジェクタの燃料噴射に必要な時間を算出する噴射必要時間演算手段と、内燃機関の回転状態に基づいてインジェクタの燃料噴射が可能な時間を算出する噴射可能時間演算手段と、噴射必要時間演算手段により算出された噴射必要時間が噴射可能時間演算手段により算出された噴射可能時間より長いときに噴射必要時間と噴射可能時間との差だけ吸気行程噴射を行わせ噴射可能時間の圧縮行程噴射を行わせる吸気行程噴射制御手段とを備えて構成されている。
【0006】
また本発明に係る内燃機関制御装置は、前述の噴射必要時間演算手段が内燃機関の回転状態、内燃機関負荷及び気体燃料の圧力状態に基づいてインジェクタの燃料噴射に必要な時間を算出するものであることを特徴とする。また本発明に係る内燃機関制御装置は、前述の噴射可能時間演算手段が内燃機関の回転状態、吸気弁閉弁タイミング、点火タイミングに基づいてインジェクタの燃料噴射が可能な時間を算出するものであることを特徴とする。
【0007】
これらの発明によれば、気体燃料の噴射に必要な噴射必要時間がエンジン駆動状態又は燃料圧力などの状況によって噴射可能となる噴射可能時間より長くないときには、圧縮行程での燃料噴射が行われる。一方、気体燃料の噴射に必要な噴射必要時間がエンジン回転状態又は燃料圧力などの状況により噴射可能である噴射可能時間より長いときには、その差分だけ吸気行程で燃料噴射が行われた後、引き続き噴射可能時間だけ圧縮行程での燃料噴射が行われる。このように、燃料噴射が可能な限り、圧縮行程にて燃料噴射が行われるため、吸気行程で気体燃料が噴射されることにより燃焼室への吸気が不十分となることが抑制される。従って、内燃機関の性能の低下を防止することができる。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0009】
(第一実施形態)
図1に本実施形態に係る内燃機関制御装置の説明図を示す。
【0010】
図1に示すように、本実施形態に係る内燃機関制御装置10は、気体燃料を用いて駆動する車両等の内燃機関の制御に適用したものである。内燃機関であるエンジン20には図示しない燃料タンクに収容された気体燃料が供給される。制御対象となるエンジン20は、直接噴射式のものであり、燃焼室21に直接気体燃料を噴射するインジェクタ22を備えている。インジェクタ22は、加圧された気体燃料を燃焼室21へ供給する燃料噴射手段であり、例えばエンジン20に設けたシリンダ23ごとに設置される。
【0011】
燃焼室21は、シリンダ23内に配設されたピストン24の上方に形成されている。燃焼室21の上部には、吸気ポート25及び排気ポート26が開口しており、吸気ポート25には吸気弁27が配設され、排気ポート26には排気弁28が配設されている。吸気ポート25は燃焼室21にエアを供給するための吸気口であり吸気弁27により開閉される。排気ポート26は燃焼室21のエアを排出するための排出口であり排気弁28により開閉される。また、燃焼室21の上部には、点火装置29が設置されている。
【0012】
エンジン20には、可変バルブタイミング機構30が設けられている。可変バルブタイミング機構30は、吸気弁27の上方に配設されており、吸気弁27の開閉タイミングを変化させる。更に、エンジン20のクランクシャフト35には、クランクポジションセンサ36が設置されている。クランクポジションセンサ36は、エンジン20の回転状態を検出するエンジン回転状態検出手段であり、例えば、エンジン20の回転速度及び回転変化などを検出する。
【0013】
インジェクタ22には、デリバリーパイプ17が接続されている。デリバリーパイプ17は、図示しない燃料タンクから配管13を通じて圧送されてきた気体燃料を各インジェクタ22に分配するものである。このデリバリーパイプ17には、圧力センサ31が設けられている。圧力センサ31は、デリバリーパイプ17内の気体燃料の圧力を検出する燃圧検出手段である。また、デリバリーパイプ17には、燃温センサ32が設けられている。燃温センサ32は、デリバリーパイプ17内の気体燃料の温度を検出する燃温検出手段である。
【0014】
吸気ポート27の上流側に設置される吸気管41には、スロットルバルブ42が設置されている。スロットルバルブ42は、スロットルモータ43の駆動により、その開閉状態が操作される。また、スロットルバルブ42の開度は、スロットルポジションセンサ44により検出される。また、アクセルセンサ51が設けられており、アクセルペダル52の操作状態が検出される。
【0015】
内燃機関制御装置10には、ECU50が設けられている。ECU50は、内燃機関制御装置10の装置全体の制御を行うものであり、CPU、ROM、RAMを含むコンピュータを主体として構成されている。ROMには、内燃機関制御ルーチンを含む各種制御ルーチンが記憶されている。
【0016】
ECU50は、圧力センサ31と接続されており、デリバリーパイプ17内の気体燃料の圧力検出信号が入力される。また、ECU50は、燃温センサ32と接続されており、デリバリーパイプ17内の気体燃料の温度検出信号が入力される。また、ECU50は、可変バルブタイミング機構30と接続されており、可変バルブタイミングの検出信号が入力される。
【0017】
また、ECU50は、スロットルポジションセンサ44と接続されており、スロットルバルブ開度の検出信号が入力される。また、ECU50は、アクセルセンサ51と接続されており、アクセルペダル52の操作状態の検出信号が入力される。更に、ECU50は、クランクポジションセンサ36と接続されており、エンジン20の回転状態の検出信号が入力される。
【0018】
ECU50は、インジェクタ22と接続されており、インジェクタ22に噴射制御信号を出力し気体燃料の噴射制御を行う。また、ECU50は、可変バルブタイミング機構30にバルブタイミング制御信号を出力し吸気弁27の閉弁タイミングを制御する。また、ECU50は、点火装置29に点火制御信号を出力し、点火タイミングを制御する。更に、ECU50は、スロットルモータ43にスロットル開度制御信号を出力しスロットルバルブ42の開度制御を行う。
【0019】
次に、内燃機関制御装置に動作について説明する。
【0020】
図2に内燃機関制御装置10の動作についてのフローチャートを示す。まず、図2のステップS10(以下、単に「S10」と示す。他のステップについても同様とする。)にて、圧力センサ31から出力される圧力検出信号に基づき燃料圧力が読み込まれ、またクランクポジションセンサ36から出力されるエンジン回転検出信号に基づきエンジン回転状態が読み込まれ、スロットルポジションセンサ44から出力される検出信号に基づいてエンジン負荷量が読み込まれ、更に可変バルブタイミング機構30に設置されるセンサから出力される信号に基づき吸気弁27の開閉タイミングが読み込まれる。
【0021】
次いで、S12に移行し、噴射必要時間T1の演算が行われる。ここでいう「噴射必要時間」とは、一回の燃料噴射にて一定の気体燃料量を噴射するのに必要な時間をいい、現状のエンジン回転状態、エンジン負荷状態、燃料圧力などに基づいて決定される。すなわち、噴射必要時間T1は、S10にて読み込まれたエンジン回転状態、燃料圧力、エンジン負荷量に応じて算出される。なお、この噴射必要時間T1の演算は、燃料圧力、エンジン回転状態、エンジン負荷量に対応したマップを用いたマップ処理により行ってよい。また、エンジン負荷量は、アクセルセンサ51の検出信号に基づいて読み込んだものものを用いてもよい。
【0022】
そして、S14に移行し、噴射可能時間T2の演算が行われる。ここでいう「噴射可能時間」とは、吸気弁27の閉弁時から起算される時間であって、現状の燃料圧力にて燃焼室21に噴射が不可能となるまでの時間又は点火装置29による点火までの時間をいう。この噴射可能時間T2は、S10にて読み込まれたエンジン回転状態、吸気弁27の開閉タイミング、燃料圧力、点火装置29の点火時期に基づいて演算される。なお、この噴射可能時間T2の演算は、吸気弁27の開閉タイミング、燃料圧力、点火装置29の点火時期に対応したマップを用いたマップ処理により行ってもよい。
【0023】
次いで、S16に移行し、演算された噴射必要時間T1が噴射可能時間T2より長いか否かが判定される。噴射必要時間T1が噴射可能時間T2より長いと判定されたときには、S18に移行し、吸気行程での噴射時間の算出が行われる。吸気行程での噴射時間は、噴射必要時間T1と噴射可能時間T2の差に基づいて算出され、具体的には、T1−T2が吸気行程での噴射時間となる。
【0024】
そして、S20に移行し、ECU50からインジェクタ22に噴射制御信号が出力され、気体燃料の噴射が行われる。この気体燃料の噴射は、図3に示すように、クランクシャフトの回転が吸気下死点となった時から、噴射必要時間T1と噴射可能時間T2との差となる時間を遡った時点から開始される。そして、気体燃料の噴射は、噴射必要時間T1だけ行われる。このため、噴射必要時間T1と噴射可能時間T2との差となる時間が吸気行程噴射となり、噴射可能時間T2が圧縮行程噴射となる。なお、この場合、吸気行程での噴射開始は、吸気下死点から噴射必要時間T1と噴射可能時間T2との差となる時間T1−T2を遡った時点からではなく、吸気弁27の閉弁時から時間T1−T2を遡った時点から行ってもよい。
【0025】
一方、S16にて、噴射必要時間T1が噴射可能時間T2より長くないと判定されたときには、S22に移行し、圧縮行程噴射が行われる。すなわち、ECU50からインジェクタ22に噴射制御信号が出力され、図4に示すように、圧縮行程においてのみ気体燃料の噴射が行われる。この気体燃料の噴射は、吸気弁27の閉弁時から開始され、その閉弁時から噴射必要時間T1経過後に終了する。
【0026】
図5に、噴射必要時間と圧縮行程噴射及び吸気行程噴射との関係を示す。図5に示すように、例えば、エンジン負荷が小さく噴射必要時間T1が短いときには、圧縮行程噴射により気体燃料の噴射が行われる。そして、エンジン負荷が高まり、噴射必要時間T1が噴射可能時間T2より長くなると、圧縮行程噴射と共に吸気行程噴射も行われる。そして、さらにエンジン負荷が高まり、噴射必要時間T1が長くなると、圧縮行程噴射の時間がそのままで吸気行程噴射の時間のみが長くなる。
【0027】
以上のように、本実施形態に係る内燃機関制御装置10によれば、気体燃料の噴射に必要な噴射必要時間T1がエンジン回転状態又は燃料圧力などの状況によって噴射可能となる噴射可能時間T2より長くないときには、圧縮行程での燃料噴射が行われる。一方、気体燃料の噴射に必要な噴射必要時間T1がエンジン回転状態又は燃料圧力などの状況によって噴射可能である噴射可能時間T2より長いときに、その差分だけ吸気行程で燃料噴射が行われた後、引き続き噴射可能時間T2だけ圧縮行程での燃料噴射が行われる。このように、燃料噴射が可能な限り、圧縮行程にて燃料噴射が行われるため、吸気行程で気体燃料が噴射されることにより燃焼室21への吸気が不十分となることが抑制される。従って、エンジン20の性能の低下を防止することができる。
【0028】
また、本実施形態に係る内燃機関制御装置10によれば、インジェクタ22を大型化することなく、エンジン20の性能の低下を抑制しつつ、その駆動が行える。例えば、インジェクタ22として噴射能力の大きいものを用いれば、エンジン20の回転状態などにかかわらず、常に圧縮行程にて燃料噴射が可能とすることが考えられる。しかし、その場合には、大型化により搭載性の悪化、コストアップ、アイドリング時の低噴射の困難性を招くこととなる。これに対し、本実施形態に係る内燃機関制御装置10では、インジェクタを大型化することなく、効率的なエンジン20の駆動が可能となる。
【0029】
また、本実施形態に係る内燃機関制御装置10では、吸気行程のみの燃料噴射は行われないため、吸気行程で気体燃料が大量に噴射され、その気体燃料が吸気管側へ逆流するという不具合を防止できる。
【0030】
(第二実施形態)
第一実施形態では気体燃料を用いた車両用の内燃機関の制御に適用した内燃機関制御装置10について説明したが、本発明に係る内燃機関制御装置は、そのようなものに限られるものではなく、気体燃料により駆動する内燃機関の制御を行うものであれば、その他のものであってもよい。その場合であって、第一実施形態にかかる内燃機関制御装置10と同様な作用効果が得られる。
【0031】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、燃料噴射が可能な限り、圧縮行程にて燃料噴射が行われるため、吸気行程で気体燃料が噴射されることにより燃焼室への吸気が不十分となることが抑制される。従って、内燃機関の性能の低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第一実施形態に係る内燃機関制御装置の説明図である。
【図2】第一実施形態に係る内燃機関制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図3】第一実施形態に係る内燃機関制御装置の動作示すタイミングチャートである。
【図4】第一実施形態に係る内燃機関制御装置の動作示すタイミングチャートである。
【図5】第一実施形態に係る内燃機関制御装置における噴射必要時間と圧縮行程噴射及び吸気行程噴射との関係の説明図である。
【符号の説明】
10…内燃機関制御装置、20…エンジン、21…燃焼室、22…インジェクタ。
Claims (3)
- 燃焼室に気体燃料を直接噴射するインジェクタを具備する内燃機関の制御装置において、
前記内燃機関の回転状態に基づいて前記インジェクタの燃料噴射に必要な時間を算出する噴射必要時間演算手段と、
前記内燃機関の回転状態に基づいて前記インジェクタの燃料噴射が可能な時間を算出する噴射可能時間演算手段と、
前記噴射必要時間演算手段により算出された噴射必要時間が前記噴射可能時間演算手段により算出された噴射可能時間より長いときに、前記噴射必要時間と前記噴射可能時間との差だけ吸気行程噴射を行わせ、前記噴射可能時間の圧縮行程噴射を行わせる吸気行程噴射制御手段と、
を備えたことを特徴とする内燃機関制御装置。 - 前記噴射必要時間演算手段は、前記内燃機関の回転状態、内燃機関負荷及び前記気体燃料の圧力状態に基づいて前記インジェクタの燃料噴射に必要な時間を算出すること、
を特徴とする請求項1に記載の内燃機関制御装置。 - 前記噴射可能時間演算手段は、前記内燃機関の回転状態、吸気弁閉弁タイミング、点火タイミングに基づいて前記インジェクタの燃料噴射が可能な時間を算出すること、
を特徴とする請求項1又は2に記載の内燃機関制御装置。
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JP15214299A JP3924991B2 (ja) | 1999-05-31 | 1999-05-31 | 内燃機関制御装置 |
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Publications (2)
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JP2000345884A JP2000345884A (ja) | 2000-12-12 |
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JP15214299A Expired - Lifetime JP3924991B2 (ja) | 1999-05-31 | 1999-05-31 | 内燃機関制御装置 |
Country Status (1)
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Families Citing this family (1)
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JP6020266B2 (ja) * | 2013-03-11 | 2016-11-02 | 株式会社デンソー | 気体燃料燃焼制御システム、および、気体燃料燃焼制御方法 |
-
1999
- 1999-05-31 JP JP15214299A patent/JP3924991B2/ja not_active Expired - Lifetime
Also Published As
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