JP3652730B2 - 自転車シートの回動装置 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
この発明は、自転車シートの回動装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年では、人力による駆動系と電動モータによる駆動系とを併設し、電動モータの駆動力で人力による駆動力を補助するようにした電動モータ付き自転車が、例えば特開平2−74491号公報に開示されているように実用化されている。この電動モータ付き自転車は、足踏みペダルから入力される踏力を検出し、人力の負担が大きい時には電動モータの駆動力を大きくして人力の負担を減らすものである。
【0003】
このような電動モータ付き自転車には、電動モータを稼働するためのバッテリーが搭載される。このようなバッテリーは、車体のバランスを崩さないように、車体の中央にあるシートチューブの付近に取り付けられている。また、昇降の際あるいは運転中の使用者の脚の動きを阻害しないように、バッテリーはシートチューブの後方に取り付けられるのが普通である。この場合、バッテリーは外部からの泥はねや埃等の汚れから保護するためのボックス内に収納され、このボックスがシートチューブの後方に固定されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、バッテリーは、車体に固定されたボックスから、充電や修理等のために取り外し、再度取り付けるのが好ましい。このためには、ボックスから上方に引き出したり、上方からボックス内に差し入れたりすることができると便利である。しかしながら、ボックスが固定されたシートチューブの上には、自転車のシート(サドル)が配置されている。したがって、運転時のままでは、シートが邪魔になって、バッテリーを上下方向に着脱することが不可能である。
【0005】
このため、特開平6−270867号公報に記載されているように、シートポストを折り曲げたり、シートポストごとシートをシートチューブから取り外したりして、ボックスの上方の空間を開放することが提案されている。しかし、シートポストを折り曲げ可能にする場合には、その折り曲げ位置は、シートの高さ調節範囲を避けるため、かなりシートポストの下方の位置となる。したがって、その分シートポストをシートチューブから引き出さねばならず、作業が面倒である。また、シートポストの折り曲げや取り外しは、ネジの着脱作業を伴い、必ずしも容易ではない。
したがって、手軽にシートを移動させることができる装置が望まれていた。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の自転車シートの回動装置は、
シートポストに固定された第1のブラケットと、
上記第1のブラケットに回動可能に取り付けられた第2のブラケットと、
上記第2のブラケットに取り付けられたシートと、
上記第2のブラケットに回動可能に取り付けられ、フックが設けられたレバーと、
上記第1のブラケットに設けられ、上記フックに係合する係合ピンと、
上記第2のブラケットに設けられ、上記第2のブラケットを上記第1のブラケットに向けて回動すると、上記係合ピンが嵌め込まれる凹部とを備えたことを特徴としている。
【0007】
請求項2に記載の自転車シートの回動装置は、請求項1の構成に加えて、前記フックが前記係合ピンに係合する方向に向けて、前記レバーがその自重によって回動するようになされていることを特徴としている。
請求項3に記載の自転車シートの回動装置は、請求項1または2の構成に加えて、前記フックを前記係合ピンから外すための前記レバーの回動方向が、前記第2のブラケットを前記第1のブラケットから離すための前記第2のブラケットの回動方向と一致していることを特徴としている。
【0008】
請求項4に記載の自転車シートの回動装置は、請求項1ないし3のいずれかの構成に加えて、前記レバーは、前記フックが前記係合ピンに係合する方向にバネによって付勢させられており、前記第2のブラケットを前記第1のブラケットから離す方向に前記第2のブラケットを回動させた後、上記バネが前記第2のブラケットを回動後の位置に保持するようにしたことを特徴としている。
請求項5に記載の自転車シートの回動装置は、請求項1ないし4のいずれかの構成に加えて、前記第1のブラケットは、前記シートポストに固定された底部と、上記底部の両側に立設された側壁とを有しており、前記第2のブラケットを前記第1のブラケットから離れる方向に回動した限界高さ以上に上記側壁が形成されていることを特徴としている。
【0009】
請求項6に記載の自転車シートの回動装置は、請求項1ないし5のいずれかの構成に加えて、前記第1のブラケットが前記シートポストに溶接され、溶接ビードが前記シートポストの周囲に配置されており、上記溶接ビードを覆うカバーが設けられていることを特徴としている。
請求項7に記載の自転車シートの回動装置は、請求項1ないし6のいずれかの構成に加えて、前記第1のブラケットの側部と前記第2のブラケットの側部との間を伸縮性のある閉鎖手段で閉鎖したことを特徴としている。
また、請求項8記載の自転車シート回動装置は、シートポストに固定された第1のブラケットと、上記第1のブラケットの前部に対し、その前端が回動可能に取り付けられた第2のブラケットと、上記第2のブラケットに取り付けられたシートと、上記第2のブラケットに回動可能に取り付けられたフックを有するレバーを備え、上記第2のブラケットの乗車位置への回動に伴って、この第2のブラケットが当該乗車位置から回動しないように上記第1のブラケットの側に前記フックが係止してロックする一方、ロックしている場合に、上記レバーが操作されると、当該ロックを解除可能とするロック機構とを有することを特徴とする。
また、請求項9記載の自転車シート回動装置は、請求項8の構成に加えて、上記シートは、バッテリーを収納し自転車から上下方向に着脱可能に構成されたバッテリーケースの着脱方向上方に取り付けられたものであって、上記シートが乗車位置から離れる方向に回動した際に上記バッテリーケースを取り出すことを可能ならしめることを特徴とする。
【0010】
【作用】
請求項1の自転車シートの回動装置によれば、第2のブラケットに回動可能に取り付けられたレバーを回動させて、レバーのフックを第1のブラケットに設けられた係合ピンから取り外し、第2のブラケットを第1のブラケットから離れる方向に回動させる。これにより、第2のブラケットに取り付けられたシートを簡単に回動させることが可能である。
そして、第2のブラケットを再度第1のブラケットに向けて回動させ、レバーのフックを係合ピンに係合させることにより、第2のブラケットは動かないように保持され、この状態でシートに使用者が座ることができるようになる。この際には、第1のブラケットに設けられた係合ピンが第2のブラケットに設けられた凹部に嵌め込まれ、第2のブラケットが第1のブラケットに対して移動することができなくなる。したがって、前後方向へのシートのがたつきが防止される。
【0011】
請求項2の自転車シートの回動装置によれば、フックが係合ピンに係合する方向に、レバーが自重によって回動するようになされているために、一旦フックが係合ピンに係合すれば、自然に係合ピンからフックが外れることがない。したがって、フックを係合ピンに係合する方向に付勢しておく必要がなく、この付勢用のバネなどを省略することができる。また、付勢用のバネを設ける場合にあっては、このバネが万一破損しても、フックが係合ピンに係合した状態が維持される。
請求項3の自転車シートの回動装置によれば、フックを係合ピンから外すために、レバーを回動する方向が、第2のブラケットを第1のブラケットから離すために第2のブラケットを回動する方向と一致しているために、フックを係合ピンから外す動作と、第2のブラケットを第1のブラケットから離す動作を、連続的に円滑に行うことができる。
【0012】
請求項4の自転車シートの回動装置によれば、フックを係合ピンに係合する方向に付勢するバネによって、第2のブラケットを第1のブラケットから離す方向に第2のブラケットを付勢する。したがって、特別な保持機構を設けることなく、一旦第1のブラケットから離す方向に回動させたシートを、その回動後の位置に保持することができる。これによって、予期しないときにシートが第1のブラケット側に回動して、シートチューブの周囲で作業している使用者に第2のブラケットがぶつかるなどの不都合を避けることができる。
請求項5の自転車シートの回動装置によれば、第2のブラケットを第1のブラケットから離れる方向に回動した限界高さ以上に、第1のブラケットの側壁を形成しているために、第2のブラケットと第1のブラケットとの間に手を挟まれるのを避けることができる。
【0013】
請求項6の自転車シートの回動装置によれば、溶接ビードを覆うカバーが設けられていることによって、シートポストをシートチューブに最も深く差し込んだときでも、溶接ビードがシートチューブの上端縁に食い込むことがない。したがって、シートチューブの上端縁を傷つかないように保護することができ、傷に起因する腐食の発生を防止することが可能である。
請求項7の自転車シートの回動装置によれば、第1のブラケットの側部と第2のブラケットの側部との間を伸縮性のある閉鎖手段で閉鎖しているために、第2のブラケットと第1のブラケットとの間に手を挟まれるのを確実に防止することができる。
請求項8の自転車シートの回動装置によれば、シートが取り付けられた第2のブラケットが乗車位置に回動すると、当該乗車位置からにロックされる一方、ロックされている場合に当該ロックを解除して回動させることが可能となる。
請求項9の自転車シートの回動装置によれば、シートが乗車位置から離れる方向に回動した際にバッテリーケースを取り出すことが可能となる。
【0014】
【実施例】
A.実施例の構成
以下、図面を参照してこの発明の一実施例について説明する。まず、図1は実施例に係る自転車シートの回動装置を備えた電動モータ付き自転車を示す側面図である。図において符号10はメインチューブを示しており、このメインチューブ10の前部にはヘッドチューブ11が固定されている。ヘッドチューブ11の内部には、ハンドルステム12がヘッドチューブ11の軸線を中心にして回動自在に挿入されている。ハンドルステム12の下部には左右一対の前フォーク16が固定されており、この前フォーク16には前輪14が回転可能に取り付けられている。また、ハンドルステム12の上部には左右に延びるハンドルバー18が固定されている。
【0015】
メインチューブ10は前部から斜め下後方に延びており、その後端には中ラグ44が固定され、この中ラグ44にシートチューブ22と1本のリアチューブ26とが固定されている。シートチューブ22は、シート20が取り付けられたシートポスト19を支持している。リアチューブ26にはハンガーラグ45を介して一対のチェーンステー27が固定され、チェーンステー27とシートチューブ22は、左右一対のシートステー24で連結されている。図示のように、シートチューブ22、シートステー24、リアチューブ26およびチェーンステー27はほぼ三角形をなしており、使用者が乗車したときの体重を支持しうるようになっている。シートステー24とチェーンステー27との連結部には後輪28が回転可能に取り付けられている。
【0016】
中ラグ44およびハンガーラグ45の下方には、ブラケット46,47を介してパワーユニット34が取り付けられている。このパワーユニット34は、人力による駆動系、電動モータによる駆動系、および両者の合力機構をユニットとしたものであり、そのケースには、クランク軸33が取り付けられ、このクランク軸33の両端にはクランク32が固定されている。クランク32にはそれぞれ足踏みペダル31が取り付けられている。なお、符号36は電動モータを示す。
【0017】
使用者が足踏みペダル31を踏んだときのクランク軸33の回転は、パワーユニット34内の機構を通じてチェーン37に伝達され、さらにフリーホイール29を介して後輪28に伝達され、後輪28が回転することによってこの電動モータ付き自転車が推進される。その一方、電動モータ36が駆動されると、そのロータの回転がパワーユニット34内部の別の機構を通じてチェーン37に伝達され、これによっても後輪28が回転されるようになっている。このようにして、この電動モータ付き自転車は、クランク軸33によって伝えられる人力による駆動系と、電動モータ36による駆動系とを備えている。
【0018】
また、メインチューブ10の下部にはケーシング41が固定されている。このケーシング41の内部にはコントローラ42が設けられている。電動モータ36には充電可能なバッテリー39から駆動用の電流が供給される。このバッテリー39の支持構造については後述する。バッテリー39は電動モータ36に電流を供給し、コントローラ42はこの電流を増減させるものである。
【0019】
すなわち、人力の駆動力、すなわち足踏みペダル31、クランク32、クランク軸33を通じて与えられる踏力が大きいときは、コントローラ42が電動モータ36に流れる電流を大きくし、踏力が小さいときは、コントローラ42が電動モータ36に流れる電流を小さくする。これによって、人力の負担が大きいときには電動モータ36の駆動力を大きくして、人力の負担を減らすことが可能である。なお、電動モータ36としては、例えば永久磁石式直流モータや直巻直流モータを使用しうる。また、コントローラ42としては、直流電圧のオン・オフの時間比(デューティー比)をトルクに応じて変化させるチョッパ方式のものが好ましい。
【0020】
図2は、この電動モータ付き自転車の完成状態を示す側面図である。この電動モータ付き自転車の車体には、メインチューブ10などを覆うカバー90が装着される。カバー90は上方のカバー91と下方のカバー92とからなり、上方のカバー91はメインチューブ10、シートチューブ22の下部、リアチューブ26、およびバッテリー39のアウターボックス40の下部を覆うものであり、下方のカバー92は電動モータ36、ケーシング41を覆うものである。
【0021】
さて、図1に示すように、前述したバッテリー39はインナーボックス38内に上下2段に収納されており、このインナーボックス38がさらにアウターボックス40に収容されており、アウターボックス40がシートチューブ22と後輪28との間に配置されて、中ラグ44に形成された凸部72、ハンガーラグ45に形成された凸部73、シートステー24に取り付けられた固定具74に固定されている。
【0022】
アウターボックス40は、上面が開いたほぼ直方体の箱であり、上方からインナーボックス38を差し入れることができるようになっている。アウターボックス40の上面には上蓋61が設けられている。この上蓋61は矢印Aで示す方向に回動自在になっており、アウターボックス40の上面を開閉可能としている。そして上蓋61を閉じたときには、アウターボックス40の内部が完全に密閉され、泥、雨水、埃などが侵入せず、インナーボックス38が汚れないようになっている。
【0023】
図3は、実施例の自転車シートの回動装置100を示す側断面図であり、図4のIII-III線矢視図である。また、図4は図3のIV-IV線矢視断面図である。シートポスト19の上端縁には、第1のブラケット101が溶接により固定されている。符号102は、溶接ビードを示す。第1のブラケット101は、シートポスト19に溶接された底部103と、底部103の両側から上方に折り曲げられたほぼ三角形の側壁104とを有する。
【0024】
シートポスト19の周囲には、樹脂製のカバー107が配置されており、このカバー107が溶接ビード102を覆っている。これによって、シートポスト19をシートチューブ22に最も深く差し込んだときでも(図1参照)、溶接ビード102がシートチューブ22の上端縁に食い込むことがない。したがって、シートチューブ22の上端縁を傷つかないように保護することができ、傷に起因するシートチューブ22の腐食の発生を防止することが可能である。
【0025】
両方の側壁104の間には、係合ピン105が掛け渡されている。係合ピン105は、底部103よりもわずかに高い位置に取り付けられている。係合ピン105の真下において、底部103には、シートポスト19の内部空間と連通する穴106が形成されている。
【0026】
また、両方の側壁104の間には、第2のブラケット110が配置されており、側壁104の前端部に取り付けられた回動軸108を中心に第2のブラケット110は回動可能になっている。第2のブラケット110は、第1のブラケット101の底部103に接触する底部111と、底部111の両側から上方に折り曲げられた側壁112とを有する。第2のブラケット110が回動軸108を中心に円滑に回動することができるように、底部111の前端は回動軸108と同心の円弧状に形成されている。また、側壁112の前端には、突起118が形成されている。後述するように、第2のブラケット110が図中、反時計方向に回動すると、突起118は第1のブラケット101の底部103の前端に当接し、回動ストッパの役割を果たす。
【0027】
両方の側壁112には、それぞれ正方形の貫通孔130が形成されている。両方の貫通孔130と同軸上になるように、両方の側壁112の間には、補強用のカラー133が溶接されており、側壁112の外側には、公知の菊座134および押え金具135が配置されている。そして、これらの菊座134、押え金具135、貫通孔130およびカラー133には、菊座ボルト131が挿入されており、菊座ボルト131の両端にはナット132が螺合されている。シート20のフレーム20aは、このうちの菊座134および押え金具135によってクランプされる。このようにして、シート20は第2のブラケット110に取り付けられており、これによってシート20が第2のブラケット110と共に回動軸108を中心に回動可能になっている。
【0028】
第2のブラケット110の両方の側壁112の間には、回動軸113が掛け渡されており、この回動軸113には、ほぼL字形の板からなるレバー120が取り付けられて、回動可能になっている。なお、図4中の符号114は、レバー120を第2のブラケット110の内部空間の中央に位置させるため、レバー120を貫通して溶接されたスペーサを示す。側壁112のレバー120のうち後方に延びた腕部121の先端には、レバー120の力点となる摘み122が取り付けられている。
【0029】
一方、レバー120の下方に延びた腕部123の先端には、レバー120の作用点となるフック124が形成されている。第2のブラケット110の底部111には、腕部123が通過するスリット116が形成されており、フック124は第1のブラケット101の穴106を通ってシートポスト19の内部空間に侵入しうるようになっている。フック124は、車体の前方に向けて凸となっており、平常時は係合ピン105に係合させられている。また、第2のブラケット110の底部111には、下方から上方に向けて凹んだ凹部115が形成されている。凹部115の断面は半円形であり、平常時、すなわち第2のブラケット110の底部111が第1のブラケット101の底部103と接触した状態で、係合ピン105が凹部115に嵌め込まれるようになっている。
【0030】
また、腕部123と第1のブラケット101の前端との間には、引っ張り用のコイルバネ125が掛け渡されており、これによって図3において時計方向にレバー120が付勢されている。ただし、レバー120は自重によっても時計方向に回動するような姿勢で取り付けられている。このようにしてレバー120が、バネ力および自重によって時計方向に付勢されていることによって、一旦フック124が係合ピン105に係合すると、フック124は係合ピン105から容易には外れないようになっている。なお、第1のブラケット101の底部103の前端は、コイルバネ125の一端を掛けるために、立ち上げられており、ここに掛け止め用の孔126が形成されている。また、第2のブラケット110の底部111の前端には、コイルバネ125がぶつからないように溝117が形成されている。
【0031】
そして、これらの付勢力に抗して、レバー120の摘み122を上方に持上げると、レバー120が回動軸113を中心にして、図3中の反時計方向に回動する。この状態を図3において仮想線で示す。これによって、係合ピン105からフック124を外すと、第2のブラケット110をシート20ごと、回動軸108を中心にして、図3中の反時計方向、すなわち第1のブラケット101から離れる方向に回動することができるようになる。
【0032】
B.実施例の動作
次に実施例の自転車シートの回動装置100の動作について説明する。まず、図3に実線で示す平常時において、使用者がレバー120の摘み122を上方に持上げる。これによって、コイルバネ125の力およびレバー120の自重に抗して、レバー120が回動軸113を中心にして、図3中の反時計方向に回動する。これによって、係合ピン105からフック124が外れる。そして、レバー120をその位置に保持したまま、第2のブラケット110をシート20ごと、回動軸108を中心にして、図3中の反時計方向、すなわち第1のブラケット101から離れる方向に回動する。
【0033】
このようにして、図5に示すように、第2のブラケット110に取り付けられたシート20を、シートポスト19と平行に近くなるまで簡単に回動することができる。また、上述のように、フック124を係合ピン105から外すためにレバー120を回動する方向は、図3中の反時計方向であり、第2のブラケット120を第1のブラケット101から離すために第2のブラケット120を回動する方向も反時計方向である。このように両方向が互いに一致しているために、フック124を係合ピン105から外す動作と、第2のブラケット110を第1のブラケット101から離す動作を、連続的に円滑に行うことができる。
【0034】
図5に示す状態において、レバー120はコイルバネ125によって、回動軸113を中心に時計方向に付勢されている。これによって、レバー120の腕部123は第2のブラケット110のスリット116の前側縁に当接し、第2のブラケット110を反時計方向に向けて付勢する。そして、第2のブラケット110の突起118が第1のブラケット101の底部103前端に当接することによって、第2のブラケット110およびシート20が静止している。
【0035】
このようにフック124を係合ピン105に係合する方向に付勢するコイルバネ125によって、第2のブラケット110を第1のブラケット101から離す方向に付勢しているため、特別な保持機構を設けることなく、一旦第1のブラケット101から離す方向に回動させたシート20を、その回動後の位置に保持することができる。これによって、予期しないときにシート20が第1のブラケット101側に回動して、シートチューブ22の周囲で作業している使用者に第2のブラケット110がぶつかるなどの不都合を避けることができる。
【0036】
シート20が回動後の位置に保持された状態で、使用者はアウターボックス40の上蓋61を開けて、内部のインナーボックス38を上方に取り出して、バッテリー39に充電したり、充電後のバッテリー39を内蔵したインナーボックス38を上方からアウターボックス40内に差し入れたりする。
【0037】
上述したように、図5に示すのは、シート20および第2のブラケット110を第1のブラケット101から最も離した限界状態である。このとき、第1のブラケット101の側壁104の前方斜めの辺104aは、第2のブラケット110の底部111よりも高くなっている。これによって、第2のブラケット110と第1のブラケット101との間に、使用者が不用意に手を挾まれるのを避けることができる。
【0038】
そして、図5に示す状態から、シート20を時計方向すなわち第1のブラケット101に向かう方向に回動させ、レバー120のフック124を再度係合ピン105に係合させることにより、第2のブラケット110は動かないように保持され、この状態でシート20に使用者が座ることができるようになる。この際には、まずフック124の斜辺124aが係合ピン105に当接し、係合ピン105からの反力によって、フック124が一旦反時計方向に回動した後、フック124に係合ピン105が掛かる。
【0039】
一方、第2のブラケット110の底部111は、第1のブラケット101の底部103に当接し、係合ピン105が底部111に設けられた凹部115に嵌め込まれる。ここで、凹部115は半円形をしているため、係合ピン105が凹部115に嵌め込まれると、第2のブラケット110が第1のブラケット101の上を前後に移動することができなくなる。したがって、前後方向へのシート20のがたつきが防止される。なお、この実施例では、係合ピン105が第1のブラケット101の両方の側壁104の間に掛け渡されているため、例えば係合ピン105を一方の側壁104のみ片持梁状に支持させた場合に比べて、係合ピン105の撓みを小さくすることが可能である。
【0040】
さらに、この実施例では、レバー120の姿勢によって、フック124が係合ピン105に係合する方向に、レバー120が自重によって回動するようになされているために、一旦フック124が係合ピン105に係合すれば、自然に係合ピン105からフック124が外れることがない。したがって、万一コイルバネ125が破損しても、フック124が係合ピン105に係合した状態が維持される。
【0041】
なお、図6は、レバー120を拡大して示す側面図である。レバー120のフック124は、シート120をほぼ水平にする平常状態で、図中左上から右上に延びる斜辺124aと、斜辺124aと隣り合っておりほぼ水平な水平辺124bとを有する。この平常状態で、水平辺124bは係合ピン105よりも下方になる。さらに、フック124は、水平辺124bと隣り合っており左下から右上に延びる斜辺124cと、斜辺124cに連なっている凹面124dを有する。
【0042】
フック124を係合ピン105に係合させると、係合ピン105はまず水平辺124b上になる。そして、仮想線で示すように、水平辺124bとが係合ピン105と当接すれば、コイルバネ125の引っ張り力による回転モーメントMにより、フック124から係合ピン105に上向きの力がかかり、フック124にはその反力である下向きの力がかかる。したがって、回動軸113および第2のブラケット110が下方に引かれることになり、これによって第2のブラケット110に取り付けられたシート20にも下向きの力が加わり、シート20の上下のがたつきが防止されることになる。
【0043】
また、レバー120の寸法誤差、例えば回動軸113(図3)と水平辺124bとの距離が所定値より短いことにより、係合ピン105が水平辺124bと当接しない場合には、回転モーメントMによって、斜辺124cが係合ピン105に当接する。斜辺124cによっても、係合ピン105には上向きの力がかかり、フック124には反力として下向きの力がかかる。したがって、この場合も、シート20に下向きの力が加わり、シート20の上下のがたつきが防止されることになる。
【0044】
C.変更例
本発明は前記実施例に限定されるものではなく、以下のように種々の変更が可能である。
▲1▼図7に仮想線で示すように、第1のブラケット101の底部103から、第2のブラケット110の側壁112まで弾性を有する蛇腹状のカバー(閉鎖手段)140で覆うことが可能である。カバー140は、シートポスト19の周囲を囲んでおり、前記のカバー107と同様に、溶接ビード102を覆って、シートポスト19をシートチューブ22に最も深く差し込んだときでも、溶接ビード102がシートチューブ22の上端縁に食い込まないようにする機能を兼ねている。
【0045】
このカバー140によって、第1のブラケット101の側壁104と第2のブラケット110の側壁112との間が閉鎖される。したがって、第2のブラケット110と第1のブラケット101との間に、使用者は手を入れることができなくなり、誤って手が挟まれるのを確実に防止することができる。なお、カバー140は蛇腹状に形成されているために伸縮性があり、第2のブラケット110を回動動作する際の支障にはならない。
【0046】
▲2▼前記の実施例は電動モータ付き自転車に適用されているが、この発明は通常の自転車に対して適用することも可能である。例えば、シートポストの付近に頻繁に交換や修理をしなければならない部品を配置したときには、これは便利である。
▲3▼前記の実施例では、平常状態からシートを車体の前方に向けて傾けているが、これに限らず、シートポストの付近の部品の配置に応じて、シートを車体の後方に向けて傾けることも可能である。
【0047】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明にあっては、レバーを回動させて、そのフックを第1のブラケットに設けられた係合ピンから取り外すことにより、第2のブラケットとこれに取り付けられたシートを第1のブラケットから離れる方向に簡単に回動させることが可能である。また、第2のブラケットを再度第1のブラケットに向けて回動させた後は、レバーのフックが係合ピンに係合されるだけでなく、係合ピンが第2のブラケットに設けられた凹部に嵌め込まれ、第2のブラケットが第1のブラケットに対して移動することができなくなる。したがって、前後方向へのシートのがたつきが防止される。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施例に係る自転車シートの回動装置を備えた電動モータ付き自転車を示す側面図である。
【図2】前記電動モータ付き自転車にカバーを取り付けた状態を示す側面図である。
【図3】実施例の自転車シートの回動装置を示す側断面図であり、図4のIII-III線矢視図である。
【図4】図3のIV-IV線矢視断面図である。
【図5】前記回動装置によりシートを立ち上げた状態を示す側断面図である。
【図6】前記回動装置のレバーを拡大して示す側面図である。
【図7】実施例の変更例を示す側面図である。
【符号の説明】
19 シートポスト、20 シート、20a フレーム、
22 シートチューブ、100 回動装置、
101 第1のブラケット、102 溶接ビード、
104 側壁、105 係合ピン、107 カバー、
108 回動軸、110 第2のブラケット、
112 側壁、113 回動軸、115 凹部、
120 レバー、124 フック、125 コイルバネ、
140 カバー(閉鎖手段)
Claims (9)
- シートポストに固定された第1のブラケットと、
上記第1のブラケットに回動可能に取り付けられた第2のブラケットと、
上記第2のブラケットに取り付けられたシートと、
上記第2のブラケットに回動可能に取り付けられ、フックが設けられたレバーと、
上記第1のブラケットに設けられ、上記フックに係合する係合ピンと、
上記第2のブラケットに設けられ、上記第2のブラケットを上記第1のブラケットに向けて回動すると、上記係合ピンが嵌め込まれる凹部と
を備えたことを特徴とする自転車シートの回動装置。 - 前記フックが前記係合ピンに係合する方向に向けて、前記レバーがその自重によって回動するようになされていることを特徴とする請求項1に記載の自転車シートの回動装置。
- 前記フックを前記係合ピンから外すための前記レバーの回動方向が、前記第2のブラケットを前記第1のブラケットから離すための前記第2のブラケットの回動方向と一致していることを特徴とする請求項1または2に記載の自転車シートの回動装置。
- 前記レバーは、前記フックが前記係合ピンに係合する方向にバネによって付勢させられており、前記第2のブラケットを前記第1のブラケットから離す方向に前記第2のブラケットを回動させた後、上記バネが前記第2のブラケットを回動後の位置に保持するようにしたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の自転車シートの回動装置。
- 前記第1のブラケットは、前記シートポストに固定された底部と、上記底部の両側に立設された側壁とを有しており、前記第2のブラケットを前記第1のブラケットから離れる方向に回動した限界高さ以上に上記側壁が形成されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の自転車シートの回動装置。
- 前記第1のブラケットが前記シートポストに溶接され、溶接ビードが前記シートポストの周囲に配置されており、上記溶接ビードを覆うカバーが設けられていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の自転車シートの回動装置。
- 前記第1のブラケットの側部と前記第2のブラケットの側部との間を伸縮性のある閉鎖手段で閉鎖したことを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の自転車シートの回動装置。
- シートポストに固定された第1のブラケットと、
上記第1のブラケットの前部に対し、その前端が回動可能に取り付けられた第2のブラケットと、
上記第2のブラケットに取り付けられたシートと、
上記第2のブラケットに回動可能に取り付けられたフックを有するレバーを備え、上記第2のブラケットの乗車位置への回動に伴って、この第2のブラケットが当該乗車位置から回動しないように上記第1のブラケットの側に前記フックが係止してロックする一方、ロックしている場合に、上記レバーが操作されると、当該ロックを解除可能とするロック機構と
を有することを特徴とする自転車シートの回動装置。 - 上記シートは、
バッテリーを収納し自転車から上下方向に着脱可能に構成されたバッテリーケースの着脱方向上方に取り付けられたものであって、
上記シートが乗車位置から離れる方向に回動した際に上記バッテリーケースを取り出すことを可能ならしめる
ことを特徴とする請求項8に自転車シートの回動装置。
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