JP3651092B2 - アルカリ乾電池 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は二酸化マンガンを正極に用いたアルカリ乾電池に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
アルカリ乾電池は、従来、正極活物質としての二酸化マンガンと導電材としての黒鉛などの混合物である正極合剤をペレットに成形し正極としている。特に、円筒形アルカリ乾電池においては、正極合剤を幾つかに分割したドーナツ型のペレットに成形した後、電池ケース中に挿入して正極とする。あるいは、電池ケース中に挿入後、再度成形し正極を構成する場合もある。これらの時点において正極合剤ペレットの細孔量は、水銀圧入法によって測定される細孔径3nm〜400μmの細孔よりなる空孔率が20〜25%、細孔量にして0.07〜0.09cc/gであった。このような細孔量である理由は、合剤の組成と製造方法によって決まるもので、このような正極の電解液吸収量は、正極合剤1g当り0.06cc以下であるのが一般的である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
アルカリ乾電池の正極利用率を向上させようとする場合、正極合剤中の電解液量を増加させることが有効であることは知られている。特に、強負荷放電においては、正極の分極が大きく、電解液量を増加させることは大変有効である。放電性能の向上を図るために特開昭49−33128号公報のように正極合剤中の水分量を9〜13%に規制したものがあるが(この値は、正極の電解液吸収量が正極合剤1g当り0.06〜0.09ccに相当する)従来の正極合剤ではそれ以上の電解液の吸収は困難であった。
【0004】
本発明は、上記のような課題を解決するもので、高負荷放電に適したアルカリ乾電池を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、本発明では水銀圧入法によって測定される細孔径3nm〜400μmの細孔よりなる正極合剤ペレットの細孔量を0.14cc/g以上0.24cc/g以下とした正極をアルカリ乾電池に使用するものである。さらに具体的には、その細孔に含浸させる電解液量を0.09cc/g以上0.12cc/g以下に規制することによって、正極中の電解液量を最適化するものである。この場合、二酸化マンガンと混合する導電材として、アセチレンブラック、あるいはケッチェンブラックが好ましい。それは、それらの導電材の持つストラクチャーが高い吸液性を有しているためである。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明は正極合剤ペレットの細孔径3nm〜400μmの細孔よりなる細孔量が0.14〜0.24cc/gであるアルカリ乾電池としたものであり、従来に比べ、正極中に含浸させる電解液量を増加させ、二酸化マンガンの近傍に存在する電解液量を増加させることができる。従って、上記の合剤を成形し最適量の空孔を持つ正極合剤ペレットを製造した場合、最適量の電解液を含浸させることができる。このような条件で、正極反応は従来の正極合剤よりも速やかに生じる。すなわち、正極の放電反応に伴い生成した水酸化物イオンの拡散、放電反応で消費される水の供給が速やかになり、特に高負荷での放電における分極を低減させることができるため正極利用率が大幅に向上する。また、このように多孔性かつ高吸液性の正極合剤を製造しようとした場合、二酸化マンガンと混合する導電材料として、アセチレンブラック、あるいはケッチェンブラックを用いることが好ましい。その理由としては、それらの持つストラクチャーが高い吸液性と多孔性を持っており、二酸化マンガンと混合することにより、これらの導電材料は二酸化マンガンの周囲に絡み、二酸化マンガン近傍に補液層を形成し、電解液を供給するのに好ましい状態になるためである。一方、従来のリン片状黒鉛や膨張黒鉛を用いた場合、その混合量やペレット成形圧を最適化してもアセチレンブラック、あるいはケッチェンブラックを用いた場合と同等な放電性能を得ることができない。これは、黒鉛材料が持つ撥水性が電解液の供給を妨げるため、および上記のような高吸液性の正極合剤ペレットを製造できないためによると考えられる。以上の理由により、本発明の正極合剤ペレットを使用しアルカリ乾電池を製造した場合、高負荷放電でのアルカリ乾電池の放電性能が大幅に改善される。また、上記のアルカリ乾電池は正極の利用率が画期的に改善されるため、導電材料の混合量増加に伴う二酸化マンガン量の減少を高負荷領域で補うことができる。
【0007】
【実施例】
以下図面を用いて本発明の実施例を示す。
【0008】
(実施例)
図1はアルカリ乾電池の構成例の断面図である。図中1は電池ケース兼正極集電体、2は二酸化マンガンと導電材とからなる正極合剤ペレット、3はセパレータ、4はゲル状亜鉛負極、5は負極集電体、6は樹脂封口体であり、単3型アルカリ乾電池で実施した。
【0009】
上記正極合剤ペレット2は二酸化マンガンと導電材としてアセチレンブラックを混合して、正極合剤ペレットの細孔量を0.07cc/gから0.28cc/gの範囲で検討し、正極合剤ペレットへの電解液の注入は、真空注液法を用いて正極合剤ペレットの空孔部の約25〜88%に電解液を含浸させた。図2は、細孔量が0.07cc/gから0.28cc/gの正極合剤ペレットを用い、その細孔体積の75%に電解液を含浸させた単3型アルカリ乾電池の1A定電流放電での0.9V終止までの放電容量と細孔量の関係を示したものである。図に示されるように細孔量が小さいものでは十分な放電容量の改善が得られない。一方、細孔量を0.24cc/g以上の正極合剤ペレットでは、二酸化マンガンおよび導電剤粒子の接触が弱くなり、電池内部抵抗が上昇し放電容量が低下する。また、図3は細孔量0.16cc/gの正極合剤ペレットに含浸させる電解液量を変化させて製造した単3型アルカリ乾電池の1A定電流放電での0.9V終止までの放電容量と電解液量の関係を示したものである。このように、電解液量が正極ペレット1gあたり0.09cc以上0.12cc以下の範囲の時に大幅な放電容量の改善が得られる。これは電解液量が最適量の時に、正極が理想的に反応できることを示している。逆に、電解液量が少ない場合は上記の効果が得られないばかりでなく内部抵抗の増大が生じ、一方、電解液量が多すぎると合剤の緩みなどの問題が生じる。また、正極合剤ペレットの細孔量が0.12cc/gから0.24cc/gの範囲のいずれの場合も、電解液量が正極合剤ペレット1g当たり0.09ccから0.12ccで優れた放電性能が得られる。つまり、正極合剤ペレットの細孔に占める電解液の割合よりも、正極合剤ペレットの細孔に含浸させる電解液の総量が放電性能に大きく寄与している。なお、実施例の正極合剤ペレットは見かけ密度が2.6g/ccであることから、優れた放電性能が得られる電解液量は、正極合剤ペレット1cc当たり0.23から0.31ccである。
【0010】
上記実施例において、正極合剤ペレットとして、二酸化マンガン91重量%とアセチレンブラック9重量%を混合し、みかけ密度2.6g/ccに成形した電池を実施例1、二酸化マンガン94重量%とケッチェンブラック6重量%を混合し、みかけ密度2.6g/ccに成形した電池を実施例2、二酸化マンガン96重量%と黒鉛4重量%を混合し成形した電池を比較例とした電池を作成した。
【0011】
上記電池の実施例および比較例の正極合剤ペレットの細孔量(cc/g)、正極合剤ペレット1g中に含浸させた電解液量、含浸した電解液量の正極空孔体積に対する割合(電解液体積率(%))を示す。
【0012】
【表1】
Figure 0003651092
【0013】
通常、正極合剤ペレットとセパレータに含浸させる電解液量を注液量としているが、ここで示す電解液量とは正極合剤ペレットのみの吸収した量を示す。この場合、細孔量および電解液量には最適値があり、細孔量が大きすぎる正極合剤ペレットでは充填できるマンガン量が小さくなりすぎ、返って放電容量が小さくなる。また、(表2)にそれらの正極合剤ペレットを用いて製造した単3型アルカリ乾電池の室温での定電流放電での0.9V終止における放電容量を示す。
【0014】
【表2】
Figure 0003651092
【0015】
(表2)より明らかなように、放電電流が100mAと弱い場合は放電容量に差は見られないが、1000mA,1500mAと強くなるに伴い、実施例1,2と比較例とに優位差が認められる。実施例1および2は、混合時にアセチレンブラックあるいはケッチェンブラックのストラクチャーが一部切断され、カーボンが二酸化マンガンの周りを取り巻いている状態であると考えられる。これらの正極合剤ペレットは、成形前に正極合剤に1〜10重量%の電解液を添加することにより成形性を高めることができる。また、正極合剤を加圧成形した後、電池ケース兼正極集電体1に挿入する。実施例1,2の正極合剤ペレットは電解液注液後に膨張し電池ケースに密着するので、従来の正極合剤のように挿入後に再度成形する必要がない点も利点のひとつである。
【0016】
【発明の効果】
以上の結果から明らかなように、アルカリ乾電池において正極合剤ペレットの空孔率、正極合剤ペレット中に含浸させる電解液量を規制することにより放電性能に優れた電池を得ることができた。なお、本発明の効果は二酸化マンガンの利用率を改善させることによるものであり、これにより正負極充填比率の最適化を行い、比較的高負荷放電に適した乾電池を提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例におけるアルカリ乾電池の断面図。
【図2】正極合剤ペレットの細孔量と放電容量の関係を示した図。
【図3】正極合剤ペレットの細孔に含浸させる電解液量と放電容量の関係を示した図。
【符号の説明】
1 電池ケース兼正極集電体
2 正極合剤ペレット
3 セパレータ
4 ゲル状亜鉛負極
5 負極集電体
6 樹脂封口体

Claims (2)

  1. 主成分として二酸化マンガンと導電材とからなる正極合剤を加圧成型してなる正極合剤ペレットを用いたアルカリ乾電池において、前記導電材はアセチレンブラックまたはケッチェンブラックであり、正極合剤ペレットの細孔径3nm〜400μmの細孔よりなる細孔量が0.14cc/g以上0.24cc/g以下であるアルカリ乾電池。
  2. 正極合剤1g当たり0.09cc以上0.12cc以下の電解液を含浸させてなる請求項1記載のアルカリ乾電池。
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