JP3650784B2 - 手動式変速機用シフトレバーの支持装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両用の手動式変速機において、特にフロアシフトタイプのシフトレバー支持装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
図6は従来のシフトレバー支持装置の一例を表した断面図である。この図面で示すようにシフトレバー70は、その大球部71がシフトレバーリテーナ80に対してシフト及びセレクト操作可能に球面支持されている。この大球部71から下方に延長した部分の先端に形成されている小球部72は、シフトレバー70の操作を変速機側に伝えるシフトアンドセレクトシャフト(図示外)のレバーハウジング73に結合(ボールジョイント)されている。このレバーハウジング73には、その両側からセレクトリターンピン84の先端がそれぞれ接触しており、シフトレバー70を矢印方向へセレクト操作したときに、両セレクトリターンピン84の一方がそのスプリング85の力に抗して押し動かされる。このときの反力によってシフトレバー70を図示の中立位置に戻そうとするセレクトリターン力が得られる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら前記セレクトリターン力を得るためには、前記レバーハウジング73の両側においてセレクトリターンピン84及びスプリング85をそれぞれ配置しなければならず、この機構が大型になる。
【0004】
本発明の第1の目的は、シフトレバーに対してセレクトリターン力を作用させるための機構の小型化を図ることである。
本発明の第2の目的は、セレクトリターン力によってシフトレバーの大球部に偏った力が作用することを避け、シフトレバーの操作を円滑にして操作フィーリングを良好にすることである。
本発明の第3の目的は、シフトレバーの大球部をシフトレバーリテーナに対して位置決めするための専用部品を不要とすることである。
本発明の第4の目的は、シフトレバーのセレクト操作の方向によってセレクトリターン力をそれぞれ個別に設定可能とすることである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明における手動式変速機用シフトレバーの支持装置は前記目的を達成するためになされたもので、以下のように構成されている。
第1の発明は、シフトレバーの大球部がシフトレバーリテーナに対してシフト及びセレクト操作可能に球面支持されている手動式変速機用シフトレバーの支持装置であって、前記シフトレバーの大球部に対し、シフト操作のための回動軸線上において該大球部の両側にわたって貫通させた筒体により中空形状の保持部が構成されている。この保持部の内部にスプリングと、このスプリングの両側に位置する球面部材とがそれぞれ組込まれている。一方、前記シフトレバーリテーナ側には、シフトレバーのセレクト操作に時における両球面部材の移動方向に沿った溝形状のカム部がそれぞれ設けられている。これらのカム部に対し、保持部を構成する筒体の両端部を、シフトレバーのセレクト操作に伴う移動のみを許容した状態でそれぞれ係合させることにより、シフトレバーがシフトレバーリテーナに対して位置決めされ、かつ、両カム部に対して両球面部材がスプリングの力で個々に押付けられている。そして、シフトレバーがセレクト操作されると、両球面部材が前記スプリングの力に抗して保持部の内部に押し込まれながら個々に対応するカム部の斜面に移行するように設定されている。
【0006】
第2の発明は、シフトレバーの大球部がシフトレバーリテーナに対してシフト及びセレクト操作可能に球面支持されている手動式変速機用シフトレバーの支持装置であって、
前記シフトレバーの大球部に対し、シフト操作のための回動軸線上において該大球部の両側にわたって貫通させた孔形状の保持部が設けられている。この保持部の内部にスプリングと、このスプリングの両側に位置する砲弾形状のピンとがそれぞれ組込まれている。一方、前記シフトレバーリテーナ側には、シフトレバーのセレクト操作に時における両ピンの移動方向に沿った溝形状のカム部がそれぞれ設けられている。これらのカム部に対し、両ピンをシフトレバーのセレクト操作に伴う移動のみを許容した状態でそれぞれ係合させることにより、シフトレバーがシフトレバーリテーナに対して位置決めされ、かつ、両カム部に対して両ピンの球面部分がスプリングの力で個々に押付けられている。そして、シフトレバーがセレクト操作されると、両ピンが前記スプリングの力に抗して保持部の内部に押し込まれながら個々に対応するカム部の斜面に移行するように設定されている。
【0007】
第3の発明は、第1または2の発明における手動式変速機用シフトレバーの支持装置であって、シフトレバーリテーナ側のカム部は、シフトレバーのセレクト操作の方向に応じて球面部材が移行する斜面の傾斜角を個別に設定した構成となっている。
【0010】
【発明の作用及び効果】
第1の発明によれば、シフトレバーがセレクト操作されると、両球面部材がスプリングの力に抗して保持部の内部に押し込まれながらシフトレバーリテーナにおけるカム部の斜面に移行し、このときのスプリングの反力によってセレクトリターン力が発揮される。そして、このセレクトリターン力を得るためのスプリング及び球面部材は、シフトレバーの大球部に貫通させた筒体からなる保持部にそれぞれ組込まれているので、セレクトリターン機構を小型にできる。また、シフトレバーに働くセレクトリターン力は、大球部の両側において生じるので、この大球部に偏った力が作用せず、シフトレバーの操作が円滑な動作となり、理想的な操作フィーリングが得られる。
しかも、シフトレバーリテーナ側のカム部に対し、シフトレバー側のシフト操作軸線上において保持部を構成している筒体の両端部を、シフトレバーのセレクト操作に伴う移動のみを許容した状態でそれぞれ係合させることにより、このシフトレバーの大球部をシフトレバーリテーナに対して位置決めするための機能も果たす。つまり、セレクトリターン機構がシフトレバーのシフト操作支点軸を兼用することになり、その分、シフトレバー支持装置の部品点数が少なくなって構造が簡素化される。
【0011】
第2の発明によれば、シフトレバー側の保持部を構成する筒体を省略した構成であっても、第1の発明と同様の機能を果たす。
【0012】
第3の発明によれば、シフトレバーのセレクト操作方向によって操作反力が変化し、セレクトリターン用のプリングは一つであっても、セレクト操作方向によってセレクトリターン力を変えることができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
図1は車両用の手動式変速機におけるフロアシフトタイプのシフトレバー支持装置を表した断面図、図2は図1のA−A線断面図、図3は図2のB−B線断面図である。
これらの図面で示すようにシフトレバーリテーナ10はその上下両面が開放された中空形状で、本実施例では合成樹脂による一体成形品である。このシフトレバーリテーナ10は変速機ケースあるいはエクステンションハウジング(いずれも図示外)に対して図1で示すボルト14により結合される。なおこの結合箇所には合成樹脂のクリープなどによるボルト14の弛みを防止するために金属製のカラー15が使用されているとともに、リテーナ10の下面には変速機ケースなどとの接合面にシール機能をもたせるための弾性体(Oリング)12が設けられている。
【0015】
前記シフトレバーリテーナ10の内部には、図2で明らかなように球面受け部16が形成されている。一方、シフトレバー30はそれと一体の大球部32を備え、この大球部32の下側球面が前記球面受け部16で受けられている。またこの大球部32の上側球面はシフトレバーリテーナ10の中へその上面側から組込まれた球面シート18によって押さえられている。これによって大球部32はシフトレバーリテーナ10に対して球面支持されたこととなり、シフトレバー30は図1の矢印a1 −a2 で示す方向のセレクト操作及び図2の矢印b−bで示す方向のシフト操作がそれぞれ可能である。
なお前記シフトレバー30には、その大球部32から下方に延長された部分の先端において小球部34が形成されている。この小球部34は、シフトレバー30の操作を変速機側に伝えるための部材(シフトアンドセレクトシャフトのレバーハウジング)に対し、ブッシュ36を介して球面結合される。
【0016】
つづいて前記のセレクト操作時にシフトレバー30に対してセレクトリターン力を作用させるための機構について説明する。
まず前記シフトレバーリテーナ10の内部において、図2の矢印b−bで示すシフト操作のための回動軸線上で互いに対向する位置には個々にカム部50を備えたホルダー52がそれぞれ組込まれている。これらの両ホルダー52は前記球面シート18に先立って組込まれ、かつシフトレバーリテーナ10の上面にはプレート状のキャップ20が、その下面と前記球面シート18の上面との間にがたつき防止のための弾性体(Oリング)24を介在させてボルト22で固定されている。これによってシフトレバーリテーナ10に対するシフトレバー30の大球部32、両ホルダー52及び球面シート18の組付け状態が保持されている。
【0017】
前記大球部32には、同じくシフト操作のための回動軸線上において中空形状の保持部40が設けられている。この保持部40は、大球部32の両側にわたって貫通させた孔41に対し、パイプ状の筒体42を圧入した構造となっている。この筒体42の内部には、球面部材として用いた二個のボール44と、これらの両ボール44の間に介在させた一つのスプリング46とが組込まれている。したがって両ボール44は、筒体42の両端部において前記の両ホルダー52のカム部50に対し、スプリング46の弾性力によってそれぞれ押付けられている。
【0018】
前記筒体42の両端部は、大球部32の両側においてその表面から僅かに突出させている。また前記の両ホルダー52におけるそれぞれのカム部50は、図1及び図3で明らかなように縦方向の溝形状をしており、ここに筒体42の両端部を個々に係合させている。これによってシフトレバー30はシフトレバーリテーナ10に対して位置決めされ、そのシフト操作及びセレクト操作の方向が規制されている。
【0019】
また前記の両カム部50は、図1で明らかなように縦方向の中間部が最も低くなっており、この中間部の上下は斜面50a,50bとなっている。シフトレバー30が図面で示すようにセレクト操作方向の中立位置(リターン位置)にあるとき、前記の両ボール44はカム部50の中間部にそれぞれ位置している。
シフトレバー30が仮に図1の矢印a1 の方向にセレクト操作されたものとすると、図4(A)で示すように前記筒体42が傾き、両ボール44はスプリング46の力に抗して前記筒体42の内部に押し込まれながらカム部50における一方の斜面50aにそれぞれ移行する。逆にシフトレバー30が図1の矢印a2 の方向にセレクト操作された場合、両ボール44はカム部50における他方の斜面50bにそれぞれ移行する。なお矢印a1 の方向は例えば第1,2速のシフトを得るためのロー側のセレクト操作であり、矢印a2 の方向は第5速及びリバースのシフトを得るためのハイ側のセレクト操作である。
【0020】
前記構成のシフトレバー支持装置において、シフトレバー30が図4(A)で示す状態にセレクト操作されたとき、すでに説明したように両ボール44はスプリング46をその両端側から押しつつ、カム部50の中間部から斜面50aにそれぞれ移行する。つまりこのときの両ボール44の間の距離は、シフトレバー30が図1の中立位置にあるときと比べて小さくなり、その分、前記スプリング46が圧縮される。この圧縮されたスプリング46の弾力を受けている両ボール44には、図4(B)で示すようにそれぞれの斜面50aからこの斜面50aと垂直方向の反力Fが作用する。この反力Fの分力Fa,Fbのうち、前記筒体42の軸線と垂直方向の力Faは、ボール44及び筒体42を通じてシフトレバー30を図1の中立位置に押し戻そうとするセレクトリターン力として作用する。
【0021】
すでに説明したようにセレクト操作の方向(図1の矢印a1 または矢印a2 )により、両ボール44はカム部50に対して個別の斜面50a,50bに移行する。そこでこれらの斜面50a,50bの傾斜角を変えることにより、セレクト操作の方向に応じてスプリング46の圧縮量及びそれに伴う前記分力Faの大きさを変えることができる。つまりセレクト操作がロー側であるかハイ側であるかによってそれぞれのセレクトリターン力を最適に設定できる。
【0022】
図5で示すように前記保持部40は、その筒体42を廃止して大球部32に貫通させた孔41だけで構成することも可能である。この場合、球面部材は前記ボール44に代えて円筒状の一端部に球面を有する砲弾形状のピン144を用いている。そしてこれら両ピン144の球面部分はスプリング46の力によってカム部50に押付けられているとともに、これら両ピン144がカム部50にそれぞれ係合してシフトレバーリテーナ10に対するシフトレバー30の位置決めを果している。
【0023】
前記ボール44(またはピン144)とカム部50(ホルダー52)とは、シフトレバー30にセレクトリターン力を作用させるだけであれば、いずれか片側にのみ設けてもよい。またカム部50については、シフトレバーリテーナ10に直接形成してホルダー52を廃止することも可能である。
さらに前記スプリング46はコイルスプリングに限らず、板ばねあるいはゴムや樹脂製の弾性体に代えることもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】車両用の手動式変速機におけるフロアシフトタイプのシフトレバー支持装置を表した断面図。
【図2】図1のA−A線断面図。
【図3】図2のB−B線断面図。
【図4】セレクト操作時のシフトレバー支持装置を表した断面図。
【図5】異なる実施例のシフトレバー支持装置を表した断面図。
【図6】従来のシフトレバー支持装置を表した断面図。
【符号の説明】
10 シフトレバーリテーナ
30 シフトレバー
32 大球部
40 保持部
44 ボール(球面部材)
46 スプリング
50 カム部
Claims (3)
- シフトレバーの大球部がシフトレバーリテーナに対してシフト及びセレクト操作可能に球面支持されている手動式変速機用シフトレバーの支持装置であって、
前記シフトレバーの大球部に対し、シフト操作のための回動軸線上において該大球部の両側にわたって貫通させた筒体により中空形状の保持部が構成され、この保持部の内部にスプリングと、このスプリングの両側に位置する球面部材とがそれぞれ組込まれ、一方、前記シフトレバーリテーナ側には、シフトレバーのセレクト操作に時における両球面部材の移動方向に沿った溝形状のカム部がそれぞれ設けられ、これらのカム部に対し、保持部を構成する筒体の両端部を、シフトレバーのセレクト操作に伴う移動のみを許容した状態でそれぞれ係合させることにより、シフトレバーがシフトレバーリテーナに対して位置決めされ、かつ、両カム部に対して両球面部材がスプリングの力で個々に押付けられ、シフトレバーがセレクト操作されると、両球面部材が前記スプリングの力に抗して保持部の内部に押し込まれながら個々に対応するカム部の斜面に移行するように設定されている手動式変速機用シフトレバーの支持装置。 - シフトレバーの大球部がシフトレバーリテーナに対してシフト及びセレクト操作可能に球面支持されている手動式変速機用シフトレバーの支持装置であって、
前記シフトレバーの大球部に対し、シフト操作のための回動軸線上において該大球部の両側にわたって貫通させた孔形状の保持部が設けられ、この保持部の内部にスプリングと、このスプリングの両側に位置する砲弾形状のピンとがそれぞれ組込まれ、一方、前記シフトレバーリテーナ側には、シフトレバーのセレクト操作に時における両ピンの移動方向に沿った溝形状のカム部がそれぞれ設けられ、これらのカム部に対し、両ピンをシフトレバーのセレクト操作に伴う移動のみを許容した状態でそれぞれ係合させることにより、シフトレバーがシフトレバーリテーナに対して位置決めされ、かつ、両カム部に対して両ピンの球面部分がスプリングの力で個々に押付けられ、シフトレバーがセレクト操作されると、両ピンが前記スプリングの力に抗して保持部の内部に押し込まれながら個々に対応するカム部の斜面に移行するように設定されている手動式変速機用シフトレバーの支持装置。 - 請求項1または2に記載の手動式変速機用シフトレバーの支持装置であって、
シフトレバーリテーナ側のカム部は、シフトレバーのセレクト操作の方向に応じて球面部材が移行する斜面の傾斜角を個別に設定されている手動式変速機用シフトレバーの支持装置。
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