JP3650587B2 - スフィンゴ糖脂質を含有する機能性食品及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明が属する技術分野】
本発明はこんにゃく芋から抽出したスフィンゴ糖脂質を含有する機能性食品及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
最近の研究によれば、複合脂質、なかでも糖脂質に顕著な生理活性を有するものがあることが明らかにされてきた。例えば、脂肪酸とスフィンゴシンからなるセラミド、糖と脂肪酸とスフィンゴシンからなるセレブロシドは、人間の皮膚の角質層に多く存在し、体内から水分の蒸発を防ぐ働きをしていることが明らかとなっている。この高い保湿性を生かした美容分野への利用、さらにはエラスターゼ抑止効果や遊離基抑止効果を生かした製薬分野への応用も進んでいる。
【0003】
従来、これらスフィンゴ糖脂質を中心としたセラミド関連物質は牛の脳などから抽出され、供給されていた。しかし1986年に狂牛病が発生してからは、ヒトへの感染の可能性から、供給量が激減し、安全な植物起源のセラミド関連物質への回帰現象が生じている。
【0004】
植物由来のスフィンゴ糖脂質、特にその中でもグリコシルセラミドとしては、コメ(Agric. Biol. Chem., 49, 2753(1985))および米糠(特開平11−279586号公報)、小麦(Agric. Biol. Chem., 49, 3609(1985))、大豆(Chem. Pharm. Bull., 38(11), 2933(1990)、特開平4−282317号公報)などの穀物由来のものが知られている。
【0005】
これまでセラミドの摂取方法としては皮膚化粧料、養毛化粧料、入浴剤などに添加し、皮膚から吸収させるものがほとんどであった。しかし近年、植物セラミドが3質量%含まれる小麦抽出物を毎日20mgずつ1ヶ月間服用することによって皮膚の水分保持機能が改善されたことが報告され(Fragrance Journal, 23(1), 81(1995))、「食べる化粧品」として経口摂取が注目されている。セラミドを含有する食品については小麦由来の健康食品が提案されている(特開平8−256729号公報、特開平11−113530号公報)。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、植物由来のスフィンゴ糖脂質を得るための植物原料として、利用されているものは、現在までのところ穀類、豆類に限られていた。これらのスフィンゴ糖脂質含有量はさほど多くなく、いずれも0.01質量%程度であると推測される。しかも、これら植物原料はすべて人類が食用としているものばかりであり、スフィンゴ糖脂質抽出後の残渣は食品としての価値も喪失してしまう。このように、ごくわずかのスフィンゴ糖脂質成分を抽出するために、非常に多くの食品原料の食品としての価値を喪失させてしまうのが植物原料の問題点であった。
【0007】
本発明は、食品として全く利用されていない芋類、特にこんにゃく芋を原料とし、保湿に重要な役割を担っていると考えられているスフィンゴ糖脂質を高濃度に含有する機能性食品を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、こんにゃく芋の中にスフィンゴ糖脂質が穀類、豆類に匹敵あるいは凌駕する濃度で含まれていることを突き止め、また、このスフィンゴ糖脂質が溶媒で抽出でき、食品として利用できるという知見を得た。さらには、このスフィンゴ糖脂質を食品として継続的に経口摂取することにより、皮膚の保湿、肌荒れの改善に顕著な効果があることを見出し、本発明に到達した。
【0009】
すなわち、本発明の第一は、こんにゃく芋から有機溶媒を用いて抽出されたスフィンゴ糖脂質を含有することを特徴とする機能性食品を要旨とするものである。
また、本発明の第二は、こんにゃく芋に有機溶媒を添加し、スフィンゴ糖脂質を抽出することを特徴とする機能性食品の製造方法を要旨とするものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明で抽出原料として使用するこんにゃく芋は、そのままでも良いし、乾燥、すりつぶし、加熱などの操作によって加工されていてもよい。これらの中で、特に大量に廃棄されるものであり、安価に入手できることからこんにゃくトビ粉を使用することが好ましい。こんにゃくトビ粉は、こんにゃく芋を原料とするこんにゃく製造時の副産物として年間3000〜4000トン生じるにもかかわらず特有のえぐ味と刺激臭を有するため、一部肥料、コンクリート等の増粘剤として利用されているものの、食品としては全く利用されていない資源である。
【0011】
本発明でいう機能性食品とは、経口摂取によって、皮膚の保湿、肌荒れの改善、美肌、アトピー性皮膚炎、アレルギー性皮膚炎、吹き出物、養毛、育毛、抗ガン、抗エイズなどから選ばれる1つ又は複数に効果があるものである。経口摂取の方法は、本発明の機能性食品単独で摂取しても良いし、食品および/または飲料に混合して摂取しても良い。該食品および/または飲料は特に限定されるものではなく、例えばパン、うどん、そば、ご飯等主食となるもの、クッキー、ケーキ、ゼリー、プリン、キャンディー、チューインガム、ヨーグルトなどの菓子類、清涼飲料水、酒類、栄養ドリンク、コーヒー、茶、牛乳などの飲料が挙げられる。
【0012】
本発明で抽出溶媒として使用する有機溶媒としては、原料およびスフィンゴ糖脂質と抽出中に反応し、本発明の効果を損なうものでなければいかなるものでも使用できる。また、一種類の溶媒を単独で用いても複数の溶媒を混合して用いても良い。かかる有機溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、tert−ブタノールなどのアルコール類、クロロホルム、ジクロロメタン、アセトン、アセトニトリル、酢酸エチル、ヘキサン、ペンタン、ジエチルエーテルなどが挙げられる。これらの中で好ましい例としては、食品に使用することからエタノール、アセトン、ヘキサンが挙げられ、特に好ましい例としてはエタノールが挙げられる。また、これらの極性有機溶媒で抽出する際には抽出効率をあげるために例えば水、界面活性剤などの添加物を本発明の効果をそこなわない範囲で加えることができる。
【0013】
抽出に使用する有機溶媒の量は、原料となる芋類に対して望ましくは1〜30倍量程度、さらに望ましくは1〜10倍量程度が良い。溶媒の使用量がこの範囲以下であれば、原料全体に溶媒が行き渡らず、抽出が不十分になる恐れがあり、この範囲を超える量の溶媒を添加してももはや抽出量に影響はなく、後の濃縮工程での溶媒除去作業の負担が増えるのみである。
【0014】
抽出温度は、使用する溶媒の沸点にもよるが、エタノールを用いた場合では、好ましくは、室温から70℃、さらに好ましくは室温程度から60℃の範囲がよい。抽出温度がこの範囲以下であれば、抽出効率が低下し、この範囲以上の温度をかけても抽出効率に大きな影響はなく、いたずらにエネルギー使用量が増えるのみである。
【0015】
抽出時間は、1〜24時間、好ましくは2〜10時間である。抽出時間がこの範囲より短いと、十分に抽出が行われず、この範囲を超えていたずらに長く時間をかけて抽出を行っても、もはや抽出量の増大は見込めない。
【0016】
なお、抽出操作は1回のみの回分操作に限定されるものではない。抽出後の残渣に再度新鮮な溶媒を添加し、抽出操作を施すこともできるし、抽出溶媒を複数回抽出原料に接触させることも可能である。すなわち、抽出操作としては、回分操作、半連続操作、向流多段接触操作のいずれの方式も使用可能である。また、ソックスレー抽出など公知の抽出方法を使用してもよい。
【0017】
次に、抽出残渣を分離除去する。分離の方法は特に限定されず、例えば吸引ろ過、フィルタープレス、シリンダープレス、デカンター、遠心分離器、ろ過遠心機などの公知の方法を用いることができる。
【0018】
このようにして得られた抽出液は濃縮工程に送られる。濃縮方法は特に限定されず、例えばエバポレーターのような減圧濃縮装置や加熱による溶媒除去などにより、濃縮することができる。
【0019】
上記濃縮物を、引き続いて不純物類を取り除き、より純度を向上せしめる必要のある場合は、常法による精製が可能である。例えば、水洗浄、ヘキサン洗浄、シリカゲルカラムや樹脂カラム、逆相カラムなどを通す方法、極性の異なる溶媒による分配、再結晶法などが挙げられる。
【0020】
次に、得られた濃縮物の分析方法であるが、最も簡便な分析方法としては薄層クロマトグラフ法があげられる。スフィンゴ糖脂質、中でもグルコシルセラミドが市販されているのでこれを標準とし、シリカゲル薄層プレートを用いてクロロホルム−メタノール系など適当な溶媒系を用いて展開させ、濃硫酸やアンスロン試薬などで発色させれば、上記濃縮物中に高含量でスフィンゴ糖脂質が存在することが容易に判定できる。その他、高速液体クロマトグラフ法、各種クロマトグラフ−マススペクトロメトリー法などの常法によりスフィンゴ糖脂質類が豊富に含まれることは判定できる。
【0021】
上記のように得られたスフィンゴ糖脂質含有物はそのままで本発明の機能性食品として摂取してもよいが、取り扱いを容易にするために粉末、錠剤、カプセル剤、ゲル、水分散液、エタノール溶液の形態にするのが好ましい。また、効果を促進するためにビタミン類、コラーゲン、スクワラン、大豆レシチン、植物由来ステロール類、ヒアルロン酸、ソルビトール、キチン、キトサン、ナイアシンアミドなどを加えることもできる。
【0022】
粉末に加工するには得られた濃縮物を凍結乾燥法、スプレードライ法、真空乾燥法などを用いて乾燥し、必要に応じて例えば乳鉢、サンプルミル、スピードミル、ブレンダー、ミキサー等を用いて粉砕することによって得られる。場合によっては粉末に粘性が残ることがあるが、そのような場合は本発明の効果を損なわない程度に粉末化を促進する担体を添加することができる。担体としては例えばコーンスターチ、馬鈴薯澱粉、デキストリン、シクロデキストリン、小麦粉、パン粉、食塩、ゼオライト、タルク、カキガラ等を用いることができる。
【0023】
錠剤に加工するには上記のように得られた粉末をそのまま打錠機に導入して打錠する方法を用いることができる。打錠の際に本発明の効果を損なわない範囲でバインダーを添加しても良い。
【0024】
カプセル剤に加工するには、従来公知の医薬用または食品用カプセルに上記のように得られた濃縮物および/または粉末を導入すればよい。カプセルには本発明の効果を損なわない限りいかなるものも用いることができる。
【0025】
ゲルに加工するには、本発明の効果を損なわない範囲で従来公知のいかなる方法も用いることができる。例えば、得られたスフィンゴ糖脂質含有物を水に分散および/または溶解して従来公知のゲル化剤、増粘多糖類などを添加する方法を用いることができる。ゲル化剤としては好ましくはゼラチンや寒天など食品用に用いられるものが挙げられる。
【0026】
水分散液を製造するには、スフィンゴ糖脂質含有物を所定量の水に導入して攪拌しても良いし、本発明の効果を損なわない範囲で、超音波処理をしたり、従来公知の乳化剤、分散剤を添加して分散を促進しても良い。
【0027】
エタノール溶液はスフィンゴ糖脂質含有物がエタノールに可溶であるため、そのままエタノールに溶解すればよい。沈殿の生成や懸濁を防止するために本発明の効果を損なわない範囲で、安定剤を添加することができる。
【0028】
本発明の機能性食品は、芋類由来の組成物で構成されているため安全性が高く、経口摂取の量、間隔は特に限定されるものではないが、本発明の効果を発現させるために好ましい摂取量はスフィンゴ糖脂質に換算して1日あたり1μg以上100g以下であり、3日に1回から1日10回程度の頻度で継続して摂取することが好ましい。
【0029】
本発明の機能性食品を摂取したときの効果としては、皮膚の保湿や肌荒れの改善などがあげられる。皮膚の保湿については経表皮水分損失量(TEWL)の測定、角質水分量の測定など従来公知の測定方法を用いてその効果を知ることができる。
TEWLの測定には例えばEvaporimeter(Servo Med社 スウェーデン)、Tewameter(Courage+Khazaka社 ドイツ)などを用いることができる。また、角質水分量の測定には例えばCorneometer(Courage+Khazaka社 ドイツ)、Skikon-200(アイ・ビイ・エス(株))などを用いることができる。肌荒れの改善については目視と当事者の感覚によってその効果を知ることができる。
【0030】
本発明の機能性食品を摂取したときの効果は、従来公知の植物原料である小麦、米糠、大豆と比較して、理由は明らかではないが、こんにゃく芋に含まれるスフィンゴ糖脂質の構造の違いやこんにゃく芋中に含まれる他の有効成分との相乗効果の結果、特に肌荒れ、アトピー性皮膚炎、アレルギー性皮膚炎、吹き出物の改善において非常に優れている。
【0031】
【実施例】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。まず、以下の実施例において用いた測定装置、測定方法について説明する。
【0032】
(1)スフィンゴ糖脂質の定性方法
スフィンゴ糖脂質の定性にはシリカゲル薄層クロマトグラフィー(TLC)を使用した。所定量の試料をシリカゲルプレート(メルク社製Sillicagel60F254タイプ、層厚0.5mm)にアプライし、クロロホルム:メタノール:水=87:13:2(容量比)の展開槽に導入し、展開した。展開後はシリカゲルプレートをドライヤーなどで乾燥し、硫酸噴霧して加熱することによって発色した。
【0033】
(2)スフィンゴ糖脂質の定量方法
スフィンゴ糖脂質の定量には高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いた。Waters製 LC Module 1を用い、カラムはGLサイエンス社製Inertsil SIL 100Aを用いた。溶媒はクロロホルム:メタノール=9:1(容量比)を用い、流速1.0ml/分で25℃で測定した。検出には光散乱検出器(ALLTECH社製 500ELSD)を用いた。
【0034】
(3)角質水分量の測定方法
角質水分量の測定はCourage+Khazaka社製Corneometer CM825を用い、毎回左眼1cm下の同じ部位で測定した。測定は1人あたり10回行った平均をその人のデータとし、被験者全員の平均値であらわした。
【0035】
実施例1
こんにゃくトビ粉1kgを攪拌槽に仕込み、そこにエタノール2Lを加え、常温で2時間攪拌した。その後、ろ過により抽出液と残渣を分離した。抽出液をエバポレーターにより濃縮し、茶褐色の蝋状濃縮物10.7gを得た。これを上記の定性、定量方法に基づいて測定したところ、TLCによってスフィンゴ糖脂質のスポットが検出され、HPLCによってスフィンゴ糖脂質が0.55g含有されていることがわかった。トビ粉抽出物中のスフィンゴ糖脂質の純度は5.1質量%であった。
【0036】
次に、得られた蝋状濃縮物10.0gを20.0gのエタノールに溶解させ、200gの水中に攪拌しながら導入し、そのまま分散状態で攪拌した。30分経過後、塩化ナトリウム5.0gを導入し、さらに10分間攪拌することによって、茶褐色の沈殿が得られた。この沈殿の重量は6.8gであり、HPLCによって測定したスフィンゴ糖脂質の含有量は0.45gであった。水洗作業後の抽出物中のスフィンゴ糖脂質の純度は6.6質量%まで向上した。この水洗作業をさらに1回繰り返し、トビ粉由来スフィンゴ糖脂質を含有した沈殿物Aが6.4g得られた。HPLCで測定したスフィンゴ糖脂質の含有量は0.44gであった。2回の水洗作業後のスフィンゴ糖脂質の純度は6.9質量%まで向上した。
【0037】
次に、上記沈殿物A5.0gを15mlのエタノールに溶解した。このエタノール溶液を、水50ml中にコーンスターチ15.0gを分散させた懸濁液中に攪拌しながら導入し、そのまま沸騰水中で5分間加熱した。コーンスターチが溶解及び膨潤するにしたがって、懸濁液の粘度は上昇し、ペースト状になった。該ペースト状組成物を真空乾燥機中で50℃、12時間乾燥することで乳白色の固体を得た。これをブレンダーで破砕し、トビ粉由来スフィンゴ糖脂質を含有する粉末状の機能性食品19.3gを得た。このようにして得られた粉末をエタノール中に浸漬し、可溶成分を溶かし出してTLC分析を行ったところ、スフィンゴ糖脂質のスポットが明確に確認された。
【0038】
実施例2
実施例1における沈殿物A5.0gを15mlのエタノールに溶解した。このエタノール溶液を、水20ml中にβ-シクロデキストリン10.0gを分散させた懸濁液中に攪拌しながら導入した。攪拌を続けると懸濁液の粘度は上昇し、ペースト状になった。該ペースト状組成物を真空乾燥機中で50℃、12時間乾燥することで乳白色の固体を得た。これをブレンダーで破砕し、トビ粉由来スフィンゴ糖脂質を含有する粉末状の機能性食品14.8gを得た。このようにして得られた粉末をエタノール中に浸漬し、可溶成分を溶かし出してTLC分析を行ったところ、スフィンゴ糖脂質のスポットが明確に確認された。
【0039】
実施例3
実施例1における沈殿物A5.0gを15mlのエタノールに溶解した。このエタノール溶液を、水50ml中にコーンスターチ15.0gを分散させた懸濁液中に攪拌しながら導入し、そのまま沸騰水中で5分間加熱した。コーンスターチが溶解及び膨潤するにしたがって、懸濁液の粘度は上昇し、ペースト状になった。該ペースト状組成物にさらに450mlの水を加えて攪拌し、低粘度の分散液を得た。この分散液を攪拌しながら、入口温度250℃、出口温度150℃、アトマイザー回転数35000rpmのスプレードライ試験機(大川原化工機(株)製 スプレードライヤLT-8型)に送液速度3L/分で送液し、粉末化を行い、トビ粉由来スフィンゴ糖脂質を含有する粉末状の機能性食品を得た。得られた粉末は18.7gで、薄い褐色を呈していた。このようにして得られた粉末をエタノール中に浸漬し、可溶成分を溶かし出してTLC分析を行ったところ、スフィンゴ糖脂質のスポットが明確に確認された。
【0040】
実施例4
実施例1における沈殿物A5.0gを、水500ml中にデカグリセリンモノステアレート(商品名 SYグリスターMSW−750、阪本薬品工業(株)製)2.5gと共に導入し、ヤマト科学製BRANSON3200を用いて超音波によって30分間分散処理した。このようにしてトビ粉由来スフィンゴ糖脂質を含有する水分散液状の機能性食品が得られた。得られた水分散液は均一で、3ヶ月後も沈殿は生じなかった。
【0041】
実施例5
実施例1における沈殿物A5.0gを15mlのエタノールに溶解した。このエタノール溶液を、60℃に加熱した水20ml中にゼラチン15.0gを溶解させた水溶液中に攪拌しながら導入し、そのまま室温まで放冷した。該水溶液は室温で黄土色の硬いゲルになった。このようにしてトビ粉由来スフィンゴ糖脂質を含有するゲル状の機能性食品が得られた。
【0042】
比較例1
小麦粉1kgを攪拌槽に仕込み、そこにエタノール2Lを加え、常温で2時間攪拌した。その後、ろ過により抽出液と残渣を分離した。抽出液をエバポレーターにより濃縮し、褐色の蝋状濃縮物6.8gを得た。これを上記の定性、定量方法に基づいて測定したところ、TLCによって確認したスフィンゴ糖脂質のスポットは薄く、HPLCによって定量したスフィンゴ糖脂質は0.05gであり、小麦粉抽出物中の純度は0.7質量%と少なかった。
【0043】
次に、得られた蝋状濃縮物5gを10.0gのエタノールに溶解させ、100gの水中に攪拌しながら導入し、そのまま分散状態で攪拌した。30分経過後、塩化ナトリウム2.5gを導入し、さらに10分間攪拌することによって、茶色の沈殿が得られた。この沈殿の重量は3.6gであり、HPLCによって測定したスフィンゴ糖脂質の含有量は0.04gであった。水洗作業後の抽出物中のスフィンゴ糖脂質の純度は1.1質量%であった。この水洗作業をさらに1回繰り返し、小麦粉由来スフィンゴ糖脂質を含有する沈殿物3.4gを得た。HPLCで測定したスフィンゴ糖脂質の含有量は0.04gであった。2回の水洗作業後のスフィンゴ糖脂質の純度は1.2質量%であった。
【0044】
次に、この沈殿物3.0gを水300ml中にデカグリセリンモノステアレート(商品名 SYグリスターMSW−750、阪本薬品工業(株)製)1.5gと共に導入し、実施例4と同様の方法により、小麦粉由来スフィンゴ糖脂質を含有する水分散液を得た。
【0045】
比較例2
脱脂米糠1kgを攪拌槽に仕込み、そこにエタノール3Lを加え、常温で2時間攪拌した。その後、ろ過により抽出液と残渣を分離した。抽出液をエバポレーターにより濃縮し、茶褐色の蝋状濃縮物22.3gを得た。これを上記の定性、定量方法に基づいて測定した。TLCによって確認したスフィンゴ糖脂質のスポットは薄く、グリセロ糖脂質、ステロール類等のスポットが濃く発色した。HPLCによって定量したスフィンゴ糖脂質は0.38gであり、脱脂米糠抽出物中の純度は1.7質量%と少なかった。
【0046】
次に、蝋状濃縮物10gを20.0gのエタノールに溶解させ、200gの水中に攪拌しながら導入し、そのまま分散状態で攪拌した。30分経過後、塩化ナトリウム5.0gを導入し、さらに10分間攪拌することによって、茶色の沈殿が得られた。この沈殿の重量は7.4gであり、HPLCによって測定したスフィンゴ糖脂質の含有量は0.24gであった。水洗作業後の抽出物中のスフィンゴ糖脂質の純度は3.2質量%であった。この水洗作業をさらに1回繰り返し、米糠由来スフィンゴ糖脂質を含有する沈殿物を6.9g得た。HPLCで測定したスフィンゴ糖脂質の含有量は0.22gであった。2回の水洗作業後のスフィンゴ糖脂質の純度は3.2質量%であった。
【0047】
次に、この沈殿物3.0gを水300ml中にデカグリセリンモノステアレート(商品名 SYグリスターMSW−750、阪本薬品工業(株)製)1.5gと共に導入し、実施例4と同様の方法により、米糠由来スフィンゴ糖脂質を含有する水分散液を得た。
【0048】
試験例1
男性、女性各10人(20〜40歳5人、40〜60歳5人)のボランティアに協力してもらい、実施例4で得られた本発明の機能性食品、比較例1及び2で得られた分散液並びにスフィンゴ糖脂質を含んでいない分散液について、皮膚の角質水分量向上効果について試験した。スフィンゴ糖脂質を含んでいない分散液は、水300ml中にデカグリセリンモノステアレート(商品名 SYグリスターMSW−750、阪本薬品工業(株)製)1.5gを溶解して調製した。
【0049】
実施例4で得られた本発明の機能性食品を1.45ml/日づつ、比較例1で得られた分散液を8.5ml/日づつ及び比較例2で得られた分散液を3.25ml/日づつ、30日間摂取してもらった。つまり、いずれもスフィンゴ糖脂質を1日に1mgずつ摂取したことになる。また、対照であるスフィンゴ糖脂質を含んでいない分散液は1.45ml/日づつ摂取した。
それぞれを摂取後、10日後、20日後、30日後の左眼1cm下の皮膚の角質水分量をCorneometerを用いて測定した。20人の平均の結果を表1に示す。
【0050】
【表1】
【0051】
表1から、トビ粉由来のスフィンゴ糖脂質の摂取が、小麦粉由来または米糠由来のスフィンゴ糖脂質の摂取より、皮膚の角質水分量の向上に優れた効果があることがわかった。
【0052】
試験例2
手の甲に肌荒れの症状のある女性10人に協力してもらい、実施例4で得られた本発明の機能性食品、比較例1及び2で得られた分散液並びにスフィンゴ糖脂質を含んでいない分散液について、肌荒れの症状の改善効果について試験した。スフィンゴ糖脂質を含んでいない分散液は、水300ml中にデカグリセリンモノステアレート(商品名 SYグリスターMSW−750、阪本薬品工業(株)製)1.5gを溶解して調製した。
【0053】
実施例4で得られた本発明の機能性食品を1.45ml/日づつ、比較例1で得られた分散液を8.5ml/日づつ及び比較例2で得られた分散液を3.25ml/日づつ、15日間摂取してもらった。つまり、いずれもスフィンゴ糖脂質を1日に1mgずつ摂取したことになる。また、対照であるスフィンゴ糖脂質を含んでいない分散液は1.45ml/日づつ摂取した。
その間、5日後、10日後、15日後に手の甲の状態についてアンケートした。結果は合計点として表2に示す。
【0054】
【表2】
【0055】
表2よりトビ粉由来のスフィンゴ糖脂質の摂取が、小麦粉由来または米糠由来のスフィンゴ糖脂質の摂取より、肌荒れの症状の改善に優れた効果を有することがわかった。
【0056】
【発明の効果】
本発明のスフィンゴ糖脂質を含有する機能性食品は、ヒトの皮膚に存在し、保湿に重要な役割を担っていると考えられているスフィンゴ糖脂質を高濃度に含有し、粉末、錠剤、カプセル剤、ゲル、水分散液、エタノール溶液の形態に加工することにより、摂取しやすくすることができ、ヒトの皮膚の角質水分量の向上、肌荒れの改善などにおいて優れた効果を有するものである。また本発明の製造方法によれば、スフィンゴ糖脂質を含有する機能性食品を、食品として全く利用されていないこんにゃくトビ粉などを原料とすることで、安価に簡単に製造することができる。
Claims (2)
- こんにゃく芋から有機溶媒を用いて抽出されたスフィンゴ糖脂質を含有することを特徴とする機能性食品。
- こんにゃく芋に有機溶媒を添加し、スフィンゴ糖脂質を抽出することを特徴とする請求項1記載の機能性食品の製造方法。
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---|---|---|---|
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