JP3650162B2 - 内燃機関用点火装置 - Google Patents
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Description
【０００１】
【産業上の利用分野】
この発明は、イグニションンコイルの一次電流を断続通電するパワースイッチが絶縁ケース内に内蔵され、かつこの絶縁ケース内に注入された絶縁樹脂材によりパワースイッチが固定化された内燃機関用点火装置に関するものである。
【０００２】
【従来の技術】
図６は従来の内燃機関用点火装置の部分断面図、図７は図６の絶縁ケースの全体斜視図、図８は内燃機関用点火装置の電気回路図であり、合成樹脂製の絶縁ケース１の収納部１ａの底中央部には孔（図示せず）が形成されている。この孔にはイグニションコイルの第１のＥ形鉄芯２の中央部が貫通している。この第１のＥ形鉄芯２にはイグニションコイルの第２のＥ形鉄芯３が対向して配設されている。第１のＥ形鉄芯２の中央部と間隔をおいて対向した第２のＥ形鉄芯３の中央部とには一次コイル４が巻回されており、その一次コイル４の外周には二次コイル５が巻回されている。
【０００３】
収納部１ａから突出した形状の補助収納部１ｃにはパワースイッチ６が収納されている。パワースイッチ６は、容器である皿形をした銅製のヒートシンク７と、このヒートシンク７内に収納されたパワートランジスタからなるスイッチング素子８と、スイッチング素子８を駆動、制御する混成集積回路（ハイブリッドＩＣ）９と、スイッチング素子８と混成集積回路９とを接続する接続線１０と、一端が混成集積回路９に接続された配線１１と、ヒートシンク７の内部に充填されスイッチング素子８および混成集積回路９からなるスイッチングユニットを保護するためのシリコンゲル１２とを備えている。
【０００４】
また、絶縁ケース１はイグニションコイルの高圧部である高圧端子（図示せず）の保持部１ｄおよび低圧端子の保持部１ｅを有している。低圧端子は、一次コイルを自動車の電池に接続するＶＢ端子１３ａと、コントロールユニット（図示せず）からの点火信号をパワースイッチ６に印加する点火信号入力端子１３ｂと、アース端子１３ｃとを有している。
【０００５】
上記のように構成された内燃機関用点火装置では、ヒートシンク７内にシリコンゲル１２が充填されたパワースイッチ６を補助収納部１ｃに収納した後、配線１１の先端部と端子１３ｂ、１３ｃとを接続し、またパワースイッチ６と一次コイル４とを配線１５で接続し、絶縁ケース１の収納部１ａおよび補助収納部１ｃ内に絶縁樹脂材１４を充填、硬化してパワースイッチ６を絶縁ケース１内に固定している。
そして、点火信号入力端子１３ｂから入力されるコントロールユニットからの点火信号はパワースイッチ６を通じてイグニションコイルの一次コイル４に流れる一次電流を制御する。イグニションコイルの二次コイル５には一次コイル４に流れる一次電流に応じて高電圧が発生し、この高電圧は高圧端子を通じてディストリビュータ（図示せず）に送られる。
【０００６】
【発明が解決しようとする課題】
従来の内燃機関用点火装置では、パワースイッチ６の断続運転により生じる二次コイル５およびスイッチング素子８の熱の影響で絶縁樹脂材１４が膨張、収縮を繰り返し、そのため配線１１、１５には引張力が生じ、そのため例えば配線１１の接着部１１ａが混成集積回路９から剥離し、耐ヒートショック性に課題があった。
また、同様に絶縁ケース１内にパワースイッチ６を組み入れ作業するとき、または配線１１の接続作業のとき、配線１１に引張力等の応力が加わり、配線１１の接着部１１ａが混成集積回路９から剥離してしまい、作業信頼性がよくないという課題があった。
さらに、絶縁樹脂材１４を絶縁ケース１内に真空注型する際、シリコンゲル１２内のエアが絶縁樹脂材１４内に移行し、絶縁樹脂材１４内にボイドが生じてしまい、絶縁樹脂材１４の絶縁性能がよくないという課題もあった。
【０００７】
この発明は、かかる課題を解決するためになされたもので、配線に対する耐ヒートショック性が向上し、また作業信頼性が向上し、さらに絶縁性能性が向上する内燃機関用点火装置を得ることを目的とする。
【０００８】
【課題を解決するための手段】
この発明の請求項１の内燃機関用点火装置は、ヒートシンクと絶縁板により皿形の容器が構成されており、前記ヒートシンクに搭載されイグニションコイルの一次電流を断続通電するスイッチング素子およびこのスイッチング素子を駆動、制御する混成集積回路とからなるスイッチングユニット、このスイッチングユニットを保護するためにスイッチングユニットを覆ったゲル、および前記スイッチングユニットに一端部が接続され他端部が点火信号入力端子に接続された配線を有するパワースイッチと、このパワースイッチを絶縁樹脂材で固定化して内蔵する絶縁ケースとを備えた内燃機関用点火装置において、前記ヒートシンクの片側側面には前記絶縁板が設けられており、前記配線は、前記絶縁板に貫通、固着されているとともに一端部が前記点火信号入力端子に接続された第１の配線部と、この第１の配線部の他端部に前記ゲル内で一端部が接続され他端部が前記スイッチングユニットに接続された第２の配線部とから構成され、かつ前記第２の配線部は、前記ゲル内に位置している。
【０００９】
この発明の請求項２の内燃機関用点火装置は、ヒートシンクと絶縁板により皿形の容器が構成されており、前記ヒートシンクに搭載されイグニションコイルの一次電流を断続通電するスイッチング素子およびこのスイッチング素子を駆動、制御する混成集積回路とからなるスイッチングユニット、このスイッチングユニットを保護するためにスイッチングユニットを覆ったゲル、および前記スイッチングユニットに一端部が接続され他端部が点火信号入力端子に接続された配線を有するパワースイッチと、このパワースイッチを絶縁樹脂材で固定化して内蔵する絶縁ケースとを備えた内燃機関用点火装置において、前記ヒートシンクの片側側面には前記絶縁板が設けられており、前記配線は、前記絶縁板に貫通、固着されているとともに一端部が前記点火信号入力端子に接続された第１の配線部と、この第１の配線部の他端部に前記ゲル外で一端部が接続され他端部が前記スイッチングユニットに接続された第２の配線部とから構成され、かつ前記第２の配線部は、前記ゲル内に埋設された曲げ部を有している。
【００１０】
【作用】
この発明の請求項１の内燃機関用点火装置においては、第１の配線部は容器で固着されているので、組立時、接続時、および絶縁樹脂材の膨張、収縮により第１の配線部に応力が加わっても、その応力は容器で受け止められ、第２の配線部には伝わらず、また第２の配線部のスイッチングユニット側はゲル内に位置しており、第２の配線部は絶縁樹脂材の膨張、収縮の影響を受けにくく、絶縁樹脂材の膨張、収縮で第２の配線部が接着部でスイッチングユニットから剥離するのを防止することができる。
【００１１】
この発明の請求項２の内燃機関用点火装置においては、曲げ部がゲル内に埋設されているので、第２の配線部に引張力が生じても、その力は曲げ部で吸収でき、第２の配線部が接着部でスイッチングユニットから剥離するのを防止することができる。
【００１２】
【実施例】
参考例１．
以下、この発明の参考例を図について説明する。
図１はこの発明の一参考例を示す内燃機関用点火装置の部分正断面図であり、図６ないし図８と同一または相当部分は同一符号を付し、その説明は省略する。
【００１３】
この内燃機関用点火装置の場合、一端が混成集積回路９に接続され他端が点火信号入力端子１３ｂに接続された配線２１は、シリコンゲル１２内で曲げ部２１ａを有している。
このため、二次コイル５、スイッチング素子８の熱の影響で絶縁樹脂材１４が膨張、収縮し、配線２１に引張力が生じても、その引張力は曲げ部２１ａで吸収され、配線２１の接着部２１ｂには及ばない。
【００１４】
参考例２．
図２はこの発明の内燃機関用点火装置の他の参考例を示す部分正断面図であり、ヒートシンク７はカバー２２で覆われている。このカバー２２は、曲げ部２１ａを有する配線２１を貫通する穴２２ａと曲げ部２１ａを位置決めする突起部２２ｂとシリコンゲル１２を充填するためのゲル用窓２２ｃを有している。
このカバー２２はシリコンゲル１２をヒートシンク７内に充填する際にはヒートシンク７に取り付けられており、シリコンゲル１２をゲル用窓２２ｃからヒートシンク７内に充填するときも曲げ部２１ａは突起部２２ｂでヒートシンク７内に確実に位置決めされており、シリコンゲル１２内に埋設される。従って、曲げ部２１ａが絶縁樹脂材１４内に埋設されるようなことはなく、絶縁樹脂材１４の膨張、収縮により配線２１に引張力が生じても、その引張力はシリコンゲル１２内の曲げ部２１ａで確実に吸収され、配線２１の接着部２１ｂには及ばない。
【００１５】
参考例３．
図３はこの発明のさらに他の参考例を示す内燃機関用点火装置の部分正断面図であり、配線２１の曲げ部２１ａを埋設したシリコンゲル１２上には樹脂部２３が設けられている。この樹脂部２３は配線２１およびヒートシンク７と密着性がよいエポキシ等の樹脂がシリコンゲル１２上に充填、硬化されて構成されている。
【００１６】
この参考例の場合、樹脂部２３で密着、固定された配線２１を有するパワースイッチ６を補助収納部１ｃに収納し、かつ配線２１の先端部を点火信号入力端子１３ｂに接続する際、配線２１に引張力が加わっても、配線２１は樹脂部２３で固定されているので、その力は配線２１の接着部２１ｂには及ばない。
また、曲げ部２１ａがシリコンゲル１２内に埋設されているので、二次コイル５、スイッチング素子８の熱による影響で絶縁樹脂材１４および樹脂部２３が膨張、収縮し、その結果配線２１に引張力が生じても、その引張力はシリコンゲル１２内の曲げ部２１ａで吸収され、配線２１の接着部２１ｂには及ばない。
さらに、シリコンゲル１２は樹脂部２３で覆われているので、シリコンゲル１２内の残存エアはヒートシンク７内に閉じ込められ、絶縁ケース１内に絶縁樹脂材１４を真空注型する際に、シリコンゲル１２内に残存していたエアが絶縁樹脂材１４中に移行して絶縁樹脂材１４内にボイドを形成して絶縁性能が低下するようなことはない。
【００１７】
実施例４．
図４はこの発明の内燃機関用点火装置の実施例４を示す部分正断面図であり、ヒートシンク７の片側側面には絶縁板２４が設けられている。ヒートシンク７とともに容器の一部を構成している絶縁板２４には第１の配線部２６ａが貫通、固着されている。この第１の配線部２６ａの一端部には点火信号入力端子１３ｂが接続されている。第１の配線部２６ａの他端部は第２の配線部２６ｂの先端部にシリコンゲル１２内で接続されている。第２の配線部２６ｂの基端部は混成集積回路９と接着部２６ｃで接続されている。
【００１８】
この実施例の場合、絶縁板２４に第１の配線部２６ａが固着されたパワースイッチ６を補助収納部１ｃに収めた後、第１の配線部２６ａを点火信号入力端子１３ｂと接続しており、その組立時、接続時に第１の配線部２６ａに応力が加わっても、その応力は絶縁板２４で受け止められ、第２の配線部２６ｂには伝わらず、従って第２の配線部２６ｂが接着部２６ｃで剥離するようなことはない。
また、二次コイル５、スイッチング素子８の熱の影響で膨張、収縮する絶縁樹脂材１４により、第１の配線部２６ａには引張力等の応力が加わるが、そのときもその応力は絶縁板２４で受け止められ、第２の配線部２６ｂには伝わらず、また第２の配線部２６ｂ自身はシリコンゲル１２内に位置しており、絶縁樹脂材１４の膨張、収縮の影響を受けないので、絶縁樹脂材１４の膨張、収縮で第２の配線部２６ｂが接着部２６ｃで混成集積回路９から剥離するようなことはない。
【００１９】
実施例５．
図５はこの発明の内燃機関用点火装置の他の実施例を示す部分正断面図であり、第１の配線部２６ａと第２の配線部２６ｂとの接続部２６ｄがシリコンゲル１２の外部の絶縁樹脂材１４内に位置しており、また第２の配線部２６ｂの曲げ部２６ｅがシリコンゲル１２内に位置して点が実施例４と異なる。
先に説明した実施例４の場合、第１の配線部２６ａと第２の配線部２６ｂとの接続部２６ｄはシリコンゲル１２内に位置させたため、第２の配線部２６ｂは絶縁樹脂材１４の膨張、収縮の影響を受けなくてすむという利点があるものの、第１の配線部２６ａと第２の配線部２６ｂとのはんだ溶接後にシリコンゲル１２を容器内に充填しなければならない。そのため、接続部２６ｄの溶接作業で生じる溶接チリでスイッチング素子８、混成集積回路９に悪影響を与える虞れがある。
【００２０】
しかしながら、この実施例の場合、接続部２６ｄがシリコンゲル１２の外側に位置しているので、シリコンゲル１２を容器内に充填後に第１の配線部２６ａと第２の配線部２６ｂとの溶接作業を行うことができ、溶接作業で生じるはんだチリからスイッチング素子８、混成集積回路９を保護することができる。
また、二次コイル５、スイッチング素子８の熱の影響で絶縁樹脂材１４が膨張、収縮し、その結果第２の配線部２６ｂに引張力が生じても、その力は曲げ部２６ｅで吸収でき、第２の配線部２６ｂが接着部２６ｃで混成集積回路９から剥離するようなことはない。
なお、上記各実施例においては、パワースイッチ６と点火信号入力端子１３ｂとを接続する配線２１、２６ａ、２６ｂについて説明したが、この発明はパワースイッチ６とアース端子１３ｃとを接続する配線、パワースイッチ６と一次コイルとを接続する配線にも適用することができるのは勿論である。
【００２１】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明の請求項１記載の内燃機関用点火装置によれば、配線は、絶縁板に貫通、固着されているとともに一端部が点火信号入力端子に接続された第１の配線部と、この第１の配線部の他端部に一端部が接続され他端部がスイッチングユニットに接続された第２の配線部とから構成されたので、組立時、接続時の第１の配線部に対する引張力は第２の配線部には伝達されず、作業の信頼性が向上するという効果がある。
また、前記第２の配線部の前記スイッチングユニット側は前記ゲル内に位置しているので、第２の配線部は絶縁樹脂材の膨張、収縮の影響を受けにくく、絶縁樹脂材の膨張、収縮で第２の配線部が接着部でスイッチングユニットから剥離するのを防止することができる。
【００２２】
また、この発明の請求項２記載の内燃機関用点火装置によれば、容器内において、第２の配線部のゲル内には、曲げ部が形成されているので、第２の配線部に引張力が生じても、その力は曲げ部で吸収でき、第２の配線部が接着部でスイッチングユニットから剥離するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図１】 この発明の参考例１の内燃機関用点火装置の正断面図である。
【図２】 この発明の参考例２の内燃機関用点火装置の正断面図である。
【図３】 この発明の参考例３の内燃機関用点火装置の正断面図である。
【図４】 この発明の実施例４の内燃機関用点火装置の正断面図である。
【図５】 この発明の実施例５の内燃機関用点火装置の正断面図である。
【図６】 従来の内燃機関用点火装置の正断面図である。
【図７】 図６の絶縁ケースの斜視図である。
【図８】 内燃機関用点火装置の電気回路図である。
【符号の説明】
１ 絶縁ケース、５ 二次コイル、６ パワースイッチ、７ ヒートシンク（容器）、８ スイッチング素子、９ 混成集積回路、１２ シリコンゲル、１３ｂ 点火信号入浴端子、１４ 絶縁樹脂材、２１ 配線、２１ａ 曲げ部、２２ カバー、２２ｂ 突起部、２３ 樹脂部、２４ 絶縁板、２６ａ 第１の配線部、２６ｂ 第２の配線部、２６ｃ 接着部、２６ｄ 接続部、２６ｅ 曲げ部。
【産業上の利用分野】
この発明は、イグニションンコイルの一次電流を断続通電するパワースイッチが絶縁ケース内に内蔵され、かつこの絶縁ケース内に注入された絶縁樹脂材によりパワースイッチが固定化された内燃機関用点火装置に関するものである。
【０００２】
【従来の技術】
図６は従来の内燃機関用点火装置の部分断面図、図７は図６の絶縁ケースの全体斜視図、図８は内燃機関用点火装置の電気回路図であり、合成樹脂製の絶縁ケース１の収納部１ａの底中央部には孔（図示せず）が形成されている。この孔にはイグニションコイルの第１のＥ形鉄芯２の中央部が貫通している。この第１のＥ形鉄芯２にはイグニションコイルの第２のＥ形鉄芯３が対向して配設されている。第１のＥ形鉄芯２の中央部と間隔をおいて対向した第２のＥ形鉄芯３の中央部とには一次コイル４が巻回されており、その一次コイル４の外周には二次コイル５が巻回されている。
【０００３】
収納部１ａから突出した形状の補助収納部１ｃにはパワースイッチ６が収納されている。パワースイッチ６は、容器である皿形をした銅製のヒートシンク７と、このヒートシンク７内に収納されたパワートランジスタからなるスイッチング素子８と、スイッチング素子８を駆動、制御する混成集積回路（ハイブリッドＩＣ）９と、スイッチング素子８と混成集積回路９とを接続する接続線１０と、一端が混成集積回路９に接続された配線１１と、ヒートシンク７の内部に充填されスイッチング素子８および混成集積回路９からなるスイッチングユニットを保護するためのシリコンゲル１２とを備えている。
【０００４】
また、絶縁ケース１はイグニションコイルの高圧部である高圧端子（図示せず）の保持部１ｄおよび低圧端子の保持部１ｅを有している。低圧端子は、一次コイルを自動車の電池に接続するＶＢ端子１３ａと、コントロールユニット（図示せず）からの点火信号をパワースイッチ６に印加する点火信号入力端子１３ｂと、アース端子１３ｃとを有している。
【０００５】
上記のように構成された内燃機関用点火装置では、ヒートシンク７内にシリコンゲル１２が充填されたパワースイッチ６を補助収納部１ｃに収納した後、配線１１の先端部と端子１３ｂ、１３ｃとを接続し、またパワースイッチ６と一次コイル４とを配線１５で接続し、絶縁ケース１の収納部１ａおよび補助収納部１ｃ内に絶縁樹脂材１４を充填、硬化してパワースイッチ６を絶縁ケース１内に固定している。
そして、点火信号入力端子１３ｂから入力されるコントロールユニットからの点火信号はパワースイッチ６を通じてイグニションコイルの一次コイル４に流れる一次電流を制御する。イグニションコイルの二次コイル５には一次コイル４に流れる一次電流に応じて高電圧が発生し、この高電圧は高圧端子を通じてディストリビュータ（図示せず）に送られる。
【０００６】
【発明が解決しようとする課題】
従来の内燃機関用点火装置では、パワースイッチ６の断続運転により生じる二次コイル５およびスイッチング素子８の熱の影響で絶縁樹脂材１４が膨張、収縮を繰り返し、そのため配線１１、１５には引張力が生じ、そのため例えば配線１１の接着部１１ａが混成集積回路９から剥離し、耐ヒートショック性に課題があった。
また、同様に絶縁ケース１内にパワースイッチ６を組み入れ作業するとき、または配線１１の接続作業のとき、配線１１に引張力等の応力が加わり、配線１１の接着部１１ａが混成集積回路９から剥離してしまい、作業信頼性がよくないという課題があった。
さらに、絶縁樹脂材１４を絶縁ケース１内に真空注型する際、シリコンゲル１２内のエアが絶縁樹脂材１４内に移行し、絶縁樹脂材１４内にボイドが生じてしまい、絶縁樹脂材１４の絶縁性能がよくないという課題もあった。
【０００７】
この発明は、かかる課題を解決するためになされたもので、配線に対する耐ヒートショック性が向上し、また作業信頼性が向上し、さらに絶縁性能性が向上する内燃機関用点火装置を得ることを目的とする。
【０００８】
【課題を解決するための手段】
この発明の請求項１の内燃機関用点火装置は、ヒートシンクと絶縁板により皿形の容器が構成されており、前記ヒートシンクに搭載されイグニションコイルの一次電流を断続通電するスイッチング素子およびこのスイッチング素子を駆動、制御する混成集積回路とからなるスイッチングユニット、このスイッチングユニットを保護するためにスイッチングユニットを覆ったゲル、および前記スイッチングユニットに一端部が接続され他端部が点火信号入力端子に接続された配線を有するパワースイッチと、このパワースイッチを絶縁樹脂材で固定化して内蔵する絶縁ケースとを備えた内燃機関用点火装置において、前記ヒートシンクの片側側面には前記絶縁板が設けられており、前記配線は、前記絶縁板に貫通、固着されているとともに一端部が前記点火信号入力端子に接続された第１の配線部と、この第１の配線部の他端部に前記ゲル内で一端部が接続され他端部が前記スイッチングユニットに接続された第２の配線部とから構成され、かつ前記第２の配線部は、前記ゲル内に位置している。
【０００９】
この発明の請求項２の内燃機関用点火装置は、ヒートシンクと絶縁板により皿形の容器が構成されており、前記ヒートシンクに搭載されイグニションコイルの一次電流を断続通電するスイッチング素子およびこのスイッチング素子を駆動、制御する混成集積回路とからなるスイッチングユニット、このスイッチングユニットを保護するためにスイッチングユニットを覆ったゲル、および前記スイッチングユニットに一端部が接続され他端部が点火信号入力端子に接続された配線を有するパワースイッチと、このパワースイッチを絶縁樹脂材で固定化して内蔵する絶縁ケースとを備えた内燃機関用点火装置において、前記ヒートシンクの片側側面には前記絶縁板が設けられており、前記配線は、前記絶縁板に貫通、固着されているとともに一端部が前記点火信号入力端子に接続された第１の配線部と、この第１の配線部の他端部に前記ゲル外で一端部が接続され他端部が前記スイッチングユニットに接続された第２の配線部とから構成され、かつ前記第２の配線部は、前記ゲル内に埋設された曲げ部を有している。
【００１０】
【作用】
この発明の請求項１の内燃機関用点火装置においては、第１の配線部は容器で固着されているので、組立時、接続時、および絶縁樹脂材の膨張、収縮により第１の配線部に応力が加わっても、その応力は容器で受け止められ、第２の配線部には伝わらず、また第２の配線部のスイッチングユニット側はゲル内に位置しており、第２の配線部は絶縁樹脂材の膨張、収縮の影響を受けにくく、絶縁樹脂材の膨張、収縮で第２の配線部が接着部でスイッチングユニットから剥離するのを防止することができる。
【００１１】
この発明の請求項２の内燃機関用点火装置においては、曲げ部がゲル内に埋設されているので、第２の配線部に引張力が生じても、その力は曲げ部で吸収でき、第２の配線部が接着部でスイッチングユニットから剥離するのを防止することができる。
【００１２】
【実施例】
参考例１．
以下、この発明の参考例を図について説明する。
図１はこの発明の一参考例を示す内燃機関用点火装置の部分正断面図であり、図６ないし図８と同一または相当部分は同一符号を付し、その説明は省略する。
【００１３】
この内燃機関用点火装置の場合、一端が混成集積回路９に接続され他端が点火信号入力端子１３ｂに接続された配線２１は、シリコンゲル１２内で曲げ部２１ａを有している。
このため、二次コイル５、スイッチング素子８の熱の影響で絶縁樹脂材１４が膨張、収縮し、配線２１に引張力が生じても、その引張力は曲げ部２１ａで吸収され、配線２１の接着部２１ｂには及ばない。
【００１４】
参考例２．
図２はこの発明の内燃機関用点火装置の他の参考例を示す部分正断面図であり、ヒートシンク７はカバー２２で覆われている。このカバー２２は、曲げ部２１ａを有する配線２１を貫通する穴２２ａと曲げ部２１ａを位置決めする突起部２２ｂとシリコンゲル１２を充填するためのゲル用窓２２ｃを有している。
このカバー２２はシリコンゲル１２をヒートシンク７内に充填する際にはヒートシンク７に取り付けられており、シリコンゲル１２をゲル用窓２２ｃからヒートシンク７内に充填するときも曲げ部２１ａは突起部２２ｂでヒートシンク７内に確実に位置決めされており、シリコンゲル１２内に埋設される。従って、曲げ部２１ａが絶縁樹脂材１４内に埋設されるようなことはなく、絶縁樹脂材１４の膨張、収縮により配線２１に引張力が生じても、その引張力はシリコンゲル１２内の曲げ部２１ａで確実に吸収され、配線２１の接着部２１ｂには及ばない。
【００１５】
参考例３．
図３はこの発明のさらに他の参考例を示す内燃機関用点火装置の部分正断面図であり、配線２１の曲げ部２１ａを埋設したシリコンゲル１２上には樹脂部２３が設けられている。この樹脂部２３は配線２１およびヒートシンク７と密着性がよいエポキシ等の樹脂がシリコンゲル１２上に充填、硬化されて構成されている。
【００１６】
この参考例の場合、樹脂部２３で密着、固定された配線２１を有するパワースイッチ６を補助収納部１ｃに収納し、かつ配線２１の先端部を点火信号入力端子１３ｂに接続する際、配線２１に引張力が加わっても、配線２１は樹脂部２３で固定されているので、その力は配線２１の接着部２１ｂには及ばない。
また、曲げ部２１ａがシリコンゲル１２内に埋設されているので、二次コイル５、スイッチング素子８の熱による影響で絶縁樹脂材１４および樹脂部２３が膨張、収縮し、その結果配線２１に引張力が生じても、その引張力はシリコンゲル１２内の曲げ部２１ａで吸収され、配線２１の接着部２１ｂには及ばない。
さらに、シリコンゲル１２は樹脂部２３で覆われているので、シリコンゲル１２内の残存エアはヒートシンク７内に閉じ込められ、絶縁ケース１内に絶縁樹脂材１４を真空注型する際に、シリコンゲル１２内に残存していたエアが絶縁樹脂材１４中に移行して絶縁樹脂材１４内にボイドを形成して絶縁性能が低下するようなことはない。
【００１７】
実施例４．
図４はこの発明の内燃機関用点火装置の実施例４を示す部分正断面図であり、ヒートシンク７の片側側面には絶縁板２４が設けられている。ヒートシンク７とともに容器の一部を構成している絶縁板２４には第１の配線部２６ａが貫通、固着されている。この第１の配線部２６ａの一端部には点火信号入力端子１３ｂが接続されている。第１の配線部２６ａの他端部は第２の配線部２６ｂの先端部にシリコンゲル１２内で接続されている。第２の配線部２６ｂの基端部は混成集積回路９と接着部２６ｃで接続されている。
【００１８】
この実施例の場合、絶縁板２４に第１の配線部２６ａが固着されたパワースイッチ６を補助収納部１ｃに収めた後、第１の配線部２６ａを点火信号入力端子１３ｂと接続しており、その組立時、接続時に第１の配線部２６ａに応力が加わっても、その応力は絶縁板２４で受け止められ、第２の配線部２６ｂには伝わらず、従って第２の配線部２６ｂが接着部２６ｃで剥離するようなことはない。
また、二次コイル５、スイッチング素子８の熱の影響で膨張、収縮する絶縁樹脂材１４により、第１の配線部２６ａには引張力等の応力が加わるが、そのときもその応力は絶縁板２４で受け止められ、第２の配線部２６ｂには伝わらず、また第２の配線部２６ｂ自身はシリコンゲル１２内に位置しており、絶縁樹脂材１４の膨張、収縮の影響を受けないので、絶縁樹脂材１４の膨張、収縮で第２の配線部２６ｂが接着部２６ｃで混成集積回路９から剥離するようなことはない。
【００１９】
実施例５．
図５はこの発明の内燃機関用点火装置の他の実施例を示す部分正断面図であり、第１の配線部２６ａと第２の配線部２６ｂとの接続部２６ｄがシリコンゲル１２の外部の絶縁樹脂材１４内に位置しており、また第２の配線部２６ｂの曲げ部２６ｅがシリコンゲル１２内に位置して点が実施例４と異なる。
先に説明した実施例４の場合、第１の配線部２６ａと第２の配線部２６ｂとの接続部２６ｄはシリコンゲル１２内に位置させたため、第２の配線部２６ｂは絶縁樹脂材１４の膨張、収縮の影響を受けなくてすむという利点があるものの、第１の配線部２６ａと第２の配線部２６ｂとのはんだ溶接後にシリコンゲル１２を容器内に充填しなければならない。そのため、接続部２６ｄの溶接作業で生じる溶接チリでスイッチング素子８、混成集積回路９に悪影響を与える虞れがある。
【００２０】
しかしながら、この実施例の場合、接続部２６ｄがシリコンゲル１２の外側に位置しているので、シリコンゲル１２を容器内に充填後に第１の配線部２６ａと第２の配線部２６ｂとの溶接作業を行うことができ、溶接作業で生じるはんだチリからスイッチング素子８、混成集積回路９を保護することができる。
また、二次コイル５、スイッチング素子８の熱の影響で絶縁樹脂材１４が膨張、収縮し、その結果第２の配線部２６ｂに引張力が生じても、その力は曲げ部２６ｅで吸収でき、第２の配線部２６ｂが接着部２６ｃで混成集積回路９から剥離するようなことはない。
なお、上記各実施例においては、パワースイッチ６と点火信号入力端子１３ｂとを接続する配線２１、２６ａ、２６ｂについて説明したが、この発明はパワースイッチ６とアース端子１３ｃとを接続する配線、パワースイッチ６と一次コイルとを接続する配線にも適用することができるのは勿論である。
【００２１】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明の請求項１記載の内燃機関用点火装置によれば、配線は、絶縁板に貫通、固着されているとともに一端部が点火信号入力端子に接続された第１の配線部と、この第１の配線部の他端部に一端部が接続され他端部がスイッチングユニットに接続された第２の配線部とから構成されたので、組立時、接続時の第１の配線部に対する引張力は第２の配線部には伝達されず、作業の信頼性が向上するという効果がある。
また、前記第２の配線部の前記スイッチングユニット側は前記ゲル内に位置しているので、第２の配線部は絶縁樹脂材の膨張、収縮の影響を受けにくく、絶縁樹脂材の膨張、収縮で第２の配線部が接着部でスイッチングユニットから剥離するのを防止することができる。
【００２２】
また、この発明の請求項２記載の内燃機関用点火装置によれば、容器内において、第２の配線部のゲル内には、曲げ部が形成されているので、第２の配線部に引張力が生じても、その力は曲げ部で吸収でき、第２の配線部が接着部でスイッチングユニットから剥離するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図１】 この発明の参考例１の内燃機関用点火装置の正断面図である。
【図２】 この発明の参考例２の内燃機関用点火装置の正断面図である。
【図３】 この発明の参考例３の内燃機関用点火装置の正断面図である。
【図４】 この発明の実施例４の内燃機関用点火装置の正断面図である。
【図５】 この発明の実施例５の内燃機関用点火装置の正断面図である。
【図６】 従来の内燃機関用点火装置の正断面図である。
【図７】 図６の絶縁ケースの斜視図である。
【図８】 内燃機関用点火装置の電気回路図である。
【符号の説明】
１ 絶縁ケース、５ 二次コイル、６ パワースイッチ、７ ヒートシンク（容器）、８ スイッチング素子、９ 混成集積回路、１２ シリコンゲル、１３ｂ 点火信号入浴端子、１４ 絶縁樹脂材、２１ 配線、２１ａ 曲げ部、２２ カバー、２２ｂ 突起部、２３ 樹脂部、２４ 絶縁板、２６ａ 第１の配線部、２６ｂ 第２の配線部、２６ｃ 接着部、２６ｄ 接続部、２６ｅ 曲げ部。
Claims (2)
- ヒートシンクと絶縁板により皿形の容器が構成されており、前記ヒートシンクに搭載されイグニションコイルの一次電流を断続通電するスイッチング素子およびこのスイッチング素子を駆動、制御する混成集積回路とからなるスイッチングユニット、このスイッチングユニットを保護するためにスイッチングユニットを覆ったゲル、および前記スイッチングユニットに一端部が接続され他端部が点火信号入力端子に接続された配線を有するパワースイッチと、
このパワースイッチを絶縁樹脂材で固定化して内蔵する絶縁ケースとを備えた内燃機関用点火装置において、
前記ヒートシンクの片側側面には前記絶縁板が設けられており、
前記配線は、前記絶縁板に貫通、固着されているとともに一端部が前記点火信号入力端子に接続された第１の配線部と、この第１の配線部の他端部に前記ゲル内で一端部が接続され他端部が前記スイッチングユニットに接続された第２の配線部とから構成され、かつ前記第２の配線部は、前記ゲル内に位置していることを特徴とする内燃機関用点火装置。 - ヒートシンクと絶縁板により皿形の容器が構成されており、前記ヒートシンクに搭載されイグニションコイルの一次電流を断続通電するスイッチング素子およびこのスイッチング素子を駆動、制御する混成集積回路とからなるスイッチングユニット、このスイッチングユニットを保護するためにスイッチングユニットを覆ったゲル、および前記スイッチングユニットに一端部が接続され他端部が点火信号入力端子に接続された配線を有するパワースイッチと、
このパワースイッチを絶縁樹脂材で固定化して内蔵する絶縁ケースとを備えた内燃機関用点火装置において、
前記ヒートシンクの片側側面には前記絶縁板が設けられており、
前記配線は、前記絶縁板に貫通、固着されているとともに一端部が前記点火信号入力端子に接続された第１の配線部と、この第１の配線部の他端部に前記ゲル外で一端部が接続され他端部が前記スイッチングユニットに接続された第２の配線部とから構成され、かつ前記第２の配線部は、前記ゲル内に埋設された曲げ部を有していることを特徴とする内燃機関用点火装置。
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