JP3648261B2 - ヘモグロビン含有水溶液の処理方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、ヘモグロビン含有水溶液の処理方法に関する。
更に詳しくは、本発明はヘモグロビンの酸素運搬機能を長期に亘り発現させるために、ヘモグロビンの一時的な一酸化炭素化処理、使用に際しての脱一酸化炭素化処理を行なうというヘモグロビン含有水溶液の処理方法に関するものである。
【0002】
人や種々の動物の赤血球内に存在するヘモグロビンは、酸素の運搬を行なう重要な役目を担っており、様々な研究が行なわれている。
特に最近においては、輸血における煩雑な操作の解消や特殊外科手術、臓器灌流等の目的でヘモグロビンを原料とする人工血液の研究が盛んにおこなわれている。
【0003】
ヘモグロビンは、ヘモグロビン分子中に含まれるヘム鉄の原子価が2価の状態でのみ酸素運搬機能を有しており、ヘム鉄が酸化されて3価になった(メト化された)メトヘモグロビンは酸素運搬機能を持たない。従って、メトヘモグロビンの生成を防止する必要がある。
前記したメトヘモグロビンの生成を防止する方法の一つとして、ヘモグロビン分子中のヘム鉄と一酸化炭素とを錯体形成(一酸化炭素化)させて安定化する方法が、Methods in ENZYMOLOBY, vol.76, HEMOGLOBINS, ACADEMIC PRESS, p9(1981)に知られている。
【0004】
このほか、ヘモグロビン溶液と脂質から成る酸素運搬体として有用なヘモグロビン含有小胞体を製造する際に、一酸化炭素ガス雰囲気下で、かつ非冷却下(例えば10〜40℃)で操作することを特徴とするヘモグロビンのメト化を抑制しつつ前記小胞体を製造する技術(特開平4−26626号)、製造した人工赤血球を長期保有のためにヘモグロビンを一酸化炭素化して安定化させる方法(特開昭63−297330号)などが知られている。
なお、前記した一酸化炭素での処理条件(ヘモグロビンの一酸化炭素化の条件)は、ヘモグロビン含有水溶液に一酸化炭素を吹き付けるか、あるいはバブリングによる方法が採用されている。
【0005】
一方、ヘモグロビン分子中のヘム鉄と一酸化炭素とを錯体形成させた状態のヘモグロビンは、酸素運搬機能を持たない。そのため、ヘモグロビン分子中のヘム鉄と錯体を形成している一酸化炭素を外して(脱一酸化炭素化)、ヘモグロビンの酸素運搬機能を回復させる必要がある。
前記した酸素運搬機能を回復させる方法としては、丸底フラスコにその容量に対し1/100程度の容量のヘモグロビン水溶液を入れ、氷浴中において200−Wの光を照射し、回転させながら10分間酸素を吹き込むという方法が知られている(Methods in ENZYMOLOGY, vol.76, HEMOGLOBINS, ACADEMIC PRESS, p164(1981)) 。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
前記したように、ヘモグロビンは、ヘモグロビンを一酸化炭素化することによって安定化され、その逆に一酸化炭素化したヘモグロビンを脱一酸化炭素化することによってヘモグロビンの酸素運搬機能を回復することができるものである。 しかしながら、従来のヘモグロビンの安定化及び再活性化方法は効率が悪く、処理量が少なく、工業化のための方法としては魅力のないものである。
また、従来のヘモグロビン含有水溶液に一酸化炭素ガスを吹き付けたりバブリングするヘモグロビンの安定化方法をおいては、赤血球の溶血や発泡現象及び前記発泡現象にもとづくヘモグロビンの変質が生じ(後述する比較例参照)、更にまた、従来の一酸化炭素化したヘモグロビンに酸素ガスを吹き込むヘモグロビンの再活性化方法においては、脱一酸化炭素化率が低く、メト化率が高く、かつ発泡現象及び前記発泡現象にもとづくヘモグロビンの変質が生じる(後述する比較例参照)。
本発明は、ヘモグロビンに変質などの悪影響を与えず、効率よく大量にヘモグロビンの一酸化炭素化(安定化)および脱一酸化炭素化(酸素運搬能の再活性化)を行なう優れたヘモグロビン含有水溶液の処理方法を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明を概説すれば、本発明における第一の発明は、ヘモグロビン含有水溶液を処理し、該溶液中のヘモグロビンを一酸化炭素化する方法において、多孔性中空糸膜から成るホローファイバーを使用し、前記中空糸膜を介してその一方側から一酸化炭素ガスによりガス圧をかけるとともに、前記中空糸膜の反対側からヘモグロビン含有水溶液を流通させ、該水溶液中のヘモグロビンを一酸化炭素化することを特徴とするヘモグロビン含有水溶液の処理方法に関するものである。
【0008】
また、本発明における第二の発明は、一酸化炭素化したヘモグロビンを含有する水溶液を処理し、該ヘモグロビンを脱一酸化炭素化する方法において、多孔性中空糸膜から成るホローファイバーを使用し、光照射下に前記多孔性中空糸膜を介してその一方側から一酸化炭素以外のガスによりガス圧をかけるとともに、前記中空糸膜の反対側から一酸化炭素化したヘモグロビン含有水溶液を流通させ、該ヘモグロビンを脱一酸化炭素化することを特徴とするヘモグロビン含有水溶液の処理方法に関するものである。
以下、本発明の技術的構成を詳しく説明する。
【0009】
本発明に使用するホローファイバーは、中空内壁と外壁とに貫通する微小細孔を多数有する多孔性中空糸膜をモジュール化したものである。
前記多孔性中空糸膜は、ポリエチレン・ポリプロピレンなどのポリオレフィン製、ポリスルホン、フッ素、シリコーンなどの疎水性樹脂製、あるいはそれを親水化したもの、更にはセルロースジアセテート、セルローストリアセテート、ポリビニルアルコール、ポリメタクリル酸メチルなどを原料とするものであってもよい。これらのうち、ポリオレフィン系樹脂、またはそれを親水化したものから形成されるものが好ましい。
【0010】
微小細孔の最大孔径としては、0.01〜1μm 、好ましくは0.1〜0.4μm である。あまり大きい孔径であると、細かい泡が発生してしまいヘモグロビンの蛋白質が変質するおそれがあり、小さい孔径であるとヘモグロビンの一酸化炭素化または脱一酸化炭素化の効率が低下してしまうため好ましくない。
また、中空糸膜の平均空孔率には特に制限はないが、30〜80%であることが好ましい。更に、中空糸膜の平均膜厚は、概ね、10〜200μm 程度でよい。
なお、使用するホローファイバーは、予め乾燥した状態であることが好ましい。これは、濡れた状態のホローファイバーでは、水の表面張力により微細孔がふさがれガスと水溶液が接触しにくくなり、ヘモグロビンの一酸化炭素および脱一酸化炭素化が非常に起こりにくくなるためである。
【0011】
前記したホローファイバーとしては、血漿成分分離用、人工肝臓用、人工肺用、酵素反応用、細胞培養用などとして市販されているものを利用することができる。例えば、この種のホローファイバーとして、カスケードフロー、プラズマフロー(旭メディカル社製)、エバフラックス(クラレ社製)、ダイヤクリスタル(泉工医科社製)などがある。
【0012】
本発明で使用するヘモグロビン含有水溶液は、例えば人や動物の血液、赤血球、赤血球より溶血あるいは赤血球より精製したヘモグロビン、ヘモグロビンを原料とした人工血液等の水溶液である。
【0013】
本発明のヘモグロビン含有水溶液の一酸化炭素化で使用するガスは、一酸化炭素である。
一酸化炭素ガスには、不活性ガス、例えば二酸化炭素、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴンなどの不純物を含んでいてもかまわない。一酸化炭素の純度には特に制限は無いが、濃度が50%未満の場合には、反応効率が低下する。
一酸化炭素に含まれる酸素は除去しなくてもかまわないが、一酸化炭素化の反応効率を高めるために脱酸素剤(例えば、1g の亜ニチオン酸ナトリウムと10mgのアントラキノン−β−スルホン酸を100mlの蒸留水に溶解した溶液など)を通すことによって、酸素を除去した一酸化炭素ガスを用いる方がより好ましい。
【0014】
また本発明のヘモグロビン含有水溶液の脱一酸化炭素化で使用するガスは、酸素、または不活性ガス、あるいはこれらの混合物である。
ヘモグロビン含有水溶液の脱一酸化炭素で酸素を含むガスを使用するとオキシヘモグロビン含有水溶液が得られ、不活性ガスを使用するとデオキシヘモグロビン含有水溶液が得られる。
ヘモグロビン含有水溶液の脱一酸化炭素化は、不活性ガスと比較して酸素ガスを用いた方が処理効果が高い。
【0015】
次に、本発明の多孔性中空糸膜からなるホローファイバーを使用し、ヘモグロビンを一酸化炭素化処理する方法、および一酸化炭素化したヘモグロビンを脱一酸化炭素化処理する方法について説明する。
ヘモグロビンの前記一酸化炭素化処理および脱一酸化炭素化処理は、次に示す2つの方法いずれを用いても行なうことができる;
▲1▼ 中空糸膜外側からガスによりガス圧をかけ、中空糸膜内側にヘモグロビン含有水溶液を流通させる方法。
▲2▼ 中空糸膜内側からガスによりガス圧をかけ、中空糸膜外側にヘモグロビン含有水溶液を流通させる方法。
【0016】
前記▲1▼、▲2▼の方法において、ガス圧の条件は、ヘモグロビン含有水溶液にガスの気泡を混入させないようにし、更にヘモグロビン含有水溶液が中空糸膜の反対側に漏れ出さないようにすることが好ましい。例えば、ガス圧が0.5kgf/cm2 以下ではヘモグロビン含有水溶液が中空糸膜の反対側に漏れ出す恐れがあり、ガス圧が5.0kgf/cm2 以上ではヘモグロビン含有水溶液に気泡が混入したり、あるいは膜が破れる恐れがある。
【0017】
更に前記▲1▼、▲2▼の方法において、ガスによるガス圧をかけるよりも前にヘモグロビン含有水溶液を先に多孔性中空糸膜から成るホローファイバー内に流通させると多孔性中空糸膜が濡れ、前記した理由によりヘモグロビンの一酸化炭素化および脱一酸化炭素化が起こりにくくなる。
【0018】
次に、脱一酸化炭素化(処理)の条件について説明する。
本発明が処理の対象としているヘモグロビンと一酸化炭素のように結合力が強いものが結合している場合、両成分を解離させるには光を照射してエネルギーを与える必要がある。したがって、本発明においてヘモグロビンの脱一酸化炭素化処理を行う場合、光照射の条件が必要である。
このとき使用する光源としては、蛍光燈、白熱電球、高圧水銀ランプ、高圧ナトリウムランプ、キセノンランプ、UVランプ等を用いることができる。紫外線を発生する光源を用いる場合には、ヘモグロビンの変質を考慮し、400nm以下の波長をカットするフィルターを介して使用することが好ましい。
前記したようにヘモグロビンの脱一酸化炭素化処理には光によるエネルギーが必要であるので、多孔性中空糸膜により光が妨げられないようヘモグロビン含有水溶液を中空糸膜外側に流す方が望ましい。
【0019】
大量のヘモグロビン含有水溶液の一酸化炭素化処理を行なう場合、あるいは前記処理により一酸化炭素化したヘモグロビンを含有した大量のヘモグロビン含有水溶液の脱一酸化炭素化処理を行なう場合、中空糸膜の表面積の大きいホローファイバーを単一で使用してもよいが、より迅速に行うため、膜面積の小さいホローファイバーを数個組み合わせて行なうことにより、より迅速な処理が行なえる。
更に本発明においては、ヘモグロビン含有水溶液を処理する装置を閉鎖系にして行なえるので、無菌的な処理も実現できる。
【0020】
【実施例】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、これらは本発明を限定するものではない。
なお、ヘモグロビンのヘム鉄と配位子(一酸化炭素)との錯体形成の状態は、分光学的方法(Methods in ENZYMOLOGY ,vol.76, HEMOGLOBINS, ACADEMIC PRESS,p21(1981))、あるいはチバコーニングCOオキシメーター(チバコーニング社製)を用いて測定を行った。
【0021】
実施例1−1
ホローファイバー(旭メディカル社製、OP−05)の中空糸膜外側より一酸化炭素ガスにてガス圧をかけ、期限切れヒト赤血球溶液(ヘモグロビン濃度17g/dl)1000mlを中空糸膜内側に流通させた。このときの一酸化炭素ガスのガス圧は、0.8kgf/cm2 であった。
赤血球中の一酸化炭素化したヘモグロビンの割合は、10分間で99%以上となった。このとき、赤血球溶液はほとんど発泡していなかった。
一酸化炭素化した赤血球溶液を2000Gで30分遠心分離を行なった結果、赤血球の溶血は認められなかった。
【0022】
比較例1−1
期限切れヒト赤血球溶液(ヘモグロビン濃度17g/dl)200mlを500mlのバイアルビンに入れ、一酸化炭素ガスを該赤血球溶液(ヘモグロビン水溶液中)に通じバブリングした。更に、赤血球溶液を均一にするため激しく振盪させた。
赤血球溶液中の一酸化炭素化したヘモグロビンの割合は、7分間で99%以上となった。このとき、バイアルビン中の赤血球溶液は非常に泡立っていた。
この操作を5回繰り返して、期限切れヒト赤血球溶液1000ml( 200ml×5回)を処理した。
一酸化炭素化した赤血球を2000Gで30分遠心分離を行なった結果、赤血球の溶血が認められた。
【0023】
参考例
この参考例は、以下の実施例及び比較例で使用する赤血球膜を除去したヘモグロビン水溶液の調製例を示すものである。
期限切れヒト濃厚赤血球2500mlに生理食塩水を加え、遠心操作を行ない、混在する白血球、血小板、血漿を除去した。得られた洗浄赤血球に2倍容量の蒸留水を加え溶血を行なった。この溶液から連続遠心操作、フィルター濾過により赤血球膜成分を除去した。
更に、限外濾過操作により脱塩し、濃縮を行ないヘモグロビン濃度30g/dlの赤血球膜除去ヘモグロビン水溶液を得た。
【0024】
実施例1−2
ホローファイバー(旭メディカル社製、OP−05)の中空糸膜外側より一酸化炭素ガスにてガス圧をかけ、参考例で得た赤血球膜除去ヘモグロビン水溶液1000mlを中空糸膜内側に流通させた。このときの一酸化炭素ガスのガス圧は、0.8kgf/cm2 であった。
ヘモグロビン水溶液中の一酸化炭素化したヘモグロビンの割合は、20分間で99%以上となった。このとき、ヘモグロビン水溶液はほとんど発泡していなかった。
一酸化炭素化したヘモグロビン水溶液を16000Gで20分遠心分離を行なった結果、ヘモグロビンの変質による不溶成分の沈殿は認められなかった。
【0025】
比較例1−2
30g/dlのヘモグロビン水溶液200mlを500mlのバイアルビンに入れ、一酸化炭素ガスをヘモグロビン水溶液中に通じバブリングした。更に、ヘモグロビン水溶液を均一にするために激しく振盪させた。
ヘモグロビン水溶液中の一酸化炭素化したヘモグロビンの割合は、10分間で99%以上となった。このとき、バイアルビン中のヘモグロビン水溶液は非常に泡立っていた。
この操作を5回繰り返して、期限切れヒト赤血球溶液1000ml( 200ml×5回)を処理した。
一酸化炭素化したヘモグロビン水溶液を16000Gで20分遠心分離を行なった結果、ヘモグロビンの変質による不溶成分の沈殿が認められた。
【0026】
実施例2−1
ホローファイバー(旭メディカル社製、OP−05)の外側より200−wの白熱光を当てながら、中空糸膜内側より酸素ガスにてガス圧をかけ、一酸化炭素化したヘモグロビン水溶液(5g/dl)200mlを中空糸膜外側に流通させた。このときの酸素ガスのガス圧は、0.8kgf/cm2 であった。
ヘモグロビン水溶液中の一酸化炭素化したヘモグロビンの割合は、30分間で4%以下となった。また、このもののメト化率は5%以下であった。
【0027】
比較例2−1
一酸化炭素化したヘモグロビン水溶液(5g/dl)200mlを、5 lのまる底フラスコに入れ、回転させながら酸素ガスを2 l/minの流量にて吹き込み、更に、外側より200−wの白熱光を当てた。一酸化炭素化したヘモグロビンの割合は、30分間で71%、60分間で53%であった。また、このもののメト化率は8%以下であった。
【0028】
実施例2−2
ホローファイバー(旭メディカル社製、OP−08)の外側より蛍光燈の光を当てながら、中空糸膜内側より酸素ガスにてガス圧をかけ一酸化炭素化したヘモグロビン水溶液(5g/dl)2000mlを中空糸膜外側に流通させた。このときの酸素ガスのガス圧は、0.8kgf/cm2 であった。
ヘモグロビン水溶液中の一酸化炭素化したヘモグロビンの割合は、10時間で5%以下となった。このとき、ヘモグロビン水溶液はほとんど泡立っていなかった。
脱一酸化炭素化したヘモグロビン水溶液を16000Gで20分遠心分離を行なった結果、ヘモグロビンの変質による不溶成分の沈殿は認められなかった。また、このもののメト化率は5%以下であった。
【0029】
実施例2−3
ホローファイバー(旭メディカル社製、OP−08)の外側より高圧水銀ランプの光を当てながら、中空糸膜内側より酸素ガスにてガス圧をかけ一酸化炭素化したヘモグロビン水溶液(5g/dl)2000mlを中空糸膜外側に流通させた。このときの酸素ガスのガス圧は、0.8kgf/cm2 であった。
このとき、紫外線によるヘモグロビンの変質を考慮して400nm以下の波長をカットするフィルターを光源とヘモグロビン水溶液の間に入れた。
ヘモグロビン水溶液中の一酸化炭素化したヘモグロビンの割合は、5時間で5%以下となった。脱一酸化炭素化したヘモグロビン水溶液を16000Gで20分遠心分離を行なった結果、ヘモグロビンの変質による不溶成分の沈殿は認められなかった。また、このもののメト化率は5%以下であった。
【0030】
比較例2−2
一酸化炭素化したヘモグロビン水溶液(5g/dl)2000mlを5 lのビーカーに入れ、攪拌させながら酸素ガスを0.5 l/minの流量にて水溶液中に吹き込み、更に、外側より蛍光燈の光を当てた。
一酸化炭素化したヘモグロビンの割合は、72時間で8%以下となった。このとき、ヘモグロビン水溶液は非常に泡立っていた。
脱一酸化炭素化したヘモグロビン水溶液を16000Gで20分遠心分離を行なった結果、ヘモグロビンの変質による不溶成分の沈殿が認められた。また、このもののメト化率は15%以下であった。
【0031】
実施例2−4
ホローファイバー(旭メディカル社製、OP−05)の外側より200−Wのの白熱光を当てながら、中空糸膜内側よりアルゴンガスにてガス圧をかけ、一酸化炭素化したヘモグロビン水溶液(5g/dl)200mlを中空糸膜外側に流通させた。このときのアルゴンガスのガス圧は、0.8kgf/cm2 であった。
1時間でヘモグロビン水溶液中の一酸化炭素化したヘモグロビンの割合が10%以下となった。また、このもののメト化率は5%以下であった。
【0032】
比較例2−3
一酸化炭素化したヘモグロビン水溶液(5g/dl)200mlを5 lのまる底フラスコに入れ、回転させながらアルゴンガスを2 l/minの流量にて吹き込み、更に、外側より200−Wの白熱光を当てた。一酸化炭素化したヘモグロビンの割合は、1時間で75%、2時間で60%であった。また、このもののメト化率は10%以下であった。
【0033】
調製例(ヘモグロビン内包脂質小胞体の調製例)
水添卵黄レシチン、コレステロール、ステアリン酸からなる組成比7/7/2(モル比)の脂質150gを一酸化炭素化したヘモグロビン水溶液2000ml(濃度30g/dl)に混ぜ、高圧乳化機(マントンゴーリー、運転圧力300kgf/cm2 、運転時間5分、運転温度4℃)を用いて処理を行なった。
この処理溶液を遠心分離操作(20000G、30分)し、上清を除去して残渣に生理食塩水を加えて再分散させた。この操作を3回繰り返して未内包のヘモグロビンを除去した。
得られたヘモグロビン内包脂質小胞体懸濁液は、ヘモグロビン濃度が5g/dlであり、粒径分布測定装置(Nicomp Model 730HPL : Pacific Scientific社製) で測定した粒径は、188±70nmであった。
【0034】
実施例2−5
ホローファイバー(旭メディカル社製、OP−08)の外側より蛍光燈の光を当てながら、中空糸膜内側より酸素ガスにてガス圧をかけ調製例で調製したヘモグロビン内包脂質小胞体分散液1000mlを中空糸膜外側に流通させた。このときの酸素ガスのガス圧は、0.8kgf/cm2 であった。
ヘモグロビン水溶液中の一酸化炭素化したヘモグロビンの割合は、10時間で5%以下となった。このとき、ヘモグロビン内包脂質小胞体懸濁液はほとんど泡立っていなかった。また、このもののメト化率は5%以下であった。
【0035】
実施例2−6
ホローファイバー(旭メディカル社製、OP−08)の外側より高圧水銀ランプの光を当てながら、中空糸膜内側より酸素ガスにてガス圧をかけ調製例で調製したヘモグロビン内包脂質小胞体分散液1000mlを中空糸膜外側に流通させた。このときの酸素ガスのガス圧は、0.8kgf/cm2 であった。
このとき、紫外線によるヘモグロビンの変質を考慮して400nm以下の波長をカットするフィルターを光源とヘモグロビン水溶液の間に入れた。
ヘモグロビン水溶液中の一酸化炭素化したヘモグロビンの割合は、5時間で5%以下となった。また、このもののメト化率は5%以下であった。
【0036】
比較例2−4
調製例で調製したヘモグロビン内包脂質小胞体分散液1000mlを5 lのビーカーに入れ、攪拌させながら酸素ガスを0.5 l/minの流量にて分散液中に吹き込み、更に、外側より蛍光燈の光を当てた。
一酸化炭素化したヘモグロビンの割合は、40時間で8%以下となった。このとき、ヘモグロビン内包脂質小胞体分散液は非常に泡立っていた。また、このもののメト化率は12%以下であった。
【0037】
【発明の効果】
本発明のヘモグロビンの一酸化炭素化処理及び一酸化炭素化したヘモグロビンの脱一酸化炭素化処理を行なうヘモグロビン含有水溶液の処理方法によれば、多孔性中空糸膜からなるホローファイバーを使用することによって、効率的にヘム鉄に対して一酸化炭素配位子の吸脱着反応を行なうことができ、更に吸脱着反応時にヘモグロビン含有水溶液が発泡しないため、赤血球の溶血やヘモグロビンの変質が防止されるという優れた効果が発現される。
Claims (2)
- ヘモグロビン含有水溶液を処理し、該溶液中のヘモグロビンを一酸化炭素化する方法において、多孔性中空糸膜から成るホローファイバーを使用し、前記中空糸膜を介してその一方側から一酸化炭素ガスによりガス圧をかけるとともに、前記中空糸膜の反対側からヘモグロビン含有水溶液を流通させ、該水溶液中のヘモグロビンを一酸化炭素化することを特徴とするヘモグロビン含有水溶液の処理方法。
- 一酸化炭素化したヘモグロビンを含有する水溶液を処理し、該ヘモグロビンを脱一酸化炭素化する方法において、多孔性中空糸膜から成るホローファイバーを使用し、光照射下に前記多孔性中空糸膜を介してその一方側から一酸化炭素以外のガスによりガス圧をかけるとともに、前記中空糸膜の反対側から一酸化炭素化したヘモグロビン含有水溶液を流通させ、該ヘモグロビンを脱一酸化炭素化することを特徴とするヘモグロビン含有水溶液の処理方法。
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