JP3682072B2 - HbCOのHbO2 への変換方法及びその装置 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、一酸化炭素化ヘモグロビン(HbCO)の効率的な酸素化ヘモグロビン(HbO2 )への変換法とその装置に関する。
更に詳しくは、本発明は、人工酸素運搬体の原料としてのヘモグロビン(Hb)において、その変質を防止するために一旦、一酸化炭素化ヘモグロビン(HbCO)へ変換したものを経済的にかつ効率よく酸素化ヘモグロビン(HbO2 )へ変換する方法及びそのための装置に関するものである。
【0002】
【従来技術】
近年、輸血による感染症の心配や、緊急時に備えての大量の輸血用血液の必要性から、血液型やヴィルスが無く長期保存可能な人口酸素運搬体の開発が盛んに行なわれている。
このなかで、Hb(ヘモグロビン)を用いた酸素運搬体としては、期限切れヒト赤血球から精製したHb由来、recombinant Hb、牛のHb、遺伝子組替えブタに産生させたヒトHbを原料とし、これを修飾させた系、あるいは前記原料を赤血球のようにリン脂質小胞体に内包させた系などが知られている(特開平2−121932号; E.Tsuchida, Biomat. Art. Cells, Immobilization Biotech.20,337 (1992) )。
【0003】
前記Hbを用いた血液代替物の製造において、原料Hbが高純度に精製されていることが、品質管理や体内投与の際の副作用の回避において重要な点である。しかしながら、Hbは空気中で不安定であり、二価のHbO2 は容易に酸化されて三価のメトHbとなる。更に、メトHbはハインツ体に変性しヘムを遊離したりする。このため、原料Hbの精製条件がかなり制約されることになる。
【0004】
前記したHbの変性は、HbをCO体とすることによって防ぐことができることが知られている。
これは、HbCOがHbO2 と比較して200倍も錯体として安定であることに由来する。即ち、HbはO2 と結合解離の平衡状態となっており、O2 脱離の際、一電子還元されてO2 - となり、Hbは三価のメトHbとなる場合がある。一方、CO錯体では結合状態が安定であるため、電子を授与する機会は大きく減少し、メト体に成り難いという性質をもっている。更に、COによりメトHbが非常にゆっくりではあるが、還元される現象も知られている(D.Bicker, et al., J.Biol. Chem., 259, 10777(1984) )。このため、Hbの精製や人工酸素運搬体の製造において、Hbを積極的にCO錯体に変化させたプロセスの開発が検討されている。
【0005】
この点、本発明者らは、赤血球中にてHbを一酸化炭素錯体(HbCO)とし、溶剤処理、加熱処理に対してHbCOだけが安定である性質を利用して、高純度・高濃度Hb溶液を変性させること無しに大量に得る方法を提案した(特願平4−056372号;Sakai, et al, Protein Expr. Purif., 4,563,(1993))。更に、Hb溶液をリン脂質小胞体に内包する際、高いズリ応力によるHbの変性やメト化の生成が、HbをHbCO錯体にすることにより効果的に防ぐことができるという知見も得ており、前記知見をベースとしたHbのリン脂質小胞体への内包化法を提案した(特開平4−26629号)。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
前記したように、HbのCO化により操作中にHbのメト化を抑えて、Hbを利用した酸素運搬体の調製が可能となる。そして、実際に酸素運搬体として機能させるためには、CO化されたHbCOをHbO2 に変換すればよいだけである。
しかしながら、ここで大きな問題は、前記したようにCO化されたHbCOが安定であり、その結合状態をどのようにして効率的に解離させてHbO2 にするかという点である。
本発明は、HbCO錯体が光照射により光解離するという特性を利用して、経済的かつ効率よくHbCO利用血液代替物をHbO2 に変換するための方法並びに装置を提供しようとするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明を概説すれば、本発明は第一に、一酸化炭素化ヘモグロビン(HbCO)含有溶液が形成する液膜に、酸素含有気流下に可視光を照射させ、前記一酸化炭素化ヘモグロビン(HbCO)を酸素化ヘモグロビン(HbO2 )に変換することを特徴としたHbCOのHbO2 への変換方法に関するものである。
【0008】
また、本発明は、前記HbCOのHbO2 への変換方法に適用される装置、特に球状体あるいは傾斜板を利用したHbCO含有溶液の液膜形成手段を含むHbCOのHbO2 への変換装置に関するものである。
以下、本発明の技術的構成を詳しく説明する。
【0009】
本発明において、HbCOをHbO2 に置換する方法の原理として、Hbに結合しているCOを可視光照射によって解離させるとともに酸素と置換させるという方法を採用するものである。
これはHbCOの量子収率が高いことを利用したものであり、その原理自体は知られている(B.M.Hoffman, et al.,Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77,21(1978) )。
【0010】
また、前記原理を利用し、実験室レベルでHbCOをHbO2 に変換する方法も知られている。(A. Riggs, Mehods in Enzymol., 76,5 (1981)、 A.M.Nigen, et al., J. Biol. Chem., 249,6611 (1974) )。これは、ナス型フラスコの中に少量のHbCO溶液を入れて酸素を満たし、これをロータリーエバポレーターに装填し、回転させながら内壁に形成される液膜に外側からハロゲンランプで光照射して行なうようにしたものである。なお、ナス型フラスコは氷水に漬けて温度上昇を抑止しており、ある程度光照射したら容器中を減圧にし、そのあとまた酸素で満たすといった操作を繰り返すものである。
しかしながら、前記した方法では、たかだか1g/dl濃度のHbCO溶液20mlを処理するのに、1バッチで約1時間を要するものであり、量産法としては全く適切なものではない。
【0011】
一方、人工透析用のホローファイバーモジュールを利用し、HbCO溶液の酸素化を行なうことも知られている。
この方法は、ファイバーの内側または外側をHbCO溶液が循環するように、また反対側を酸素が流れるようにし、モジュールの外側から可視光を照射する方法である(特願平5−141271号)。即ち、この方法は、気液接触面積を増大させることによりガス交換を迅速にすることを狙った方法であるが、照射光がファイバーによって吸収や散乱してしまうため、モジュールの中心側のファイバー内のHbCOが効率よくHbO2 へ変換できない点に問題がある。
【0012】
前記したように、HbCOの酸素化の要点は、酸素の存在下に光、特に可視光の照射であることが知られているにもかかわらず、大量のHbCOを経済的かつ効率的にHbO2 へ変換する方法は知られていない。
本発明は、如何にして気液界面を増大させながらガス交換を迅速にし、かつ、光照射面積を増大させてHbCOの光解離とHbO2 の収率を増大させるか、更に如何にしてHb溶液を連続的に処理してスケールアップのメリットを確保するか、という点を念頭に入れたHbCOのHbO2 への経済的、効率的な変換方法とそのための装置を提供するものである。
【0013】
本発明のHbCOからHbO2 への変換装置は、気液界面(接触界面)を大きくし光照射効率とガス交換を向上させるためにHbCO溶液の液膜を作ってそこに光照射するとともに、酸素含有の気体を吹き付けて(酸素含有気流下)効率よくHbCOをHbO2 に変換させ、その際、HbCO溶液を循環させながら連続的に該溶液の液膜を形成するようにして大量処理を可能とさせるものである。
【0014】
以下、本発明のHbCOのHbO2 への変換装置、特にHbCOの液膜形成手段を含む変換装置について、図面を参照してより詳しく説明する。
先ず球状の容器を用いる場合について説明する(図1参照)。この種の球状の容器は、化学実験において汎用のナス型フラスコ、三ツ口、四ツ口フラスコ(容積0.1〜5リットル)など、更にはこれをスケールアップした容器など、球面を有する容器であれば特段の制約を受けない。
前記した球状容器を入口が下側になるように倒立させ、球面が最上部になるように固定する。入口からHbCO含有溶液を送液する管を挿入し、容器上部(球面頂部)に噴出させると、溶液は放射状に内周壁面を伝わって落下する。このとき壁面全体にHbCO含有溶液の均一な液膜が形成される。落下した溶液は溶液タンクに集められ、送液ポンプ等で循環させて再度噴出させる。前記した液膜形成装置により、大量の溶液を連続的に処理することができる。容器の材質は、硝子などの親水性表面を有するものが均一な液膜を形成させる上で好ましい。
【0015】
本発明において、前記のように形成したHbCO溶液の液膜に対して、可視光を照射してHbCOを光解離させるが、光源としては、家庭用蛍光灯(20−100W)、白熱電球(40−400W)、作業照明用ハロゲンランプ(100−1000W)、高圧、低圧水銀ランプ、高圧ナトリウムランプ、キセノンランプなど、可視光領域に放射スペクトルを有する光源であれば特段に制約を受けない。
紫外線が発生する光源を用いる場合には、ヘモグロビンの変性を考慮して、300nm以下の波長をカットするフィルターを介して使用することが好ましい。
本発明において、可視光は容器の内側つまり気液界面から照射してもよいし、または容器が透明である場合には、容器の外側から照射することもできる。なお、図1に示される可視光の照射態様は、後者であることはいうまでもない。
可視光の照射効率を高めるために、なるべく液膜との距離を短くしたり、光源を複数個併用することが好ましい。可視光の照射時に高熱の伴うもの、特に白熱電球やハロゲンランプ等は、装置の温度を高くしHbが変性することがあるので、1000nm以上の波長をカットするフィルターを介して使用することや、氷冷水を用いて温度上昇を防ぐことが好ましい。
【0016】
前記光照射により光解離して遊離したCOガスは、気相に放出されるが、本発明において液膜上に酸素を含む気体を流すことにより、これを系外に排気することが重要である。
前記プロセスにおいて、気流中の酸素はHbCO含有溶液中に溶け込み、CO解離後生成するdeoxyHbが、これと結合してHbO2 に変換される。酸素を含む気流の酸素含量は、酸素濃度が高いほどHb溶液に溶解する酸素濃度が高く酸素化効率を高めるが、一酸化炭素を全く含まない空気(酸素分圧:149Torr)でも十分に酸素化することができる。酸素を含む気体は、予め操作温度の滅菌水中にバブルさせて飽和水蒸気圧にしておくことによりHbCO含有溶液の乾燥を防止することができる。また、溶液と気相の入口と出口を限定し、気流は滅菌フィルターを通過させれば、完全無菌状態で操作が可能である。気流の流速は速いほどガス交換を迅速に行なうことが出来る。
【0017】
前記したHbCOのHbO2 への変換装置において、循環液を送液する管を球状容器の外側に配設し、容器の外壁の頂上にHbCO溶液を流すことにより、外周壁面に液膜を形成させてもよい(図2参照)。この方式も、前記と同様に酸素含有気流下に可視光照射を行なえば、HbCO溶液の酸素化を効率よく行なえる。
【0018】
更に、HbCOのHbO2 への変換装置において、傾斜板を主要な構成要素としたものを利用してもよい(図3参照)。これは、傾斜板面に形成される液膜に酸素含有気流下、可視光照射することによりHbCOを酸素化するものであり、使用する傾斜板としては、硝子、プラスチック製の板等、特段に制約を受けない。前記硝子や石英等の傾斜板において、親水性表面を有するものは、均一な液膜を形成させる上で好ましい。
傾斜させる角度は、0度から90度までの任意の角度が可能であるが、好ましくは90度にして、溶液を乱流にして気液界面を増大させることが好ましい。
傾斜板の上側先端には、管から送られてきたHbCO含有溶液を板の横方向に均一に展開するための工夫が必要である。無数に分かれた管から溶液を板上に落下させて液膜を形成する方法などが好ましい。また、更に傾斜面に薄いガーゼなど親水性のメッシュを敷いて溶液をこれに伝わらせて均一な膜を形成することも好ましい。
【0019】
前記した傾斜板を利用したHbCOのHbO2 への変換装置において、傾斜板面を落下した溶液は溶液タンクに集められ、送液ポンプによって再度傾斜板上部に循環されるので、大量処理が可能である。
気流は、前記したように酸素を含む気体であれば特段に制約を受けない。気体は滅菌フィルターを通過させ、飽和蒸気に満たせたものを用い、完全な密閉系で操作することが可能である。
可視光の照射は各種光源を複数個用い、傾斜面に対して平衡になるように設置して行なってもよい。
溶液や装置は温度が上がらないように氷冷水で冷却することが好ましい。例えば、低温、好ましくは3度以上10度未満に維持すると生成HbO2 の変性が抑えられるので好ましい。
【0020】
本発明のHbCOのHbO2 への変換装置において、HbCO含有溶液の液膜形成手段は、前記したものに限定されず、種々の変形例が採用される。
即ち、この種の液膜形成手段は、円筒体、表面に凹凸曲面を有するもの、多孔質体、ビーズを連接させたものなど、その壁面に液膜が形成でき、ガス交換が充分に行なえるものであれば、形状や構造に特段の制約を受けない。
【0021】
【実施例】
以下、本発明を実施例及び比較例に基づいてさらに詳細に説明する。
【0022】
実施例1.
CO化した精製Hb溶液([Hb]=19.4g/dl、260ml、pH7.4 )(光照射前の溶液のCO化率97.5%)のHbCOをHbO2 に変換した。
前記溶液をローラーポンプ(MED-TECH Multi-Pump LINE FLOW LF-300)で循環( 270ml/min )し、倒立させた四ッ口セパラブルフラスコ(容量2リットル)の内壁面にHb溶液の薄膜を形成させ、冷却水(4℃)を外壁に流した。
滅菌フィルターを通した酸素を純水中にバブルさせて飽和蒸気圧とし、フラスコ内に流し(11.7リットル/min )、AIR PUMP(IWAKI AP−220ZN)でフラスコ内の気体を同流速で引き、ハロゲンランプ(岩崎電気 100V−500W)の照射によりHbCOからHbO2 への変換を行なった。フラスコとランプの距離は約5cmであった。
【0023】
CO化率の測定は、松原らの方法(「蛋白質核酸酵素」32,671(1987))に従って行なった。窒素にて脱気した0.1%アンモニア水(4ml)にHb溶液20μ1、1.15M亜二チオン酸ナトリウム40μlを加えて578、538nmで測光する(吸光度Es 578、Es 538)。Qs =Es 538/Es 578と表す。次にCOを5分間ゆっくりと通じCO化率を100%とし、再び578、538nmで測光する(吸光度E100 578、E100 538)。Q100 =E100 538/E100 578と表す。CO化率は下の式にて算出した。なおCO化率0%であるQ0 値はHb溶液でQ0 =1.077、Hb小胞体でQ0 =1.109を使用した。
CO化率=(Qs −Q0 )/(Q100 −Q0 )×100[%]
HbO2 変換速度とは反応初期における単位時間当りのCO化率の変化の絶対値にHb濃度と溶液量を乗じた値である。
光照射前のHb溶液のCO化率は97.5%であったが、1時間後に43.2%、2時間後24.5%、3時間後14.2%と低下し、5時間後には5%以下に達した。HbO2 変換速度は1.40g/min であった。
【0024】
実施例2.
実施例1と同じ装置を用いてCO化した精製Hb溶液([Hb]=23.2g/dl、約260ml、pH7.3)(光照射前のCO化率99.8%)のHbCOをHbO2 に変換した。
光照射前のHb溶液のCO化率は99.8%であったが、1時間後に70.1%、2時間後61.5%、3時間後46.3%と低下した。HbO2 変換速度は1.34g/min であった。
【0025】
実施例3.
実施例1と同じ装置を用いてCO化したHb小胞体溶液(水添大豆ホスファチジルコリン/卵黄ホスファチジルコリン/コレステロール/ステアリン酸/α−トコフェロール=3.5/3.5/7/2/0.4 by mol、[Hb]=4.5g/dl、200ml、pH7.0)(光照射前のCO化率98.3%)のHbCOをHbO2 に変換した。
Hb小胞体溶液は、混合脂質に精製Hb溶液([Hb]=38.8g/dl、pH7.0)を加え、Extrusion法にて造粒(0.2μm φ)した後、外水相Hbを除去することにより得た。
Hb小胞体溶液、酸素の流速は実施例1と同じである。光照射前のHb小胞体溶液のCO化率は98.3%であったが、3時間後に5%以下まで達した。HbO2 変換速度は0.98g/min であった。
【0026】
実施例4.
実施例1と同じ装置を用いてCO化した精製Hb溶液([Hb]=11.2g/dl、400m、pH7.1(25℃)、in 16mM Hepes緩衝液)(光照射前のCO化率98.2%)のHbCOをHbO2 に変換した。
Hb溶液をフラスコ外壁に、冷却水を内壁に流し、酸素をHb溶液に吹き付けた(Hb溶液、酸素流速は実施例1と同じ)。Hb溶液は光照射前、CO化率98.2%であったが3時間後に5%以下に達した。HbO2 変換速度は1.36g/min であった。
【0027】
実施例5.
直方体のガラス容器を斜めに設置し、上端横方向に設けた溝にCO化した精製Hb溶液([Hb]=11.2g/dl、200ml、pH7.2(25℃)、in16mM Hepes緩衝液)(光照射前のCO化率98.2%)を流し、溢れ落ちたときに容器内底面に形成された液膜にハロゲンランプ(岩崎電気 100V−500W)を照射してHbCOをHbO2 に変換した。
容器とランプの距離は約5cmとした。Hb溶液はローラーポンプ(東京理科EYELA RP−5・10・30型)で循環(100ml/min )させ、容器内に純水中でバルブした酸素(5.01/min )を流し込み、AIR PUMP(IWAKI AP−220ZN)で容器内の気体を同流速で引いた。容器外壁には冷却水(4℃)を流した。
光照射前のHb溶液のCO化率は98.2%であったが、3時間後には5%以下に達した。HbO2 変換速度は1.36g/min であった。以上のように液膜型装置を使用することにより、Hb濃度が濃厚な溶液を大量にHbCOをHbO2 に変換することが可能であった。
【0028】
比較例1.
血漿成分の分離用ホローファイバーモジュール(旭メディカル社 Plasmaflo AP−03H 膜面積0.3m2 )を恒温槽(4℃)中に横に設置し、CO化したHb小胞体溶液(ジミリストイルホスファチジルコリン/コレステロール/ミリスチン酸=7/7/2、[Hb]=0.33g/dl、200ml、pH7.4、in 80mM Tris緩衝液)のHbCOをHbO2 に変換した。
ファイバー内側にHb小胞体(100ml/min )、外側に酸素(200ml/min )を向流させ、ハロゲンランプ(住友スリーエム社 100V−360W)にて可視光照射したところ、30分でCO化率は0.709%まで低下した。HbO2 変換速度は59.8mg/min であった。次に外側に空気(200ml/min )を向流させたところ18分でCO化率は36.8%となり、HbO2 変換速度は29.1mg/min であった。HbO2 変換速度は、29.1mg/min であった。HbO2 変換速度は、実施例(1〜5)に比較して著しく低いものである。
【0029】
比較例2
人工肺用ホローファイバーモジュール(テルモ CAPIOX320 膜面積2.0m2 )を横に設置しCO化した精製Hb溶液([Hb]=0.20g/dl、400ml、pH7.2)のHbCOをHbO2 に変換した。
ファイバー内側にHb溶液(100ml/min )、外側に空気を0.90、6.48、11.7リットル/min で向流させたときの20分後のCO化率はそれぞれ34.4%、32.2%、28.7%、HbO2 変換速度は53.5、51.2、58.6mg/min であった。また酸素(0.90リットル/min )を向流させた場合は20分後にCO化率は14.6%、HbO2 変換速度は79.0mg/min であった。いずれの場合もHbO2 変換速度は、実施例(1〜5)に比較して著しく低いものである。
【0030】
比較例3.
ロータリーエバポレーターを用いてCO化したHb溶液([Hb]=10.0g/dl、50ml、pH7.3)のHbCOをHbO2 に変換した。
ナスフラスコ(1リットル)にHb溶液を入れ氷水中で回転させ、ハロゲンランプ(100V−100W)にて可視光照射した。アスピレーターにてフラスコ内の気体を抜き、それと同時に酸素を吹き込む(2.0リットル/min )操作を繰り返す。30分後にCO化率は37.5%に低下し、HbO2 変換速度は0.250g/min であった。この場合もHbO2 変換速度は、0.250g/min であった。HbO2 変換速度は、実施例(1〜5)に比較して著しく低いものである。
【0031】
【発明の効果】
本発明のHbCOからHbO2 への変換方法及びそのための装置を採用することにより、HbCO含有溶液をHbO2 含有溶液に迅速に、しかも大量に変性させることなしに変換させることができる。
Hbを利用した血液代替物の開発において、Hbの精製やHb小胞体の調製中、あるいは化学反応中にHbの変性が問題視されていたが、本発明により、HbをHbCO体とすることによりこれらの変性を抑えることができ、最終段階でHbCO体をHbO2 へ効率よく変換することができるので、Hbの変性度の低い血液代替物を経済的、かつ効率よく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第一実施態様のHbCOのHbO2 への変換装置を説明する図である。
【図2】 本発明の第二実施態様のHbCOのHbO2 への変換装置を説明する図である。
【図3】 本発明の第三実施態様のHbCOのHbO2 への変換装置を説明する図である。
Claims (4)
- 一酸化炭素化ヘモグロビン(HbCO)含有溶液が形成する液膜に、酸素含有気流下に可視光を照射させ、前記一酸化炭素化ヘモグロビン(HbCO)を酸素化ヘモグロビン(HbO2 )に変換することを特徴としたHbCOのHbO2 への変換方法。
- 一酸化炭素化ヘモグロビン(HbCO)含有溶液が循環される請求項1に記載のHbCOからHbO2 への変換方法。
- 前記請求項1または2の方法に適用される一酸化炭素化ヘモグロビン(HbCO)を酸素化ヘモグロビン(HbO2 )に変換する装置が、球状体の外周または内周壁面にHbCO含有溶液の液膜を形成する球状体、前記球状体にHbCO含有溶液を供給する要素、及び前記球状体に酸素含有気流を供給する要素、とから成るHbCOのHbO2 への変換装置。
- 前記請求項1または2の方法に適用される一酸化炭素化ヘモグロビン(HbCO)を酸素化ヘモグロビン(HbO2 )に変換する装置が、傾斜板面上に前記HbCO含有溶液の液膜を形成する傾斜板、前記傾斜板にHbCO含有溶液を供給する要素、及び前記傾斜板に酸素含有気流を供給する要素、とから成るHbCOのHbO2 への変換装置。
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