JP2007045718A - 配位ガス交換法およびその装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 従来技術の問題点を解消し、簡便かつ高効率な錯体の配位子交換方法を提供することを課題としている。特にHbやアルブミンなど蛋白質を含有する人工酸素運搬体の製造に好適に利用できる方法として提供される。
【解決手段】 一酸化炭素を配位した錯体を含有する溶液を傾斜した気体透過性液膜支持体の上部から浸透させて液膜とし、この浸透液膜を供給して傾斜角下方向に流動させ、前記気体透過性支持体に酸素含有気体を透過させながら前記浸透液膜に可視光を照射し、前記気体透過性支持体下部より酸素が配位結合した錯体溶液を回収する方法。
【選択図】 図1

Description

本発明は、溶液中で錯体に配位しているガス分子を連続的に短時間で効率良く交換あるいは除去する方法、およびその方法を実施するための装置に関する。ヘモグロビン(Hb)やアルブミンを含有する人工酸素運搬体の製造に好適に利用できる。
現行医療では、大量出血時の措置として不特定多数の献血者により提供される献血液が輸血される。体外に取出された献血液は生物的あるいは化学的反応により性状が経時的に変化し、検査時の安全度が保証できなくなるため、献血液の使用期限は採血後から検査期間も含めて数週間程度とされている。このため長期備蓄ができず、例えば血液を媒体とする感染性病原体が慢延すれば直ちに安全な献血液の確保が困難になることは容易に想定される。また、災害等緊急時を想定すれば、大量の輸血液の需要に対して不足なく医療を提供するには常時過剰の献血液を確保しておかなければならない。しかし、少子化による献血者減少と高齢化の進行による需要者増大による慢性的輸血液不足も算定できる段階まできている。感染や非溶血性の副作用などの完全排除には困難な課題が残されており、加えてエボラ出血熱、プリオン、西ナイル熱、新型肺炎ウイルス(SARS)のほか、未知ウイルスへの感染の可能性もあるので、安全な献血液確保には常に予期できない流動的因子による課題も付随している。このような社会的背景もあって、血液型やウイルス感染が無く、長期間保存できる人工酸素運搬体の早期完成が急務となっている。
ポルフィリンに二価鉄イオンが配位された錯体(ヘム)は、ガス分子を結合解離できる。生体では赤血球内に存在するヘモグロビン(Hb)がヘムの中心鉄を介して酸素を結合解離しながら全身に酸素を輸送している。赤血球から単離したHbでも酸素結合解離特性は保持されているため、これを人工酸素運搬体として利用する試みが続けられてきた。Hbを用いた人工酸素運搬体は、期限切れ赤血球、recombinant Hb、牛のHbなどを原料として製造され、Hb分子に血液型はなく、赤血球膜や夾雑蛋白質を除去することにより均一原料として取扱うことが可能となる。しかし、赤血球から単離しただけのHbは、4量体となっている分、静脈内投与により直ちに2量体に解離し、腎排泄による腎毒性、血管収縮による血圧亢進など副作用を誘発するため、酸素運搬体としての機能は果たせない。このため、Hb分子を化学的に修飾した修飾Hbやリン脂質小胞体の内水相にHbを内包させたHb小胞体の開発が進められている。
赤血球はHbを主成分とするが、雑多な蛋白質を含有している。Hbを含めこれら蛋白質は生物製剤のウイルス不活化処理に要求される60℃の加熱処理により変性するため、赤血球製剤を加熱処理することはできず、紫外線やガンマ線照射による不活化方法が検討されてきた。しかし、肝炎など輸血後感染症の回避には至っていない。献血液あるいは動物血由来のHbを原料として製造される人工酸素運搬体にも、献血液と同様にウィルス混入のリスクは付随している。また、HbOの状態では冷蔵下においても経時的に中心鉄が2価から3価に酸化され酸素結合能が消失していくため、製造あるいは保存中に酸素輸送能を喪失することが障害となり、原料Hbや人工酸素運搬体製剤として長期間保存することができない。このため、人工酸素運搬体に期待されるウィルス感染が無く、長期間保存できる要件を満足させるための努力が必要であった。
通常の大気下におけるHbは酸素を結合したHbOとして存在しているが、無酸素下ではガス分子を配位していないHb(DeoxyHb)として存在し、また、一酸化炭素が高濃度で存在する場合には一酸化炭素を配位したHb(HbCO)として存在する。DeoxyHbやHbCOはHbOに比べ高い耐熱性を有し、60℃に加熱しても変性やヘム酸化は生起しないことが見出されている。さらに、HbOでは中心鉄の酸化により長期保存ができないが、DeoxyHbでは安定に長期間保存できることも当該分野で見出された(特開2001−72595号公報:特許文献1)。一酸化炭素は酸素の200倍の結合定数でHbに配位するため、Hb溶液に一酸化炭素ガスを接触させると比較的速やかにHbCOに変換され、大気下でも安定に存在するので、Hb製剤の製造における加熱によるウィルス不活化、酸化防止、長期保存などを可能にしている。しかし、いわゆる一酸化炭素中毒のように、HbCOは生体内で酸素運搬体として機能しないため、人工酸素運搬体として提供するにはHbCO→HbOの変換が必要となる。また、HbOとすると長期保存できないため、HbO→DeoxyHbの変換を経ることにより初めて人工酸素運搬体としての要件を満足できる製剤となる。
かかる知見に基づき、Hbに限らず、錯体利用の人工酸素運搬体の製造においてHbCO→HbO、HbO→DeoxyHb、あるいはHbCO→DeoxyHbなどの配位子交換を効率良く実施する方法が必要となっている。溶解度に従って溶解している酸素や一酸化炭素を除去するのは比較的容易で、溶液中への窒素やアルゴンなどのガス通気、減圧下で溶液を超音波攪拌するなどの簡単な方法により比較的短時間に低濃度まで除去される。酸素は当該分野に限らず、食品、金属、医薬品、医療品、化粧品など様々な分野で品質劣化の要因となることはよく知られているため、固形体では品質保持のため、真空包装や窒素充填、脱酸素剤によりある程度の酸素除去が可能となっている。一方、液体や粘性体ではマイクロバブルの利用、気体透過膜との接触、電気的分解、酸素吸収剤との接触などを原理とした脱酸素方法の開発が進められている。
錯体は酸素や一酸化炭素のいわゆる吸収剤と見ることもでき、これに配位結合している酸素や一酸化炭素を除去するのは溶存ガスを除去する程度の効率では対応できない場合が多く、効率良くガス分子を錯体から解離させ、且つ解離したガス分子を直ちに気相に移行させる仕組みがなければ錯体に再結合して溶液中に残存する。また、Hbやアルブミンなどの蛋白質を含有する溶液にガスを通気すると、著しい泡立ちや蛋白変性の原因となり製造プロセスに利用することが困難になるなど液性特有の制限もある。酸素消去剤や酸素吸収剤との接触などによる試料汚染のリスクは、大量投与される人工酸素運搬体の製造には適していない。従って、当該分野に利用できる方法として、添加物を必要とせず且つ格段に効率良くガス交換する技術確立が課題として残されていた。
人工透析用のホローファイバーモジュールを利用し、HbCO溶液の酸素化を行なうことは知られている。この方法では、ファイバーの内側または外側をHbCO溶液が循環するように、また反対側を酸素が流れるようにし、モジュールの外側から可視光を照射してHbCO→HbOの変換を行なう(特開平6−329550号公報:特許文献2)。この方法は、照射光がファイバーによって吸収や散乱してしまうため、モジュールの中心側のファイバー内のHbCOが効率よくHbO2 へ変換できない点が問題となる。また脱離した一酸化炭素はファイバーを介して系外に放出されるので効率が悪く、Hb濃度を上昇させると一酸化炭素の再結合が優勢となり変換効率が著しく低下する。このため、低濃度Hb溶液としてHbCO→HbOの変換を行なった後、人工酸素運搬体として使用できるHb濃度まで濃縮工程を要すなど、経済面、効率面で量産技術として適した方法とは言えない。
HbCO含有溶液が形成する液膜に、酸素含有気流下に可視光を照射させ、光照射により光解離して遊離した一酸化炭素ガスを系外に随伴させるとともに、HbCOをHbOへ変換する方法として、球状体の外周または内周壁面にHbCO含有溶液の液膜を形成する球状体と、前記球状体にHbCO含有溶液を供給する要素、前記球状体に酸素含有気流を供給する要素、及び前記球状体に酸素含有気流を供給する要素、とから成るHbCOのHbO2 への変換装置や、傾斜板面上に前記HbCO含有溶液の液膜を形成する傾斜板と、前記傾斜板にHbCO含有溶液を供給する要素、前記傾斜板に酸素含有気流を供給する要素、とから成るHbCOのHbO2 への変換装置が公知となっている(特開平7−179357号公報:特許文献3)。この方法は液膜を利用して気液界面積を増大させることにより効率を向上させている。この方法は、球状体や傾斜板の表面に均一な液膜を連続的に形成することが困難であり、液膜の傾斜板との接触側では反応が進行しないため効率が低下し、また液膜上面からしか酸素含有気流を供給できないため、液中で脱離した一酸化炭素が効率良く気相に放出されないことがあった。
特開2001−72595号公報 特開平6−329550号公報 特開平7−179357号公報
本発明は、以上のとおりの事情に鑑みてなされたものであり、従来技術の問題点を解消し、簡便かつ高効率な錯体の配位子交換方法を提供することを課題としている。特に、本発明は、Hbやアルブミンなど蛋白質を含有する人工酸素運搬体の製造に好適に利用できる方法として提供される。
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意研究を行なった結果、気体透過性支持体に錯体溶液を浸透させる方法により連続的に均一な液膜を形成できることを見出し、この液膜を透過させる形態で気流を供給することにより極めて効率高く錯体の配位ガス分子を交換あるいは除去できることを見出し本発明に至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
(1)一酸化炭素を配位した錯体を含有する溶液を、傾斜した気体透過性液膜支持体の上部から浸透させて液膜とし、この浸透液膜を傾斜角下方向に流動させ、前記気体透過性支持体に酸素含有気体を透過させながら前記浸透液膜に可視光を照射し、前記気体透過性支持体下部より酸素が配位結合した錯体溶液を回収する方法。
(2)酸素を配位した錯体を含有する溶液を、傾斜した気体透過性支持体上部から浸透させて液膜とし、この浸透液膜を傾斜角下方向に流動させ、前記気体透過性支持体に酸素濃度0.1%以下の気体を透過させ、前記気体透過性支持体下部より酸素が除去された錯体溶液を回収する方法。
(3)前記錯体が、ヘモグロビン又はアルブミンと複合体を形成しているポルフィリン誘導体である(1)又は(2)に記載の方法。
(4)前記ヘモグロビン又はアルブミンと複合体を形成しているポルフィリン誘導体が、小胞体の内水相に存在するものである請求項3に記載の方法。
(5)前記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の方法に適応される配位子交換装置であって、傾斜した気体透過性支持体と、この気体透過性支持体上へ溶液を供給する溶液供給口と、前記気体透過性支持体を透過させる気体の供給口および排気口と、交換後の溶液を回収する溶液回収口とを備えた装置。
本発明により、効率的に錯体の配位ガス分子を交換又は除去する方法及びその装置が提供される。本発明の方法及び装置は、Hbの抽出精製工程、あるいは化学修飾した修飾Hb、リン脂質小胞体に内包させたHb小胞体などの人工酸素運搬体の製造工程の中でのガス交換に好適に使用される点で有用である。
以下に本発明の詳細を説明する。
本発明の方法は錯体を利用した人工酸素運搬体の製造工程の中で好適に利用され、特に開発の進んでいるHbあるいはアルブミン利用の人工酸素運搬体の製造工程に必要な方法として発明された。Hb溶液は、ヒト由来、ウシ由来の赤血球を常法によって溶血し、遠心分離や限外濾過によりストローマ成分のみを除去したストローマフリーHb溶液、ヘモグロビンを単離した精製Hb溶液、あるいはリコンビナントHb溶液であり、これらHbの抽出精製工程、さらに化学修飾した修飾Hb、リン脂質小胞体に内包させたHb小胞体などの人工酸素運搬体の製造工程の中でのガス交換に好適に使用される。
本発明で錯体に配位している一酸化炭素(CO)を酸素(O2 に置換する方法は、錯体に結合している一酸化炭素を可視光照射によって解離させるとともに酸素を結合させるという原理に基づき、これはHbCOについて報告されている(B.M.Hoffman, et al.,Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77,21(1978))。この原理の実施形態として、実験室レベルでHbCOをHbO2 に変換する方法は知られている。(A. Riggs, Mehods in Enzymol., 76,5 (1981)、 A.M.Nigen,et al., J. Biol. Chem., 249,6611 (1974))。これは、ナス型フラスコの中に少量のHbCO溶液を入れて酸素を満たし、これをロータリーエバポレーターに装填し、回転させながら内壁に形成される液膜に外側からハロゲンランプで光照射して行なうようにしたものである。なお、ナス型フラスコは氷水に漬けて温度上昇を抑止しており、ある程度光照射したら容器中を減圧にし、その後再度酸素で満たすといった操作を繰り返すものである。しかしながら、この実施形態では、1g/dl濃度のHbCO溶液20mlを処理するのに、1バッチで約1時間を要するものであり、量産法としては適切なものではない。この原理を量産技術として確立するための要点として、気液界面積増大、効率的光照射による一酸化炭素脱離反応の促進、脱離した一酸化炭素の効果的排気と酸素供給が挙げられ、これら諸条件を最適な形態として連続的に行なう方法とその装置開発により、効率を飛躍的に向上させることができる。基板上に液膜を形成させて気液界面積を増大し、大量処理する方法は公知となっているが効率は不十分であり、また基板上に液膜を連続的に作成する技術的困難もあり、量産技術として確立するにさらなる進歩が必要であった。
本発明では、錯体を含有する溶液を、気体透過性支持体に浸透させながら液膜を流動させ、この液膜に透過させる形態でガスを供給することによりガス交換効率を大幅に向上することに成功している。ここで、「錯体」としては、Hb又はアルブミンと複合体を形成しているポルフィリン誘導体、例えばポルフィリンに二価鉄イオンが配位された錯体(ヘム)を挙げることができる。一酸化炭素を配位させたヘムはHbCOであり、酸素を配位させたヘムはHbO2である。このような錯体(Hb又はアルブミンと複合体を形成しているポルフィリン誘導体)は、小胞体の内水相に含まれていることが好ましい。
本発明の方法は、HbCOからHbO2 への変換のみならず、HbO2 からDeoxyHbへの変換も効率的に実施できるものである。錯体に配位しているガス分子を効率的に置換、除去する方法としての適応はもちろんであり、他に液体からの酸素除去の目的で広い分野に適応できることは言うまでもない。
本発明を効率的に実施するための、傾斜角のある気体透過性支持体、気体透過性支持体上への溶液供給口、気体透過性支持体に透過させる気体の供給口および排気口、溶液回収口を備えた装置の模式図を図1に示している。この図を参照しながら本発明を説明する。
まず、本装置の全体を説明すると、図1中の符号1は気体透過性支持体、符号2は気体透過性支持体上へ試料溶液を供給する溶液供給口、符号3は気体透過性支持体に透過させる気体の供給口、符号4は排気口、符号5は溶液回収口をそれぞれ表している。
装置全体は、長さl、幅w、高さhの直方体の容器(説明の便宜上、二点鎖線で示す)に収納されており、装置全体が傾斜角αだけ傾斜している。気体透過性支持体1は容器の底面とほぼ平行に張られており、容器の高さh方向の中間部よりやや上方に配置されている。気体透過性支持体1は、上記したように液体浸透性及び気体透過性を併せ持つ必要があり、具体的には布(例えば手ぬぐい用布)などが用いられる。溶液供給口2は容器内部に延設されている溶液供給管2aに連結されている。この溶液供給管2aは気体透過性支持体1の上部に配置され、複数の穴から試料溶液を排出できるようになっている。この複数の穴は一定間隔で設けることができ、間隔を広くすることも、全体をスリット状にして間隔を狭くすることも可能である。ガス供給口3は容器内部に延設されているガス供給管3aに連結されている。ガス供給管3aは容器の底部の周囲に配置され、等間隔でガス噴出穴が形成され、容器内に均一にガスを供給できるようになっている。排気管4は容器の上部に配置された管状の部材であり、容器外部にガスを排出できるようになっている。溶液回収口5は、気体透過性支持体の下流側に形成されている穴である。そして、この溶液回収口5に溶液を導くために、容器の内壁には傾斜板7が取り付けられている。本実施形態では、傾斜板は手前側から奥側へ向かって下方へ傾斜しており、溶液回収口5も奥側の容器壁に形成されている。
上記した装置を用いて、試料溶液は溶液供給口2より供給されて気体透過性支持体1の上流側に流し込まれ、気体透過性支持体1に浸透しながら液膜を形成し、重力により下方に流動して溶液回収口5より回収される。試料溶液の流動速度は気体透過性支持体1の材質と厚さ、傾斜角度、試料溶液の供給速度により調節できる。傾斜角度αは0〜90°の間で調節することができ、傾斜角度αが大きくなるにつれ流動速度が上昇する。試料溶液の供給速度に特に制限はないが、気体透過性支持体1の保持容量以上の試料供給速度とすると気体透過性支持体1からの液垂れ(試料溶液の過剰な流動)が起こるので、保持容量も考慮して試料供給速度を設定することが好ましい。気体透過性支持体1に透過させる気体は図1中の供給口3より供給され、容器の下方周囲部から噴出し、気体透過性支持体1を透過して図1中の排気口4より排気される。この方式により、供給される気体は全て気体透過性支持体1に形成された液膜を透過するので、極めて効率の高いガス交換が可能となっている。
本発明の方法を実施するための装置の各構成についてより詳細に説明する。本発明における気体透過性支持体(図1中の符号1)は、気体透過の妨げになるような基板上に設置するのではなく、気体透過性支持体1のみで構成する形態が好ましい。但し、気体透過性支持体自体1で構成するのが困難な場合には、できるだけ目の粗いメッシュ状の部材を基板にするなどして、基板自体が気体の透過を妨げない形態とすることが望ましい。気体透過性の無い基板上に気体透過性支持体を設置する形態とした場合には、支持体にガスを透過させながらの試料溶液の供給ができないため、本発明の方法は実施できず、結果として効率が著しく低下する(参考例1として示す)。気体透過性支持体1は、吸水性と気体透過性(通気性)に優れた材質が望ましく、例えばセルロース、セルロースアセテート、綿、絹、麻、コットン、合成繊維としてポリエステル、ナイロン、アクリル、ポリプロピレン、ポリウレタンポリビニール系等などの繊維材料が挙げられる。
試料供給口(図1中の符号2)はどのような形態であってもよいが、気体透過性支持体1上に試料溶液を均一に供給するため、送液ポンプなどを用いて一定間隔に穴を開けた管から一定の圧力、及び一定速度で試料溶液を供給することが好ましい。試料回収口(図1中の符号5)もどのような形態であってもよく、最も簡単な形態としては傾斜板7を利用して容器の壁部との間にV字状の溝を形成し、このV字状溝を通して試料溶液を回収口5に向けて流動させながら回収する方法が挙げられる。送液ポンプなどを用いて吸引する方法でもよい。
本発明の方法において、一酸化炭素を配位している錯体(例えばHbCO)を酸素配位に置換する場合、図1中の供給口3より供給されるガスは、酸素を含有し一酸化炭素を含有しないものであればよく、市販の酸素ガスボンベにより酸素含有量の高いガスを供給すればよい。また、空気も酸素を含有しているので好適に使用できる。酸素濃度が著しく低いガスを供給した場合は、置換効率が低下するので処理に時間がかかる。酸素を配位している錯体(例えばHbO)溶液から酸素を除去する場合、供給されるガスは酸素含有量ができるだけ低い方がよく、好ましくは0.1%以下である。また一酸化炭素や酸化窒素など錯体に配位するガスを含むとこれらが配位するので好ましくない。このため、市販の窒素ガスやアルゴンガスなどの不活性ガスが好適に使用される。無菌的操作を要する場合には、JIS Z8122−1994準拠JIS規格に基づくHEPA(High Efficiency Particulate Air)フィルターなどの除菌フィルターを透過させながらガスを供給する。ガスの供給方法としては、ガス供給口3より加圧したガスを供給する方法、あるいはガス排気口4よりガスを外部に吸引することで継続的に供給する方法があるが、ガスを加圧して供給する方法では容器内の乱流や滞留により、脱離した一酸化炭素や酸素が容器外に効率的に排気されないことがある点に注意することが好ましい。ガス排気口4より吸気して供給する方法ではこのような乱流や滞留が少ないので効率的に排気できる。試料溶液とガスの入口と出口を限定し、さらにガスは滅菌フィルターを通過させることで、完全無菌状態での操作が可能である。
また、排気されたガスは、一酸化窒素や酸素を適当な手段で除去して、供給口3から再供給できるように循環使用してもよい。
本発明において、可視光を照射して錯体(例えばHbCO)を光解離させるための光源としては、家庭用蛍光灯(20−100W)、白熱電球(40−400W)、作業照明用ハロゲンランプ(100−1000W)、高圧、低圧水銀ランプ、高圧ナトリウムランプ、キセノンランプ、高輝度発光ダイオードなど、可視光領域に放射スペクトルを有する光源であれば特段に制約を受けない。
以下、本発明を実施例に基づいてさら詳細に説明する。
錯体を含有する試料溶液の例として、Hbをリン脂質小胞体に内包させたHb小胞体を使用した。HbCOの含有量は、全体のHbに対するHbCOの割合(CO化率)として算出した。CO化率の測定は、HbCOを100%含有するHb小胞体とDeoxyHbを100%含有するHb小胞体(HbCOは0%)の標準試料を以下に従って調製し、両者の可視吸収スペクトルにおける吸光度比から算出した。セルにHb小胞体(4μL)とリン酸緩衝生理食塩水(4mL)を入れ、ランプ照射、氷冷却を行いながら溶液にNを通気してDeoxyHbを100%含有するHb小胞体の標準試料溶液を作成した。この標準試料溶液の可視吸光スペクトルを測定後、一酸化炭素ガスの通気を行い、HbCOを100%含有するHb小胞体を作成して可視吸光スペクトルを測定した。
ここで、参考例として、従来法(特開平7−179357号公報に記載の方法)によりHb小胞体分散液([Hb]=10g/dL)(光照射前の溶液のCO化率100%) に含まれるHbCOをHbOに変換した。具体的には、傾斜角5°をつけたアクリル容器の底を基板とし、この基板上に気体透過性支持体1としてガーゼ(2cm×35cm)を密着させ、前記分散液を装置上部より1.0 mL/min 、0.5 mL/minの速度で流入させた。この試料溶液は装置内にて可視光 (高輝度発光ダイオード 100V−9.5W) 照射と酸素ガスの通気を経て装置下部から回収され、紫外可視スペクトル測定によりCO化率を求めた。この結果、試料溶液流入量を1.0 mL/minとして回収された試料溶液のCO化率は75〜90%、試料溶液の供給速度が0.5 mL/minの時でCO化率は65〜85%であり、大部分が配位子交換されずに回収された。ガーゼに浸透している試料を回収してCO化率を測定したところ回収口より得られる試料溶液のCO化率より10〜30%低い値であった。本方法では、酸素ガスを気体透過性支持体の表面からしか供給できないため、気体透過性支持体の表面では効率良くガス交換が進行するが、気体透過性支持体と基板との間を通過するような試料溶液はほとんど配位子交換されずに回収されているものと考えられた。このように、気体不透過性基板上に気体透過性支持体を配置した場合は、ガス交換効率が流路によって不均一となり、より効率良い方法が必要とされた。
上記従来法において、気体透過性支持体と気体不透過性基板との間を通過するために脱CO化されない試料溶液をなくすため、以下に示す実験を実施した。
図2(a)に示すような、円筒状容器13aにステンレス製メッシュ基板15aを配置し、円筒状容器内13aに供給されたガスがメッシュ基板15aを通過して円筒状容器13aの外に排気される形態にし、このメッシュ基板上15aに気体透過性支持体1としてガーゼ17aを配置した。また、図2(b)に示すように、同円筒状容器13aに直接気体透過性支持体1としてガーゼ17bを配置した。図2(a)および図2(b)について、気体透過性支持体1にHb小胞体分散液([Hb]=10g/dL)(光照射前のCO化率98.4%)を浸透させ、円筒状容器13a内部に供給した酸素ガスを透過させながら上部より可視光(高輝度発光ダイオード 100V−9.5W)を照射し、経時的に試料溶液を採取してCO化率の推移を測定した。この結果、図2(a)の実施例の場合、CO化率が1%以下になるのに25分を要した。一方、図2(b)の実施例では11分でCO化率が1%以下になった。この結果、気体透過性支持体1を透過させる方法で酸素ガスを供給することにより短時間でガス交換が完了できることが明らかになった。加えて、図2(a)と図2(b)の実施例の比較により、気体透過性支持体1はそれ自身で設置する形態が好ましく、気体透過を遮る基板は効率を低下させることが示された。
図2に示す実施例1におけるモデルにおいて、浸透液膜を流動させることにより連続処理が可能となるため、図1に示す装置のモデルを作成した。本モデルでは、100 mm(w)×200 mm(l)×27 mm(h)の直方体形状のアクリル板容器内部に気体透過性支持体1(手拭用布)を張り、傾斜角15°をつけ、Hb小胞体分散液([Hb]=10g/dL)(光照射前のCO化率100%)を装置上部の試料供給口2より1 mL/minで流入させ、気体透過性支持体1に沿って下方に流動させた。アクリル容器上部からは可視光(高輝度発光ダイオード 100V−9.5W)を照射するとともに、酸素ガスをガス供給口3から10 L/minで供給し、気体透過性支持体1を透過させガス排気口4より自然排気した。気体透過性支持体1を伝って装置下部の回収口5より回収した試料溶液のCO化率を測定したところ19%であった。なお、本実施例では気体透過性支持体1をメッシュ状の基板6上に載置しているが、この基板は本発明に必須なものではない。
実施例2では、ガス供給口3よりガスを供給し、アクリル容器内を陽圧にして排気する方法を実施したが、この場合ガスの乱流や滞留により排気が不十分となる部分が認められた。そこで、より効率良く排気できる方法を実施した。すなわち、図1に示す装置において、ガス排気口4にはガス吸引機(図示略)を接続し(排気量28 L/min)、ガス供給口2はスリット状に開放して空気を流入できる仕組みとして気流を制御した。気体透過性支持体1の傾斜角を40°とし、Hb小胞体溶液([Hb]=10g/dL)(光照射前のCO化率100%)を試料供給口2より流入させ、気体透過性支持体1に沿って下方に流動させた。排気口4に接続したガス吸引機にて容器内のガスを排気し(排気量28 L/min)、スリット状に開放したガス供給口3より空気を流入させた。アクリル容器上部から可視光(ナトリウムランプ)を照射して、試料回収口5より回収した試料溶液中に残存するHbCOの割合を測定した。この方法により、試料溶液の供給速度を変化させ、容器内通過時間を変化させた効果を調べた。その結果、表1に示すように、試料溶液供給速度を増大させると装置内通過時間は短縮されるため、HbCO残存率は増大する。本装置の設定の場合、0.35mL/minの供給速度の条件にてHbCOの残存率は5%以下まで低下した。
ここで、表1は試料供給速度によるHbCO残存率(試料Hb濃度:10g/dL)の関係を示す表である。
また、同方法にて濃度の異なる試料([Hb]=8.7g/dL)(光照射前のCO化率95%) についても同様の操作にて同様の測定を実施した。その結果、表2に示すように、この場合にも試料供給速度を増大させると装置内通過時間は短縮され、HbCO残存率は増大する。供給速度が0.5mL/min以下でHbCOの残存率は5%以下まで低下し、先のHb濃度10g/dLの試料溶液より短時間でガス交換が進行した。装置内を通過中に溶媒の蒸発により、回収された試料溶液のHb濃度は10〜11g/dLとなっていた。人工酸素運搬体として赤血球と同程度の酸素輸送量を実現するにはHb濃度として10g/dL程度が適しており、本発明の方法を本装置で実施することにより効率良く目的とする濃度の人工酸素運搬体が得られる。ここで、表2は試料供給速度によるHbCO残存率の関係を示している。
本発明に係る方法に使用される装置であって、連続的に気体交換することができる装置に斜視図を示す。 本発明に係る方法に使用される装置を示す概略図であり、図2(a)は円筒状容器に基板及び気体透過性支持体を組み合わせた場合を示し、図2(b)は円筒状容器に気体透過性支持体のみを組み合わせた場合を示している。
符号の説明
1 気体透過性支持体
2 試料溶液の供給口
3 ガス供給口
4 ガス排気口
5 回収口
6 基板
7 傾斜板
13a、13b 円筒状容器
15a メッシュ状基板
17a、17b ガーゼ

Claims (5)

  1. 一酸化炭素を配位した錯体を含有する溶液を、傾斜した気体透過性液膜支持体の上部から浸透させて液膜とし、この浸透液膜を傾斜角下方向に流動させ、前記気体透過性支持体に酸素含有気体を透過させながら前記浸透液膜に可視光を照射し、前記気体透過性支持体下部より酸素が配位結合した錯体溶液を回収する方法。
  2. 酸素を配位した錯体を含有する溶液を、傾斜した気体透過性支持体上部から浸透させて液膜とし、この浸透液膜を傾斜角下方向に流動させ、前記気体透過性支持体に酸素濃度0.1%以下の気体を透過させ、前記気体透過性支持体下部より酸素が除去された錯体溶液を回収する方法。
  3. 前記錯体が、ヘモグロビン又はアルブミンと複合体を形成しているポルフィリン誘導体である請求項1又は2に記載の方法。
  4. 前記ヘモグロビン又はアルブミンと複合体を形成しているポルフィリン誘導体が、小胞体の内水相に存在するものである請求項3に記載の方法。
  5. 前記請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法に適応される配位子交換装置であって、傾斜した気体透過性支持体と、この気体透過性支持体上へ溶液を供給する溶液供給口と、前記気体透過性支持体を透過させる気体の供給口および排気口と、交換後の溶液を回収する溶液回収口とを備えた装置。
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