JP2012529321A - 透析装置 - Google Patents

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Abstract

本発明は、第1ダイアライザ(3)と第2ダイアライザ(5)を含む透析液回路を備える透析装置(1)に関する。第1ダイアライザ(3)は、血液供給路(11)と再循環路(13)を介して患者の血液循環に接続可能とされている。保持液流(Qeffluent)の透析液回路からの送出口が第2ダイアライザ(5)に設けられている。透析液回路において第2ダイアライザ(5)の透過流(Qout)が第1ダイアライザ(3)に送られる。第2ダイアライザ(5)は、カットオフ値が少なくとも500Daの濾過膜を有し、第1ダイアライザ(3)は、第2ダイアライザ(5)よりも高いカットオフ値の濾過膜を有する。
【選択図】図1

Description

本発明は、請求項1および14の前提部にそれぞれ記載の通り、透析装置および透析用装置に関する。
本明細書に開示の透析装置は、腎不全の場合に血液浄化のために用いられるものとして知られている。例えば、中分子とも呼ばれる、ミオグロビンまたはインターロイキンのような中形分子の除去は、急性腎不全時には特に重要である。こうした中分子は例えば1000〜50000Da(ダルトン)の分子量を有している。その一方で、腎不全の場合には、より小さい分子、すなわち1000Da未満の分子量を有する分子を所定のレベルで除去すれば十分である。急性腎不全の場合も、中分子の効率的除去が極めて重要になる。
透析法の中では、血液濾過と血液透析とは基本的に区別されている。血液透析の場合、血液の浄化は物質の交換すなわち拡散輸送によって行なわれるのに対し、血液濾過の場合、物質の対流輸送によって行なわれる。物質の対流輸送は、物質の拡散輸送よりも中分子のクリアランスが高いことが明らかにされている。クリアランスは、それぞれの物質から除去される量を特定するものである。急性腎不全の場合には、一般に血液透析より血液濾過法が好適である。しかしながら、血液濾過法は、血液透析に比べていくつかの大きな短所がある。
血液透析の場合、濾過によって除去される血漿は、毎時1〜8L消費される補充液に置き換えられる。しかしながら一般に臨床医は、治療が行われる場所まで容量4.5〜5Lの袋形態の溶液を運ぶことを要求される。さらにこの治療の後、袋を廃棄しなければならず、かかる労力およびコストが大きい。
さらに血液濾過には十分に大きな血流量を要する。慢性腎不全を患っている患者は、一般にいわゆる動静脈シャント、すなわち毎分300〜400mLの血流を得ることを可能にする人工的アクセスを備えている。急性腎不全を患っている患者がこうしたアクセスを装着していることはめったにないため、毎分100〜200mLの血流しか得られない。有効な血液濾過に必要な血流量は、概して患者のバスキュラアクセスの問題に係る幾多の懸念を生じることになる。これらの懸念は、その後臨床スタッフによって解消しなければならず、その結果、労力がさらに費やされることになる。
対流輸送もまた血液濾過における短所であり、血液透析における拡散交換に比べると、フィルタ詰まりとも称される透析フィルタの目詰まりがより早期に生じる。したがって長期の治療においては、フィルタをより頻繁に交換することを要する。このため治療コストおよび労力の消費がやはり増すことになる。
最後に、用いられる血液フィルタによっては、血液透析の場合よりもかなり大きなアルブミンの損失を治療中の患者が被る可能性があるという点もまた血液濾過における短所である。さらに血液濾過に必要な補充液は、臨床個別医療の融通性を制限する薬事法によって規制されている。
要するに、血液濾過は臨床医にとっての労力の負担および治療コストが極めて大きく、この手法は実用において厳しい制限を受けることになる。
しかしながら当該技術分野においては、中分子に対する高いクリアランスを得つつも補充液の消費量が少量で済むことにより、コストと労力の削減を実現するための装置および方法が提案されている。例えば特許文献1により、2つのフィルタがカスケード状に配列される血液濾過法が知られている。ここでは第1のフィルタから得られる濾過液が第2のフィルタで再濾過される。第2のフィルタから得られる濾過液は、補充液として患者の血液に前希釈法により再循環される。第2のフィルタで第1の濾過液中の中分子を捕捉することによって、中分子数の減った補充液が血液に供給される。必要な補充液の量および中サイズの分子数は減少するものの、濾過前における血液の希釈により中分子に対する処理の有効性が理想的ではなくなるという事実が短所として挙げられる。
国際公開第2004/082733号公報
よって本発明の目的は、施術上有効かつ低コストであり、血流量が少なくても、労せずして中サイズの分子を効率よく除去可能にする透析装置を実現することにある。
この目的を達成するため、請求項1に記載の特徴を備えた透析装置が提案される。この透析装置は、第1ダイアライザと第2ダイアライザを含む透析液回路を備えており、第1ダイアライザは、血液供給および再循環手段によって患者の血液循環に接続可能である。第2ダイアライザは、少なくとも500Daのカットオフ値を有する濾過膜を備えており、第1ダイアライザは、第2ダイアライザより高いカットオフ値を有する濾過膜を備えている。
保持液は、第2ダイアライザに供給される透析液の一部に相当する。保持液は、第2ダイアライザの膜を透過することなく、透析液から除去されて廃棄に供される。濾過膜は、粒子(または分子)サイズに応じて、流れの一部を除去するのに適した任意の流体フィルタの膜である。第2ダイアライザは透析フィルタとみなすこともできる。第2ダイアライザに導入された濾過液が2つの液流に分離されるためである(詳細は後述)。
カットオフ値は、濾過膜の孔径に係るパラメータである。分子量がフィルタのカットオフ値を超える分子は、膜を全く通過できないか、通過しても非常にわずかな量である。したがって、カットオフ値が前記のように500Daである場合、フィルタの最大孔径は、0.001〜0.005μmとなる。例えば電解質(カルシウム、ナトリウム、リン酸、等価イオンなど)は100Da程度の分子量を備えている。第2のフィルタのカットオフ値は、電解質のサイズよりかなり大きいので、電解質は第2ダイアライザ内に捕捉されることはない。よって血流から特に中分子が除去される(詳細は後述)。請求項における500Daというカットオフ値は、液流中の電解質濃度が第2ダイアライザに供給されるときと透過した後とで実質的に変化しない値と定義することもできる。
結果として、1〜50kDaの、最も好ましくは5〜25kDaの中分子が血流から取り除かれる量を増やすことができる(詳細は後述)。
血液濾過に係る前述の利点は、開示の透析装置により広く実現されるとともに、血液透析に係る前述の短所は回避される。
加えて本明細書に開示の装置においては、第2ダイアライザからの濾過液を前希釈法で患者の血液に導入することにより、中分子に対する処理の有効性低下を回避しうるという利点が生じる。一方、使用済みの濾過液が再生されて透析液として再利用されるため、新鮮な透析液を節約することができ、より低コストの治療が可能になる。さらに本発明の装置によれば、医療装置法の規制基準に準拠し、これに関連した融通性の恩恵を得られる透析液を使用することができる。透析液は血液に直接加えられることなく透析回路内を循環し続けるためである。したがって本発明に係る2つの実施形態によれば、薬事法に準拠する補充液を利用する必要がなくなる。例えばリン酸を添加するなどの異なる方法により、透析液をより迅速に医療要件に適合させることができる。また補充液は5Lバッグの形態でしか入手することができない。代わりに本発明によれば、濃縮液と水からオンラインで調製されて、中央補給ユニットから供給しうる、あるいは30〜100Lをまとめて供給しうる透析液の利用が可能となる。さらにこの装置は弱い血流にも適しており、バスキュラアクセスの問題に係る懸念を軽減することができる。よって治療の改善や労力軽減を促すことができる。本装置によれば、例えば必要な脱水の一部として、ごくわずかな対流輸送しか生じないので、フィルタはより長い期間にわたって機能可能な状態を維持する。結果、材料の浪費と労力の消費の両方が低減する。本装置によって実現される拡散に基づくプロセスは、患者のアルブミン損失を抑制することになる。したがって本プロセスによれば、患者の著しい回復および施術の有効性が得られる。
本発明の好ましい実施形態においては、新鮮な透析液(以下透析補充液とも称する)が濾過によって回収された透析液に導入されることにより、保持液の流れを補償する。透析補充液の追加は、透析液の流れの方向について第2ダイアライザの上流と下流のいずれにおいても行ないうる。第2ダイアライザの上流で体外循環透析液に透析補充液を追加することは非常に好ましい。これにより第2ダイアライザを、一方で第1ダイアライザからの透析液の再生器として機能させ、他方で透析補充液からの細菌およびエンドトキシンを除去するための透析液フィルタとして機能させることができるためである。これにより第2ダイアライザは2つの機能を有して新鮮な透析液の滅菌フィルタとしても振る舞うことが可能となる。その結果、透析液の質を高めることになり、追加透析液フィルタを設ける必要がなくなる。
別実施形態に係る透析装置においては、第2ダイアライザの下流および第1ダイアライザの上流において透析補充液が循環透析液に供給される。この場合、透析補充液が有効に利用されうる。透析補充液は、第2ダイアライザにおける濾過によって量が減ることなく直ちに第1ダイアライザに導入されるためである。
したがって、部分的に再生された透析液と新鮮な透析液の両方が第1ダイアライザの透析液空間に同時に導入される上記2つの実施形態は、とりわけ有効である。透析液の流れの方向について第2ダイアライザの上流で新鮮な透析液を供給する場合は、新鮮な透析液を浄化するためのフィルタを追加的に設ける必要がないため、特に有益である。浄化機能は第2ダイアライザが代わりに担うこととなる。
更に別の実施形態においては、補充液の導入が血液循環に対して行なわれる。導入は流れの方向について第1ダイアライザの上流で行なわれるとよい。これは、一定量の補充液が血液中に導入され、第1ダイアライザの透析液回路に送られることを意味する。その量は、第2ダイアライザより送出される保持液の量にほぼ対応する。第1ダイアライザ内に運ばれる液量が増すため、血液浄化が改善される。これにより血液の所望の成分をより容易に制御することができ、任意で薬物を追加投与することにより最適化が可能となる。
第2ダイアライザは、カットオフ値が1000〜15000Da、好ましくは5000〜10000Daの範囲にある濾過膜を備えるとよい。また第2ダイアライザは、15000〜20000Daのカットオフ値を有する中フラックスダイアライザであってもよい。第1ダイアライザは、20000〜40000Daのカットオフ値を有する高フラックスダイアライザであってもよい。40kDaのカットオフ値を有するダイアライザは、高カットオフダイアライザとも称される。第2ダイアライザに関する上述の値は、分子量の下限を特定するものであり、第1ダイアライザの値はクリアランスの上限を特定するものである。こうして規定された範囲の分子が、主として血流から除去される。例えば電解質のような小分子の血流からの除去量は低く抑えるべきであり、例えばアルブミンのような上述の中分子より大きいサイズの分子は、血流から除去すべきではない。すなわち分子サイズの範囲は、インターロイキン、サイトカイン、またはその他の除去すべき分子のサイズとなるように設定するとよい。5000Daや15000Daよりも第2ダイアライザのカットオフ値が大きくなると、膜抵抗が迅速に上昇しなくなるため、交換を要する。
透析装置は、濾過供給流に対する透過流の割合が0.5を超えるように、好ましくは、0.8±0.1となるように構成するとよい。すなわち、保持液流が第2ダイアライザの50%、好ましくは20±10%となるように構成するとよい。このようにすれば、透析液の大部分が循環液中に保留されるため、透析補充液の量が減少してコストが低下する。
前述のように、透過装置は、第1ダイアライザの血流から中分子量の分子を非常に高いレベルで除去するのに適していることが好ましい。当該分子は、例えば1000〜50000Da、好ましくは5000〜25000Daである中分子の範囲としうる。分子の除去はより小さな分子量(特に1000Da未満)の除去に基づいている。
第2ダイアライザと第1ダイアライザとのカットオフ値の比率は、1:5〜1:40の範囲内である。当該比率は1:8〜1:12の範囲としてもよい。両ダイアライザのカットオフ値の関係は重要である。第1ダイアライザのカットオフ値が高くなるほど、第2ダイアライザが早期に目詰まりするのを回避するために第2ダイアライザのカットオフ値を高く設定しなければならないためである。
第1ダイアライザにより血流から除去される分子量が15000Daの分子の一部は、分子量が1000Da未満の分子と比較して少なくとも20%増加させるとよい。この場合、より小さな分子と比較してサイトカインの除去能を高めることができる。サイトカインの分子量は例えば14〜17kDaであるためである。
透析液回路が透析液用の加熱装置を備える実施形態としてもよい。周知の透析プロセスにおいては、供給される透析液(または透析補充液)は、ほぼ血液の温度にまで加熱される。一般に重炭酸塩の濃度が35mmol/Lの透析補充液が用いられるが、これは人間の血液中に存在する重炭酸塩の濃度よりわずかに高い。しかしながら、高濃度の重炭酸塩は、存在するイオン(例えばMg++またはCa++)の沈降を生じさせる可能性があるので好ましくない。そこで循環透析液中に透析補充液Qfeedを導入できることが好ましい。透析補充液Qfeedの重炭酸塩濃度はより低いので(好ましくは30mmol/Lかそれをわずかに上回る程度)、得られる重炭酸塩濃度は、循環する透析液と導入されるQfeedの平均値となる。低濃度の効果により、続いて混合液を加熱しても沈降傾向が抑制される。図1においては不図示であるが、加熱装置はポンプの近傍に配置するとよい。すなわちQfeedはまず透析液回路に供給され、次いでダクトの特定箇所で透析液と混合され、最後に必要な血液温度まで加熱されることになる。
本発明は次の図を参照して詳述される。
透析装置の一実施形態を模式的に示す図である。 透析装置の一実施形態を模式的に示す図である。 透析装置の一実施形態を模式的に示す図である。 デキストランを例に示すクリアランス図である。
図1に本発明の第1の実施形態に係る透析装置1を示す。透析装置1は、第1ダイアライザ3と第2ダイアライザ5を備える。第1ダイアライザ3は、血液空間7と透析液空間9を備えており、両空間は膜によって隔離されている。本明細書に記載のダイアライザは周知のものである。すなわちダイアライザは、いくつかの円筒型中空ファイバ膜が束ねられて中空のファイバ束をなすものが設けられたハウジングを備えている。血液は中空ファイバ膜の内部を通って流れる。透析液は、好ましくは血液とは逆向きに中空ファイバ膜とフィルタハウジングとの間の空間に流入する。ダイアライザはこれとは異なる態様で形成されたものでもよい。本発明においては、ダイアライザ3内において血流が生じる部分全体が血液空間7とみなされ、透析液流が生じる部分全体が透析液空間9とみなされる。
ダイアライザ3の膜壁は、物質の交換を生じさせることができるように半透過性に形成されている。血液透析の場合、血液空間7と透析液空間9の間で平衡状態が確立される限りにおいて、物質の交換は拡散現象によって生じる。透析液空間9に通過する分子の大きさは、膜に形成された孔の大きさによる。
治療時において患者は透析装置1につながれている。患者の血液は、血液供給路11を経由して第1ダイアライザ3の血液空間7に流入し、再循環路13を経由して患者に戻る。
図1に矢印で示すように、第1ダイアライザ3の透析液空間9において、透析液は血流の逆向きに流れるのが好ましい。透析中は上述の物質交換が血液と透析液の間で生じ、次いで透析液は、導管15を経由してダイアライザ3から流出する。その透析液には、透析中に循環血液Qから除去される物質が含まれている。
上述のように患者の循環血液から中サイズの分子(以降、中分子とも称する)を除去することは特に重要である。本実施形態の場合、分子量が1000〜10000Daの分子が血流からより一層除去されるようになる。本発明では、1〜50kDaまたは70kDaもの分子量を有する分子も中サイズの分子とみなす。
したがって、ダイアライザは主として中分子が血液から除去されるように形成されるため、中分子も透析液内に拡散する可能性がある。そこでダイアライザ3は、膜孔の大きさがダルトンカットオフ値に一致するように形成される。ダルトンは1.6601×10−27kgに相当する質量単位である。
よって第1ダイアライザ3の膜は、その閾値を超える分子量の分子が透析液回路Qに流入するのを阻止する。後に詳述するように、第2ダイアライザ5より透過液流Qoutが得られる。透過液流Qoutは透析液流Qの形態で透析液空間9へと再循環される。透析液流Qには、中サイズの、例えば分子量が6000Daを超える分子がほとんど含まれておらず、より小さな分子が一定の濃度で含まれる。1000Da程度までの小分子については第1ダイアライザ3の両空間の間に低い濃度勾配が存在するが、この重量範囲においては膜を通過する分子はわずかである。透析液流Q中における中分子の濃度は血液中よりも大幅に低いので、濃度の均一化が進む。しかしながら分子量が第1ダイアライザ3の膜のカットオフ値を超える大きさの場合、膜の透過性により濃度の均一化が妨げられる。結果として、透析装置により中分子が血液から好適に除去される。
例えばダイアライザ3は、高フラックスダイアライザ(高フラックスフィルタとも称される)として形成されうる。あるいは本技術分野において周知の、大きな孔径を有する高カットオフダイアライザを用いてもよい。高フラックスとは、約30±10kDaのカットオフ値を有するものとして特定される。高カットオフフィルタ(中分子除去能強化フィルタとも称される)は、40kDa以上のカットオフ値を有する。
図1に示すように、使用済みの透析液は、第1ダイアライザ3から導管15を経由して第2ダイアライザ5の入口空間17に濾過供給液Qinとして流入する。第2ダイアライザ5の透過液流Qoutすなわち膜を透過する濾過供給液Qinの一部は、Qとして第1ダイアライザ3に導入され、透析液回路が完成する。血液透析の原理に基づき互いに逆方向が好ましい2つの体積流れに対して機能する第1ダイアライザとは逆に、第2ダイアライザ5は濾過供給液Qinの流れを2つの流れ、すなわち透過液流Qoutと保持液流Qeffluentに分離するフィルタとみなすことができる。例えばカットオフ値が1000Daのフィルタが用いられる場合、透過液流Qoutには1000Daを超える分子がほとんど含まれなくなる。これらの分子はフィルタに捕捉され、保持液Qeffluentとともに第2ダイアライザ5から流出して供給手段25に導入され、それぞれ保持または廃棄に供されるためである。
このようにして第2ダイアライザ5において中分子が透析液回路から除去され、カットオフ閾値を下回る小分子は保存されることになるので、第2ダイアライザ5は透析液を部分的に再生させる。
こうして中分子数が減少した濾過または透過液流Qoutは、濾過液空間19から導管23を経由して第1ダイアライザ3の透析液空間9に送られ、透析流体または透析液として用いられることとなる。中分子数が第2ダイアライザにおいて低減されるため、透析液または濾過液を第1ダイアライザ3に再循環させると、血液空間7における血液と透析液空間9における部分的に再生された透析液との間に濃度勾配が生ずる。この濃度勾配によって透析液中の中分子と血液中の中分子間における平衡が失われ、膜を通る中分子の拡散が大きくなる。この透析液は透析液回路内の第2ダイアライザ5に再循環され、最終的に透析液等として部分的に再利用される。図1から明らかなように、透析液回路は、第1ダイアライザ3から導管15を経由して第2ダイアライザ5に至り、さらに導管23を経由して第1ダイアライザ3に戻る。
透析液回路から除去された保持液Qeffluentの体積流れは、透析補充液Qfeedとして供給されることを要する。透析液回路内の液量を一定レベルに維持するためには、保持液Qeffluentの総量と第1ダイアライザ3への送液量は、透析補充液Qfeedにほぼ一致することを要する。QeffluentはQfeedより大きな値となるよう設定されるが、その差分は患者の血液から除去しようとする物質の体積に相当する。
第2ダイアライザ5における濾過率Qout/Qin、すなわちカスケード出力(Qoutすなわち再生流)とカスケード入力(Qinすなわちカスケードフィルタに供給される流体)の比率は約0.5〜1であり、0.5〜0.9が好ましい。したがって第2ダイアライザ5の濾過液Qoutは、第1ダイアライザ3の下流(図1参照)または上流(図2参照)で透析補充液Qfeedによって希釈され、低分子量の分子のパーセンテージが低減されながら第1ダイアライザ3の透析液9へ導入される。補助透析液の導入は、第1ダイアライザ3における低分子量化合物の血液から透析液への拡散を促進する濃度勾配も発生させる。よって低分子量化合物のクリアランスは透析補充液の量によって実質的に制御される。
典型的な流量として、血流Qが毎分100〜200mL、透析補充液Qfeedが毎分10〜100mL(通常は毎分40mL)、第1ダイアライザ3における透析液Qが毎分100〜400mL(通常は毎分200mL)とされる。濾過率Qout/Qinは、160/200で0.8とされる。
図1に示す実施形態では、透析液の流れの方向に見て第2ダイアライザ5の上流において、透析補充液Qfeedが供給手段25により透析液回路に導入される。第2ダイアライザ5の上流において新鮮な透析補充液を導入することにより、第2ダイアライザ5を、一方では第1ダイアライザ3の透析液の再生器として機能させ、他方では透析補充液Qfeed中に存在しうる細菌およびエンドトキシンを除去するための透析液フィルタとしても機能させることができる点において有利である。すなわち第2ダイアライザ5は、透析補充液Qfeedの減菌フィルタとしても振る舞う、2つの機能を備えている。よって新鮮な透析液すなわち透析補充液の浄化のために通常用いられるフィルタを設ける必要がなくなる。
炎症伝達物質(サイトカイン等の分子量が14〜17kDaの物質)を血液から除去する例を通じて動作の態様を明らかにする。透析液流Qの中分子濃度は、ほぼ炎症伝達物質の濃度程度に低いため、第1ダイアライザ3内の透析液へのこれらの分子の拡散を促すことができる。透析液をカットオフ値の低い(例えば1kDa)第2ダイアライザ5に導入すると、第2ダイアライザから流出する透過液流Qout中に含まれる炎症伝達物質の濃度が大幅に低下する。したがって透過液流Qoutは、循環プロセスにおける第1ダイアライザ3のための透析液として再利用することが可能になる。
アルブミンは、血流Qから除去するのが望ましくない分子である。アルブミンのダルトン分子量は68kDaのため、第1ダイアライザのカットオフ値を例えば40kDaとすれば、除去されるアルブミンの量を少量とすることができる。
本発明の第2の実施形態を図2に示す。同一の要素については同一の参照番号を付与して図1の説明を参照できるようにすることで、重複する説明を回避する。
透析液回路に透析補充液を導入するために設けられた供給手段25を図2に示す。図1の実施形態とは異なり、透析補充液Qfeedが導管23を経由して、すなわち透析液の流れの方向で見て第2ダイアライザ5の下流において導入される。したがって透析液の補充に関しては効率を最大にしうるが、もう一つの第2ダイアライザ5の減菌フィルタとしての機能は抑制されることになる。
図3に示すように、患者の血液に対する新鮮な補充液の導入は、透析補充液Qfeed.postを後希釈の形で、すなわち流れの方向で見て第1ダイアライザ3の下流で行なうことが好ましい。しかしながら薬事法の定める範囲内になく、成分変化の観点から汎用性の低い補助液のみを用いることの利点が抑制される。図示しないが、血液に対する新鮮な補助液の導入は、透析補助液を前希釈の形で、すなわち第1ダイアライザ3の上流で行なう構成としてもよい。
この装置は、系統的抗凝固と局所的抗凝固(クエン酸抗凝固)の両方に使用することも可能である。
要するに本発明によれば、比較的低い血流量であっても、中分子のより高いクリアランスを達成しうるカスケード透析装置およびカスケード透析法をそれぞれ実現可能である。これに対して従来の方法、とりわけ後希釈の場合、濾過率は20〜30%に制限される。さもなくばダイアライザにおける血液成分の濃度が血液凝固や他の血液損傷を生じさせることがありうるためである。また従来の前希釈の場合は、補助液の使用量が増すと希釈効果によって効率が低下する。
研究の結果、カスケード分析によって、同じアプローチの血液濾過に比べて中分子除去の大幅な増加を達成可能であることが明らかになった。
デキストランを用いた透析装置の動作態様の一例を図4に示す。デキストランの場合、広い分子量範囲にわたってクリアランスを同時かつ容易に確認することができる。この一連の測定には、毎分200mLの血流量Qを用いた。新鮮な透析液の導入は毎分35mLに設定し、図1に基づいて第2ダイアライザ5の上流において行なった。透析液流Qは、毎分100mL、200mL、400mLと変化させた。第2ダイアライザ5のカットオフ値は1kDaとし、第1ダイアライザ3のカットオフ値は20kDaとした。2〜10kDaの範囲でクリアランスが大幅に増大した。すなわち中サイズ程度の分子流が血液から除去された。
これらのデータが図4において比較対象とされているAV600Sによる血液濾過においては、上述の中サイズ程度の分子に対するクリアランスの値が増加しない。なお本例はカスケードダイアライザの基本動作モードを示している。
異なる実施形態の特徴を適宜組み合わせることが可能である。
1:透析装置、3:第1ダイアライザ、5:第2ダイアライザ、7:血液空間、9:透析液空間、11:血液供給路、13:再循環路、15:導管、17:第2ダイアライザの入口空間、19:濾過液空間、23:導管、25:供給手段、Q:血流、Q:透析液流、Qfeed:透析補助液、Qeffluent:保持液流、Qout:透過流、Qin:濾過供給流

Claims (14)

  1. 第1ダイアライザ(3)と第2ダイアライザ(5)を含む透析液回路を備える透析装置(1)であって、
    前記第1ダイアライザ(3)は、血液供給路(11)と再循環路(13)を介して患者の血液循環に接続可能とされており、
    保持液流(Qeffluent)の前記透析液回路からの送出口が前記第2ダイアライザ(5)に設けられており、
    前記透析液回路において前記第2ダイアライザ(5)の透過流(Qout)が前記第1ダイアライザ(3)に送られ、
    前記第2ダイアライザ(5)は、カットオフ値が少なくとも500Daの濾過膜を有し、前記第1ダイアライザ(3)は、前記第2ダイアライザ(5)よりも高いカットオフ値の濾過膜を有することを特徴とする、透析装置。
  2. 透析補助液(Qfeed)の前記透析液回路への導入口が、流れ方向について前記第1ダイアライザ(3)の下流かつ前記第2ダイアライザ(5)の上流に設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の透析装置。
  3. 透析補助液(Qfeed)の前記透析液回路への導入口が、流れ方向について前記第2ダイアライザ(5)の下流かつ前記第1ダイアライザ(3)の上流に設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の透析装置。
  4. 血液循環(Q)補助液の導入口が設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の透析装置。
  5. 前記第2ダイアライザ(5)は、カットオフ値が1000〜15000Da、好ましくは、5000〜10000Daの範囲内である濾過膜を有することを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の透析装置。
  6. 前記第2ダイアライザ(5)は、15000〜20000Daのカットオフ値を有する中フラックスダイアライザであることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の透析装置。
  7. 第1ダイアライザ(3)は、20000〜50000Da、好ましくは30000〜40000Daのカットオフ値を有する高フラックスダイアライザであることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の透析装置。
  8. 濾過供給流(Qin)に対する前記透過流(Qout)の割合が0.5を上回り、好ましくは、0.8±0.1であることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の透析装置。
  9. 1000〜30000Da、好ましくは5000〜25000Daの分子量を有する分子を前記第1ダイアライザ(3)の血流(Q)から非常に高いレベルで除去するのに適していることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の透析装置。
  10. 前記第2ダイアライザ(5)と前記第1ダイアライザ(3)のカットオフ値の比率は、1:1.5〜1:40の範囲内であることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の透析装置。
  11. 前記第2ダイアライザ(5)と前記第1ダイアライザ(3)のカットオフ値の比率は、1:2〜1:10の範囲内であることを特徴とする、請求項10に記載の透析装置。
  12. 分子量が15000Daの分子に対する前記第1ダイアライザ(3)のクリアランスは、分子量が1000Daの分子に対するクリアランスよりも少なくとも20%高いことを特徴とする、請求項1から11に記載の透析装置。
  13. 前記透析液用の加熱装置が前記透析液回路内に設けられていることを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載の透析装置。
  14. 第1ダイアライザ(3)および第2ダイアライザ(5)への接続手段を含む透析液回路を備える透析用装置であって、
    前記第1ダイアライザ(3)は、血液供給路(11)および再循環路(13)に接続可能であり、
    保持液流(Qeffluent)の前記透析液回路からの送出口が、接続された前記第2ダイアライザ(5)に設けられており、
    前記第1ダイアライザ(3)と前記第2ダイアライザ(5)の適当な使用により、当該第2ダイアライザ(5)の濾過により部分的に再生された透析液流(Q)が当該第1ダイアライザ(3)に導入可能とされており、
    分子量が500Da未満の分子は前記第2ダイアライザ(5)に極僅かに捕捉され、
    前記第2ダイアライザ(5)のカットオフ値を前記第1ダイアライザ(3)よりも小さくすることにより、当該第2ダイアライザ(5)のカットオフ値に対応する分子量を有する分子に対するクリアランスは、分子量が500Da未満の分子に対するクリアランスを上回ることを特徴とする、透析用装置。
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