JP3647521B2 - 抜き型 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、複数の成形品を一体的に備えた成形シートの成形品を個々に分離するために用いられる抜き型に関する。
【0002】
【従来の技術】
合成樹脂で作られた容器などの成形品の製造においては、複数の成形品が隣り合った状態の成形シートを製造し、その後、このような成形シートに対して、上プレス盤と抜き型とを有するプレス装置により、各成形品を分離させる抜き加工を行っている。
【0003】
この種の成形品の製造に用いられる抜き型として、抜き刃の内周面にゴム製の位置決め部材を取付ける一方で、抜き刃内の底部に、成形品を押し上げるための弾性部材を敷設したものが知られている。この種の抜き型においては、上プレス盤との抜き加工に際し、そのときのプレス力を利用して、上記弾性部材の弾性力に抗しつつ、成形シートにおける成形品の周面(側面)の上部を位置決め部材の内周面に密に嵌合させて、成形品の位置決めが行われる。そして、抜き加工後は、上プレス盤を上昇させるに伴って、位置決め部材の内周面に嵌まり込んでいる成形品を、弾性部材が、その反発弾性力に基づいて成形品を押し上げ、これにより成形品は抜き型から取り出される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した抜き型においては、トレーのように側面の立ち上がり角度が小さく、また、深さが比較的浅い(30mm程度)成形品については、成形品を押し上げる弾性部材の反発弾性力に基づいて、押し上げることができるものの、側面の立ち上がり角度が大きく、深さが比較的深い(例えば50mm以上)成形品(例えば、どんぶり状のように、側面上部において略垂直の立ち上がり部分を有するもの)については、位置決め部材との密着(接触)面積が多くなり、前述のトレーのような成形容器の場合に用いられる成形品押し上げ用の弾性部材の反発弾性力だけでは、このような成形品を押し上げて抜き型から取り出すことは困難である。
【0005】
これに対して、成形品押し上げ用の弾性部材の反発弾性力を高めることが考えられるが、このようにした場合には、成形品の押し上げ時に、その成形品の底部にしわが発生し易くなり、成形品の商品価値を下げてしまう可能性が大きくなる。
【0006】
本発明は、上記の実情を鑑み、成形シートにおける成形品の周縁部に周辺リブが形成されている点に着目してなされたもので、その目的は、側面の立ち上がり角度が大きく深さが比較的深い成形品を備えた成形シートであっても、その成形シートの成形品の位置決め機能を保持しつつ、成形品を、その底部にしわを発生させることなく取り出すことのできる抜き型を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
かかる技術的課題を達成すべく、本発明にあっては、基本的には、抜き刃の内側に、下方に向けて開口する断面円弧状の溝を形成している周縁リブが形成されている成形シートにおける成形品を位置決めする位置決め手段が設けられている抜き型を前提として、前記位置決め手段が、弾性部材と、該弾性部材の上に前記抜き刃よりも上方に突出するように設けられて前記成形品の周縁リブを支持する支持部材とを備え、支持部材の先端面を上方に向けて凸をなす湾曲面にしている構成を採用してある。
【0008】
この構成により、成形シートの成形品の溝状の周縁リブを利用して、この周縁リブを支持部材の先端部に載せるだけで、成形シートのセット時の位置決めを行うことができる。そして、その後、成形シートを介して支持部材を弾性部材の弾性力に抗して押し下げて、成形シートの抜き加工を行っても、成形品の側面の上部が位置決め部材の周面に密着(嵌合)されることはなく、抜き加工後、成形品を取り出すために要する押し上げ力は、著しく低減されることになる。このため、成形品の側面の立ち上がり角度が大きく、深さが比較的深い成形品の成形シートであっても、成形シートの成形品の位置決め機能を保持しつつ、成形品をその底部にしわを発生させることなく簡単に取り出すことができる。
【0009】
本発明では支持部材の先端面を上方に向けて凸をなす湾曲面にしている。これにより、上記支持部材の先端部を、成形シートの正規のセット状態において、成形シートの成形品の周縁リブの最奥部に納まるように設定でき、支持部材の先端部に対して周縁リブを多少ずれて載置したとしても、成形シートに作用する重力と周縁リブの形状面に基づき、支持部材の先端部が周縁リブ面に沿って相対的に移動し、成形シートは正規のセット状態となり、その後は、周縁リブの形状面に基づいて、成形シートの移動が規制されることになる。このため、成形シートの精度の高い位置決め作業を、周縁リブの形状面を利用して、簡単に、迅速且つ確実に行うことができる。その他の本発明の目的および利点は、以下の、本発明の実施の態様の説明から明らかになろう。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施形態の添付の図面に基づいて説明する。
図1に示す参照符号1は、本発明の抜き型であり、この抜き型1は成形シート2に対して抜き加工を行う。説明の都合上、抜き型1を説明するに先だって、先ず、成形シート2について説明を加える。
【0011】
成形シート2は、図2に示すように、熱可塑性樹脂シート又は熱可塑性樹脂発泡シートを連続的に熱成形し、次いで、適当な長さに切断したものである。成形シート2には、複数の成形品3が隣合って一体的に形成されている。本実施例にあっては、成形シート2の成形品3は、どんぶり状の成形容器であり、その側面3aの立ち上がり角度が大きく、側面の上部3bは略垂直方向に延び、深さが比較的深い(具体的には50mm以上、より具体的には71mm)形状を有する。また、成形シート2には、成形容器3の開口周縁部に周縁リブ4が全周にわたって形成されており、周縁リブ4は、下方に向けて開口する断面円弧状の溝を形成している。
【0012】
次に、抜き型1について説明すると、抜き型1は、図1に示すように、基盤5を備え、基盤5の上に支持台6が設けられている。支持台6には、複数の孔7が形成され、この孔7と基盤5とは協働して凹所8を形成している。凹所8は夫々成形シート2の各成形容器3を受け入れる。なお、図中においては、代表的に1つのみを示し、以下、これを代表例として説明する。このため、各凹所8の内壁は、成形シート2の成形容器3の側面3aに対応して、その立ち上がり角度が大きく設定されている。なお、基盤5および支持台6は、本実施例にあっては、合板で作られている。
【0013】
各凹所8の周囲には、図1、図3に示すように、抜き刃9(トムソン刃)が夫々配設されている。この抜き刃9は、基盤5及び支持台6に固定され、抜き刃9の先端部は支持台6の上方に突出している。各抜き刃9は、成形シート2が正規の状態にセットされた場合、成形容器3の周縁リブ4の外周側を切断する位置に配設されており、本実施例においては、抜き刃9の一部に刃殺し部が形成されて、成形シート2から成形容器3を完全に分離しない構成とされている。
【0014】
支持台6の上には、図1、図3に示すように、各抜き刃9よりも内側に、成形シート2に対する位置決め手段としての位置決め部材10が夫々配設されており、各位置決め部材10は、伸縮可能な弾性部材としてのゴムスポンジ11と、支持部材としての帯鉄12とで構成されている。
【0015】
ゴムスポンジ11は円環状の形状を有し、支持台6の上に、凹所8の開口を囲むように固定されており、本実施例においては、ゴムスポンジ11は、位置決め部材10の構成要素としてだけでなく、成形品押し上げ用の弾性手段としての機能を兼ねるように、その弾性力が設定されている。
【0016】
帯鉄12は、高さ調整用スペーサ13を介してゴムスポンジ11の上に取付けられている。帯鉄12は、スペーサ13の上に固定される円環状のフランジ部12aと、フランジ部12aの外周縁部の全周から起立する起立壁部12bとからなり、起立壁部12bの先端面(帯鉄12の先端面)は、上方に向けて凸をなす湾曲面とされて、その先端面は丸みを有している。
【0017】
また、この起立壁部12bは、外力が作用しないときは勿論、成形シート2の重量程度の外力が作用したときでも、ゴムスポンジ11の反発弾性力に基づき、抜き刃9の先端部よりも上方に突出するように設定されている。更に、起立壁部12bの大きさは、その半径が、成形容器3の軸心を基準として、周縁リブ4の最奥部(溝の幅方向中央)までの距離と略等しくされいる。すなわち、起立壁部12bは、その上端が成形容器3の周縁リブ4の最奥部に当接する位置に位置決めされている。なお、上述した高さ調整用スペーサ13は、本実施例においては、合板で作られている。
【0018】
次に、抜き型1の使用方法について説明する。
先ず、図1に示すように、成形シート2を抜き型1にセットする。これにより、成形容器3の周縁リブ4は帯鉄12の先端部で支持される。ここに、成形容器3の周縁リブ4を帯鉄12の先端部に合わせるように置くだけで、仮に、図4に示すように、周縁リブ4を帯鉄12に対して多少偏心して置いたとしても、成形シート2に作用する重力と周縁リブ4の円弧状面によって、更には、帯鉄12の丸みを有する先端面によって、成形シート2の周縁リブ4が帯鉄12の先端部に沿って移動し、成形シート2は自動的に正規のセット状態となる。すなわち、成形シート2が正規のセット状態になった後は、帯鉄12の先端部が周縁リブ4の最奥部に位置しているため、成形シート2の移動が規制される。
【0019】
次いで、上プレス盤(図示せず)を下降させて、成形シート2を抜き加工する。すなわち、図5に示すように、上プレス盤によって、成形シート2を位置決め部材10(ゴムスポンジ11)に抗して抜き刃9の位置まで押し下げ、抜き刃9により、成形シート2の抜き加工を行う。このとき、搬送作業を考慮して、本実施例にあっては、抜き刃9の刃殺し部に基づき、成形シート2の各成形容器3は、完全には分離されない。また、位置決め部材10が押し下げられることに伴って、ゴムスポンジ11が圧縮されることになり、ゴムスポンジ11は、成形容器3などを押し上げるための反発弾性力を貯える。
【0020】
抜き加工が完了すると、次に、上プレス盤を上昇させて原位置に復帰させる。これに伴い、スポンジ11の反発弾性力に基づき、帯鉄12は成形容器3の周縁リブ4を全体的に持ち上げ、成形シート2などは、当初のセット状態になる。このとき、抜き加工時に各成形容器3の周縁部が抜き刃9の中に嵌まり込んで各抜き刃9を外方に向けて突っ張り(この突っ張り力を図5に矢印Fで示す)ことになるため、この力Fが各成形容器3の押し上げに抗する抵抗力となる。しかし、成形容器3の押し上げを阻害する作用は、この抵抗力しかなく、それ以外の抵抗力(従来のように、位置決め部材の内周面に成形容器の側面上部が広い領域をもって密着することに基づく抵抗力)は生じない。このため、トレーのように、側面の立ち上がり角度が小さく、深さが比較的浅い成形容器の場合と同様に、各成形容器3と共に成形シート2は、ゴムスポンジ11の反発弾性力によって円滑に持ち上げられる。
【0021】
その後、成形シート2は、図示を省略した吸引式の搬送装置によって次の搬送工程に送られる。この場合、成形シート2が抜き型1の上に単に載置されているにすぎないことから、成形シート2を吸引式搬送装置によって確実に吸引保持して搬送することができる。
【0022】
したがって、抜き型1を用いることで、成形シート2の成形容器3の溝状周縁リブ4を利用して、周縁リブ4を帯鉄12の先端部に載せるだけで、成形シート2のセット時に位置決めが行われることになり、しかも、その後、成形シート2を介して帯鉄12をスポンジ11の弾性力に抗して押し下げて、成形シート2に抜き加工を行っても、成形シート2における成形容器3の側面の上部3b又は位置決め部材10の周面に密着(嵌合)することはなく、抜き加工後、成形容器3を取り出すための押し上げ力は、著しく小さなもので足りる。このため、どんぶり状の成形容器3であっても、成形容器3の底部3cにしわを発生させることなく、これを簡単に取り出すことができる。
【0023】
また、成形シート2の位置決めに関しては、前述したように、自動的に成形シート2が正規のセット状態となり、また、この正規のセット状態がその後も維持されることから、成形シート2の精度の高い位置決め作業を、周縁リブ4の形状面を利用して、簡単に行うことができる。また、この場合、帯鉄12の先端面が、上方に向けて凸となる湾曲面とされて、上述した位置決め作用が円滑に行われることから、成形シート2の精度の高い位置決め作業を、迅速且つ確実に行わせることができる。
【0024】
また、位置決め部材10のスポンジ11が成形容器3を押し上げるための弾性部材を兼ねるように設定されて、位置決め部材10が、成形シート2の位置決めと成形容器3の押し上げの2つの機能を有することから、凹所8の底部に敷設する成形容器押し上げ用の弾性部材を省くことができ、これにより部品点数を低減することができる。しかも、この場合、押し上げ力の作用箇所が周縁リブ4であり、本来的な周縁リブ4の高強度の性質を利用できることから、ゴムスポンジ11の設計上の自由度を高める(弾性力を高める)ことができる。
【0025】
更に、位置決め部材10の弾性部材がゴムスポンジ11とされて、極めて簡単な構成であるにもかかわらず、長期間安定的に反発弾性力を維持できることになるから、長期にわたって安定的な抜き加工を行うことができる。また、位置決め部材10(帯鉄12など)が成形シート2のセット時に、成形容器3の周囲全体を囲むように筒状とされていることから、成形シート2の位置決めの安定化を図ることができると共に、成形シート2等の押し上げ時には、押し上げ力を均等に分散して、成形容器3の押圧変形を防ぎつつ、成形容器3を確実に押し上げることができる。
【0026】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、これに限定されることなく、次の変形例を包含するものである。
(1)位置決め部材10を筒状としてではなく、部分的に設けてもよい。
(2)帯鉄12の先端部を、成形シート2の成形品の周縁リブ4に嵌合させてもよい。
(3)抜き加工時に、成形シート2から、各成形容器3を完全に分離するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の抜き型の説明図である。
【図2】側面の立ち上がり角度が大きく、深さが比較的深い複数の成形容器を一体的に備える成形シートを示す説明図である。
【図3】本発明の抜き型の部分詳細図である。
【図4】周縁リブと帯鉄との位置決め作用を説明する図である。
【図5】図1の状態から動作変化した状態を示す部分拡大図である。
【符号の説明】
1 抜き型
2 成形シート
3 成形容器(成形品)
4 周縁リブ
9 抜き刃
10 位置決め部材(位置決め手段)
11 ゴムスポンジ
12 帯鉄(支持部材)

Claims (3)

  1. 抜き刃の内側に、下方に向けて開口する断面円弧状の溝を形成している周縁リブが形成されている成形シートにおける成形品を位置決めする位置決め手段が設けられている抜き型において、前記位置決め手段が、弾性部材と、該弾性部材の上に前記抜き刃よりも上方に突出するように設けられて前記成形品の周縁リブを支持する支持部材とを備え、支持部材の先端面を上方に向けて凸をなす湾曲面にしていることを特徴とする抜き型。
  2. 前記弾性部材が、成形品を押し上げるための手段を兼ねるように、その反発弾性力が設定されている請求項1抜き型。
  3. 前記弾性部材がゴムスポンジである請求項の抜き型。
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