JP3646339B2 - 有機薄膜el素子 - Google Patents
有機薄膜el素子 Download PDFInfo
- Publication number
- JP3646339B2 JP3646339B2 JP06561195A JP6561195A JP3646339B2 JP 3646339 B2 JP3646339 B2 JP 3646339B2 JP 06561195 A JP06561195 A JP 06561195A JP 6561195 A JP6561195 A JP 6561195A JP 3646339 B2 JP3646339 B2 JP 3646339B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- layer
- organic thin
- thin film
- organic
- light emitting
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Fee Related
Links
- 0 C**(c(cc1)ccc1*(C)=CC(CC1)CCC1N(C1CCCCC1)c1ccccc1)=CC Chemical compound C**(c(cc1)ccc1*(C)=CC(CC1)CCC1N(C1CCCCC1)c1ccccc1)=CC 0.000 description 3
- XDTMQSROBMDMFD-UHFFFAOYSA-N C1CCCCC1 Chemical compound C1CCCCC1 XDTMQSROBMDMFD-UHFFFAOYSA-N 0.000 description 2
Images
Description
【産業上の利用分野】
当発明は、有機薄膜のエレクトロルミネセンス(以下単にELという)現象を利用した有機薄膜EL素子に関するものであり、薄型ディスプレイ等に利用できる。
【0002】
【従来の技術】
イーストマン・コダック社のC.W.Tangらにより開発された有機薄膜EL素子は、特開昭59−194393号公報、特開昭63−264692号公報、特開昭63−295695号公報、アプライド・フィジックス・レター第51巻第12号第913頁(1987年)、およびジャーナル・オブ・アプライドフィジックス第65巻第9号第3610頁(1989年)等によれば、一般的には陽極、有機正孔注入輸送層、有機発光層、陰極の順に構成され、以下のように作られている。
【0003】
図1に示すように、まず、ガラスや樹脂フィルム等の透明絶縁性の基板1上に、蒸着又はスパッタリング法等でインジウムとスズの複合酸化物(以下ITOという)の透明導電性被膜の陽極2が形成される。
次に有機正孔注入輸送層3は銅フタロシアニン(以下CuPcと略す)、
あるいは
【0004】
【化6】
【0005】
で示される化合物1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン(融点181.4℃〜182.4℃)、
あるいは
【0006】
【化7】
【0007】
で示される化合物N,N,N’,N’−テトラ−p−トリル−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(融点120℃)、
等のテトラアリールジアミンを、100nmm程度以下の厚さに単層または積層して蒸着して形成する。
【0008】
次に有機正孔注入輸送層3上にトリス(8−キノリノール)アルミニウム(以下Alqと略す)等の有機蛍光体を100nmm程度以下の厚さで蒸着し、有機発光層4を形成する。
この際、有機発光層中にキナクリドン系、クマリン系、ピラン系等の蛍光量子収率の高い蛍光色素を共蒸着により1モル%程度ドーピングすれば、ELの発光効率を2倍以上に高められる。
最後に、その上に陰極5としてMg:Ag、Ag:Eu、Mg:Cu、Mg:In、Mg:Sn等の合金を共蒸着法により200nm程度蒸着している。
【0009】
また、有機発光層と陰極5の間に、有機電子注入輸送層6を設け、素子を作製することも可能である。アプライド・フィズィックス・レター第57巻第6号第531頁(1990年)によると、安達らは、ITOの陽極上に有機正孔注入輸送層3としてN,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン〔融点159〜163℃、;以下TPDと略す〕、有機発光層(4)として1−〔4−N,N−ビス(p−メトキシフェニル)アミノスチリル〕ナフタレン、有機電子注入輸送層(6)として2−(4−ビフェニリル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(以下、単にBPBDという)、陰極(5)としてMgとAgの合金を順に積層してEL素子を作製している。
【0010】
以上のように作られた素子は、透明電極側を陽極として20〜30V以下の直流低電圧を印加することにより発光層に正孔と電子が注入され、その再結合により発光する。
正孔注入輸送層にTPD、発光層にAlqのみ、陰極にMgAg合金を用いたEL素子では、素子が溶融破壊する直前の最高輝度で1000〜7000cd/m2 程度の輝度が得られる。
【0011】
しかし、正孔輸送材料として通常用いられるTPDや(化6)(化7)で示した化合物は、非晶質で平滑な蒸着膜が得られ、発光層中の励起電子を閉じこめるのに十分高い最低空分子軌道(LUMO)のエネルギーレベル(電子親和力)を持ち、可視波長領域での吸収もないが、融点が低く素子作成プロセスや素子駆動時の発熱により溶融し、発光層と混合してしまい易い問題がある。
【0012】
例えば50nm程度の薄膜にしてTPDとAlq層を積層した場合に於いては、95℃程度の温度で両層が混合してしまった。CuPcは耐熱性が高く、また固体膜のイオン化エネルギーが約5.2eVと小さいためITOからの正孔注入効率が良いが、可視光線波長領域の吸収が大で光の取り出し効率が低下するため、また、LUMOのエネルギーレベルが低く、発光層中の励起電子の閉じこめ能力が低い等の問題があった。
【0013】
そこで、両者の長所を取り入れて、ITO上にCuPcを15〜35nm程度の厚さで成膜し正孔注入効率を高めた後、TPDや(化6)、(化7)の膜を35〜50nm程度重ねて成膜し発光層中の励起電子の閉じこめ効率を高め、多層正孔注入輸送層を形成することも行われたが、低分子のTPDや(化6)、(化7)が正孔輸送層の大半を占めるため耐熱性の向上と言う点では問題があり、高融点の正孔注入輸送材料が求められていた。
【0014】
また、低分子のみからなる正孔注入輸送層は膜の機械的強度も弱く、有機層が低分子の蒸着のみで形成された素子はITOのエッチングパターンの段差部でショートしやすいという問題があった。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、これらの問題点を解決するためになされたものであり、その課題とするところは、有機薄膜EL素子用有機材料の耐熱性および膜強度の不足の問題を改善し、ピンホール、電気短絡が生じ難く高輝度発光可能な有機薄膜EL素子を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明は、この課題を解決するため、互いに対抗する電極間に、少なくとも有機発光層を含む1層以上の有機薄膜層が介在して構成される有機薄膜EL素子において、(化1)(ここで、nは重合度を表す正の正数。G1はCH。G2およびG3 の少なくとも一方は(化2)(化3)(化4)(化5)の基、またはベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、ペリレン環のうちどれか1つ以上含む基、または(化1)中のフェニル基と縮合するベンゼン環、ナフタレン環上の炭素を表す。(化2〜5)中のRはH、または炭素数1〜4のアルキル基、アルコキシ基、ジアルキルアミノ基から選ばれる。)で示される化合物を有機薄膜層に含むことを特徴とする有機薄膜EL素子を提供し、また、前記(化1)で示される化合物と、他の1種以上の分子量245〜1000以下の低分子正孔輸送材料を正孔注入輸送層中に有すること、前記他の1種以上の分子量245〜1000以下の低分子正孔輸送材料が、ポルフィリン化合物、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物、N原子に2つ以上の芳香環上の炭素原子が結合した芳香族第3級アミンから選ばれた材料であることを特徴とする有機薄膜EL素子を提供する。
【0017】
以下、本発明の有機薄膜EL素子を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明における有機薄膜EL素子を、基板1上に陽極2、正孔注入輸送層3、有機発光層4、陰極5、封止層7の順に構成し、接着性材料8にて封止板9を接着して密封した場合の例であり、本発明における一般式(化1)で表せる化合物を正孔注入輸送層3に用いることができる。
【0018】
図2は、正孔注入輸送層が2層構成の場合であり、第1正孔注入輸送層10として第2正孔注入輸送層11と陽極の仕事関数の間の仕事関数の値を持つ材料を用いることで有機発光層4への正孔注入効率が向上し、低電圧でEL発光が得られるようになる。本発明における一般式(化1)で表せる化合物を含む層は、第1正孔注入輸送層10または第2正孔注入輸送層11のどちらか、または第1正孔注入輸送層10が第2正孔注入輸送層11の製膜時に使用する溶剤に不溶の場合は両方の層に用いることもできる。
【0019】
図3はさらに素子の安定性、発光効率を高めるために第2正孔注入輸送層11と有機発光層4間に、発光層中の励起電子の閉じこめ効率が高い第3正孔注入輸送層12を形成した場合である。
さらに、図4に示すように有機発光層4と陰極5間に有機発光層との界面で正孔の流れを阻止する電子注入輸送層6を設けた場合である。
同様の構成を基板上に陰極から逆の順に構成することもできる。
以下、さらに詳しく材料および素子の製造方法について説明する。
【0020】
陽極2は、通常、表面抵抗1〜50Ω/□、可視光線透過率80%以上の透明電極を用いる。例えば、ITO(仕事関数4.6〜4.8eV)や酸化亜鉛アルミニウムの非晶質または微結晶透明導電膜、または低抵抗化のため10nm程度の厚さの銀や銅、または銀と銅の合金をITO、酸化チタン、酸化錫等の非晶質または微結晶透明導電膜で挟んだ構造の膜を真空蒸着やスパッタリング法等でガラスやプラスチックフィルム等の透明絶縁性の基板1上に形成し透明電極として用いることが望ましい。その他、金やプラチナを薄く蒸着した半透明電極やポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン等の高分子を被覆した半透明電極等も用いることができる。
【0021】
しかし、別の場合には、陽極2は不透明で、正孔注入輸送層3を通して有機発光層4へ正孔注入しやすい仕事関数の値の大きい金、プラチナ、パラジウム、ニッケル等の金属板、シリコン、ガリウムリン、アモルファス炭化シリコン等の仕事関数が4.6eV以上の半導体基板、もしくはそれらの金属や半導体を、絶縁性の基板1上に被覆した陽極2に用い、陰極5を透明電極もしくは半透明電極とすることもできる。陰極5も不透明であれば、有機発光層4の少なくとも一端が透明である必要がある。
【0022】
次に本発明における有機正孔注入輸送層3を陽極2上に形成する。本発明に用いる正孔注入輸送層は、一般式(化1)で示す化合物を含む層で形成することができる。
一般式(化1)で示される化合物の具体例としては
【0023】
【化8】
【0024】
【化9】
【0025】
【化10】
【0026】
【化11】
【0027】
【化12】
【0028】
で示される重合体(式中nは重合度を表す正の整数)を挙げることができるが、特にこの例に、本発明が限定されるわけではない。
【0029】
本発明に用いる(化1)で表す化合物は、まず
【0030】
【化13】
【0031】
に示すようにベンゼンを溶媒とし、クロロメチルスチレンとトリフェニルホスフィンを反応させクロロメチルスチレンのホスホニウム塩を合成する。次に
【0032】
【化14】
に示すように塩基処理によりホスホランを生成させた後、正孔輸送性の芳香族第3級アミンからなる芳香族アルデヒド(Vilsmeier反応等で合成できる)をWittig反応させ、モノマーを得る(シス、トランス混合体)。最後に得られたモノマーをベンゼン等を溶媒としてアゾイソブチロニトリル等の重合開始剤でラジカル重合をおこない重合体を得られる。さらに重合体を熱処理しトランス体に変換する事も可能である。
【0033】
例えば、(化8)(化9)(化10)で示す重合体の場合は、数平均分子量が、GPC(ゲルパーミッションクロマトグラフィー)ポリスチレン換算で、それぞれ6.8万、3.1万、8.9万であり、仕事関数(理研計器(株)製:表面分析装置「AC−1」により大気下で粉体を測定)が、それぞれ5.7eV、5.3eV、5.4eVであり、HOMO−LUMO間エネルギーギャップが、それぞれ3.0eV、2.8eV、2.9eVであり、融点がすべて200℃以上のものが得られた。
【0034】
また、クロロメチルスチレンのホスホニウム塩の代わりに4−アミノスチレンを用いて
【0035】
【化15】
【0036】
のように反応(室温、窒素下、24時間程度)させると、アゾメチン結合で正孔輸送性の芳香族第3級アミンが側鎖に結合したモノマーが得られ、ラジカル重合等により同様に重合体が得られる。
【0037】
これらのポリマーは、トルエン、テトラヒドロフラン、クロロホルム、ジオキサン、シクロヘキサノン等の一般の有機溶媒に溶かすことができ、スピンコート法、ディップコート法、ロールコート法等の方法で基板上に塗布することにより、平滑で透明で、かつ低分子からなる蒸着膜よりもピンホールの無い強度のある薄膜を得ることができる。
【0038】
さらに、陽極と発光層間の仕事関数の値の段差を小さくして正孔注入効率を向上させるため、層間の密着性向上のため、劣化防止、色調の調整などの目的で、他の正孔輸送性材料、例えば、CuPcや塩素化銅フタロシアニン、テトラ(t−ブチル)銅フタロシアニン等の金属フタロシアニン類および無金属フタロシアニン類、キナクリドン等の耐熱性の低分子正孔注入輸送材料を(化1)で表す化合物と混合して正孔注入輸送層として用いるか、または、他の正孔輸送性材料を第1正孔注入輸送層とし、(化1)で表す化合物を含む層を第2正孔注入輸送層として2層の正孔注入輸送層を形成することもできる。
【0039】
この際に各層は真空蒸着法、スピンコート法、ディップコート法、ロールコート法等各種の製膜方法を適用することができる。
【0040】
さらに、高輝度のEL発光を得るためには、発光層と接する正孔注入輸送層の界面領域(発光層界面から5nm程度の領域)は重要である。
発光層との界面領域のLUMOのエネルギーレベルは、発光層中の励起電子を閉じこめ正孔との再結合確率を増すため、発光層のLUMOのエネルギーレベル(Alqの場合、仕事関数5.8eVに吸収スペクトルの端波長から求めたエネルギーギャップ2.8eVを引いて約3.0eV)よりも0. 6eV程度以上高い必要がある。
【0041】
また、不純物のエネルギーレベルを通して発光層中の励起電子が熱失活することを防ぐ必要がある。そのため、発光層と接する正孔注入輸送層の界面領域は不純物が混入し易い湿式法によるポリマー材料で形成するよりも、昇華精製等で高純度化が容易な分子量245〜1000以下の低分子で、仕事関数が発光層の値と同程度から0.4eV以内で小さい範囲、かつLUMOのエネルギーレベルが0. 6eV程度以上高い芳香族第3級アミンを含む低分子正孔輸送材料を蒸着法で形成する方が有利である。
【0042】
よって、第1正孔注入輸送層として耐熱性、正孔注入効率の高いポルフィリン類かフタロシアニン類、第2正孔注入輸送層として耐熱性、透明性、膜強度が高い(化1)で表す化合物を用い、正孔注入輸送層と発光層との界面領域の低分子正孔注入輸送材料としては、(化6)、(化7)やTPD(仕事関数5.5eV、LUMOのエネルギーレベル2.4eV)等を第3正孔注入輸送層として用いるとピンホールの生じ難く安定発光可能なEL素子が得られ、かつ発光効率が向上し高輝度のEL素子が得られる。この際、(化6)、(化7)やTPDは、材料自身の融点は低いが極薄い膜厚なので素子の耐熱性の低下は少ない。
【0043】
次に、正孔注入輸送層3上に有機発光層4を形成する。
有機発光層4に用いる蛍光体は、可視領域に蛍光を有し、適当な方法で成膜できる任意の蛍光体が可能である。
例えば、アントラセン、サリチル酸塩、ピレン、コロネン、ペリレン、テトラフェニルブタジエン、9,10−ビス(フェニルエチニル)アントラセン、8−キノリノラートリチウム、Alq、トリス(5,7−ジクロロ,8−キノリノラート)アルミニウム錯体、トリス(5−クロロ−8−キノリノラート)アルミニウム錯体、ビス(8−キノリノラート)亜鉛錯体、トリス(5−フルオロ−8−キノリノラート)アルミニウム錯体、トリス(4−メチル−5−トリフルオロメチル−8−キノリノラート)アルミニウム錯体、トリス(4−メチルー5−シアノ−8−キノリノラート)アルミニウム錯体、ビス(2−メチルー5−トリフルオロメチル−8−キノリノラート)(4−(p−シアノフェニルフェノラート)アルミニウム錯体、ビス(2−メチルー5−シアノ−8−キノリノラート)(4−(p−シアノフェニルフェノラート)アルミニウム錯体、トリス(8−キノリノラート)スカンジウム錯体、ビス(ベンゾ[h]−10−キノリノ−ル)ベリリウム錯体、ビス〔8−(p−トシル)アミノキノリン〕亜鉛錯体およびカドミウム錯体、1,2,3,4−テトラフェニルシクロペンタジエン、ペンタフェニルシクロペンタジエン、ポリ−2,5−ジヘプチルオキシ−P−フェニレンビニレン、あるいは特開平4−31488号公報、米国特許第5,141,671 号明細書、同4,769,292 号明細書中で言及されている蛍光物質等があげられる。
【0044】
これらの有機発光層材料の成膜方法は真空蒸着法、累積膜法、または適当な樹脂バインダー中に分散させてスピンコートなどの方法でコーティングすることにより行なわれる。
【0045】
有機発光層4の膜厚は、単層または積層により形成する場合においても100nm以下であり、好ましくは5〜50nmである。また、これらの蛍光性ポリマーや分子にビニル基、アクリル基、メタクリロイルオキシメチル基、メタクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシエチル基、アクリロイル基、アクリロイルオキシメチル基、アクリロイルオキシエチル基、シンナモイル基、スチレンメチルオキシ基、プロピオロイル基、プロパルギル基等の重合性、架橋性の基を導入した材料を用いて成膜後に熱、光、放射線で重合、架橋することもできる。
【0046】
また、有機発光層4中の蛍光体は、発光波長変換、発光波長拡大、発光効率向上等のために、米国ラムダフィズィック社またはイーストマンコダック社のレーザーダイカタログ等に記載されているクマリン系やキナクリドン系、ペリレン系、ピラン系等の蛍光体を、1種類以上ゲスト発光体としてホスト発光母体中にドーピングするか、多種類の蛍光体の発光層を2層以上積層してもよく、そのうちの一方は赤外域または紫外域に蛍光を示すものであってもよい。
【0047】
次に、有機発光層4上に有機電子注入輸送層6を積層する場合、有機電子注入輸送材料の好ましい条件は、電子移動度が大きく、LUMOのエネルギーレベルが有機発光層材料のLUMOのエネルギーレベルと同程度から陰極材料のフェルミレベル(仕事関数)の間にあり、仕事関数が有機発光層材料より大きく、成膜性が良いことである。さらに陽極2が不透明で、透明もしくは半透明の陰極5から光を取り出す構成の素子においては少なくとも有機発光層材料の蛍光波長領域において実質的に透明である必要がある。
【0048】
有機電子注入輸送層の例としては、BPBD、2,5−ビス(1−ナフチル)−1、3、4−オキサジアゾール、および浜田らの合成したオキサジアゾール誘導体(日本化学会誌、1540頁、1991年)、炭化シリコン、アモルファスシリコン膜等の無機半導体や光導電性膜があげられるが、上記例に特に限定されるものではない。また、ホスト発光母体中にゲスト発光体をドーピングして発光層を形成した場合には、ホスト発光母体を有機電子注入輸送層として用いることも可能である。
【0049】
有機電子注入輸送層6の成膜方法は、スピンコート法等の方法で塗布、または真空蒸着法、CVD法、累積膜法等の方法により行なわれ、1nm〜1μmの厚さに単層、または多層で成膜される。
【0050】
次に陰極5を有機発光層4または有機電子注入輸送層6上に形成する。
陰極は、電子注入を効果的に行なうために有機発光層4または電子注入輸送層6と接する面に低仕事関数の物質が使われ、Li、Na、Ag、Mg、Ca、Sr、Al、In、Sn、Zn、Mn、Ti、Zr、La、Ce、Er、Eu、Sc、Y、Yb等の金属元素単体、または安定性を向上させるためにそれらを含む2成分、3成分の合金系、LaB6 等の硼化物、TiC等の炭化物、TiN等の窒化物の中から選ばれ用いる。
【0051】
陰極の形成方法は、材料に応じて、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法、反応性蒸着法、イオンプレーティング法を用いたり、合金ターゲットを用いてスパッタリング法により陰極を成膜することができる。陰極5を多成分合金で形成する場合は、抵抗加熱法により10-5Torrオーダー以下の真空度の下で成分ごとに別々の蒸着源から水晶振動子式膜厚計でモニターしながら共蒸着することにより行うことができる。
【0052】
アルカリ金属を含む低仕事関数陰極を用いた場合には、特に仕事関数が小さくなり電子注入効率が向上する。例えば、Mg単体で仕事関数は約3.6eVであり、MgにLi等アルカリ金属を添加した場合は3.1〜3.2eVに低下する。アルカリ金属を含む陰極合金層は、0. 5nm〜40nm程度の厚さに成膜した後、さらにその上に50nm〜300nm程度アルカリ金属を含まないAl、In、Ti、Ag等の金属層を成膜し、保護および導電補助層を形成することが望ましい。陰極の厚さは、保護および導電補助層を含めて1nm〜300nm程度の膜厚で形成される。
【0053】
次に素子の有機層や電極の酸化を防ぐために素子上に封止層(7)を形成する。封止層(7)は、陰極(5)の形成後直ちに形成する。封止層材料の例としては、SiO2 、SiO、GeO、MgO、Al2 O3 、B2 O3 、TiO2 、ZnO、SnO等の酸化物、MgF2 、LiF、BaF2 、AlF3 、FeF3 等の沸化物、ZnS、GeS、SnS等の硫化物等のガスおよび水蒸気バリアー性の高い無機化合物があげられるが、上記例に限定されるものではない。これらを単体または複合して蒸着法、反応性蒸着法、CVD法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等により成膜する。
【0054】
抵抗加熱方式で蒸着する場合には、低温で蒸着できるGeOが優れている。陰極保護のために、封止層中、または封止層に接する面上に封止用無機化合物とLi等のアルカリ金属やCa等のアルカリ土類金属との混合層を設けてもよい。
【0055】
さらに、湿気の浸入を防ぐために市販の低吸湿性の光硬化性接着剤、エポキシ系接着剤、シリコーン系接着剤、架橋エチレンー酢酸ビニル共重合体接着剤シート等の接着性樹脂や低融点ガラス等の接着材料8を用いて、ガラス板等の封止板9の周囲または全面を接着し密封する。ガラス板以外にも、金属板、プラスチック板等を用いることもできる。接着材料8中にシリカゲルやゼオライト等の乾燥剤を混合しておいても良いし、封止板9の内面にシリカゲルやゼオライト等の乾燥剤やアルカリ金属やアルカリ土類金属、希土類などからなるゲッター材の層を形成しておいても良い。
【0056】
以上のように構成した有機薄膜EL素子は、有機正孔注入輸送層3側を正として電源13にリード線14で接続し直流電圧を印加することにより発光するが、交流電圧を印加した場合にも正孔注入輸送層3側の電極が正に電圧印加されている間は発光する。特に本発明による3層構造の正孔注入輸送層を有する有機薄膜EL素子は長期間安定なEL発光を得ることが出来る。
【0057】
本発明による有機薄膜EL素子を基板上に2次元に配列することにより文字や画像を表示可能な薄型ディスプレーをすることができる。また、赤、青、緑の3色の素子を2次元に配列するか、白色発光層とカラーフィルターを用いてカラーディスプレー化も可能である。さらに、ガラス基板の外表面を、多層膜反射防止コーティング、シリカコーティング等のCRTや液晶パネルのガラス表面の反射防止方法で処理することにより、さらに見やすいディスプレイとすることもできる。
【0058】
【実施例】
<実施例1>
透明絶縁性の基板1として、厚さ1.1mmの青板ガラス板を用い、この上に120nmのITOをスパッタリング法で被覆して陽極2とした。この透明導電性基板を使用前に水洗、プラズマ洗浄により十分に洗浄した
正孔注入輸送層は、まず、第1正孔注入輸送層10としてCuPcを15nm蒸着し、第2正孔注入輸送層11として(化8)のトルエン溶液(14mg/ml)を1500rpmでスピンコーティングを行ない65nmの厚さで成膜し、第3正孔注入輸送層12としてTPDを5nm蒸着し、3層構成とした。
【0059】
次に、有機発光層4としてAlqを50nm蒸着し、その上面に陰極5としてAlとLiを蒸着速度比3:1で26nm蒸着した後に、Alのみ195nm積層した。
最後に、封止層7としてGeOを2.3μm蒸着後、ガラス板9を光硬化性樹脂8で接着し密封した。
この素子は3V以上の直流電圧により緑色に安定発光し、最高輝度は15Vにおいて6423cd/m2 、電流密度は396mA/cm2 であった。
また、使用した(化8)の赤外線吸収スペクトルを図5に示す。
【0060】
<実施例2>
実施例1と同様に基板を洗浄した。正孔注入輸送層は、まず、第1正孔注入輸送層10として(化9)のトルエン溶液(9mg/ml)を1000rpmでスピンコーティングを行ない48nmの厚さで成膜し、第2正孔注入輸送層11としてTPDを5nm蒸着し2層構成とした。
【0061】
次に、有機発光層4としてAlqを55nm蒸着し、その上面に陰極5としてMgとAgを蒸着速度比10:1で220nm蒸着した。
最後に、封止層7としてGeOを2.3μm蒸着後、ガラス板8を光硬化性樹脂9で接着し密封した。
この素子は3V以上の直流電圧により緑色に安定発光し、最高輝度は18Vにおいて11180cd/m2 、電流密度は611mA/cm2 であった。17Vにおいては輝度10000cd/m2 、電流密度は421mA/cm2 であった。また、使用した(化9)の赤外線吸収スペクトルを図6に示す。
【0062】
<実施例3>
実施例2素子の第2正孔注入輸送層11を省いて作製した以外は実施例4と同様に素子を作製した。
この素子の最高輝度は17Vにおいて3752cd/m2 電流密度671mA/cm2 であった。
【0063】
<実施例4>
実施例2の素子の第1正孔注入輸送層10として(化9)の代わりに(化10)の層を48nm形成した後、実施例2と同様に素子を作製した。
この素子は3V以上で緑色に安定発光し、最高輝度は20Vにおいて7623cd/m2 、電流密度334mA/cm2 であった。18Vにおいては輝度4140cd/m2 、電流密度は147mA/cm2 であった。また、使用した(化10)の赤外線吸収スペクトルを図7に示す。
【0064】
<実施例5>
実施例4素子の第2正孔注入輸送層11を省いて作製した以外は実施例4と同様に素子を作製した。
この素子の最高輝度は18Vにおいて4016cd/m2 電流密度446mA/cm2 であった。
【0065】
【発明の効果】
本発明の(化1)で表せる化合物は、重合体であるため融点が高く、EL素子の耐熱性を高めるのに効果がある。しかも、スピンコート等の方法で透明陽極のパターニングによる段差部での被覆も、低分子の蒸着法で形成する場合よりも十分行われるので、106 V/cm以上の高い電界をかけた場合でも段差部での素子の電気短絡が生じ難く安定なEL発光が得られる効果がある。
さらに、本発明の(化1)で表せる化合物、低分子のフタロシアニン化合物、N原子に2つ以上の芳香環上の炭素原子が結合した芳香族第3級アミンからなる正孔輸送材料を組み合わせた3層構成の正孔注入輸送層を用いた場合には、有機薄膜EL素子の高輝度発光に非常に効果があった。
【0066】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の有機薄膜EL素子の一実施例を示す説明図である。
【図2】本発明の有機薄膜EL素子の他の実施例を示す説明図である。
【図3】本発明の有機薄膜EL素子の他の実施例を示す説明図である。
【図4】本発明の有機薄膜EL素子の他の実施例を示す説明図である。
【図5】(化8)のKBr法による赤外線吸収スペクトル
【図6】(化9)のKBr法による赤外線吸収スペクトル
【図7】(化10)のKBr法による赤外線吸収スペクトル
【符号の説明】
1…基板 2…陽極 3…正孔注入輸送層 4…有機発光層 5…陰極
6…有機電子注入輸送層 7…封止層 8…接着性材料層 9…ガラス板
10…第1正孔注入輸送層 11…第2正孔注入輸送層
12…第3正孔注入輸送層 13…電源 14…リード線
15…陰極取り出し口
Claims (3)
- 前記(化1)で示される化合物と、他の1種以上の分子量245〜1000以下の低分子正孔輸送材料を正孔注入輸送層中に有することを特徴とする請求項1記載の有機薄膜EL素子。
- 前記他の1種以上の分子量245〜1000以下の低分子正孔輸送材料が、ポルフィリン化合物、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物、N原子に2つ以上の芳香環上の炭素原子が結合した芳香族第3級アミンから選ばれた材料であることを特徴とする請求項2記載の有機薄膜EL素子。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP06561195A JP3646339B2 (ja) | 1995-03-24 | 1995-03-24 | 有機薄膜el素子 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP06561195A JP3646339B2 (ja) | 1995-03-24 | 1995-03-24 | 有機薄膜el素子 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH08259935A JPH08259935A (ja) | 1996-10-08 |
JP3646339B2 true JP3646339B2 (ja) | 2005-05-11 |
Family
ID=13291994
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP06561195A Expired - Fee Related JP3646339B2 (ja) | 1995-03-24 | 1995-03-24 | 有機薄膜el素子 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3646339B2 (ja) |
Families Citing this family (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
TW558561B (en) | 1997-07-22 | 2003-10-21 | Sumitomo Chemical Co | Hole transporting polymer and organic electroluminescence device using the same |
US6329083B1 (en) | 1997-11-05 | 2001-12-11 | Nec Corporation | Organic electroluminescent device containing a benzoperylene compound |
KR101014837B1 (ko) | 2002-08-09 | 2011-02-15 | 도소 가부시키가이샤 | 신규 트리아릴아민폴리머, 그 제조방법 및 그 용도 |
JP2006237592A (ja) * | 2005-01-31 | 2006-09-07 | Semiconductor Energy Lab Co Ltd | 正孔注入性材料、発光素子用材料、発光素子、有機化合物、モノマー及びモノマー混合物 |
-
1995
- 1995-03-24 JP JP06561195A patent/JP3646339B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPH08259935A (ja) | 1996-10-08 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP3588978B2 (ja) | 有機薄膜el素子 | |
EP1866985B1 (en) | Organic light-emitting device | |
EP0825804B1 (en) | Blue organic electroluminescent devices | |
JP4477150B2 (ja) | 有機薄膜el素子 | |
JP2897138B2 (ja) | 電界発光素子 | |
WO2004016575A1 (ja) | オリゴアリーレン誘導体及びそれを利用した有機エレクトロルミネッセンス素子 | |
JP2848207B2 (ja) | 有機薄膜el素子 | |
JP2005026121A (ja) | 有機el素子及びその製造方法並びに有機elディスプレイ | |
JP3769934B2 (ja) | 有機薄膜el素子 | |
JP3518047B2 (ja) | 有機薄膜el素子 | |
JP2848189B2 (ja) | 有機薄膜el素子 | |
JP2000150168A (ja) | 耐熱性低抵抗正孔輸送材料および有機薄膜発光素子 | |
JP3750315B2 (ja) | 有機電界発光素子 | |
JP3743229B2 (ja) | 有機薄膜発光素子及び蛍光体 | |
JP4135411B2 (ja) | 非対称1,4−フェニレンジアミン誘導体、及びこれを用いた有機電界発光素子 | |
JP3620186B2 (ja) | 有機薄膜el素子 | |
JP3518255B2 (ja) | 有機薄膜el素子 | |
JP3646339B2 (ja) | 有機薄膜el素子 | |
JP2000048966A (ja) | 有機エレクトロルミネッセンス素子 | |
JPH07166160A (ja) | 有機薄膜el素子 | |
JP2806144B2 (ja) | 有機薄膜el素子 | |
JP3287503B2 (ja) | 有機薄膜el素子 | |
JPH1187065A (ja) | El素子及びその製造に用いる正孔輸送性縮合物 | |
JPH09151371A (ja) | 有機薄膜el素子 | |
JPH05271652A (ja) | 有機薄膜el素子 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20040121 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20040224 |
|
A521 | Request for written amendment filed |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20040423 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20050118 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20050131 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20080218 Year of fee payment: 3 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090218 Year of fee payment: 4 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100218 Year of fee payment: 5 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100218 Year of fee payment: 5 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110218 Year of fee payment: 6 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120218 Year of fee payment: 7 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130218 Year of fee payment: 8 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140218 Year of fee payment: 9 |
|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |