JP3646092B2 - 射出成形品およびその処理装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、製品となる製品部と、スプール等からなる除去される部分とを備えた射出成形品および、その射出成形品に所定の処理を施すための処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、射出成形機で射出成形された射出成形品においては、所定の処理が行われており、例えば、トリミング処理工程においては、製品となる製品部以外のスプールやランナー等の部分を、プレス装置からなる処理装置を用いて除去している。このような処理装置においては、射出成形品をロボット等の搬送装置または人による作業によって処理を行うための所定位置に搬送している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、射出成形品は、成形直後は十分な冷却が行われていないため変形しやすい状態にあり、特に、スプール(金型の射出口近傍のスプール形成部によって形成される部分)と製品部との間の位置関係は、射出成形機から取り出す際に射出成形品が歪んで変化することがある。このため、ロボット等の搬送装置がスプールの位置を基準として射出成形品をプレス装置の処理位置に設置すると、適正な処理位置に射出成形品の製品部を設置できない場合が生じる。その結果、プレス処理を正確にできず製品部に寸法不良や形状不良が生じるという問題がある。
【0004】
【発明の概要】
本発明は、上記問題に対処するためになされたもので、その目的は、射出成形機から取り出された射出成形品に多少の変形が生じていても製品部設置部に正確に製品部を設置できる射出成形品およびその射出成形品に所定の処理を施すための処理装置を提供することである。
【0005】
上記の目的を達成するため、本発明による射出成形品の構成上の特徴は、射出成形機によって射出成形され、射出成形機の金型におけるスプール形成部によって形成されるスプールと、スプールから延びるランナーと、製品となる製品部と、ランナーと製品部との間に形成されるゲートとを備えた射出成形品において、ランナーおよびゲートの少なくとも一方の表面に、製品部の位置ずれおよび角度のずれを検出するための複数の被検出部を設けたことにある。また、製品部の下流側端部にオーバーフローを形成した場合には、オーバーフローに、製品部の位置ずれおよび角度のずれを検出するための複数の被検出部を設けることもできる。
【0006】
前記のように構成した本発明の射出成形品では、射出成形品におけるランナーやゲートの表面に複数の被検出部を設けているため、この射出成形品に所定の処理を施すための処理装置における所定位置に射出成形品を設置する場合、その被検出部を基準として製品部の設置位置を確認することができる。また、被検出部が複数個設けられているため、製品部の標準設置位置に対する前後左右方向のずれだけでなく角度のずれも確認することができる。この場合、被検出部を設ける部分としては、製品部もしくは製品部に近い部分で製品部に対して変位しにくく、かつカメラ等の検出装置で検出しやすい部分が好ましい。したがって、最も好ましいのは、ランナーにおける製品部近傍部分である。オーバーフローを含む射出成形品においては、このオーバーフローに被検出部を設けることができる。
【0007】
また、本発明による処理装置の構成上の特徴は、請求項1または2に記載の射出成形品に所定の処理を施すための処理部を備えた処理装置において、射出成形品が設置される射出成形品設置部が設けられ、射出成形品設置部に射出成形品を設置して回転方向に変位させるとともに、左右方向および前後方向に搬送する搬送装置と、処理部またはその近傍に設けられ、射出成形品における製品部を設置するための製品部設置部と、搬送装置の搬送路近傍に設けられ、搬送装置によって搬送される射出成形品の複数の被検出部を撮影する画像処理装置と、画像処理装置が撮影した複数の被検出部の画像から製品部の標準位置に対するずれ角度を求めそのずれ角度に基づいて搬送装置を制御して射出成形品を回転させ製品部のずれ角度を補正するとともに、画像処理装置が撮影した複数の被検出部の画像から製品部の位置と製品部設置部との間の距離を求め、その距離に基づいて搬送装置を制御して射出成形品を画像撮影位置から処理部に搬送して製品部を製品部設置部に位置させる制御装置とを設けたことにある。
【0008】
このように構成した本発明の処理装置では、画像撮影位置に搬送された射出成形品の被検出部を画像処理装置で撮影するようになっている。そして、画像処理装置が、撮影した被検出部の画像から製品部の標準位置に対する角度のずれと、位置を検出する。そして、製品部の角度ずれと位置から製品部設置部までの距離を演算しその演算値に基づいて制御装置が搬送装置を制御して、製品部設置部に製品部が位置するようにして射出成形品を処理部に搬送するようになっている。
【0009】
したがって、例えば、射出成形時に変形が生じてスプールと製品部の間にねじれ等が生じていても、射出成形品はスプールでなく製品部に対応する被検出部の位置を基準に搬送されるため、射出成形品の製品部は製品部設置部に適正な状態で設置され処理部による射出成形品の所定の処理が正確に行われる。すなわち、製品部と被検出部との位置関係に変更が生じない限り、製品部は製品部設置部に適正な状態で設置され正確な処理が可能になる。
【0010】
また、本発明による処理装置の他の構成上の特徴は、ランナーと、複数の製品部と、ランナーと複数の製品部との間に形成されるゲートとを備え、複数の製品部に対応するランナーおよびゲートの少なくとも一方の部分に異なる被検出部が設けられた射出成形品をプレス処理することによって製品部を他の部分と分離する処理装置において、射出成形品の被検出部を撮影する画像処理装置と、プレス処理された射出成形品の製品部を搬出するための搬出装置と、搬出装置が搬出した製品部を振り分ける駆動シュートと、画像処理装置が撮影した被検出部の画像から製品部を同じ被検出部に対応するものごとに区分し、その区分に基づいて駆動シュートを制御して製品部を同じ被検出部に対応するものごとに振り分ける制御装置とを設けたことにある。
【0011】
このように構成した本発明の処理装置は、最終製品となる複数の製品部を含み、かつそれぞれの製品部に対応する部分に異なる被検出部が設けられた射出成形品をプレス処理するようになっている。そして、この処理装置には、射出成形品の各製品部を被検出部の撮影によって認識するための画像処理装置が設けられており、この画像処理が撮影する被検出部の画像をもとに、プレス処理後に搬出装置によって搬出される製品部を、駆動シュートを駆動させて振り分けるようにしている。
【0012】
したがって、例えば、1個の射出成形品に製品部が2個ある場合、射出成形機の成形用金型における一方の成形用凹部で成形された製品部は同じ区分として一方の搬出場所に搬出され、他方の成形用凹部で成形された製品部は他方の搬出場所に搬出される。このため、どの製品部が成形用金型におけるどの成形用凹部で成形されたものであるかが判別できる。この結果、ある搬出場所に搬出された製品部に傷等の不良品が多発した場合、成形用金型のどの成形用凹部に損傷等が発生しているかがわかり、それに対する対応が容易になる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を図面を用いて説明する。図1および図2は、射出成形機(図示せず)によって成形されたマグネシウムからなる射出成形品10を示している。この射出成形品10では、スプール11を中心として、2個のランナー12a,12bが左右方向に延び、その先端側における側部にそれぞれゲート13a,13bを介して製品部14a,14bが連結されている。そして、製品部14a,14bにおける射出下流側(スプール11から離れた部分)の端部側にはそれぞれオーバーフロー15a,15bが形成されている。ランナー12a、ゲート13a、製品部14aおよびオーバーフロー15aは、スプール11の中心軸を中心として180度回転すると、それぞれ対応するランナー12b、ゲート13b、製品部14bおよびオーバーフロー15bと重なり合うように設定されている。
【0014】
また、ランナー12aの上面におけるゲート13aの近傍には、画像読み取り用の被検出部としての3個の突起16a,16b,16cが突設され、ランナー12bの上面におけるゲート13bの近傍にも同様の2個の突起16d,16eが突設されている。突起16a〜16eは全て同形同大の円柱状体で構成されており、その上端面と周面との角部が縁取りされて上方から見ると二重丸(図1の状態)に見えるように形成されている。なお、射出成形品10のうち最終製品として必要になる部分は製品部14a,14bだけであり、他のスプール11、ランナー12a,12b、ゲート13a,13bおよびオーバーフロー15a,15bは、製品部14a,14bの成形時に必要となる部分で、製品部14a,14bが成形されたのちは不要部分となる。
【0015】
また、製品部14a,14bは同形同大に設定され、それぞれに成形された金型の位置(成形用凹部)を特定するための番号(図示せず)が刻設されている。製品部14a,14bが成形される金型には、射出口近傍にスプール形成部が形成されそのスプール形成部に続いて射出成形品10の形状に対応する形状の成形用凹部が設けられており、この成形用凹部内に成形用材料を射出することによって射出成形品10が得られる。したがって、例えば、製品部14a,14bのどちらか一方に成形不良品が多く発生して金型に修理等が必要になった場合には、製品部14a,14bに刻設された番号から金型における成形用凹部の中のどちらの製品部14a,14bに対応する部分を修理すればよいかが判断できるようになっている。
【0016】
このように構成された射出成形品10は、射出成形機によって成形されたのちに、チェーンコンベアおよび搬送ロボット等(図示せず)によって、図3および図4に示した処理装置としてのプレス装置20まで搬送され、プレス装置20によって、製品部14a,14bが、スプール11、ランナー12a,12b、ゲート13a,13bおよびオーバーフロー15a,15bと分離される。
【0017】
プレス装置20は、図3および図4に示したように、基台21の上面に前部側が幅広になったテーブル22が設けられ、テーブル22の後部中央に支持柱23が上部前面部分を前方に突出させて立設されている。そして、支持柱23の前方突出部分23aに金型24の昇降機構が設けられている。すなわち、支持柱23の前方突出部分23aには、2個の平行ガイド軸25a,25bが上下に摺動自在に支持されており、その下端部に金型24を取り付けるための固定板26を介してバックプレート27が固定されている。
【0018】
そして、固定板26の上面中央には上下移動部28が連結され、バックプレート27の下面にはプレス用の上金型24aが取り付けられている。また、前方突出部分23a内には、油圧シリンダーを備えた駆動装置が設けられており、この駆動装置の駆動によって、上下移動部28が上下移動することにより固定板26およびバックプレート27が平行ガイド軸25a,25bおよび上金型24aとともに上下移動する。
【0019】
また、上金型24aの下方におけるテーブル22の前部側中央には、金型支持台29が配設され、その上面にバックプレート30を介して下金型24bが固定されている。この下金型24bの上面中央には射出成形品10の製品部14aおよび製品部14bの一方を位置決めするための製品部設置部P0(図5参照)が設けられている。そして、下金型24bの製品部設置部P0に、例えば、製品部14aを設置して、駆動装置を駆動させて上金型24aを下降させると、上金型24aと下金型24bの接合によって、製品部14aとゲート13aの間および製品部14aとオーバーフロー15aの間が切断され、射出成形品10から製品部14aが分離するとともに、製品部14aからオーバーフロー15aが分離する。
【0020】
なお、上金型24aの下面には、製品部14a(,14b)の縁部を縁取った形状の切断片が突設され、この切断片と下金型24bとの挟圧によって射出成形品10の切断が行われる。また、テーブル22における一方側(図3の右側部分)には、金型支持台29と同じ高さの平面台部22aが形成されており、金型24をバックプレート27,30とともに交換する場合には、この平面台部22a上で金型24等をスライドさせることにより容易に搬入・搬出ができるようになっている。
【0021】
また、支持柱23における前方突出部分23aの右側面に取り付けられた取付け部材31によって、画像処理装置32が前方突出部分23aの正面下方に垂設されている。この画像処理装置32は、図6に示すように、CCDカメラからなる撮像装置33とリング状の照明装置34とで構成されており、その直下が図5に示した画像読み取り位置P1に設定されている。照明装置34は、射出成形品10のランナー12a,12bにおける突起16a,16b,16cおよび突起16d,16eをそれぞれ上方から照射してその反射光から、図7に示した画像35a,35b(画像35a,35bは突起16d,16eの反射画像を示している。)を得る。
【0022】
この画像35a,35bは、照射装置34から照射された光のうちの突起16d等の上端面の平面部に照射されたものとランナー12b等の表面に照射されたものはそのまま反射して照射装置34側に戻るのに対し、突起16d等の上端面と周面との間の傾斜面に照射された光は他の方向に散乱するため、この部分がリング状の影となって形成されるものである。これによって、撮像装置33による突起16d等の撮影および位置検出が可能になる。また、取付け部材31は、縦支軸31a、連結部31bおよび横支軸31cを備え、連結部31bが縦支軸31aに沿って上下移動可能で、横支軸31cが連結部31bに水平移動可能に取り付けられている。したがって、連結部31bおよび横支軸31cを移動させることにより画像処理装置32の位置調節ができる。
【0023】
また、下金型24bの近傍におけるテーブル22の上面前端側から前方に向って、射出成形品10を射出成形機側のコンベアからプレス装置20に搬送するための搬送装置36が延設されている。搬送装置36は、図5に示したように、XYθの3軸方向に移動可能な機構からなる搬送装置で構成されており、テーブル22から前方に延びるX軸レール37と、X軸レール37に沿ってX方向(図5の左右方向)に移動可能なY軸レール38とを備えている。そして、Y軸レール38には、Y軸レール38に沿ってY方向(図5の前後方向)に移動可能になっているとともに、中心軸を中心として回転可能になった回転軸部(図8参照)39が設けられている。
【0024】
すなわち、この搬送装置36は、図8に示すように、X軸レール37の上面における長手方向に沿った両縁部に係合溝37aが設けられて、この係合溝37aにY軸レール38を支持する移動支持部40がスライド可能に係合している。また、この移動支持部40の下面とX軸レール37の上面との間には、各種配線を収容するためのキャタピラー状の収容部41が位置しており、その一端がX軸レール37におけるテーブル22側の端部に固定され、他端がY軸レール38の上面におけるX軸レール37側の端部に固定されている。そして、移動支持部40の上面にはY軸レール38の端部側が固定されており、この移動支持部40は、図示せぬ駆動機構の駆動によって、X軸レール37に沿ってY軸レール38とともに移動する。
【0025】
また、Y軸レール38の上面には、移動取付け部42が設けられており、この移動取付け部42の中心部に回転軸部39が配設されその上端面が移動取付け部42の上面に露呈している。そして、移動取付け部42の上面における回転軸部39には、射出成形品10を取り付けるためのクランプ装置43(図3および図4参照)を設置するようになっており、そのクランプ装置43の中心部が射出成形品10の受け取り位置P2(図5参照)になっている。また、移動取付け部42は、Y軸レール38内に設けられた駆動機構の駆動によって、回転軸部39とともにY軸レール38に沿って移動するとともに、回転軸部39は移動取付け部42内に設けられた回転駆動機構の駆動によって、クランプ装置43とともに軸を中心に回転する。
【0026】
なお、クランプ装置43は、上部が射出成形品10におけるスプール11の下部側とランナー12a,12bの間に形成される凹部に嵌合できる形状に形成されている。したがって、射出成形品10はクランプ装置43に乗せられた状態で、移動支持部40、移動取付け部42および回転軸部39の駆動機構の駆動により、X軸レール37およびY軸レール38に沿って移動できるとともに、回転方向に回転可能になっている。
【0027】
また、射出成形機とプレス装置20との間に設けられたチェーンコンベアの下流端から搬送装置36のクランプ装置43までの射出成形品10の搬送は図示せぬロボットによって行われる。このロボットは、射出成形品10のスプール11を着脱自在に挟持できる把持部を備えており、この把持部でスプール11を把持して射出成形品10をチェーンコンベアの下流端からクランプ装置43まで搬送し、クランプ装置43の上方でスプール11を解放することにより、射出成形品10をクランプ装置43に渡す。なお、X軸レール37、Y軸レール38およびクランプ装置43等で本発明の搬送装置36が構成される。
【0028】
また、プレス装置20は、金型24によってプレス処理されたのちの製品部14a,14bを金型24から搬出するための搬出装置45と、搬出装置45が搬出した製品部14a,14bをそれぞれ搬出場所における別の部分に振り分けるための駆動シュート46も備えている。搬出装置45は、支持柱23の左側面に取り付けられた取付け部材47に支持され、金型24の近傍から水平方向に延びるレール部48と、レール部48に沿って移動可能な製品部搬出部49と、製品部搬出部49の下面における金型24側の端部に設けられた吸着パッド50とを備えている。そして、さらに、製品部搬出部49を左右に移動させるための駆動装置および吸着パッド50を吸引するための吸引装置(いずれも図示省略)とを備えて構成されている。
【0029】
駆動シュート46は、テーブル22の上面における左側部側に回転軸を斜めにして設けられたロータリーインデクス51と、ロータリーインデクス51の回転軸に回転自在に取り付けられ上端側部分が搬出装置45における吸着パッド50の搬送路の下方に位置し、下端部がテーブル22の下方に向った樋状のシュート52とで構成されている。シュート52は、図4に示すように、ロータリーインデクス51の駆動によりロータリーインデクス51の回転軸を中心に下部側が前後(図4では左右)に揺動する。このシュート52の下方には、製品部14a,14bの搬出場所である収容部が2箇所に区分されて配設されている。
【0030】
また、テーブル22における金型24の側部下方には、オーバーフロー15a,15bを落下させるための穴(図示せず)が設けられて、その下方に収容部が配置されている。さらに、X軸レール37における前側端部の近傍には、製品部14a,14bおよびオーバーフロー15a,15bと切り離されたスプール11、ランナー12a,12bおよびゲート13a,13bを収容するための収容部が設けられている。このスプール11、ランナー12a,12bおよびゲート13a,13bは、射出成形品10のプレス処理後、クランプ装置43によって元の位置まで搬送され、クランプ装置43に新たな射出成形品10を設置する際にロボットハンドで把持され所定の収容部に投入される。
【0031】
さらに、プレス装置20は、プレス装置20の各装置を制御するための制御装置53を備えており、この制御装置53は、CPU,ROM,RAM等を備えたマイクロコンピュータによって構成されている。制御装置53は、搬送装置36を制御して射出成形品10を受け取り位置P2から画像読み取り位置P1に搬送するとともに、画像読み取り位置P1で撮像装置33が撮影した画像に基づいて、製品部14a,14bの角度のずれや下金型24bの製品部設置部P0までの距離を演算処理によって求め、その演算値に基づいて射出成形品10を下金型24bに搬送する。さらに、この制御装置53は、金型24でプレス処理された射出成形品10の製品部14a,14bを搬出するための搬出装置45および駆動シュート46も制御する。
【0032】
このように構成されたプレス装置20を用いて、射出成形品10をプレス処理する場合は、予め、射出成形品10のモデルまたは標準的な良品による射出成形品10(以下、モデルと記す。)を用いて、射出成形品10の受け取り位置P2、画像読み取り位置P1および製品部設置部P0における基準点をそれぞれ決定しておく。なお、この基準点の決定および射出成形品10のプレス処理は、予め設けられ制御装置53のROMに記憶されたプログラムに従って行われる。
【0033】
まず、受け取り位置P2の決定は、移動支持部40、移動取付け部42および回転軸部39を移動させてクランプ装置43を、ロボットから射出成形品10を受け取る場所に位置させる。そして、モデルを、ロボットからクランプ装置43に移送してその位置におけるクランプ装置43の中心点を受け取り位置P2の基準点O2として制御装置53のRAMに入力する。ついで、クランプ装置43を移動させて、モデルの製品部14aまたは製品部14b(ここでは、製品部14bとする。)の部分を画像処理装置32の下方に位置させる。
【0034】
そして、その突起16d,16eを撮像装置33で撮影し、その画像35a,35b(図7参照)から突起16d,16eの中点aを求めその中点aを画像読み取り位置P1の基準点O1として入力する。また、その際、画像35aの中心点bと画像35bの中心点cとを結ぶ線dの標準座標軸Xに対する角度を求め、その角度を基準角θ1として入力する。つぎに、クランプ装置43を移動させて、モデルの製品部14bを下金型24bの製品部設置部P0に位置させる。そして、製品部14bが製品部設置部P0に設置されたときの突起16d,16eの中点aの位置を製品部設置部P0の基準点O0として入力する。これによって、モデルの基準点O2、製品部14bの基準点O1,O0および基準角θ1の決定が終了する。
【0035】
つぎに、クランプ装置43を画像読み取り位置P1の近傍まで移動させて、クランプ装置43を180度回転させることにより、製品部14aを画像読み取り位置P1に位置させる。そして、射出成形品10の突起16a,16b,16cを撮像装置33で撮影し、その画像から両端の突起16a,16cの中点を求めその中点を製品部14aにおける画像読み取り位置P1の基準点O1として入力する。また、突起16aと突起16cの画像の中心点を結ぶ線の標準座標軸Xに対する角度を求め、その角度を製品部14aの基準角θ1として入力する。
【0036】
そして、クランプ装置43を移動させて、モデルの製品部14aを下金型24bの製品部設置部P0に位置させ、製品部14aの基準点O0を決定する。これによって、製品部14aの基準点O1,O0および基準角θ1の決定が終了し、射出成形品10のモデルにおけるすべての基準点の決定が終了する。
【0037】
つぎに、射出成形機からコンベアによって送られてくる射出成形品10のプレス処理について説明する。このプレス処理は、まず、クランプ装置43を受け取り位置P2に移動させてその中心点を基準点O2に位置させる。ついで、ロボットが搬送してくる射出成形品10をクランプ装置43に受け取らせて、クランプ装置43を射出成形品10とともに、画像読み取り位置P1の近傍に移動させ、突起16d,16eを画像読み取り位置P1に位置させる。つぎに、撮像装置33で突起16d,16eを撮影してその画像35a,35bから突起16d,16eの中点と、突起16d,16eの中心点を結ぶ線の標準座標軸Xに対する角度を求める。
【0038】
ついで、制御装置53の演算処理によって、突起16d,16eの中点と製品部14bの基準点O1とのずれを求めるとともに、突起16d,16eの中心点を結ぶ線の標準座標軸Xに対する角度と製品部14bの基準角θ1とのずれ角を求める。そして、回転軸部39を回転させて、突起16d,16eの中心点を結ぶ線の標準座標軸Xに対する角度が製品部14bの基準角θ1になるようにし、さらに、その位置における突起16d,16eの中点から製品部14bにおける製品部設置部P0の基準点O0までの距離を演算処理によって求める。そして、その求めた演算値に基づいて移動支持部40および移動取付け部42を移動させて射出成形品10を下金型24b側に搬送し、製品部14bを製品部設置部P0に位置させる。
【0039】
この場合、突起16d,16eの中点は製品部14bの基準点O0と一致する。そして、駆動装置の駆動によって上金型24aが下降して、切断によって製品部14bは、ゲート13bおよびオーバーフロー15bと分離する。これにより、オーバーフロー15bは下方に落下して収容部に収容され、製品部14bは、搬出装置45および駆動シュート46によって収容部における一方の部分に搬出される。また、製品部14bとオーバーフロー15bが分離された射出成形品10の残りの部分は、クランプ装置43に取り付けられたまま画像読み取り位置P1の近傍に戻り、そこで回転軸部39を回転させることによりクランプ装置43とともに180度回転する。
【0040】
そして、製品部14aを画像読み取り位置P1側に位置させて、突起16a,16cの中点と、突起16a,16cの中心点を結ぶ線の標準座標軸Xに対する角度を求めたのち、前述した処理と同様の処理を行って、製品部14aとゲート13aの間および製品部14aとオーバーフロー15aとの間を切断する。これによって、オーバーフロー15aは下方に落下してオーバーフロー15bと同じ収容部に収容され、製品部14aは、ロータリーインデクス51の駆動によってシュート52が回転し収容部における他方の部分に製品部14bと振り分けられて搬出される。
【0041】
また、クランプ装置43に残ったスプール11、ランナー12a,12bおよびゲート13a,13bは、受け取り位置P2側に搬送されて、クランプ装置43が新たな射出成形品10を受け取る際に、ロボットによって把持され所定の収容部に投入される。なお、前述した説明においては、説明の便宜上、製品部14bの処理を行ったのちに、製品部14aの処理を行うようにしているが、この順序を逆にして、製品部14aの処理を行ったのちに製品部14bの処理を行うようにしてもよい。
【0042】
このように、このプレス装置20では、突起16a,16cまたは突起16d,16eを撮像装置33で撮影し、そのモデルの画像とプレス処理を行うすべての射出成形品10の画像とをそれぞれ比較して、角度および距離を補正したのちに下金型24bに射出成形品10を搬送するようになっている。したがって、すべての製品部14a,14bは製品部設置部P0に正確に設置され精度のよいプレス処理が行われる。また、突起16a〜16eがそれぞれランナー12a,12bにおける製品部14a,14bに近い部分に設けられているため、突起16a〜16eと製品部14a,14bの位置関係に変化が生じ難く、角度や距離の正確な補正が可能になる。
【0043】
なお、前記実施形態では、突起16a〜16eをそれぞれランナー12a,12bに設けているが、この突起を設ける部分はランナー12a,12bに限らず、ゲート13a,13b、製品部14a,14bおよびオーバーフロー15a,15bに設けることもできる。また、突起16a〜16eの形状は円柱状に限らず四角、三角、星形の突起等、他の種々の形状に代えることができ、突起16a〜16eに代えて凹部を設けることもできる。また、突起や凹部からなる被検出部の数や設置場所も適宜変更可能である。また、個数の違いによる区分判断を行うのではなく、形状の違いによる区分判断を行ったり、設置場所の違いによる区分判断を行ったりしてもよい。
【0044】
射出成形品10としては、マグネシウムを用いたものに限らず、他の金属や樹脂を用いたものでもよく、オーバーフローが含まれない射出成形品にも本発明は適用できる。また、1個の射出成形品10に含まれる製品部の数も2個に限らず、1個でもよいし、2個以上の複数個でもよい。また、製品部はスプールの周囲にスプールを囲うようにして設けるだけでなく、スプールから直線状のランナーを延設し、そのランナーの一方側または両側に所定間隔を保って設けるようにしてもよい。
【0045】
さらに、この発明にかかる処理装置は、プレス装置20に限らず、射出成形品10の表面を塗装するための塗装装置や、射出成形品10の表面を研磨するための研磨装置等、射出成形品10を正確に位置決めして処理する必要がある処理装置であればどのような装置にでも利用できる。この場合、金型24に代えて、射出成形品10を設置するための設置部と、塗装用のスプレーや研磨具等を設ける。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態による射出成形品を示す平面図である。
【図2】 図1に示した射出成形品の正面図である。
【図3】 本発明の一実施形態によるプレス装置を示す正面図である。
【図4】 図3に示したプレス装置の側面図である。
【図5】 プレス装置における基準点を説明するための概略平面図である。
【図6】 突起を撮影する画像処理装置の概略正面図である。
【図7】 画像処理装置が撮影する画像を示す説明図である。
【図8】 搬送装置を示す斜視図である。
【符号の説明】
10…射出成形品、11…スプール、12a,12b…ランナー、13a,13b…ゲート、14a,14b…製品部、15a,15b…オーバーフロー、16a,16b,16c,16d,16e…突起、20…プレス装置、24…金型、24a…上金型、24b…下金型、32…画像処理装置、35a,35b…画像、36…搬送装置、37…X軸レール、38…Y軸レール、39…回転軸部、43…クランプ装置、45…搬出装置、46…駆動シュート、P0…製品部設置部、P1…画像読み取り位置、P2…受け取り位置、O0,O1,O2…基準点、θ1…基準角。
Claims (4)
- 射出成形機によって射出成形され、前記射出成形機の金型におけるスプール形成部によって形成されるスプールと、前記スプールから延びるランナーと、製品となる製品部と、前記ランナーと前記製品部との間に形成されるゲートとを備えた射出成形品において、
前記ランナーおよび前記ゲートの少なくとも一方の表面に、前記製品部の位置ずれおよび角度のずれを検出するための複数の被検出部を設けたことを特徴とする射出成形品。 - 前記製品部の下流側端部にオーバーフローを形成し、前記オーバーフローに、前記製品部の位置ずれおよび角度のずれを検出するための複数の被検出部を設けた請求項1に記載の射出成形品
- 請求項1または2に記載の射出成形品に所定の処理を施すための処理部を備えた処理装置において、
前記射出成形品が設置される射出成形品設置部が設けられ、前記射出成形品設置部に設置された前記射出成形品を回転方向に変位させるとともに、左右方向および前後方向に搬送する搬送装置と、
前記処理部またはその近傍に設けられ、前記射出成形品における製品部を設置するための製品部設置部と、
前記搬送装置の搬送路近傍に設けられ、前記搬送装置によって搬送される射出成形品の複数の被検出部を撮影する画像処理装置と、
前記画像処理装置が撮影した複数の被検出部の画像から前記製品部の標準位置に対するずれ角度を求めそのずれ角度に基づいて前記搬送装置を制御して射出成形品を回転させ前記製品部のずれ角度を補正するとともに、前記画像処理装置が撮影した複数の被検出部の画像から前記製品部の位置と前記製品部設置部との間の距離を求め、その距離に基づいて前記搬送装置を制御して前記射出成形品を画像撮影位置から前記処理部に搬送して前記製品部を前記製品部設置部に位置させる制御装置と
を設けたことを特徴とする処理装置。 - ランナーと、複数の製品部と、前記ランナーと前記複数の製品部との間に形成されるゲートとを備え、前記複数の製品部に対応する前記ランナーおよび前記ゲートの少なくとも一方の部分に異なる被検出部が設けられた射出成形品をプレス処理することによって前記製品部を他の部分と分離する処理装置において、
前記射出成形品の被検出部を撮影する画像処理装置と、
プレス処理された射出成形品の製品部を搬出するための搬出装置と、
前記搬出装置が搬出した製品部を振り分ける駆動シュートと、
前記画像処理装置が撮影した被検出部の画像から前記製品部を同じ被検出部に対応するものごとに区分し、その区分に基づいて前記駆動シュートを制御して前記製品部を同じ被検出部に対応するものごとに振り分ける制御装置と
を設けたことを特徴とする処理装置。
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