JP3645706B2 - エンジンの燃料供給装置及び燃料供給方法 - Google Patents

エンジンの燃料供給装置及び燃料供給方法 Download PDF

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  • Electrical Control Of Air Or Fuel Supplied To Internal-Combustion Engine (AREA)
  • Combined Controls Of Internal Combustion Engines (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、燃料タンク内の燃料を電動式の燃料ポンプによりインジェクタへ圧送して噴射させ、エンジンへ供給するようにした燃料供給装置及び燃料供給方法に関する。詳しくは、ポンプに供給される駆動電流値を所要の目標値にフィードバック制御することにより、インジェクタに供給される燃料圧力を所要の目標値に制御するようにしたエンジンの燃料供給装置及び燃料供給方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、電動式の燃料ポンプにより燃料タンクからデリバリパイプへ燃料を圧送して複数のインジェクタに分配し、各インジェクタから燃料を噴射させることにより、エンジンに燃料を供給するようにした燃料供給装置がある。ここで、デリバリパイプに供給される燃料圧力を、プレッシャレギュレータにより一定値に調整し、その調整で余った燃料をリターンパイプを通じて燃料タンクへ戻すようにしたものがある。
【0003】
ところで、本来、インジェクタにおいて燃料噴射のために要求される燃料圧力は、エンジンの運転状態の違いにより異なるものである。これは、エンジンで要求される燃料の噴霧状態がエンジンの運転状態によって異なり、インジェクタから噴射される燃料の噴霧状態が燃料圧力の高低によって異なるからである。しかしながら、上記の装置では、インジェクタに供給される燃料圧力が常に一定値に保たれることになり、エンジンの運転状態に応じて適宜に変えることはできなかった。
【0004】
そこで、リターンパイプを廃止すると共に、インジェクタに供給される燃料圧力をエンジンの運転状態に応じて制御するようにしたリターンレス式の燃料供給装置が提案されている。特開平9−184460号公報は、リターンレス式の燃料供給装置の一例を開示している。この燃料供給装置は、直流電動モータを含む燃料ポンプと、そのポンプを駆動制御するための電子制御装置(ECU)とを備える。ECUは、モータに供給される駆動電流を所定値としてポンプを駆動させることにより、デリバリパイプに圧送される燃料圧力を所定値に調整し、その燃料をインジェクタから噴射させてエンジンに供給するようにしている。ここで、ECUは、モータに供給される駆動電流の値を検出し、その検出値が予め設定された目標値となるように、モータに供給される駆動電流をフィードバック制御している。これにより、燃料ポンプからの燃料の吐出量を調整して、デリバリパイプ及びインジェクタに供給される燃料圧力を所要の目標値に制御するようにしている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記特開平9−184460号公報の燃料供給装置では、インジェクタに供給される燃料圧力に対する変更要求が殆どないエンジンの定常運転時には、モータに供給される駆動電流が目標値にフィードバック制御され、燃料圧力が所要の目標値に制御されることになる。一方、エンジンの運転状態等が変わって、インジェクタの燃料圧力に対する要求が変わったときには、モータに対する駆動電流の目標値が算出し直され、その駆動電流が上記変更後の目標値になるようにフィードバック制御され、燃料圧力が変更されることになる。
【0006】
しかしながら、燃料ポンプでは、その動作に慣性力が伴うことから、モータに対する駆動電流が目標値に変更されようとしても、その駆動電流の変更が燃料ポンプの動作、延いては、実際の燃料圧力の挙動に反映されるまでに、応答遅れが生じる。即ち、燃料圧力を上昇させたり、降下させたりしようとして、駆動電流を目標値に制御しようとしても、それに応じて燃料圧力が即座に変わることはなく、燃料圧力は、ある時間だけ遅れて目標値に収束することになる。従って、インジェクタからの燃料の噴射状態を、エンジンの運転状態の変化に応じて即座に適合させることができず、エンジンのドライバビリティや排気エミッション等の関係で問題があった。
【0007】
この発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、燃料ポンプに供給される駆動電流をフィードバック制御することにより、インジェクタに供給される燃料圧力を所要の目標値に制御するようにした燃料供給装において、燃料圧力をある目標値から別の目標値へ変更させる場合の過渡時の応答性を高めることを可能にしたエンジンの燃料供給装置及び燃料供給方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、燃料タンク内の燃料を、電動式の燃料ポンプによりインジェクタへ圧送し、インジェクタから噴射させてエンジンへ供給するようにした燃料供給装置であって、インジェクタに供給される燃料圧力を、エンジンの運転状態として低負荷及び低回転速度となる領域、中負荷及び低中速回転速度となる領域、並びに高負荷及び中高速回転速度となる領域ごとに定まる目標燃料圧力値に制御するために、燃料ポンプに供給される駆動電流を所要の目標電流値にフィードバック制御するためのフィードバック制御手段と、目標燃料圧力値が変更されるとき、その変更後の目標燃料圧力値に対応して定められた変更後の目標電流値に基づいて駆動電流がフィードバック制御されるに先立ち、目標燃料圧力値が昇圧方向に変更される場合には駆動電流が目標電流値と所定の係数との乗算結果以上になるまでフル通電となるように制御し、目標燃料圧力値が降圧方向へ変更される場合には所定時間が経過するまで駆動電流が電流カットとなるように制御するための過渡時制御手段とを備えたことを趣旨とする。
【0009】
上記の構成によれば、フィードバック制御手段が、燃料ポンプに供給される駆動電流を目標電流値にフィードバック制御することにより、インジェクタに供給される燃料圧力が目標燃料圧力値に制御される。そして、インジェクタが動作することにより、圧力調整された燃料が、インジェクタから噴射され、エンジンへ供給される。
ここで、例えば、エンジンの運転状態が変わってインジェクタの燃料圧力に対する要求が変わり、低負荷及び低回転速度となる領域、中負荷及び低中速回転速度となる領域、並びに高負荷及び中高速回転速度となる領域ごとに定まる目標燃料圧力値が昇圧方向又は降圧方向へ変更されるとする。このとき、フィードバック制御手段は、変更後の目標燃料圧力値に対応した変更後の目標電流値に基づいて駆動電流をフィードバック制御するが、それに先立ち、過渡時制御手段は、目標燃料圧力値が昇圧方向に変更される場合には駆動電流が目標電流値と所定の係数との乗算結果以上になるまでフル通電となるように制御し、目標燃料圧力値が降圧方向へ変更される場合には所定時間が経過するまで駆動電流が電流カットとなるように駆動電流を制御することになる。
従って、インジェクタに対する燃料圧力が昇圧方向又は降圧方向へ変更されるときには、その変更方向に応じて、燃料ポンプが、一旦、過大又は過小に動作し、その後に燃料圧力が変更後の目標燃料圧力値に収束するように動作することになる。
【0010】
上記の目的を達成するために、請求項2に記載の発明は、燃料タンク内の燃料を、電動
式の燃料ポンプによりインジェクタへ圧送し、インジェクタから噴射させてエンジンへ供給するようにした燃料供給装置であって、インジェクタに供給される燃料圧力に係る目標燃料圧力値を、エンジンの運転状態として低負荷及び低回転速度となる領域、中負荷及び低中速回転速度となる領域、並びに高負荷及び中高速回転速度となる領域ごとに算出するための目標燃料圧力値算出手段と、燃料ポンプに供給される駆動電流に係る目標電流値を前記算出された目標燃料圧力値に基づいて算出するための目標電流値算出手段と、インジェクタに供給される燃料圧力を算出された目標燃料圧力値に制御するために、駆動電流を前記算出された目標電流値にフィードバック制御するためのフィードバック制御手段と、目標燃料圧力値が昇圧方向へ変更されるとき、その変更後の目標燃料圧力値に応じて算出された目標電流値に基づいて駆動電流がフィードバック制御されるに先立ち、その駆動電流が目標電流値と所定の係数との乗算結果以上になるまでフル通電となるように制御するための昇圧時制御手段と、目標燃料圧力値が降圧方向へ変更されるとき、その変更後の目標燃料圧力値に応じて算出された目標電流値に基づいて駆動電流がフィードバック制御されるに先立ち、所定時間が経過するまでその駆動電流が電流カットとなるように制御するための降圧時制御手段とを備えたことを趣旨とする。
【0011】
上記の構成によれば、請求項1の発明とは異なり、例えば、エンジンの運転状態が変わってインジェクタの燃料圧力に対する要求が変わり、低負荷及び低回転速度となる領域、中負荷及び低中速回転速度となる領域、並びに高負荷及び中高速回転速度となる領域ごと算出される目標燃料圧力値が昇圧方向へ変更されるとする。このとき、フィードバック制御手段は、変更後の目標燃料圧力値に対応した変更後の目標電流値に基づいて駆動電流をフィードバック制御するが、それに先立ち、昇圧時制御手段は、駆動電流が目標電流値と所定の係数との乗算結果以上になるまでフル通電となるように駆動電流を制御することになる。従って、インジェクタに対する燃料圧力が昇圧方向へ変更されるときには、それに応じて、燃料ポンプが、一旦、過大に動作し、その後に燃料圧力が変更後の目標燃料圧力値に収束するように動作することになる。
一方、所要の目標燃料圧力値が降圧方向へ変更されるときには、フィードバック制御手段は、変更後の目標電流値に基づいて駆動電流をフィードバック制御するが、それに先立ち、降圧時制御手段は、所定時間が経過するまで駆動電流が電流カットとなるように駆動電流を制御することになる。従って、インジェクタに対する燃料圧力が降圧方向へ変更されるときには、それに応じて、燃料ポンプが、一旦、過小に動作し、その後に燃料圧力が変更後の目標燃料圧力値に収束するように動作することになる。
【0012】
上記の目的を達成するために、請求項3に記載の発明は、燃料タンク内の燃料を、電動式の燃料ポンプによりインジェクタへ圧送し、インジェクタから噴射させてエンジンへ供給するようにした燃料供給方法であって、インジェクタに供給される燃料圧力に係る目標燃料圧力値を、エンジンの運転状態として低負荷及び低回転速度となる領域、中負荷及び低中速回転速度となる領域、並びに高負荷及び中高速回転速度となる領域ごとに算出する目標燃料圧力値算出工程と、燃料ポンプに供給される駆動電流に係る目標電流値を前記算出された目標燃料圧力値に基づいて算出する目標電流値算出工程と、目標燃料圧力値が昇圧方向へ変更されるとき、駆動電流が目標電流値と所定の係数との乗算結果以上になるまでフル通電となるように制御し、目標燃料圧力値が降圧方向へ変更されるとき、所定時間が経過するまで駆動電流が電流カットとなるように制御する過渡時制御工程と、駆動電流が過渡時制御工程によりフル通電又は電流カットとなるように制御された後、インジェクタに供給される燃料圧力が算出された目標燃料圧力値になるように、駆動電流を算出された目標電流値にフィードバック制御する電流フィードバック制御工程とを備えたことを趣旨とする。
【0013】
上記の構成によれば、目標燃料圧力値算出工程において、インジェクタに供給される燃料圧力に係る目標燃料圧力値がエンジンの運転状態として低負荷及び低回転速度となる領域、中負荷及び低中速回転速度となる領域、並びに高負荷及び中高速回転速度となる領域ごとに算出される。その後、目標電流値算出工程において、燃料ポンプに供給される駆動電流に係る目標電流値が、上記算出された目標燃料圧力値に基づいて算出される。そして、過渡時制御工程においては、目標燃料圧力値が昇圧方向へ変更されるとき、駆動電流が 目標電流値と所定の係数との乗算結果以上になるまでフル通電となるように制御され、目標燃料圧力値が降圧方向へ変更されるとき、所定時間が経過するまで駆動電流が電流カットとなるように制御される。更に、フィードバック制御工程においては、駆動電流が過渡時制御工程によりフル通電又は電流カットとなるように制御された後、燃料圧力が算出された目標燃料圧力値になるように、駆動電流が算出された目標電流値にフィードバック制御される。
従って、インジェクタに対する燃料圧力が変更されるときには、その変更方向に応じて、燃料ポンプが、一旦、過大又は過小に動作し、その後に燃料圧力が変更後の目標燃料圧力値に収束するように動作することになる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、この発明に係るエンジンの燃料供給装置及び燃料供給方法を具体化した一実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
図1は本実施の形態において、自動車に搭載されたエンジン1と、そのエンジン1に燃料を供給するための燃料供給装置を示す概念構成図である。このエンジン1は周知の構造を有する多気筒タイプのものである。エンジン1は、吸気通路2を通じて供給される燃料及び空気、即ち、可燃混合気を、各気筒の燃焼室で爆発・燃焼させ、その燃焼後の排気ガスを排気通路3を通じて排出させることにより、ピストン(図示しない)を駆動させてクランクシャフト4を回転させ、動力を得るものである。
【0016】
吸気通路2に設けられたスロットルバルブ7は、同通路2を流れて各燃焼室に吸入される空気量(吸気量)Qaを調節するために開閉されるものである。このバルブ7は、運転席に設けられたアクセルペダル8の操作に連動して駆動されるものである。スロットルバルブ7に対して設けられたスロットルセンサ9は、このバルブ7の開度(スロットル開度)TAを検出し、その検出結果に応じた電気信号を出力するものである。吸気通路2に設けられた吸気圧センサ30は、スロットルバルブ7より下流の吸気通路2における吸気圧力PMを検出し、その検出結果に応じた電気信号を出力するものである。
【0017】
各気筒に対応する吸気ポートに設けられた複数のインジェクタ10は、各気筒に対して燃料を噴射するためのものである。これらインジェクタ10は、共通するデリバリパイプ11に設けられる。デリバリパイプ11は、燃料タンク12から圧送される燃料を、各インジェクタ10へ分配するためのものである。
【0018】
各燃焼室に対応してエンジン1に設けられた複数の点火プラグ13は、ディストリビュータ14から分配される点火信号を受けて動作する。ディストリビュータ14は、イグナイタ15から出力される高電圧をクランクシャフト4の回転角度、即ちクランク角度の変化に同期して各点火プラグ13へ分配するものである。各点火プラグ13の動作時期、即ち点火時期は、イグナイタ15から出力される高電圧の出力タイミングにより決定される。従って、イグナイタ15を制御することにより、各点火プラグ13による点火時期が制御される。
【0019】
排気通路3に設けられた酸素センサ16は、各燃焼室から排気通路3へ排出される排気ガス中の酸素濃度Oxを検出し、その検出結果に応じた電気信号を出力するものである。
【0020】
クランクシャフト4に対して設けられた回転センサ17は、同シャフト4の回転速度、即ち、エンジン回転速度NEを検出し、その検出結果に応じた電気信号を出力するものである。エンジン1に設けられ水温センサ18は、エンジン1の内部を流れる冷却水の温度(冷却水温)THWを検出し、その検出結果に応じた電気信号を出力するものである。この冷却水温THWは、エンジン1の温度状態を示すものである。
【0021】
この実施の形態において、上記のスロットルセンサ9、酸素センサ16、回転センサ17、水温センサ18及び吸気圧センサ30等は、エンジン1の運転状態を検出するための運転状態検出手段を構成する。
【0022】
この実施の形態の燃料供給装置は、前述した各インジェクタ10、デリバリパイプ11
及び燃料タンク12等を含む。燃料タンク12はガソリン等の燃料を貯留するものである。燃料タンク12に内蔵された電動式の燃料ポンプ19は、同タンク12内の燃料を汲み上げ、吐出するものである。燃料ポンプ12の吐出ポート側に接続された燃料パイプ20は、燃料フィルタ21を介してデリバリパイプ11に接続される。ここで、燃料ポンプ19が動作することにより、燃料タンク12内の燃料は、同ポンプ19から燃料パイプ20へと吐出され、燃料フィルタ21で異物が除去された後、デリバリパイプ11へと圧送され、各インジェクタ10に分配される。各インジェクタ10に圧送された燃料は、それらインジェクタ10の動作に伴って吸気ポートへと噴射され、各燃焼室に供給される。
【0023】
本実施の形態の燃料供給装置では、従前の燃料供給装置においてインジェクタに供給される燃料圧力(燃圧)Pfを一定に保つために設けられたプレッシャーレギュレータ等が廃止される。その代わりに、本実施の形態の燃料供給装置では、燃料ポンプ19の動作を制御することにより、各インジェクタ10に供給される燃圧Pfを可変に制御するようにしている。
【0024】
ここで、燃料ポンプ19の構成を詳しく説明する。図2に示すように、この燃料ポンプ19は、インペラ式の電動式ポンプである。燃料ポンプ19は、円筒状のケーシング31と、そのケーシング31に内蔵された電動モータ32と、そのモータ32の出力軸32aにより回転されるインペラ33とを備える。ケーシング31は、インペラ33の周囲に対応したポンプ室34を有する。ケーシング31は、ポンプ室34に通じる吸入ポート35及び流出ポート36、並びに、燃料を吐出するための吐出ポート37を有する。図3に示すように、インペラ33は、その外周に複数の羽根33a及び羽根溝33bを有するものである。ここで、モータ32に駆動電流Idが供給されることにより、その出力軸32aが回転してインペラ33が回転される。このインペラ33の回転に伴う複数の羽根33a及び羽根溝33bの作用により、ポンプ室34に旋回流が形成される。この旋回流により、燃料タンク12内の燃料が吸入ポート35からポンプ室34に汲み上げられ、流出ポート36から流出してケーシング31の内部を流れた後、吐出ポート37から外部へ吐出される。
【0025】
ここで、燃料ポンプ19により制御される燃圧Pfは、モータ32の出力トルクに比例することが分かっている。一方、モータ32の出力トルクは、同モータ32に供給される駆動電流Idに比例することが分かっている。従って、燃料ポンプ19により制御される燃圧Pfは、同ポンプ19に供給される駆動電流Idに比例することになる。このことから、燃圧制御のために燃料ポンプ19(モータ32)に供給される駆動電流Idのフィードバック制御が成立することになる。
【0026】
この実施の形態で、電子制御装置(ECU)22は、前述したスロットルセンサ9、酸素センサ16、回転センサ17、水温センサ18及び吸気圧センサ30等から出力される各種信号を入力する。ECU22は、これらの入力信号に基づき、空燃比制御を含む燃料噴射制御、燃料供給制御及び点火時期制御等を実行するために、各インジェクタ10、イグナイタ15及び燃料ポンプ19(モータ32)をそれぞれ制御する。燃料ポンプ19に対応して設けられた電流検出回路23は、そのモータ32に実際に供給される駆動電流Idの値を検出し、その検出結果をECU22へ出力するものである。
【0027】
ここで、燃料噴射制御とは、エンジン1の運転状態に応じて各インジェクタ10から噴射される燃料量(燃料噴射量)及びその噴射タイミングを制御することである。空燃比制御とは、少なくとも酸素センサ16の検出値に基づいてエンジン1における空燃比をフィードバック制御することである。燃料供給制御とは、エンジン1の運転状態に応じて燃料ポンプ19を制御することにより、各インジェクタ10に対して供給される燃圧Pfを制御することである。点火時期制御とは、エンジン1の運転状態に応じてイグナイタ15を
制御することにより、各点火プラグ13による点火時期を制御することである。
【0028】
この実施の形態で、ECU22は、本発明のフィードバック制御手段、過渡時制御手段、昇圧時制御手段及び降圧時制御手段に相当する。このECU22は中央処理装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)及びバックアップRAM等よりなる周知の構成を備えたものである。ROMは、前述した各種制御に係る所定の制御プログラムを予め記憶している。ECU(CPU)22は、これらの制御プログラムに従って前述した各種制御を実行する。
【0029】
空燃比制御及び燃料噴射制御において、ECU22は、エンジン1の運転状態を反映した各種パラメータ、即ち吸気量Qa、スロットル開度TA、吸気圧力PM、酸素濃度Ox、エンジン回転速度NE及び冷却水温THW等に基づいて所要の燃料噴射量を算出する。ECU22は、その算出された燃料噴射量に基づいて各インジェクタ10を制御することにより、各気筒に対する燃料噴射量を制御する。ECU22は、この燃料噴射量の値を、インジェクタ10の開弁時間として算出する。これと同時に、燃料供給制御において、ECU22は、デリバリパイプ11を介して各インジェクタ10に供給される燃圧Pfをエンジン1の運転状態に応じて制御するために、燃料ポンプ19の動作を制御する。具体的には、ECU22は、燃料ポンプ19(モータ32)に供給される駆動電流Idを所要の目標電流値TIdにフィードバック制御する。即ち、ECU22は各インジェクタ10に供給される燃圧Pfが、エンジン1の運転状態に応じて算出される所要の目標燃圧値TPfとなるように制御する。そのために、ECU22は、燃料ポンプ19(モータ32)に供給される駆動電流Idに係る目標電流値TIdを算出し、電流検出回路23により実際に検出される駆動電流Idの値が算出された目標電流値TIdとなるように駆動電流Idをフィードバック制御する。
【0030】
次に、ECU22が実行する各種制御のうち、燃料供給制御の処理内容について説明する。図4は、燃料供給制御のプログラムの内容を示すフローチャートである。ECU22は、エンジン1の各気筒に対応した噴射タイミング毎に、このプログラムを起動させる。
【0031】
このプログラムを起動させると、ステップ100において、ECU22は回転センサ17及び吸気圧センサ30からの信号に基づいてエンジン回転速度NE及び吸気圧PiMの値をそれぞれ読み込む。
【0032】
ステップ110において、ECU22は、読み込まれたエンジン回転速度NE及び吸気圧PiMの値に基づいて目標燃圧値TPfを算出する。ECU22は、この算出を、図5にグラフで示すような関数データ(マップ)に基づいて行う。
【0033】
この関数データにおいて、目標燃圧値TPfはエンジン回転速度NEと、エンジン1の負荷状態を反映した吸気圧PiMとをパラメータとして予め定められる。この関数データでは、エンジン1の運転状態として低負荷及び低回転速度となる領域E1では、目標燃圧値TPfが最も低い「低圧」に設定される。この設定の狙いは、アイドルを含む低負荷運転時に、エンジン1で低燃費及び低騒音を図るものである。エンジン1の運転状態として中負荷及び低中回転速度となる領域E2では、目標燃圧値TPfが最も高い「高圧」に設定される。この設定の狙いは、排気モード中にインジェクタ10から噴射される燃料の噴霧微粒化を図り、これによって排気エミッション(例えば、炭化水素HC)を低減させることにある。エンジン1の運転状態として高負荷及び低中高回転速度、並びに中高負荷及び中高回転速度となる領域E3では、目標燃圧値TPfが中程度の「中圧」に設定される。この設定の狙いは、高負荷運転時にインジェクタ10から噴射される燃料の噴霧微粒化を図り、これによって排気温度を低下させることにある。
【0034】
ステップ120において、ECU22は、上記算出された目標燃圧値TPfに基づき、燃料ポンプ19(モータ32)に供給されるべき目標電流値TIdを算出する。ECU22は、目標燃圧値TPfと、目標電流値TIdとをパラメータとして予め定められた関数データ(図示しない)に基づき目標電流値TIdを算出する。この関数データにおいて、目標電流値TIdは目標燃圧値TPfに対して比例関係を有し、例えば、デューティ値として定められる。
【0035】
ステップ130において、ECU22は、燃圧Pfについて昇圧変更要求があったか否かを判断する。即ち、ECU22は、今回算出された目標燃圧値TPfが前回算出された目標燃圧値TPfよりも高くなったか否かを判断する。ここで、ECU22は、昇圧変更要求があった場合には、処理をステップ140へ移行し、昇圧変更要求がなかった場合には、処理をステップ160へ移行する。
【0036】
ステップ140において、ECU22は、フル通電制御を実行する。即ち、ECU22は、燃料ポンプ19(モータ32)に供給される駆動電流Idを、最大値(例えば、デューティ値であれば「100%」)に設定する。これと同時に、ECU22は、電流検出回路23により検出される実際の駆動電流Idの値を読み込む。
【0037】
ステップ150において、ECU22は、検出される駆動電流Idの値が、目標電流値TIdと所定の係数αとの乗算結果以上の値であるか否かを判断する。そして、上記の判断結果が否定である場合に、ECU22は、ステップ140,150の処理を再び実行する。上記の判断結果が肯定である場合に、ECU22は、処理をステップ190へ移行する。ここで、所定の係数αの値を、例えば「0.9」とすることができる。この場合には、駆動電流Idの値が目標電流値TIdの90%に達するのを待って処理がステップ190へ移行することになる。
【0038】
ステップ190において、ECU22は、駆動電流Idの値を目標電流値TIdへフィードバック制御する。即ち、ECU22は、電流検出回路23により検出される実際の駆動電流Idの値が目標電流値TIdに収束するように、その駆動電流Idの値を調整する。そして、このルーチンの処理を一旦終了する。
【0039】
一方、ステップ130において、昇圧変更要求がなかった場合に、ECU22は、ステップ160において、燃圧Pfについて降圧変更要求があったか否かを判断する。即ち、ECU22は、今回算出された目標燃圧値TPfが前回算出された目標燃圧値TPfよりも低くなったか否かを判断する。ここで、ECU22は、降圧変更要求があった場合には、処理をステップ170へ移行し、降圧変更要求がなかった場合には、処理をステップ190へ移行する。
【0040】
ステップ170において、ECU22は、電流カット制御を実行する。即ち、ECU22は、燃料ポンプ19(モータ32)に対する駆動電流Idの供給を遮断する(例えば、デューティ値であれば「0%」に設定する。)。これと同時に、ECU22は、通電カット後の経過時間を計測する。
【0041】
ステップ180において、ECU22は、通電カット後に所定時間(t1)が経過したか否かを判断する。そして、上記の判断結果が否定である場合に、ECU22は、ステップ170,180の処理を再び実行する。上記の判断結果が肯定である場合に、ECU22は、処理をステップ190へ移行する。ここで、所定時間t1の値を、例えば「10〜20ms」とすることができる。この場合には、通電カットされてから10〜20msが経過するのを待って処理がステップ190へ移行することになる。
【0042】
ステップ190において、ECU22は、駆動電流Idの値を目標電流値TIdへフィードバック制御して、このルーチンの処理を一旦終了する。
【0043】
上記の燃料供給制御によれば、図4に示すフローチャートの中で、本発明の目標燃料圧力値算出工程に該当するステップ100,110おいて、インジェクタ10に供給される燃圧Pfに係る目標燃圧値TPfがエンジン1の運転状態に基づいて算出される。その後、本発明の目標電流値算出工程に該当するステップ120おいて、燃料ポンプ19(モータ32)に供給される駆動電流Idに係る目標電流値TIdが、上記算出された目標燃圧値TPfに基づいて算出される。そして、インジェクタ10に供給される燃圧Pfに対して、昇圧変更及び降圧変更の要求が特になければ、ステップ190において、駆動電流Idはエンジン1の運転状態に応じた目標燃圧値TPfに相関する目標電流値TIdにフィードバック制御されることになる。
【0044】
これに対して、上記の燃圧Pfに昇圧変更又は降圧変更の要求があれば、本発明の過渡時制御工程に該当するステップ130〜180おいて、目標燃圧値TPfが変更されるとき、駆動電流Idが変更後の目標燃圧値TPfに応じて算出された目標電流値TIdよりも変更方向へ一時的に過分(過大又は過小)となるように制御される。即ち、この実施の形態では、燃料ポンプ19(モータ32)が一時的にフル通電又は通電カットされる。更に、本発明のフィードバック制御工程に該当するステップ190おいて、上記のように駆動電流Idが一時的に過大又は過小に制御された後、燃圧Pfが算出された目標燃圧値TPfになるように、駆動電流Idが算出された目標電流値TIdにフィードバック制御されることになる。
【0045】
以上説明したように、本実施の形態の燃料供給装置及び燃料供給方法によれば、ECU22が、燃料ポンプ19(モータ32)に供給される駆動電流Idを目標電流値TIdにフィードバック制御することにより、各インジェクタ10に供給される燃圧Pfがエンジン1の運転状態に適合した目標燃圧値TPfに制御される。そして、各インジェクタ10が動作することにより、圧力調整された燃料が、必要量だけ、各インジェクタ10から噴射され、エンジン1の各気筒へと供給される。
【0046】
ここで、図5に示すような領域E1〜E3の間でエンジン1の運転状態が変わって、各インジェクタ10の燃圧Pfに対する要求が変わり、所要の目標燃圧値TPfが変わったとする。このとき、ECU22が、変更後の目標燃圧値TPfに対応した目標電流値TIdを算出し、その変更後の目標電流値TIdに基づいて駆動電流Idをフィードバック制御するが、それに先立ち、ECU22が、駆動電流Idが変更後の目標電流値TIdよりも変更方向へ一時的に過分(過大又は過小)となるように駆動電流Idを制御するようにしている。
【0047】
即ち、今回算出された目標燃圧値TPfが前回のそれに比べて昇圧方向へ変更される場合には、ECU22は、駆動電流Idを目標電流値TIdに基づいてフィードバック制御するの先立ち、駆動電流Idが変更後の目標電流値TIdよりも一時的に過大(この実施の形態では「フル通電」)となるように、駆動電流Idを制御するようにしている。従って、各インジェクタ10に対する燃圧Pfが昇圧方向へ変更される場合には、それに応じて、燃料ポンプ19(モータ32)が、一旦、過大に動作し、その後に燃圧Pfが変更後の目標燃圧値TPfに収束するように動作する。
【0048】
一方、今回算出された目標燃圧値TPfが前回のそれに比べて降圧方向へ変更されるときには、ECU22は、駆動電流Idを目標電流値TIdに基づいてフィードバック制御するに先立ち、駆動電流Idが変更後の目標電流値TIdよりも一時的に過小(この実施の形態では「電流カット」)となるように、駆動電流Idを制御するようにしている。従
って、各インジェクタ10に対する燃圧Pfが降圧方向へ変更される場合には、それに応じて、燃料ポンプ19(モータ32)が、一旦、過小に動作し、その後に燃圧Pfが変更後の目標燃圧値TPfに収束するように動作する。
【0049】
このような作用により、燃圧Pfをある目標燃圧値TPfから別の目標燃圧値TPfへ変更させる場合の過渡時の応答性を高めることができるようになる。つまり、従来の装置では、燃料ポンプに対する駆動電流が目標値に変更されようとしても、その駆動電流の変更が燃料ポンプの動作により実際の燃圧の挙動に反映されるまでに、応答遅れが生じていた。これに対し、本実施の形態では、目標燃圧値TPfを変更させる際の実際の燃圧Pfの目標燃圧値TPfに対する追随性を高めることができるようになる。
【0050】
図6は目標燃圧値TPfを昇圧方向へ変更する際の駆動電流Id及び燃圧Pfの挙動を示すタイムチャートである。時刻T0において、目標燃圧値TPfが値TPf1から値TPf2へ変更されると、燃料ポンプ19(モータ32)に対する駆動電流Idが、一旦、フル通電にされ、その後、駆動電流Idが変更後の目標電流値TId2にフィードバック制御される。図6において、破線に示す従来例との比較からも明らかなように、本実施の形態によれば、実際の燃圧Pfが変更後の目標燃圧値TPf2へ即座に収束することになり、燃圧変更の応答性が高いことが分かる。一つの実験結果として、本実施の形態によれば、昇圧方向への燃圧変更の応答性として、従来例のそれに対する10倍の応答速度を得ることができた。
【0051】
図7は目標燃圧値TPfを降圧方向へ変更する際の駆動電流Id及び燃圧Pfの挙動を示すタイムチャートである。時刻T0において、目標燃圧値TPfが値TPf1から値TPf2へ変更されると、燃料ポンプ19(モータ32)に対する駆動電流Idが、一旦、所定の時間t1だけ通電カットされ、その後、駆動電流Idが変更後の目標電流値TId2にフィードバック制御される。図7において、破線に示す従来例との比較からも明らかなように、本実施の形態によれば、実際の燃圧Pfが変更後の目標燃圧値TPf2へ即座に収束することになり、燃圧変更の応答性が高いことが分かる。一つの実験結果として、本実施の形態によれば、降圧方向への燃圧変更の応答性として、従来例のそれに対する50倍の応答速度を得ることができた。
【0052】
本実施の形態によれば、上記のように燃圧変更の応答を高めることができることから、各インジェクタ10からの燃料の噴射状態を、エンジン1の運転状態の変化に応じて即座に適合させることができるようになる。この結果、エンジン1のドライバビリティや排気エミッション等の改善を図ることができるようになる。
【0053】
尚、この発明は次のような別の実施例に具体化することもできる。以下の別の実施例でも前記実施例と同等の作用及び効果を得ることができる。
【0054】
(1)前記実施の形態では、目標燃圧値TPfの変更要求がある場合に、昇圧方向への変更に対しては、駆動電流Idを目標電流値TIdにフィードバック制御するに先立ち、フル通電を行い、その逆に、降圧方向への変更に対しては、駆動電流Idを目標電流値TIdにフィードバック制御するに先立ち、通電カットを行うようにした。これに対し、上記のフル通電を、フル通電を100%とする80〜95%程度の通電にしたり、通電カットを、フル通電を100%とする5〜20%程度の通電にしたりしてもよい。
【0055】
(2)前記実施の形態では、目標燃圧値TPfを昇圧方向へ変更される場合に、駆動電流Idを目標電流値TIdにフィードバック制御するに先立ってフル通電を行う昇圧制御と、目標燃圧値TPfの降圧方向へ変更させる場合に、駆動電流Idを目標電流値TIdにフィードバック制御するに先立って通電カットを行う降圧制御の両方を燃料供給制御に
取り入れた。これに対して、前記昇圧制御又は前記降圧制御の何れか一方を燃料供給制御に取り入れるようにしてもよい。
【0056】
(3)本発明の燃料供給装置を、プレッシャレギュレータと、デリバリパイプから燃料タンクまで延びるリターンパイプ等を省略してなるリターンレス式の燃料供給装置に具体化することもできる。
【0057】
【発明の効果】
請求項1の発明の構成によれば、燃料ポンプに供給される駆動電流をフィードバック制御することにより、インジェクタに供給される燃圧を所要の目標燃圧値に制御するようにした燃料供給装置において、エンジンの運転状態として低負荷及び低回転速度となる領域、中負荷及び低中速回転速度となる領域、並びに高負荷及び中高速回転速度となる領域ごとに定まる目標燃圧値が変更されるとき、変更後の目標燃圧値に対応する目標電流値に基づき、駆動電流がフィードバック制御されるに先立ち、目標燃料圧力値が昇圧方向に変更される場合には駆動電流が目標電流値と所定の係数との乗算結果以上になるまでフル通電となるように制御し、目標燃料圧力値が降圧方向へ変更される場合には所定時間が経過するまで駆動電流が電流カットとなるように制御するようにしている。
従って、目標燃圧値の変更方向に応じて、燃料ポンプが、一旦、過分に動作し、その後に燃圧が変更後の目標燃圧値に収束するように燃料ポンプが動作することになる。この結果、燃圧をある目標燃圧値から別の目標燃圧値へ変更させる場合の過渡時の燃圧変化の応答性を高めることができるという効果を発揮する。
【0058】
請求項2の発明の構成によれば、燃料ポンプに供給される駆動電流をフィードバック制御することにより、インジェクタに供給される燃圧を所要の目標燃圧値に制御するようにした燃料供給装置において、エンジンの運転状態として低負荷及び低回転速度となる領域、中負荷及び低中速回転速度となる領域、並びに高負荷及び中高速回転速度となる領域ごとに算出される目標燃圧値が昇圧方向へ変更されるとき、変更後の目標燃圧値に対応する目標電流値に基づいて駆動電流がフィードバック制御されるに先立ち、その駆動電流が目標電流値と所定の係数との乗算結果以上になるまでフル通電となるように昇圧時制御手段が駆動電流を制御し、目標燃圧値が降圧方向へ変更されるとき、変更後の目標燃圧値に対応する目標電流値に基づいて駆動電流がフィードバック制御されるに先立ち、所定時間が経過するまでその駆動電流が電流カットとなるように降圧時制御手段が駆動電流を制御するようにしている。
従って、目標燃圧値が昇圧方向又は降圧方向へ変更されるに応じて、燃料ポンプが、一旦、過大又は過小に動作し、その後に燃圧が変更後の目標燃圧値に収束するように燃料ポンプが動作することになる。この結果、燃圧をある目標燃圧値から別の目標燃圧値へ変更させる場合の過渡時の燃圧変化の応答性を高めることができるという効果を発揮する。
【0059】
請求項3の発明の構成によれば、燃料ポンプに供給される駆動電流をフィードバック制御することにより、インジェクタに供給される燃圧を所要の目標燃圧値に制御するようにした燃料供給方法において、目標燃圧値がエンジンの運転状態として低負荷及び低回転速度となる領域、中負荷及び低中速回転速度となる領域、並びに高負荷及び中高速回転速度となる領域ごとに算出され、その算出された目標燃圧値に基づいて目標電流値が算出される。そして、目標燃圧値が変更されるときには、目標燃料圧力値が昇圧方向に変更される 場合には駆動電流が目標電流値と所定の係数との乗算結果以上になるまでフル通電となるように制御され、目標燃料圧力値が降圧方向へ変更される場合には所定時間が経過するまで駆動電流が電流カットとなるように制御され、その後に、駆動電流が算出されて目標電流値にフィードバック制御される。
従って、目標燃圧値の変更方向に応じて、燃料ポンプが、一旦、過分に動作し、その後に燃圧が変更後の目標燃圧値に収束するように燃料ポンプが動作することになる。この結果、燃圧をある目標燃圧値から別の目標燃圧値へ変更させる場合の過渡時の燃圧変化の応答性を高めることができるという効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 一実施の形態に係り、エンジンと燃料供給装置を示す概念構成図である。
【図2】 同じく、燃料ポンプの構造を示す縦断面図である。
【図3】 同じく、燃料ポンプの主要部の構造を示す横断面図である。
【図4】 同じく、燃料供給制御のプログラムの内容を示すフローチャートである。
【図5】 同じく、エンジン回転速度及び吸気圧に対する目標燃圧値の関数データを示すグラフである。
【図6】 同じく、目標燃圧値、駆動電流及び燃圧の挙動を示すタイムチャートである。
【図7】 同じく、目標燃圧値、駆動電流及び燃圧の挙動を示すタイムチャートである。
【符号の説明】
1 エンジン
10 インジェクタ
12 燃料タンク
19 燃料ポンプ
22 ECU(フィードバック制御手段、過渡時制御手段、目標燃料圧力値算出手段、目標電流値算出手段、昇圧時制御手段及び降圧時制御手段を構成する)

Claims (3)

  1. 燃料タンク内の燃料を、電動式の燃料ポンプによりインジェクタへ圧送し、前記インジェクタから噴射させてエンジンへ供給するようにした燃料供給装置であって、
    前記インジェクタに供給される燃料圧力を、前記エンジンの運転状態として低負荷及び低回転速度となる領域、中負荷及び低中速回転速度となる領域、並びに高負荷及び中高速回転速度となる領域ごとに定まる目標燃料圧力値に制御するために、前記燃料ポンプに供給される駆動電流を所要の目標電流値にフィードバック制御するためのフィードバック制御手段と、
    前記目標燃料圧力値が変更されるとき、その変更後の目標燃料圧力値に対応して定められた変更後の目標電流値に基づいて前記駆動電流がフィードバック制御されるに先立ち、前記目標燃料圧力値が昇圧方向に変更される場合には前記駆動電流が前記目標電流値と所定の係数との乗算結果以上になるまでフル通電となるように制御し、前記目標燃料圧力値が降圧方向へ変更される場合には所定時間が経過するまで前記駆動電流が電流カットとなるように制御するための過渡時制御手段と
    を備えたことを特徴とするエンジンの燃料供給装置。
  2. 燃料タンク内の燃料を、電動式の燃料ポンプによりインジェクタへ圧送し、前記インジェクタから噴射させてエンジンへ供給するようにした燃料供給装置であって、
    前記インジェクタに供給される燃料圧力に係る目標燃料圧力値を、前記エンジンの運転状態として低負荷及び低回転速度となる領域、中負荷及び低中速回転速度となる領域、並びに高負荷及び中高速回転速度となる領域ごとに算出するための目標燃料圧力値算出手段と、
    前記燃料ポンプに供給される駆動電流に係る目標電流値を前記算出された目標燃料圧力値に基づいて算出するための目標電流値算出手段と、
    前記インジェクタに供給される燃料圧力を前記算出された目標燃料圧力値に制御するために、前記駆動電流を前記算出された目標電流値にフィードバック制御するためのフィードバック制御手段と、
    前記目標燃料圧力値が昇圧方向へ変更されるとき、その変更後の目標燃料圧力値に応じて算出された目標電流値に基づいて前記駆動電流がフィードバック制御されるに先立ち、その駆動電流が前記目標電流値と所定の係数との乗算結果以上になるまでフル通電となるように制御するための昇圧時制御手段と、
    前記目標燃料圧力値が降圧方向へ変更されるとき、その変更後の目標燃料圧力値に応じて算出された目標電流値に基づいて前記駆動電流がフィードバック制御されるに先立ち、所定時間が経過するまでその駆動電流が電流カットとなるように制御するための降圧時制御手段と
    を備えたことを特徴とするエンジンの燃料制御装置。
  3. 燃料タンク内の燃料を、電動式の燃料ポンプによりインジェクタへ圧送し、前記インジェクタから噴射させてエンジンへ供給するようにした燃料供給方法であって、
    前記インジェクタに供給される燃料圧力に係る目標燃料圧力値を、前記エンジンの運転状態として低負荷及び低回転速度となる領域、中負荷及び低中速回転速度となる領域、並びに高負荷及び中高速回転速度となる領域ごとに算出する目標燃料圧力値算出工程と、
    前記燃料ポンプに供給される駆動電流に係る目標電流値を前記算出された目標燃料圧力値に基づいて算出する目標電流値算出工程と、
    前記目標燃料圧力値が昇圧方向へ変更されるとき、前記駆動電流が前記目標電流値と所定の係数との乗算結果以上になるまでフル通電となるように制御し、前記目標燃料圧力値が降圧方向へ変更されるとき、所定時間が経過するまで前記駆動電流が電流カットとなるように制御する過渡時制御工程と、
    前記駆動電流が前記過渡時制御工程によりフル通電又は電流カットとなるように制御された後、前記インジェクタに供給される燃料圧力が前記算出された目標燃料圧力値になるように、前記駆動電流を前記算出された目標電流値にフィードバック制御する電流フィードバック制御工程と
    を備えたことを特徴とするエンジンの燃料供給方法。
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