JP3645597B2 - 内視鏡湾曲管とその製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、内視鏡の先端部に設けた湾曲部に内装される、複数の節輪を回動自在に連結してなる内視鏡湾曲管の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
内視鏡湾曲管を構成する節輪の内周面には、内視鏡の湾曲部を湾曲操作するための操作ワイヤを挿通するワイヤ受けが設けられており、従来、特開昭60−102607号公報および特開平5−3852号公報に開示されている。
【0003】
特開昭60−102607号公報にあっては、図8の節輪の断面図に示すように、節輪2の内周面に、その内周方向におけるワイヤ受け1の規定位置に円筒形状のワイヤ受け1を固定した後、ワイヤ受け1と節輪2の内周面の接触部位にレーザ光を照射し、図9の節輪2の正面図に示すように、ワイヤ受け1を節輪2の内周面に一体的に固着してある。そして、内視鏡湾曲管は、ワイヤ受け1を接合した節輪2同士を、節輪2に設けた連結部3の穴3aと他の節輪2の連結部4の穴4bとを位置合わせしつつ両穴3a,4aに連結具を挿入して連結することにより、連結具を中心として相対的に回動可能なように構成されている。そして、ワイヤ受け1の穴部1aに操作ワイヤを挿通して組立て、この操作ワイヤを内視鏡の操作部で操作して所望の湾曲操作を行うようになっている。
【0004】
上記したように、ワイヤ受け1と節輪2の接触部位にレーザ光を照射すると、図10に示すように、節輪2の外周面から入ったレーザ光がワイヤ受け1の節輪2内周面と接している部位を溶融した後、溶融部5が一体的に凝固して、ワイヤ受け1と節輪2とが一体的に固着される。
【0005】
特開平5−3852号公報にあっては、図11に示すように、節輪2の内周面に接合するワイヤ受け15は、ほぼ半円筒状をした薄肉の操作ワイヤ挿通部15aと操作ワイヤ挿通部15aに一体形成した一対の足部15bとからなり、足部15bの厚さは操作ワイヤ挿通部15aの厚さよりも大きく形成されている。そして、一対の足部15bの端面をそれぞれ節輪2の内周面の規定位置に接触させて、ワイヤ受け15を配置した後、レーザ光を接触部位に照射して節輪2の内周面にワイヤ受け15を接合している。
【0006】
足部15bと節輪2の接触部位に、節輪2の外周面から入ったレーザ光が足部15bを溶融するようにレーザ出力を調整してレーザ光を照射すると、足部15bが操作ワイヤ挿通部15aと比較して厚いため操作ワイヤ挿通部15aに熱影響を与えることなく、溶融部5によりワイヤ受け15と節輪2とが一体的に固着される。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記特開昭60−102607号公報にあっては、ワイヤ受け1と節輪2の接触部位が線であるため、溶接部5の強度が不十分であるという問題があった。また、溶接部5の強度を向上させるために接触部位に照射するレーザ光のスポット径を大きくする手段が考えられるが、スポット径を大きくすると、図12に示すように、ワイヤ受け1取付側の節輪2の端面に切り欠き16が発生し、湾曲管を覆うブレードを傷つける恐れがあった。
【0008】
また、特開平5−3852号公報にあっては、ワイヤ受け15と節輪2とを一体的にレーザ等により溶着する際に、ワイヤ受け15に生じる溶融部5と溶融していない部分との境界が位置する断面積が、ワイヤ受け15の操作ワイヤ挿通部15aの断面積より大きくなる形状をもつワイヤ受け15を用いると、ワイヤ受け15の形状が点対称でないため、ワイヤ受け15を節輪2の内周面に固定する際の位置決めに高い精度が要求されたり、ワイヤ受け15を製作する際の加工コストが割高であったりした。
【0009】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、レーザ光を照射してワイヤ受けを節輪の内周面に固着する際に、安価でかつ節輪に対して位置決めが容易にできるワイヤ受けを使用し、節輪の端面に切り欠きを発生させない強固な溶接部を有する内視鏡湾曲管を製造することができる製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、内視鏡の湾曲部に内装される節輪の内周面にワイヤ受けを一体的に固着してなる内視鏡湾曲管の製造方法において、節輪の外周側から、節輪とワイヤ受けの接触部位及びその周辺の非接触部位に対して、節輪の円周方向溶接幅を大きくし軸方向溶接幅を小さくする状態でレーザ光を照射し、前記ワイヤ受けと前記節輪とを、接触部位の溶融凝固と、非接触部位に形成される余盛部の溶融凝固との双方からなる溶接部により一体的に固着することを特徴とするものである。
【0014】
【作用】
請求項1記載の発明にあっては、節輪の外周側からワイヤ受けと節輪の内周面の接触部位だけでなく、接触部位周辺の非接触部位にもレーザ光を照射することにより、溶けた節輪の一部がワイヤ受けの外周面と節輪の内周面との隙間にできるノッチに入り込んで固まることでノッチを無くし、余盛部が形成されて、節輪とワイヤ受けとを強固に接合した内視鏡湾曲管を製造することができる。この場合、節輪の円周方向溶接幅を大きくし軸方向溶接幅を小さくする状態でレーザ光を照射することで、溶接部の強度が向上され、かつ節輪の端面における切り欠きの発生を無くすことができる。
【0016】
請求項4記載の発明にあっては、内視鏡の湾曲部に内装される節輪の内周面にワイヤ受けを一体的に固着してなる内視鏡湾曲管において、前記節輪の内周面の一部と前記ワイヤ受けの外周面の一部とを溶かすことで接合される溶接部に余盛部を形成したものであるから、請求項1記載の発明と同様、接触部位が溶接されていることに加え、余盛部の溶融凝固により節輪の内周面とワイヤ受けの外周面との隙間にできるノッチを無くすことができ、節輪とワイヤ受けとを強固に接合した内視鏡湾曲管を提供できる。
請求項5記載の発明にあっては、前記節輪の内周面の一部と前記ワイヤ受けの外周面の一部とを固着する際、節輪にレーザ光を照射することにより、前記節輪の内周面の一部と前記ワイヤ受けの外周面の一部とを溶かすことで接合される溶接部に余盛部を形成させてワイヤ受けを節輪に固着するものであるから、請求項2記載の発明と同様、溶けた節輪の一部がワイヤ受けの外周面と節輪の内周面との隙間にできるノッチに入り込んで固まることでノッチを無くし、余盛部が形成されて、節輪とワイヤ受けとを強固に接合した内視鏡湾曲管を製造することができる。
請求項6記載の発明にあっては、請求項2記載の内視鏡湾曲管の製造方法において、前記レーザ光は、前記節輪と前記ワイヤ受けとの接触部位だけでなく、接触部位の周囲にも照射するものであることから、接触部位が溶接されていることに加え、余盛部の溶融凝固により節輪の内周面とワイヤ受けの外周面との隙間にできるノッチを無くすことができ、節輪とワイヤ受けとを強固に接合することができる。
【0017】
【実施例1】
図1〜図4に本発明の実施例1を示す。図1はワイヤ受けを2つ取り付けた節輪を示す正面図、図2(a)はワイヤ受けと節輪の溶接後の溶接部を示す部分拡大正面図、図2(b)はワイヤ受けと節輪の溶接前の溶接部を示す部分拡大正面図、図3はワイヤ受けを2つ取り付けた節輪を示す中央縦断面図、図4は節輪とワイヤ受けにレーザ光を照射する際のレーザ光照射位置を示す概略図であり、以下、図1〜図4を用いて実施例1を説明する。
【0018】
節輪2は、円筒形状からなる短管部の両端面に各節輪2同士を接続する一対の連結部3,4が短管の軸方向に沿ってそれぞれ突設されて構成されている。節輪2の1端面に設けた一対の連結部3は周方向に180°の間隔をおいて配置されるとともに、節輪2の外周径よりも外側に形成されている。一方、他端面の一対の連結部4は周方向に180°の間隔でかつ上記一対の連結部3に対し90°ずれた位置に配置されるとともに、節輪2の外周径よりも内側に形成されている。各連結部3,4にはリベット等の連結具を挿入するための穴3a,4aが形成されており、連結部3の穴3aと連結部4の穴4aを合わせ、各穴3a,4aに連結具を挿入して節輪2同士を連結することで、内視鏡湾曲管を構成する複数の節輪2同士が回動可能に連結される。
【0019】
ワイヤ受け1は薄肉円筒形状に形成され、その内径は内視鏡の湾曲部を湾曲動作させるための操作ワイヤが挿通可能な大きさに形成されている。このワイヤ受け1は、その外周面が節輪2の内周面に接合されて節輪2に固着される。図1および図3では、1個の節輪2に固着するワイヤ受け1の数が2個の場合を示しているが、1個の節輪2に1個または3個以上のワイヤ受け1を固着してもよい。
【0020】
ワイヤ受け1と節輪2を接合する場合は、ワイヤ受け1の外周面と節輪2の内周面を当接させ、例えば節輪2に対してワイヤ受け1を図1に示す位置関係で動かないように、図示を省略した治具を用いて固定した後、ワイヤ受け1と節輪2内周面の接触部位および該接触部位周辺の接触していない部位にレーザ光を節輪2の外周側から照射して、ワイヤ受け1と節輪2を固着する。このとき、レーザ光の照射は3点とし、1点は接触部位の中央、他の2点は中央から左右に0.3〜0.6mmずつずらした位置に行う。
【0021】
本実施例によれば、図2(a)に示すように、節輪2の外周側からワイヤ受け1と節輪2の接触部位および該接触部位周辺の接触していない部位にレーザ光を照射すると、溶接部5の溶接に加えて、溶けた節輪2の一部がワイヤ受け1の外周面と節輪2の内周面の隙間にできるノッチ6(図2(b)参照)に入り込んでノッチ6を無くし、余盛部7を形成した状態で再び溶融部分が凝固する。ワイヤ受け1と節輪2の接合部に余盛部7が形成されると、ワイヤ受け1と節輪2の溶接部5が大きくなり、ワイヤ受け1が軸方向または接線方向に力を受けた際に、溶接部5に生じる応力が分散されて溶接部強度が向上される。
【0022】
例えば、肉厚0.4mm、外周径11.6mmの節輪2と、外径1.9mm、内径1.0mm、幅1.0mmのワイヤ受け1との接合を、YAGレーザ光を用いて行った場合、レーザ条件を出力10〜12J、パルス幅6〜12msecとし、図4に示すように、溶接点数を3点とし、1点は節輪2とワイヤ受け1との接触部位中央、他の2点は接触部位中央から左右に0.5mmずつずらしてレーザ光を照射して溶接すると、ワイヤ受け1に対する軸方向の引張強度は16〜20kgf程度が得られた。
【0023】
したがって、本実施例によれば、節輪2とワイヤ受け1の接合部に余盛部7を形成して節輪2とワイヤ受け1を固着すると、従来技術と比較して溶接強度を確実に向上させることができる。
【0024】
【実施例2】
図5〜図7に本発明の実施例2を示す。図5は節輪の外周面に照射するレーザ光の形状を成形する方法を示す概念図、図6は節輪に照射するレーザ光の形状を示す説明図、図7は節輪に取り付けるワイヤ受けの取付位置を示す断面説明図で以下、図5〜図7を用いて実施例2を説明する。
【0025】
本実施例は、節輪2の外周面に照射するレーザ光の形状を成形して節輪2とワイヤ受け1を溶接するもので、アウトプットハウジング8と節輪2の外周面の間に長方形の孔9aを有するマスク9を配置し、アウトプットハウジング8から節輪2の外周面に照射されるレーザ光10がマスク9の孔9aを通過することで、レーザ光が所望する形状に成形されるようになっている。アウトプットハウジング8はレーザ光10を照射するための装置で、図示を省略したレーザ装置本体とファイバ11によってつながれている。
【0026】
実施例1と同様に、ワイヤ受け1と節輪2とを図示を省略した治具を用いて規定の位置に固定し、アウトプットハウジング8からレーザ光10を照射すると、マスク9の孔9aを通過したレーザ光10は孔9aの形状に成形され、ワイヤ受け1を固定した節輪2の外周面に照射される。このとき、出力を高くし、節輪2の円周方向溶接幅12をワイヤ受け1の長さより大きくなるようにマスク9の孔9aにより成形したレーザ光10を節輪2の外周面に照射すると、溶接部5の溶接に加えて、ワイヤ受け1と節輪2の接触部位の周辺にレーザ光による熱が伝わり、溶けた節輪2の一部がノッチ6(図2(b)参照)に入り込んでノッチ6を無くし、溶接部5に余盛部7(図2(a)参照)を形成した状態で溶融部分が凝固する。このように、本実施例では、実施例1と異なり、レーザ光10の照射点数を1点で済ますことができる。
【0027】
内視鏡の湾曲部を構成する内視鏡湾曲管には様々な種類があるが、これらは一つ一つ湾曲部の湾曲動作の可動域が異なっている。この湾曲部の可動域はワイヤ取付位置、すなわち節輪2の回動中心となる連結部4の穴4a中心とワイヤ受け1の端面との距離(以下、ワイヤ取付距離という)14によって決定されるので、品種が異なるとワイヤ受け取付距離14がそれぞれ異なる。そのため、ワイヤ受け1を節輪2の端面に近付いた位置に固着する必要があるときには、図12に示すように、節輪2の端面に切り欠き16が発生する場合があるが、本実施例では、ワイヤ受け1が節輪2の端面に近付いた場合でも、マスク9の孔9aによって節輪2の外周面に照射するレーザ光10を成形し、節輪2の軸方向溶接幅13を小さくし、円周方向溶接幅12を大きくすれば、ワイヤ受け1に対するレーザ光10の溶け込み深さが深くなって溶接部5の強度が向上され、かつレーザ光10によって節輪2の端面に切り欠き16を発生させることがなくなる。
【0028】
上記マスク9の孔9aの形状は、任意に設定することができ、製品によって最適な形状を選択することができる。すなわち、本実施例では、マスク9によりレーザ光10を成形して、節輪2の円周方向溶接幅12を大きくし軸方向溶接幅13を小さくした場合を例示したが、円周方向溶接幅12と軸方向溶接幅13の両方を小さくし、レーザ光10のエネルギ密度を一定にしてワイヤ受け1と節輪2を固着してもよい。この場合、実施例1と同様に、レーザ照射点数を複数点にして余盛部7を形成することができる。
以上説明したように、各実施の形態によれば、ワイヤ受けの形状が点対称であるので、加工コストが安く原価低減を図ることができる。また、節輪に対するワイヤ受けの高精度な組付精度が必要でないため、組立工程におけるタクトタイムを短縮することができる。さらに、溶接部に余盛部を形成して節輪とワイヤ受けを固着したので、溶接部強度が向上され、内視鏡を操作中に溶接部が破壊する危険性を減少させることができる。そして、余盛部を形成してワイヤ受けと節輪を固着することにより、レーザ光のスポット径を大きくして節輪とワイヤ受けとの溶接部の強度を向上させる必要がなくなる、このため、レーザ光のスポット径を大きくした際に節輪の端面に生じ易い切り欠きの発生がなくなるので、切り欠きによって湾曲管を覆うブレードを破損させることが無くなる。
【0029】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1記載の発明によれば、節輪の外周側からのレーザ光照射により、ノッチが無く、余盛部が形成され、節輪とワイヤ受けとを強固に接合でき、また、節輪の端面における切り欠きの発生を無くすことができる内視鏡湾曲管の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1のワイヤ受けを2個取付けた節輪を示す正面図である。
【図2】本発明の実施例1におけるワイヤ受けと節輪の溶接部を示し、図2(a)は溶接後の溶接部を示す部分拡大正面図、図2(b)は溶接前の溶接部を示す部分拡大図である。
【図3】本発明の実施例1のワイヤ受けを2個取付けた節輪を示す中央縦断面図である。
【図4】本発明の実施例1の節輪とワイヤ受けを固着する際のレーザ光を照射する位置を示す概略図である。
【図5】本発明の実施例2の節輪の外周面に照射するレーザ光の形状を成形する方法を示す説明図である。
【図6】本発明の実施例2の節輪の外周面に照射するレーザ光の形状を示す説明図である。
【図7】本発明の実施例2のワイヤ取付位置を示す断面説明図である。
【図8】従来技術の節輪を示す中央縦断面図である。
【図9】従来技術の節輪を示す正面図である。
【図10】従来技術のワイヤ受けと節輪の溶接部を示す部分拡大図である。
【図11】従来技術のワイヤ受けと節輪の溶接部を示す部分拡大図である。
【図12】ワイヤ受けと節輪の溶接時に発生する切り欠きを示す説明図である。
【符号の説明】
1 ワイヤ受け
1a ワイヤ受けの穴部
2 節輪
5 溶接部
7 余盛部
8 アウトプットハウジング
9 マスク
9a 孔
10 レーザ光
Claims (1)
- 内視鏡の湾曲部に内装される節輪の内周面にワイヤ受けを一体的に固着してなる内視鏡湾曲管の製造方法において、
節輪の外周側から、節輪とワイヤ受けの接触部位及びその周辺の非接触部位に対して、節輪の円周方向溶接幅を大きくし軸方向溶接幅を小さくする状態でレーザ光を照射し、前記ワイヤ受けと前記節輪とを、接触部位の溶融凝固と、非接触部位に形成される余盛部の溶融凝固との双方からなる溶接部により一体的に固着することを特徴とする内視鏡湾曲管の製造方法。
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JP28466794A JP3645597B2 (ja) | 1994-11-18 | 1994-11-18 | 内視鏡湾曲管とその製造方法 |
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