JP3644524B2 - 観音開き式扉装置付き家具 - Google Patents

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徳幸 大藤
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、観音開き式扉装置を備えているキャビネット等の家具に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
2枚の扉を水平回動自在に設けた観音開き式の扉装置には、図16(A) に示すように、両扉A,B が閉じた状態でその自由端A1,B1 が前後方向に重なり合うように構成したものと、図16(B) に示すように、両扉A,B を互いに干渉することなく開閉できるようにしたものとがある。このうち前者のように扉A,B の自由端を互いに重ね合わせたタイプの扉装置では、自由端B1が外側に位置する扉Bのみに対応した1つのラッチ装置を設け、後者のように両扉をフリーにしたタイプの扉装置では、両方の扉A,B に対応してそれぞれラッチ装置を設けている。
【0003】
ラッチ装置については様々な構造のものがあるが、一般的には、扉の上下両端のうちいずれか一方又は両方に、キャビネット等の本体に向けて延びる鉤型のラッチ爪を水平回動自在に設ける一方、本体には、前記ラッチ爪が係脱する係合穴を形成し、ラッチ爪を、前記係合穴に係合する方向にばねで付勢することにより、扉を閉じるいわゆる蹴り込み係合によってラッチ爪が係合穴に自動的に係合するように構成し、更に、扉に、ラッチ爪を係合穴から離脱する方向に回動させるための引手又はハンドルを設けた構造になっていることが多い。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
左右の扉にラッチ装置を設けた場合、従来は2つのラッチ装置を互いに関連なく取り付けているに過ぎないため、左右扉を開くに当たっては両方の扉の引手やハンドルに指を掛けて回動操作しなければならず、このため扉の開き操作が面倒であった。
【0005】
本発明は、この問題を解消することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、家具本体の開口部に、当該開口部を塞ぐための左右一対の水平回動式の扉が、閉じた状態で互いの自由端が前後に重ならないようにして取付けられており、左右扉の各々の上端又は下端若しくは上下両端にそれぞれラッチ爪を設ける一方、前記家具本体のうち左右扉のラッチ爪と対応した部位には、扉が閉じ回動すると前記ラッチ爪が係合して扉を閉じ状態に保持する係合部が左右扉のラッチ爪に対応して一対設けられており、更に、左右両扉に、前記ラッチ爪を係合部から離脱させるための操作手段が設けられており、左右の扉を後先なく任意に開閉できる家具に関する。
そして、前記家具本体に、一方の扉のラッチ爪を前記操作手段にて係合部から離脱させると他方の扉のラッチ爪を係合部から係合解除させる第1係合部材と、他方の扉のラッチ爪を前記操作手段にて係合部から係合解除させると一方の扉のラッチ爪を係合部から係合解除させる第2係合部材とが、家具本体の正面視で前後に重なり合った状態で左右スライド自在に配置されており、両係合部材は、そのスライド動により、ラッチ爪が係合部に係合した状態に保持される係合保持位置とラッチ爪が係合部から離脱し得る係合解除位置とに移動し、かつ、両係合部材は、両方の扉を閉じた状態では共に係合保持位置に移動するように連動している。
【0007】
【発明の奏する効果】
このように構成すると、一方の扉の引手やハンドル等の操作手段を操作して当該一方の扉を開くと、他方の扉に対するラッチ手段におけるラッチ爪と係合部との係合が解除されるから、他方の扉は、引手やハンドル等の操作手段をいちいち操作しなくても、扉の自由端に指を掛ける等して手前に引くだけで開くことができる。すなわち、両方の扉を開く場合にその操作が簡単になる。
【0008】
しかも、一方の扉だけを開いた状態でその扉を閉じると、他方の扉におけるラッチ装置のラッチ爪と係合部とが係合された状態になる。すなわち、一方の扉だけを開く場合、他方の扉は閉じた状態のままに保持され、しかも、開いていた一方の扉を閉じると両方の扉に対するラッチ手段のラッチ爪と係合部とが係合して、両方の扉とも閉じた状態に保持される。
【0009】
従って本発明によると、両扉を閉じた状態に保持するラッチ機能を損なうことなく、両方の扉を開く場合の手間を軽減することができる。
特に請求項3のように構成すると、構造が簡単になると共に、一方の扉を開くことによって他方のラッチ手段を係合解除する機能が確実ならしめられる利点があり、より好適である(詳細は実施形態の欄において説明する)。
【0010】
【発明の実施形態】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
(1). 第 1実施形態(図1〜図6)
図1〜図6は第1実施形態を示しており、このうち図1は本願発明を適用したキャビネット1の外観斜視図である。キャビネット1は、前面を開口した本体2とその開口部に蝶番(図示せず)を介して取付けた左右一対の観音開き式扉3,4 とを備えている。
【0011】
左右扉3,4 は薄金属板によって中空状に形成されており、両扉3,4 の自由端寄り部位の内部には、扉3,4 の上下中途高さ位置からほぼ上端まで延びるラッチ杆5が水平回転自在に支持されている。更に、両扉3,4 の自由端寄り部位の中途高さ位置には、前記ラッチ杆5を回転操作するための操作手段の一例としての引手6を内蔵している。引手6は回動式に構成しても良いしスライド式に構成しても良い。また、引手に代えてハンドルや撮みを設けても良い。
【0012】
次に、図2〜図6に基づいてラッチ機構の主要部を説明する。図2は図1の一部省略した状態での II-II視平断面図、図3は要部の分離斜視図、図4(A)は要部の分離斜視図、図4(B)はかまち部2aの部分斜視図、図5のうち (A)は要部の一部破断正面図、 (B)は図2の VA-VA視断面図、 (C)は図2のVC−VC視断面図、図6は作用を示す図である。
【0013】
図2,3 等に示すように、両扉3,4 の上端部内面には、本体2の方向に向いた鉤型のラッチ爪7を回動自在に取付けている。ラッチ爪7は前記ラッチ杆5の上端に固定されており、平面視で先窄まりとなるように鉤部7aの側面を傾斜面7bに形成している。
一方、本体2のうち扉3,4 の上端部と対向した中空状のかまち部2aの内部に、係合部を有する第1及び第2の係合部材の一例として、左右一対のラッチプレート8,9 を左右動自在に配置し、この左右ラッチプレート8,9 の先端部に対して、かまち部2aに形成した窓穴2bを介してラッチ爪7をそれぞれ係脱させるようにしている。以下、詳述する。
【0014】
前記両ラッチプレート8,9 は金属板製(合成樹脂製でも良い)であり、例えば図3に示すように、ラッチ爪7が前方から嵌まる前向き開口の箱状に形成した枠部10と、枠部10の一側に連接した重合板部11と、枠部10の他側に連接した張出し部12とから成っている。両方のラッチプレート8,9 の重合板部11は互いに重なった状態でかまち部2aの前面に沿って延びるように設定しており、また、張出し部12は、かまち部2aの内面に密着するように設定している。枠部10は外側板13を備えている。
【0015】
左ラッチプレート8の重合板部11のうちその先端部11aを除いた基部11bは、下方に大きく切り開かれることによって細幅状に形成されており、また、先端部11aは、基部11bよりも前方にずれるように段違いになっている。他方、右ラッチプレート9の重合板部11は左ラッチプレート8と対称状に形成されており、その基部11bは上方に向けて大きく切り開かれて細巾状になっている。
【0016】
左右ラッチプレート8,9 は、図4に示すように、左右ラッチプレート8,9 の重合板部11を互いに噛み合わせた状態で前後に重なり合っており、一方のラッチプレート8,9 における重合板部11の先端部11aが、他方のラッチプレート8,9 における枠部10に部分的に重なるように設定している。また、図4(A)や図5(A)に示すように、左右ラッチプレート8,9 における重合板部11の間に左右長手の長溝穴14が形成されている。左右ラッチプレート8,9 は重なり合った状態で互いにスライド自在である。
【0017】
ラッチプレート8,9 における両重合板部11の最先端11cは他方のラッチプレート8,9 に向けて傾斜している。また、両ラッチプレート8,9 の滑りを円滑に行うため、重合板部11の先端部11aの付け根箇所には折曲片11dを形成している。
左右ラッチプレート8,9 における張出し部12の先端は平面視でく字状に折り曲げており、この折曲片12aの付け根当たりの箇所に、請求項2に記載した係止手段の一環を成す角形等の係止穴15を形成する一方、本体2のかまち部2aの内面には、同じく係止手段の一環として、ラッチプレート8,9 が互いに離反する方向にスライドしたときに前記係止穴15が嵌まり込んでラッチプレート8,9 を戻らない状態に保持するようにした係止爪16を切り起こし形成している。ラッチプレート8,9 の張出し部12をかまち部2aの内面から若干離反させると、係止穴15と係止爪16とが離脱するように設定している。
【0018】
なお、ラッチプレート8,9 の張出し部12に係止爪16を形成して、かまち部2aの内面に係止穴15を形成するなどしても良い。
例えば図5(A)(B) に示すように、本体2のかまち部2aには、両ラッチプレート8,9 の枠部10が嵌まり込む前向き開口のケース17を装着している。両ラッチプレート8,9 はケース17の内面にガイドされて左右方向にスライドし得る。図3や図4等に示すように、両ラッチプレート8,9 の枠部10とケース17の左右内側面との間には、各々ラッチプレート8,9 を付勢するばね18を配置している。
【0019】
前記ケース17の開口部のうち左右中央部には第1ガイド体19を嵌め込み装着しており、この第1ガイド体19の前面に形成した横長の凸条20を、両ラッチプレート8,9 によって形成された長溝穴14に嵌め込んでいる。長溝穴14と凸条20とはほぼ同じ長さに設定している。また、ラッチプレート8,9 の重合板部11の付け根箇所11eを凸条20の端面20aに当てることにより、ラッチプレート8,9 の前進位置を規制している。
【0020】
両ラッチプレート8,9 の前方には、側面視後ろ向き開口コ字状の合成樹脂製の第2ガイド体21を配置している。この第2ガイド体21は正面視で第1ガイド体19と重なる大きさであり、図5(B)(C) に示すように、第1ガイド体19に嵌め込み装着されている。また、図3に示すように、第2ガイド体21の裏面には、第1ガイド体19の凸条20と重なり合う細巾で縦長のスペーサ部22を形成している。
【0021】
更に、第2ガイド体21の裏側には、その裏面から若干の間隔を開けた状態で上下長手の板片23を連接しており、第2ガイド21の裏面と板片23との間にラッチプレート8,9 の先端部11aを挿入している。これは、ラッチプレート8,9 がガタ付きなくスライドするようにするためである。図3に示すように、第2ガイド体21のうち前記板片23の箇所には、正面視で板片23と重複する透孔24が空いているが、これは、第2ガイド体21を合成樹脂の射出成形によって製造するに際して、板片23を金型の抜き違いによって形成することによって生じたものである。
【0022】
図2に示すように、両ラッチプレート8,9 はばね18によって付勢されており、この状態で、左ラッチプレート8の先端部11aに対して右扉4のラッチ爪7が係合し、右ラッチプレート9の先端部11aに対して左扉3のラッチ爪7が係合している。また、左ラッチプレート8における枠部10の外側板13に左扉3のラッチ爪7が近接し、右ラッチプレート9における枠部10の外側板13に右扉4のラッチ爪7が近接している。
【0023】
図6(A)は扉3,4 を開ける状態を示しており、例えば右扉4の引手6を操作してラッチ爪7を回動させると右ラッチプレート9がばね18に抗して右方向にスライドし、これにより、右扉4のラッチ爪7と左ラッチプレート8との係合が解除されると共に、右ラッチプレート9が右方向に後退動することにより、左扉3のラッチ爪7と右ラッチプレート9との係合が解除される。更に、図6(B)に示すように、右ラッチプレート9の係止穴15がかまち部2aの係止爪16に嵌まり係合して、右ラッチプレート9はその後退位置に保持される。
【0024】
この状態では、左扉3は一々引手6を回動操作しなくても、その自由端に手を当てて手前に引くだけで開けることができる。また、右扉4の引手6を回動操作しただけでは左扉3は全く開かず、左扉3は人が手を触れないと閉じられた状態のままに保持される。従って、片方の扉3,4 だけを開いたに過ぎない場合は、その開いた扉3,4 だけを閉じ操作すれば良く、他方の扉3,4 には手を触れる必要はない。
【0025】
右扉4のみを開けてから閉じる場合は、右扉4を閉じると、右扉4のラッチ爪7の傾斜面7bが左ラッチプレート8における重合板部11の最先端に当たる。すると、図6(C)に示すように、ラッチ爪7の傾斜面7bのガイド作用により、左ラッチプレート8はばね18に抗して一旦後退してから、ラッチ爪7を挿入し切るのと同時にばね18によって前進することになり、この蹴り込み作用により、右扉4のラッチ爪7と左ラッチプレート8とが係合して、右扉4は閉じた状態に保持される。
【0026】
そして、右扉4を閉じ切る過程で、ラッチ爪7が左ラッチプレート8における重合板部11の最先端11aに当たると、右ラッチプレート9の枠部10が左ラッチプレート8における重合板部11の先端部11aによって奥方向に押される。また、左ラッチプレート8が左方向にある程度スライドすると、ラッチ爪7の傾斜面7bが右ラッチプレート9における枠部10の内側面に直接に当たり、これによっても右ラッチプレート9の枠部10は奥方向に押される。
【0027】
このように、右扉4の閉じ回動過程で右ラッチプレート9の枠部10がラッチ爪7によって直接に又は間接的に押圧されるため、右扉4を閉じ切る過程で、図6(C)(D) に示すように、右ラッチプレート9における張出し部12の係止穴15がかまち部2aの係止爪16から離脱する。すると、右ラッチプレート9はばね18によって前進動し、これにより、左扉3のラッチ爪7に対して右ラッチプレート9が係合して左扉3は閉じた状態に保持される。すなわち、左扉3が閉じた状態のままであっても、右扉4を閉じることに連動して、左扉3もラッチが効いた状態に戻る。
【0028】
左右の扉3,4 を開いた場合には、左右のラッチプレート8,9 ともその係止穴15が係止爪16に嵌まり込んで、両ラッチプレート8,9 は後退位置に保持される。そして、右扉4を閉じると、上記したように、右扉4のラッチ爪7によって右ラッチプレート9が係止爪16から離脱して前進する一方、左扉3を閉じると、左扉3のラッチ爪7によって左ラッチプレート8が係止爪16から離脱して前進し、これにより、両ラッチプレート8,9 ともラッチ爪7と係合し得る。
【0029】
なお、扉3,4 を閉じるに際してラッチプレート8,9 は一旦後退するが、この場合の後退寸法よりも、引手6を操作してラッチ爪7を回動させる再のラッチプレート8,9 の後退寸法の方が大きくなるように設定している。これは、扉3,4 を閉じるに際しての蹴り込み作用によってラッチプレート8,9 が後退して係止穴15が係止爪16に嵌まり込むことを防止するためである。
【0030】
本実施形態のように係止手段を設ける場合、その具体的形態は係止爪と係止穴との組み合わせには限らない。
(2).第2実施形態(図7〜図15)
次に、請求項3に対応した第2実施形態を図7〜図15に基づいて説明する。図7(A)は本発明を適用したキャビネット1の斜視図である。このキャビネット1は、例えば高さ1m程度の高さの他の家具Fの上に載せて使用するタイプであり、このため、両扉3,4 の下端部に引手6を設けている。
【0031】
図7(B)は右扉4のラッチ機構の概略斜視図であり、この図に代表して示すように、この実施形態では、引手6は、水平状の回動軸を中心に前後回動するように構成されており、引手6の回動軸に下向きの当接部6aを設ける一方、ラッチ杆5に、前記引手6の当接部6aの前方に延びる水平部5aを横向きに突設している。従って、引手6を手前に引くとラッチ杆5が水平回転する。
【0032】
詳しくは後述するが、扉3,4 の上下両端部の内部に、一対のガイド体25,26 を介してラッチ爪7を左右水平スライド自在に装着し、このラッチ爪7を、ラッチ杆5に取付けたアーム部材27にて左右スライドさせるように構成している。
図8は図7(A)のVIII−VIII視断面図であり、この図に示すように、ラッチ杆5は、ばね28により、引手6を奥方向に押すような方向(換言すると、ラッチ爪7を扉3,4 の自由端の方向に押す方向)に付勢している。なお、ラッチ杆5を一方方向に付勢するばね28に加えて、ラッチ爪7を一方方向に付勢するための別のばね設けても良い。
【0033】
この実施形態の扉3,4 は木製であり、裏に金属板製等の裏板を張り付けている。右扉4には錠29を設けている。
次に、図9〜図12に基づいて、ラッチ機構の要部を説明する。図9及び図10は要部の分離斜視図、図11は左右扉3,4 を本体2から離反させた状態での図7(A)の平断面図、図12は図11の XII-XII視断面図である。
【0034】
例えば図9に示すように、ラッチ爪7は、扉3,4 の裏面に沿って延びる基部7aと、該基部7aから突出した爪部7bとで平面視で略L字状に形成されており、基部7aを、第1ガイド体25に形成した凹所30にスライド自在に嵌め入れ、第1ガイド体30に第2ガイド体26を重ね合わせている。
第2ガイド体26の左右端面に門形の鉤体31を突設する一方、第1ガイド体25の端面に、前記鉤体31に対応した爪32を設け、鉤体31を弾性に抗して爪32に嵌め込むことにより、両ガイド体25,26 を密着した状態に保持している。また、両ガイド体25,26 は、図示しない保持手段により、扉3,4 の凹所内に脱落不能に固定されている。
【0035】
ラッチ爪7の基部7aには、左右長手のガイド凸条33が上下に突設されている一方、両ガイド体25,26 には、前記ガイド凸条33が摺動自在に嵌まる長穴34が形成されている。
両ガイド体25,26 にはラッチ杆5と同心状の丸穴34' が空いており、両ガイド体25,26 の丸穴34' に、アーム部材27の基部27aを回転自在に嵌め込み、アーム部材27に突設したピン27aを、ラッチ爪7の爪部7bに形成した前後長手のピン穴35に嵌め入れている。アーム部材27の基部27aは、ラッチ杆5に対して回転不能に被嵌している。すなわち、アーム部材27とラッチ杆5とは一体に回転する。
【0036】
ラッチ爪7のうち基部7aと爪部7bとの連接部は、アーム部材27の基部27aと干渉しないようように平面視円弧状に切り欠かれている(この円弧状の切欠き部をを符号36で示す)。また、ラッチ爪7における爪部7bの下面は、アーム部材27が嵌まり込むように切り欠かれている(下面の切欠き部を符号37で示す)。
前記したようにラッチ杆5とばね28によって一方方向に付勢されているため、扉3,4 に引手6に外力が作用していない状態では、ラッチ爪7は、扉3,4 の自由端に向けて移動した前進姿勢に保持されており、引手6を引くと、ラッチ杆5及びアーム部材27を介してラッチ爪7は後退する。
【0037】
なお、ラッチ爪7の具体的形態やガイド手段は図示のものには限らず、様々の形態に具体化できる。
第1実施形態と同様に、本体2のうち扉3,4 の上端部と対向した中空状のかまち部2aの内部には、一対のプレート8,9 を左右動自在に配置し、この左右ラッチプレート8,9 の先端部に対して、かまち部2aに形成した窓穴2bを介してラッチ爪7をそれぞれ係脱させるようにしている。
【0038】
前記両ラッチプレート8,9 は第1実施形態とほぼ同じ形態であり、例えば図10に示すように、ラッチ爪7が前方から嵌まるよう前向き開口の箱状に形成された枠部10と、枠部10の一側に連接した重合板部11とを備えている。両方のラッチプレート8,9 の重合板部11は互いに重なった状態でかまち部2aの前面に沿って延びるように設定している。
【0039】
左ラッチプレート8,9 における重合板部11のうちその先端部11aを除いた基部11bは、下方に大きく切り開かれることによって細幅状に形成されており、また、先端部11aは、基部11bよりも前方にずれるように段違いになっている。他方、右ラッチプレート9の重合板部11は左ラッチプレート8と対称状に形成されており、その基部11bは上方に向けて大きく切り開かれて細巾状になっている。
【0040】
図9から容易に推測できるように、左右ラッチプレート8,9 は、重合板部11を互いに噛み合わせた状態で前後に重なり合っており、一方のラッチプレート8,9 における重合板部11の先端部11aが、他方のラッチプレート8,9 における枠部10に部分的に重なるように設定している。また、図12に示すように、左右ラッチプレート8,9 における重合板部11は上下に離反している。左右ラッチプレート8,9 は重なり合った状態で左右水平方向に自在にスライドし得る。
【0041】
ラッチプレート8,9 における両重合板部11の最先端11cは他方のラッチプレート8,9 に向けて傾斜している。また、重合板部11の先端部11aの付け根箇所には折曲片11dを形成している。
図9,10や図12に示すように、両ラッチプレート8,9 は、その背面に位置した支持部材38と前面に位置したとキャップ部材39とによってサンドイッチ状に挟まれている。支持部材38の上下両端には左右一対ずつの門形の係止体40が前向きに突設されている一方、キャップ部材39の上下両面には、前記鉤体40に対応した一対ずつの爪41を突設しており、図9や図12に示すように、鉤体40を爪41に係合させることにより、支持部材38にキャップ部材39を離脱不能に装着している。
【0042】
また、図12に示すように、支持部材38から後ろ向き突設した支持片42を、本体2における天板の下面に設けた補強フレーム43の下面にねじ44で固着しており、これにより、支持部材38とキャップ部材39とを本体2のかまち部2a内に装着している。例えば図9に示すように、本体2のかまち部2aには、ラッチ爪7が嵌脱する窓穴2bが空いている。
【0043】
なお、支持部材38やキャップ部材39は図示の形態には限らず、必要に応じて種々の形態に具体化できる。
図12に示すように、支持部材38の前面に形成した左右長手の凸条20の上下に、ラッチプレート8,9 における重合板部11の基部11bが振り分けて配置されており、両ラッチプレート8,9 は、支持部材38とキャップ部材39とにガイドされて、任意に左右スライドし得る。ラッチプレート8,9 における重合板部11の付け根箇所11eが凸条20の端面20aに当たることにより、ラッチプレート8,9 の前進位置が規制される。
【0044】
キャップ部材39の裏面には、支持部材38の凸条20と重なり合う細巾で縦長のスペーサ部22を形成している。更に、例えば図11に示すように、キャップ部材39の裏側には、その裏面から若干の間隔を開けた状態で上下長手の板片23を連接している。
図11に示すように、両ラッチプレート8,9 を前進させた状態では、一方のラッチプレート8,9 における重合板部11bの先端が他方のラッチプレート8,9 の枠部10を部分的に塞いでおり、従って、この状態では、図11に一点鎖線で示すように、両ラッチ爪7は、ラッチプレート8,9 によって抜け不能に保持されている。また、ラッチ爪7はばね28によって前進方向に付勢されており、ラッチプレート8,9 がラッチ爪7に係合した状態が保持される。
【0045】
次に、図13〜図15に基づいてラッチ機構の作動について説明する。
両方の扉3,4 を閉じた状態から右扉4の引手6を引くと、図13(A) に示すように、右扉4のラッチ爪7がスライドして左ラッチプレート8との係合が解除されると共に、右ラッチプレート9が右方向に後退動することにより、左扉3のラッチ爪7と右ラッチプレート9との係合が解除される。従って、図13(B) のように右扉4を開けたら、左扉3は、一々引手6を操作しなくても、自由端などの適当な箇所に指を当てて手前に引くだけで開けることができる。
【0046】
図13(B) の状態では左ラッチプレート8は前進したままであるため、左扉3を開くことなく右扉4を閉じた場合は、右扉4のラッチ爪7が左ラッチプレート8の重合板部11の先端に対していわゆる蹴り込み係合すると共に、右ラッチプレート9を前進させて、図11の状態に戻る。すなわち、片方の扉3,4 だけを開いたに過ぎない場合は、その開いた扉3,4 だけを閉じ操作すれば両方の扉3,4 にラッチが掛かり、他方の扉3,4 には手を触れる必要はない。
【0047】
図14(A) では、図13の状態から左扉3も開いた状態を示している。この状態では両ラッチプレート8,9 は図13と同じ状態のままである。この上端から例えば右扉4を先に閉じると、左ラッチプレート8は前進したままであるため、図14(B) に示すように、右扉4のラッチ爪7が左ラッチプレート8の重合板部11に対していわゆる蹴り込み係合すると共に、右ラッチプレート9が前進する。従って、左扉3を閉じると、左扉3のラッチ爪7は、右ラッチプレート9の重合板部11に対していわゆる蹴り込み係合すると共に、左ラッチプレート8を前進させて、図15(A) のような状態になる。
【0048】
なお、両方の扉3,4 の引手6を引いた場合には、図15(B) に示すように、両方のラッチプレート8,9 が後退した状態になる。この状態で例えば右扉4を閉じると、右ラッチプレート9が前進することにより、左扉3のラッチ爪7が右ラッチプレート9に対して蹴り込み係合する状態になる。そして、左扉3を閉じると、左ラッチプレート8が前進して右扉4のラッチ爪7に対して係合する。従って、いずれにしても、両方の扉3,4 を閉じると図15(A) のように、両扉3,4 を閉じたらら、当該両扉3,4 は、引手6を引かない限り開かない状態(ラッチが効いた状態)に保持される。
【0049】
ところで、第1実施形態のようにラッチプレート8,9 をばね18で前進方向に付勢すると共に、係止爪16と係止穴15との嵌め合いによってラッチプレート8,9 を後退位置に保持する構成の場合、ラッチ爪7の回動と係止爪16及び係止穴15の嵌まり合いとのタイミングが微妙な場合があり、このため、ラッチ爪7はラッチプレート8,9 から離脱して一方の扉3,4 が開いても、係止爪16と係止穴15とは嵌まり合わずに元の前進状態に戻ってしまい、その結果、他方の扉3,4 のラッチ爪7がラッチプレート8,9 に係合した状態になってしまう虞がある。すなわち、一方の扉3,4 の引手6の操作だけで両方の扉3,4 のラッチを解除する機能が不十分になる可能性がある。
【0050】
特に、ラッチ爪7が回動式であると、ラッチ爪7とラッチプレート8,9 との滑りやラッチ爪7の踊り現象などにより、ラッチプレート8,9 のスライド距離が一定しない傾向を呈するため、上記の問題がより懸念される。
これに対して第2実施形態のように構成すると、各ラッチプレート8,9 はラッチ爪7によって移動させられた位置に保持されることにより、前進したラッチプレート8,9 が不測に戻るような現象は起きないため、上記の問題は生じない。特に、ラッチ爪7をスライド式にすると、ラッチ爪7とラッチプレート8,9 との間の滑りや踊り現象は生じないため、ラッチプレート8,9 を必要な距離だけ確実にスライドさせることができ、換言すると、ラッチプレート8,9 のスライド量を一定させることができ、従って、一方の扉3,4 の引手6を操作するだけで両方のラッチ手段を解除する機能をより確実ならしめることができ、好適である。
【0051】
また、地震等によってキャビネット1に振動が作用した場合、ラッチ爪7が回動式であると、ラッチ爪7にモーメントが作用して回動してしまい、扉3,4 が開いてしまうことがあるが、ラッチ爪7がスライド式であると、キャビネット1に振動が作用してもラッチ爪7にモーメントが作用することはなく、ラッチ爪7はスライドしにくいため、地震等によってラッチが不測に解除された扉3,4 が開いてしまうことを防止できる利点もある。
(3).その他
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は更に種々の形態に変更することができる。例えばラッチ爪は鉤型には限らない(ラッチ爪の作動形態の変更に伴って係合部の形態も変わってくる)。また、ラッチ爪を本体に設けて、係合部を扉に設けても良いし、第1実施形態のラッチ爪をスライド式に構成しても良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態を適用したキャビネットの斜視図である。
【図2】図1のII−II視平断面図である。
【図3】要部の分離斜視図である。
【図4】 (A)は要部の分離斜視図、 (B)はかまち部の部分斜視図である。
【図5】 (A)は要部の一部破断正面図、 (B)は図2のVA−VA視断面図、 (C)は図2のVC−VC視断面図である。
【図6】作用を示す図である。
【図7】 (A)は第2実施形態を適用したキャビネットの斜視図、 (B)はラッチ機構の概略斜視図である。
【図8】図7(A)のVIII−VIII視概略断面図である。
【図9】要部の分離斜視図である。
【図10】要部の分離斜視図である。
【図11】扉を開けた状態での図7のXI−XI視断面図である。
【図12】図11の XII-XII視断面図である。
【図13】作用を示す図である。
【図14】作用を示す図である。
【図15】作用を示す図である。
【図16】扉装置のタイプを示す概略図である。
【符号の説明】
1 キャビネット
2 本体
3,4 扉
6 引手
7 ラッチ爪
8,9 係合部材の一例としてのラッチプレート
10 枠部
11 重合板部
12 張出し部
15 係止手段としての係止穴
16 係止手段としての係止爪
18 ばね
25,26 ガイド体
27 アーム部材
38 支持部材
39 キャップ部材

Claims (3)

  1. 家具本体の開口部に、当該開口部を塞ぐための左右一対の水平回動式の扉が、閉じた状態で互いの自由端が前後に重ならないようにして取付けられており、左右扉の各々の上端又は下端若しくは上下両端にそれぞれラッチ爪を設ける一方、前記家具本体のうち左右扉のラッチ爪と対応した部位には、扉が閉じ回動すると前記ラッチ爪が係合して扉を閉じ状態に保持する係合部が左右扉のラッチ爪に対応して一対設けられており、更に、左右両扉に、前記ラッチ爪を係合部から離脱させるための操作手段が設けられており、左右の扉を後先なく任意に開閉できる家具であって、
    前記家具本体に、一方の扉のラッチ爪を前記操作手段にて係合部から離脱させると他方の扉のラッチ爪を係合部から係合解除させる第1係合部材と、他方の扉のラッチ爪を前記操作手段にて係合部から係合解除させると一方の扉のラッチ爪を係合部から係合解除させる第2係合部材とが、家具本体の正面視で前後に重なり合った状態で左右スライド自在に配置されており、両係合部材は、そのスライド動により、ラッチ爪が係合部に係合した状態に保持される係合保持位置とラッチ爪が係合部から離脱し得る係合解除位置とに移動し、かつ、両係合部材は、両方の扉を閉じた状態では共に係合保持位置に移動するように連動している、
    観音開き式扉装置付き家具
  2. 記左右両扉に、水平回動式のラッチ爪と、このラッチ爪を回動操作するための引手又はハンドルと設けられている一方、
    前記家具本体には、一方のラッチ爪が係合する係合部材と他方のラッチ爪が係合する係合部材との二つの係合部材を、家具本体の間口方向に沿って互いにスライド自在に配置しており、これら2つの係合部材と両ラッチ爪とを、いずれか一方のラッチ爪を一方の係合部材から離脱する方向に回動させると他方の係合部材が他方のラッチ爪から離脱する方向に後退するように関連せしめ、これら両係合部材を、それぞれラッチ爪に係合する方向に前進し勝手となるようにばね手段で付勢しており、
    更に、両係合部材と家具本体とに、一方のラッチ爪を一方の係合部材から離脱する方向に回動させると他方の係合部材を後退位置にスライドさせた状態に保持する係止手段を設け、この係止手段と前記ラッチ爪とを、一方の扉を閉じて一方のラッチ爪が他方の係合部材に当たると係止手段による保持が解除されて当該他方の係合部材がばね手段によって前進するように設定している、
    請求項1に記載した観音開き式扉装置付き家具。
  3. 記左右両扉に、当該扉の裏面に沿った方向に水平スライドするラッチ爪と、このラッチ爪をスライド操作するための操作手段と、ラッチ爪を一方方向に付勢するばね手段とが設けられている一方、
    前記家具本体には、一方のラッチ爪がばね手段の付勢作用によって係合する係合部材と、他方のラッチ爪がばね手段の付勢作用によって係合する係合部材との二つの係合部材が、家具本体の間口方向に沿って互いに水平スライド自在に配置されており、これら2つの係合部材と両ラッチ爪とを、いずれか一方のラッチ爪をスライドさせて一方の係合部材から離脱させると他方の係合部材が他方のラッチ爪から離脱する方向にスライドするように関連させている、
    請求項1に記載した観音開き式扉装置付き家具。
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