JP3644106B2 - 非水二次電池 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、シート状の電極と帯状セパレーターとを積層後、渦巻状に巻回した渦巻式電極を電池缶内に挿入する円筒型非水二次電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
リチウム塩を含む非水電解質二次電池は、一般に、リチウムイオン電池として従来の鉛電池やニッケルーカドミウム電池に変わる高容量型の電池として近年開発が進んできた。しかしこれらのリチウムイオン電池は、エネルギー密度は高いものの、充放電サイクル寿命が十分とは言えない。特に近年の電子機器の小型、軽量化に伴う移動用電源の需要においては更なるサイクル寿命の向上が望まれている。
サイクル性を向上させる手段としては、例えば、特開昭55−62672号に記載のように過塩素酸塩を溶解してなる電解液と、層間化合物を生成するカーボン層を表面に設けた正極を有する非水二次電池を用いることで充放電のサイクル性を向上させることが知られているが、過塩素酸塩を使用しない電解液の場合は上記カーボン層の効果は殆ど得られない。また、特開平3−272571号に記載のように層間にリチウムイオンが挿入、離脱しうる炭素あるいは黒鉛を主成分とする層間化合物をリチウム金属あるいはリチウム合金負極の表面に形成させる方法が知られているが、最近のカーボン負極を用いたリチウムイオン電池においては何らのサイクル性向上効果も発揮されないことがわかった。
【0003】
また、特開平4−328277号では、Li2CO3を添加することが知られているが、電極シート中にこのような塩を含有させると電極合剤の物理特性が低下し、特に巻回時に電極合剤が集電体から剥離したり、巻回時の形状が円状でなく角張って挿入不良が起こったりする。さらには、電池を充電状態で高温環境下に保存すると、電池缶内部の圧力が上昇し、不要にブレーカーが作動したりすることがわかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の第1の目的は、充放電サイクル特性の優れた非水電解リチウムイオン二次電池を提供することにある。更に詳しくは、電極シートの物理強度を低下させたり、高温保存時に電池内部の圧力を不要に上昇させたりすることなく、サイクル特性を良化させた非水電解リチウムイオン二次電池を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の目的は、 集電体上に活物質を含む電極合剤を塗布してなるシート状の正極と負極及びリチウム塩を含む非水電解液からなる非水二次電池において、該正極及び/又は負極が電極合剤上に、塩を含有した薄膜層を有しており、該塩がアルカリ金属元素、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛の中から選ばれる少なくとも1種の元素の塩であり、該元素の塩が、炭酸塩、シュウ酸塩、硝酸塩及び酢酸塩から選ばれる少なくとも1種の塩であることを特徴とする非水二次電池によって達成された。
【0006】
本発明の例を以下に説明するが本発明はこれらに限定されるものではない。
(1)集電体上に活物質を含む電極合剤を塗布してなるシート状の正極と負極及びリチウム塩を含む非水電解液からなる非水二次電池において、該正極及び/又は負極が電極合剤上に、塩を含有した薄膜層を有しており、該塩がアルカリ金属元素、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛の中から選ばれる少なくとも1種の元素の塩であり、該元素の塩が、炭酸塩、シュウ酸塩、硝酸塩及び酢酸塩から選ばれる少なくとも1種の塩であることを特徴とする非水二次電池。
(2)該電極合剤層上の薄膜中に含まれる塩が、電極シート1m 当たり2ミリモル以上、500ミリモル以下であることを特徴とする請求項1記載の非水二次電池。
(3)該薄膜層の厚みが、電極合剤層の厚みの2%以上100%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の非水二次電池。
(4)該薄膜層の導電性が、その下部に接する電極合剤層の導電性よりも低いことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の非水二次電池。
(5)該薄膜層が正極合剤層の上に塗布されてなることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の非水二次電池。
(6)該非水電解液が、少なくとも鎖状カーボネートとLiBF を含むことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の非水二次電池。
【0007】
本発明に係わる塩は、正極及び/または負極の電極合剤層や集電体と合剤層の間の層に含ませても、サイクル性の向上がわずかながら認められる。しかしながら、十分にサイクル性を向上させるに足りる量を使用した場合には、電極合剤の物理的強度が低下し、集電体から電極合剤がはがれる場合が有る。従って、該塩類は電極合剤内以外に配置する必要があり、種々検討の結果、電極合剤層に接した集電体と反対側に配置するのが最も効果的であることがわかった。これらは、巻回前に電極の高温脱水処理等を行った場合には、著しい効果をもたらす。
これらの現象が起こる機構については、未だ明らかになっていないが、充放電時にはリチウムイオンあるいは電解液に係わる諸成分が該塩を含有した薄膜層を通過するが、恐らく、充放電中に生成した電解液由来のサイクル性悪化因子がこれらの塩含有薄膜層と作用して無害化されるのではないかと推定される。
さらに、充電状態で高温環境化で電池を保管した場合に発生する電池内部の圧力上昇は、上記塩を電極シート内部の合剤層等に含有させた場合に比べて著しく改善される。この高温保存時の内圧上昇は、充電状態の電極シート電位に関係するものと思われるが、集電体あるいは電極合剤内部の活物質に直接接する塩が少な場合には、殆ど問題が発生しないことがわかった。また塩含有の薄膜層の導電性は、接する電極合剤の導電性より低い方が好ましい。従って、薄膜層は炭素粒子等の導電性粒子を含まないか、含んでも合剤層よりも少ないことが好ましい。薄膜層は、少なくとも塩と、後述の結着剤を構成成分とするのが好ましい。
【0008】
本発明に用いられる塩は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩あるいはマンガン、鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛、錫の塩が好ましい。アルカリ金属しては、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウムが好ましい。アルカリ土類金属としては、マグネシウム、カルシウム、バリウムが好ましい。これらの元素の塩としては、炭酸、シュウ酸、硝酸、酢酸、リン酸、硼酸、硫酸、亜硫酸、フタル酸の各塩が好ましく用いられる。より好ましいのは炭酸、シュウ酸、硝酸、酢酸、リン酸、及び硼酸の各塩である。特に好ましいのは、ナトリウム、カリウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛、錫の炭酸、シュウ酸、硝酸、酢酸、リン酸、及び硼酸の各塩を少なくとも1種用いることが好ましい。
これらの塩の使用量は、電極シート1m2 当り2ミリモル以上、500ミリモル以下である。好ましくは、5ミリモル以上、250ミリモル以下、より好ましくは5ミリモル以上、200ミリモル以下である。
【0009】
上記の塩を含有した薄膜層の厚みは、その下部に接する電極合剤層の厚みの2%以上、100%以下であることが好ましい。より好ましくは5%以上、50%以下である。2%以下の場合には含有させる塩の濃度が高くなりすぎて薄膜の物理的強度を損なう場合が有る。逆に100%以上の場合は電池のエネルギー密度が低下しすぎたり、充放電時の高電流適正が低下したりする。
【0010】
本発明に記載の塩は負極合剤層上に配置しても効果が現れるが、正極合剤層に接している薄膜層に含有させることでより顕著な効果が現れることがわかった。特に40℃以上の環境下でのサイクル特性では正極側への配置が好ましい効果を生むようである。
【0011】
また、本発明の効果は、電解液中の組成でも異なることがわかった。特に、電解質としては少なくとも、全電解質重量の5%以上のジメチルカーボネートを使用するのが好まし。本発明の塩含有薄膜層との組合わせ効果は、低温時のサイクル特性のみならず、25℃以上の高温サイクル時にも改善効果が見られた。
さらには、支持塩として、LiBF4 を全電解質支持塩の1モル%以上、50モル%以下を使用することでも、より好ましいサイクル特性が得られることが判明した。しかもこれらの組合わせ効果は、実施例で示したように上記塩含有の薄膜層が正極合剤の上部に配置されているときに最も顕著な効果が得られるという、全く予期できない結果となった。
【0012】
次に、本発明の非水二次電池の詳細な構成内容を示す。
本発明に用いられる正極及び負極は、集電体上に正極活物質や負極材料を含む合剤層を塗設したものである。正極や負極がシート状の場合は、合剤層を集電体の両側に設けるのが好ましく、一方の面の合剤層が複数層から構成されていても良い。合剤層は、正極活物質や負極材料のように軽金属イオンの挿入放出に係わる物質の他に、結着剤や導電材料などを含む。合剤層の他に、活物質を含まない保護層、集電体上に設けられる下塗り層、合剤層間に設けられる中間層等を有していてもよい。これらの活物質を有さない層は、導電性粒子や絶縁性粒子、結着剤を含むのが好ましい。
【0013】
本発明で用いられる正極活物質は可逆的にリチウムイオンを挿入・放出できる遷移金属酸化物でも良いが、特にリチウム含有遷移金属酸化物が好ましい。これらの正極活物質の具体例は、特開昭61−5262号公報、米国特許第4、302、518号明細書、特開昭63−299056号、特開平1−294364号、特公平4−30146号、米国特許第5、240、794号、同5、153、081号、特開平4−328、258号、特開平5−54、889号等に記載されている。
本発明で用いられる好ましいリチウム含有遷移金属酸化物正極活物質としては、リチウム含有Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Mo、Wを含む酸化物があげられる。またリチウム以外のアルカリ金属(周期律表の第IA、第IIAの元素)、及びまたはAl、Ga、In、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Si、P、Bなどを混合してもよい。混合量は遷移金属に対して0〜30モル%が好ましい。
【0014】
本発明で用いられるより好ましいリチウム含有遷移金属酸化物正極活物質としては、リチウム化合物/遷移金属化合物(ここで遷移金属とは、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Mo、Wから選ばれる少なくとも1種)のそれぞれの合計のモル比が0.3〜2.2になるように混合して合成することが好ましい。
本発明で用いられるとくに好ましいリチウム含有遷移金属酸化物正極活物質としては、リチウム化合物/遷移金属化合物(ここで遷移金属とは、V、Cr、Mn、Fe、Co、Niから選ばれる少なくとも1種)の合計のモル比が0.3〜2.2になるように混合して合成することが好ましい。
本発明で用いられるとくに好ましいリチウム含有遷移金属酸化物正極活物質とは、Lix QOy (ここでQは主として、その少なくとも一種がCo、Mn、Ni、V、Feを含む遷移金属)、x=0.02〜1.2、y=1.4〜3)であることが好ましい。Qとしては遷移金属以外にAl、Ga、In、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Si、P、Bなどを混合してもよい。混合量は遷移金属に対して0〜30モル%が好ましい。
【0015】
本発明で用いられる最も好ましいリチウム含有遷移金属酸化物正極活物質としては、Lix CoO2 、Lix NiO2 、Lix MnO2 、Lix Cog Ni1-g 2 、Lix Mn24 、Lix Cof 1-f z (ここでx=0.02〜1.2、g=0.1〜0.9、f=0.9〜0.98、z=2.01〜2.3)があげられる。
本発明で用いられる最も好ましいリチウム含有遷移金属酸化物正極活物質としては、Lix CoO2 、Lix NiO2 、Lix MnO2 、Lix Cog Ni1-g 2 、Lix Mn24 、Lix Cof 1-f z (ここでx=0.02〜1.2、g=0.1〜0.9、f=0.9〜0.98、z=2.02〜2.3)があげられる。ここで、上記のx値は、充放電開始前の値であり、充放電により増減する。
【0016】
正極活物質は、リチウム化合物と遷移金属化合物を混合、焼成する方法や溶液反応により合成することができるが、特に焼成法が好ましい。本発明で用いられる焼成温度は、本発明で用いられる混合された化合物の一部が分解、溶融する温度であればよく、例えば250〜2000℃が好ましく、特に350〜1500℃が好ましい。焼成に際しては250〜900℃で仮焼する事が好ましい。焼成時間としては1〜72時間が好ましく、更に好ましくは2〜20時間である。また、原料の混合法は乾式でも湿式でもよい。また、焼成後に200℃〜900℃でアニールしてもよい。
焼成ガス雰囲気は特に限定されず酸化雰囲気、還元雰囲気いずれもとることができる。たとえば空気中、あるいは酸素濃度を任意の割合に調製したガス、あるいは水素、一酸化炭素、窒素、アルゴン、ヘリウム、クリプトン、キセノン、二酸化炭素等が挙げられる。
【0017】
本発明の正極活物質の合成に際し、遷移金属酸化物に化学的にリチウムイオンを挿入する方法としては、リチウム金属、リチウム合金やブチルリチウムと遷移金属酸化物と反応させることにより合成する方法が好ましい。
本発明で用いる正極活物質の平均粒子サイズは特に限定されないが、0.1〜50μmが好ましい。0.5〜30μmの粒子の体積が95%以上であることが好ましい。粒径3μm以下の粒子群の占める体積が全体積の18%以下であり、かつ15μm以上25μm以下の粒子群の占める体積が、全体積の18%以下であることが更に好ましい。比表面積としては特に限定されないが、BET法で0.01〜50m2 /gが好ましく、特に0.2m2 /g〜1m2 /gが好ましい。また正極活物質5gを蒸留水100mlに溶かした時の上澄み液のpHとしては7以上12以下が好ましい。
所定の粒子サイズにするには、良く知られた粉砕機や分級機が用いられる。例えば、乳鉢、ボールミル、振動ボールミル、振動ミル、衛星ボールミル、遊星ボールミル、旋回気流型ジェットミルや篩などが用いられる。
焼成によって得られた正極活物質は水、酸性水溶液、アルカリ性水溶液、有機溶剤、含水有機溶剤にて洗浄した後使用してもよい。
【0018】
本発明においては、複数の異なった正極活物質を併用してもよい。例えば、充放電時の膨張収縮挙動が反対のものを用いることができる。
放電時(リチウムイオン挿入時)に膨張し、充電時(リチウムイオン放出時)に収縮する正極活物質の好ましい例はスピネル型リチウム含有マンガン酸化物であり、放電時(リチウムイオン挿入時)に収縮し、充電時(リチウムイオン放出時)に膨張する正極活物質の好ましい例はリチウム含有コバルト酸化物である。スピネル型リチウム含有マンガン酸化物の好ましい構造式としては、Li2-x Mn2 4 (0≦x≦2)であり、さらに好ましくはLi1-x Mn2 4 (0≦x≦1)である。リチウム含有コバルト酸化物の好ましい例としてはLi1-x CoO2 (0≦x≦1)である。
【0019】
本発明で用いられる負極材料としては、軽金属イオンを吸蔵・放出できる化合物であればよい。特に、軽金属、軽金属合金、炭素質化合物、無機酸化物、無機カルコゲナイド、金属錯体、有機高分子化合物が好ましい。これらは単独でも、組み合わせて用いてもよい。例えば、軽金属と炭素質化合物、軽金属と無機酸化物、軽金属と炭素質化合物と無機酸化物の組み合わせなどが挙げられる。これらの負極材料は、高容量、高放電電位、高安全性、高サイクル性の効果を与えるので好ましい。
【0020】
軽金属としてはリチウムが好ましい。軽金属合金としては、リチウムと合金を作る金属あるいはリチウムを含む合金が挙げられる。Al,Al−Mn、Al−Mg、Al−Sn、Al−In、Al−Cdが特に好ましい。
炭素質化合物としては、天然黒鉛、人工黒鉛、気相成長炭素、有機物の焼成された炭素などから選ばれ、黒鉛構造を含んでいるものが好ましい。また、炭素質化合物には、炭素以外にも、異種化合物、例えばB,P,N,S,SiC,B4 Cを0〜10重量%含んでもよい。
【0021】
酸化物又はカルコゲナイドを形成する元素としては、遷移金属叉は周期律表13から15族の金属、半金属元素が好ましい。
【0022】
遷移金属化合物としては、特にV,Ti,Fe,Mn,Co,Ni,Zn,W,Moの単独あるいは複合酸化物、叉はカルコゲナイドが好ましい。更に好ましい化合物として、特開平6−44,972号記載のLip Coq 1-q r (ここでp=0.1〜2.5、q=0〜1、z=1.3〜4.5)を挙げる事が出来る。
【0023】
遷移金属以外の金属、半金属の化合物としては、周期律表第13族〜15族の元素、Al,Ga,Si,Sn,Ge,Pb,Sb,Biの単独あるいはそれらの2種以上の組み合わせからなる酸化物、カルコゲナイドが選ばれる。
例えば、Al2 3 、Ga2 3 、SiO、SiO2 、GeO、GeO2 、SnO、SnO2 、SnSiO3 、PbO、PbO2 、Pb2 3 、Pb2 4 、Pb3 4 、Sb2 3 、Sb2 4 、Sb2 5 、Bi2 3 、Bi2 4 、Bi2 5 、SnSiO3 、GeS、GeS2 、SnS、SnS2 、PbS、PbS2 、Sb2 3 、Sb2 5 、SnSiS3 などが好ましい。又これらは、酸化リチウムとの複合酸化物、例えばLi2 GeO3 、Li2 SnO2 であってもよい。
【0024】
上記の複合カルコゲン化合物、複合酸化物は電池組み込み時に主として非晶質であることが好ましい。ここで言う主として非晶質とはCuKα線を用いたX線回折法で2θ値で20°から40°に頂点を有するブロードな散乱帯を有する物であり、結晶性の回折線を有してもよい。好ましくは2θ値で40°以上70°以下に見られる結晶性の回折線の内最も強い強度が、2θ値で20°以上40°以下に見られるブロードな散乱帯の頂点の回折線強度の500倍以下であることが好ましく、さらに好ましくは100倍以下であり、特に好ましくは5倍以下であり、最も好ましくは 結晶性の回折線を有さないことである。
【0025】
上記の複合カルコゲン化合物、複合酸化物は、遷移金属、周期律表13から15族元素からなる複合化合物であり、B,Al,Ga,In,Tl,Si,Ge,Sn,Pb,P,As,Sb,Biの中の2種以上の元素を主体とする複合カルコゲン化合物、複合酸化物がより好ましい。更に好ましくは複合酸化物である。
特に好ましいのは、B,Al,Si,Ge,Sn,Pの中の2種以上の元素を主体とする複合酸化物である。
これらの複合カルコゲン化合物、複合酸化物は、主として非晶質構造を修飾するために周期律表の1族から3族の元素またはハロゲン元素を含んでもよい。また遷移金属を含んでもよい。
【0026】
上記の負極材料の中で、錫を主体とする非晶質の複合酸化物が好ましく、次の一般式(1)または(2)で表される。
SnM1 a t 一般式(1)
式中、M1 はAl,B,P、Si、Ge、周期律表第1族元素、第2族元素、第3族元素、ハロゲン元素から選ばれる2種以上の元素を表し、aは0.2以上、3以下の数を、tは1以上、7以下の数を表す。
【0027】
Snx 1-x 1 a t 一般式(2)
式中、Tは遷移金属金属を表し、V,Ti,Fe,Mn,Co,Ni,Zn,W,Moを表す。xは0.1以上、0.9以下の数を表す。M1 、a、tは一般式(1)と同じである。
【0028】
一般式(1)の化合物の中で、次の一般式(3)の化合物がより好ましい。
SnM2 b t 一般式(3)
式中、M2 はAl,B,P、Ge、周期律表第1族元素、第2族元素、第3族元素、ハロゲン元素から選ばれる2種以上の元素を表し、bは0.2以上、3以下の数を、tは1以上、7以下の数を表す。
【0029】
一般式(3)の化合物の中で、次の一般式(4)の化合物が更に好ましい。
SnM3 c 4 d t 一般式(4)
式中、M3 はAl,B,P、Geの少なくとも1種を、M4 は周期律表第1族元素、第2族元素、第3族元素、ハロゲン元素の少なくとも1種を表し、cは0.2以上、2以下の数、dは0.01以上、1以下の数で、0.2<c+d<3、tは1以上7以下の数を表す。
【0030】
本発明においては、さらには次の一般式(5)のSnおよびGeを主体とする非晶質酸化物が特に好ましい。
SnGee 5 f 4 g t 一般式(5)
式中、M5 は、Al、P、Bから選ばれる少なくとも1種を、M4 は一般式(4)と同様に周期律表第1族元素、第2族元素、第3族元素、ハロゲン元素の少なくとも1種以上の元素を表す。eは0.001 以上1以下の数字。fは0.2以上2以下の数字、gは0.01以上1以下の数字、tは1、3以上7以下の数字を表す。)で示される非晶質酸化物であることが一層好ましい。
【0031】
本発明の非晶質複合酸化物は、焼成法、溶液法のいずれの方法も採用することができるが、焼成法がより好ましい。焼成法では、一般式(1)に記載された元素の酸化物あるいは化合物をよく混合した後、焼成して非晶質複合酸化物を得るのが好ましい。
【0032】
焼成条件としては、昇温速度として昇温速度毎分5℃以上200℃以下であることが好ましく、かつ焼成温度としては500℃以上1500℃以下であることが好ましく、かつ焼成時間としては1時間以上100時間以下であることが好ましい。且つ、下降温速度としては毎分2℃以上107 ℃以下であることが好ましい。
本発明における昇温速度とは「焼成温度(℃表示)の50%」から「焼成温度(℃表示)の80%」に達するまでの温度上昇の平均速度であり、本発明における降温速度とは「焼成温度(℃表示)の80%」から「焼成温度(℃表示)の50%」に達するまでの温度降下の平均速度である。
降温は焼成炉中で冷却してもよくまた焼成炉外に取り出して、例えば水中に投入して冷却してもよい。またセラミックスプロセッシング(技報堂出版1987)217頁記載のgun法・Hammer−Anvil法・slap法・ガスアトマイズ法・プラズマスプレー法・遠心急冷法・melt drag法などの超急冷法を用いることもできる。またニューガラスハンドブック(丸善1991)172頁記載の単ローラー法、双ローラ法を用いて冷却してもよい。焼成中に溶融する材料の場合には、焼成中に原料を供給しつつ焼成物を連続的に取り出してもよい。焼成中に溶融する材料の場合には融液を攪拌することが好ましい。
【0033】
焼成ガス雰囲気は好ましくは酸素含有率が5体積%以下の雰囲気であり、さらに好ましくは不活性ガス雰囲気である。不活性ガスとしては例えば窒素、アルゴン、ヘリウム、クリプトン、キセノン等が挙げられる。最も好ましい不活性ガスは純アルゴンである。
【0034】
本発明で示される化合物の平均粒子サイズは0.1〜60μmが好ましい。寄り詳しくは、平均粒径が0.7〜25μmであり、かつ全体積の60%以上が0.5〜30μmであることが好ましい。また、本発明の負極活物質の粒径1μm以下の粒子群の占める体積は全体積の30%以下であり、かつ粒径20μm以上の粒子群の占める体積が全体積の25%以下であることが好ましい。使用する材料の粒径は、負極の片面の合剤厚みを越えないものであることはいうまでもない。
所定の粒子サイズにするには、良く知られた粉砕機や分級機が用いられる。例えば、乳鉢、ボールミル、サンドミル、振動ボールミル、衛星ボールミル、遊星ボールミル、旋回気流型ジェットミルや篩などが用いられる。粉砕時には水、あるいはメタノール等の有機溶媒を共存させた湿式粉砕も必要に応じて行うことが出来る。所望の粒径とするためには分級を行うことが好ましい。分級方法としては特に限定はなく、篩、風力分級機などを必要に応じて用いることができる。分級は乾式、湿式ともに用いることができる。
平均粒径とは一次粒子のメジアン径のことであり、レーザー回折式の粒度分布測定装置により測定される。
得られた負極材料は水、酸性水溶液、アルカリ性水溶液、有機溶剤、含水有機溶剤にて洗浄した後使用してもよい。
【0035】
本発明の負極材料の例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
SnAl0.4 0.5 0.5 0.1 3.65、SnAl0.4 0.5 0.5 Na0.2 3.7 、SnAl0.4 0.3 0.5 Rb0.2 3.4 、SnAl0.4 0.5 0.5 Cs0.1 3.65、SnAl0.4 0.4 0.4 3.2 、SnAl0.3 0.5 0.2 2.7 、SnAl0.3 0.5 0.2 2.7 、SnAl0.4 0.5 0.3 Ba0.08Mg0.083.26、SnAl0.4 0.4 0.4 Ba0.083.28、SnAl0.4 0.5 0.5 3.6 、SnAl0.4 0.5 0.5 Mg0.1 3.7
【0036】
SnAl0.5 0.4 0.5 Mg0.1 0.2 3.65、SnB0.5 0.5 Li0.1 Mg0.1 0.2 3.05、SnB0.5 0.5 0.1 Mg0.1 0.2 3.05、SnB0.5 0.5 0.05Mg0.050.1 3.03、SnB0.5 0.5 0.05Mg0.1 0.2 3.03、SnAl0.4 0.5 0.5 Cs0.1 Mg0.1 0.2 3.65、SnB0.5 0.5 Cs0.05Mg0.050.1 3.03、SnB0.5 0.5 Mg0.1 0.1 3.05、SnB0.5 0.5 Mg0.1 0.2 3 、SnB0.5 0.5 Mg0.1 0.063.07、SnB0.5 0.5 Mg0.1 0.143.03、SnPBa0.083.58、SnPK0.1 3.55、SnPK0.05Mg0.053.58、SnPCs0.1 3.55、SnPBa0.080.083.54、SnPK0.1 Mg0.1 0.2 3.55、SnPK0.05Mg0.050.1 3.53、SnPCs0.1 Mg0.1 0.2 3.55、SnPCs0.05Mg0.050.1 3.53
【0037】
Sn1.1 Al0.4 0.2 0.6 Ba0.080.083.54、Sn1.1 Al0.4 0.2 0.6 Li0.1 0.1 Ba0.1 0.1 3.65、Sn1.1 Al0.4 0.4 0.4 Ba0.083.34、Sn1.1 Al0.4 PCs0.054.23、Sn1.1 Al0.4 PK0.054.23、Sn1.2 Al0.5 0.3 0.4 Cs0.2 3.5 、Sn1.2 Al0.4 0.2 0.6 Ba0.083.68、Sn1.2 Al0.4 0.2 0.6 Ba0.080.083.64、Sn1.2 Al0.4 0.2 0.6 Mg0.04Ba0.043.68、Sn1.2 Al0.4 0.3 0.5 Ba0.083.58、Sn1.3 Al0.3 0.3 0.4 Na0.2 3.3 、Sn1.3 Al0.2 0.4 0.4 Ca0.2 3.4 、Sn1.3 Al0.4 0.4 0.4 Ba0.2 3.6 、Sn1.4 Al0.4 PK0.2 4.6 、Sn1.4 Al0.2 Ba0.1 PK0.2 4.45、Sn1.4 Al0.2 Ba0.2 PK0.2 4.6 、Sn1.4 Al0.4 Ba0.2 PK0.2 Ba0.1 0.2 4.9 、Sn1.4 Al0.4 PK0.3 4.65、Sn1.5 Al0.2 PK0.2 4.4 、Sn1.5 Al0.4 PK0.1 4.65、Sn1.5 Al0.4 PCs0.054.63、Sn1.5 Al0.4 PCs0.05Mg0.1 0.2 4.63
【0038】
SnGe0・001 0.1 0.1 0.5 1、65、SnGe0、020.3 0.1 1、84、SnGe0、020.150.150.1 1、69、SnGe0、050.3 0.4 0.1 2、5 、SnGe0、050.8 0.1 3、15、SnGe0、050.6 0.3 Mg0.1 0.1 3、8 、SnGe0、050.5 0.5 Cs0.050.053、15、SnGe0、1 0.9 0.1 3、5 、SnGe0、1 0.7 0.2 0.1 Mg0.1 3、3 、SnGe0、1 0.5 0.5 Ba0.050.1 2、3 、SnGe0、1 0.5 0.5 Pb0.050.1 2、3 、SnGe0、1 0.5 0.5 Mg0.050.153、325 、SnGe0、1 0.5 0.5 Mg0.2 0.053、425 、SnGe0、1 0.5 0.5 Mg0.013、201 、SnGe0、1 0.5 0.5 Al0.05Mg0.1 0.1 3、425 、SnGe0、1 0.5 0.5 Mg0.1 Li0.1 3、35
【0039】
SnSi0.5 Al0.1 0.2 0.1 Ca0.4 3.1 、SnSi0.4 Al0.2 0.4 2.7 、SnSi0.5 Al0.2 0.1 0.1 Mg0.1 2.8 、SnSi0.6 Al0.2 0.2 2.8 、SnSi0.5 Al0.3 0.4 0.2 3.55、SnSi0.5 Al0.3 0.4 0.5 4.30、SnSi0.6 Al0.1 0.1 0.3 3.25、SnSi0.6 Al0.1 0.1 0.1 Ba0.2 2.95。SnSi0.6 Al0.1 0.1 0.1 Ca0.2 2.95、SnSi0.6 Al0.4 0.2 Mg0.1 3.2 、SnSi0.6 Al0.1 0.3 0.1 O3.05、SnSi0.6 Al0.2 Mg0.2 2.7 、SnSi0.6 Al0.2 Ca0.2 2.7 、SnSi0.6 Al0.2 0.2 3 、SnSi0.6 0.2 0.2 3 、SnSi0.8 Al0.2 2.9 、SnSi0.8 Al0.3 0.2 0.2 3.85、SnSi0.8 0.2 2.9 、SnSi0.8 Ba0.2 2.8 、SnSi0.8 Mg0.2 2.8 、SnSi0.8 Ca0.2 2.8 、SnSi0.8 0.2 3.1
【0040】
Sn0.9 Mn0.3 0.4 0.4 Ca0.1 Rb0.1 2.95、Sn0.9 Fe0.3 0.4 0.4 Ca0.1 Rb0.1 2.95、Sn0.8 Pb0.2 Ca0.1 0.9 3.35、Sn0.9 Mn0.1 Mg0.1 0.9 3.35、Sn0.2 Mn0.8 Mg0.1 0.9 3.35、Sn0.7 Pb0.3 Ca0.1 0.9 3.35
【0041】
上記焼成されて得られた化合物の化学式は、測定方法として誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析法、簡便法として、焼成前後の粉体の重量差から算出できる。
【0042】
本発明の負極材料への軽金属挿入量は、その軽金属の析出電位に近似するまででよいが、例えば、負極材料当たり50〜700モル%が好ましいが、特に、100〜600モル%が好ましい。その放出量は挿入量に対して多いほど好ましい。軽金属の挿入方法は、電気化学的、化学的、熱的方法が好ましい。電気化学的方法は、正極活物質に含まれる軽金属を電気化学的に挿入する方法や軽金属あるいはその合金から直接電気化学的に挿入する方法が好ましい。化学的方法は、軽金属との混合、接触あるいは、有機金属、例えば、ブチルリチウム等と反応させる方法がある。電気化学的方法、化学的方法が好ましい。該軽金属はリチウムあるいはリチウムイオンが特に好ましい。
【0043】
本発明の負極材料には各種元素を含ませることができる。例えば、ランタノイド系金属(Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg)や、電子伝導性をあげる各種化合物(例えば、Sb、In、Nbの化合物)のドーパントを含んでもよい。添加する化合物の量は0〜5モル%が好ましい。
【0044】
本発明で用いられる酸化物の正極活物質あるいは負極材料の表面を、用いられる正極活物質や負極材料と異なる化学式を持つ酸化物で被覆することができる。この表面酸化物は、酸性にもアルカリ性にも溶解する化合物を含む酸化物が好ましい。さらに、電子伝導性の高い金属酸化物が好ましい。例えば、PbO2 、Fe2 3 、SnO2 、In2 3 、ZnOなどやまたはこれらの酸化物にドーパント(例えば、酸化物では原子価の異なる金属、ハロゲン元素など)を含ませることが好ましい。特に好ましくは、SiO2 、SnO2 、Fe2 3 、ZnO、PbO2 である。
【0045】
表面処理された金属酸化物の量は、該正極活物質あるいは負極材料当たり、0.1〜10重量%が好ましい。また、0.2〜5重量%が特に好ましく、0.3〜3重量%が最も好ましい。
【0046】
また、このほかに、正極活物質や負極材料の表面を改質することができる。例えば、金属酸化物の表面をエステル化剤により処理、キレート化剤で処理、導電性高分子、ポリエチレンオキサイドなどにより処理することが挙げられる。
また、負極材料の表面を改質することもできる。例えば、イオン導電性ポリマ−やポリアセチレン層を設けるなどにより処理することが挙げられる。また、正極活物質や負極材料は水洗などの精製工程を経てもよい。
【0047】
電極合剤には、導電剤、結着剤、フィラー、分散剤、イオン導電剤、圧力増強剤及びその他の各種添加剤を用いることができる。
導電剤は、構成された電池において、化学変化を起こさない電子伝導性材料であれば何でもよい。通常、天然黒鉛(鱗状黒鉛、鱗片状黒鉛、土状黒鉛など)、人工黒鉛などのグラファイト類、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック、等のカ−ボンブラック類、炭素繊維、金属繊維などの導電性繊維類、銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの金属粉類、酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー類、酸化チタンなどの導電性金属酸化物あるいはポリフェニレン誘導体などの有機導電性材料などを単独又はこれらの混合物として含ませることができる。これらの導電剤のなかで、アセチレンブラック、グラファイトとアセチレンブラックの併用が特に好ましい。水分散の合剤を作成する場合には、導電剤は予め水中に分散したものを用いるのが好ましい。
導電剤の添加量は、特に限定されないが、1〜50重量%が好ましく、特に1〜30重量%が好ましい。カーボンやグラファイトでは、2〜15重量%が特に好ましい。
【0048】
結着剤としては、多糖類、熱可塑性樹脂及びゴム弾性を有するポリマーを一種またはこれらの混合物を用いることができる。好ましい例としては、でんぷん、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ジアセチルセルロース、ポリビニルクロリド、ポリビニルピロリドン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ弗化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン−ジエンターポリマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム、ポリブタジエン、フッ素ゴム及びポリエチレンオキシドを挙げることができる。また、多糖類のようにリチウムと反応するような官能基を含む化合物を用いるときは、例えば、イソシアネート基のような化合物を添加してその官能基を失活させることが好ましい。その結着剤の添加量は、特に限定されないが、1〜50重量%が好ましく、特に2〜30重量%が好ましい。合剤中における結着剤の分布は、均一でも、不均一でもよい。本発明に於いて好ましい結着剤剤は、分解温度が300℃以上のポリマーである。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリふっ化ビニリデン(PVDF)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ふっ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ふっ化ビニリデン−クロロトリフルオロエチレン共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE樹脂)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ふっ化ビニリデン−ペンタフルオロプロピレン共重合体、プロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、ふっ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ふっ化ビニリデン−パーフルオロメチルビニルエーテル−テトラフルオロエチレン共重合体を挙げる事ができる。
【0049】
フィラーは、構成された電池において、化学変化を起こさない繊維状材料であれば何でも用いることができる。通常、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのオレフィン系ポリマー、ガラス、炭素などの繊維が用いられる。フィラーの添加量は特に限定されないが、0〜30重量%が好ましい。
【0050】
イオン導電剤は、無機及び有機の固体電解質として知られている物を用いることができ、詳細は電解液の項に記載されている。圧力増強剤は、後述の内圧を上げる化合物であり、炭酸塩が代表例である。
【0051】
本発明の非水二次電池に用いられる正・負極は、正極合剤あるいは負極合剤を集電体上に塗設して作ることが出来る。正・負極は、正極活物質あるいは負極材料を含む合剤層の他に、集電体と合剤層の密着や導電性の改良等の目的で導入する下塗り層や、合剤層の機械的保護や化学的保護の目的で導入する保護層などを有してもよい。
正極あるいは負極合剤には、それぞれ正極活物質あるいは負極材料のほか、それぞれに導電剤、結着剤、分散剤、フィラー、イオン導電剤、圧力増強剤や各種添加剤を含むことができる。下塗り層や保護層は、結着剤や導電剤粒子、導電性を持たない粒子などを含む事ができる。
【0052】
電解質は、一般に、溶媒と、その溶媒に溶解するリチウム塩(アニオンとリチウムカチオン)とから構成されている。溶媒としては、プロピレンカ−ボネ−ト、エチレンカーボネ−ト、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、γ−ブチロラクトン、ギ酸メチル、酢酸メチル、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、1,3−ジオキソラン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキソラン、アセトニトリル、ニトロメタン、エチルモノグライム、リン酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジオキソラン誘導体、スルホラン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、エチルエーテル、1,3−プロパンサルトンなどの非プロトン性有機溶媒を挙げることができ、これらの一種または二種以上を混合して使用する。これらの溶媒に溶解するリチウム塩のカチオンとしては、例えば、ClO4 - 、BF4 - 、PF6 - 、CF3 SO3 - 、CF3 CO2 - 、AsF6 - 、SbF6 - 、(CF3 SO2 2 - 、B10Cl10 2 - 、(1,2−ジメトキシエタン)2 ClO4 - 、低級脂肪族カルボン酸イオン、AlCl4 - 、Cl- 、Br- 、I- 、クロロボラン化合物のアニオン、四フェニルホウ酸イオンを挙げることができ、これらの一種または二種以上を使用することができる。なかでも環状カーボネート及び/または非環状カーボネートを含ませることが好ましい。例えば、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネートを含ませることが好ましい。また、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートを含ませることが好ましい。またエチレンカーボネートのほかに、プロピレンカ−ボネ−ト、1,2−ジメトキシエタン、ジメチルカーボネートあるいはジエチルカーボネートを適宜混合した電解液にLiCF3 SO3 、LiClO4 、LiBF4 および/あるいはLiPF6 を含む電解質が好ましい。それらの支持塩では、LiPF6 を含ませることがより好ましい。
【0053】
特に好ましい電解液は、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートを少なくとも含み、支持塩としてLiBF4 とLiPF6 を含む電解液である。
これら電解質を電池内に添加する量は、特に限定されないが、正極活物質や負極材料の量や電池のサイズによって必要量用いることができる。
支持電解質の濃度は、特に限定されないが、電解液1リットル当たり0.2〜3モルが好ましい。
【0054】
また、電解液の他に次の様な固体電解質も併用することができる。固体電解質としては、無機固体電解質と有機固体電解質に分けられる。無機固体電解質には、Liの窒化物、ハロゲン化物、酸素酸塩などがよく知られている。なかでも、
Li3 N、LiI、Li5 NI2 、Li3 N−LiI−LiOH、Li4 SiO4 、Li4 SiO4 −LiI−LiOH、x Li3 PO4 −(1-x)Li4 SiO4 、Li2 SiS3 、硫化リン化合物などが有効である。
【0055】
有機固体電解質では、ポリエチレンオキサイド誘導体か該誘導体を含むポリマー、ポリプロピレンオキサイド誘導体あるいは該誘導体を含むポリマー、イオン解離基を含むポリマー、イオン解離基を含むポリマーと上記非プロトン性電解液の混合物、リン酸エステルポリマー、非プロトン性極性溶媒を含有させた高分子マトリックス材料が有効である。さらに、ポリアクリロニトリルを電解液に添加する方法もある。また、無機と有機固体電解質を併用する方法も知られている。
【0056】
また、放電や充放電特性を改良する目的で、他の化合物を電解質に添加しても良い。例えば、ピリジン、トリエチルフォスファイト、トリエタノールアミン、環状エーテル、エチレンジアミン、n−グライム、ヘキサリン酸トリアミド、ニトロベンゼン誘導体、硫黄、キノンイミン染料、N−置換オキサゾリジノンとN, N’−置換イミダリジノン、エチレングリコールジアルキルエーテル、第四級アンモニウム塩、ポリエチレングリコ−ル、ピロール、2−メトキシエタノール、AlCl3 、導電性ポリマー電極活物質のモノマー、トリエチレンホスホルアミド、トリアルキルホスフィン、モルホリン、カルボニル基を持つアリール化合物、12−クラウン−4のようなクラウンエーテル類、ヘキサメチルホスホリックトリアミドと4−アルキルモルホリン、二環性の三級アミン、オイル、四級ホスホニウム塩、三級スルホニウム塩などを挙げることができる。
【0057】
また、電解液を不燃性にするために含ハロゲン溶媒、例えば、四塩化炭素、三弗化塩化エチレンを電解液に含ませることができる。また、高温保存に適性をもたせるために電解液に炭酸ガスを含ませることができる。
【0058】
また、正極や負極の合剤には電解液あるいは電解質を含ませることができる。例えば、前記イオン導電性ポリマーやニトロメタン、電解液を含ませる方法が知られている。
【0059】
セパレーターとしては、大きなイオン透過度を持ち、所定の機械的強度を持ち、絶縁性の微多孔性薄膜が用いられる。また、80℃以上で孔を閉塞し、抵抗をあげる機能を持つことが好ましい。耐有機溶剤性と疎水性からポリプレピレンおよび/またはポリエチレンなどのオレフィン系ポリマーあるいはガラス繊維などからつくられたシートや不織布が用いられる。セパレーターの孔径は、一般に電池用セパレーターとして用いられる範囲が用いられる。例えば、0.01〜10μmが用いられる。セパレターの厚みは、一般に電池用セパレーターの範囲で用いられる。例えば、5〜300μmが用いられる。セパレーターの製造は、ポリマーの合成後、孔の作り方としては、乾式、延伸法でも溶液、溶媒除去法あるいはそれらの組み合わせでもでもよい。
【0060】
電極活物質の集電体としては、構成された電池において化学変化を起こさない電子伝導体であれば何でもよい。例えば、正極には、材料としてステンレス鋼、ニッケル、アルミニウム、チタン、炭素などの他に、アルミニウムやステンレス鋼の表面にカーボン、ニッケル、チタンあるいは銀を処理させたものが用いられる。特に、アルミニウムあるいはアルミニウム合金が好ましい。負極には、材料としてステンレス鋼、ニッケル、銅、チタン、アルミニウム、炭素などの他に、銅やステンレス鋼の表面にカーボン、ニッケル、チタンあるいは銀を処理させたもの、Al−Cd合金などが用いられる。特に、銅あるいは銅合金が好ましい。これらの材料の表面を酸化することも用いられる。また、表面処理により集電体表面に凹凸を付けることが望ましい。形状は、フォイルの他、フィルム、シート、ネット、パンチされたもの、ラス体、多孔質体、発泡体、繊維群の成形体などが用いられる。厚みは、特に限定されないが、1〜500μmのものが用いられる。
【0061】
電池の形状はシート、シリンダー、偏平、角などいずれにも適用できる。
正極活物質や負極材料の合剤は、集電体の上に塗布(コート)、乾燥、圧縮されて、主に用いられる。塗布方法は、一般的な方法を用いることができる。例えば、リバースロール法、ダイレクトロール法、ブレード法、ナイフ法、エクストルージョン法、カーテン法、グラビア法、バー法、ディップ法及びスクイーズ法を挙げることができる。そのなかでもブレード法、ナイフ法及びエクストルージョン法が好ましい。塗布は、0.1〜100m/分の速度で実施されることが好ましい。この際、合剤の溶液物性、乾燥性に合わせて、上記塗布方法を選定することにより、良好な塗布層の表面状態を得ることができる。塗布は、片面ずつ逐時でも両面同時でもよい。また、塗布は連続でも間欠でもストライプでもよい。その塗布層の厚み、長さや巾は、電池の大きさにより決められるが、片面の塗布層の厚みは、ドライ後の圧縮された状態で、1〜2000μmが特に好ましい。
【0062】
シートの乾燥又は脱水方法としては、一般に採用されている方法を利用することができる。特に、熱風、真空、赤外線、遠赤外線、電子線及び低湿風を単独あるいは組み合わせて用いることが好ましい。温度は80〜350℃の範囲が好ましく、特に100〜250℃の範囲が好ましい。含水量は、電池全体で2000ppm以下が好ましく、正極合剤、負極合剤や電解質ではそれぞれ500ppm以下にすることがサイクル性の点で好ましい。
シートのプレス法は、一般に採用されている方法を用いることができるが、特に金型プレス法やカレンダープレス法が好ましい。プレス圧は、特に限定されないが、0.2〜3t/cm2 が好ましい。カレンダープレス法のプレス速度は、0.1〜50m/分が好ましい。プレス温度は、室温〜200℃が好ましい。正極シートに対する負極シートとの幅の比率は、0.9〜1.1が好ましい。特に、0.95〜1.0が好ましい。正極活物質と負極材料の含有量比は、化合物種類や合剤処方により異なるため、限定できないが、容量、サイクル性、安全性の観点で最適な値に設定できる。
【0063】
該合剤シートとセパレーターを介して重ね合わせた後、それらのシートは、巻いたり、折ったりして缶に挿入し、缶とシートを電気的に接続し、電解液を注入し、封口板を用いて電池缶を形成する。このとき、安全弁を封口板として用いることができる。安全弁の他、従来から知られている種々の安全素子を備えつけても良い。例えば、過電流防止素子として、ヒューズ、バイメタル、PTC素子などが用いられる。また、安全弁のほかに電池缶の内圧上昇の対策として、電池缶に切込を入れる方法、ガスケット亀裂方法あるいは封口板亀裂方法あるいはリード板との切断方法を利用することができる。また、充電器に過充電や過放電対策を組み込んだ保護回路を具備させるか、あるいは、独立に接続させてもよい。また、過充電対策として、電池内圧の上昇により電流を遮断する方式を具備することができる。このとき、内圧を上げる化合物を合剤の中あるいは電解質の中に含ませることができる。内圧を上げる化合物としてはLi2 CO3 、LiHCO3 、Na2 CO3 、NaHCO3 、CaCO3 、MgCO3 などの炭酸塩などがあげられる。
缶やリード板は、電気伝導性をもつ金属や合金を用いることができる。例えば、鉄、ニッケル、チタン、クロム、モリブデン、銅、アルミニウムなどの金属あるいはそれらの合金が用いられる。キャップ、缶、シート、リード板の溶接法は、公知の方法(例、直流又は交流の電気溶接、レーザー溶接、超音波溶接)を用いることができる。封口用シール剤は、アスファルトなどの従来から知られている化合物や混合物を用いることができる。
【0064】
本発明の非水二次電池の用途には、特に限定されないが、例えば、電子機器に搭載する場合、カラーノートパソコン、白黒ノートパソコン、サブノートパソコンペン入力パソコン、ポケット(パームトップ)パソコン、ノート型ワープロ、ポケットワープロ、電子ブックプレーヤー、携帯電話、コードレスフォン子機、ページャー、ハンディーターミナル、携帯ファックス、携帯コピー、携帯プリンター、ヘッドフォンステレオ、ビデオムービー、液晶テレビ、ハンディークリーナー、ポータブルCD、ミニディスク、電気シェーバー、電子翻訳機、自動車電話、トランシーバー、電動工具、電子手帳、電卓、メモリーカード、テープレコーダー、ラジオ、バックアップ電源、メモリーカードなどが挙げられる。その他民生用として、自動車、電動車両、モーター、照明器具、玩具、ゲーム機器、ロードコンディショナー、アイロン、時計、ストロボ、カメラ、医療機器(ペースメーカー、補聴器、肩もみ機など)などが挙げられる。更に、各種軍需用、宇宙用として用いることができる。また、他の二次電池や太陽電池あるいは一次電池と組み合わせることもできる。
【0065】
本発明の好ましい組合せは、上記の化学材料や電池構成部品の好ましいものを組み合わすことが好ましいが、特に正極活物質として、Lix CoO2 、Lix Mn2 4 (ここで0≦x≦1)を含み、導電剤としてアセチレンブラックも共に含む。正極集電体はステンレス鋼かアルミニウムから作られている、ネット、シート、箔、ラスなどの形状をしている。負極材料として、リチウム金属、リチウム合金(Li−Al)、炭素質化合物、酸化物(LiCoVO4 、SnO2 、SnO、SiO、GeO2 、GeO、SnSiO3 、SnSi0.3 Al0.1 0.2 0.3 3.2 )、硫化物(TiS2 、SnS2 、SnS、GeS2 、GeS)などを含む少なくとも1種の化合物を用いることが好ましい。負極集電体はステンレス鋼か銅から作られている、ネット、シート、箔、ラスなどの形状をしている。正極活物質あるいは負極材料とともに用いる合剤には、電子伝導剤としてアセチレンブラック、黒鉛などの炭素材料を混合してもよい。結着剤はポリフッ化ビニリデン、ポリフルオロエチレンなどの含フッ素熱可塑性化合物、アクリル酸を含むポリマー、スチレンブタジエンゴム、エチレンプロピレンターポリマーなどのエラストマーを単独あるいは混合して用いることができる。また、電解液として、エチレンカーボネート、さらに、ジエチルカーボネート、ジメチルカルボネートなどの環状、非環状カーボネートあるいは酢酸エチルなどのエステル化合物の組合せ、支持電解質として、LiPF6 を含み、さらに、LiBF4 、LiCF3 SO3 などのリチウム塩を混合して用いることが好ましい。さらに、セパレーターとして、ポリプロピレンあるいはポリエチレンの単独またはそれらの組合せが好ましい。電池の形態は、シリンダー、偏平、角型のいづれでもよい。電池には、誤動作にも安全を確保できる手段(例、内圧開放型安全弁、電流遮断型安全弁、高温で抵抗を上げるセパレーター)を備えることが好ましい。
【0066】
【実施例】
以下に具体例をあげ、本発明をさらに詳しく説明するが、発明の主旨を越えない限り、本発明は実施例に限定されるものではない。
実施例1
負極活物質は、石油ピッチを用い、これに酸素架橋を10から20重量%導入した後、不活性ガス中にて1000℃で焼成した。該活物質の真比重をピクノメーターにて測定したところ、1.54g/cm3 であった。該活物質をジェットミルにて平均粒子径20μmに粉砕した。
これを負極活物質として90重量%、結着剤としてフッ化ビニリデン樹脂(PVDF)を10重量%混合し、負極合剤を作製した。次に、この負極合剤をN−メチルピロリドンにて分散させた。
上記負極合剤の分散物を、厚さ10μmの帯状の銅箔の両面にエクストルージョン法にて塗布し、乾燥後カレンダープレス機により圧縮成型して帯状負極を作製した。成型後の合剤厚さは両面共に80μm、幅は41mm、長さは300mmとした。
【0067】
正極として、正極活物質に市販のLiCoO2 を87重量%、鱗片状黒鉛を6重量%、アセチレンブラックを3重量%、更に結着剤としてポリテトラフルオロエチレン水分散物を3重量%とポリアクリル酸ナトリウムを1重量%加え、水を媒体として混練して得られたスラリーを厚さ20μmのアルミニウム箔の両面に上記負極と同様の方法にて塗布したサンプルC−1を作成した。続いて、アルミナ粉を80重量%とLi2CO3を15重量%及び分散剤としてCMCを加えて混練し、上記乾燥後の正極合剤の上層に10μmの厚みになるように塗布したサンプルC−2を作成した。この時、塩のシート内の濃度は、下層の合剤中の活物質に対して1重量%となった。該上層塗布用の液でLi2CO3の含有しないものを、C−2と同様に正極合剤の上層に10μmの厚みで塗布したサンプルC−3を作成した。
次に、サンプルC−2で使用のLi2CO3に変えて、表1で示した各種の塩を添加して同様にサンプルを作成した。
【0068】
上記正極及び負極をポリエチレン性のセパレーターを間に挟んで巻回し、電解液としてエチレンカーボネートとジエチレンカーボネートを2:8の比で混合し支持塩にLiPF6 を1モル%含有したものを使用してシリンダー型の電池を作成した。
各電池を10本づつ準備し、1200mA:4.15V、2時間のCC−CV充電し、1200mAの定電流で2.8Vまで放電する充放電サイクルを繰り返した。10サイクル目の放電容量(以下初期容量と言う)に対する、200サイクル目の放電容量を百分率で計算した。結果を表1に示す。
【0069】
【表1】
Figure 0003644106
【0070】
表1から明らかなように、塩類のないC−1、C−3を使用した電池は正極の上層に塗布剤が有るなしに係わらずサイクル性能は悪い。これに対して塩類を使用した電池は良好な性能を示すことがわかる。
【0071】
実施例2
実施例1で使用した正極C−1に表1で示した塩類を、活物質に対して1重量%になる様に添加した。これらサンプルを250℃にて40分間加熱脱水処理した後、実施例1 同様に巻回、2時間経過後巻回をほぐして合剤の塗布膜状態を観察した。
その結果、塩類を正極合剤の上層に配したサンプルC−2に比べて、巻回時の剥がれが起こりやすく、巻回をほぐした場合に大半のシートで合剤が集電体から剥離する箇所が発生した。
【0072】
実施例3
負極活物質として以下の合成を行った。
ピロリン酸錫10.3g、一酸化錫6.7g、三酸化二硼素1.7g、炭酸カリウム0.69g、酸化マグネシウム0.4g、二酸化ゲルマニウム1.0gを乾式混合し、アルミナ製るつぼに入れ、アルゴン雰囲気下15℃/分で1000℃まで昇温した。1100℃で12時間焼成した後、10℃/分で室温にまで降温し、焼成炉より取り出して、SnGe0.1 0.5 0.5 Mg0.1 0.1 3.35を得た。該化合物を粗粉砕し、さらにジェットミルで粉砕し、平均粒径7.0μmの粉末を得た(化合物1−1)。これはCuKα線を用いたX線回折法において2θ値で28°付近に頂点を有するブロードなピークを有する物であり、2θ値で40°以上70°以下には結晶性の回折線は見られなかった。
上記化合物を負極活物質として83重量%、鱗片状黒鉛を9重量%、アセチレンブラックを3重量%、結着剤としてフッ化ビニリデン樹脂(PVDF)を4重量%混合し、負極合剤を作製した。次に、この負極合剤をカルボキシメチルセルロース1重量%と共に、水を媒体として混練してスラリーを作製した。
上記負極合剤の分散物を、厚さ10μmの帯状の銅箔の両面にエクストルージョン法にて塗布し、乾燥後カレンダープレス機により圧縮成型して帯状負極を作製した。成型後の合剤膜の厚さは両面共に36μm、幅は55mm、長さは510mmとした。
【0073】
正極として、正極活物質に市販のLiCoO2 を94重量%、アセチレンブラックを3重量%、結着剤として2−エチルヘキシルアクリレート、アクリロニトリル及びアクリル酸が8:1:0.5の共重合体を2重量%混合し、負極同様カルボキシメチルセルース1重量%と共に、水を媒体として混練してスラリーを作製した。
上記スラリーを厚さ20μmのアルミニウム箔の両面に上記負極と同様の方法にて塗布したサンプルD−1を作成した。続いて、アルミナ粉を70重量%と表2で示した様に塩を使用し、分散際としてCMCを添加し、導電剤としてアセチレンブラックを13重量%添加したものと添加しないものを作成し上記乾燥後の正極合剤の上層に10μmの厚みになるようにそれぞれ塗布した。
上記下層の正極合剤と、上層の塩入り薄膜層の抵抗値を測定したところ、各塩入りの薄膜層では下層の合剤層の抵抗に比べてアセチレンブラックの存在する薄膜層では約20%以上低い値を示し、アセチレンブラックのない薄膜層では全て高い値を示した。
【0074】
上記で作成した正極を実施例1と同様に巻回し電池を作成し、同様にサイクル特性を評価した。更に、各電池を60℃環境下にて3週間保存した後、安全弁の弁体のふくらみによって電池内部の圧力上昇を計測した。弁体変位によってブレーカーが作動する最大変位を100とした時の、変位率を百分率で測定した。結果を表2に示す。
【0075】
【表2】
Figure 0003644106
【0076】
表2からわかるように、塩添加剤が存在する場合は良好なサイクル性が得られる。ただし、添加量が少ない場合(D−2)はサイクル良化の効果は小さく、逆に添加量が多い場合にも(D−6)効果が低減する一方、高温保存時に内部圧力が上昇して、ブレーカーが作動してしまうことがわかる。
また、塩入り薄膜層の導電性をあげるためにアセチレンブラックを添加したものは、高温保存時の内部圧力の上昇が比較的大きく、導電性が低い方が好ましいことがわかる。
【0077】
実施例4
実施例3で作成したNaHCO3=39mmol/ m2入り薄膜層の塗布厚みを表3で示す様に、下層合剤層の厚みに対する比率を変化させ、サイクル特性評価した。更に、実施例2で行なった巻回後の膜質評価を実施した。その結果、厚みが2%以下の場合は膜質は良いものの塩の絶対量が不足し、十分なサイクル改善効果が現れなかった。一方100%以上の厚みではサイクル性が適正範囲の時より若干悪く、巻回時に合剤の剥離が一部で観測されることが判明した。従って、添加量は本発明に記載の範囲が好ましく、また厚みも適正範囲の存在することがわかる。
【0078】
【表3】
Figure 0003644106
【0079】
実施例5
実施例3で作成したNaHCO3=39mmol/ m2入り薄膜層を使用した電池の電解液として、エチレンカーボネート/ジエチレンカーボネート/ジメチルカーボネートを2:4:4:で混合し、支持塩としてLiPF6 /LiBF4 を95:5の割合で使用した。
その結果、実施例3で使用した電解液の時に比べて、200サイクル後の容量残存率が98%以上とかなり良好な結果がえられた。

Claims (6)

  1. 集電体上に活物質を含む電極合剤を塗布してなるシート状の正極と負極及びリチウム塩を含む非水電解液からなる非水二次電池において、該正極及び/又は負極が電極合剤上に、塩を含有した薄膜層を有しており、該塩がアルカリ金属元素、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛の中から選ばれる少なくとも1種の元素の塩であり、該元素の塩が、炭酸塩、シュウ酸塩、硝酸塩及び酢酸塩から選ばれる少なくとも1種の塩であることを特徴とする非水二次電池。
  2. 該電極合剤層上の薄膜中に含まれる塩が、電極シート1m 当たり2ミリモル以上、500ミリモル以下であることを特徴とする請求項1記載の非水二次電池。
  3. 該薄膜層の厚みが、電極合剤層の厚みの2%以上100%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の非水二次電池。
  4. 該薄膜層の導電性が、その下部に接する電極合剤層の導電性よりも低いことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の非水二次電池。
  5. 該薄膜層が正極合剤層の上に塗布されてなることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の非水二次電池。
  6. 該非水電解液が、少なくとも鎖状カーボネートとLiBF を含むことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の非水二次電池。
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