JP3640164B2 - 非水電解質二次電池 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電池の電解液に用いることのできる電池用電解液、および電気自動車や携帯用電子機器のバッテリーとして用いることのできる非水電解質二次電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、ビデオカメラや携帯型電話機等のコードレス電子機器の発達はめざましく、これらの電源として電池電圧が高く、高エネルギー密度を有した非水電解質二次電池、特に、リチウム二次電池が注目されている。また、リチウム二次電池は、電動工具用や電気自動車用電池等に用いる場合等のように充放電電流の大電流化や使用可能温度範囲の広域化などの要求があり、電池の低抵抗化や高温特性の改善等の研究がなされている。
【0003】
リチウム二次電池は、一般に、リチウムを吸蔵および放出可能な、正極活物質および負極活物質をそれぞれにもつ正極と負極と、非水電解質とを主要構成要素とする。正極活物質としては、LiCoO2等のコバルトを主成分としたリチウム−金属複合酸化物が4V超の高い電圧が得られるため、実用化が進んでいる。
【0004】
しかしながら、コバルト化合物は高価なので電池のコストが高くなる。したがって、安価な正極活物質開発が望まれており、このような観点から、LiCoO2に代わるものとして、より安価なLiNiO2、LiMn24等のコバルト以外の金属を主成分としたリチウム−金属複合酸化物の開発が盛んに行われている。ここで、LiMn24等のようにマンガンを主成分としたリチウム−金属複合酸化物を正極活物質に用いると作製された電池はLiCoO2より容量減となるので、高エネルギー密度化の目的としてはLiNiO2等のようにニッケルを主成分としたリチウム−金属複合酸化物を正極活物質に使用することが注目されている。
【0005】
この場合に、LiNiO2は充放電時に結晶構造が六方晶→単斜晶→別の六方晶のように変化し、結晶構造変化が大きく、期待される大放電容量が得られなかった。この問題を解決する目的で、特開平5−242891号公報ではLiNiO2のNiの一部を一定範囲の複数の元素で置換したLiMbNicCod2(MはAl、Mn、Snなど)により結晶構造を安定化し、大きな放電容量を得ることが提案されている。
【0006】
また、特許第2615854号公報には、大放電容量が得られない問題を解決する目的で、平均粒径が10〜150μmでかつ5μm以下の粒子が30%未満のLixMO2(0.05≦x≦1.10、Mは遷移金属)を用いることが提案されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開平5−242891号公報にて提案されているようなLiMbNicCod2を正極活物質に用いた非水電解質電池や、特許第2615854号公報にて提案されているように平均粒径および粒径分布を制限した非水電解質二次電池でも常に充分な放電容量や充放電サイクル特性を得られない場合があった。たとえば、充分な放電容量が得られた電池においても、電池の高温充放電サイクル試験を行うことによって電池の内部抵抗が著しく増加する問題があった。
【0008】
そこで本発明は、高容量を保持しつつ、高温充放電サイクル試験での電池内部抵抗の増加を抑制し、高温特性に優れた非水電解質二次電池とすることができる非水電解質二次電池用正極活物質を提供することを解決すべき課題とする。
【0009】
また、本発明は、高容量を保持しつつ、高温充放電サイクル試験での電池内部抵抗の増加を抑制し、高温特性に優れた非水電解質二次電池を提供することを解決すべき課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは検討研究を重ねた結果、ニッケルを主成分とするリチウム−金属複合酸化物の実際の構造に着目した。LiNiO2は合成条件の微妙な変動、例えば仕込み組成、熱処理温度、雰囲気(酸素濃度やCO2含有量)、時間などで、非化学量論組成LiXNi2-X2(0≦x≦1)のようなLi層へNiが混入した構造を取り易く、化学量論的に優れたものを得ることが難しかった。これは、3価のNiが高温で不安定なことによるものと考えられる。
【0011】
この非化学量論組成の構造解析については、Dahnら(Solid State Ionics 44(1990)87−97)が、Ni混入量が約4〜25%、ピーク強度比が0.5〜2.5とかなりLi層へのNi混入量が多い領域で検討を行い、LiXNi2-X2(0≦x≦1)においてx値が大きくなるとX線粉末回折測定における006面、102面、及び101面のピーク強度比(I006+I102)/I101が小さくなり、Li層へNiの混入が小さくなることを報告している。
【0012】
また、Araiら(Solid State Ionics 80(1995)261−269)はLi1-X Ni1+X2(0<x<0.15)において、Ni混入量が約5〜15%とかなりNi混入量が多い領域で検討を行い、x値が大きくなると第1回目の充放電容量減少することを報告している。
【0013】
上記課題を解決する目的で本発明者らは鋭意研究の結果、特定の組成であって、特定の結晶構造を有し、かつ特定の粒度分布を有する正極活物質とすることで、高容量を保持しつつ、高温充放電サイクル試験での電池内部抵抗の増加を抑制し、高温特性に優れた非水電解質二次電池を提供することができることを見出した。
【0014】
すなわち、本発明の非水電解質二次電池は、リチウム金属あるいはリチウムを吸蔵放出可能な材料からなる負極と、正極とを有する非水電解質二次電池において、前記正極は、活物質としてLiXNi1-Y-ZCoYZ2(0<x<1.2、0<y≦0.2、0.02≦z≦0.09、AはMn、Al、B、Ti、Mg、Feの中から選ばれた少なくとも1種)で表され、X線粉末回折測定における006面、102面、及び101面のピーク強度比{=(I006+I102)/I101}が0.37以上0.40以下(0.40を除く)であり、該活物質全体の(体積or個数)を100%としたときに粒径1μm以下の粒子の累積頻度が2%以下であるリチウム−金属複合酸化物を含有することを特徴とする。
【0015】
そして、前記LiXNi1-Y-ZCoYZ2で表されるリチウム−金属複合酸化物の元素Aは、Alであることが好ましい。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明の非水電解質二次電池について以下の実施形態に基づいて説明する。
【0017】
本実施形態の非水電解質二次電池は、リチウム金属またはリチウムを吸蔵放出可能な材料をもつ負極と、リチウムを吸蔵放出可能な正極活物質をもつ正極とを有する。
【0018】
正極活物質は、LiXNi1-Y-ZCoYZ2(0<x<1.2、0<y≦0.2、0.02≦z≦0.09、AはMn、Al、B、Ti、Mg、Feの中から選ばれた少なくとも1種)で表され、X線粉末回折測定における006面、102面、及び101面のピーク強度比{=(I006+I102)/I101}が0.37以上0.40未満であるリチウム−金属複合酸化物を含有する。Coを必須とするのは、LiCoO2のごとく本発明の正極活物質と同様な結晶構造になる化合物があり、結晶構造の安定化の効果が大きいため望ましい。また、Niと置換するCo量を20%以下としたのは、この量で充分上記の効果を得られること、Coを使用するコスト高のデメリットを最小限に止めることができるからである。そして、zが0.09よりも大きくなると放電容量の低下が大きく、LiCoO2系よりも高容量になるLiNiO2系のメリットがなくなってしまう。また、zが0.02よりも小さくなると結晶構造を安定化する効果が少なくなり、サイクル寿命特性が悪くなってしまう。
【0019】
また、Aの元素としてAlを用いることが好ましい。Alは遷移元素ではないので、価数の安定性が高く、より結晶構造の安定化の効果が得られる。しかし、置換量が増えると放電容量の低下が大きいため、上記のように必要最小限の置換量にする必要がある。
【0020】
X線粉末回折測定における006面、102面、及び101面のピーク強度比(I006+I102)/I101が0.37以上0.40未満とすることによって、Li層へのNi混入量を限定し、抵抗増加の原因となる粒子の歪みの増加や粒子の微粉化を抑えることが可能となる。
【0021】
X線粉末回折測定における006面、102面、及び101面のピーク強度比(I006+I102)/I1010.40以上になると、Li層へのNi混入量が多くなり、リチウムイオンの拡散を阻害し抵抗成分となることや、更に充放電サイクルに伴う不純物層の生成や、活物質の膨張収縮の歪みの増加による粒子の微粉化などによる抵抗増加を招いてしまう。また、ピーク強度比(I006+I102)/I101が0.37よりも小さくなるとLi層へのNi混入量が少なくなり、初期のリチウムイオンの拡散の阻害は小さくなると考えられるが、詳細な原因は定かではないが、ピーク強度比(I006+I102)/I101が0.37以上0.40未満の場合は、上述の充放電サイクルに伴う活物質の膨張収縮の歪みが、Li層にある少量のNiの部分で歪みのピン止め効果のような状態で緩和されることにより、結晶構造変化に伴う抵抗増加をある程度抑制していると考えられるが、Li層へのNi混入量が更に少なくなると、この効果がなくなり、逆に充放電サイクルに伴う活物質の膨張収縮の歪みが粒子全体に広がり、微粉化などによる抵抗増加を招いてしまっていると考えられる。
【0022】
なお、ピーク強度比(I006+I102)/I101は、適用された非水電解質二次電池の充放電によって変化する値である。たとえば、電池を充電するにしたがってピーク強度比は小さくなっていく。したがって、本発明の正極活物質を電池に適用した後にピーク強度比を測定するには、電池を3V以下に放電した後に行う。
【0023】
ここで、リチウムニッケル化合物よりなる正極活物質の結晶性は、正極活物質の製造時に、原材料の配合比、焼成温度、雰囲気(酸素濃度、露点、CO2含有量等)などの条件を調節することで製造することができる。一般的な正極活物質製造条件では、ピーク強度比は、概ね、0.43〜0.48程度となる。
【0024】
なお、本発明におけるX線粉末回折測定方法は以下の通りである。線源としてCuKα線を用い、設定管電圧を50kV、設定管電流を100mA、発散スリット幅及び散乱スリット幅を1°、受光スリット幅を0.15mmに設定し、走査速度を4°/mm、をサンプリング幅を0.02°、走査モ−ドを連続スキャンの条件で測定する。得られたデータは、平滑化処理(点数11点)およびバックグランド除去処理を行う。その後、106面、102面、および101面のピークの高さを測定し、それぞれI006、I102、およびI101の値とする。
【0025】
そして、本発明の非水電解質二次電池の正極活物質は、粒径1μm以下の粒子の累積頻度が2%以下であることが必要である。粒径1μm以下の粒子はその比表面積が大きいので、電解液との副反応が大きく、特に高温では電解液の分解や粒子自体の微細化を招き、内部抵抗増加の原因となっていると考えられる。ここで「累積頻度」とは、周知のマイクロトラック粒度分析計を用いてレーザー光の散乱により視野内の粒子個数と各粒子の粒子径の計測値とから計算される各粒子径での存在頻度から求められる値である。この存在頻度は、体積を基準に求められる。
【0026】
そして、本発明の非水電解質二次電池の正極活物質は、平均粒径が5μm以上15μm以下であることが望ましい。5μmより小さい場合は電解液との反応性が高くなり、充放電サイクルでの放電容量劣化や内部抵抗増加が大きい。15μmより大きい場合は電極への充填性が悪く、電池容量の低下を招く。
【0027】
さらに、本発明の正極活物質は、窒素ガス吸着により測定されるBET比表面積が0.2m2/g以上1.5m2/g以下であることが望ましい。0.2m2/gより小さい場合は電解液との濡れ性が悪く、実効放電容量の低下を招く。1.5m2/gより大きい場合は電解液との反応性が高くなり、充放電サイクルの放電容量劣化や内部抵抗増加が大きい。
【0028】
正極は、上述した正極活物質を有する部材であり、たとえば、正極集電体の表面に正極活物質を結着材や導電材等と共に塗布して作製される。
【0029】
負極は、リチウム金属或いはリチウムを吸蔵放出可能な材料が用いられる。リチウムを吸蔵放出可能な材料としては、リチウム合金や、黒鉛、コークス、有機高分子化合物焼成体等の炭素材料や、SnO、TiO2等の電位が正極活物質に比べて卑な金属酸化物等があげられる。
【0030】
さらに、本発明の非水電解質二次電池の他の構成物としては、公知の構成をとることができ、たとえば、さらに非水電解液や、セパレータ等を有することができる。また、本発明の非水電解質二次電池は、その構造は特に限定されるものでなく、正極および負極をシート状に形成し、セパレータを介して交互に積層させた積層型の電極体を有する積層型電極電池でも、シート状の正極および負極をセパレータを介して巻回させた巻回型の電極体を有する巻回型電極電池であっても、その他の形態であってもよい。
【0031】
非水電解液は、正極および負極の間のイオンの授受を担保する部材であり、公知のものを使用することができ、特に限定するものではない。たとえば、非水電解液としては、LiBF4、LiPF6、LiCF3SO3、LiN(CF3SO22、LiN(C25SO22、LiN(CF5SO2)(C49SO2)の中から選ばれた1種以上を支持電解質とし、これを有機溶媒に溶解させた電解液が好ましい。有機溶媒としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、1,2−ジメトキシエタン、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等及びこれらの混合物が例示できる。中でも少なくともカーボネート系溶媒を含む電解液においては、本発明では、高温での安定性が高いことから好ましい。また、ポリエチレンオキサイドなどの固体高分子に上記の電解質を含んだ固体高分子電解質も使用可能である。
【0032】
セパレータは、正極と負極との間の絶縁を確保しつつリチウムイオンの授受を妨げない部材である。たとえば、ポリプロピレン等の高分子製多孔質膜を挙げることができる。
【0033】
本発明の非水電解質二次電池は、通常の非水電解質二次電池の製造方法を用いて製造することができる。この非水電解質二次電池の製造方法としては、たとえば、正極活物質を有する正極と、負極活物質を有する負極とが、セパレータを介して積層した状態で、電池容器に収納し、この電池容器内に電解液を注入し、密閉封止することで製造する方法をあげることができる。
【0034】
本発明の非水電解質二次電池は、リチウムニッケル化合物よりなる正極活物質と、有機系電解質とを有する電池であり、結晶構造が安定であると考えられるので、高温特性に優れ内部抵抗の増加が抑えられている。このため、非水電解質二次電池の電池特性が向上している。
【0035】
【実施例】
以下に本発明を実施例に基づき詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0036】
試験例1〕
水酸化リチウム1水和物(LiOH・H2O)水酸化ニッケル(Ni(OH)2、水酸化コバルト(Co(OH)2)、水酸化アルミニウム(Al(OH)3)をLi:Ni:Co:Al=1.02:0.82:0.15:0.03の割合になるように秤量し、自動乳鉢で充分に混合した後、アルミナ製るつぼに入れ、酸素気流中、730℃で8時間焼成した後、室温まで1℃/分の速度で炉冷した。その後、自動乳鉢で粉砕して正極活物質粉末とした。得られた粉末は、ICP発光分光分析法による定量分析で、Li1.00Ni0.82Co0.15Al0.032の組成であることを確認した。また、平均粒径は8μm、比表面積は0.58m2/gであった。Li量が混合時の割合よりも小さいのは焼成時に若干のLiが散逸するためである。次にX線粉末回折装置で得られた正極活物質粉末を測定した結果、ピーク強度比(I006+I102)/I101は0.42であった。
【0037】
なお、本実施例におけるX線粉末回折測定方法は以下の通りである。線源としてCuKα線を用い、設定管電圧を50kV、設定管電流を100mA、発散スリット幅及び散乱スリット幅を1°、受光スリット幅を0.15mmに設定し、走査速度を4°/mm、をサンプリング幅を0.02°、走査モ−ドを連続スキャンの条件でピーク高さを測定した。得られたデータは、平滑化処理(点数11点)およびバックグランド除去処理を行った。
【0038】
そして、粒径1μm以下の粒子の累積頻度の測定を行った。この測定は、マイクロトラック粒度分析計(モデル9320−X100、日機装製)を用いてサンプルタイム30秒、計測回数3回の条件で測定した。以下に示す各試験例及び比較例について特に言及しない場合にも本装置・本条件で粒径1μm以下の粒子の累積頻度を測定した。
【0039】
次にこの正極活物質粉末を85重量部と、導電材としてのアセチレンブラックを10重量部と、結着材としてのポリフッ化ビニリデンを5重量部とを溶剤としてのN−メチル−2−ピロリドン中に混合してペーストを作製した。このペーストをAl箔集電体両面に塗布し、乾燥後圧延処理した。その後、真空加熱乾燥することで正極シートを作製した。また、負極活物質粉末としてのグラファイトを92.5重量部と、結着材としてのポリフッ化ビニリデンを2.5重量部とを溶剤としてのN−メチル−2−ピロリドン中に混合して正極同様ペーストを作製した。このペーストをCu箔集電体両面に塗布し、正極の場合と同様に処理し、負極シートを作製した。上記正極と負極とをポリエチレン製の微多孔膜セパレータを介して巻回して渦巻型電極体を作製した。この渦巻型電極体を内部にニッケルめっきを施した鉄製電池缶内に収納した。正極、負極リードをそれぞれ所定の箇所に溶接後、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとの体積比3:7の混合溶媒に、LiPF6を1モル/リットル溶解させた電解液を注入した。そしてキャップを装着した後、電池缶をかしめ、直径18mm、高さ65mmの円筒形非水電解質二次電池A1を作製した。
【0040】
なお、以下に記載する試験例3の電池A3及び比較例1〜4及び7〜12の電池B1〜B4及びB7〜B12において「実施例1と同様に」との記載は「試験例1と同様に」との意味である。
試験例2〕
水酸化リチウム1水和物(LiOH・H2O)、水酸化ニッケル(Ni(OH)2)、水酸化コバルト(Co(OH)2)、水酸化アルミニウム(Al(OH)3)をLi:Ni:Co:Al=1.02:0.82:0.15:0.03の割合になるように秤量し、自動乳鉢で充分に混合した後、アルミナ製るつぼに入れ、酸素気流中、730℃で15時間焼成した。その後、室温まで1℃/分で炉冷した後、自動乳鉢で粉砕して正極活物質粉末とした。得られた粉末は、ICP発光分光分析法による定量分析で、Li1.00Ni0.82Co0.15Al0.032の組成であることを確認した。平均粒径は8μm、比表面積は0.55m2/gであった。次にX線粉末回折装置で得られた正極活物質粉末を測定した結果、ピーク強度比(I006+I102)/I101は0.40であった。そして、この正極活物質粉末を用いる以外は試験例1と同様にして電池A2を作成した。
【0041】
〔実施例3〕
水酸化リチウム1水和物(LiOH・H2O)、水酸化ニッケル(Ni(OH)2)、水酸化コバルト(Co(OH)2)、水酸化アルミニウム(Al(OH)3)をLi:Ni:Co:Al=1.02:0.82:0.15:0.03の割合になるように秤量し、自動乳鉢で充分に混合した後、アルミナ製るつぼに入れ、酸素気流中、650℃で10時間予備焼成した。炉から取り出した粉末は再度自動乳鉢で充分粉砕し、凝集を解砕した。そして、再度アルミナ製るつぼに入れ、酸素気流中、730℃で20時間焼成し、室温まで1℃/分で炉冷した後、自動乳鉢で粉砕して正極活物質粉末とした。得られた粉末は、ICP発光分光分析法による定量分析で、Li1.00Ni0.82Co0.15Al0.032の組成であることを確認した。平均粒径は8μm、比表面積は0.53m2/gであった。次にX線粉末回折装置で得られた正極活物質粉末を測定した結果、ピーク強度比(I006+I102)/I101は0.37であった。そして、この正極活物質粉末を用いる以外は実施例1と同様にして電池A3を作製した。
【0042】
〔比較例1〕
水酸化リチウム1水和物(LiOH・H2O)、水酸化ニッケル(Ni(OH)2)、水酸化コバルト(Co(OH)2)、水酸化アルミニウム(Al(OH)3)をLi:Ni:Co:Al=1.00:0.82:0.15:0.03の割合になるように秤量し、自動乳鉢で充分に混合した後、アルミナ製るつぼに入れ、酸素気流中、730℃で8時間焼成した。その後、室温まで1℃/分で炉冷した後、自動乳鉢で粉砕して正極活物質粉末とした。得られた粉末は、ICP発光分光分析法による定量分析で、Li0.99Ni0.82Co0.15Al0.032の組成であることを確認した。平均粒径は8μm、比表面積は0.58m2/gであった。次にX線粉末回折装置で得られた正極活物質粉末を測定した結果、ピーク強度比(I006+I102)/I101は0.44であった。そして、この正極活物質粉末を用いる以外は実施例1と同様にして電池B1を作製した。
【0043】
〔比較例2〕
水酸化リチウム1水和物(LiOH・H2O)、水酸化ニッケル(Ni(OH)2)、水酸化コバルト(Co(OH)2)、水酸化アルミニウム(Al(OH)3)をLi:Ni:Co:Al=1.02:0.82:0.15:0.03の割合になるように秤量し、自動乳鉢で充分に混合した後、アルミナ製るつぼに入れ、酸素気流中、650℃で10時間予備焼成した。炉から取り出した粉末は再度自動乳鉢で充分粉砕し、凝集を解砕した。そして、アルミナ製のるつぼに入れ、酸素気流中、650℃で10時間2回目の予備焼成した。炉から取り出した粉末は再度自動乳鉢で充分粉砕し、凝集を解砕した。そして、再度アルミナ製のるつぼに入れ、酸素気流中、730℃で20時間本焼成し、室温まで1℃/分で炉冷した後、再度自動乳鉢で粉砕して正極活物質粉末とした。得られた粉末は、ICP発光分光分析法による定量分析で、Li1.00Ni0.82Co0.15Al0.032の組成であることを確認した。平均粒径は8μm、比表面積は0.53m2/gであった。次にX線粉末回折装置で得られた正極活物質粉末を測定した結果、ピーク強度比(I006+I102)/I101は0.36であった。そして、この正極活物質粉末を用いる以外は実施例1と同様にして電池B2を作製した。
【0044】
試験例4〜6〕
水酸化リチウム1水和物(LiOH・H2O)、水酸化ニッケル(Ni(OH)2)、水酸化コバルト(Co(OH)2)、水酸化アルミニウム(Al(OH)3)をそれぞれLi:Ni:Co:Al=1.02:0.82:0.16:0.02(試験例4)、1.02:0.80:0.14:0.06(試験例5)、1.02:0.77:0.14:0.09(試験例6)の割合になるように秤量した以外は試験例1と同様に混合、焼成し、それぞれの正極活物質粉末を得た。平均粒径はそれぞれ8、8、7μm、比表面積はそれぞれ0.59、0.61、0.64m2/gであった。次にX線粉末回折装置で得られたそれぞれの正極活物質粉末を測定した結果、ピーク強度比(I006+I102)/I101はすべて0.42であった。そして、これらの正極活物質粉末を用いる以外は試験例1と同様にして電池A4〜A6を作製した。
【0045】
〔比較例3〜4〕
水酸化リチウム1水和物(LiOH・H2O)、水酸化ニッケル(Ni(OH)2)、水酸化コバルト(Co(OH)2)、水酸化アルミニウム(Al(OH)3)をそれぞれLi:Ni:Co:Al=1.02:0.82:0.17:0.01(比較例3)、1.02:0.74:0.14:0.12(比較例4)の割合になるように秤量した以外は実施例1と同様に混合、焼成し、それぞれの正極活物質粉末を得た。平均粒径はそれぞれ8、7μm、比表面積はそれぞれ0.56、0.66m2/gであった。次にX線粉末回折装置で得られたそれぞれの正極活物質粉末を測定した結果、ピーク強度比(I006+I102)/I101はすべて0.42であった。そして、これらの正極活物質粉末を用いる以外は実施例1と同様にして電池B3〜B4を作製した。
【0046】
試験例7〜9〕
水酸化リチウム1水和物(LiOH・H2O)、水酸化ニッケル(Ni(OH)2)、水酸化コバルト(Co(OH)2)、水酸化アルミニウム(Al(OH)3)をそれぞれLi:Ni:Co:Al=1.02:0.82:0.16:0.02(試験例7)、1.02:0.80:0.14:0.06(試験例8)、1.02:0.77:0.14:0.09(試験例9)の割合になるように秤量した以外は試験例3と同様に混合、焼成し、それぞれの正極活物質粉末を得た。平均粒径はそれぞれ8、8、7μm、比表面積はそれぞれ0.55、0.57、0.60m2/gであった。次にX線粉末回折装置で得られたそれぞれの正極活物質粉末を測定した結果、ピーク強度比(I006+I102)/I101はすべて0.37であった。そして、これらの正極活物質粉末を用いる以外は試験例1と同様にして電池A7〜A9を作製した。
【0047】
〔比較例5〜6〕
水酸化リチウム1水和物(LiOH・H2O)、水酸化ニッケル(Ni(OH)2)、水酸化コバルト(Co(OH)2)、水酸化アルミニウム(Al(OH)3)をそれぞれLi:Ni:Co:Al=1.02:0.82:0.17:0.01(比較例5)、1.02:0.74:0.14:0.12(比較例6)の割合になるように秤量した以外は試験例3と同様に混合、焼成し、それぞれの正極活物質粉末を得た。それぞれ平均粒径は8、7μm、比表面積は0.55、0.59m2/gであった。次にX線粉末回折装置で得られたそれぞれの正極活物質粉末を測定した結果、ピーク強度比(I006+I102)/I101はすべて0.37であった。そして、これらの正極活物質粉末を用いる以外は試験例1と同様にして電池B5〜B6を作製した。
【0048】
〔比較例7〜9〕
水酸化リチウム1水和物(LiOH・H2O)、水酸化ニッケル(Ni(OH)2)、水酸化コバルト(Co(OH)2)、水酸化アルミニウム(Al(OH)3)をそれぞれLi:Ni:Co:Al=1.02:0.82:0.16:0.02(比較例7)、1.02:0.80:0.14:0.06(比較例8)、1.02:0.77:0.14:0.09(比較例9)の割合になるように秤量した以外は比較例1と同様に混合、焼成し、それぞれの正極活物質粉末を得た。それぞれ平均粒径は8、8、7μm、比表面積は0.57、0.60、0.62m2/gであった。次にX線粉末回折装置で得られたそれぞれの正極活物質粉末を測定した結果、ピーク強度比(I006+I102)/I101はすべて0.44であった。そして、これらの正極活物質粉末を用いる以外は実施例1と同様にして電池B7〜B9を作製した。
【0049】
〔比較例10〜12〕
水酸化リチウム1水和物(LiOH・H2O)、水酸化ニッケル(Ni(OH)2)、水酸化コバルト(Co(OH)2)、水酸化アルミニウム(Al(OH)3)をそれぞれLi:Ni:Co:Al=1.02:0.82:0.16:0.02(比較例10)、1.02:0.80:0.14:0.06(比較例11)、1.02:0.77:0.14:0.09(比較例12)の割合になるように秤量した以外は比較例2と同様に混合、焼成し、それぞれの正極活物質粉末を得た。それぞれ平均粒径は8、8、7μm、比表面積は0.55、0.58、0.59m2/gであった。次にX線粉末回折装置で得られた正極活物質粉末を測定した結果、ピーク強度比(I006+I102)/I101はすべて0.36であった。そして、この正極活物質粉末を用いる以外は実施例1と同様にして電池B10〜B12を作製した。
【0050】
試験例10〜13、比較例13、14〕
水酸化リチウム1水和物(LiOH・H2O)、水酸化ニッケル(Ni(OH)2)、水酸化コバルト(Co(OH)2)、水酸化アルミニウム(Al(OH)3)をLi:Ni:Co:Al=1.02:0.82:0.15:0.03の割合となるように秤量し、自動乳鉢で充分混合した後、アルミナ製るつぼに入れ、酸素気流中、730℃で15時間焼成した。その後、室温まで1℃/分で炉冷した後、自動乳鉢で粉砕した。次に気流分級機にかけて種々の条件にて分級し、表4に示すように粒径1μm以下の粒子の累積頻度が異なる試験例10〜13および比較例13、14の6種類の正極活物質粉末を得た。得られた粉末は、ICP発光分光分析法による定量分析で、Li1.0Ni0.82Co0.15Al0.032の組成であることを確認した。Li量が混合時の割合よりも小さいのは焼成時に若干のLiが散逸するからである。次に得られた正極活物質をX線粉末回折装置で測定した結果、ピーク強度比(I006+I102)/I101は0.40であった。
【0051】
次にこれらの各正極活物質粉末を用いて以下のようにして電池を作成した。それぞれ対応する正極活物質を85重量部と、導電剤としてのアセチレンブラックを10重量部と、結着剤としてのポリフッ化ビニリデンを5重量部とを溶剤としてのN−メチル−2−ピロリドン中に混合してペーストを作成した。このペーストをAl箔集電体の両面に塗布し、乾燥後圧延処理した。その後、真空加熱乾燥をすることで正極シートを作成した。
【0052】
また、負極活物質粉末としてのグラファイトを92.5重量部と、結着剤としてのポリフッ化ビニリデンを2.5重量部とを溶剤としてのN−メチル−2−ピロリドン中に混合して正極同様ペーストを作製した。このペーストをCu箔集電体両面に塗布し、正極の場合と同様に処理し、負極シートを作製した。上記正極と負極とをポリエチレン製の微多孔膜セパレータを介して巻回して渦巻型電極体を作製した。この渦巻型電極体を内部にニッケルめっきを施した鉄製電池缶内に収納した。正極、負極リードをそれぞれ所定の箇所に溶接後、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとの体積比3:7の混合溶媒に、LiPF6を1モル/リットル溶解させた電解液を注入した。そしてキャップを装着した後、電池缶をかしめ、直径18mm、高さ65mmの円筒形非水電解質二次電池A10〜A13(試験例10〜13)およびB13、B14(比較例13、14)を作製した。
【0053】
このようにして作製した試験例1〜13の電池A1〜A13及び比較例1〜14の電池B1〜B14の特性評価を行った。
【0054】
〔放電容量の測定〕
まず、放電容量を測定した。充放電条件は、20℃にて充電電流を1mA/cm2の定電流で4.1Vまで充電した後、4.1Vの定電圧で充電した。その後、放電電流0.3mA/cm2で3Vまで放電するという条件である。
【0055】
〔充放電サイクル試験〕
上記の放電容量測定後、60℃の高温環境下、充電電流2.2mA/cm2で4.1Vまで充電した後、放電電流2.2mA/cm2で3Vまで放電するとい工程を1サイクルとする充放電サイクル試験を行い、500サイクル目の放電容量の1サイクル目に対する放電容量の放電容量比を求めた。
【0056】
{放電容量比(%)}=(500サイクル目の放電容量)/(1サイクル目の放電容量)×100
〔電池の内部抵抗測定〕
電池の内部抵抗測定は、上記の充放電500サイクル後に、20℃にて充電電流を1mA/cm2の定電流で3.75Vまで充電した後、3.75Vの定電圧で充電した。その後、交流インピーダンス測定装置(周波数応答アナライザsolartron1260、ポテンショ/ガルバノスタットsolartron1287、(株)東陽テクニカ製)にて周波数100kHz〜0.02Hzまで走査し、図1に示すコール−コールプロットを作成し、円弧部分を円でフィッティングして、実数部軸と交差する大きい方の抵抗値を求め、本電池の内部抵抗とした。
【0057】
〔結果〕
上記各試験の結果を表1〜表4に示す。また、電池の内部抵抗のピーク強度比(I006+I102)/I101依存性を図2に、電池の内部抵抗のAl置換量依存性を図3に示す。
【0058】
【表1】
Figure 0003640164
【0059】
【表2】
Figure 0003640164
【0060】
【表3】
Figure 0003640164
【0061】
【表4】
Figure 0003640164
【0062】
図2から明らかなように、X線粉末回折測定における006面、102面、及び101面のピーク強度比(I006+I102)/I101が0.37以上0.40未満である試験例3の電池A3は比較例1〜2の電池B1〜B2に比べ、高温充放電サイクル後の内部抵抗が小さく、優れた高温特性を示した。また、表1および表3から明らかなように、試験例1〜3および比較例1と、比較例2との対比や、試験例7〜9および比較例7〜9と、比較例10〜12との対比から、ピーク強度比が0.37より小さいと放電容量比が10%程度低くなる。
【0063】
表2および図3から明らかなように、ピーク強度比が0.37以上0.40未満の範囲外ではあるが、Al置換量が0.02以上0.09以下である試験例4〜6の電池A4〜A6は比較例3〜4の電池B3〜B4に比べ、放電容量が大きく、高温充放電サイクル後の内部抵抗が小さく、優れた高温特性を示した。特に、Al置換量が0.12とした比較例4の電池B4は、放電容量に劣っている。しかしながら、試験例4〜6の電池A4〜A6よりも、ピーク強度比が本発明の範囲内でそれぞれ対応する組成をもつ試験例7〜9の電池A7〜A9よの方が放電容量、放電容量比及び内部抵抗の値が優れていた。
【0064】
表3から明らかなように、強度比が本発明の範囲内であり、かつAl置換量が0.02以上0.09以下である試験例7〜9の電池A7〜A9は、Al置換量が本発明の範囲外である比較例5〜6の電池B5〜B6に比べ、放電容量が大きく、高温充放電サイクル後の内部抵抗が小さく、優れた高温特性を示した。また、試験例7〜9の電池A7〜A9は、Al置換量が0.02以上0.09以下でありX線粉末回折測定における006面、102面、及び101面のピーク強度比(I006+I102)/I101が本発明の範囲外である比較例7〜12の電池B7〜B12に比べ、放電容量が大きく、高温充放電サイクル試験での放電容量劣化及び、試験後の内部抵抗も小さく優れた高温特性を示した。
【0065】
本実施例ではLiXNi1-Y-ZCoYA1Z2(0<x<1.2、0<y≦0.2、0.02≦z≦0.09)を例示したが、LiXNi1-Y-ZCoYZ2において、AをMn、B、Ti、Mg、Feとした場合にも同様な効果を有することを実験により確認している。そして、これらの場合にもX線粉末回折測定における006面、102面、及び101面のピーク強度比(I006+I102)/I101が0.37以上0.40未満であり、かつ置換量は0.02以上0.09以下が必要であることも確認している。
【0066】
表4から明らかなように、試験例10〜13の各電池A10〜A13では、いずれも比較例13、14の各電池B13、B14よりも高温充放電サイクル後の内部抵抗が小さく優れた高温特性を示した。したがって、粒径1μm以下の粒子の累積頻度が2%以下(少なくとも1.87%以下)であれば、高温充放電サイクル後の内部抵抗の値は充分許容範囲内であった。また、放電容量、放電容量比についても、試験例の各電池A10〜A13は、いずれも比較例の各電池B13、B14よりも高く好ましい値であった。
【0067】
さらに試験例10〜12の電池A10〜A12のように、粒径1μm以下の粒子の累積頻度を0.80%以下とすると、さらに高温充放電サイクル後の内部抵抗の値が試験例13の電池A13の81mΩから76〜79mΩに低減する効果がある。
【0068】
以上のように本発明を適用した本実施例の電池(試験例3、7〜9:A3、A7〜A9)は、高容量を保持しつつ、高温充放電サイクル劣化が小さく、高温充放電サイクル試験での電池内部抵抗の増加を抑制し、高温特性に優れた電池である。
【図面の簡単な説明】
【図1】電池の内部抵抗測定の例を示した図である。
【図2】電池の内部抵抗のピーク強度比(I006+I102)/I101依存性を示した図である。
【図3】電池の内部抵抗のAl置換量依存性を示した図である。

Claims (2)

  1. リチウム金属あるいはリチウムを吸蔵放出可能な材料からなる負極と、正極とを有する非水電解質二次電池において、
    前記正極は、活物質としてLiXNi1-Y-ZCoYZ2(0<x<1.2、0<y≦0.2、0.02≦z≦0.09、AはMn、Al、B、Ti、Mg、Feの中から選ばれた少なくとも1種)で表され、X線粉末回折測定における006面、102面、及び101面のピーク強度比{=(I006+I102)/I101}が0.37以上0.40以下(0.40を除く)であり、該活物質全体の体積を100%としたときに粒径1μm以下の粒子の累積頻度が2%以下であるリチウム−金属複合酸化物を含有することを特徴とする非水電解質二次電池。
  2. 前記LiXNi1-Y-ZCoYZ2で表されるリチウム−金属複合酸化物の元素Aは、Alであることを特徴とする請求項1に記載の非水電解質二次電池。
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