JP3639895B2 - 脂肪族ポリ(エステル−カーボナート)共重合体の製造方法 - Google Patents

脂肪族ポリ(エステル−カーボナート)共重合体の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、包装材料、園芸、農業、酪農、漁業等におけるフィルム材料、土木材料、医療材料としての用途が期待される脂肪族ポリ(エステル−カーボナート)共重合体の製造方法及び共重合体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
脂肪族ポリ(エステル−カーボナート)共重合体としてはε−カプロラクトンと2,2−ジメチルトリメチレンカーボナートとの開環共重合で得られた例(Macromol.Chem.,187,2579(1986)、ibid,193,1207(1992))や、グリコール酸ダイマーであるグリコリドとエチレンカーボナートとの開環共重合で得られた例(Macromol.Chem.,189,2303(1988)、ibid,191,1975(1990))など数例が知られているが、γ−ブチロラクトンとカーボナートとの開環共重合は知られていない。特にγ−ブチロラクトンは常圧条件下では重合しないとされており、他のラクトンとの共重合でもγ−ブチロラクトンユニットが多く入った共重合体はこれまで化学合成法においてはほとんど得られていない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、工業的に大量に生産される安価なγ−ラクトンを用いて、数平均分子量が5000以上である脂肪族ポリ(γ−ラクトン−カーボナート)共重合体を製造する方法を提供すること及びこの製造方法により得られるγ−ラクトン含有率が50モル%以上の脂肪族ポリ(γ−ブチロラクトン−カーボナート)共重合体を提供することをその課題とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明によれば、ルイス酸の存在下において、下記一般式(1)
【化3】
Figure 0003639895
で表されるγ−ブチロラクトンと下記一般式(2)
【化4】
Figure 0003639895
(式中、R1及びR2は水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を示す)
で表される炭酸エステルとからなり、該γ−ブチロラクトンと該炭酸エステルとの合計量に対する該γ−ブチロラクトンの割合が50モル%以上である原料混合物を、2000気圧以上の超高圧下で40〜100℃に加熱して開環重合させることを特徴とする数平均分子量が5000以上であり、該γ−ブチロラクトン含有率が50モル%以上である脂肪族ポリ(エステル−カーボナート)共重合体の製造方法が提供される。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明で用いるルイス酸としては、従来公知の各種のものを用いることができる。このようなものには、ホウ素のハロゲン化物、金属のハロゲン化物及び金属アルコキシド等が包含される。これらのルイス酸は、必要に応じ、有機溶媒と混合して用いることができる。
ホウ素のハロゲン化物としては、三フッ化ホウ素(BF3)が挙げられる。この三フッ化ホウ素は、アルキルエーテルとの錯体として好ましく用いられる。
金属のハロゲン化物としては、塩化物やフッ化物が挙げられる。この場合、金属としては、アルミニウム、銅、鉄、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、スズ、亜鉛等が挙げられる。本発明では、これらの金属ハロゲン化物は、ヘキサン、ジクロロメタン、トルエン、ジエチルエエーテル等の有機溶媒中に溶解させて用いることができる。
【0006】
金属アルコキシドとしては、下記一般式(3)で表されるものが用いられる。
M(OR)n (3)
前記式中、Mは金属元素であり、Rはアルキル基であり、nは金属元素Mの価数に対応する数である。
金属元素Mには、アルミニウム、銅、鉄、チタン、ジルコニウム、ハフニウム等が包含される。
アルキル基Rとしては、炭素数1〜8、好ましくは1〜4のものが挙げられる。
ルイス酸の使用割合は、ラクトンモノマーに対して、0.01〜5モル%、好ましくは0.01〜1モル%である。
【0007】
本発明の方法を実施するには、前記一般式(1)のγ−ブチロラクトンと前記一般式(2)の炭酸エステルとを、ルイス酸の存在下、超高圧で、40〜100℃、好ましくは70〜100℃に加熱すればよい。
【0008】
本発明においては、反応圧力としては超高圧が採用されるが、この場合の超高圧は、2000気圧以上、好ましくは1万気圧以上であり、その上限値は特に制約されないが、1.5万気圧程度である。本発明では、特に、1〜1.2万気圧の範囲の超高圧の使用が好ましい。
反応時間は、通常、10〜70時間、好ましくは15〜40時間程度である。
【0009】
γ−ブチロラクトンと炭酸エステルの使用割合は、特に制約されないが、γ−ブチロラクトンと炭酸エステルの合計量に対して、γ−ブチロラクトンの割合は50モル%以上、通常、50〜95モル%、より好ましくは75〜90モル%である。共重合体中のγ−ブチロラクトンの含有率は、50モル%以上、より好ましくは70〜98モル%の範囲である。このようなγ−ブチロラクトン含有率の共重合体は、原料へのケミカルリサイクルへの可能なポリマーであり、環境微生物による分解性を有するものである。
【0010】
本発明の方法によれば、γ−ブチロラクトンと炭酸エステルとが開環重合した共重合体が得られるが、この場合、得られる共重合体の組成は、その原料仕込み比にほぼ一致する。本発明により得られる共重合体の分子量は、数平均分子量で、5000以上、好ましくは1万以上であり、その上限値は、特に制約されないが、通常、3万程度である。
【0011】
【実施例】
次に本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明する。なお、以下に示す実施例中のポリマー組成はNMR(核磁気共鳴スペクトル)により決定した。また、分子量はGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラム)装置を用いて標準ポリスチレンで校正して得た分子量である。
【0012】
実施例1
γ−ブチロラクトン(γ−BL)1.56gとエチレンカーボナート(EC)0.18g(仕込みのモル比γ−BL:EC=90:10)と三フッ化ホウ素エチルエーテル0.003gをテフロンチューブに充填し、1.25GPa、70℃に20時間保持した。得られたコポリマーをエチルエーテルにて洗浄して減圧下で乾燥して0.72g(モノマーに基づく収率41%)を得た。
【0013】
得られたポリエステルは、組成(モル比)がγ−BL:EC=93:7であり、数平均分子量(Mn)10,500、重量平均分子量(Mw)16,300であり、分子量分布の指標(Mw/Mn)は1.55であった。
【0014】
実施例2
γ−ブチロラクトン(γ−BL)1.41gとエチレンカーボナート(EC)0.18g(仕込みのモル比γ−BL:EC=89:11)と三フッ化ホウ素エチルエーテル0.002gをテフロンチューブに充填し、1.1GPa、70℃に20時間保持した。得られたコポリマーをエチルエーテルにて洗浄して減圧下で乾燥して0.26g(モノマーに基づく収率16%)を得た。
【0015】
得られたポリエステルは、組成(モル比)がγ−BL:EC=98:2であり、数平均分子量(Mn)8,900、重量平均分子量(Mw)13,600であり、分子量分布の指標(Mw/Mn)は1.53であった。
【0016】
実施例3
γ−ブチロラクトン(γ−BL)0.87gとエチレンカーボナート(EC)0.88g(仕込みのモル比γ−BL:EC=50:50)と三フッ化ホウ素エチルエーテル0.003gをテフロンチューブに充填し、1.25GPa、100℃に20時間保持した。得られたコポリマーをエチルエーテルにて洗浄して減圧下で乾燥して0.54g(モノマーに基づく収率31%)を得た。
【0017】
得られたポリエステルは、組成(モル比)がγ−BL:EC=91:9であり、数平均分子量(Mn)8,400、重量平均分子量(Mw)19,700であり、分子量分布の指標(Mw/Mn)は2.34であった。
【0018】
実施例4
γ−ブチロラクトン(γ−BL)1.57gとプロピレンカーボナート(前記一般式(2)において、R =H、R =CH (PC)0.21g(仕込みのモル比γ−BL:PC=90:10)と三フッ化ホウ素エチルエーテル0.003gをテフロンチューブに充填し、1.25GPa、70℃に20時間保持した。得られたコポリマーをエチルエーテルにて洗浄して減圧下で乾燥して0.14g(モノマーに基づく収率8%)を得た。
【0019】
得られたポリエステルは、組成(モル比)がγ−BL:PC=97:3であり、数平均分子量(Mn)16,900、重量平均分子量(Mw)23,900であり、分子量分布の指標(Mw/Mn)は1.41であった。
【0020】
実施例5
γ−ブチロラクトン(γ−BL)1.42gとプロピレンカーボナート(PC)0.41g(仕込みのモル比γ−BL:PC=80:20)と三フッ化ホウ素エチルエーテル0.003gをテフロンチューブに充填し、1.25GPa、70℃に20時間保持した。得られたコポリマーをエチルエーテルにて洗浄して減圧下で乾燥して0.24g(モノマーに基づく収率13%)を得た。
【0021】
得られたポリエステルは、組成(モル比)がγ−BL:PC=97:3であり、数平均分子量(Mn)13,200、重量平均分子量(Mw)18,700であり、分子量分布の指標(Mw/Mn)は1.42であった。
【0024】
【発明の効果】
本発明によれば、工業的に大量に生産され且つ安価なγ−ブチロラクトンを用い、γ−ブチロラクトン炭酸エステルとが開環重合した数平均分子量が5000以上の脂肪族ポリ(γ−ブチロラクトン−カーボナート)共重合体を製造することができる。
この共重合体は、生分解性を有するもので、包装材料として使用される他、園芸、農業、酪農、漁業等におけるフィルム材料、土木材料、医療材料等として応用することができる。

Claims (1)

  1. ルイス酸の存在下において、下記一般式(1)
    Figure 0003639895
    で表されるγ−ブチロラクトンと下記一般式(2)
    Figure 0003639895
    (式中、R1及びR2は水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を示す)
    で表される炭酸エステルとからなり、該γ−ブチロラクトンと該炭酸エステルとの合計量に対する該γ−ブチロラクトンの割合が50モル%以上である原料混合物を、2000気圧以上の超高圧下で40〜100℃に加熱して開環重合させることを特徴とする数平均分子量が5000以上であり、該γ−ブチロラクトン含有率が50モル%以上である脂肪族ポリ(エステル−カーボナート)共重合体の製造方法。
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