JP3639822B2 - 赤外反射防止膜 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、赤外線領域の光学部材として用いられる赤外域多層膜、特に赤外反射防止膜及びフィルターに関する。
【0002】
【従来技術】
最近、赤外光を用いた光学機器の開発が盛んに行われ、特に8〜14μm 領域の赤外光の利用が注目されている。これに伴い、この領域の赤外光に有効な赤外反射防止膜が種々提案されている。例えば、ZnSe基板にPbF2膜とThF4膜からなる2層膜を積層した赤外反射防止膜 (特公昭61-28962号公報) 、 ZnS又はZnSe基板にYF3 、ZnS 、YF3 の3層膜を積層した赤外反射防止膜(特開昭64-15703号公報) 、Ge基板にZnS 、Ge、ZnS 、BaF2、ZnS のそれぞれの膜を形成してなる赤外反射防止膜 (特公平2-11121 号公報) 、或いはGe基板にZnS 又はZnSe、Ge、ZnS 、BaF2のそれぞれの膜を形成してなる赤外反射防止膜 (特公平2-13761 号公報)等が知られている。
【0003】
しかしこれら従来の赤外反射防止膜は、耐磨耗性が低い。これは、中間屈折率層、低屈折率層を構成する例えば、CaF2、BaF2、SrF2、ZnSe、ZnS 、BK7(ガラス)、Ge、Siなどの物性に起因するものである。これらの物質の耐磨耗性の指標となるヌープ硬度は以下のとおりである。
種類 CaF2 BaF2 SrF2 ZnSe ZnS BK7 Ge Si
硬度 158 82 130 105 160 570 190 1150
また、“Optical Coating for High Energy ZnSe Laser Windows" Appl. Opt.,30, 2075-2080 の Table IV.にも、ZnS やZnSeを基板とする赤外反射防止膜の耐磨耗性が低いことが示されている。
また、これらの ZnSやZnSeを基板とする赤外反射防止膜においては、膜全体の内部応力が不均衡であるため、膜の剥離が起こり、耐久性が低いという問題もあった。例えばYF3 、ZnS 、YF3 の3層膜を積層した ZnS基板の反射防止膜では、YF3 膜の引っ張り応力が大きいため、膜全体の内部応力が緩和されず、膜剥離等が生じる原因となっていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、分光特性を劣化させることなく、膜表面を硬化させ、耐磨耗性に優れた赤外域多層膜、特に赤外反射防止膜及びフィルターを提供することである。
本発明の他の目的は、膜全体の内部応力の不均衡を緩和し、膜剥離等を生じることのない、耐久性に優れた赤外域多層膜、特に赤外反射防止膜及びフィルターを提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、赤外光学用基板に形成された赤外域多層膜において、基板側からの最外層にY2O3からなる耐磨耗性強化層を設けたことを特徴とする赤外域多層膜を提供するものである。
本発明はまた、Al2O3 、Y2O3、Ti2O3 、TiO 及びTiO2からなる群から選ばれる密着力強化層を有する赤外域多層膜を提供するものである。
本発明の赤外域多層膜に使用される赤外光学用基板は、好ましくはZnS 、ZnSe、Ge、Si又はカルコゲナイドガラスである。
本発明の赤外域多層膜の成分の例としては、CaF2、BaF2、SrF2、ZnSe、ZnS、YF3 、TiO2、PbF2、ThF4、Ge、Si等が挙げられる。これらの膜の形成方法としては、真空蒸着、イオンプレーティング等の、従来公知の真空薄膜堆積技術が用いられる。
最外層に設けられるY2O3又はAl2O3 からなる耐磨耗性強化層の膜厚は、300nm以下、好ましくは160〜200nmが適当である。分光特性を変化させないという点からはY2O3の方が好ましい。これらの膜の形成方法としては、真空蒸着、イオンプレーティング等の、従来公知の真空薄膜堆積技術が用いられる。
【0006】
本発明はまた、赤外光学用基板に形成された赤外反射防止膜において、基板がZnSe基板であり、基板側から数えて第1層に中間屈折率の ZnS膜、第2層に低屈折率の YF3膜、第3層に中間屈折率の ZnS膜、第4層に低屈折率の YF3膜を積層してなる赤外反射防止膜を提供するものである。さらに本発明は、赤外光学用基板に形成された赤外反射防止膜において、基板が ZnS基板であり、基板側から数えて第1層に中間屈折率の ZnS膜、第2層に低屈折率の YF3膜、第3層に中間屈折率の ZnS膜、第4層に低屈折率の YF3膜を積層してなる赤外反射防止膜を提供するものである。これらの赤外反射防止膜において、第1層〜第4層の各層の光学膜厚は、以下の条件を満足することが好ましい。
0.05λ0 ≦4n1d1≦10.0λ0
0.04λ0 ≦4n2d2≦0.25λ0
0.25λ0 ≦4n3d3≦0.65λ0
0.75λ0 ≦4n4d4≦1.25λ0
式中d1、d2、d3及びd4は各層の光学膜厚であり、n1、n2、n3及びn4は各層の屈折率であり、λ0 は設計基準波長である。
これらの赤外反射防止膜は、Al2O3 、Y2O3、Ti2O3 、TiO 及びTiO2からなる群から選ばれる密着力強化層を有することが好ましい。
またこれらの赤外反射防止膜の最外層にY2O3からなる耐磨耗性強化層を設けることによりその耐磨耗性を改善することができる。
【0007】
以下実施例により本発明を更に詳細に説明する。
【実施例】
〔実施例1〕(赤外反射防止膜)
基 板 ZnSe
密着力強化層 TiO2 光学膜厚 100 nm
第1層 BaF2 光学膜厚 0.135 λ0
第2層 ZnS 光学膜厚 0.055 λ0
なお、基準となる波長λ0 は、10.6μm である。TiO2は基準波長に拘らず100nmであれば、分光特性を劣化させることなく、密着性を向上させることができる。
【0008】
〔比較例1〕(赤外反射防止膜)
密着力強化層を設けなかったほかは実施例1と同じ。
上記試料について、密着性及び耐磨耗性を以下の試験方法により調べた。
密着性テスト (MIL-C-13508C 4.4.6): セロテープ(登録商標)をはりつけ、これを剥がした ときに膜が剥がれるかどうかを目視により観察する。
耐磨耗性テスト(MIL-C-13508C 4.4.5): チーズクロスを用い500gの圧力を掛けて50ストロークテストを行い膜面に傷ができるかどうかを目
視により観察する。
結果を以下に示す。
上記結果は、TiO2からなる密着力強化層を設けることにより密着性が著しく向上することを示している。
【0009】
〔実施例2〕(赤外反射防止膜)
基板 ZnSe
密着力強化層 TiO2 光学膜厚 100 nm
第1層 YF3 〃 0.038 λ0
第2層 ZnS 〃 0.130 λ0
第3層 YF3 〃 0.250 λ0
なお、基準となる波長λ0 は9.0μmである。
【0010】
〔実施例3〕(赤外反射防止膜)
基 板 ZnSe
密着力強化層 TiO2 光学膜厚 100 nm
第1層 BaF2 光学膜厚 0.135 λ0
第2層 ZnS 光学膜厚 0.055 λ0
耐磨耗性強化層 Y2O3 光学膜厚 160 nm
なお、基準となる波長λ0 は、10.6μm である。Y2O3は基準波長に拘らず300nm以下であれば、分光特性を劣化させることなく、耐磨耗性を向上させることができる。
【0011】
〔実施例4〕(赤外反射防止膜)
耐磨耗性強化層をAl2O3 としたほかは実施例3と同じ。
上記試料について、密着性及び耐磨耗性を調べた。結果を以下に示す。
上記実施例3及び実施例4の試料の分光特性を図1に示す。最外層がY2O3層である実施例3の赤外反射防止膜は、最外層がAl2O3 層である実施例4の赤外反射防止膜と比較して、分光特性が劣化することなく、耐磨耗性が向上することがわかる。すなわち、実施例3の赤外反射防止膜は、赤外線をほぼ完全に透過させていることがわかる。図1において太い実線は耐磨耗性強化層を設ける前の赤外反射防止膜の分光特性を示す。
【0012】
〔実施例5〕
基板 ZnSe
密着力強化層 TiO2 光学膜厚 100 nm
第1層 YF3 〃 0.038 λ0
第2層 ZnS 〃 0.130 λ0
第3層 YF3 〃 0.250 λ0
耐磨耗性強化層 Y2O3 〃 160 nm
なお、基準となる波長λ0 は9.0μmである。
【0013】
〔実施例6〕(赤外反射防止膜)
基板 ZnSe
密着力強化層 Y2O3 光学膜厚 100 nm
第1層 ZnS 〃 0.25λ0
第2層 YF3 〃 0.25λ0
耐磨耗性強化層 Y2O3 〃 160 nm
なお、基準となる波長λ0 は、10μmである。Y2O3は基準波長に拘らず300nm以下であれば、分光特性を劣化させることなく、耐磨耗性を向上させることができる。
【0014】
〔実施例7〕(赤外反射防止膜)
基板 ZnS
密着力強化層 TiO2 光学膜厚 100 nm
第1層 ZnS 〃 0.25λ0
第2層 YF3 〃 0.25λ0
耐磨耗性強化層 Y2O3 〃 300 nm
なお、基準となる波長λ0 は10μmである。Y2O3は基準波長に拘らず300nm以下であれば、分光特性を劣化させることなく、耐磨耗性を向上させることができる。
【0015】
〔実施例8〕(フィルター)
基板 Ge
密着力強化層 TiO2 光学膜厚 100 nm
第1層 ZnS 〃 0.25λ0
第2層 Ge 〃 0.25λ0
第3層 ZnS 〃 0.25λ0
第4層 Ge 〃 0.50λ0
第5層 ZnS 〃 0.25λ0
第6層 Ge 〃 0.25λ0
耐磨耗性強化層 Y2O3 〃 160 nm
なお、基準となる波長λ0 は11μmである。Y2O3は基準波長に拘らず300nm以下であれば、分光特性を劣化させることなく、耐磨耗性を向上させることができる。
【0016】
〔実施例9〕(赤外反射防止膜)
基板 Ge
密着力強化層 TiO2 光学膜厚 100 nm
第1層 ZnS 〃 0.055 λ0
第2層 Ge 〃 0.109 λ0
第3層 ZnS 〃 0.270 λ0
第4層 YF3 〃 0.250 λ0
耐磨耗性強化層 Y2O3 〃 160 nm
なお、基準となる波長λ0 は7.5μmである。Y2O3は基準波長に拘らず300nm以下であれば、分光特性を劣化させることなく、耐磨耗性を向上させることができる。
【0017】
〔実施例10〕(赤外反射防止膜)
基板 Ge
密着力強化層 TiO2 光学膜厚 100 nm
第1層 ZnS 〃 0.089 λ0
第2層 Ge 〃 0.123 λ0
第3層 ZnS 〃 0.293 λ0
第4層 YF3 〃 0.250 λ0
第5層 ZnS 〃 0.041 λ0
耐磨耗性強化層 Y2O3 〃 160 nm
なお、基準となる波長λ0 は5.6μmである。Y2O3は基準波長に拘らず300nm以下であれば、分光特性を劣化させることなく、耐磨耗性を向上させることができる。図2に反射率特性を示す。
【0018】
〔実施例11〕(赤外反射防止膜)
基板 Ge
密着力強化層 TiO2 光学膜厚 100 nm
第1層 ZnS 〃 0.033 λ0
第2層 Ge 〃 0.210 λ0
第3層 ZnS 〃 0.098 λ0
第4層 Ge 〃 0.150 λ0
第5層 ZnS 〃 0.180 λ0
第6層 Ge 〃 0.048 λ0
第7層 ZnS 〃 0.243 λ0
第8層 YF3 〃 0.083 λ0
第9層 ZnS 〃 0.125 λ0
第10層 YF3 〃 0.400 λ0
耐磨耗性強化層 Y2O3 〃 160 nm
なお、基準となる波長λ0 は3.3μmである。Y2O3は基準波長に拘らず300nm以下であれば、分光特性を劣化させることなく、耐磨耗性を向上させることができる。
【0019】
上記実施例11の赤外反射防止膜は反射防止域の広帯域化を図ったものであり、図2に示すように、3〜12μmの広い範囲で反射防止の効果を有する。
実施例9〜11はGe基板の反射防止膜であるが、密着力強化層と第1層との間にGeを任意の膜厚で積層しても反射防止効果にはほとんど影響を及ぼさない。
実施例6〜11の赤外反射防止膜について、密着性テスト(MIL-C-13508C 4.4.6) 及び耐磨耗性テスト(MIL-C-13508C 4.4.5) を行った。結果を以下に示す。
密着力強化層としてY2O3又はTiO2、耐磨耗性強化層としてY2O3を積層することで、密着力が強化され、耐磨耗性が向上することがわかる。なお、密着力強化層として、TiO を積層することによっても同様に密着力を向上できる。
【0020】
また、基板としてZnSeを使用した赤外反射防止膜について、以下に実施例12〜実施例14を示す。
〔実施例12〕(赤外反射防止膜)
基板 ZnSe
第1層 ZnS 光学膜厚 0.116 λ0
第2層 YF3 〃 0.030 λ0
第3層 ZnS 〃 0.109 λ0
第4層 YF3 〃 0.250 λ0
なお、基準となる波長λ0 は9.5μmである。
【0021】
〔実施例13〕
基板 ZnSe
密着力強化層 TiO2 光学膜厚 100 nm
第1層 ZnS 〃 0.116 λ0
第2層 YF3 〃 0.030 λ0
第3層 ZnS 〃 0.109 λ0
第4層 YF3 〃 0.250 λ0
なお、基準となる波長λ0 は9.5μmである。密着力強化層TiO2により、密着力を向上させることができる。
【0022】
〔実施例14〕
基板 ZnSe
密着力強化層 TiO2 光学膜厚 100 nm
第1層 ZnS 〃 0.116 λ0
第2層 YF3 〃 0.030 λ0
第3層 ZnS 〃 0.109 λ0
第4層 YF3 〃 0.250 λ0
耐磨耗性強化層 Y2O3 〃 160 nm
なお、基準となる波長λ0 は9.5μmである。密着力強化層TiO2および耐磨耗性強化層Y2O3により、密着力を強化させ、耐磨耗性を向上させることができる。図3に反射率特性を示す。
【0023】
実施例2、5、13及び14の赤外反射防止膜を温度50℃、湿度95%の雰囲気中に48時間放置し(MIL-C-13508C 4.4.7) 、その後、−62℃に10時間、次いで85℃に10時間放置する温度サイクルを1サイクルとして、5サイクル繰り返す強制テストに付した後、密着性及び耐磨耗性を調べた。結果を以下に示す。
これから、ZnSe基板に3層膜を設けた実施例2及び5の赤外反射防止膜に比較し、ZnSe基板に4層膜、すなわち基板側から数えて第1層に中間屈折率のZnS 膜、第2層に低屈折率のYF3 膜、第3層に中間屈折率のZnS 膜、第4層に低屈折率のYF3 膜を積層して膜全体の内部応力を緩和した実施例13及び14の赤外反射防止膜は、強制条件下でも膜剥がれ等がなく、耐磨耗性も高いより優れた膜であることがわかる。
【0024】
〔実施例15〕
この実施例は、ZnSe基板に4層膜を積層した赤外反射防止膜において、第4層と耐磨耗性強化層Y2O3との間に中間屈折率のZnS 膜を挿入した例で、反射防止効果を変化させず、耐磨耗性を強化させる効果を示すものである。
基板 ZnSe
密着力強化層 TiO2 光学膜厚 100 nm
第1層 ZnS 〃 0.155 λ0
第2層 YF3 〃 0.030 λ0
第3層 ZnS 〃 0.139 λ0
第4層 YF3 〃 0.250 λ0
第5層 ZnS 〃 0.022 λ0
耐磨耗性強化層 Y2O3 〃 160 nm
なお、基準となる波長λ0 は8.0μmである。
【0025】
以下の実施例16〜20は、ZnS 基板を使用した赤外反射防止膜の例を示すものである。
〔実施例16〕(赤外反射防止膜)
基板 ZnS
密着力強化層 TiO2 光学膜厚 100 nm
第1層 YF3 〃 0.044 λ0
第2層 ZnS 〃 0.103 λ0
第3層 YF3 〃 0.250 λ0
なお、基準となる波長λ0 は10.5μmである。
〔実施例17〕(赤外反射防止膜)
基板 ZnS
第1層 ZnS 光学膜厚 0.250 λ0
第2層 YF3 〃 0.044 λ0
第3層 ZnS 〃 0.103 λ0
第4層 YF3 〃 0.250 λ0
なお、基準となる波長λ0 は10.5μmである。
【0026】
〔実施例18〕(赤外反射防止膜)
基板 ZnS
密着力強化層 TiO2 光学膜厚 100 nm
第1層 ZnS 〃 0.250 λ0
第2層 YF3 〃 0.044 λ0
第3層 ZnS 〃 0.103 λ0
第4層 YF3 〃 0.250 λ0
なお、基準となる波長λ0 は10.5μmである。密着力強化層TiO2により、密着力を向上させることができる。
〔実施例19〕(赤外反射防止膜)
基板 ZnS
密着力強化層 TiO2 光学膜厚 100 nm
第1層 YF3 〃 0.044 λ0
第2層 ZnS 〃 0.103 λ0
第3層 YF3 〃 0.250 λ0
耐磨耗性強化層 Y2O3 〃 160 nm
なお、基準となる波長λ0 は10.5μmである。
【0027】
〔実施例20〕(赤外反射防止膜)
基板 ZnS
密着力強化層 TiO2 光学膜厚 100 nm
第1層 ZnS 〃 0.250 λ0
第2層 YF3 〃 0.044 λ0
第3層 ZnS 〃 0.103 λ0
第4層 YF3 〃 0.250 λ0
耐磨耗性強化層 Y2O3 〃 160 nm
なお、基準となる波長λ0 は10.5μmである。密着力強化層TiO2および耐磨耗性強化層Y2O3により、密着力を強化させ、耐磨耗性を向上させることができる。図4に反射率特性を示す。
【0028】
上記実施例16、18、19及び20の赤外反射防止膜の密着性および耐磨耗性を上述の強制試験方法により調べた。その結果を以下に示す。
これから、ZnS 基板に3層膜を設けた実施例16及び19の赤外反射防止膜に比較し、ZnS 基板に4層膜、すなわち基板側から数えて第1層に中間屈折率のZnS 膜、第2層に低屈折率のYF3 膜、第3層に中間屈折率のZnS 膜、第4層に低屈折率のYF3 膜を積層して膜全体の内部応力を緩和した実施例18及び20の赤外反射防止膜は、強制条件下でも膜剥がれ等がなく、耐磨耗性も高いより優れた膜であることがわかる。
【0029】
〔実施例21〕
この実施例は、ZnS 基板に4層膜を積層した赤外反射防止膜において、第4層と耐磨耗性強化層Y2O3との間に中間屈折率のZnS 膜を積層しても分光特性を変化させることなく、耐磨耗性を強化させる効果を奏することを示すものである。
基板 ZnS
密着力強化層 TiO2 光学膜厚 100 nm
第1層 ZnS 〃 0.750 λ0
第2層 YF3 〃 0.047 λ0
第3層 ZnS 〃 0.134 λ0
第4層 YF3 〃 0.250 λ0
第5層 ZnS 〃 0.017 λ0
耐磨耗性強化層 Y2O3 〃 160 nm
なお、基準となる波長λ0 は9.0μmである。
【0030】
【発明の効果】
最外層がY2O3層である本発明の赤外反射防止膜は、分光特性が劣化することなく、耐磨耗性が向上している。
また、ZnS 又はZnSe基板の赤外反射防止膜において、基板側から数えて第1層に中間屈折率のZnS 膜、第2層に低屈折率の YF3膜、第3層に中間屈折率の ZnS膜、第4層に低屈折率の YF3膜を積層して膜全体の内部応力を緩和した赤外反射防止膜は、強制条件下でも膜剥離等がなく、耐磨耗性も高い。
【図面の簡単な説明】
【図1】 ZnSe基板の赤外反射防止膜、この赤外反射防止膜の最外層にY2O3の耐磨耗性層を設けた本発明の実施例3の赤外反射防止膜、及びこの赤外反射防止膜の最外層にAl2O3 の耐磨耗性層を設けた実施例4の赤外反射防止膜の分光特性を示す図面である。
【図2】本発明の実施例10の赤外反射防止膜の分光特性(点線)と、ZnS 膜とGe膜を交互に積層することにより赤外反射防止域を広帯域化した本発明の実施例11の赤外反射防止膜の分光特性(実線)を示す図面である。
【図3】 ZnSe基板に、基板側から数えて第1層に中間屈折率のZnS 膜、第2層に低屈折率の YF3膜、第3層に中間屈折率の ZnS膜、第4層に低屈折率の YF3膜を積層して膜全体の内部応力を緩和した本発明の実施例14の赤外反射防止膜の分光特性を示す図面である。
【図4】 ZnS 基板に、基板側から数えて第1層に中間屈折率のZnS 膜、第2層に低屈折率の YF3膜、第3層に中間屈折率の ZnS膜、第4層に低屈折率の YF3膜を積層して膜全体の内部応力を緩和した本発明の実施例20の赤外反射防止膜の分光特性を示す図面である。
Claims (2)
- 赤外光学用基板に形成された赤外反射防止膜において、基板がZnSe基板であり、TiO 2 またはY 2 O 3 からなる密着力強化層を有し、最外層にY 2 O 3 からなる耐磨耗性強化層を有し、基板側から数えて第1層に中間屈折率のZnS膜、第2層に低屈折率のYF3膜、第3層に中間屈折率のZnS膜、第4層に低屈折率のYF3膜を積層してなる赤外反射防止膜であって、第1層〜第4層の各層の各光学膜厚をd 1 、d 2 、d 3 、d 4 、各層の屈折率をn 1 、n 2 、n 3 、n 4 、設計基準波長をλ 0 とするとき、
0.05λ 0 ≦4n 1 d 1 ≦10.0λ 0
0.04λ 0 ≦4n 2 d 2 ≦0.25λ 0
0.25λ 0 ≦4n 3 d 3 ≦0.65λ 0
0.75λ 0 ≦4n 4 d 4 ≦1.25λ 0
であることを特徴とする赤外反射防止膜。 - 赤外光学用基板に形成された赤外反射防止膜において、基板がZnS基板であり、TiO 2 またはY 2 O 3 からなる密着力強化層を有し、最外層にY 2 O 3 からなる耐磨耗性強化層を有し、基板側から数えて第1層に中間屈折率のZnS膜、第2層に低屈折率のYF3膜、第3層に中間屈折率のZnS膜、第4層に低屈折率のYF3膜を積層してなる赤外反射防止膜であって、第1層〜第4層の各層の各光学膜厚をd 1 、d 2 、d 3 、d 4 、各層の屈折率をn 1 、n 2 、n 3 、n 4 、設計基準波長をλ 0 とするとき、
0.05λ 0 ≦4n 1 d 1 ≦10.0λ 0
0.03λ 0 ≦4n 2 d 2 ≦0.30λ 0
0.10λ 0 ≦4n 3 d 3 ≦0.70λ 0
0.70λ 0 ≦4n 4 d 4 ≦1.30λ 0
であることを特徴とする赤外反射防止膜。
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