JP3638065B2 - フッ素樹脂水性分散液 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、塗料用のフッ素樹脂水性分散液に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、フルオロオレフィンを含む重合体は耐候性に優れるため広く塗料分野に応用されてきた。例えばフルオロオレフィンと酢酸ビニル等脂肪酸ビニルエステル、およびその他のモノマーから製造される共重合体(特公平4−40365号)は各種溶剤に可溶であり、建築分野向けを中心とした常温硬化型塗料として使用されている。しかしながらこれらの塗料は有機溶剤を多量に含むために火災の危険性、人体への有害性、大気汚染等が懸念されており、非有機溶剤型塗料、特に水系溶媒の塗料が要望されている。
【0003】
この要望に対応すべく、常温成膜が可能なフッ素樹脂水性分散液が種々検討されている。一般にそれら分散液の製造は乳化重合法によって行われるが、その際多量の乳化剤が使用される。この乳化剤は最終的に形成された塗膜にまで残存して吸水率を増加させるため、従来の溶剤系の塗膜に比べて耐水性、耐汚染性に劣るといった問題点がある。
【0004】
一方、塗膜に架橋構造を導入して塗膜の耐水性、耐汚染性等の改良を図る試みとして、自己架橋基であるアルコキシシリル基を含有するモノマーを使用したフッ素樹脂水性分散液が検討されている(特開平4−202484号、特開平5−25421号)。しかし、それらは、架橋部位であるアルコキシシリル基のエマルジョン中での安定性と塗膜形成後の架橋性という相反する特性を満足することが困難であり、架橋性の良いものは実用上のエマルジョンの保存安定性に問題があり、保存安定性の良いものは架橋速度が遅いために初期耐水性に劣るという傾向にある。また架橋速度が遅いものに対して架橋反応促進のための触媒を塗装直前に添加する使用形態があるが、これは実際上2液型塗料と変わるところがなく作業性が悪いといった問題点がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来の技術の有する問題点を解決しようとするものである。すなわち一液架橋型であって、エマルジョンの保存安定性、使用に際しての作業性を実用上満足し、塗膜の初期耐水性、耐汚染性、耐候性に優れる水性塗料用のフッ素樹脂水性分散液を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するためにフルオロオレフィンおよびそれに共重合させるモノマー、さらにその重合方法について検討したところ、オレフィン性不飽和結合とアルコキシシリル基を共に有する有機珪素化合物と、不飽和カルボン酸を同時に含むように共重合モノマーを選択することで別途乳化剤を添加しないかまたは通常より少量の添加量で乳化重合させて製造されるフッ素樹脂水性分散液が、実用上の保存安定性に優れ、またその分散液から得られる塗膜が1液型でありながら従来の水系塗料に比べて作業性や塗膜の初期耐水性、耐汚染性に優れるということを見い出し本発明に至った。
【0007】
すなわち本発明は、フッ素樹脂が水性媒体に分散されたフッ素樹脂水性分散液であって、該フッ素樹脂がフルオロオレフィン(A)に基づく構造単位10〜60モル%、オレフィン性不飽和結合とアルコキシシリル基を共に有する有機珪素化合物(B)に基づく構造単位0.1〜20モル%、一般式 CH2=CH−(CH2)n−COOH (nは3〜15の整数である。)で表される不飽和カルボン酸(C)に基づく構造単位0.1〜20モル%、およびその他の共重合可能な化合物(D)に基づく構造単位30〜85モル%からなり、(A)、(B)、(C)および(D)の合計が100モル%であるフッ素樹脂水性分散液であり、また、(A)10〜60モル%、(B)0.1〜20モル%、(C)0.1〜20モル%および(D)30〜85モル%であって、(A)、(B)、(C)および(D)の合計が100モル%である単量体組成物を水性媒体中で乳化重合させることからなるフッ素樹脂分散液の製造方法である。
【0008】
本発明における(A)のフルオロオレフィンは重合体に耐候性を付与するために必要な成分であり、分子中に少なくとも1つ以上のフッ素原子が含まれている重合性二重結合を有する化合物である。それらを例示するならばクロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、ヘキサフルオロイソブテン等炭素原子数が2〜6程度のフルオロオレフィンが挙げられるが、クロロトリフルオロエチレンが最も好ましいものとして挙げられる。またフルオロオレフィンは単独または2種以上を併用することができるが、その際にもクロロトリフルオロエチレンを含むことが好ましい。
【0009】
(A)のフルオロオレフィンの比率は全モノマー中に10〜70モル%含むことが好ましく、30〜60モル%がより好ましい。比率が10モル%より少ない場合には耐候性が不十分であり、また70モル%より多い場合には造膜性が悪くなるために好ましくない。
【0010】
本発明における(B)のオレフィン性不飽和結合とアルコキシシリル基を共に有する有機珪素化合物は重合体中で架橋部位となる成分である。すなわちエマルジョン中ではアルコキシシリル基の状態は安定であるが、塗膜形成時にはアルコキシシリル基が加水分解反応してシラノール基に変化し、架橋反応に寄与するものと推測され、例えばシラノール基同志が縮合反応してシロキサン結合による分子間架橋を形成するものと考えられる。そして架橋構造に起因して得られる塗膜の耐水性、耐汚染性、耐溶剤性が向上するものと推測される。
【0011】
成分(B)はオレフィン性不飽和結合とアルコキシシリル基を共に有する有機珪素化合物であり、オレフィン性不飽和結合を有する基としては特に限定されないがビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基などが例示できる。アルコキシシリル基としては特に限定されないがシリル基またはアルキルシリル基のSi原子に結合する少なくとも1個の水素がメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基で置換されたものが挙げられる。これらの化合物を非制限的に例示すると、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(n−プロポキシ)シラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルトリス(メトキシエトキシ)シラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルメチルジイソプロポキシシラン、ビニルメチルジ−n−プロポキシシラン、ビニルジメチルエトキシシラン、ビニルジメチルイソプロポキシシラン、ビニルジメチル−n−プロポキシシラン、ビニルメトキシジエトキシシラン、ビニルメトキシジイソプロポキシシラン、ビニルメトキシジ−n−プロポキシシラン、ビニルエトキシジメトキシシラン、ビニルエトキシジイソプロポキシシラン、ビニルエトキシジ−n−プロポキシシラン、ビニル−n−プロポキシジメトキシシラン、ビニル−n−プロポキシジエトキシシラン、ビニル−n−プロポキシジイソプロポキシシラン、3−(N−アリル−N−グリシジル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(N−アリル−N−メタクロイル)アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N−ビス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]メタクリルアミド、N,N−ビス[3−(メチルジメトキシシリル)プロピル]メタクリルアミド、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクロキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン等が挙げられる。これらは1種または2種以上を組合わせて使用してもよい。また上記の中の炭素数1〜4のアルコキシ基から選ばれるそれぞれ同じかまたは異なる3個のアルコキシ基を有するビニルトリアルコキシシランが他のモノマーとの共重合性に優れることから特に好ましいものとして挙げられ、2種以上を複合する際にもこれらを含有することが望ましい。
【0012】
(B)のオレフィン性不飽和結合とアルコキシシリル基を共に有する有機珪素化合物の全モノマー中の比率は0.1〜20モル%であり、0.1〜5モル%が好ましく、0.1〜3モル%がより好ましい。比率が0.1モル%より少ない場合には架橋が十分でなく塗膜の耐水性と耐汚染性に劣り、20モル%より多い場合には分散液の保存安定性に劣るので好ましくない。
【0013】
本発明にかかる一般式、
CH2=CH−(CH2)n−COOH
(nは3〜15の整数である。)で表される不飽和カルボン酸またはそれにより導入されたカルボキシル基は、▲1▼本発明のフッ素樹脂水性分散液の安定化作用と▲2▼アルコキシシリル基の架橋反応に対する触媒作用を担う成分である。▲1▼の安定化作用とは(C)の不飽和カルボン酸が乳化剤と同様の作用、すなわち反応性乳化剤として作用するために非反応性乳化剤の使用量を減らすことが可能となることをいうものである。一般に非反応性の乳化剤は、樹脂との相溶性が悪い場合には塗膜からブリードして表面に析出して水や汚染物質を吸収してしまうという不具合を生じたり、またそれらとの相溶性が良くても、樹脂自身に吸水性を付与してしまうために塗膜の耐水性を悪化させてしまうことがある。従って本発明の(C)成分の使用は塗膜の耐水性と耐汚染性を向上させる効果をもたらす結果となるものと推測される。
【0014】
一方、▲2▼の架橋反応に対する触媒作用に関しては、(C)の不飽和カルボン酸により導入されるカルボキシル基がアルコキシシリル基に対する酸触媒としての機能を発揮する。一般にアルコキシシリル基を架橋部位とする分散液に対しては、十分な架橋速度を得るためにジラウリン酸ジ−n−ジブチルすず(IV)や有機酸等の架橋触媒を使用直前に添加することが必要である。しかし、本発明のフッ素樹脂水性分散液ではこの様な触媒の添加が必ずしも必要ではなく、しかも十分な架橋速度を示す1液架橋型塗料を調製することができる。従って従来のフッ素樹脂水性架橋型塗料は2液型塗料として使用する必要があったのに対して、本発明の分散液は1液型架橋塗料とすることができるため作業性に優れるとともに、フッ素樹脂自体が触媒機能を有するため塗膜の架橋構造がすみやかに形成され、その結果塗膜の初期耐水性、耐汚染性が向上するといった効果をもたらすものである。
【0015】
本発明において(C)により導入されたカルボキシル基は水分散液の状態ではエマルジョン粒子の表面に存在するために内部に存在するアルコキシシリル基に対して何等作用しないが、水揮発による塗膜形成時には均一に拡散してアルコキシシリル基に対して触媒作用するものと考えられる。従って分散液の長期保存安定性は十分に確保され、しかも塗膜形成に伴う水の揮発によってすみやかに架橋反応に対し触媒作用するために塗膜の初期耐水性、耐汚染性に優れるものと推測される。
【0016】
本発明にかかる(C)の不飽和カルボン酸を例示するならば、5−ヘキセン酸、6−ヘプテン酸、7−オクテン酸、8−ノネン酸、9−デセン酸、10−ウンデシレン酸、11−ドデシレン酸、17−オクタデシレン酸等が挙げられる。これらは2種以上を併用することもできる。ここでnが3未満であるとモノマーの水溶解性が高いために分散液製造時に分散液の安定性の向上に寄与せず、また15を超える場合には重合反応性に劣るといった不具合を生じる。ここでこれらのうち10−ウンデシレン酸が、分散液製造時の重合性、製造された分散液の保存安定性が特に良いことから好ましいものとして挙げられる。
【0017】
(C)は全モノマー中に0.1〜20モル%含み、0.1〜5モル%であることが好ましく、0.1〜2モル%がより好ましい。0.1モル%より少ない場合には分散液の安定化作用が不十分であり、それを補うために非反応性の乳化剤の使用量が多くなって塗膜の耐水性を低下させるので好ましくない。また20モル%より多い場合には塗膜の耐アルカリ性が低下するので好ましくない。
【0018】
本発明における(D)のその他の共重合可能な化合物としては特に制限はされないが、それらを例示するなら酢酸ビニル、酪酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル(ベオバ9、ベオバ10)等の炭素数1〜8の分岐を有することもある脂肪酸から誘導される脂肪酸ビニルエステル類、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等の炭素数1〜6の分岐を有するかまたは環状のアルキル基を有するアルキルビニルエーテル類、酢酸アリル、プロピオン酸アリル、酪酸アリル、イソ酪酸アリル、カプロン酸アリル、カプリル酸アリル、ラウリン酸アリル、シクロヘキサンカルボン酸アリル等のカルボン酸アリルエステル類、メチルアリルエーテル、エチルアリルエーテル、ブチルアリルエーテル等のアリルエーテル類、ヒドロキシブチルアリルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテル、プロピレングリコールモノアリルエーテル、トリエチレングリコールモノアリルエーテル、グリセリンモノアリルエーテル等の水酸基含有アリルエーテル類、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、ヒドロキシメチルビニルエーテル等の水酸基含有ビニルエーテル類、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−オクテン等のα−オレフィン類、ポリエチレンオキシド鎖、ポリプロピレンオキシド鎖などの親水性側鎖を持つ不飽和エステル類あるいは不飽和エーテル類、塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン化オレフィン類、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エチル等の(メタ)アクリロイル化合物、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、無水テトラハイドロフタル酸等の不飽和カルボン酸無水物もしくはその誘導体、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、ビニル酢酸、マレイン酸等の(C)以外の不飽和カルボン酸、およびジカルボン酸、さらには10−ウンデシレン酸ナトリウム等の不飽和カルボン酸をアルカリ物質で中和したもの、スルホン酸含有モノマーなどがある。これらのなかで脂肪酸ビニルエステルおよびアルキルビニルエーテル類は、重合性および分散液から塗膜を形成する際の造膜性に特に優れることから好ましいものとして挙げることができる。
【0019】
(D)の比率は全モノマー中に30〜85モル%含むことが好ましく、35〜70モル%であることがより好ましい。比率が30モル%より少ない場合は造膜性に劣り、85モル%より多い場合には耐候性に劣るので好ましくない。
【0020】
本発明のフッ素樹脂水性分散液はフルオロオレフィン、オレフィン性不飽和結合とアルコキシシリル基を共に有する有機珪素化合物、一般式、
CH2=CH−(CH2)n−COOH
(nは3〜15の整数である。)で表される不飽和カルボン酸、およびその他の共重合可能な化合物を乳化重合することにより得られる。この際の媒体としては、水性媒体すなわち水または水と有機溶媒の混合液を用いることができる。ここで有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノール、sec−ブタノール等のアルコール類、エチレングリコール、ジエチレングリコール等の二価アルコール類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、イソプロピルセロソルブ等のエーテルアルコール類、キシレン等の芳香族または脂肪族炭化水素類、酢酸ブチル、酢酸エチル等のエステル類などが例示される。これら有機溶媒は単独または2種以上の混合液として使用できる。このとき使用する有機溶媒は、全溶媒の20重量%以下で、均一な媒体となることが好ましい。
【0021】
本発明における(C)の不飽和カルボン酸の反応性乳化剤としての作用を確実なものとし、さらにはアルコキシシリル基の分散液中での保存安定性を向上させる目的から、製造時の媒体および得られた分散液のpHを5〜9とすることが好ましく、さらに6〜9であることがより好ましい。従ってここではpH調節を目的として各種のpH調整剤を用いることが好ましく採用される。使用されるpH調整剤としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、オルトリン酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、テトラホウ酸ナトリウム等の無機塩類、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、アンモニア、ジメチルエタノールアミン等の有機塩基類が例示される。pH調整剤の添加量は、通常乳化重合媒体100重量部当り0.05〜5重量部程度である。これらは重合時の添加または重合後の添加およびその併用が可能である。
【0022】
乳化重合の開始は重合開始剤の添加により行われる。かかる重合開始剤としては水溶性開始剤が重合安定性、作業性上好ましく採用される。重合開始剤の例としては、過硫酸カリウム塩、過硫酸アンモニウム塩等の過硫酸塩、過酸化水素、あるいはこれらと亜硫酸ナトリウム等の還元剤との組合せからなるレドックス開始剤があげられる。重合開始剤の添加量は、総モノマー量100重量部に対して0.0001〜5重量部であり、0.001〜3重量部が好ましい。
【0023】
また乳化重合開始温度は、主に重合開始剤の種類に応じて最適温度が選定されるが、作業性、重合反応安定性から0〜100℃、好ましくは30〜70℃が採用される。
【0024】
本発明において、重合時の乳化状態の安定性の向上を目的として、各種分散安定剤を使用することもできる。ここで分散安定剤としては、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤等の周知の界面活性剤や、ポリビニルアルコール、メチルセルロース等の水溶性ポリマーが使用できるが、ノニオン系界面活性剤が重合体との相溶性に優れることから好ましいものとして挙げられる。より好ましくは親水性と疎水性のバランスを表すHLB値が10〜18のノニオン系界面活性剤である。これら分散安定剤は単独または2種以上の組合せで使用してもよい。またこれら分散安定剤は、添加量が多いと塗膜の耐水性、耐候性が劣るため総モノマー量100重量部に対して10重量部以下の添加が好ましい。さらに好ましくは5重量部以下である。
【0025】
本発明のフッ素樹脂水性分散液は、そのままでも塗料としての使用が可能であるが、塗料化に際しては従来より塗料の分野で常用されている各種添加剤、すなわち可塑剤、有機溶媒、造膜助剤、分散剤、湿潤剤、顔料、粘度調節剤、レベリング剤、凍結防止剤、防腐剤、消泡剤、紫外線吸収剤や酸化防止剤等の安定剤などを1種または2種以上配合してもよい。
【0026】
さらには本発明のフッ素樹脂水性分散液に下記一般式で示されるアルキルシリケートを配合することも可能である。
【0027】
【化1】
【0028】
(式中、Xは炭素数1〜8のアルキル基、nは0もしくは11以下の整数である。)
ここでアルキルシリケートとはテトラアルコキシシランまたはその縮合物であり、具体的に例示すれば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラnープロポキシシラン、テトラn−ブトキシシラン、テトラ2−メトキシエトキシシラン、テトラ2−エチルヘキシロキシシラン、またはこれらの部分加水分解物を挙げることができる。
【0029】
これらのアルキルシリケートは水または各種有機溶剤、および2種以上の混合溶媒に溶解または分散した形態での添加が可能であるが、エマルジョン塗料に対して一般的に使用される造膜助剤に溶解して添加する方法が好ましく採用される。
【0030】
【実施例】
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。なお、以下の実施例中の部数は、特に断りのない限り重量部を示すものである。
【0031】
〔合成例1〕
内容積2リットルのステンレス製攪拌機付きオートクレーブに、酪酸ビニル125.7部、ベオバ9(シェル化学製ビニルエステル)81.2部、ピバリン酸ビニル39.5部、ビニルトリエトキシシラン25.1部、ウンデシレン酸40.6部、イオン交換水570部、過硫酸アンモニウム2.58部、炭酸ナトリウム10水和物1.14部、Newcol504(日本乳化剤製ノニオン系乳化剤)11.4部を仕込だ。そしてオートクレーブを氷水にて冷却し、窒素ガスで5kg/cm2になるようにオートクレーブを加圧した後に脱気する操作を3回繰返した後、約10mmHgまで脱気して溶存空気を除去した。さらにオートクレーブ内にクロロトリフルオロエチレンを257.0部導入した後に50℃で24時間反応を行い、固形分48.6%のフッ素樹脂水性分散液を得た。
【0032】
〔合成例2〜9〕
合成例1と同様の方法で、表1または表2に示したモノマー組成にて重合し、表1または表2に示すフッ素樹脂水性分散液を得た。
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】
【0035】
表1および表2の略号の説明
CTFE :クロロトリフルオロエチレン
TFE :テトラフルオロエチレン
VBu :酪酸ビニル
V−9 :ベオバ9(シェル化学製ビニルエステル)
VAc :酢酸ビニル
VPv :ピバリン酸ビニル
V−10 :ベオバ10(シェル化学製ビニルエステル)
VTES :ビニルトリエトキシシラン
ECAE :ε−カプロラクタム変成アリルエーテル
Pr :プロピレン
PKA :PKA−5003(日本油脂製アリル化ポリエーテル)
UA :10−ウンデシレン酸
APS :過硫酸アンモニウム
KPS :過硫酸カリウム
Na2CO3・10H2O:炭酸ナトリウム10水和物
Newcol 504:ノニオン系乳化剤(日本乳化剤製、HLB=16.0)
Newcol 566:ノニオン系乳化剤(日本乳化剤製、HLB=14.0)
〔実施例および比較例〕
合成例1〜9で得られたフッ素樹脂水性分散液を、エバポレータによる濃縮および/または水による希釈操作により固形分が45%となるように調整した。さらに造膜助剤としてブチルカルビトールアセテートをフッ素樹脂水性分散液の固形分100部に対して10部、および28%アンモニア溶液を分散液のpHが7となるようにそれぞれ添加してフッ素樹脂水性塗料(塗料1〜9)を調製した。得られた水性塗料、および各水性塗料をアプリケータでアルミ板に塗布して室温で3日間乾燥させて得た約0.2mmの塗膜に対して表3または表4に示した項目の試験を実施し、その結果を示した。
【0036】
【表3】
【0037】
【表4】
【0038】
・塗料の保存安定性評価
水性塗料の分散状態を、50℃にて4週間保存後に目視観察した。
・塗料の機械的安定性評価
水性塗料を、ディスパー(特殊機化工業(株)製、TK−ホモディスパー)にて、3000rpmで5分間攪拌処理を行って塗料中の凝集物発生の有無を目視観察した。
【0039】
○;凝集なし ×;凝集物発生
・塗膜の初期耐水性評価
塗膜を常温にて水に96時間浸漬した後に、外観変化を観察して膨れの有無等外観変化を目視にて判定した。
【0040】
○;膨れ等の外観変化なし △;一部に膨れ等の外観変化あり ×;膨れ等の外観変化あり
・塗膜の耐汚染性評価
カーボン/水の10%分散液を塗膜上に滴下し、20℃飽和蒸気圧下で1日、40℃で2日間乾燥し、ガーゼを用いて滴下部を拭き取った後のカーボンの残存度合いを目視にて観察した。
【0041】
○;カーボンの痕跡が殆どなし〜薄く残存 ×;カーボンの痕跡が濃く残存〜拭き取れない
・塗膜の耐候性評価
塗膜の光沢を未処理状態と、サンシャインウェザオメーターにて4000時間処理した後に測定し、次式にて光沢保持率を求めて耐候性を評価した。
【0042】
【0043】
【発明の効果】
本発明のフッ素樹脂水性分散液から調製される塗料は、作業性のよい1液硬化型塗料でありながら優れた保存安定性および機械的安定性を有し、しかも得られた塗膜は初期における耐水性並びに耐汚染性、耐候性に優れるという顕著な効果を奏する。
Claims (7)
- フッ素樹脂が水性媒体に分散されたフッ素樹脂水性分散液であって、該フッ素樹脂がフルオロオレフィン(A)に基づく構造単位10〜60モル%、オレフィン性不飽和結合とアルコキシシリル基を共に有する有機珪素化合物(B)に基づく構造単位0.1〜20モル%、一般式 CH2=CH−(CH2)n−COOH (nは3〜15の整数である。)で表される不飽和カルボン酸(C)に基づく構造単位0.1〜20モル%、およびその他の共重合可能な化合物(D)に基づく構造単位30〜85モル%からなり、(A)、(B)、(C)および(D)の合計が100モル%であるフッ素樹脂水性分散液。
- フルオロオレフィン(A)が、クロロトリフルオロエチレンおよび/またはテトラフルオロエチレンである請求項1記載のフッ素樹脂水性分散液。
- オレフィン性不飽和結合とアルコキシシリル基を共に有する有機珪素化合物(B)が、炭素数1〜4のアルコキシ基から選ばれるそれぞれ同じかまたは異なる3個のアルコキシ基を有するビニルトリアルコキシシランである請求項1〜2記載のフッ素樹脂水性分散液。
- 一般式 CH2=CH−(CH2)n−COOH (nは3〜15の整数である。)で表される不飽和カルボン酸(C)が、10−ウンデシレン酸である請求項1〜3記載のフッ素樹脂水性分散液。
- その他の共重合可能な化合物(D)が、炭素数1〜8の分岐を有することもある脂肪酸から誘導される脂肪酸ビニルエステルおよび/または炭素数1〜6の分岐を有するかまたは脂環式のアルキル基を有するアルキルビニルエーテルである請求項1〜4記載のフッ素樹脂水性分散液。
- pHが5〜9であることを特徴とする請求項1〜5記載のフッ素樹脂水性分散液。
- (A)10〜60モル%、(B)0.1〜20モル%、(C)0.1〜20モル%および(D)30〜85モル%であって、(A)、(B)、(C)および(D)の合計が100モル%である単量体組成物を水性媒体中で乳化重合させることを特徴とする請求項1〜5記載のフッ素樹脂分散液の製造方法。
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JP30163096A JP3638065B2 (ja) | 1995-11-15 | 1996-11-13 | フッ素樹脂水性分散液 |
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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