JP3635085B2 - ポリイミドフィルム - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、銅箔を代表とする金属箔または金属薄膜が積層された電気配線板の支持体として使用されるポリイミドフィルムに関する。より具体的には力学的性質およびその面内等方性に優れ、さらに改良された寸法安定性を有する二軸配向ポリイミドフィルムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリイミドフィルムは高耐熱性、高電気絶縁性を有することから耐熱性を必要とする電気絶縁用素材として広範な産業分野で使用されており、特に銅箔が積層された電気配線板の支持体としての用途においては例えばIC等の電気部品と銅箔との接続にハンダを使用することができ、電気配線の小型軽量化が可能となった。またポリイミドフィルムを支持体とする電気配線板は折り曲げが可能であり、長尺の電気配線板が作成できることからこのポリイミドフィルムは電気絶縁用支持体として重要な位置を占めるに至った。しかしながら電気配線板の用途の多様化と共に配線数の高密度化の進展に伴って電気絶縁用支持体としての力学的性質およびその面内等方性や寸法安定性の改善がより求められるようになり、これまでにポリイミドフィルムの延伸による力学的性質の改善、共重合ポリイミドによる寸法安定性の改善等が提案されている。
【0003】
例えば特開昭63−297029号公報にはイミド化剤を含有する芳香族ポリアミック酸の有機極性溶媒溶液を閉環イミド化すると同時に成形して得られた20〜85重量%の揮発分を含有している自己支持性成形体を1.3倍以上延伸することにより芳香族ポリイミド成形体の力学的性質を改善する方法が提案されている。この方法によっては延伸した方向の寸法安定性は改善されるが、延伸方向と直角方向の寸法安定性は却って悪化してしまうばかりか力学的性質の1つである面内異方性をも悪化させるものである。
【0004】
また特公昭44−20878号公報にはイミド単位対先駆体単位の比が少なくとも30:70であるポリアミド酸/イミドゲルフィルムを揮発含有物を有せしめながら20〜550℃で少なくとも一方向に、少なくとも約5%延伸する方法が示されている。しかしながらこの方法には力学的性質の1つの面内等方性を改善する方法は何ら示されていない。
【0005】
またポリイミドフィルムの寸法安定性の改善を共重合ポリイミドの使用によって行うことについては特開昭64−16832号、特開昭64−16833号、特開昭16834号、特開平1−131241号および特開昭62−125329号など多数の提案がなされているが、これらには面内等方性を改善する方法については何ら示されていない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、改善された寸法安定性を有すると共に優れた面内等方性を有する力学的性質が改善されたポリイミドフィルムと、そのための方法を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
かかる本発明の目的は、ポリイミドの先駆体であるポリアミド酸に閉環触媒および脱水剤を含有せしめてなる該ポリアミド酸の有機溶媒溶液を支持体表面にキャストし、イミド化を一部進行させて溶媒の一部を蒸発させて自己支持性を有し且つ固形分を5〜50重量%含有するゲルフィルムの連続体を成形させ、該ゲルフィルムを回転ロールにより走行速度を規制しながら走行方向に1.1〜1.9倍延伸し、テンタクリップにより該延伸されたゲルフィルムを把持して幅方向に走行方向の延伸倍率の0.9〜1.3倍の倍率で面配向係数が0.11以上になるように延伸することを特徴とする二軸配向ポリイミドフィルムの製造方法により平均面内熱膨張係数(CTE)を未延伸フィルムより少なくとも10%小さくし、面内異方性指数を20以下とすることにより達成される。
【0008】
本発明におけるポリイミドの先駆体であるポリアミド酸は芳香族テトラカルボン酸類と芳香族ジアミン類とからなり次の式1に示される繰り返し単位で構成されるものである。
【0009】
【化1】
Figure 0003635085
上記式においてR1は少なくとも1個の芳香族環を有する4価の有機基で、その炭素数は25以下であるものとしR1に結合する2つのカルボキシル基の夫々はR1における芳香族環のアミド基が結合する炭素原子とは相隣接する炭素原子に結合しているものであり、またR2は少なくとも1個の芳香族環を有する2価の有機基で、その炭素数は25以下であるものとし、アミノ基はR2における芳香族環の炭素原子に結合しているものである。
【0010】
上記の芳香族テトラカルボン酸類の具体例としては、ピロメリット酸、3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸、2,3′,3,4′−ビフェニルテトラカルボン酸、3,3′,4,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,3,6,7−ナフタレンジカルボン酸、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル、ピリジン−2,3,5,6−テトラカルボン酸およびこれらのアミド形成性誘導体が挙げられる。ポリアミド酸の製造に当たってはこれらの酸無水物が好ましく使用される。
【0011】
上記の芳香族ジアミン類の具体例としては、パラフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン、ベンチジン、パラキシリレンジアミン、4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、4,4′−ジアミノジフェニルメタン、4,4′−ジアミノジフェニルスルホン、3,3′−ジメチル−4,4′−ジアミノジフェニルメタン、1,5−ジアミノナフタレン、3,3′−ジメトキシベンチジン、1,4−ビス(3メチル−5アミノフェニル)ベンゼンおよびこれらのアミド形成性誘導体があげられる。本発明に係る方法におけるポリイミドフィルム製造のための先駆体であるポリアミド酸の調製に特に適合する芳香族テトラカルボン酸成分と芳香族ジアミン成分との組合わせとしてはピロメリット酸二無水物と4,4′−ジアミノジフェニルエーテルおよび3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物と4,4′−ジアミノジフェニルエーテルの組合わせが挙げられ、さらにこれらの共重合そして/またはパラフェニレンジアミンの共重合が好ましく、これらから得られるポリアミド酸から製造されるゲルフィルムは、二軸延伸する際の延伸性が良く、いわゆる高倍率での二軸延伸ができ、本発明の効果を良好に達成できる。
【0012】
本発明で使用される有機溶媒の具体例としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンなどの有機極性アミド系溶媒が挙げられ、これらの有機溶媒は単独で、又は二つ又はそれ以上を組み合わせて使用しても、又はベンゼン、トルエン、キシレンのような非溶媒と組み合わせて使用してもよい。本発明で用いるポリアミド酸の有機溶媒溶液は固形分を5〜40重量%、好ましくは10〜30重量%を含有しており、またその粘度はブルックフィールド粘度計による20℃における測定値で100〜20,000ポイズ、好ましくは1,000〜10,000ポイズのものが安定した送液のために好ましい。また有機溶媒溶液中のポリアミド酸は部分的にイミド化されていてもよく、少量の無機化合物を含有していてもよい。
【0013】
本発明において芳香族テトラカルボン酸類と芳香族ジアミン類とはそれぞれのモル数が大略等しくなる割合で重合されるがその一方が10モル%、好ましくは5モル%の範囲内で他方に対し過剰に配合されていてもよい。重合反応は有機溶媒中で撹拌そして/または混合しながら0〜80℃の温度範囲で10分〜30時間連続して進められるが、必要により重合反応を分割したり、温度を上下させてもかまわない。両反応体の添加順序には特に制限はないが、芳香族ジアミン類の溶液中に芳香族テトラカルボン酸類を添加するのが好ましい。共重合においてはランダム共重合およびブロック共重合共に好ましく適用できる。重合反応中に真空脱泡することは良質なポリアミド酸の有機溶媒溶液を製造するのに有効な方法である。また重合反応の前に芳香族ジアミン類に少量の末端封止剤を添加して重合反応を制御することを行ってもよい。
【0014】
本発明で使用される閉環触媒の具体例としてはトリメチルアミン、トリエチルアミン等の脂肪族第3級アミン、およびイソキノリン、ピリジン、ベータピコリン等の複素環式第3級アミンがあげられるが、複素環式第3級アミンから選ばれる少なくとも一種のアミンを使用するのが好ましい。
【0015】
本発明で使用される脱水剤の具体例としては無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸等の脂肪族カルボン酸無水物、および無水安息香酸等の芳香族カルボン酸無水物があげられるが無水酢酸および/または無水安息香酸が好ましい。
【0016】
ポリアミド酸に対する閉環触媒および脱水剤の含有量は次の式1
【数1】
Figure 0003635085
および式2
【数2】
Figure 0003635085
となるようにするのが好ましい。またアセチルアセトン等のゲル化遅延剤を併用してもよい。
【0017】
ポリアミド酸の有機溶媒溶液からポリイミドフィルムを製造する方法としては閉環触媒および脱水剤を含有しないポリアミド酸の有機溶媒溶液をスリット付口金から支持体上に流延してフィルム状に成型し、支持体上で加熱乾燥することにより自己支持性を有するゲルフィルムとなしたる後、支持体より剥離し、さらに高温下で乾燥/熱処理することによりイミド化する熱閉環法、および閉環触媒および脱水剤を含有せしめたポリアミド酸の有機溶媒溶液をスリット付口金から支持体上に流延してフィルム状に成型し、支持体上でイミド化を一部進行させて自己支持性を有するゲルフィルムとした後、支持体より剥離し、加熱乾燥/イミド化し、熱処理をおこなう化学閉環法が代表的な方法である。
【0018】
熱閉環法は閉環触媒および脱水剤を含有せしめる設備を必要としない利点はあるが、自己支持性を有するゲルフィルムとするために支持体上で長時間加熱乾燥をする必要があり、支持体より剥離されたゲルフィルムの固形分の比率が大きくなりすぎ、安定した延伸ができないため、本発明に使用するには適当でない。
【0019】
一方化学閉環法はポリアミド酸の有機溶媒溶液に閉環触媒および脱水剤を含有せしめる設備を必要とするが、自己支持性を有するゲルフィルムが短時間で得られ、しかも支持体から剥離されたゲルフィルムの固形分の比率を小さく維持できることから高度の延伸ができ、本発明を実施するのに好適なポリイミドフィルムの製造方法である。閉環触媒および脱水剤の含有量を減少させた熱閉環法に近付いたポリイミドフィルムの製造方法は閉環触媒および脱水剤を含有せしめていることから化学閉環法といえる。
【0020】
ポリアミド酸の有機溶媒溶液に閉環触媒および脱水剤を含有せしめる方法として、ポリアミド酸の有機溶媒溶液と閉環触媒および脱水剤を回転式混合機で混合する方法、ポリアミド酸の有機溶媒溶液を静的混合機に送り込みながら該静的混合機の直前で閉環触媒および脱水剤を注入する方法、ポリアミド酸の有機溶媒溶液を支持体上に流延した後閉環触媒および脱水剤に接触させる方法等があげられるが、閉環触媒および脱水剤の含有量およびその均一性の面から混合機で混合して閉環触媒、脱水剤とポリアミド酸の有機溶媒溶液との混合液をスリット付口金に送り込む方法が好ましい。そして安定した送液を確保するためには該混合液の粘度が100〜10,000ポイズとなるように固形分濃度と温度を調節する必要がある。該混合液はポリアミド酸が閉環反応して粘度が著しく高くなり、口金から吐出できなくなる性質を持っているため、低温(例えば−10℃)に保持する必要がある。
【0021】
該混合液はスリット付口金から加熱された支持体上に流延されてフィルム状に成型され、ポリアミド酸は支持体上で閉環反応をし、自己支持性を有するゲルフィルムとなって支持体から剥離される。支持体は金属製の回転ドラムやエンドレスベルトであって良く、その温度は液体または気体の熱媒により、および/または電気ヒーター等の輻射熱により制御される。
【0022】
ゲルフィルムは支持体からの受熱および/または外側の熱風や電気ヒーター等の熱源からの受熱により30〜200℃、好ましくは40〜150℃に加熱されて閉環反応し、遊離した有機溶媒等の揮発分を乾燥させることにより自己支持性を有するようになり、支持体から剥離される。閉環反応の進んでいないポリアミド酸のフィルムを急激に加熱すると平滑な表面のゲルフィルムを得られないため加熱温度は厳しく管理する必要がある。
【0023】
支持体から剥離されたゲルフィルムは回転ロールにより走行速度を規制しながら走行方向(MD)に延伸される。延伸は150℃以下の温度で1.1〜1.9倍、好ましくは1.1〜1.6倍の倍率で実施される。回転ロールの回転速度は駆動源と速度制御装置により規制される。また回転ロールはゲルフィルムの走行速度を規制するに必要な把持力が必要であり、金属ロールとゴムロールを組合せてなるニップロールおよび/または真空吸引方式のサクションロールを使用し、回転ロールの数はその一つの把持力により決定され、必要な把持力はゲルフィルム幅に対して50kg/m〜1,000kg/mである。ゲルフィルムの走行方向への延伸倍率が1.1倍以下では延伸効果が小さく、力学的性質の改善ができない。走行方向への延伸倍率が大きくなると共に延伸効果が大きくなり、走行方向の力学的性質や寸法安定性の改善効果は大きくなるが、後続する幅方向への延伸倍率の選定範囲がゲルフィルムの破断現象により狭められ、本発明の目的の1つである面内等方性の改善のためには1.1〜1.9倍、好ましくは1.1〜1.6倍の範囲から選定するのが良い。
【0024】
走行方向に延伸されたゲルフィルムはテンタ装置に導入され、テンタクリップに幅方向両端部を把持されて、テンタクリップと共に走行しながら幅方向(TD)へ延伸され、有機溶媒等の揮発性成分を乾燥させた後熱処理されて二軸配向ポリイミドフィルムとなる。幅方向への延伸は400℃以下、好ましくは350℃以下の温度で次の式3
【0025】
【数3】
Figure 0003635085
で定義される延伸倍率比が0.9〜1.3、好ましくは1.0〜1.3となる幅方向の延伸倍率で実施される。延伸倍率比は本発明の目的の1つである面内等方性の改善のために非常に重要であり、延伸倍率比が0.9以下では走行方向への延伸効果が強くなりすぎ、1.3以上では幅方向への延伸効果が強くなりすぎるため、面内等方性が好適な範囲を外れてしまうのである。また幅方向の延伸はその50%以上をゲルフィルムが乾燥オーブンに導入される前に実施するのが好ましい。このゲルフィルムの走行方向および幅方向の延伸はこの順序でかまたは逆の順序で逐次的に行っても、また同時に行ってもよい。
【0026】
ゲルフィルムの延伸性はその固形分濃度に強く影響され、ゲルフィルムの乾燥が進んで固形分濃度が60重量%になると延伸が困難になり、走行方向に1.05倍延伸すると後続の幅方向の延伸はゲルフィルムの破断のため不可能であることから、成型されて支持体から剥離されたゲルフィルムの固形分濃度は50重量%以下にする必要があり、一方ゲルフィルムの自己支持性の観点から固形分濃度は5〜50重量%にする必要がある。
【0027】
テンタオーブンにおけるゲルフィルムの乾燥および熱処理は熱風および/または電気ヒーター等による輻射熱を使用して実施され、乾燥温度は200〜400℃、熱処理温度は350〜500℃であるが、急激に加熱するとゲルフィルムに含有される揮発性成分の突沸により製造された二軸配向ポリイミドフィルムの表面にアバタ状の欠点が発生し、平滑性を失うため、加熱方法を適宜選択する必要がある。
【0028】
このようにして製造された二軸配向ポリイミドフィルムは、分子鎖がフィルム面方向に強く配向されて、分子鎖の面方向への配向の程度を示す次の式4
【数4】
Figure 0003635085
で定義される面配向係数が0.11以上となり、寸法安定性の代表値である平均面内熱膨張係数(CTE)が未延伸フィルムよりも次の式5
【0029】
【数5】
Figure 0003635085
で計算して少なくとも10%小さくなり、さらに面内等方性を示す次の式6
【0030】
【数6】
Figure 0003635085
で定義される面内異方性指数が20以下である力学的性質を有し、面内等方性に優れており、さらに改良された寸法安定性をも有する二軸配向ポリイミドフィルムとなるのである。
【0031】
【実施例】
以下実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。実施例の説明の前に実施例において使用する測定法、評価法を説明する。
【0032】
〔特性の測定法、評価法〕
本発明における特性の測定方法および評価基準は次の通りである。
【0033】
(1) 面内異方性指数
野村商事社製 Sonic Sheet tester SST−250型を用いた。サンプルは25μmフィルムについて6枚重ねとして、走行方向250mm、幅方向170mmの大きさに正確に切断しサンプルとした。中央部は、幅方向の中央部から、端部は、フィルムの端から100mmの位置を中心とする位置からサンプリングした。
【0034】
図1は、測定結果例である。この測定結果から、フィルム中の音波の伝播速度が10°間隔に測定でき、測定データを2次曲線で相関させ、円周全方向にわたる配向分布を求め、最大配向角、最小配向角および最大配向角と最小配向角における音波の伝播速度を求めた。
【0035】
尚フィルムの走行方向および幅方向のみの測定方法もあるが、図1の測定例に示すように、走行方向と幅方向のみでは、正確な面内異方性を示さず、見かけ上面内異方性を小さく示すことから本発明の面内異方性の評価に使用することはできない。
【0036】
面内異方性指数(AI値)は、最大配向角の音波伝播速度Peak Value MAX. と最小配向角の音波伝播速度Peak Value MIN. から、上記した式6より計算される。測定例について、AI値を計算すると、AI値は28になるが、走行方向と幅方向の値のみを使用すると3となり、本発明の面内異方性が、走行方向と幅方向の測定のみでは評価できないことが理解できる。
【0037】
(2) 熱膨張係数
バーバー コールマン プログラマー−コントローラーを備えたオートンディラトメーターを用いた。
【0038】
サンプルは25μmフィルムについて2.5cm×13cmに切り取り、しっかりと巻いて直径が約4mmの円柱状にし、針金でしばったものを使用した。円柱状のサンプルはディラトメーターにセットされて、先ず5℃/分から20℃/分の昇温速度で300℃迄加熱し、室温迄冷却した後、再び300℃迄加熱した時の熱膨張曲線を求め、150℃と250℃の間の熱膨張曲線の勾配から熱膨張係数を求めた。
【0039】
平均面内熱膨張係数(CTE)は面内異方性指数測定時に求めた最大配向角方向と最小配向角方向の熱膨張係数から次の式7
【数7】
Figure 0003635085
により計算した。
【0040】
(3) カール
フレキシブル銅張積層体から走行方向250mm長、幅方向50mm長に切り取り、定盤上に置き、カール高さを測定した。カール量は、フレキシブル銅張積層体の四隅の高さh、h、h、hを測定し、次の式8
【数8】
Figure 0003635085
により計算し、次の3区分で評価した。
【0041】
小:カール量が10mm未満
中:カール量が10mm以上〜30mm未満
大:カール量が30mm以上
カール量の区分の持つ意味は経験的にフレキシブルプリント回路基板の電気設備への組み込み時の操作のしやすさを示す尺度である。
【0042】
小:容易に組み込める
中:人手を加えれば組み込める
大:組み込みが困難なことがある
【0043】
(4) 面配向係数
メトリコン コーポレーション製のメトリコンPC−2010を用い、波長0.633μmの光線により測定した。
サンプルは3cm×3cmに切り取り、メトリコンPC−2010にセットされて面内最大屈折率、面内最小屈折率および厚さ方向屈折率を測定し、上記した式4により面配向係数を求めた。
【0044】
実施例1
乾燥したN,N−ジメチルアセトアミド190.6kg中に4,4′−ジアミノジフェニルエーテル20.024kg(0.1kmol)を溶解し、20℃で撹拌しながら、精製した粉末状のピロメリット酸二無水物21.812kg(0.1kmol)を少量ずつ添加し、1時間撹拌し続けて、透明なポリアミド酸溶液を得た。この溶液は、20℃で3500ポイズの粘度であった。このポリアミド酸溶液に、無水酢酸をポリアミド酸単位に対して2.5mol、ピリジンをポリアミド酸単位に対して2.0molを冷却しながら混合し、ポリアミド酸の有機溶媒溶液を得た。このポリアミド酸の有機溶媒溶液をスリット付口金に定量供給し、90℃の金属ドラム上に流延し、自己支持性のあるゲルフィルムを得た。得られたゲルフィルムの固形分は18重量%であった。ゲルフィルムを金属ドラムから剥離し、金属ロールとシリコンゴムロールからなる2組のニップロールで温度65℃で走行方向(MD)に延伸し次いでテンタに導入した。走行方向の延伸倍率すなわち、金属ドラムと各ニップロールおよびテンタとの速度比は、金属ドラムの速度に対して1組目のニップロールの速度比は1.12、2組目のニップロールのそれは1.23、テンタのそれは1.39に調整した。テンタで幅方向(TD)に1.61倍延伸し、260℃の温度で40秒間乾燥し、次いで430℃で1分間熱処理し、冷却ゾーンでリラックスさせながら30秒間冷却し、フィルムをエッジカットし、幅1997mm、厚さ25μmの二軸延伸ポリイミドフィルムを得た。このフィルムの平均面内熱膨張係数は27.5ppm/℃、面配向係数は0.1203であった。またその端部の面内異方性指数は8、中央部の面内異方性指数は7であった。
【0045】
このフィルムに、ポリエステル/エポキシ系の接着剤をロールコータで塗布し、160℃でドライヤーで乾燥した。このフィルムの該接着剤を塗布した面に電解銅箔を130℃で加圧ラミネートし、24時間キュアーしてフレキシブル銅張ポリイミドシートを得た。
【0046】
これを前記の方法でカールを評価した。カールは小であった。
【0047】
実施例2
実施例1において、金属ドラムと1組目のニップロールの速度比を1.12、2組目のニップロールのそれを1.23、テンタのそれを1.38とし、そして幅方向に1.58倍延伸した以外はすべて実施例1と同様にして、幅2130mm、厚さ25μmの二軸延伸ポリイミドフィルムを得た。
【0048】
このフィルムの熱膨張係数は27.5ppm/℃、面配向係数は0.1285であった。またその端部の面内異方性指数は4、中央部の面内異方性指数は4であった。実施例1と同様にしてフレキシブル銅張ポリイミドシートを得た。このシートのカールを評価したが小であった。
【0049】
実施例3
実施例1において、金属ドラムと1組目のニップロールの速度比を1.09、2組目のニップロールのそれを1.14、テンタのそれを1.22とし、そして幅方向に1.30倍延伸した以外はすべて実施例1と同様にして、幅1898mm、厚さ75μmの二軸延伸ポリイミドフィルムを得た。
【0050】
このフィルムの中央部の熱膨張係数は<35ppm/℃、面配向係数は0.1204であった。またその端部の面内異方性指数は15、中央部の面内異方性指数は10であった。実施例1と同様にしてフレキシブル銅張ポリイミドシートを得た。このシートのカールを評価したが中であった。
【0051】
比較例1
この比較例はニップロールを使用しないで製造したフィルムは端部および中央部の両方で顕著に高い異方性指数を有し、そして実施例1および2によって製造したフィルムよりも20%高い熱膨張係数を有することを示すものである。
【0052】
すなわち実施例1においてニップロールを使用せずに、金属ドラムとテンタの速度比で1.16倍延伸したことと、幅方向に1.30倍延伸した以外はすべて実施例1と同様にして、幅2000mm、厚さ25μmの二軸延伸ポリイミドフィルムを得た。このフィルムの平均熱膨張係数は35ppm/℃、面配向係数は0.1170であった。またその端部の面内異方性指数は41、中央部の面内異方性指数は10であった。実施例1と同様にしてフレキシブル銅張ポリイミドシートを得た。このシートのカールは中央部は小、端部では大であった。
【0053】
比較例2
この比較例はニップロールを使用しないで製造したフィルムは端部において実施例3で製造したフィルムよりも顕著に高い異方性指数を有することを示すものである。
【0054】
実施例3においてニップロールを使用しないことおよびテンター速度対金属ドラム速度の比を1.14、幅方向の延伸比を1.25とする以外はすべて実施例3と同様にして、幅2085mm、厚さ75μmの二軸延伸ポリイミドフィルムを得た。
【0055】
このフィルムの端部の面内異方性指数は30、中央部の面内異方性指数は5、平均熱膨張係数は35ppm/℃、面配向係数は0.1157であった。実施例1と同様にして、フレキシブル銅張シートを得た。この銅張シートのカールは中央部は小、端部では大であった。
【0056】
比較例3
この比較例は延伸していないゲルフィルム、すなわち走行方向延伸倍率、幅方向延伸倍率が共に1.0でニップロールを使用しないで製造したフィルムの熱膨張係数は実施例1および2で製造したフィルムのそれと比較したときより高いものであることを示すものである。
【0057】
実施例1において比較のためにMDおよびTD延伸の両方を1.0とするピンテンタフレーム上に載置した以外はすべて実施例1を繰り返した。得られたフィルムは異方性指数を測定するのには小さすぎるものであった。平均熱膨張係数は40ppm/℃、面配向係数は0.0900であった。
【0058】
以上の実施例1〜3および比較例1〜3で得られた結果を次の表1に示す。
【0059】
【表1】
Figure 0003635085
【0060】
実施例4
乾燥したN,N−ジメチルアセトアミド185.79kg中にパラフェニレンジアミン1.3kg(0.012kmol)を溶解し、20℃で撹拌しながら、精製した粉末状のピロメリット酸二無水物2.55kg(0.0117kmol)を少量ずつ添加し、1時間撹拌し続けた。次に4,4′−ジアミノジフェニルエーテル17.62kg(0.088kmol)を20℃で撹拌しながら少量ずつ添加して溶解し、続いて精製した粉末状のピロメリット酸二無水物19.26kg(0.083kmol)を少量ずつ添加し、1時間撹拌し続けて透明なポリアミド酸溶液を得た。この溶液は20℃で3600ポイズの粘度であった。このポリアミド酸溶液に、無水酢酸をポリアミド酸単位に対して2.5mol、ピリジンをポリアミド酸単位に対して2.0molを冷却しながら混合し、ポリアミド酸の有機溶媒溶液を得た。このポリアミド酸の有機溶媒溶液をスリット付口金に定量供給し、90℃の金属ドラム上に流延し、自己支持性のあるゲルフィルムを得た。得られたゲルフィルムの固形分は18重量%であった。ゲルフィルムを金属ドラムから剥離し、金属ロールとシリコンゴムロールからなる2組のニップロールで温度65℃で走行方向(MD)に延伸し次いでテンタに導入した。走行方向の延伸倍率すなわち、金属ドラムと各ニップロールおよびテンタとの速度比は、金属ドラムの速度に対して1組目のニップロールの速度比は1.10、2組目のニップロールのそれは1.21、テンタのそれは1.35に調整した。テンタで幅方向(TD)に1.44倍延伸し、260℃の温度で40秒間乾燥し、次いで430℃で1分間熱処理し、冷却ゾーンでリラックスさせながら30秒間冷却し、フィルムをエッジカットし、幅2070mm、厚さ25μmの二軸延伸ポリイミドフィルムを得た。このフィルムの平均面内熱膨張係数は17.8ppm/℃、面配向係数は0.1414であった。またその端部の面内異方性指数は10、中央部の面内異方性指数は5であった。実施例1と同様にしてフレキシブル銅張ポリイミドシートを得た。このシートのカールを評価したが小であった。
【0061】
実施例5
乾燥したN,N−ジメチルアセトアミド190.4kg中に4,4′−ジアミノジフェニルエーテル7.01kg(0.035kmol)を溶解し、20℃で撹拌しながら、精製した粉末状のピロメリット酸二無水物2.84kg(0.013kmol)を少量ずつ添加し、1時間撹拌し続けた。次にパラフェニレンジアミン5.73kg(0.053kmol)を20℃で撹拌しながら少量ずつ添加して溶解し、続いて精製した粉末状の3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物10.3kg(0.035kmol)を少量ずつ添加し、1時間撹拌し続けた。次に精製した粉末状のピロメリット酸二無水物8.72kg(0.04kmol)を少量ずつ添加し、1時間撹拌し続けて透明なポリアミド酸溶液を得た。この溶液は20℃で3300ポイズの粘度であった。このポリアミド酸溶液に無水酢酸をポリアミド酸単位に対して2.5mol、β−ピコリンをポリアミド酸単位に対して2.0molを冷却しながら混合し、ポリアミド酸の有機溶媒溶液を得た。このポリアミド酸の有機溶媒溶液をスリット付口金に定量供給し、90℃の金属ドラム上に流延し、自己支持性のあるゲルフィルムを得た。得られたゲルフィルムの固形分は13重量%であった。ゲルフィルムを金属ドラムから剥離し、2個のサクションロールで温度65℃で走行方向(MD)に延伸し次いでテンタに導入した。走行方向の延伸倍率すなわち、金属ドラムと各サクションロールおよびテンタとの速度比は、金属ドラムの速度に対して1個目のサクションロールの速度比は1.138、2個目のサクションロールのそれは1.14、テンタのそれは1.17に調整した。テンタで幅方向(TD)に1.32倍延伸し、240℃の温度で50秒間乾燥し、次いで430℃で75秒間熱処理し、冷却ゾーンでリラックスさせながら38秒間冷却し、フィルムをエッジカットし、幅1400mm、厚さ75μmの二軸延伸ポリイミドフィルムを得た。このフィルムの平均面内熱膨張係数は17.7ppm/℃、面配向係数は0.1786であった。またその端部の面内異方性指数は12、中央部の面内異方性指数は10であった。実施例1と同様にしてフレキシブル銅張ポリイミドシートを得た。このシートのカールを評価したが小であった。
【0062】
本発明に係る方法により製造された二軸配向ポリイミドフィルムは十分に配向されていることにより、平均面内熱膨張係数が未延伸フィルムより少なくとも10%小さく、また走行方向と幅方向の延伸倍率比を調整して面内異方性指数をフィルム全面にわたり20以下としたことによりフレキシブル銅張板のカールを小〜中にすることができたのである。
【0063】
【発明の効果】
本発明はポリイミドフィルムの力学的性質およびその面内等方性と同時に寸法安定性を改善することにより、ポリイミドフィルムに銅箔を代表とする金属箔または金属薄膜を積層した電気配線板用途の多様化と配線数の高密度化の進展に適応できるポリイミドフィルムの提供を可能にしたものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】面内異方性指数の測定例を示す図である。
【符号の説明】
1:最大配向角の方向
2:最小配向角の方向
3:各方向の音波の伝播速度を図示した点

Claims (7)

  1. 芳香族テトラカルボン酸と芳香族ジアミンから繰り返し単位が構成されるポリアミド酸から製造される延伸芳香族ポリイミドフイルムであって、前記芳香族テトラカルボン酸がピロメリット酸、3,3'4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、2,3’,3,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,3,6,7−ナフタレンジカルボン酸、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル、ピリジン−2,3,5,6−テトラカルボン酸およびこれらのアミド形成性誘導体からなる群より選択され、前記芳香族ジアミンがパラフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン、ベンチジン、パラキシリレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、1,5−ジアミノナフタレン、3,3’−ジメトキシベンチジン、1,4−ビス(3−メチル−5−アミノフェニル)ベンゼンおよびこれらのアミド形成性誘導体からなる群より選択され、さらに面内異方性指数が20以下であり、等方性でかつ面配向係数が0.11以上になるように二軸配向された、幅1400mm以上であることを特徴とする延伸芳香族ポリイミドフィルム。
  2. 芳香族テトラカルボン酸がピロメリット酸のアミド形成性誘導体である、その酸無水物であり、芳香族ジアミンが4,4'−ジアミノジフェニルエーテルであることを特徴とする、請求項1記載の延伸芳香族ポリイミドフィルム。
  3. 芳香族テトラカルボン酸がピロメリット酸のアミド形成性誘導体である、その酸無水物であり、芳香族ジアミンが4,4'−ジアミノジフェニルエーテルとパラフェニレンジアミンからなることを特徴とする、請求項1記載の延伸芳香族ポリイミドフィルム。
  4. 芳香族テトラカルボン酸がピロメリット酸のアミド形成性誘導体である、その酸無水物と、3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸のアミド形成性誘導体であるその酸無水物とからなり、芳香族ジアミンが4,4'−ジアミノジフェニルエーテルとパラフェニレンジアミンからなることを特徴とする、請求項1記載の延伸芳香族ポリイミドフィルム。
  5. 金属箔が耐熱性接着剤を介して積層されてなる請求項1記載の延伸芳香族ポリイミドフィルム。
  6. 金属箔が耐熱性接着剤を介することなく積層されてなる請求項1記載の延伸芳香族ポリイミドフィルム。
  7. 金属薄層が耐熱性接着剤を介することなく直接的に載置されてなる請求項1記載の延伸芳香族ポリイミドフィルム。
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