JP3634184B2 - 棒口紅成形用弾性成形型 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、棒口紅を成形することにより製造するための弾性を有する成形型に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
口紅は、棒口紅、練り口紅、液状口紅の3種に大別されるが、一般に使用されているのは保存や携帯に便利な棒口紅とされている。この棒口紅の原材料は、油脂やロウ類を組み合わせた油性の基材と、着色料とから構成されている。一般に、棒口紅はプラスチック等の成形型を用いて成形することにより製造されている。すなわち、所定の油脂とロウ類とを混合した油性の基材を加熱溶解し、これに着色料となる色材を添加してよく分散させ、脱気後、高温状態の棒口紅の原材料を成形するプラスチックの成形型内に充填する。次いで、流動状態の棒口紅を固化するために、棒口紅の原材料が充填された成形型ごと冷却する。流動状態の棒口紅が固化されたら成形型から固化された棒口紅を取り出す。さらに、成形された棒口紅を口紅容器に装着し、口紅の表面に光沢を付加するために表面を溶かして滑らかにするフレーミング処理を行う。このようにして、棒口紅は製造されていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
このように、棒口紅の原材料が加熱されて流動状態とされた高温のまま成形型に充填されるため、成形型がプラスチックとされていると変形しやすくなる。このため、プラスチック成形型は棒口紅を1回成形する毎に交換していた。このようにプラスチック成形型を使用すると、1回の使用で破棄され産業廃棄物となっていた。
これを解決するために、天然ゴムやクロロプレンゴムなどのエラストマー材料で作成した弾性を有する成形型を用いて棒口紅を成形することが提案されていた。この弾性成形型においても、棒口紅を製造する際には従来と同様に高温とされた棒口紅の原材料が充填されて成形されることになる。すると、原材料に含まれる油性等の溶剤により弾性成形型が膨潤するようになり、使用回数が制限されてしまうという問題点があった。
【0004】
なお、弾性成形型の機械的強度を向上したり耐久性を向上するためにカーボンブラックやクレー等の補強剤が配合されているが、このような補強剤を配合しても棒口紅の原材料に含まれる油性等の溶剤により弾性成形型が膨潤するという問題点を解決することはできない。
さらに、従来は成形後にフレーミング処理を行って表面に光沢を付加するようにしていたが、この作業は成形された棒口紅の表面が滑らかでなく光沢がないことから必要となる作業である。そこで、表面を滑らかにして光沢のある棒口紅を成形することのできる成形型が、特開平6−24941号に開示されている。この成形型は、カーボンブラックやクレー等の補強剤をエラストマーに配合したことが、光沢を失わせる原因であるとの知見に基づいて、弾性成形型を積層構造とし、最内層を補強剤を含まないエラストマーで構成するようにしている。
しかしながら、特開平6−24941号に開示された成形型においても棒口紅の原材料に含まれる油性等の溶剤により弾性成形型が膨潤し、使用回数が制限されてしまうという問題点があった。
【0005】
そこで、本発明は使用回数を大幅に改善することができると共に、成形後にフレーミング処理を行うことを不要とできる棒口紅成形用弾性成形型を提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の棒口紅成形用弾性成形型は、保持可能とされる鍔部と、該鍔部から延伸される円筒部からなる棒口紅成形用弾性成形型であって、前記円筒部内が棒口紅の材料が充填されて固化される成形孔部とされて、前記円筒部の径が拡開されることにより固化された棒口紅が前記成形孔部から取り出されるようにされており、前記鍔部と前記円筒部とがフロロシリコンゴムを用いて一体成形されている。
また、上記本発明の棒口紅成形用弾性成形型において、前記成形孔部の出口に、該成形孔部より若干径が大きくされた第1孔部が形成されており、この第1孔部に棒口紅と一体に成形される口金が嵌合可能とされていてもよいものである。
【0007】
このような本発明によれば、弾性成形型をフロロシリコンゴムを用いて構成するようにしたので、フロロシリコンゴムが耐熱性、耐寒性、耐油性に優れていることから、棒口紅の原材料に含まれる油性等の溶剤により弾性成形型が膨潤することを防止することができる。このため、弾性成形型の使用回数を大幅に改善することが可能となった。具体的には、数千回繰り返して使用することが可能となる。したがって、棒口紅の製造経費を安価にすることができる。
また、産業廃棄物となる使用後の成形型を極端に低減することができるため、環境用のISO(International Organization for Standardization)の基準に適合することができるようになる。
さらに、弾性成形型を構成するフロロシリコンゴムにはカーボンブラックやクレー等の補強剤を配合していないことから、成形後の棒口紅の表面は滑らかで光沢を帯びたものとすることができる。したがって、成形後にフレーミング処理することを省略することができ、棒口紅の製造作業のプロセスを簡易化することができるようになる。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態にかかる棒口紅成形用の弾性成形型の構成を図1および図2に示す。ただし、図1(a)は本発明の棒口紅成形用の弾性成形型の上面図、同図(b)はその平面図、図2(a)は本発明の棒口紅成形用の弾性成形型の断面図、同図(b)は棒口紅成形用の弾性成形型の下面図である。
これらの図に示すように、本発明にかかる棒口紅成形用の弾性成形型1は、円板状の鍔部10と、この鍔部10に一体に成形されている円筒部14とから構成されている。この弾性成形型1は、フロロシリコンゴムを成形材料として一体成形により作成されている。
【0009】
鍔部10には、図1(a)および図2(a)に示すように浅いリング状溝11が形成されており、このリング状溝11より若干径が細くされた円形の第1孔部12が、リング状溝11に連通されて形成されている。さらに、第1孔部12に連通して棒口紅を成形する部分である成形孔部13が形成されている。この成形孔部13の形状は、製作すべき棒口紅を反転した形状とされており、図示する例では図1(a)に示すように断面六角形の細長い形状とされている。ただし、断面六角形に限らず、断面円形、断面楕円形、断面多角形のいずれの形状としてもよいものである。また、成形孔部13の側壁には図2(a)に示すように文字や模様を刻印した刻印部17を設けるようにしてもよい。この刻印部17は突起状に形成されており、棒口紅においては凹状に刻印された文字や模様となる。
【0010】
本発明にかかる弾性成形型1の鍔部10は、棒口紅製造装置に弾性成形型1を装着する際の支持部となり、鍔部10の周縁にはL字状に折曲されたリング状立設部16が形成されている。このリング状立設部16を製造装置の対応する溝に嵌着することにより、弾性成形型1を製造装置に対して位置合わせして固着することができる。
また、リング状溝11および円形の第1孔部12は、棒口紅に一体に成形される図示しない円筒状の口金が嵌挿される部分であり、棒口紅を成形する際には口金を予め弾性成形型1の第1孔部12に嵌挿した後に、成形孔部13内に溶解した棒口紅の原材料を充填する。口金には内部に向かう複数の突起が形成されており、この突起を囲むように棒口紅が成形されるため、棒口紅に一体に口金が固着されるようになる。
【0011】
弾性成形型1に棒口紅の原材料を充填した後、この状態で冷却されることにより、溶解した棒口紅は固化される。固化された後に、弾性成形型1の第1孔部12に嵌挿した口金を保持して棒口紅を成形孔部13から取り出すようにする。この際に、成形孔部13内に刻印部17が形成されている場合は、刻印部17が突起状とされているため、単純に固化した棒口紅を引き出すようにして取り出すと、刻印された文字や模様が崩れてしまうようになる。そこで、弾性成形型1が弾性を有していることを利用して、固化された棒口紅を取り出すようにする。すなわち、円板状の鍔部10を保持して外方の応力を印加することにより、成形孔部13の径を大きく拡開することにより、固化した棒口紅を口金を保持して取り出すようにする。この場合は、成形孔部13が拡開されていることから刻印された文字や模様が崩れてしまうことを防止することができる。あるいは、弾性成形型1の円筒部14をチャンバー内に位置させ、チャンバー内を真空ポンプ等で吸引する。すると、円筒部14外より円筒部14内の圧力が高くなることから、弾性を有している円筒部14の全体が拡開されるようになり、固化した棒口紅を口金を保持して取り出しても、刻印された文字や模様が崩れてしまうことを防止することができるようになる。
【0012】
このようにして、弾性成形型1から取り出された棒口紅の表面は滑らかな光沢を帯びた棒口紅とされる。これは、フロロシリコンゴムには補強剤を配合するまでもなく、十分な耐久性があり、カーボンブラックやクレー等の補強剤を配合する必要がないからである。したがって、弾性成形型1をフロロシリコンゴム製とすると、成形後にフレーミング処理することを省略することができ、棒口紅の製造作業のプロセスを簡易化することができるようになる。
【0013】
弾性成形型1をフロロシリコンゴム製とした際の耐久性について一例を挙げて、以下に具体的に説明する。
本発明の弾性成形型1のテストピース数を24個として、成形孔部13内に棒口紅の原材料を模擬することのできるミックスオイルを、棒口紅を成形する際より高い約150℃まで加熱して充填した。次いで、弾性成形型1の円筒部14を収納したチャンバー内を真空ポンプにより600mm/Hgになるよう毎分32回の割合で間欠吸引動作を行った。この間に、本発明の弾性成形型1の24個のテストピースの全高を測定することによりオイルによる膨潤の影響のテストを行った。
この結果、図3に示す図表のようにテスト前には全高が37.67mmであった24個のテストピースは、バキュームを1920回行った60分後には、24個のテストピースの全高の平均が37.67mmとなり、全高はテスト前から変化することなく膨潤率は0.00%であった。また、バキュームを4160回行った130分後には、24個のテストピースの全高の平均が37.77mmと若干長くなったが、その膨潤率はわずか0.08%であった。このことから、本発明にかかる弾性成形型1は数千回繰り返して使用しても寸法安定性に優れており、成形される棒口紅の形状が変化することを防止することができる。なお、テストピースを240個と増加して同様のテストを行ったが、その結果は上記と同様であり、本発明の弾性成形型は優れた寸法安定を有することが確かめられた。
【0014】
【発明の効果】
以上のように、本発明の弾性成形型はフロロシリコンゴム製としたので、フロロシリコンゴムが耐熱性、耐寒性、耐油性に優れていることから、棒口紅の原材料に含まれる油性等の溶剤により弾性成形型が膨潤することを防止することができる。このため、弾性成形型の使用回数を大幅に改善することが可能となった。具体的には、数千回繰り返して使用することが可能となる。したがって、棒口紅の製造経費を安価にすることができる。
また、産業廃棄物となる使用後の成形型を極端に低減することができるため、環境用のISO(International Organization for Standardization)の基準に適合できるようになる。
さらに、弾性成形型を構成するフロロシリコンゴムにはカーボンブラックやクレー等の補強剤を配合していないことから、成形後の棒口紅の表面は滑らかで光沢を帯びたものとすることができる。したがって、成形後にフレーミング処理することを省略することができ、棒口紅の製造作業のプロセスを簡易化することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の棒口紅成形用の弾性成形型の実施の形態の構成を示す上面図および平面図である。
【図2】本発明の棒口紅成形用の弾性成形型の実施の形態の構成を示す断面図および下面図である。
【図3】本発明の実施の形態の棒口紅成形用の弾性成形型における膨潤率を測定した結果の図表を示す図である。
【符号の説明】
1 弾性成形型
10 鍔部
11 リング状溝
12 孔部
13 成形孔部
14 円筒部
16 リング状立設部
17 刻印部
Claims (2)
- 保持可能とされる鍔部と、該鍔部から延伸される円筒部からなる棒口紅成形用弾性成形型であって、
前記円筒部内が棒口紅の材料が充填されて固化される成形孔部とされて、前記円筒部の径が拡開されることにより固化された棒口紅が前記成形孔部から取り出されるようにされており、前記鍔部と前記円筒部とがフロロシリコンゴムを用いて一体成形されていることを特徴とする棒口紅成形用弾性成形型。 - 前記成形孔部の出口に、該成形孔部より若干径が大きくされた第1孔部が形成されており、この第1孔部に棒口紅と一体に成形される口金が嵌合可能とされていることを特徴とする請求項1記載の棒口紅成形用弾性成形型。
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