JP3633831B2 - 作業車 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、油圧アクチュエータと、この油圧アクチュエータに対して作動油の給排を行う電磁比例型の制御弁と、この制御弁の電磁ソレノイドに対して電源からの電力を間歇的に供給する電力供給手段と、この電力供給手段から電磁ソレノイドに電力が供給された際に電磁ソレノイドに流れる電流を電圧信号に変換して帰還させるフィードバック信号系とを備えると共に、このフィードバック信号系の電圧信号の値を目標とする値に維持するよう前記電力供給手段から間歇的に供給される電力のデューティ比を調節する電流制御手段を備えている作業車に関する。
【0002】
【従来の技術】
上記のように構成された作業車として特開平3‐91406号公報や特開平3‐271801号公報に示されるものが存在し、何れの従来技術とも油圧シリンダ(油圧アクチュエータ)を制御する弁(制御弁)の電磁ソレノイドに供給する電力をパワートランジスタで制御する電力制御系と、電磁ソレノイドに供給された電流を抵抗器に流し、この抵抗器で発生する電圧信号を制御装置に戻すフィードバック系とを備えると共に、このフィードバック系からの電圧値が目標とする値となるようパワートランジスタを制御するソフトウエアで成る制御系とを備えることで、弁の開度を目標とする値に設定するものとなっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
前述のように電磁ソレノイドに供給した電力と対応したフィードバック信号に基づいて該電磁ソレノイドに供給する電流値を制御するものでは電磁ソレノイドに対する供給電流値を比較的高い精度で目標値に維持できるものとなる。しかし、作業車に備えられる電磁ソレノイドは作業時の振動や、外気温の影響や、雨水の侵入等によって断線や短絡を発生することがあり、このような故障を確実に把握する技術が望まれている。そこで、フィードバック信号の電圧値に基づいて電磁ソレノイドの状態を判別することも考えられるが、農用トラクタのような作業車では電源としてのバッテリーの電圧が変動することも多く、フィードバック信号だけで判別できるものは完全な断線程度であった。
本発明の目的は、電磁ソレノイドに故障を発生した場合には確実正確に故障の発生を判別できる作業車を合理的に構成する点にある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1の特徴(請求項1)は、油圧アクチュエータと、この油圧アクチュエータに対して作動油の給排を行う電磁比例型の制御弁と、この制御弁の電磁ソレノイドに対して電源からの電力を間歇的に供給する電力供給手段と、この電力供給手段から電磁ソレノイドに電力が供給された際に電磁ソレノイドに流れる電流を電圧信号に変換して帰還させるフィードバック信号系とを備えると共に、このフィードバック信号系の電圧信号の値を目標とする値に維持するよう前記電力供給手段から間歇的に供給される電力のデューティ比を調節する電流制御手段を備えている作業車において、前記電源の電圧値を計測する電圧計測手段を備え、この電圧計測手段で計測される前記電源の電圧値と、前記電流制御手段で設定されたデューティ比と、フィードバック信号系の値とに基づいて電磁ソレノイドの抵抗値を求め、この抵抗値が不適正な値である場合には故障と判別する故障判別手段を備えている点にあり、その作用、及び、効果は次の通りである。
【0005】
本発明の第2の特徴(請求項2)は請求項1において、前記故障判別手段で判別された電磁ソレノイドの抵抗値が設定値より大きい場合には電磁ソレノイドが導通不良若しくは断線状態にあると判断し、設定値より小さい場合には電磁ソレノイドが短絡状態にあると判断するよう構成されている点にあり、その作用、及び、効果は次の通りである。
【0006】
本発明の第3の特徴(請求項3)は請求項1又は2において、前記故障判別手段で故障の発生を判別した場合には報知手段に対して故障の情報を出力させる報知制御手段を備えている点にあり、その作用、及び、効果は次の通りである。
【0007】
〔作用〕
【0008】
上記第1の特徴によると、電圧計測手段で計測した電源の電圧と電流制御手段で設定されたデューティ比とから電磁ソレノイドに印加された電圧値を求め得るものとなり、又、フィードバック信号系からの電圧信号に基づいて電磁ソレノイドに流れた電流値を求め得るものとなり、これらから電磁ソレノイドの抵抗値を求め、この抵抗値に基づいて故障判別手段が故障の有無を判別できるものとなる。つまり、電磁ソレノイドの抵抗値はオームの法則に基づく単純な演算で求められるので、電源電圧が変動した場合でも簡単な演算から電磁ソレノイドの正確な抵抗値を求めて電磁ソレノイドの状態を誤りなく判別できるものとなる。
【0009】
上記第2の特徴によると、電磁ソレノイドの抵抗値と予め設定された設定値との比較によって電磁ソレノイドの状態を判別し、抵抗値が高い場合には導通不良や断線であると判断でき、抵抗値が低い場合には短絡であると判断でき、基準に基づいて判断するので判断結果は適正なものとなる。
【0010】
上記第3の特徴によると、電磁ソレノイドが断線状態や短絡状態にある場合には報知制御手段が報知手段に対して故障の情報を出力するので、作業車は報知手段に報知される内容に基づいて故障の発生を容易に認識できるものとなる。
【0011】
〔発明の効果〕
従って、電源電圧が変動する状況でも電磁ソレノイドに故障が発生した場合には故障の判別を正確に行い得る作業車が合理的に構成されたのである(請求項1)。又、故障の状況も区別して判別できるものとなり(請求項2)、作業途中であっても電磁ソレノイドの故障を把握して適切な対応をとりうるものとなってのである(請求項3)。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1及び図2に示すように、操向操作自在に構成された駆動型の前車輪1及び駆動型の後車輪2を備えた車体の前部にエンジンEを搭載すると共に、このエンジンEからの動力が主クラッチ3を介して伝えられるミッションケース4を車体の中央部から後部に亘って配置し、車体の中央部に運転座席5とステアリングハンドル6とを配置し、又、このミッションケース4の後端位置の縦向き姿勢の油圧式の左右一対のリフトシリンダ7、7で駆動昇降される左右一対のリフトアーム8、8を備え、このリフトアーム8、8で昇降操作される3点リンク機構Lを介してロータリ耕耘装置Aを車体の後端に支持して作業車の一例としての農用トラクタを構成する。
【0013】
前記3点リンク機構Lは車体後端の上部位置に備えたトップリンク9と車体後部両側部に備えた左右一対のロアーリンク10,10とで構成され、この左右のロアーリンク10,10と前記左右のリフトアーム8,8とをリフトロッド11,11で吊り下げ状態に支持することでリフトアーム8の揺動作動によってロータリ耕耘装置Aが昇降作動自在に構成されている。そして、リフトアーム8の揺動量を計測するポテンショメータ型のリフトアームセンサ8Sを備えている。又、リフトロッド11,11の一方に介装された油圧式で複動作動するローリングシリンダ12の伸縮作動によって該ロータリ耕耘装置Aがローリング作動自在に構成されている。又、車体の後部位置には車体のローリング姿勢を計測するポテンショメータ型のローリングセンサRSを備え、ローリングシリンダ12の作動量を計測するようローリングシリンダ12の伸縮作動部にインナーワイヤ14Aとアウタワイヤ14Bを支持したセンサワイヤ14の他方の端部に該センサワイヤ14で操作される回転操作式でポテンショメータ型のストロークセンサSSを備えている。
【0014】
図1、図2、図4に示すように、このロータリ耕耘装置Aは横向き姿勢の駆動軸周りで回転する多数の耕起爪16を備えると共に、装置本体17の後部位置に横向き姿勢の軸芯周りで揺動自在な後カバー18を備え、この後カバー18に揺動自在に連結したロッド19を装置本体17のフレーム17Fとの間に外装し、圧縮バネで該後カバー18に対して下方に向かう付勢力を作用させよう構成してあり、又、このロッド19と後カバー18との支持位置を変更することで後カバー18を吊り上げ状態に固定し得るよう構成されている。そして、この後カバー18の揺動量を計測するカバーセンサ18Sを本体上面に備えている。
【0015】
図3及び図5に示すように、前記運転座席6には連結及び解除自在な左右のシートベルト20を備え、この運転座席6の右側部に前記リフトアーム8の揺動角度を調節してロータリ耕耘装置Aを昇降制御するポジションレバー21と、コントロールパネルCPとを配置し、運転座席5の左側部には走行速度を設定する主変速レバー22とクリープ変速レバー23とを配置してあり、前記ステアリングハンドル8の左側部に前後方向に揺動操作自在な前後進切換レバー24を配置し、ステアリングハンドル6の右側部にアクセルレバー25と強制昇降レバー26を配置してある。又、ステップの左側には踏み込み操作で前記主クラッチ3を切り操作する主クラッチペダル27を配置してあり、ステップの右側には踏み込み操作で左右の後車輪2,2を独立して制動操作するサイドブレーキペダル28,28を配置してある。ステアリングハンドル8の前方位置のパネル部にメータ部Mと表示切換スイッチ29と選択スイッチ30とキースイッチ31とを配置してあり、前記選択スイッチは押し操作によって「2WD」「4WD」「倍速」「AD倍速」の4モードのいずれか1つを選択できるものとなっている。
【0016】
又、「2WD」「4WD」「倍速」「AD倍速」の4モードのうち、「2WD」の制御モードでは前車輪1に対する伝動を遮断して後車輪2の駆動力だけでの走行を行わせるものとなり、「4WD」の制御モードでは前車輪1に対して周速度が後車輪2と等しくなる速度の駆動力を伝えて前後の車輪の同時駆動による走行を行わせる(標準駆動状態)ものとなり、「倍速」の制御モードでは前車輪1が予め設定された操向角度より大きく操作された際に、「4WD」の標準駆動状態から前車輪1の駆動速度を増大する駆動状態に切換えて小半径での旋回を行わせるものとなり、「AD倍速」の制御モードでの制御は前車輪1が予め設定された操向角度より大きく操作された際に、「4WD」の標準駆動状態から前車輪1の駆動速度を増大する駆動状態に切換えると同時に旋回内側の後車輪2を制動して一層小半径での旋回を行わせるものとなっている。
【0017】
前記メータ部Mは図5に示すように、中央位置に指針式のエンジン回転数計34を配置し、この上部に液晶式のディスプレイ35を配置し、左側に複数の報知ランプ類等を備えた報知部36を配置し、右側に作業モードを示す表示ランプ類を備えた表示部37を配置してある。具体的に報知部36には、警報状態にあることを示すシンボルマークを記したランプ、サイドブレーキペダル28,28同士を連結する連結金具(図示せず)の連結が解除された状態にあることを示す「ブレーキ連結解除」の文字を記したランプ、駐車ブレーキが制動状態にあることを示す「P」の文字を記したランプ、前記「AD倍速」の制御モードにあることを示す「AD倍速」の文字を記したランプ、前記「倍速」の制御モードにあることを示す「倍速」の文字を記したランプ、4輪駆動状態にあることを示す「4WD」の文字を記したランプ夫々を備えて成り、又、表示部37には、ロータリ耕耘装置Aがローリング制御状態にあることを示す「モンロ」の文字を記したランプ、前記カバーセンサ18Sを用いた対地基準の昇降制御が行われていることを示す「オート」の文字を記したランプ、エンジンEの回転数の変化に基づいてロータリ耕耘装置Aの昇降が行われる状態にあることを示す「Eオート」の文字を記したランプ、前記強制昇降レバー26の操作による昇降制御が行われていることを示す「ポンパ」の文字を記したランプ、車体の後進時に自動的にロータリ耕耘装置Aを設定高さまで上昇させる制御を行う状態にあることを示す「バックアップ」の文字を記したランプ、前車輪1が設定角度以上操作された場合にロータリ耕耘装置Aを設定高さまで上昇させる制御を行う状態にあることを示す「オートアップ」の文字を記したランプ夫々を備えて成っている。
【0018】
前記ミッションケース4の内部には前記主変速レバー22、及び、クリープ変速レバー23とで変速される走行用変速装置と、前記PTOレバー32で変速される作業用変速装置とを内装し、更に、ミッションケース4の下面には図1に示す如く、前車輪1に対する動力の伝動状態を設定する前輪変速装置TFを備え、この前輪変速装置TFから前車輪1に動力を伝える前車輪駆動軸50を備えている。尚、走行用変速装置はシンクロメッシュ式の複数のギヤ変速機構と、これを変速操作する複数の油圧アクチュエータと、コンスタントメッシュ式のギヤ変速機構と、走行用の伝動系に介装された油圧クラッチとを備えて成り(図示せず)、主変速レバー22を操作した場合には油圧アクチュエータの作動を開始すると同時に油圧クラッチを切り操作し、油圧アクチュエータの作動による変速の完了時に油圧クラッチを入り操作するシーケンス的な制御を行うことで主クラッチ3を切り操作せずに変速を行えるものとなっており、又、前輪変速装置TFは前記「2WD」「4WD」「倍速」夫々の伝動モードに設定する油圧アクチュエータ(図示せず)で操作自在に構成されている。
【0019】
図6に示すように、前記コントロールパネルCPは中央部に開閉自在な蓋体75を備え、この蓋体75を閉じた状態で、蓋体75より前部に露出する位置に耕深設定ダイヤル76を配置し、蓋体75より後部に露出する位置にオートアップのON・OFF用のスイッチ77とランプ77Lとのセット、バックアップ制御のON・OFF用のスイッチ78とランプ78Lとのセット、標準感度の自動耕深制御及び標準のローリング制御を一括してON・OFFするスイッチ79とランプ79Lとのセット、手動ローリングスイッチ80夫々を配置してある。又、蓋体75で覆われる部位には前記3点リンク機構Lの仕様に対応して制御基準値を補正するためのリンク仕様選択スイッチ81と2つのランプ81Lのセット、感度を標準に設定した標準自動耕深制御と感度を敏感に設定した敏感自動耕深制御とエンジン負荷に対応したエンジン負荷耕深制御との何れか1つを選択する耕深制御モード選択スイッチ82と3つのランプ82Lのセット、標準のローリング制御と傾斜地でのローリング制御とのいずれかを選択するローリング制御モードスイッチ83と2つのランプ83Lのセット、ロータリ耕耘装置Aの仕様に対応して制御基準値を補正するためのロータリ仕様選択スイッチ84と3つのランプ84Lのセット、ローリング角度設ダイヤル85、上限設定ダイヤル86夫々が備えられている。尚、このスイッチ類とセット状態で配置されたランプはスイッチがON操作された場合や、スイッチで選択されたモード等を示す位置で点灯するものとなっている。
【0020】
又、前記選択スイッチ30は繰り返して押し操作することで、「2WD」のモード、「4WD」のモード、「倍速」のモード、「AD倍速」のモードが順次選択できるものとなっており、夫々のモードを選択した場合には、制御装置(後述する)が報知部36の対応する「4WD」「倍速」「AD倍速」のランプを点灯させるものとなっている。そして、制御装置90は「2WD」のモードが選択された場合には、前輪変速用制御弁(図示せず)の制御により前輪変速装置TFを中立状態に設定して前車輪1への伝動を断ち、「4WD」のモードが選択された場合には、前輪変速用制御弁の制御により前輪変速装置TFを後車輪2の周速度と等しい周速度となる駆動速度の動力を前車輪1に伝える状態に設定し、「倍速」のモードが選択された場合には、前車輪1の切れ角を計測する切れ角センサ(図示せず)からの信号から前車輪1の切れ角が予め設定された角度以下にあることを判別した場合に、前輪変速用制御弁の制御により前輪変速装置TFを後車輪2の周速度と等しい周速度となる駆動速度の動力を前車輪1に伝える状態に設定しておき、切れ角センサからの信号から前車輪1の切れ角が予め設定された角度を越えたことを判別した場合には、前輪変速用制御弁の制御により前輪変速装置TFを後車輪2の周速度より高速となる駆動速度の動力を前車輪1に伝える状態に設定し、更に、「AD倍速」のモードが選択された場合には「倍速」のモードが選択された場合と同様に、切れ角センサからの信号から前車輪1の切れ角が予め設定された角度以下にあることを判別した場合に、前輪変速用制御弁の制御により前輪変速装置TFを後車輪2の周速度と等しい周速度となる駆動速度の動力を前車輪1に伝える状態に設定しておき、切れ角センサからの信号から前車輪1の切れ角が予め設定された角度を越えたことを判別した場合には、前輪変速用制御弁の制御により前輪変速装置TFを後車輪2の周速度より高速となる駆動速度の動力を前車輪1に伝える状態に設定すると同時に、旋回内側の後車輪1に対応するサイドブレーキを制動操作するものとなっている。
【0021】
次に、ロータリ耕耘装置Aを昇降させる制御モードを説明する。
【0022】
〔ポジション制御〕このポジション制御は、車体を基準にした目標高さにロータリ耕耘装置Aの高さを設定維持する制御であって、制御を行う際には、ポジションレバー21を任意の位置に設定することで、レバーセンサ21S(図を参照)からの信号値を制御目標に設定すると共に、この目標高さに対応する信号がリフトアームセンサ8Sで計測されるように昇降用制御弁に信号を出力してリフトシリンダ7の作動によってロータリ耕耘装置Aを昇降させ、この昇降によってロータリ耕耘装置Aが目標高さに達すると昇降を停止するものとなっている。
【0023】
〔オート耕深制御〕このオート耕深制御は、地面を基準にした目標耕深にロータリ耕耘装置Aを維持する昇降制御であって、制御を行う際には、前記耕深モード選択スイッチ82で標準と敏感との何れかの感度のオート耕深制御モードを選択し、後カバー18を図4(イ)に示す如く自由揺動可能な状態に設定し、耕深設定ダイヤル76を目標耕深に設定した状態でポジションレバー21を最深位置に設定することで、耕深設定器76S(図を参照)からの信号値を制御目標に設定すると共に、カバーセンサ18Sからの信号値が制御目標に維持されるよう昇降制御弁に信号を出力してロータリ耕耘装置Aを昇降させ、車輪が地面に沈下した場合や車体が前後傾斜した場合でも、地面を基準にしたロータリ耕耘装置Aの高さを目標高さに維持するようロータリ耕耘装置を自動的に昇降するものとなっている。
【0024】
〔エンジン負荷制御〕(Eオート)このエンジン負荷制御は、地面を基準にした目標耕深にロータリ耕耘装置Aを維持すると共に、この目標高さにおけるエンジンEの回転数を維持するようロータリ耕耘装置Aを昇降する制御であって、制御を行う際には前記耕深モード選択スイッチ82でエンジン負荷耕深制御モードを選択し、前記ロッド19によって図4(ロ)に示す如く後カバー18を吊り上げた状態に設定し、耕深設定器76Sを目標耕深に設定した状態でポジションレバー21を最深位置に設定することで、耕深設定器76Sからの信号値に対応するリフトアーム8の揺動角度が求められ、この揺動角を制御目標に設定すると共に、リフトアームセンサ8Sからの信号値が制御目標に維持されるようロータリ耕耘装置Aの昇降が行われ、ロータリ耕耘装置Aが制御目標となるレベルに維持された時点でのエンジンEの回転数がエンジン回転数センサで計測され、この計測値がメモリに記憶され、この後に、車輪が地面に沈下した場合や車体が前後傾斜した場合のようにエンジンEに作用する負荷が変動した場合にはエンジン回転数を維持する方向にロータリ耕耘装置Aを自動的に昇降する制御が行われるものとなっている。
【0025】
〔強制昇降制御〕この強制昇降制御は、ロータリ耕耘装置Aを昇降制御する制御に優先してロータリ耕耘装置Aを上限まで上昇させる制御と、この上昇制御が行われる以前の状態までロータリ耕耘装置Aを下降させる制御とを行うものであり、ロータリ耕耘装置Aを上昇させる場合には前記強制昇降レバー26を上方に操作することにより、上限設定ダイヤル86で設定される制御目標の値をリフトアームセンサ8Sで計測するまでロータリ耕耘装置Aの上昇を行うよう昇降制御弁に信号を出力するものとなり、この上昇の後、前記強制昇降レバー26を下方に操作することで元の制御モードに復帰し、上昇前のレベルまで下降する制御が行われるものとなっている。
【0026】
〔バックアップ制御〕このバックアップ制御は、ロータリ耕耘装置Aが上限以外のレベルにある状態で前後進切換レバー24が後進位置にセットされた場合にロータリ耕耘装置Aを上限まで上昇させる制御であり、この制御を行う際には、前記バックアップ用のスイッチ78をON操作しておくだけで良く、制御時には、上限設定ダイヤル86で設定される制御目標の値をリフトアームセンサ8Sで計測するまでロータリ耕耘装置Aの上昇を行うものとなり、この上昇の後には前記強制昇降レバー26を下方に操作することで、上昇制御以前の制御モードに復帰する制御が行われるものとなっている。
【0027】
〔オートアップ制御〕このオートアップ制御は、ロータリ耕耘装置Aがオート耕深制御によって昇降制御されている場合や、エンジン負荷制御によって昇降制御されている場合において、前車輪1が設定された角度以上ステアリング操作された場合にロータリ耕耘装置Aを上限まで上昇させる制御であり、この制御を行う際には、前記オートアップ用のスイッチ77をON操作しておくだけで良く、制御時には、上限設定ダイヤル86で設定される制御目標の値をリフトアームセンサ8Sで計測するまでロータリ耕耘装置Aの上昇を行うものとなり、この 上昇の後には前記強制昇降レバー26を下方に操作することで、上昇前の制御モードに復帰する制御が行われるものとなっている。
【0028】
このトラクタでは車体がローリングした場合にロータリ耕耘装置Aを設定されたローリング姿勢に維持するローリング制御を行えるものとなっており、このローリング制御を行う場合には、標準感度の自動耕深制御及び標準のローリング制御を一括してON・OFFするスイッチ79をON状態に操作しておくことで、車体が左右に傾斜した場合にはローリングセンサRSからの信号と、ローリング角設定ダイヤル85で設定された信号値とからローリングシリンダ12の目標作動量を演算によって求め、この目標の値をストロークセンサ22で計測するまでローリングシリンダ12を伸縮作動させる制御を行うものとなっている。又、ローリング角設定ダイヤル85を水平位置に設定した場合には車体がローリングした際にもロータリ耕耘装置Aが水平姿勢に維持されるよう制御が行われ、手動ローリングスイッチ80を押し操作した場合には、このローリング制御に優先してロータリ耕耘装置Aを任意の方向にローリング作動させ、押し操作を解除した場合には元のローリング制御に復帰させる制御が行われるものとなっている。
【0029】
又、前記ローリング制御モードスイッチ83は、車体を傾斜地面の等高線に沿って走行させる場合に使用されるものであり、基本的には標準のローリング制御と同様の制御が行われるが、傾斜地面の谷側の車輪の沈下を見越して自動的に目標傾斜角度の補正が行われるものとなっている。
【0030】
図7に示すようにロータリ耕耘装置Aの昇降制御と、ローリング制御とを行う油路系が構成されている。つまり、前記油圧ポンプ51からの作動油が供給される油路にフロープライオリティ弁57を備え、このフロープライオリティ弁57の制御油の流路側に前記ローリングシリンダ12に対する作動油を制御する電磁式のローリング弁58を備え、又、フロープライオリティ弁57の余剰油の流路側に前記リフトシリンダ7,7に対する作動油を制御する電磁比例制御弁Vを備えている。この電磁比例制御弁Vは作動油をリフトシリンダ7,7に供給する位置に配置された上昇弁59と、この上昇弁59を開閉操作するパイロット圧制御用の上昇用パイロット弁60と、リフトシリンダ7,7からの作動油を排出する位置に配置された下降弁61と、この下降弁61を開閉操作するパイロット圧制御用の下降用パイロット弁62と、リリーフ弁63とを備えて構成されている。又、上昇用パイロット弁60と下降用パイロット弁62とは電磁ソレノイド60S、62Sに供給する制御電力の電流値の調節でパイロット圧を変化させて上昇弁59、下降弁61の開度を調節し得るよう構成され、この開度の調節によってロータリ耕耘装置Aの上昇速度と下降速度を任意に設定できるものとなっている。尚、この電磁比例制御弁Vは、上昇用及び下降用のパイロット弁60,62の電磁ソレノイド60S、62Sに供給された電流値に正比例する開度が得られるものとなっている。
【0031】
図8に示すように本発明の制御系の概要を表すことが可能であり、この制御系にはマイクロプロセッサを有した制御装置90(故障判別手段E、報知制御手段F、及び、電流制御手段Gの一例)を備えている。この制御装置90に対して前記ポジションレバー21の操作位置を検出するレバーセンサ21S、リフトアームセンサ8S、耕深設定ダイヤル76で操作される耕深設定器76S、カバーセンサ18S、バッテリーの電圧を計測する電圧センサ91からの信号が入力する系が形成されると共に、前記ディスプレイ35、スピーカやブザーのように音声を発する発音体としてのアラーム38夫々に対する出力系が形成され、又、前記上昇用パイロット弁60の電磁ソレノイド60Sと、前記下降用パイロット弁62の電磁ソレノイド62Sとを駆動する電力トランジスタTr、Trに対する出力系が形成され、これらの電磁ソレノイド60S、62Sに供給された電流を抵抗器Rを介して電圧値に変換して制御装置90にフィードバックする入力系も形成されている。
【0032】
そして、この制御装置90では、ロータリ耕耘装置Aの昇降制御を行う場合には前記電磁ソレノイド60S、62Sに対して間歇信号を供給すると共に、この間歇信号をPWM式に制御して供給電流の値を調節することで電磁比例制御弁Vの開度を調節して昇降制御を行えるものとなっており、この制御時には電源の電圧やフィードバック信号に基づいた精度の高い制御を行うと共に、電磁ソレノイド60S、62Sに異常を発生した場合には制御を停止するものとなっており、その制御動作を以下に説明する。
【0033】
例えば前述した〔ポジション制御〕や〔オート耕深制御〕を行う場合には図9、図10のフローチャートに示す制御を行うものとなる。尚、この2つのフローチャートは「A」と「A」、「B」と「B」、「C」と「C」とが連続した制御の流れとして処理されるものとなっている。つまり、イニシャライズの後に、レバーセンサ21Sからの設定値あるいは耕深設定器76Sからの設定値と、リフトアームセンサ8Sからのセンサ値あるいはカバーセンサ18Sからのセンサ値とを入力すると共に、これら設定値とセンサ値とに変化があった場合にのみ、夫々の値をマイクロプロセッサのレジスタやメモリ等に記憶してセットする処理を行うと共に(ロータリ耕耘装置Aの昇降や、耕深設定器76Sが操作された場合を想定している)、夫々の値の偏差が予め設定された不感帯外にある場合にのみ、演算処理によってデューティ比(D)を求め、更に、このデューティ比に補正値(C)を乗ずる演算を行い、この演算結果のデューティ比の間歇信号を出力する(#101〜#107ステップ)。又、前記演算処理は、前記偏差の値、及び、センサで求めた作動速度等に基づいてPI(比例積分制御)やPID(比例積分微分制御)やFUZZY(ファジー制御)の論理に基づいて電磁ソレノイド60S,62Sに供給する目標電流値を求め、この目標電流値に対応するデューティ比(D)(単位はパーセント)を求める処理であり、次に、このように求めたデューティ比(D)に対して補正値「C」を乗ずる処理を行うことで現実に出力されるデューティ比(D)を求めるようになっている。
【0034】
次に、フィードバック信号の値(S)と電圧センサ91で計測される値(Vb)とを入力すると共に、これらの値(S)、(Vb)、及び、前述したように出力された出力値とに基づいて電流が供給された電磁ソレノイド60S,62Sの抵抗値(r)を求める処理を行う。この処理は図中に示すようにオームの法則に基づく単純な演算であり、この処理で求めた抵抗値(r)と予め設定された電磁ソレノイド60S,62Sとの比較を行い、この抵抗値(r)が異常に大きい場合には前記ディスプレイ35に図11に示す如く、「ソレノイドが断線しています」との断線の表示を行うと共にアラーム38を作動させ、抵抗値(r)が異常に小さい場合は前記ディスプレイ35に図12に示す如く、「ソレノイドがショートしています」との短絡の表示を行うと共にアラーム38を作動させる処理を行った後昇降制御を停止するものとなっている(#108〜#115ステップ)。尚、#107ステップで電流制御手段Gが構成され、#111,#112ステップで故障判別手段Eが構成され、#113〜#115ステップで報知制御手段Fが構成されている。
【0035】
具体的には、電力トランジスタTrのON制御時に抵抗器Rからフィードバックされる電圧値が異常に低い値となる場合には、原因として電磁ソレノイドの導通不良状態や断線が考えられるものの、電源電圧の低下も原因と考えられるので、この電源電圧も考慮した演算によって電磁ソレノイドの抵抗値を求め、このように求めた結果と予め設定された電磁ソレノイドの抵抗値との比較処理を行うことで誤った判断を回避できるものとなっており、これと同様に、電力トランジスタTrのON制御時に抵抗器Rからフィードバックされる電圧値が異常に高い値である場合には、原因として電磁ソレノイドの短絡が考えられるものの、電源電圧の上昇も考えられるので、この電源電圧も考慮した演算によって電磁ソレノイドの抵抗値を求め、このように求めた結果と予め設定された電磁ソレノイドの抵抗値との比較処理を行うことで誤った判断を回避して、上記のように報知を行うものとなっている。
【0036】
更に、前述のようにフィードバックされた電圧値が異常な値でない場合には、目標とする電流値が得られているか否かを判断し、目標とする電流値が得られず誤差を有する場合には補正が必要となるので、その誤差を修正するための補正係数「H」をセットし、この補正係数「F」を補正値「C」に乗ずる処理を行うものとなっており、以上の処理をリセットされるまで継続するものとなっている(#117〜#119ステップ)。そして、補正値「C」がセットされた後には、この補正値「C」に基づく制御が継続されるものとなっている。
【0037】
このように、本発明では、昇降制御を行う場合には、偏差等に基づいて設定した目標電流を電磁ソレノイド60S、62Sに供給するよう間歇信号のディーティ比を設定するものとなっており、このように電流を供給した場合には、電磁ソレノイドに供給された電流値を抵抗器Rを介して電圧に変換して制御装置90にフィードバックし、このフィードバックの値に基づいて目標とする電流値が得られていない場合には間歇信号のディーティ比を変更してPWM式に電流値を調節するよう基本的な制御形態が設定されており、又、この制御時に電磁ソレノイド60S、62Sに断線や短絡が発生した場合にはフィードバックされる信号電圧が異常な値になるので、このような値を計測した場合にはディスプレイ35に対してメッセージを表示し、アラーム38を作動させた後に昇降制御を停止することで異常な昇降作動を阻止すると共に、メッセージの内容から電磁ソレノイド60S、62Sに故障が発生したことを即座に認識して適切な処置を行えるものとなっている。
【図面の簡単な説明】
【図1】農用トラクタの全体側面図
【図2】農用トラクタ後部の斜視図
【図3】農用トラクタ後部の平面図
【図4】ロータリ耕耘装置の後カバーの姿勢が異なる2状態を示す図
【図5】メータ部及びスイッチ類の配置を示す図
【図6】コントロールパネルの平面図
【図7】昇降用、ローリング用の油圧回路図
【図8】制御系のブロック回路図
【図9】制御の前半部を示すフローチャート
【図10】制御の後半部を示すフローチャート
【図11】電磁ソレノイド断線時の表示内容を示す図
【図12】電磁ソレノイドショート時の表示内容を示す図
【符号の説明】
7 油圧アクチュエータ
60S、62S 電磁ソレノイド
91 電圧計測手段
E 故障判別手段
F 報知制御手段
G 電流制御手段
Tr 電力供給手段
V 制御弁

Claims (3)

  1. 油圧アクチュエータと、この油圧アクチュエータに対して作動油の給排を行う電磁比例型の制御弁と、この制御弁の電磁ソレノイドに対して電源からの電力を間歇的に供給する電力供給手段と、この電力供給手段から電磁ソレノイドに電力が供給された際に電磁ソレノイドに流れる電流を電圧信号に変換して帰還させるフィードバック信号系とを備えると共に、このフィードバック信号系の電圧信号の値を目標とする値に維持するよう前記電力供給手段から間歇的に供給される電力のデューティ比を調節する電流制御手段を備えている作業車であって、
    前記電源の電圧値を計測する電圧計測手段を備え、この電圧計測手段で計測される前記電源の電圧値と、前記電流制御手段で設定されたデューティ比と、フィードバック信号系の値とに基づいて電磁ソレノイドの抵抗値を求め、この抵抗値が不適正な値である場合には故障と判別する故障判別手段を備えている作業車。
  2. 前記故障判別手段で判別された電磁ソレノイドの抵抗値が設定値より大きい場合には電磁ソレノイドが導通不良若しくは断線状態にあると判断し、設定値より小さい場合には電磁ソレノイドが短絡状態にあると判断するよう構成されている請求項1記載の作業車。
  3. 前記故障判別手段で故障の発生を判別した場合には報知手段に対して故障の情報を出力させる報知制御手段を備えている請求項1又は2記載の作業車。
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