JP3631794B2 - ワンウェイクラッチ - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、インナーリングと、インナーリングを同軸に囲撓するアウターリングと、インナーリングおよびアウターリング間の周方向に間隔をあけた位置に配置される複数のローラキーとを備えるワンウェイクラッチに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、かかるワンウェイクラッチは、たとえば実開昭55−80538号公報等により既に知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来のものでは、ローラキーを介しての動力伝達時に、仮想円を相互間に挟んで近接対向されたインナーリングの外周面およびアウターリングの内周面は、前記仮想円の接線方向と角度をなす直線上でローラキーの両側に線接触するものであり、回転方向と動力伝達方向とがずれていることに起因して動力伝達効率が劣り、しかもインナーリングおよびアウターリングとローラキーとが線接触することによりインナーリング、アウターリングおよびローラキーに局部的な大荷重が作用し、特に伝達力の作用線が前記仮想円の接線に対して角度をなしているためにアウターリングには半径方向外向きの過大な荷重が加わることになり、肉厚を厚くする等の剛性の高い部品構造とせざるを得ない。
【0004】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、動力伝達効率の向上を図り、剛性の高い部品構造とすることを不要としたコンパクトな構成のワンウェイクラッチを提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、インナーリングと、インナーリングを同軸に囲撓するアウターリングと、インナーリングおよびアウターリング間の周方向に間隔をあけた位置に配置される複数のローラキーとを備えるワンウェイクラッチにおいて、インナーリングの外周面およびアウターリングの内周面は、仮想円を相互間に挟んで近接対向され、アウターリングの内周面の周方向に間隔をあけた複数個所には、前記仮想円上に転がり中心が在るローラキーの仮想円よりも外方側外面に当接可能として円弧状に形成される外方噛合部と、一端が該外方噛合部に連設されるとともにアウターリングの周方向一側に向かうにつれて半径方向内方位置となるように傾斜した外方傾斜面とから成る外方凹部が設けられ、インナーリングの外周面の周方向に間隔をあけた複数個所には、ローラキー全体を収容可能な収容部と、一端が該収容部に連設されるとともに前記アウターリングの周方向一側に向かうにつれて半径方向外方位置となるように傾斜した内方傾斜面と、内方傾斜面の他端に連接されるとともに前記転がり中心が仮想円上に在るローラキーの仮想円よりも内方側外面に当接して該ローラキーを前記外方噛合部との間に挟むことを可能として円弧状に形成される内方噛合部とから成る内方凹部が設けられ、各ローラキーには、それらのローラキーを内方凹部側に付勢する略円形のばねが共通に係止されることを特徴とする。
【0006】
【作 用】
上記構成によれば、インナーリングがその内方噛合部をローラキーに噛合させる方向に回転したときに、ローラキーを内方凹部側に付勢するばね力で定まる設定回転数以下では、ローラキーが内方凹部の収容部に収容されることによりインナーリングが空転することになり、動力伝達は行なわれない。而して前記設定回転数を超えると、ローラキーがばね力に抗して外方凹部側に移動して内方および外方噛合部に噛合し、インナーリングおよびアウターリング間での一方向の動力伝達が行なわれる。この際、内方および外方噛合部はローラキーの外面にそれぞれ面接触するものであり、当接面の荷重は比較的小さく、しかもインナーリングおよびアウターリング間での動力伝達方向は仮想円の接線方向となり、動力伝達効率が向上するとともに、アウターリングは半径方向外向きの荷重から解放される。
【0007】
【実施例】
以下、図面により参考例及び本発明の実施例について説明する。
【0008】
図1ないし図3は第1参考例を示すものであり、図1は内燃機関の要部縦断面図、図2は図1の2−2線断面図、図3は図2の要部拡大図である。
【0009】
先ず図1において、ピストン1が摺動可能に嵌合されるとともに該ピストン1にコンロッド3を介して連結されたクランク軸4が回転自在に支承される機関本体5の一側部にはカバー6が結合される。
【0010】
カバー6内には、カバー6に固定されるステータ7と、内周面に複数のマグネット8を有してステータ7を同軸に囲撓するロータ9とを備える発電機10が収納されており、ロータ9は、クランク軸4の端部にキー11およびボルト12によって固定される支持部材13に、複数のリベット14…によって固定されている。
【0011】
クランク軸4と同一軸線まわりに回転可能であって図示しないスタータモータからの動力が入力されるギヤ15と、支持部材13すなわちクランク軸4との間には、本発明に従うワンウェイクラッチC1 が介設される。
【0012】
図2を併せて参照して、ワンウェイクラッチC1 は、クランク軸4を同軸に囲撓するとともに軸方向一端にギヤ15が結合されるインナーリング161 と、インナーリング161 を同軸に囲撓して支持部材13に結合されるアウターリング171 と、インナーリング161 およびアウターリング171 間の周方向に間隔をあけた位置に配置される複数のローラキー18…と、各ローラキー18…の外方側に共通に係止されるばね191 とを備え、インナーリング161 およびクランク軸4間にはベアリング20が設けられる。
【0013】
アウターリング171 は、一対のリング半体21,22が周方向に間隔をあけた複数個所でボルト23…により相互に結合されて成るものであり、周方向に間隔をあけた複数個所でボルト24…により支持部材13に結合される。
【0014】
図3を併せて参照して、インナーリング161 の外周面の周方向に間隔をあけた複数個所には内方凹部25…が設けられる。一方、アウターリング171 の内周面は、インナーリング161 の回転中心を中心とする仮想円CIMをインナーリング161 の外周面との間に挟んでインナーリング161 の外周面に近接対向するものであり、該アウターリング171 の内周面には、前記内方凹部25…に対応する複数の外方凹部26…が設けられる。 内方凹部25は、ローラキー18に噛合可能な内方噛合部27と、一端が該内方噛合部27に連設されるとともにインナーリング161 の周方向一側(図3の左側)に向かうにつれて半径方向外方位置となるように傾斜した内方傾斜面28とから成り、内方噛合部27は、仮想円CIM上に転がり中心CC を配置した位置に在るローラキー18の仮想円CIMよりも内方側で略1/4周の外面に当接可能として円弧状に形成される。
【0015】
また外方凹部26は、ローラキー18全体を収容可能な収容部29と、一端が該収容部29に連設されるとともに前記インナーリング161 の周方向一側(図3の左側)に向かうにつれて半径方向内方位置となるように傾斜した外方傾斜面30と、ローラキー18を前記内方噛合部27との間に挟むことを可能として外方傾斜面30の他端に連設される外方噛合部31とから成る。而して収容部29は、ローラキー18のインナーリング161 の外周面への接触を回避するようにローラキー18全体を収容し得る形状に形成され、外方噛合部31は、仮想円CIM上に転がり中心CC を配置した位置に在るローラキー18の仮想円CIMよりも外方側で略1/4周の外面に当接可能として円弧状に形成される。
【0016】
各ローラキー18…の軸方向中央部における外周には、環状の係止溝32がそれぞれ設けられる。またばね191 は、外力が作用しない自由状態では両端がほぼ連なる円形となるようにばね線材を彎曲成形して成るものであり、全てのローラキー18…の係止溝32に外方側から係止される。而して全てのローラキー18…に係止したときに、ばね191 は、図2で示すように、その両端を離反させた状態となり、その状態でばね191 は、各ローラキー18…を内方凹部25…側に付勢するばね力を発揮する。
【0017】
またアウターリング171 には、ローラキー18…の移動に応じたばね191 の変位を許容して該ばね191 を収納する環状溝33が、アウターリング171 の内周面に開口するようにして設けられる。
【0018】
次にこの第1参考例の作用について説明すると、機関の始動時にスタータモータからの駆動力がギヤ15からインナーリング161 に伝達されて、インナーリング161 が、図3の矢印34で示すように、その内方凹部25の内方噛合部27をローラキー18に噛合させる方向に回転すると、ばね191 のばね力で定まる設定回転数以下の状態では、内方凹部25の内方噛合部27と外方凹部26の外方噛合部31との間にローラキー18が挟まれて、インナーリング161 およびアウターリング171 間の動力伝達が行なわれる。すなわちワンウェイクラッチC1 が動力伝達状態に在り、スタータモータからの動力がクランク軸4に伝達されることになる。
【0019】
この際、内方および外方噛合部27,31はローラキー18の略1/4周の外面にそれぞれ面接触するものであり、当接面の荷重は比較的小さい。したがってインナーリング161 ,アウターリング171 およびローラキー18の剛性を、従来(実開昭55−80538号公報)のように増大させることが不要となる。しかもインナーリング161 およびアウターリング171 間での動力伝達方向は仮想円CIMの接線方向であり、優れた動力伝達効率を得ることができるとともに、アウターリング171 が半径方向外向きの荷重から解放されることになり、アウターリング171 を厚肉にする等の高剛性部品構造とすることを回避してワンウェイクラッチC1 をコンパクトに構成することができる。
【0020】
而して機関の運転が開始され、クランク軸4すなわちアウターリング171 が、インナーリング161 の回転数を超える高速で回転し始めると、各ローラキー18…が、図3の鎖線で示すように、ばね191 のばね力に抗して外方凹部26の収容部29に収容されることになる。これによりインナーリング161 およびアウターリング171 間の動力伝達が遮断され、アウターリング171 がインナーリング161 のまわりを空転するようになり、ワンウェイクラッチC1 が動力伝達遮断状態となる。
【0021】
図4および図5は第2参考例を示すものであり、上記第1参考例に対応する部分には同一の参照符号を付す。
【0022】
先ず図4において、機関本体5の側部にはサイドカバー36が結合されており、機関本体5およびサイドカバー36間に形成されるクラッチ室37内には、機関本体5で回転自在に支承されているクランク軸4と、該クランク軸4に相対回転自在に支承される出力歯車38との間に介設されるワンウェイクラッチC2 および遠心クラッチ39が収納され、出力歯車38は図示しない変速機に連なる減速歯車40に噛合される。
【0023】
クランク軸4には、該クランク軸4および機関本体5間に介装されているベアリング41の内輪に一端を当接させるスペーサ42と、該スペーサ42の他端に一端を当接させる円筒状のブッシュ43とが装着されるとともに、遠心クラッチ39の構成要素である駆動部材46のボス部46aが一端を前記ブッシュ43の他端に当接させるようにしてスプライン結合され、クランク軸4の端部には、スペーサ42、ブッシュ43およびボス部46aを前記ベアリング41の内輪との間に挟持するナット44が螺合される。而して出力歯車38は、ブッシュ43を介してクランク軸4に回転自在に支承されるものであり、クランク軸4に対する相対回転が可能である。
【0024】
図5を併せて参照して、ワンウェイクラッチC2 は、ボス部46aの外周に圧入されるインナーリング162 と、インナーリング162 を同軸に囲撓するとともに出力歯車38に噛合するギヤ45を一体に有するアウターリング172 と、インナーリング162 およびアウターリング172 間の周方向に間隔をあけた位置に配置される複数のローラキー18…と、各ローラキー18…の外方側に共通に係止されるばね191 とを備える。
【0025】
インナーリング162 の外周面の周方向に間隔をあけた複数個所には、内方凹部25…が設けられる。またアウターリング172 の内周面は、インナーリング162 の回転中心を中心とする仮想円CIMをインナーリング162 の外周面との間に挟んでインナーリング162 の外周面に近接対向するものであり、該アウターリング172 の内周面には、前記内方凹部25…に対応する複数の外方凹部26…が設けられる。
【0026】
内方凹部25は、ローラキー18の内方側に噛合可能な内方噛合部27と、一端が該内方噛合部27に連設されるとともにインナーリング162 の周方向一側(図5の左側)に向かうにつれて半径方向外方位置となるように傾斜した内方傾斜面28とから成り、内方噛合部27は、仮想円CIM上に転がり中心CC を配置した位置に在るローラキー18の仮想円CIMよりも内方側で略1/4周の外面に当接可能として円弧状に形成される。
【0027】
また外方凹部26は、ローラキー18全体を収容可能な収容部29と、一端が該収容部29に連設されるとともに前記インナーリング162 の周方向一側(図3の右側)に向かうにつれて半径方向内方位置となるように傾斜した外方傾斜面30と、ローラキー18を前記内方噛合部27との間に挟むことを可能として外方傾斜面30の他端に連設される外方噛合部31とから成る。而して収容部29は、ローラキー18のインナーリング162 の外周面への接触を回避するようにローラキー18全体を収容し得る形状に形成され、外方噛合部31は、仮想円CIM上に転がり中心CC を配置した位置に在るローラキー18の仮想円CIMよりも外方で略1/4周の外面に当接可能として円弧状に形成される。
【0028】
アウターリング172 には、ローラキー18…の係止溝32に係止されるばね191 がローラキー18…の移動に応じた変位を許容して該ばね191 を収納する環状溝33が設けられる。
【0029】
遠心クラッチ39は、クランク軸4に相対回転不能に装着される駆動部材46と、クランク軸4と同軸である支持リング47により駆動部材46の周方向に間隔をあけた複数個所に揺動自在に支承される複数の重錘48…と、駆動部材46に対する相対角変位を不能とするが許容された範囲での軸線方向相対移動が可能なクラッチアウター49と、クラッチアウター49に対する相対回転が不能であって各重錘48…に当接される押圧板50と、クラッチアウター49に対する相対回転が不能である受圧板51と、インナーリング172 に対する相対回転を不能として押圧板50および受圧板51間に配置される軽合金製の内側摩擦リング52と、クラッチアウター49に対する相対回転を不能として押圧板50および受圧板51間に配置される軽合金製の外側摩擦リング53とを備える。
【0030】
駆動部材46は、クランク軸4にスプライン結合されるボス部46aを中心部に有して円盤状に形成されるものであり、その外周の周方向に間隔をあけた複数個所が、軸方向相対移動を可能としてクラッチアウター49の内周に係合される。また駆動部材46には、クランク軸4の軸線と平行にしてクラッチアウター49を貫通する複数の円筒状突部46b…が一体に設けられており、駆動部材46およびクラッチアウター49間には、両者46,49を相互に離反させる方向のばね力を発揮するコイル状のクラッチスプリング54…が円筒状突部46b…を囲撓するようにして介設される。さらに円筒状突部46b…の先端には、クラッチアウター49の外面に係止可能な規制鍔55…がねじ部材56…により固定されており、駆動部材46およびクラッチアウター49が相互に最大限離反する位置は、基節鍔55…がクラッチアウター49の外面に係合することにより規制される。
【0031】
各重錘48…は、駆動部材46の回転に応じた遠心力の作用により図4の時計方向に回動するようにして支持リング47により駆動部材46に支承されており、図4の時計方向への重錘48…の最大回動範囲を規制するための規制リング57が駆動部材46に装着される。
【0032】
押圧板50は、ワンウェイクラッチC2 におけるアウターリング172 の周囲で駆動部材46に近接した側に配置されるものであり、その外周の周方向に間隔をあけた複数個所が軸方向相対移動を可能としてクラッチアウター49の内周に係合される。また受圧板51は、ワンウェイクラッチC2 におけるアウターリング172 の周囲で駆動部材46から離反した側に配置されるものであり、その外周の周方向に間隔をあけた複数個所が軸方向相対移動を可能としてクラッチアウター49の内周に係合される。しかもクラッチアウター49の内周には、駆動部材46から離反する方向への受圧板51の移動を規制する止め輪58が装着される。而して押圧板50の周方向に間隔をあけた複数個所には、クランク軸4の軸線と平行に延びて受圧板51を移動自在に貫通する軸59…の基端が固着されており、それらの軸59…を囲撓するコイル状のクラッチフリースプリング60…が押圧板50および受圧板51間に縮設される。このため、押圧板50および受圧板51は、クラッチフリースプリング60…によって相互に離反する方向に付勢されており、押圧板50は、複数の重錘48…に常時当接されることになる。
【0033】
内側摩擦リング52は押圧板50に当接可能であり、その内周がアウターリング172 の外周にスプライン結合される。しかもアウターリング172 の外周には、駆動部材46から離反する方向の内側摩擦リング52の移動を規制する止め輪61が嵌着される。この内側摩擦リング52の外周には、押圧板50への当接を可能としてテーパ状の摩擦面52aが設けられる。また外側摩擦リング53の内周には、内側摩擦リング52の摩擦面52aに対向してテーパ状に形成される摩擦部53aが一体成形される。
【0034】
クラッチアウター49の中心部には操作板63が固着されており、この操作板63にはレリーズベアリング64を介してレリーズ板65が支承され、該レリーズ板65と、図示しないペダル軸によって操作される作動レバー66との間にカム機構67が設けられる。 該カム機構67は、クランク軸4と同一軸線上でサイドカバー36に支持される調節ボルト68と、ボス69aを調節ボルト68に螺合させた固定カム板69と、ボス69aで回転自在に支承される可動カム板70と、両カム板69,70の相対向する凹部71,72間に挿入されたスラストボール73とを備える。而して固定カム板69の回転を阻止するために、基端が固定カム板69に固定された回り止めピン74がサイドカバー36に嵌合される。また可動カム板70はレリーズ板65に重合されており、レリーズ板65および可動カム板70の相対回転を不能とするために、レリーズ板65に基端が固定されたピン75が可動カム板70に嵌合される。さらに可動カム板70には切欠き76が設けられており、作動レバー66が該切欠き76に係合される。
【0035】
このようなカム機構67によれば、作動レバー66の作動により可動カム板70を所定角度だけ回動せしめると、両カム板69,70の相対回転に伴ってスラストボール73が両凹部71,72の斜面を登りつつ可動カム板70を固定カム板69から離反せしめる方向に押圧する。これにより、可動カム板70は、レリーズ板65、レリーズベアリング64および操作板63を介してクラッチスプリング54を縮小しながらクラッチアウター49を図4の左側に押圧することになる。
【0036】
次にこの第2参考例の作用について説明すると、図示しないキック始動装置による回転運動が減速歯車40から出力歯車38を介してワンウェイクラッチC2 のアウターリング172 に、図5の矢印61で示すように与えられると、アウターリング172 は、その外方凹部26の外方噛合部31をローラキー18に噛合させる方向に回転し、ばね191 のばね力で定まる設定回転数以下の状態では、外方凹部26の外方噛合部31と内方凹部25の内方噛合部27との間にローラキー18が挟まれて、アウターリング172 と、クランク軸4に対して相対回転不能なインナーリング162 との間で動力伝達が行なわれる。すなわちワンウェイクラッチC2 が動力伝達状態に在り、上記キック始動装置からの動力がクランク軸4に伝達され、機関が始動されることになる。
【0037】
而して機関が始動され、クランク軸4すなわちインナーリング162 が、アウターリング172 を超える回転数で回転し始めると、各ローラキー18…が、図5の鎖線で示すように、ばね191 のばね力に抗して外方凹部26の収容部29に収容されることになる。これによりアウターリング172 およびインナーリング162 間の動力伝達が遮断され、クランク軸4の回転に応じてインナーリング162 が空転するようになる。
【0038】
この際、遠心クラッチ39の駆動部材46もクランク軸4とともに回転するが、クランク軸4の回転数がアイドル回転数以下の状態では、遠心クラッチ39を動力伝達状態とするまでの遠心力が各重錘48…に作用することはなく、遠心クラッチ39は動力遮断状態に在る。
【0039】
機関の回転数がアイドル回転数以上になると、クランク軸4とともに回転する駆動部材46の回転に伴う遠心力作用によって重錘48…が図4の時計方向に回動し、押圧板50がクラッチフリースプリング60を圧縮しつつ内側摩擦リング52を押して図4の左側に移動する。これにより内側摩擦リング52の摩擦面52aと、外側摩擦リング53の摩擦部53aとが摩擦係合し、クランク軸4からの回転動力が駆動部材46、外側摩擦リング53および内側摩擦リング52を介してアウターリング172 に伝達され、さらにギヤ45、出力歯車38および減速歯車40を介して変速機に伝達されることになる。
【0040】
このような遠心クラッチ39の動力伝達状態で、作動レバー66を作動せしめると、クラッチアウター49は、内側摩擦リング52の摩擦面52aと外側摩擦リング53の摩擦部53aとの摩擦係合を解除する位置まで図4の左側に移動し、それにより遠心クラッチ39が動力伝達を遮断した状態となる。
【0041】
このような第2参考例によれば、遠心クラッチ39は、テーパ状である摩擦面52aおよび摩擦部53aの摩擦係合により動力を伝達するものであるので、従来の多板式のものに比べて部品点数の低減および軽量化を図ることが可能となる。すなわち多板式のものでは、複数枚の摩擦板およびクラッチ板が重合配置されることから部品点数が多くなっていたが、それらの複数枚の摩擦板およびクラッチ板に代えて内側摩擦リング52および外側摩擦リング53の2部品となるので部品点数が低減される。また摩擦板およびクラッチ板を、それらの耐久性の問題から鉄製とすることが一般的であり、重量が大とならざるを得なかったが、テーパ部の摩擦係合とすることにより、内側摩擦リング52のアウターリング172 への連結部、ならびに外側摩擦リング53のクラッチアウター49への連結部を強度的に充分な大きさとして軽合金等で形成することが可能となり、軽量化を図ることができ、しかもその軽量化に伴って変速操作による動力伝達遮断時のショックを緩和することができる。
【0042】
さらにワンウェイクラッチC2 は、第1参考例のワンウェイクラッチC1 と基本的には同一の構成を有するものであり、上記第1参考例と同様の効果を奏することができる。
【0043】
ところで、上記第1および第2参考例では、複数のローラキー18…に共通のばね191 を係止させるようにしたが、各ローラキー18…とアウターリング171 ,172 との間に個別のばねをそれぞれ介在せしめるように構成することも可能である。
【0044】
図6は本発明の施例を示すものであり、上記各参考例に対応する部分には同一の参照符号を付す。
【0045】
このワンウェイクラッチC3 は、たとえばクランク軸4にベアリング20を介して回転自在に支承されるインナーリング163 と、インナーリング163 を同軸に囲撓するアウターリング173 と、インナーリング163 およびアウターリング173 間の周方向に間隔をあけた位置に配置される複数のローラキー18…と、各ローラキー18…の係止溝32に共通に係止されるばね192 とを備える。
【0046】
アウターリング173 の内周面の周方向に間隔をあけた複数個所には外方凹部75…が設けられる。一方、インナーリング163 の外周面は、インナーリング163 の回転中心を中心とする仮想円CIMをアウターリング173 の外周面との間に挟んでアウターリング173 の外周面に近接対向するものであり、該インナーリング163 外周面には、前記外方凹部75…に対応する複数の内方凹部76…が設けられる。
【0047】
外方凹部75は、アウターリング173 の半径方向に沿うローラキー18の内方側に噛合可能な外方噛合部77と、一端が該外方噛合部77に連設されるとともにアウターリング173 の周方向一側(図6の左側)に向かうにつれて半径方向内方位置となるように傾斜した外方傾斜面78とから成り、外方噛合部77は、仮想円CIM上に転がり中心CC を配置した位置に在るローラキー18の仮想円CIMよりも外方側外面に当接可能として円弧状に形成される。
【0048】
また内方凹部76は、ローラキー18全体を収容可能な収容部79と、一端が該収容部79に連設されるとともに前記アウターリング173 の周方向一側(図6の左側)に向かうにつれて半径方向外方位置となるように傾斜した内方傾斜面80と、ローラキー18を前記外方噛合部77との間に挟むことを可能として外方傾斜面80の他端に連設される内方噛合部81とから成る。而して収容部79は、ローラキー18のアウターリング173 の外周面への接触を回避するようにローラキー18全体を収容し得る形状に形成され、内方噛合部81は、仮想円CIM上に転がり中心CC を配置した位置に在るローラキー18の仮想円CIMよりも内方側外面に当接可能として円弧状に形成される。
【0049】
ばね192 は、外力が作用しない自由状態では両端がほぼ連なる円形となるように丸棒状のばね材を彎曲成形して成るものであり、全てのローラキー18…の係止溝32に外方側から係止される。而して全てのローラキー18…に係止したときに、ばね192 は、各ローラキー18…を内方凹部76…側に付勢するばね力を発揮する。
【0050】
またインナーリング163 の外周面およびアウターリング173 の内周面には、ばね192 の変位を許容して該ばね192 を収納する環状溝83,84が相互に対応して設けられる。
【0051】
この施例によれば、図6の矢印85で示すように、インナーリング163 がその内方噛合部81をローラキー18に噛合させる方向に回転したときに、ローラキー18を内方凹部76側に付勢するばね192 のばね力で定まる設定回転数以下では、ローラキー18が内方凹部76の収容部79に収容されることによりインナーリング163 が空転することになり、インナーリング163 およびアウターリング173 間の動力伝達は行なわれない。而してインナーリング163 の回転数が前記設定回転数を超えると、図6の鎖線で示すように、ローラキー18がばね192 のばね力に抗して外方凹部75側に移動して内方および外方噛合部81,77に噛合し、インナーリング163 およびアウターリング173 間での一方向の動力伝達が行なわれる。すなわちインナーリング163 からアウターリング173 への動力伝達は、インナーリング163 の回転数が設定回転数を超えた時点から始まることになる。
【0052】
上記動力伝達状態で、アウターリング173 がインナーリング163 よりも高速で回転し始めると、ローラキー18は外方傾斜面78で内方凹部76側に押圧されることになり、アウターリング173 からインナーリング163 への動力伝達が行われることはない。 この施例によっても、内方および外方噛合部81,77はローラキー18の外面にそれぞれ面接触するものであり、当接面の荷重は比較的小さく、しかもインナーリング163 およびアウターリング173 間での動力伝達方向は仮想円CIMの接線方向となる。したがって動力伝達効率を向上することができるとともに、アウターリング173 を半径方向外向きの荷重から解放して、ワンウェイクラッチC3 をコンパクトに構成することができる。
【0053】
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。
【0054】
【発明の効果】
以上のように発明によれば、動力伝達状態では内方および外方噛合部がローラキーの外面にそれぞれ面接触することにより、当接面の荷重を比較的小さくして部品構造の剛性増大を図ることを不要とし、しかも両リング間での動力伝達方向を仮想円の接線方向とすることにより動力伝達効率を向上するとともにアウターリングを半径方向外向きの荷重から解放してコンパクトな構成とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1参考例の内燃機関の要部縦断面図である。
【図2】図1の2−2線断面図である。
【図3】図2の要部拡大図である。
【図4】第2参考例のワンウェイクラッチおよび遠心クラッチの縦断面図である。
【図5】ワンウェイクラッチの図3に対応する断面図である。
【図6】本発明の実施例のワンウェイクラッチの図3に対応する断面図である。
【符号の説明】
3 ・・・・インナーリング
3 ・・・・アウターリング
18・・・・・ローラキー
2 ・・・・ばね
6・・・・・内方凹部
5・・・・・外方凹部
7・・・・・外方噛合部
8・・・・・外方傾斜面
9・・・・・収容部
0・・・・・内方傾斜面
1・・・・・内方噛合部
3 ・・・・ワンウェイクラッチ
C ・・・・・転がり中心
IM・・・仮想円

Claims (1)

  1. インナーリング(163 )と、インナーリング(163 )を同軸に囲撓するアウターリング(173 )と、インナーリング(163 )およびアウターリング(173 )間の周方向に間隔をあけた位置に配置される複数のローラキー(18)とを備えるワンウェイクラッチにおいて、インナーリング(163 )の外周面およびアウターリング(173 )の内周面は、仮想円(CIM)を相互間に挟んで近接対向され、アウターリング(173 )の内周面の周方向に間隔をあけた複数個所には、前記仮想円(CIM)上に転がり中心(CC )が在るローラキー(18)の仮想円(CIM)よりも外方側外面に当接可能として円弧状に形成される外方噛合部(77)と、一端が該外方噛合部(77)に連設されるとともにアウターリング(173 )の周方向一側に向かうにつれて半径方向内方位置となるように傾斜した外方傾斜面(78)とから成る外方凹部(75)が設けられ、インナーリング(163 )の外周面の周方向に間隔をあけた複数個所には、ローラキー(18)全体を収容可能な収容部(79)と、一端が該収容部(79)に連設されるとともに前記アウターリング(173 )の周方向一側に向かうにつれて半径方向外方位置となるように傾斜した内方傾斜面(80)と、内方傾斜面(80)の他端に連接されるとともに前記転がり中心(CC )が仮想円(CIM)上に在るローラキー(18)の仮想円(CIM)よりも内方側外面に当接して該ローラキー(18)を前記外方噛合部(77)との間に挟むことを可能として円弧状に形成される内方噛合部(81)とから成る内方凹部(76)が設けられ、各ローラキー(18)には、それらのローラキー(18)を内方凹部(76)側に付勢する略円形のばね(192 )が共通に係止されることを特徴とするワンウェイクラッチ。
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