JP3631629B2 - 条用の軟鋼およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ビレット連続鋳造においてノズル詰まり少なく鋳造が可能な条用の軟鋼及びそのビレット連続鋳造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ビレットを経て条用の軟鋼として製造される鋼は、転炉等で精錬を完了した後、主に連続鋳造法にてビレットに鋳造される。精練完了時に溶鋼中に含まれるフリー酸素は、鋳造に先立って脱酸剤を投入して酸化物として除去する。脱酸剤としては、AlとSiを用いる複合脱酸が代表的であるが、軟鋼の場合はSiを0.10%未満とするためSiを脱酸材に用いることができない。脱酸の結果生成した脱酸生成物としてのAl2O3は、その大部分は溶鋼中を浮上して分離されるが、その一部は溶鋼中に残存し、連続鋳造に際して鋳型への鋳造を行うノズルの内周に析出する。特にAl2O3は融点が高く、鋳造ノズルの周辺に析出してノズルが閉塞する原因となる。特に、小断面のビレットを鋳造する連続鋳造においては、鋳型の断面積が小さいため、必然的に鋳造ノズルの断面積も小さくなり、Al2O3の析出によるノズル閉塞が重大な問題となってきている。
【0003】
Al2O3がCaOとの混合物となると融点が低下する。特に混合物中のAl2O3の含有量50%において融点が最低となる。この現象を利用し、鋼中にCaを添加し、Al2O3を主成分とする脱酸生成物をCaOとの混合物とすることによって脱酸生成物の融点を下げ、連続鋳造ノズルへの酸化物の析出を防止する技術が知られている。この技術により、連続鋳造ノズルへの酸化物の析出は減少させることが可能であるが、Caを多量に添加する必要があるため生産コストが増大する原因となり、また、Ca添加によって鋳造ノズル等の耐火物の溶損が激しくなり、耐火物の寿命が短くなるという問題を有している。
【0004】
Al添加量を減らして鋼中に含有するAlの量を少なくすることにより(Alレス化)、鋼中のAl2O3をも低減し、連続鋳造ノズル詰まりを防止する技術が知られている。この方法によると、溶鋼中のAl含有量が少なくなるとともに脱酸も不十分となり、鋼中にフリー酸素が残存することとなる。その結果、連続鋳造において、凝固の進行とともに凝固界面にてフリー酸素と鋼中の炭素とが反応し、COガスが発生する。このCOガスが鋳造後にブローホールとして鋼の欠陥となるという問題を有している。
【0005】
Alレス化に伴うブローホールの問題を解決するため、連続鋳造前の溶鋼段階で取鍋精練を行い、溶鋼中に残存するフリー酸素を低減し、ブローホールを防止する技術が知られている。取鍋精練方法としては、レードルファーネス(LF)あるいは真空脱ガスが採用される。しかし、取鍋精練を付加することは、取鍋精練コストが余計にかかるとともに、真空脱ガスでは、取鍋精練における溶鋼の温度降下を補償するため転炉精練完了時の溶鋼温度を高める必要が生じ、大幅なコストアップを生じるという問題がある。
【0006】
凝固界面におけるCOガスの発生は、凝固界面における炭素の偏析によって助長される。そこで、炭素偏析を防止するため、鋳型内で電磁攪拌によって溶鋼を攪拌し、ブローホールの発生を防止する技術が知られている。しかし、鋳型内電磁攪拌を行うと、鋳型内溶鋼表面を覆うために添加されるパウダーを溶鋼中に巻き込むという弊害を起こし、また鋳型内電磁攪拌によるブローホール発生限界改善効果も、フリー酸素にして10ppm程度の効果しか得られないため、問題を解決するには至らない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、少ないCa添加量で、低Alであってブローホールが発生せず、真空脱ガス設備やLF設備を用いた低酸素化のための取鍋精練を行わず、鋳型内電磁攪拌を行わずに、ビレット連続鋳造において鋳造ノズル内での析出を防止する条用の軟鋼、及び該軟鋼のビレット連続鋳造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その要旨とするところは以下の通りである。
(1)重量%で、C:0.01%〜0.3%、Si:0.01%以上0.10%未満、Mn:0.1%〜1.0%、Ti:0.005%〜0.020%、Ca:0.0005%〜0.0030%を含み、Al:0.005%以下であり、残部Fe及び不可避不純物からなる条用の軟鋼。
(2)重量%で、更にB:0.001%〜0.01%、S:0.015%〜0.030%、Cr:0.05%〜0.25%の1種又は2種以上を含むことを特徴とする上記(1)に記載の条用の軟鋼。
(3)ビレット連続鋳造法によって鋳造し、タンディッシュから鋳型への注入流の周囲に筒を設置し、該筒内の酸素濃度を1.0%以下とすることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の条用の軟鋼の製造方法。
(4)前記筒内に窒素ガスを吹き込む事を特徴とする上記(3)に記載の条用の軟鋼の製造方法。
(5)前記筒にかえて、タンディッシュから鋳型への注入に浸漬ノズルを使用することを特徴とする上記(3)に記載の条用の軟鋼の製造方法。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明では、Cを重量%で0.01%〜0.08%とする。下限を0.01%とする理由は、真空脱ガスを行わずに通常の精錬で0.01%未満までCを低減することは困難だからである。また、本発明は対象鋼種が軟鋼なので、Cの上限を0.25%としている。
【0010】
Siを重量%で0.01%以上0.10%未満とする。下限を0.01%とする理由は、通常の精錬で0.01%未満までSiを低減することは困難だからである。また、本発明は対象鋼種が軟鋼なので、Siの上限を0.10%未満としている。
【0011】
Mnを重量%で0.1%〜1.0%とする。下限を0.1%とする理由は、通常の精錬で0.1%未満までMnを低減することは困難だからである。また、本発明は対象鋼種が軟鋼なので、Mnの上限を1.0%としている。
【0012】
鋳型内に溶鋼を注入するための連続鋳造ノズルに非金属介在物が析出するのを防止するためには、非金属介在物の融点を下げることが有効なことは前述の通りである。非金属介在物の主成分がAl2O3の場合、Caを大量に添加しないと非金属介在物の融点を下げることができなかった。本発明は、非金属介在物の主成分がTiO2あるいはTiO2とSiO2の混合物である場合には、CaOの含有量が少なくても融点が低下する現象に着目し、利用したところにその特徴がある。
【0013】
即ち、鋼中のAl含有量を0.005%以下とし、Ti:0.005%〜0.020%、Caを0.0005%〜0.0030%の範囲で添加する。本発明は軟鋼を対象とするためSi含有量が低いものの、TiとCaを共同で添加する脱酸を行った結果、CaOの存在によるSiO2安定化効果に起因して脱酸生成物中にSiO2含有量も増大し、脱酸生成物はTiO2、SiO2とCaOの複合酸化物となり、上記のような少ないCa添加量でも脱酸生成物の融点を下げることが可能となり、結果として連続鋳造ノズルへの非金属介在物の析出を防止することが可能となる。一方、Al含有量を低減したかわりにTiを添加したため、Ti、SiとCaの共同脱酸となって十分な脱酸が行われ、鋳造におけるブローホールの発生をも防止することができる。また、Ca添加量が少ないので、Ca添加に伴うコストアップが最小限に抑えられると共に、Caによる耐火物の損傷が抑えられ、耐火物の寿命を増大することができる。低酸素化のための前述のLFあるいは真空脱ガス処理は不要であり、鋳型内での電磁攪拌も不要である。
【0014】
Ti下限を0.005%とするのは、0.005%未満ではTiの脱酸力が不足し、ブローホールが発生するため、表面品質の良好な製品が製造できないからである。
【0015】
Ti上限を0.020%とするのは、本発明は軟鋼を対象とするためにSi含有量が低いこともあり、0.020%を超えると共同脱酸におけるTiの寄与が大きくなりすぎ、脱酸生成物中のTiO2含有量が増大して脱酸生成物の融点が上昇し、鋳片表面に取り込まれた脱酸生成物がスカム疵となるからである。
【0016】
Ca下限を0.0005%とする理由は、0.0005%以上であれば脱酸生成物中にCaOが十分に含有されるとともに、CaOの存在によるのSiO2安定化効果に起因して脱酸生成物中のSiO2含有量も増大し、脱酸生成物の低融点化を実現できるからである。
【0017】
Caの上限を0.0030%とするのは、Ca含有量が0.0030%を超えると、耐火物の溶損速度が大きくなりすぎ、連々鋳回数(同一のタンディッシュで連続して鋳造できる鋳込み回数)が制限されるからである。
【0018】
Alを重量%で0.005%以下とするのは、0.005%を超えると共同脱酸の脱酸生成物中のAl2O3含有量が増大して脱酸生成物が高融点化し、鋳片表面に取り込まれた脱酸生成物がスカム疵となるとともに、Al2O3単独の脱酸生成物も生成し、タンディッシュからの溶鋼注入時に注入ノズルへのAl2O3析出による注入ノズル閉塞が発生するためである。
【0019】
本発明は、更にBを含有することで、結晶粒の異常成長を抑制することができる。Bの下限を0.001%としたのは、結晶粒の異常成長を抑制するためにはこれ以上の含有量が必要だからであり、上限を0.01%としたのは、粒界割れの発生を防止するためである。
【0020】
本発明は、更にSを含有することで、スケールの剥離性を向上させることができる。Sの下限を0.015%としたのは、スケールの剥離性を向上させるためにはこれ以上の含有量が必要だからであり、上限を0.030%としたのは、脆化を防止するためである。
【0021】
本発明は、更にCrを含有することで、鋼の熱処理性を向上させることができる。Crの下限を0.05%としたのは、Crによる熱処理性を確保するためであり、上限を0.25%としたのは、スケール剥離性を確保するためである。
【0022】
本発明の条用の軟鋼を製造するためのビレット連続鋳造方法について説明する。ビレット連続鋳造を行うに際しては、タンディッシュから鋳型への溶湯の注入を、浸漬鋳造あるいはオープン鋳造によって行う。浸漬鋳造においては、注入に浸漬ノズルを使用し、溶湯は周囲の大気雰囲気に接触せずにタンディッシュから鋳型内に注入される。オープン注入においては、浸漬ノズルを使用しないので、このままではタンディッシュからの注入流が周囲の大気雰囲気と接触することとなる。
【0023】
注入中に注入流が大気雰囲気に触れると、注入流が大気によって酸化され、鋳型内における溶鋼中の酸素濃度が増大することとなる。本発明においては、溶鋼中のSi含有量が低く、またTi含有量の上限を0.020%におさえているので、注入流が大気によって酸化されると鋳型内溶鋼の脱酸力が不足し、鋳造後の鋳片にスカム疵が発生することとなる。
【0024】
本発明において、タンディッシュから鋳型への注入に浸漬ノズルを使用する場合においては、注入中の溶鋼の酸化が防止できるので、スカム疵の発生のない鋳造を行うことができる。
【0025】
タンディッシュから鋳型への注入に浸漬ノズルを使用しない場合であっても、本発明においてタンディッシュから鋳型への注入流の周囲に筒を設置し、該筒内の酸素濃度を1.0%以下とすることにより、注入中の溶鋼の酸化が防止できるので、スカム疵の発生のない鋳造を行うことができる。筒内に窒素ガスを吹き込むことで筒内の酸素濃度を1.0%以下とすることができる。
【0026】
【実施例】
転炉精錬法により溶鋼量240トンの溶鋼を溶製し、Mn、Alは転炉出鋼中に溶鋼鍋中に添加し、Tiは出鋼後に溶鋼鍋上方より添加した。Caは、微量添加でかつ空気や酸化物に触れると酸化ロスが激しいので、本実施例ではTi添加後にCa品位40%のCa−Si合金を浸漬ランスを用いてアルゴンガスとともに溶鋼中に吹き込んで添加した。
【0027】
連続鋳造法において、鋳型サイズは125mm×125mm、鋳造速度は2.6〜3.2m/minの条件で鋳造した。また、注入ノズルは、ジルコニア質で内径18mmφのノズルを用いた。
【0028】
【表1】
【0029】
表1に実施例の鋼成分、製造実績を示す。合金成分の含有量は、連続鋳造タンディッシュ内から採取した試料の分析結果に基づいて決定した。
【0030】
製造結果の注湯ノズル状況において、「閉塞傾向」とは、閉塞傾向のため連々鋳が行えなかったものをいい、「閉塞」とは、1鍋の完鋳ができなかったものをいう。また、「溶損傾向」とは、注湯ノズルが溶損する傾向であって、連々鋳ができなかったものをいう。
【0031】
製造結果のスカム疵において、「◎」はスカム疵発生のための手入れ率が5%以下のもの、「○」は該手入れ率が5〜10%のもの、「×」は該手入れ率が10%を超えるものをいう。
【0032】
製造結果のブローホールについては、「○」は長さ1mの鋳片を検査し、ブローホールが見つからなかったもの、「×」は長さ1mの鋳片を検査し、ブローホールが1個以上見つかったものをいう。
【0033】
表1のNo.1〜8が本発明例であり、鋼中含有量はいずれも本発明範囲内にある。本発明例No.1〜4はタンディッシュから鋳型への注入をオープン鋳造によって行い、タンディッシュノズル下端と鋳型上端の間に、鉄製の円筒を設置し、筒内に、窒素ガスを100Nl/minの流量で吹き込んだ。このとき、筒内の酸素濃度は1.0%以下であった。本発明例No.5〜8は浸漬ノズルを用いた鋳造を行った。
【0034】
No.1〜8のいずれの鋳造結果も、注湯ノズル状況、スカム疵、ブローホールともに良好であった。
【0035】
表1のNo.9〜15が比較例である。No.9、10はオープン鋳造かつ注入流の周囲にNo.1、4と同様の筒を設置した。No.11〜13は浸漬ノズルを用いた。No.14、15はオープン鋳造を行ったもののタンディッシュから鋳型への注入流の周囲に筒を設置しなかった。
【0036】
No.9はTiが本発明の下限未満であり、ブローホールの発生が見られた。No.10はTiが本発明の上限を超えており、ノズル閉塞が発生した。No.11はCaが本発明の下限未満であり、ノズル閉塞とスカム疵の発生があった。No.12はCaが本発明の上限を超えており、ノズルが溶損傾向であった。No.19、20は注入中に溶鋼の酸化が発生したため、スカム疵の発生が見られた。
【0037】
【発明の効果】
本発明により、Ca大量添加や真空脱ガス装置やLFを用いた特殊二次精錬を行わずに、連続鋳造ノズルの閉塞を防止しかつ連続鋳造鋳片におけるブローホールの発生を防止したビレットの連続鋳造が可能となった。
Claims (5)
- 重量%で、C:0.01%〜0.3%、Si:0.01%以上0.10%未満、Mn:0.1%〜1.0%、Ti:0.005%〜0.020%、Ca:0.0005%〜0.0030%を含み、Al:0.005%以下であり、残部Fe及び不可避不純物からなる条用の軟鋼。
- 重量%で、更にB:0.001%〜0.01%、S:0.015%〜0.030%、Cr:0.05%〜0.25%の1種又は2種以上を含むことを特徴とする請求項1に記載の条用の軟鋼。
- ビレット連続鋳造法によって鋳造し、タンディッシュから鋳型への注入流の周囲に筒を設置し、該筒内の酸素濃度を1.0%以下とすることを特徴とする請求項1又は2に記載の条用の軟鋼の製造方法。
- 前記筒内に窒素ガスを吹き込む事を特徴とする請求項3に記載の条用の軟鋼の製造方法。
- 前記筒にかえて、タンディッシュから鋳型への注入に浸漬ノズルを使用することを特徴とする請求項3に記載の条用の軟鋼の製造方法。
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