JP3631534B2 - 自動変速機の制御装置 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、車両用の自動変速機の制御装置に関し、特に所定の前進段でヒルホールドモードを設定しもしくはエンジンブレーキを効かせるなどのために摩擦係合装置を選択的に係合させることのできる自動変速機の制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
車両用の自動変速機において、燃費や静粛性を向上させるためにオーバードライブ装置が多用されていることは周知のとおりである。その一例が特開平5−157165号公報に記載されており、前進4段・後進1段を設定するための主変速装置の入力側に、一組の遊星歯車機構からなるオーバードライブ装置が設けられている。このオーバードライブ装置は、その遊星歯車機構のキャリヤとサンギヤとをクラッチによって連結することによりその全体が一体回転する低速段(直結段)を設定し、またサンギヤをブレーキによって固定することにより高速段に設定するように構成されている。そして上記の公報に記載された自動変速機では、最高速段である第5速を設定するためにオーバードライブ装置を高速段にする以外に、後進段を設定する際にもオーバードライブ装置を高速段とし、これにより後進段での変速比が大きくなることを防止している。
【0003】
結局、上記の公報に記載された自動変速機は、前進5段・後進1段の変速段を設定することができ、そのために第1ないし第3のソレノイドバルブを設けて変速を制御している。また通常の自動変速機と同様に第1速や第3速などの変速段でエンジンブレーキを必要とするから、上記の自動変速機では更に第4のソレノイドバルブを設けて、この第4ソレノイドバルブによって所定の切換弁に信号圧を送り、エンジンブレーキ状態を選択的に設定するようにしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来の自動変速機における油圧制御装置は、ドライブレンジやエンジンブレーキレンジで各変速段を設定するために、第1ないし第4の4つのソレノイドバルブを設けているが、油圧制御装置あるいは自動変速機の全体のコンパクト化のためには、ソレノイドバルブの数を削減することが望まれる。その場合、オーバードライブ装置の高速段は、第5速と後進段とで設定するだけであるのに対して、エンジンブレーキ状態は、第1速や第3速の変速段で設定するから、これらのいわゆる互いに干渉のない変速段で使用されるソレノイドバルブを兼用することが考えられる。具体的には、オーバードライブ装置を高速段に設定するためのソレノイドバルブを、エンジンブレーキレンジの第1速や第3速などの変速段でエンジンブレーキ状態を設定するように動作させることが考えられる。
【0005】
しかるにいわゆるオーバードライブ用のソレノイドバルブをエンジンブレーキ用のソレノイドバルブと兼用するとした場合、ドライブ(D)レンジの第1速ではエンジンブレーキを効かせないから、後進段設定時とDレンジの第1速とでは、そのソレノイドバルブの動作状態が互いに反対となる。すなわちこのソレノイドバルブは、オーバードライブ装置を高速段に切り換えるためのバルブであるから、フェイル時には高速段の変速段を設定するフェイルセーフの観点から、非通電(OFF)状態で信号圧を出力するように構成するのが通常である。したがって後進段設定時には、このソレノイドバルブをOFFにし、これに対してエンジンブレーキを効かせないDレンジの第1速では、このソレノイドバルブをONにして信号圧を出力しないように構成することになる。
【0006】
このように上記のソレノイドバルブをオーバードライブ設定用とエンジンブレーキ用とに単純に兼用するとすれば、後進段とDレンジとでソレノイドバルブへの通電パターンが反対となり、その結果、例えばDレンジの第1速が設定されているにも拘わらず、電気的なフェイルによって後進段(Rレンジ)の検出信号が出力された場合には、前記ソレノイドバルブがOFFとなって信号圧を出力してしまい、Dレンジの第1速でエンジンブレーキが効く状態になる。具体的には、第1速で係合する一方向クラッチと並列の多板ブレーキが係合してしまうので、変速が円滑に実行できなくなり、変速ショックが悪化する可能性がある。
【0007】
このような不都合を解決するために、第1速と後進段とにおける前記ソレノイドバルブの動作状態を同一とすることが考えられる。その場合、そのソレノイドバルブが出力する信号圧をエンジンブレーキを効かせる制御系統とオーバードライブ状態を制御する制御系統とに切り換えて出力するバルブと、エンジンブレーキを効かせる制御系統において信号圧が入力されることによってエンジンブレーキを効かない状態にするバルブとを設けることになる。このようにすれば、主変速装置での後進状態は、マニュアルバルブから出力されるRレンジ圧によって設定され、オーバードライブ装置の高速段は前記ソレノイドバルブによって設定されるから、第1速と後進段とのシフトソレノイドバルブの動作状態(通電状態)を同一にすることができる。
【0008】
上記のようにDレンジの第1速を設定するためのソレノイドバルブの通電状態と後進段を設定するためのソレノイドバルブの通電状態とを同一にすれば、例えば電気的なフェイルによってRレンジとDレンジとの相互の誤判定が生じて、Rレンジでオーバードライブ装置が低速段(直結状態)になったり、Dレンジの第1速でエンジンブレーキが効いたりする不都合を回避できる。
【0009】
ところで上記のRレンジやDレンジは、シフト装置におけるシフトレバーを操作することによって選択され、それに伴ってマニュアルバルブが切り替わって各レンジに応じた摩擦係合装置やバルブに油圧が供給される。例えばDレンジにシフトすれば、マニュアルバルブからDレンジ圧が出力され、前進段を設定するための入力クラッチが係合させられ、また所定のシフトバルブにDレンジ圧が供給されて、そのシフトバルブをDレンジでの動作状態とする。また発進時であれば、これと併せて、シフトソレノイドバルブからシフトバルブに信号圧が送られ、第1速を設定するための摩擦係合装置が係合させられる。
【0010】
さらにRレンジにシフトした場合には、マニュアルバルブから主変速装置を後進状態にするための摩擦係合装置に油圧が供給されてこれらが係合し、また所定のシフトソレノイドバルブからの信号圧によって副変速装置を高速段にするブレーキに油圧が送られ、これが係合する。
【0011】
これに対して、ヒルホールドモードなどの特別な走行モードが選択されている場合には、走行のためのレンジへのシフトに伴って油圧の供給箇所が増加することがある。これをヒルホールドモードが選択されている場合について説明すると、ヒルホールドモードは、Dレンジでの走行にあたって、いわゆる坂道発進の際に車両の後退を防ぐモードであって、発進用の変速段として例えばエンジンブレーキの効く第3速が設定される。したがってヒルホールドモードを選択している状態で、非駆動レンジであるニュートラル(N)レンジからDレンジにマニュアルシフトすると、前進段を設定するための入力クラッチと第3速を設定するための摩擦係合装置(ブレーキ)とに加えて、エンジンブレーキを効かせるためのブレーキにも油圧を供給してこれらを係合させることになる。すなわちヒルホールドモードを選択することに伴い、油圧を供給するべき摩擦係合装置の数が、通常時よりも1つ多くなる。
【0012】
通常、前記入力クラッチは発進時に解放状態から係合状態に切り換えられるから、大きいトルク容量を必要とし、そのために容量の大きいアキュームレータによって調圧しつつ係合させているが、上記のように、ヒルホールドモードの選択によって油圧の供給箇所が増えると、入力クラッチに対して供給する油圧の一時的な低下や油圧の変動が生じ、その結果、変速ショックが悪化する可能性がある。
【0013】
また一方、シフトソレノイドバルブのON/OFFの状態(通電パターン)に応じて各変速段を設定する上述した自動変速機においては、NレンジでのシフトソレノイドバルブのON/OFFの状態を、その時点の車速やスロットル開度などの走行状態で決まる変速段を設定するON/OFF状態としている。したがってNレンジで停止し、もしくは停止に近い状態にあれば、シフトソレノイドバルブのON/OFFの状態は第1速を設定するパターンになっており、これは、上述した自動変速機ではRレンジと同じである。
【0014】
これに対して前述したヒルホールドモードはエンジンブレーキの効く第3速を発進時の変速段とするから、そのシフトソレノイドバルブのON/OFFの状態は、Nレンジでの状態とは異なるのが通常である。そのためヒルホールドモードを選択してエンジンブレーキの効く第3速を設定している場合に、レンジ検出の一時的なフェイルが生じてNレンジが誤判定されると、すなわちNレンジ信号が一時的に生じると、シフトソレノイドバルブのON/OFFの状態は、Nレンジの状態になる。
【0015】
その場合、副変速部を制御するソレノイドバルブが、エンジンブレーキを制御するソレノイドバルブとして兼用されていれば、Nレンジの誤判定によって第3速は維持されるものの、ヒルホールドモードを設定するためのブレーキが解放させられる。そしてフェイルが一時的であることにより、再度、Dレンジが判定されると、ヒルホールドモードのためのブレーキが再度係合する。このようにレンジ判定の一時的なフェイルによってブレーキの解放と係合とが連続して生じ、その結果、ショックが悪化する可能性がある。
【0016】
この発明は、上記の事情を背景としてなされたものであり、エンジンブレーキを効かせるように作用する摩擦係合装置を係合させる走行モードを選択可能な自動変速機において走行レンジへのマニュアルシフトに伴うショックを防止することのできる制御装置を提供することを目的とするものである。
【0017】
そしてこの発明においては、上記の目的は、ヒルホールドモードなどの特定の走行モードが選択可能な自動変速機において、非駆動レンジから駆動レンジへのマニュアルシフトの際にその走行モードを達成するための摩擦係合装置への油圧の供給を遅延させることにより達成される。
【0018】
【課題を解決するための手段およびその作用】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載した発明は、所定の変速段でエンジンブレーキ用の摩擦係合装置を選択的に係合させることができ、かつその変速段を発進用変速段とする走行モードを選択することのできる自動変速機の制御装置において、非駆動レンジから走行レンジに切り換えて前記所定の変速段を設定するための摩擦係合装置を係合させるとともに前記エンジンブレーキ用の摩擦係合装置を係合させる場合に、前記変速段を設定するための摩擦係合装置への油圧の供給に対して、前記エンジンブレーキ用摩擦係合装置に対する油圧の供給を遅延させるよう構成されていることを特徴とするものである。
【0019】
したがって請求項1に記載した発明では、特定の走行モードで発進する場合に、その走行モードを達成するための摩擦係合装置に対する油圧の供給が、変速段の達成のための摩擦係合装置に対する油圧の供給に対して遅延されるために、その変速段の達成のための油圧の低下や変動などが抑制もしくは防止され、その結果、ショックが良好になる。
【0020】
また請求項2に記載した発明は、所定の前進段で車両を後退させないように摩擦係合装置を係合させるヒルホールドモードを設定することのできる自動変速機の制御装置において、非駆動レンジからヒルホールドモードでの前記所定の前進段を設定する走行レンジにレンジを切り換えて前記所定の前進段を設定するための摩擦係合装置を係合させるとともに前記摩擦係合装置を係合させてヒルホールドモードを設定する場合に、その前進段を設定するための摩擦係合装置への油圧の供給に対して、前記ヒルホールドモードで係合させられる前記摩擦係合装置への油圧の供給を遅延させるように構成されていることを特徴とするものである。
【0021】
したがってこの請求項2の発明では、前進段を設定するための摩擦係合装置とヒルホールドモードを設定するための摩擦係合装置との両方に油圧が同時に供給されないので、前進段を設定するための摩擦係合装置の係合圧の低下や変動が生じることなくその油圧が適正に制御され、変速ショックの悪化が防止される。
【0022】
また請求項3に記載した発明は、後進状態と複数の前進状態とを設定する主変速部と高低二段に切り換えることのできる副変速部とを備え、所定の制御弁が出力する信号圧を、前記副変速部を制御する信号圧と、所定の前進段で車両の後退を阻止するべく係合させられるヒルホールド用摩擦係合装置を係合させる信号圧とに切換弁で切り換えて使用し、かつ所定の前進レンジで前記ヒルホールド用摩擦係合装置を係合させる走行モードを選択することのできる自動変速機の制御装置において、前記走行モードが選択されている状態で、非駆動レンジから前記前進レンジに切り換えられた場合に、前記所定の前進段を設定するための摩擦係合装置への油圧の供給に対して、前記ヒルホールド用摩擦係合装置への油圧の供給を遅延させるように前記切換弁を切り換える手段を備えていることを特徴とするものである。
【0023】
したがってこの請求項3の発明では、ヒルホールドモードが選択されている場合には、副変速部を高速段に制御する制御弁がそのヒルホールドモードで係合させられる摩擦係合装置を制御する制御弁として作用するが、非駆動レンジから走行レンジにマニュアルシフトした場合、先ず、前進段を設定する摩擦係合装置に油圧が送られ、その後に前記制御弁で制御される摩擦係合装置に油圧が送られるから、マニュアルシフト時に前進段を設定するための油圧の一時的な低下や変動およびそれに伴う変速ショックの悪化が防止される。
【0030】
【発明の実施の形態】
つぎにこの発明を図面を参照してより具体的に説明する。図1はこの発明の一例を模式的に示しており、自動変速機1を連結してあるエンジン2は、その吸気管路3にメインスロットルバルブ4とその上流側に位置するサブスロットルバルブ5とを有している。そのメインスロットルバルブ4はアクセルペダル6に連結されていて、アクセルペダル6の踏み込み量に応じて開閉される。またサブスロットルバルブ5は、モータ7によって開閉されるようになっている。
【0031】
このサブスロットルバルブ5の開度を調整するためにモータ7を制御し、またエンジン2の燃料噴射量および点火時期などを制御するためのエンジン用電子制御装置(E−ECU)8が設けられている。この電子制御装置8は、中央演算処理装置(CPU)および記憶装置(RAM、ROM)ならびに入出力インターフェースを主体とするものであって、この電子制御装置8には、制御のためのデータとして、エンジン(E/G)回転数N、吸入空気量Q、吸入空気温度、スロットル開度、車速、エンジン水温、ブレーキスイッチからの信号などの各種の信号が入力されている。
【0032】
自動変速機1における変速およびロックアップクラッチならびにライン圧は、油圧制御装置9によって制御される。その油圧制御装置9は、電気的に制御されるように構成されており、また変速を実行するための第1ないし第3のシフトソレノイドバルブS1 ,〜S3 、ライン圧を制御するためのリニアソレノイドバルブSLT、アキュームレータ背圧を制御するためのリニアソレノイドバルブSLN、ロックアップクラッチを制御するためのリニアソレノイドバルブSLUが設けられている。
【0033】
これらのソレノイドバルブに信号を出力して変速やライン圧あるいはアキュームレータ背圧などを制御する自動変速機用電子制御装置(T−ECU)10が設けられている。この自動変速機用電子制御装置10は、中央演算処理装置(CPU)および記憶装置(RAM、ROM)ならびに入出力インターフェースを主体とするものであって、この電子制御装置10には、制御のためのデータとしてスロットル開度、車速、エンジン水温、ブレーキスイッチからの信号、シフト装置における後述するスイッチ群によるシフトポジション信号、パターンセレクトスイッチからの信号、オーバードライブスイッチからの信号、後述するクラッチC0 の回転速度を検出するセンサからの信号、車速センサからの信号、自動変速機の油温、マニュアルシフトスイッチからの信号、ホールドモードスイッチからの信号、あるいはスポーツモードスイッチからの信号などが入力されている。
【0034】
またこの自動変速機用電子制御装置10とエンジン用電子制御装置8とは、相互にデータ通信可能に接続されており、エンジン用電子制御装置8から自動変速機用電子制御装置10に対しては、1回転当たりの吸入空気量(Q/N)などの信号が送信され、また自動変速機用電子制御装置10からエンジン用電子制御装置8に対しては、各ソレノイドバルブに対する指示信号と同等の信号および変速段を指示する信号などが送信されている。
【0035】
すなわち自動変速機用電子制御装置10は、入力されたデータや予め記憶させてある変速マップに基づいて変速段やロックアップクラッチのON/OFFを判断し、あるいはライン圧の調圧レベルなどを判断し、その判断結果に基づいて所定のソレノイドバルブに指示信号を出力し、さらにフェイルの判断やそれに基づく制御を行うようになっている。またホールドモードスイッチがON操作されている場合には、所定の前進段(例えば第3速)を設定し、かつその変速段でエンジンブレーキを効かせる摩擦係合装置を係合させる変速信号を出力するようになっている。またスポーツモードスイッチがON操作されている場合には、変速段を手動操作によって選択し、かつ全ての変速段でエンジンブレーキが効くようになっている。
【0036】
これに対してエンジン用電子制御装置8は、入力されたデータに基づいて燃料噴射量や点火時期あるいはサブスロットルバルブ5の開度などを制御することに加え、自動変速機1での変速時に燃料噴射量を削減し、あるいは点火時期を変え、もしくはサブスロットルバルブ5の開度を絞ることにより、出力トルクを一時的に低下させるようになっている。
【0037】
図2は上記の自動変速機1の歯車列の一例を示す図であり、ここに示す構成では、前進5段・後進1段の変速段を設定するように構成されている。すなわちここに示す自動変速機1は、トルクコンバータ30と、副変速部31と、主変速部32とを備えている。そのトルクコンバータ30は、ロックアップクラッチ33を有しており、このロックアップクラッチ33は、ポンプインペラ34に一体化させてあるフロントカバー35とタービンランナ36を一体に取付けた部材(ハブ)37との間に設けられている。エンジンのクランクシャフト(それぞれ図示せず)はフロントカバー35に連結され、またタービンランナ36を連結してある入力軸38は、副変速部31を構成するオーバードライブ用遊星歯車機構39のキャリヤ40に連結されている。
【0038】
この遊星歯車機構39におけるキャリヤ40とサンギヤ41との間には、多板クラッチC0 と一方向クラッチF0 とが設けられている。なお、この一方向クラッチF0 はサンギヤ41がキャリヤ40に対して相対的に正回転(入力軸38の回転方向の回転)する場合に係合するようになっている。またサンギヤ41の回転を選択的に止める多板ブレーキB0 が設けられている。そしてこの副変速部31の出力要素であるリングギヤ42が、主変速部32の入力要素である中間軸43に接続されている。
【0039】
したがって副変速部31は、多板クラッチC0 もしくは一方向クラッチF0 が係合した状態では遊星歯車機構39の全体が一体となって回転するため、中間軸43が入力軸38と同速度で回転し、低速段となる。またブレーキB0 を係合させてサンギヤ41の回転を止めた状態では、リングギヤ42が入力軸38に対して増速されて正回転し、高速段となる。
【0040】
他方、主変速部32は三組の遊星歯車機構50,60,70を備えており、それらの回転要素が以下のように連結されている。すなわち第1遊星歯車機構50のサンギヤ51と第2遊星歯車機構60のサンギヤ61とが互いに一体的に連結され、また第1遊星歯車機構50のリングギヤ53と第2遊星歯車機構60のキャリヤ62と第3遊星歯車機構70のキャリヤ72との三者が連結され、かつそのキャリヤ72に出力軸80が連結されている。さらに第2遊星歯車機構60のリングギヤ63が第3遊星歯車機構70のサンギヤ71に連結されている。
【0041】
この主変速部32の歯車列では、後進段と前進側の四つの変速段とを設定することができ、そのためのクラッチおよびブレーキが以下のように設けられている。先ずクラッチについて述べると、互いに連結されている第2遊星歯車機構60のリングギヤ63および第3遊星歯車機構70のサンギヤ71と中間軸43との間に第1クラッチC1 が設けられ、また互いに連結された第1遊星歯車機構50のサンギヤ51および第2遊星歯車機構60のサンギヤ61と中間軸43との間に第2クラッチC2 が設けられている。
【0042】
つぎにブレーキについて述べると、第1ブレーキB1 はバンドブレーキであって、第1遊星歯車機構50および第2遊星歯車機構60のサンギヤ51,61の回転を止めるように配置されている。またこれらのサンギヤ51,61(すなわち共通サンギヤ軸)とケーシング81との間には、第1一方向クラッチF1 と多板ブレーキである第2ブレーキB2 とが直列に配列されており、その第1一方向クラッチF1 はサンギヤ51,61が逆回転(入力軸38の回転方向とは反対方向の回転)しようとする際に係合するようになっている。多板ブレーキである第3ブレーキB3 は第1遊星歯車機構50のキャリヤ52とケーシング81との間に設けられている。そして第3遊星歯車機構70のリングギヤ73の回転を止めるブレーキとして多板ブレーキである第4ブレーキB4 と第2一方向クラッチF2 とがケーシング81との間に並列に配置されている。なお、この第2一方向クラッチF2 はリングギヤ73が逆回転しようとする際に係合するようになっている。
【0043】
上述した各変速部31,32の回転部材のうち副変速部31のクラッチC0 の回転数を検出するC0 センサ82と、出力軸80の回転数を検出する車速センサ83とが設けられている。
【0044】
上記の自動変速機1では、各クラッチやブレーキを図3の作動表に示すように係合・解放することにより前進5段・後進1段の変速段を設定することができる。なお、図3において○印はON状態あるいは係合状態、×印はOFF状態あるいは解放状態、◎印はロックアップクラッチのON制御状態、●印は変速中にデューティ制御することをそれぞれ示す。
【0045】
図3の作動表に示すように、副変速部31をオーバードライブ状態と直結状態とに切り換える制御と第1速および第3速でエンジンブレーキを効かせる制御とを第3ソレノイドバルブS3 で行うようになっており、そのために図4に示す油圧回路が設けられている。図4はこの発明に関係する主要部分のみを示しており、そのうちの更に特徴的な部分を模式的に示せば、図5のとおりである。
【0046】
第3ソレノイドバルブS3 は、ライン圧PL を元圧とし、OFF状態で信号圧を出力するノーマルオープンタイプのバルブであって、主として副変速部31を切換え制御するために設けられており、図4および図5に示す構成では、これを第1速と第3速とのエンジンブレーキを制御するために転用するようになっている。より具体的には、第3ソレノイドバルブS3 は、副変速部31をオーバードライブ状態に設定する第5速と後進段とでOFF制御されて信号圧(パイロット圧)を出力することに加え、ドライブ(D)レンジの第1速ないし第3速でOFF制御されて信号圧を出力するが、このDレンジの第1速および第3速では、第3ソレノイドバルブS3 の信号圧をB2 リリースコントロールバルブによっていわゆる反転制御し、これら第1速あるいは第3速でエンジンブレーキを効かせるためのブレーキB1 ,B4 への油圧の供給を遮断するようになっている。
【0047】
すなわち図5において、 3−4シフトバルブ100は、各レンジおよび変速段のそれぞれで図の下側に記号で示すように各ポートが連通させられるスプールバルブであり、第3ソレノイドバルブS3 はポート101に接続されている。このポート101は、ニュートラル(N)レンジおよび第1〜3速でポート102に連通させられ、このポート102からB2 リリースコントロールバルブ130の制御ポート131に信号圧を送るようになっている。またポート101は第4,5速およびRレンジでポート103に連通させられ、ここから後述する 4−5シフトバルブ170の制御ポート171に信号圧を送るようになっている。すなわち 3−4シフトバルブ100が第3ソレノイドバルブS3 の信号圧を、エンジンブレーキ制御系統とオーバードライブ制御系統とに切り換えて出力するようになっている。
【0048】
B2 リリースコントロールバルブ130は、4つのランドのあるスプール132を有しており、制御ポート131に信号圧が供給されることによりスプール132が図5の左半分に示す位置に下がり、また反対に制御ポート131から排圧されることによりスプール132が図5の右半分に示す位置に押し上げられるようになっている。このB2 リリースコントロールバルブ130のポートのうちエンジンブレーキ圧出力ポート133を挟んでDレンジ圧入力ポート134とエンジンブレーキレンジ圧入力ポート135とが形成されている。そして第3ソレノイドバルブS3 の信号圧が制御ポート131に印加されてスプール132が図5の左半分に示す位置にあるときに、エンジンブレーキレンジ圧入力ポート135がエンジンブレーキ圧出力ポート133に連通する。
【0049】
また第3ソレノイドバルブS3 の信号圧が制御ポート131に印加されていないことによりスプール132が図5の右半分に示す位置にあるときに、Dレンジ圧入力ポート134がエンジンブレーキ圧出力ポート133に連通する。なお、第3ソレノイドバルブS3 はDレンジの第1速ないし第3速でOFF制御されて信号圧を出力するので、この場合は、前記Dレンジ圧入力ポート134が閉じられ、またDレンジであればエンジンブレーキレンジ圧が発生していないから、エンジンブレーキ圧出力ポート133から油圧が出力されない。
【0050】
上記のエンジンブレーキ圧出力ポート133はコーストブレーキコントロールバルブ150の入力ポート151に接続されている。このコーストブレーキコントロールバルブ150は、入力された油圧を調圧して出力するバルブであり、2つのランドを形成したスプール152と、その一端側に配置したプランジャ153と、スプール152とプランジャ153との間に配置したスプリング154とを有している。そして入力ポート151側のランドにはその両端面に開口する貫通孔が形成され、出力圧をスプール152の端面に作用させるようになっている。またプランジャ153の端部にはアキュームレータ背圧コントロール圧PACC が供給され、これにより調圧レベルを変えるようになっている。そして入力ポート151に選択的に連通させられる出力ポート155から第1速あるいは第3速でのエンジンブレーキ用摩擦係合装置である第1ブレーキB1 もしくは第4ブレーキB4 に対して油圧を出力するようになっている。
【0051】
すなわちDレンジ圧の発生するDレンジでの第1速および第3速では、第3ソレノイドバルブS3 がOFF制御されて信号圧を出力していても、Dレンジ圧がB2 リリースコントロールバルブ130で遮断されるから、第1ブレーキB1 あるいは第4ブレーキB4 に油圧が送られず、これらが解放状態となるので、エジンブレーキは効かない。すなわち第3ソレノイドバルブS3 の信号圧がいわゆる反転制御される。
【0052】
これに対して第1速でエンジンブレーキを効かせるLレンジでは、第3ソレノイドバルブS3 がON制御されて信号圧を出力しないから、B2 リリースコントロールバルブ130のスプール132は図5の右半分に示す位置に押し上げられ、その結果、Dレンジ圧入力ポート134と出力ポート133とが連通してDレンジ圧が第4ブレーキB4 に送られ、これが係合する。なお、Dレンジ圧は全ての前進レンジで発生する。また第3速でエンジンブレーキを効かせる“3”レンジあるいは“2”レンジにおいても、第3ソレノイドバルブS3 がON制御されるから、上述したLレンジでの第1速の場合と同様に、コーストブレーキコントロールバルブ150を介して第1ブレーキB1 に油圧が送られてこれが係合し、エンジンブレーキを効かせることができる。
【0053】
またDレンジにおいて第3ソレイドバルブS3 がOFFフェイルした場合には、B2 リリースコントロールバルブ130のDレンジ圧入力ポート134が閉じられるからエンジンブレーキが効くことはなく、したがって変速ショックを防止することができる。
【0054】
さらにB2 リリースコントロールバルブ130のスプール132が図5の右半分に示す位置に固定されてしまういわゆるバルブスティックが生じた場合、エンジンブレーキ圧入力ポート135と出力ポート133とが常時連通するので、エンジンブレーキレンジである“3”レンジあるいは“2”レンジにおいて出力ポート133から油圧を出力でき、第3速において第1ブレーキB1 を係合させてエンジンブレーキを効かせることができる。
【0055】
なお、エンジンブレーキ圧入力ポート135に連通する油路にオリフィス136を設けてあるのは、第1ブレーキB1 と第2ブレーキB2 との干渉を避けるためであり、第1ブレーキB1 を第3速で係合させる場合、第2ブレーキB2 の係合を先行させるべくオリフィス136により油圧の供給速度を遅くする。
【0056】
つぎに図4に示す油圧回路について更に具体的に説明する。なお、作図の都合上、図4を複数の部分に分割して示す図6ないし図8を参照して以下に説明する。
【0057】
先ず、B2 リリースコントロールバルブ130について更に説明すると、図6にはB2 リリースコントロールバルブ130を図5とは上下を反転して記載してあり、前述した各ポートの接続状態に加え、B2 ポート137には第2ブレーキB2 が接続されており、このB2 ポート137に選択的に連通されるポート138にはチェックボール付きオリフィス139を介して油路140が接続されている。また第2ブレーキB2 はオリフィス141を介してこの油路140に連通されている。したがってB2 ポート137をポート138に連通させることにより、第2ブレーキB2 はオリフィス141のみならずチェックボール付きオリフィス139をも介して油路140に連通されるので、その排圧速度が増大させられる。このようにB2 リリースコントロールバルブ130は、その制御ポート131に第3ソレノイドバルブS3 の信号圧を供給し、あるいは排圧することにより、第2ブレーキB2 からの排圧速度すなわち第2ブレーキB2 の解放速度を緩急に切り換えるように構成されている。
【0058】
他方、エンジンブレーキレンジ圧入力ポート135に接続された油路142は、前述したオリフィス(ダブルオリィス)136を有するとともに、排圧方向で開くチェックボール付きオリフィス143がダブルオリフィス136に対して並列に設けられている。そしてこの油路142が後述する 1−2シフトバルブに接続されている。
【0059】
つぎに 3−4シフトバルブ100について説明すると、前述したポート101,102,103の連通状態を切り換えるスプール104は6つのランドを有しており、中間部分に形成されたブレーキポート105には第1ブレーキB1 が接続されている。またこのブレーキポート105に隣接する入力ポート106は、後述する 2−3シフトバルブを介してコーストブレーキコントロールバルブ150に連通されている。そして前述したポート103は油路107を介して 4−5シフトバルブ170の制御ポート171に連通されている。
【0060】
またこの 3−4シフトバルブ100は、第2ソレノイドバルブS2 が出力する信号圧と、後述するDレンジ圧とによって動作するよう構成されている。すなわちスプリング室に開口するホールドポート108にDレンジ圧が供給され、このホールドポート108とはスプール104を挟んで反対側の制御ポート109に第2ソレノイドバルブS2 が接続されている。なお、この第2ソレノイドバルブS2 は、ライン圧PL を元圧とし、OFF状態で信号圧を出力し、かつON状態で信号圧の出力を遮断するノーマルクローズタイプのソレノイドバルブである。
【0061】
一方、 4−5シフトバルブ170は、前記副変速部31をオーバードライブ状態(高速段)あるいは直結状態(低速段)に制御するためのバルブであって、5つのランドを有するスプール176によってポートの連通状態を切り換えるよう構成されている。これらのポートのうちライン圧油路PL を接続してある入力ポート172に対して選択的に連通されるブレーキポート173に、副変速部31におけるブレーキB0 が接続されている。また入力ポート172に対し前記ブレーキポート173とは反対側に位置する出力ポート174は、油路175を介してC0 エキゾーストバルブ190に接続されている。
【0062】
したがって油路107を介して第3ソレノイドバルブS3 の信号圧が制御ポート171に加えられると、スプール176が図6の右半分に示す位置に押し下げられ、その結果、入力ポート172がブレーキポート173に連通してブレーキB0 に油圧が供給される。これとは反対に制御ポート171から排圧されると、スプール176は図6の左半分に示す位置に押し上げられ、その結果、入力ポート172が出力ポート174に連通され、C0 エキゾーストバルブ190に油圧が送られ、クラッチC0 が係合する。なお、図6において符号210はソレノイドリレーバルブを示し、ロックアップ用リニアソレノイドバルブSLUからの信号圧の給排を制御し、また第3ブレーキB3 への油圧の給排を制御するように構成されている。なお、その他の油路の接続状態は図に示すとおりである。
【0063】
図7において、コーストブレーキコントロールバルブ150の入力ポート151には、前述したB2 リリースコントロールバルブ130のポート133に接続させた油路156が接続されており、また出力ポート155には調圧したブレーキ圧を第1ブレーキB1 あるいは第4ブレーキB4 に対して出力するための油路157が接続されている。また、これらの油路156,157はチェックボール付きオリフィス158を介して相互に接続されており、第1ブレーキB1 あるいは第4ブレーキB4 から排圧するときは、このチェックボール付きオリフィス158が開くようになっている。
【0064】
ブレーキ圧の供給先を第1ブレーキB1 あるいは第4ブレーキB4 に切り換える制御および 3−4シフトバルブ100のホールドポート108へのDレンジ圧の供給の制御は、 2−3シフトバルブ230によって行われる。 2−3シフトバルブ230は、7つのランドを有するスプール231によってポートの連通状態の切り換えを行うバルブであって、スプール231の一端側にスプリング232が設けられるとともに、この端部に開口するホールドポート233には、Lレンジ圧が供給されるようになっている。
【0065】
ブレーキ圧を供給する前記油路157が、中間部のポート234に連通されており、このポート234に対し図7での上側の出力ポート235が前述した 3−4シフトバルブ100の入力ポート106に接続されている。またポート234に対して図7での下側に位置する第2の出力ポート236は、油路237を介して 1−2シフトバルブ250に接続されている。さらにホールドポート233とはスプール231を挟んで反対側に位置する制御ポート239には、第1ソレノイドバルブS1 が接続されている。
【0066】
この第1ソレノイドバルブS1 は、OFF状態でドレインポートを閉じ、ON状態でドレインポートを開くノーマルオープンタイプのソレノイドバルブであって、ストレーナ320およびオリフィス321を介して供給されるDレンジ圧をOFF状態で制御ポート239に印加し、ON状態で排圧するようになっている。したがってLレンジ圧がホールドポート233に作用していない状態では、この 2−3シフトバルブ230は、第1ソレノイドバルブS1 によって制御される。そしてこの 2−3シフトバルブ230は、第1速、第2速、NレンジおよびRレンジでスプール231が図7の左半分に示す位置に押し上げられ、また第3速ないし第5速でスプール231が図7の右半分に示す位置に押し下げられるよう構成されている。
【0067】
したがって第1速でエンジンブレーキを効かせる場合には、ポート234が第2の出力ポート236に連通させられて、ここからブレーキ圧を出力し、また第3速でエンジンブレーキを効かせる場合にはポート234が出力ポート235に連通させられてここからブレーキ圧を 3−4シフトバルブ100を介して第1ブレーキB1 に供給するように構成されている。なお、第2ブレーキB2 はポート238に接続されている。
【0068】
さらに 2−3シフトバルブ230は、Dレンジ圧の供給されるDレンジ圧入力ポート301を備えており、ここに油路302が接続されている。またこのポート301を挟んで図の上下両側に第1Dレンジ圧出力ポート303と第2Dレンジ圧出力ポート304とが形成されている。そしてDレンジ圧入力ポート301は、第3速ないし第5速で図7の上側の第1Dレンジ圧出力ポート303に連通し、それ以外の変速段およびNレンジならびにRレンジで図7の下側の第2Dレンジ圧出力ポート304に連通するようになっている。またこの第2Dレンジ圧出力ポート304が油路305を介して前記 3−4シフトバルブ100のホールドポート108に接続されている。このDレンジ圧は後述するようにDレンジを含む前進レンジで油路302に発生する油圧であり、したがって第1速および第2速のときに 3−4シフトバルブ100のホールドポート108にDレンジ圧が 2−3シフトバルブ230を介して供給される。
【0069】
第1速でエンジンブレーキを効かせる際に係合させられる第4ブレーキB4 は、シャトルバルブ240を介して 1−2シフトバルブ250に接続されている。この 1−2シフトバルブ250は4つのランドを有するスプール251によってポートの連通状態を切り換えるバルブであって、前記 2−3シフトバルブ230の第2出力ポート236が入力ポート252に接続されており、この入力ポート252とドレインポート253とに選択的に連通される出力ポート254にシャトルバルブ240が接続されている。
【0070】
またエンジンブレーキレンジ圧を前記B2 リリースコントロールバルブ130に供給する油路142が他の出力ポート255に接続されており、この出力ポート255に選択的に連通されるエンジンブレーキポート256には、“3”レンジ圧を供給する油路257と“2”レンジ圧を供給する油路258とが接続されている。さらにスプール251をその軸線方向に押圧するスプリングを配置してある箇所に開口したホールドポート259が形成されており、このホールドポート259が前記 2−3シフトバルブ230の第1Dレンジ圧出力ポート303に接続されている。またこのホールドポート259と反対側の制御ポートには第2ソレノイドバルブS2 が接続されている。
【0071】
したがってこの 1−2シフトバルブ250のスプール251は第1速、NレンジおよびRレンジにおいて図7の右半分に示す位置に押し下げられる。この状態では、入力ポート252が出力ポート254に連通する。また第2速ないし第5速ではスプール251が図7の左半分に示す位置に押し上げられ、その結果、エンジンブレーキポート256が他の出力ポート255に連通する。なお、他の油路の接続状態は図7に示すとおりである。
【0072】
さらにマニュアルバルブ260について説明すると、このマニュアルバルブ260は、手動操作されてパーキング(P)レンジ、Rレンジ、Nレンジ、Dレンジ、“3”レンジ、“2”レンジおよびLレンジの7ポジションを設定することのできるバルブであり、ライン圧油路PL が接続された入力ポート265をPレンジ以外の各レンジに対応させて設けたポートに連通させるようになっている。すなわちNレンジを設定した場合には、図7に示すように入力ポート265に対して他のポートが遮断される。またDレンジを設定した場合には、Dレンジ圧をDポート261から出力し、また“3”レンジを設定した場合には、Dポート261および“3”ポート262とから油圧を出力し、この“3”ポートから出力される油圧がいわゆる“3”レンジ圧である。また“2”レンジを設定した場合に、Dポート261および“3”ポート262ならびに“2”ポート263とから油圧を出力するようになっている。この“2”ポート263から出力される油圧が“2”レンジ圧である。
【0073】
なお、Dポート261は第1クラッチC1 に連通され、“3”ポート262には、前述した油路257が接続され、また“2”ポート263には、前記油路258が接続されている。そしてLレンジに設定した場合には、Dポート261、“3”ポート262、“2”ポート263およびLポート264から油圧を出力し、このLポート264から出力した油圧が前記 2−3シフトバルブ230のホールドポート233に供給される。
【0074】
そしてRレンジに設定した場合には、入力ポート265がRポート267に連通し、ここからRレンジ圧が出力される。このRポート267には、特には図示しないが、リバースコントロールバルブを介してシャトルバルブ240および第4ブレーキB4 と、図示しない他のシャトルバルブおよび第2クラッチC2 とが接続されている。したがってマニュアルバルブ260によってRレンジを設定すれば、電気的な制御を行うことなく、これら第2クラッチC2 と第4ブレーキB4 とが係合して主変速部32が後進状態になる。なお、Pレンジを設定した場合には、入力ポート265が閉じられる。
【0075】
また図7で符号270はB3 コントロールバルブであって、ソレノイドリレーバルブ210を介して供給されるリニアソレノイドバルブSLUの信号圧を制御ポート271に供給することにより調圧レベルを変え、第2速を設定する際に係合させる第3ブレーキB3 への供給油圧を制御するように構成されている。このB3 コントロールバルブ270の構成は従来から知られているので、図7に主な油路の接続状態を示してその説明を省略する。
【0076】
なお、前記C0 エキゾーストバルブ190は副変速部31のクラッチC0 を制御するためのバルブであって、図8に示すように、Dレンジの第2速では第1制御ポート191に油圧が供給されることにより、第1速ないし第4速およびNレンジでライン圧PL が供給される第1入力ポート192を閉じるようになっている。またこの時、“2”レンジ圧が入力される第2入力ポート193が出力ポート194に連通されるようになっている。したがってDレンジの第2速では、油圧を出力しないためにクラッチC0 が解放され、また“2”レンジおよびLレンジでは、第2入力ポート193に“2”レンジ圧が供給されるので、クラッチC0 が係合してエンジンブレーキが効くようになっている。さらに第2制御ポート195には、リニアソレノイドバルブSLUの信号圧が供給されるようになっている。
【0077】
なお、図8において符号280はリニアソレノイドバルブSLTによって制御されるリレーバルブであり、また符号290はアキュームレータを示す。さらに符号295は、アキュームレータ背圧PACC を調圧するためのアキュームレータコントロールバルブを示す。
【0078】
さらにここで、各レンジを選択するためのシフト装置について説明する。この実施例においては、各レンジ位置を図9に示すように配列したシフトパターンのシフト装置が採用されている。その配列を簡単に説明すると、パーキング(P)レンジ位置に続けてリバース(R)レンジ位置が配置され、これらの配列方向に対して斜め方向の位置にRレンジに続けてニュートラル(N)レンジ位置が設けられている。ドライブ(D)レンジ位置は、このNレンジに対して、前記Pレンジ位置とRレンジ位置との配列方向と平行に配置され、さらに4速レンジ位置が、これらの配列方向に対して直交する方向に屈曲した位置に配置されている。さらに3速レンジ位置が、4速レンジ位置に対して、前記NレンジとDレンジとの配列方向と平行な方向に配置され、2速レンジ位置は、前記Rレンジ位置に対するNレンジ位置と同様な関係となる位置に設けられ、そしてロー(L)レンジ位置は、Dレンジ位置に対する4速レンジ位置と同様な関係となる位置に設けられている。
【0079】
これらの走行レンジのうち、Dレンジでは、図4に示す前進5段を達成することができ、これに対して4速レンジでは、オーバードライブ段である第5速のない前進4段を達成することができ、さらに3速レンジでは第3速までの変速段、2速レンジでは第2速までの変速段をそれぞれ達成することができ、そしてLレンジでは第1速のみを達成することができる。
【0080】
上記の各レンジ位置を検出し、またフェイルを判断するために、2つのスイッチ群が設けられている。その詳細は特開平5−306764号公報に記載されているとおりであり、これを簡単に説明すると、Pレンジ位置とRレンジ位置、あるいはNレンジ位置とDレンジ位置との配列方向と平行に6つのスイッチが配列されている。これらの配列方向は具体的には車両の前後方向であり、Pレンジ位置に対応する位置を最先端位置として車両の後方側に、Rレンジ位置、Nレンジ位置、Dレンジ位置、“3”レンジ位置、“2”レンジ位置にそれぞれ対応するように6つのスイッチが配列されている。これに対して他のスイッチ群として3つのスイッチが設けられている。具体的には、Pレンジ位置と4速レンジ位置とLレンジ位置とにスイッチが設けられている。
【0081】
これらのスイッチは前記自動変速機用電子制御装置10に接続され、6つのスイッチからなる第1のスイッチ群からの出力信号と、3つのスイッチからなる第2のスイッチ群からの出力信号との論理和によって、選択されているレンジ位置(シフトポジション)を判定し、またフェイルを判定するようになっている。
【0082】
なお、レンジの判定は、他の方法によって行うこともでき、例えば各レンジ位置を直線的に配列してある周知のシフト装置においては、Dレンジ位置以外の各レンジ位置にスイッチを設けておき、これらのレンジはそれぞれに対応したスイッチからの信号によって判定し、Dレンジについては、いずれのスイッチからも信号が出力されないことにより判定することとしてもよい。このような構成であれば、電気的なフェイルによっていずれのスイッチからも電子制御装置10に信号が入力されない場合には、Dレンジが設定されるので、走行を確保し、またフェイルセーフを確立できる。
【0083】
上記の制御装置によれば、後進段を設定するためのシフトソレノイドバルブS1 ,S2 ,S3 の通電パターンとDレンジの第1速を設定するためのシフトソレノイドバルブS1 ,S2 ,S3 の通電パターンとが同一である。先ずDレンジの第1速について説明すると、マニュアルバルブ260でDレンジを設定することにより、Dレンジ圧が発生する。図3の作動表から知られるように、第1クラッチC1 は前進レンジで常に係合するようになっており、具体的にはDレンジ圧が第1クラッチC1 に送られる。この状態で第1ソレノイドバルブS1 がON制御されて信号圧を出力せず、これに対して第2および第3のソレノイドバルブS2 ,S3 がOFF制御されてそれぞれ信号圧を出力する。
【0084】
したがって 2−3シフトバルブ230の制御ポート239に信号圧が印加されないので、そのスプール231が図7の左半分に示す位置に押し上げられる。すなわちDレンジ圧入力ポート301が第2Dレンジ圧出力ポート304に連通し、油路302から供給されたDレンジ圧がこれらのポート301,304ならびに油路305を介して 3−4シフトバルブ100のホールドポート108に供給される。
【0085】
Dレンジの第1速では、この 3−4シフトバルブ100の制御ポート109に第2ソレノイドバルブS2 の信号圧が入力されているが、そのスプール104に作用する軸線方向力は、第2ソレノイドバルブS2 の信号圧によるよりも、Dレンジ圧とスプリング力とによる力の方が大きいので、スプール104が図6の左半分に示す位置に押し上げられる。その結果、第3ソレノイドバルブS3 の信号圧が供給されているポート101がポート102に連通されてこの信号圧がB2 リリースコントロールバルブ130のホールドポート131に供給される。これに対して 4−5シフトバルブ170の制御ポート171に連通されているポート103がドレインに連通され、したがって 4−5シフトバルブ170の制御ポート171から排圧される。
【0086】
そのため 4−5シフトバルブ170のスプール176が図6の左半分に示す位置に押し上げられ、ブレーキポート173がドレインに連通されて、ここに連通されているブレーキB0 が解放される。これに対して入力ポート172が出力ポート174に連通するから、ライン圧PL がここからC0 エキゾーストバルブ190およびリレーバルブ280を介してクラッチC0 に供給され、このクラッチC0 が係合する。すなわち副変速部31が低速段(直結状態)になる。なお、第2クラッチC2 はブレーキレンジ圧を元圧とするから解放状態となる。また主変速部32におけるブレーキB1 〜B4 は解放状態となる。
【0087】
これらのブレーキのうち第1速でエンジンブレーキ状態を設定するための第4ブレーキB4 について説明すると、Dレンジの第1速では第3ソレノイドバルブS3 がOFF制御されてその信号圧が 3−4シフトバルブ100を介してB2 リリースコントロールバルブ130の制御ポート131に入力される。その結果、B2 リリースコントロールバルブ130のスプール132が図4あるいは図6の右半分に示す位置に押し上げられてDレンジ圧の供給されるポート134を遮断する。そのためにDレンジ圧はコーストブレーキコントロールバルブ150に送られないので、第4ブレーキB4 は解放されたままとなり、エンジンブレーキが効くことはない。したがってDレンジの第1速を設定するにあたって、第3ソレノイドバルブS3 がたとえOFFフェイルしたとしても、第4ブレーキB4 が係合することはないので、第1速からの変速あるいは第1速への変速の際に変速ショックが悪化するなどの不都合は生じない。
【0088】
なお、第1速でエンジンブレーキを効かせる必要のあるLレンジにおいては、第3ソレノイドバルブS3 がON制御されて信号圧を出力しないから、B2 リリースコントロールバルブ130の制御ポート131から排圧される。その結果、スプール132が図4あるいは図6の左半分に示す位置に押し下げられるので、Dレンジ圧がポート134およびポート133を介してコーストブレーキコントロールバルブ150に出力され、ここから 2−3シフトバルブ230および 1−2シフトバルブ250ならびにシャトルバルブ240を介して第4ブレーキB4 に油圧が供給される。すなわち第4ブレーキB4 が係合してエンジンブレーキを効かせることができる。
【0089】
また一方、Dレンジの第3速を設定する際にも第3ソレノイドバルブS3 がOFF制御されるから、第1速の場合と同様に、B2 リリースコントロールバルブ130のポート134が閉じられてDレンジ圧はカットされる。したがって第1ブレーキB1 に油圧が供給されず、これが解放されたままとなるので、エンジンブレーキが効くことはない。
【0090】
これに対して第3速でエンジンブレーキを効かせる“3”レンジおよび“2”レンジでは、第3ソレノイドバルブS3 がON制御されるから、B2 リリースコントロールバルブ130の制御ポート131から排圧され、その結果、Dレンジ圧がポート134およびポート133を介してコーストブレーキコントロールバルブ150に供給され、ここで調圧されたエンジンブレーキ圧が 2−3シフトバルブ230および 3−4シフトバルブ100を介して第1ブレーキB1 に供給され、これが係合することによりエンジンブレーキを効かせることができる。
【0091】
この“3”レンジあるいは“2”レンジの第3速において、第3ソレノイドバルブS3 がOFFフェイルした場合、B2 リリースコントロールバルブ130の制御ポート131に油圧が供給されるために、Dレンジ圧の入力されているDレンジ圧入力ポート134が閉じられる替わりに、エンジンブレーキレンジ圧の供給されているエンジンブレーキレンジ圧入力ポート135が出力ポート133に連通するので、ここからエンジンブレーキレンジ圧がコーストブレーキコントロールバルブ150に供給される。その結果、ここで調圧されたエンジンブレーキ圧が第1ブレーキB1 に供給されてこれが係合するので、たとえ第3ソレノイドバルブS3 がOFFフェイルしてもエンジンブレーキを効かせることができる。
【0092】
なお、B2 リリースコントロールバルブ130のエンジンブレーキレンジ圧入力ポート135にエンジンブレーキレンジ圧を供給する場合、ダブルオリフィス136を介して供給することになるので、第1ブレーキB1 の油圧の立ち上がりを緩和することができ、その結果、第1ブレーキB1 と第2ブレーキB2 との干渉を避けることができる。
【0093】
上述した自動変速機Aにおいても、非駆動レンジであるNレンジから走行レンジであるDレンジにシフト装置を操作した場合、発進時であれば、車速がほぼ零であるから、第1速が設定される。またその直前のNレンジにおいても、シフトソレノイドバルブS1 ,S2 ,S3 の通電パターンは、第1速を設定する状態となっている。これは、具体的には、第1ソレノイドバルブS1 がON、第2ソレノイドバルブS2 および第3ソレノイドバルブS3 がOFFの状態である。そしてこの通電パターンは、Rレンジと同様であり、したがって電気的なフェイルによってDレンジをRレンジに誤判定しても通電パターンが同一であるために、第1速でエンジンブレーキが効くことはない。
【0094】
これに対してヒルホールドモードが選択されている場合、すなわち前述したホールドモードスイッチがON操作されている場合には、Nレンジでの通電パターンおよびDレンジにマニュアルシフトした場合の制御が、上記の通常時とは異なる。ここでヒルホールドモードは、Dレンジにおいて坂道発進時に車両が後退しないようブレーキを係合させるモードであり、図10に示す変速マップが採用される。すなわち図10の(A)は通常の変速マップであり、車速Vとスロットル開度θとをパラメータとして第1速ないし第5速の変速段領域が設定されている。これに対して図10の(B)はヒルホールドモードでの変速パターンであって、第3速ないし第5速の変速段領域が設定されている。したがってヒルホールドモードでは発進時の変速段として第3速が設定され、またその場合、車両の後退を防止するためにエンジンブレーキ用の第1ブレーキB1 が係合させられる。
【0095】
以下、ヒルホールドモードが選択されている場合の制御例を説明する。図11はその制御ルーチンの一例を示すフローチャートであって、入力信号の処理(ステップ1)を行った後、ヒルホールドモードスイッチがON操作されているか否かが判断される(ステップ2)。ヒルホールドモードスイッチがOFFであれば特に制御を行うことなくこのルーチンから抜け、またヒルホールドモードスイッチがON操作されていれば、ヒルホールド用Nレンジソレノイドパターンを設定する(ステップ3)。
【0096】
NレンジにおけるシフトソレノイドバルブS1 ,S2 ,S3 の通常時における通電パターンは、車速に応じたパターンとされ、したがって車速がほぼ零である発進時においては第1ソレノイドバルブS1 がON、第2ソレノイドバルブS2 、および第3ソレノイドバルブS3 がOFFとされる。これに対してヒルホールドモードスイッチがON操作されている場合には、図12に示すように第1ソレノイドバルブS1 がOFF、第2ソレノイドバルブS2 がON、第3ソレノイドバルブS3 がOFFに設定される。したがってこの状態ではライン圧が 4−5シフトバルブ170およびC0 エキゾーストバルブ190ならびにリレーバルブ280を介して副変速部31におけるクラッチC0 に供給され、これが係合する。
【0097】
なおこのNレンジにおける通電パターンにおいて第3ソレノイドバルブS3 がOFFであって信号圧を出力するが、第2ソレノイドバルブS2 がON制御されて信号圧を出力しないため、切換弁である 3−4シフトバルブ100のスプール104が図6における左半分に示す位置に押し上げられ、第3ソレノイドバルブS3 の出力する信号圧をB2 リリースコントロールバルブ130に送る。したがって副変速部31が高速段になることはない。
【0098】
ステップ3に続くステップ4において、ヒルホールド用Dレンジソレノイドパターンを設定する。前述したようにヒルホールドモードではエンジンブレーキの効く状態の第3速を発進用の変速段とするから、たとえDレンジであってもエンジンブレーキ用の摩擦係合装置を係合させることになる。したがってこのヒルホールド用Dレンジソレノイドパターンとしては、“3”レンジにおける第3速の通電パターンが採用され、第1ソレノイドバルブS1 がOFF、第2ソレノイドバルブS2 および第3ソレノイドバルブS3 がそれぞれONに制御される。これは図12に示すとおりであり、したがってマニュアルバルブ260がDレンジ位置に設定されることにより、第1クラッチC1 に油圧が送られてこれが係合し、また図7に示すように 2−3シフトバルブ230のスプール231が左半分に示す位置に押し下げられることにより、第2ブレーキB2 にDレンジ圧が供給されてこれが係合する。
【0099】
さらに第3ソレノイドバルブS3 がON制御されて信号圧を出力しないことにより、B2 リリースコントロールバルブ130のスプール132が図6の左半分に示す位置に押し下げられ、その結果、Dレンジ圧がこのB2 リリースコントロールバルブ130およびコーストブレーキコントロールバルブ150ならびに 2−3シフトバルブ230から 3−4シフトバルブ100を介して第1ブレーキB1 に供給され、これが係合する。すなわち係合させられるブレーキが、通常時の第3速に対して一つだけ多くなる。
【0100】
なお、第3速においては第3ソレノイドバルブS3 はエンジンブレーキ状態を制御するために使用され、したがって第1ソレノイドバルブS1 と第2ソレノイドバルブS2 との2つのソレノイドバルブが実質的にシフトソレノイドバルブとして機能する。そしてこの第3速におけるこれら第1ソレノイドバルブS1 と第2ソレノイドバルブS2 との通電パターンはNレンジにおける通電パターンと同一になる。したがって、NレンジからDレンジにマニュアルシフトした場合のこれらのソレノイドバルブS1 ,S2 の切換が生じないため、制御上有利であり、また信頼性を向上させることができる。
【0101】
NレンジおよびDレンジにおけるソレノイドパターンを上述のように設定した後、NレンジからDレンジへのシフトが行われたか否かを判断する(ステップ5)。この判断は、図9に示すシフト装置においてはスイッチ群の出力する信号に基づく論理和から判断することができ、またシフトポジションを直線的に配列した通常のシフト装置においては、例えば全てのシフトポジションスイッチが信号を出力しなくなることによりDレンジが選択されたことを判断することができる。
【0102】
ステップ5で否定判断された場合には、特に制御を行うことなくリターンし、また肯定判断された場合には、ブレーキがON状態か否かを判断する(ステップ6)。ここでブレーキは、フットブレーキとサイドブレーキとの少なくともいずれか一方であって、ブレーキ操作されていれば第1クラッチC1 と第2ブレーキB2 との係合処理を実行する(ステップ7)。具体的にはシフトレバーの操作によってマニュアルバルブ260が切り替わることにより第1クラッチC1 に油圧を供給すると共に、第1ソレノイドバルブS1 が信号圧を出力することにより 2−3シフトバルブを切り換え動作させて、第2ブレーキB2 にDレンジ圧を供給しこれを係合させる。
【0103】
ステップ7の制御の実行と同時にタイマーTをスタートさせ、そのカウント値を予め定めた時間T1 以上になるまでステップ7の制御を継続する(ステップ8)。そして予め定めた時間T1 が経過したことによりステップ8で肯定判断された場合、第1ブレーキB1 の係合切換制御を実行する(ステップ9)。具体的には第3ソレノイドバルブS3 をON制御してその信号圧の出力を止める。その結果、B2 リリースコントロールバルブ130の制御ポート131に油圧が作用しなくなるから、そのスプール132が図6の左半分に示す位置に押し下げられる。そしてDレンジ圧の入力ポート134が出力ポート133に連通するためにDレンジ圧が第1ブレーキB1 に供給されこれが係合する。
【0104】
この時点では第1クラッチC1 と第2ブレーキB2 に対して既に油圧が供給され始めてから所定時間T1 が経過しており、したがってヒルホールド状態を達成するための第1ブレーキB1 に油圧を供給しても、第1クラッチC1 や第2ブレーキB2 の係合圧の一時的な低下が生じることはない。すなわち、主変速部32にトルクを入力するための第1クラッチC1 の係合圧の制御が、外乱を受けることなく適正に行われ、したがってDレンジにマニュアルシフトすることに伴うショックを防止することができる。
【0105】
一方、ステップ6で否定判断された場合、すなわちブレーキ操作されていない場合には、ヒルホールド状態を保持する必要があるから、第1クラッチC1 および第2ブレーキB2 ならびに第1ブレーキB1 の3つの摩擦係合装置に対して油圧を供給し、これらを係合させる(ステップ10)。この場合、第3速を設定するための2つの摩擦係合装置(第1クラッチC1 、および第2ブレーキB2 )に加えてエンジンブレーキ状態とするための第1ブレーキB1 を係合させることになるため、第1クラッチC1 の圧力低下によるショックが生じる可能性があるが、ヒルホールドを優先するために、第1ブレーキB1 にも同時に油圧を供給する。したがって坂道発進の際の車両の後退を防止することができる。
【0106】
なお、上記の例ではブレーキ操作されているときに第1ブレーキB1 の係合の遅延制御を実行することとしたが、これに代えて油温が高いときには第1ブレーキB1 の係合の遅延制御を実行し、油温が低い場合には第1クラッチC1 および第2ブレーキB2 ならびに第1ブレーキB1 の3つの摩擦係合装置を同時に係合させるように制御してもよい。また図11に示す例では、所定時間T1 の経過後に第1ブレーキB1 の係合制御を実行するよう構成してあるが、これに代えて回転数センサーからの信号に基づいて第1クラッチC1 および第2ブレーキB2 の係合を判断し、その後に第1ブレーキB1 の係合処理を実行することとしてもよい。
【0107】
上述した図11に示す例では、第3ソレノイドバルブS3 をOFF状態からON状態に切り換えることにより、ヒルホールド用の第1ブレーキB1 を係合させるように構成してあるから、ヒルホールドモードでの第3速を設定してある状態でシフトポジションスイッチのフェイルなどにより一時的にNレンジ信号が出力された場合には、第3ソレノイドバルブS3 がOFF状態に切り替わることに伴って第1ブレーキB1 が一時的に解放させられる可能性がある。このような不都合を解消するよう構成した例を以下に説明する。
【0108】
図13はその目的のために採用される係合作動表の一部を示す図であり、Nレンジでのソレノイドパターンが、Dレンジでのヒルホールドギヤ段(第3速)でのパターンと同様に、第1ソレノイドバルブS1 がOFF、第2および第3のソレノイドバルブS2 ,S3 がONに設定されている。また手動変速モード(スポーツモード)や“3”レンジなどのエンジンブレーキを効かせる状態での第3速を設定するソレノイドパターンが、ヒルホールドモードでの第3速と同様のソレノイドパターンとされている。
【0109】
係合作動表を図13に示すように構成しておくことにより、前述した図11に示すステップ3では、図13のNレンジのソレノイドパターンが採用され、またこれに続くステップ4では、図13のヒルホールドギヤ段(第3速)のソレノイドパターンが設定される。したがってヒルホールドモードでの第3速を設定している状態で、電気的なフェイルによって一時的にNレンジの誤判定が生じた場合、Nレンジのソレノイドパターンが出力されるが、これは図13に示すように、ヒルホールドモードでの第3速と同じであり、ソレノイドパターンが切り替わらない。すなわち第3ソレノイドバルブS3 がON状態に維持されるので、B2 リリースコントロールバルブ130がDレンジ圧をコートスブレーキコントロールバルブ150に出力し、さらにDレンジ圧がここから 2−3シフトバルブ230から 4−5シフトバルブ100を介して第1ブレーキB1 に供給され、この第1ブレーキB1 が係合状態に維持される。その結果、レンジ判定のフェイルに伴って第1ブレーキB1 が一時的に解放され、もしくはその係合圧が低下してショックが生じることが防止される。
【0110】
上述した例はヒルホールドモードでの第3速を設定する場合の例であるが、スポーツモード(手動変速モード)で第3速が選択された場合もほぼ同様に制御される。図14はその例を示しており、入力信号の処理(ステップ20)を行った後に、スポーツモードでの第3速が選択されているか否かの判断を行い(ステップ21)、肯定判断された場合には、スポーツモード対応のNレンジソレノイドパターンを設定する(ステップ22)。このソレノイドパターンは、図13に示すとおりであり、第1ソレノイドバルブS1 がOFF、第2および第3のソレノイドバルブS2 ,S3 がONである。
【0111】
またスポーツモード対応のDレンジソレノイドパターンを設定する(ステップ4−1)。これは、前述したとおり、ヒルホールドモードでの第3速およびNレンジと同様のソレノイドパターンである。そしてこれに続くステップ24において第3速を設定するために第1クラッチC 1および第1ブレーキB1 ならびに第2ブレーキB2 を係合させる制御を実行する。
【0112】
このようにして設定されるスポーツモードでの第3速のソレノイドパターンは、Nレンジと同じであるから、この第3速での走行中に例えば電気的なフェイルによって一時的にNレンジが誤判定されたとしても、上述したヒルホールドモードでの第3速の場合と同様に、第1ブレーキB1 が解放されたり、その係合圧が低下したりすることがないので、ショックが防止される。
【0113】
なお、この発明は上述した各実施例に限定されないのであって、図2に示すギヤトレイン以外のギヤトレインを備えた自動変速機や図4に示す油圧回路以外の油圧回路を備えた自動変速機を対象とした制御装置に適用することができる。また上記の実施例では、エンジンブレーキの効く所定の前進段としてヒルホールドモードでの第3速およびスポーツモードでの第3速を挙げたが、この発明は、エンジンブレーキレンジやスノーモードでの第3速以外の前進段で上記実施例と同様に制御することとしてもよい。そして上記の実施例では、特定の走行モードを設定するための摩擦係合装置への油圧の供給の遅延制御を、ヒルホールドモードで実行することとしたが、この発明におけるこの種の遅延制御は他の特定の走行モードにおいて実行することとしてもよい。
【0114】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1ないし請求項3に記載した発明の制御装置によれば、発進用変速段としてエンジンブレーキ用の摩擦係合装置を追加して係合させる変速段を設定する走行モードが選択可能であって、非駆動レンジからのシフトに伴ってそのエンジンブレーキ用摩擦係合装置に対する油圧の供給を遅延させるから、発進用変速段を設定するための摩擦係合装置の油圧の制御が適正に行われ、シフトショックを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施例を模式的に示すブロック図である。
【図2】この発明で対象とする自動変速機の歯車変速機構を主として示すスケルトン図である。
【図3】各走行レンジおよび変速段でのソレノイドバルブのON・OFF状態および各摩擦係合装置の係合・解放状態を示す図表である。
【図4】この発明の一実施例の主要な油圧回路部分を示す図である。
【図5】この発明にかかる主要油圧回路部分を取り出して概略的に示す部分油圧回路図である。
【図6】図4に示す油圧回路の一部を示す図である。
【図7】図4に示す油圧回路の他の部分を示す図である。
【図8】図4に示す油圧回路の更に他の部分を示す図である。
【図9】シフト装置における各レンジ位置の配列を示す図である。
【図10】Dレンジの通常の変速パターンとDレンジのホールドモードでの変速パターンとを示す線図である。
【図11】ヒルホールドモードが選択されている状態でのNレンジからDレンジへのシフトの際の第1ブレーキの係合の遅延制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図12】ヒルホールドモードギヤ段(第3速)を設定するための部分的な係合作動表を示す図表である。
【図13】Nレンジのソレノイドパターンをヒルホールドモードギヤ段およびエンジンブレーキの効く第3速のソレノイドパターンと同一にした部分的な係合作動表を示す図表である。
【図14】スポーツモードでの第3速が選択された場合に制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1 自動変速機
19 自動変速機用電子制御装置
31 副変速部
32 主変速部
100 3−4シフトバルブ
S1 ,S2 ,S3 ソレノイドバルブ
【発明の属する技術分野】
この発明は、車両用の自動変速機の制御装置に関し、特に所定の前進段でヒルホールドモードを設定しもしくはエンジンブレーキを効かせるなどのために摩擦係合装置を選択的に係合させることのできる自動変速機の制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
車両用の自動変速機において、燃費や静粛性を向上させるためにオーバードライブ装置が多用されていることは周知のとおりである。その一例が特開平5−157165号公報に記載されており、前進4段・後進1段を設定するための主変速装置の入力側に、一組の遊星歯車機構からなるオーバードライブ装置が設けられている。このオーバードライブ装置は、その遊星歯車機構のキャリヤとサンギヤとをクラッチによって連結することによりその全体が一体回転する低速段(直結段)を設定し、またサンギヤをブレーキによって固定することにより高速段に設定するように構成されている。そして上記の公報に記載された自動変速機では、最高速段である第5速を設定するためにオーバードライブ装置を高速段にする以外に、後進段を設定する際にもオーバードライブ装置を高速段とし、これにより後進段での変速比が大きくなることを防止している。
【0003】
結局、上記の公報に記載された自動変速機は、前進5段・後進1段の変速段を設定することができ、そのために第1ないし第3のソレノイドバルブを設けて変速を制御している。また通常の自動変速機と同様に第1速や第3速などの変速段でエンジンブレーキを必要とするから、上記の自動変速機では更に第4のソレノイドバルブを設けて、この第4ソレノイドバルブによって所定の切換弁に信号圧を送り、エンジンブレーキ状態を選択的に設定するようにしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来の自動変速機における油圧制御装置は、ドライブレンジやエンジンブレーキレンジで各変速段を設定するために、第1ないし第4の4つのソレノイドバルブを設けているが、油圧制御装置あるいは自動変速機の全体のコンパクト化のためには、ソレノイドバルブの数を削減することが望まれる。その場合、オーバードライブ装置の高速段は、第5速と後進段とで設定するだけであるのに対して、エンジンブレーキ状態は、第1速や第3速の変速段で設定するから、これらのいわゆる互いに干渉のない変速段で使用されるソレノイドバルブを兼用することが考えられる。具体的には、オーバードライブ装置を高速段に設定するためのソレノイドバルブを、エンジンブレーキレンジの第1速や第3速などの変速段でエンジンブレーキ状態を設定するように動作させることが考えられる。
【0005】
しかるにいわゆるオーバードライブ用のソレノイドバルブをエンジンブレーキ用のソレノイドバルブと兼用するとした場合、ドライブ(D)レンジの第1速ではエンジンブレーキを効かせないから、後進段設定時とDレンジの第1速とでは、そのソレノイドバルブの動作状態が互いに反対となる。すなわちこのソレノイドバルブは、オーバードライブ装置を高速段に切り換えるためのバルブであるから、フェイル時には高速段の変速段を設定するフェイルセーフの観点から、非通電(OFF)状態で信号圧を出力するように構成するのが通常である。したがって後進段設定時には、このソレノイドバルブをOFFにし、これに対してエンジンブレーキを効かせないDレンジの第1速では、このソレノイドバルブをONにして信号圧を出力しないように構成することになる。
【0006】
このように上記のソレノイドバルブをオーバードライブ設定用とエンジンブレーキ用とに単純に兼用するとすれば、後進段とDレンジとでソレノイドバルブへの通電パターンが反対となり、その結果、例えばDレンジの第1速が設定されているにも拘わらず、電気的なフェイルによって後進段(Rレンジ)の検出信号が出力された場合には、前記ソレノイドバルブがOFFとなって信号圧を出力してしまい、Dレンジの第1速でエンジンブレーキが効く状態になる。具体的には、第1速で係合する一方向クラッチと並列の多板ブレーキが係合してしまうので、変速が円滑に実行できなくなり、変速ショックが悪化する可能性がある。
【0007】
このような不都合を解決するために、第1速と後進段とにおける前記ソレノイドバルブの動作状態を同一とすることが考えられる。その場合、そのソレノイドバルブが出力する信号圧をエンジンブレーキを効かせる制御系統とオーバードライブ状態を制御する制御系統とに切り換えて出力するバルブと、エンジンブレーキを効かせる制御系統において信号圧が入力されることによってエンジンブレーキを効かない状態にするバルブとを設けることになる。このようにすれば、主変速装置での後進状態は、マニュアルバルブから出力されるRレンジ圧によって設定され、オーバードライブ装置の高速段は前記ソレノイドバルブによって設定されるから、第1速と後進段とのシフトソレノイドバルブの動作状態(通電状態)を同一にすることができる。
【0008】
上記のようにDレンジの第1速を設定するためのソレノイドバルブの通電状態と後進段を設定するためのソレノイドバルブの通電状態とを同一にすれば、例えば電気的なフェイルによってRレンジとDレンジとの相互の誤判定が生じて、Rレンジでオーバードライブ装置が低速段(直結状態)になったり、Dレンジの第1速でエンジンブレーキが効いたりする不都合を回避できる。
【0009】
ところで上記のRレンジやDレンジは、シフト装置におけるシフトレバーを操作することによって選択され、それに伴ってマニュアルバルブが切り替わって各レンジに応じた摩擦係合装置やバルブに油圧が供給される。例えばDレンジにシフトすれば、マニュアルバルブからDレンジ圧が出力され、前進段を設定するための入力クラッチが係合させられ、また所定のシフトバルブにDレンジ圧が供給されて、そのシフトバルブをDレンジでの動作状態とする。また発進時であれば、これと併せて、シフトソレノイドバルブからシフトバルブに信号圧が送られ、第1速を設定するための摩擦係合装置が係合させられる。
【0010】
さらにRレンジにシフトした場合には、マニュアルバルブから主変速装置を後進状態にするための摩擦係合装置に油圧が供給されてこれらが係合し、また所定のシフトソレノイドバルブからの信号圧によって副変速装置を高速段にするブレーキに油圧が送られ、これが係合する。
【0011】
これに対して、ヒルホールドモードなどの特別な走行モードが選択されている場合には、走行のためのレンジへのシフトに伴って油圧の供給箇所が増加することがある。これをヒルホールドモードが選択されている場合について説明すると、ヒルホールドモードは、Dレンジでの走行にあたって、いわゆる坂道発進の際に車両の後退を防ぐモードであって、発進用の変速段として例えばエンジンブレーキの効く第3速が設定される。したがってヒルホールドモードを選択している状態で、非駆動レンジであるニュートラル(N)レンジからDレンジにマニュアルシフトすると、前進段を設定するための入力クラッチと第3速を設定するための摩擦係合装置(ブレーキ)とに加えて、エンジンブレーキを効かせるためのブレーキにも油圧を供給してこれらを係合させることになる。すなわちヒルホールドモードを選択することに伴い、油圧を供給するべき摩擦係合装置の数が、通常時よりも1つ多くなる。
【0012】
通常、前記入力クラッチは発進時に解放状態から係合状態に切り換えられるから、大きいトルク容量を必要とし、そのために容量の大きいアキュームレータによって調圧しつつ係合させているが、上記のように、ヒルホールドモードの選択によって油圧の供給箇所が増えると、入力クラッチに対して供給する油圧の一時的な低下や油圧の変動が生じ、その結果、変速ショックが悪化する可能性がある。
【0013】
また一方、シフトソレノイドバルブのON/OFFの状態(通電パターン)に応じて各変速段を設定する上述した自動変速機においては、NレンジでのシフトソレノイドバルブのON/OFFの状態を、その時点の車速やスロットル開度などの走行状態で決まる変速段を設定するON/OFF状態としている。したがってNレンジで停止し、もしくは停止に近い状態にあれば、シフトソレノイドバルブのON/OFFの状態は第1速を設定するパターンになっており、これは、上述した自動変速機ではRレンジと同じである。
【0014】
これに対して前述したヒルホールドモードはエンジンブレーキの効く第3速を発進時の変速段とするから、そのシフトソレノイドバルブのON/OFFの状態は、Nレンジでの状態とは異なるのが通常である。そのためヒルホールドモードを選択してエンジンブレーキの効く第3速を設定している場合に、レンジ検出の一時的なフェイルが生じてNレンジが誤判定されると、すなわちNレンジ信号が一時的に生じると、シフトソレノイドバルブのON/OFFの状態は、Nレンジの状態になる。
【0015】
その場合、副変速部を制御するソレノイドバルブが、エンジンブレーキを制御するソレノイドバルブとして兼用されていれば、Nレンジの誤判定によって第3速は維持されるものの、ヒルホールドモードを設定するためのブレーキが解放させられる。そしてフェイルが一時的であることにより、再度、Dレンジが判定されると、ヒルホールドモードのためのブレーキが再度係合する。このようにレンジ判定の一時的なフェイルによってブレーキの解放と係合とが連続して生じ、その結果、ショックが悪化する可能性がある。
【0016】
この発明は、上記の事情を背景としてなされたものであり、エンジンブレーキを効かせるように作用する摩擦係合装置を係合させる走行モードを選択可能な自動変速機において走行レンジへのマニュアルシフトに伴うショックを防止することのできる制御装置を提供することを目的とするものである。
【0017】
そしてこの発明においては、上記の目的は、ヒルホールドモードなどの特定の走行モードが選択可能な自動変速機において、非駆動レンジから駆動レンジへのマニュアルシフトの際にその走行モードを達成するための摩擦係合装置への油圧の供給を遅延させることにより達成される。
【0018】
【課題を解決するための手段およびその作用】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載した発明は、所定の変速段でエンジンブレーキ用の摩擦係合装置を選択的に係合させることができ、かつその変速段を発進用変速段とする走行モードを選択することのできる自動変速機の制御装置において、非駆動レンジから走行レンジに切り換えて前記所定の変速段を設定するための摩擦係合装置を係合させるとともに前記エンジンブレーキ用の摩擦係合装置を係合させる場合に、前記変速段を設定するための摩擦係合装置への油圧の供給に対して、前記エンジンブレーキ用摩擦係合装置に対する油圧の供給を遅延させるよう構成されていることを特徴とするものである。
【0019】
したがって請求項1に記載した発明では、特定の走行モードで発進する場合に、その走行モードを達成するための摩擦係合装置に対する油圧の供給が、変速段の達成のための摩擦係合装置に対する油圧の供給に対して遅延されるために、その変速段の達成のための油圧の低下や変動などが抑制もしくは防止され、その結果、ショックが良好になる。
【0020】
また請求項2に記載した発明は、所定の前進段で車両を後退させないように摩擦係合装置を係合させるヒルホールドモードを設定することのできる自動変速機の制御装置において、非駆動レンジからヒルホールドモードでの前記所定の前進段を設定する走行レンジにレンジを切り換えて前記所定の前進段を設定するための摩擦係合装置を係合させるとともに前記摩擦係合装置を係合させてヒルホールドモードを設定する場合に、その前進段を設定するための摩擦係合装置への油圧の供給に対して、前記ヒルホールドモードで係合させられる前記摩擦係合装置への油圧の供給を遅延させるように構成されていることを特徴とするものである。
【0021】
したがってこの請求項2の発明では、前進段を設定するための摩擦係合装置とヒルホールドモードを設定するための摩擦係合装置との両方に油圧が同時に供給されないので、前進段を設定するための摩擦係合装置の係合圧の低下や変動が生じることなくその油圧が適正に制御され、変速ショックの悪化が防止される。
【0022】
また請求項3に記載した発明は、後進状態と複数の前進状態とを設定する主変速部と高低二段に切り換えることのできる副変速部とを備え、所定の制御弁が出力する信号圧を、前記副変速部を制御する信号圧と、所定の前進段で車両の後退を阻止するべく係合させられるヒルホールド用摩擦係合装置を係合させる信号圧とに切換弁で切り換えて使用し、かつ所定の前進レンジで前記ヒルホールド用摩擦係合装置を係合させる走行モードを選択することのできる自動変速機の制御装置において、前記走行モードが選択されている状態で、非駆動レンジから前記前進レンジに切り換えられた場合に、前記所定の前進段を設定するための摩擦係合装置への油圧の供給に対して、前記ヒルホールド用摩擦係合装置への油圧の供給を遅延させるように前記切換弁を切り換える手段を備えていることを特徴とするものである。
【0023】
したがってこの請求項3の発明では、ヒルホールドモードが選択されている場合には、副変速部を高速段に制御する制御弁がそのヒルホールドモードで係合させられる摩擦係合装置を制御する制御弁として作用するが、非駆動レンジから走行レンジにマニュアルシフトした場合、先ず、前進段を設定する摩擦係合装置に油圧が送られ、その後に前記制御弁で制御される摩擦係合装置に油圧が送られるから、マニュアルシフト時に前進段を設定するための油圧の一時的な低下や変動およびそれに伴う変速ショックの悪化が防止される。
【0030】
【発明の実施の形態】
つぎにこの発明を図面を参照してより具体的に説明する。図1はこの発明の一例を模式的に示しており、自動変速機1を連結してあるエンジン2は、その吸気管路3にメインスロットルバルブ4とその上流側に位置するサブスロットルバルブ5とを有している。そのメインスロットルバルブ4はアクセルペダル6に連結されていて、アクセルペダル6の踏み込み量に応じて開閉される。またサブスロットルバルブ5は、モータ7によって開閉されるようになっている。
【0031】
このサブスロットルバルブ5の開度を調整するためにモータ7を制御し、またエンジン2の燃料噴射量および点火時期などを制御するためのエンジン用電子制御装置(E−ECU)8が設けられている。この電子制御装置8は、中央演算処理装置(CPU)および記憶装置(RAM、ROM)ならびに入出力インターフェースを主体とするものであって、この電子制御装置8には、制御のためのデータとして、エンジン(E/G)回転数N、吸入空気量Q、吸入空気温度、スロットル開度、車速、エンジン水温、ブレーキスイッチからの信号などの各種の信号が入力されている。
【0032】
自動変速機1における変速およびロックアップクラッチならびにライン圧は、油圧制御装置9によって制御される。その油圧制御装置9は、電気的に制御されるように構成されており、また変速を実行するための第1ないし第3のシフトソレノイドバルブS1 ,〜S3 、ライン圧を制御するためのリニアソレノイドバルブSLT、アキュームレータ背圧を制御するためのリニアソレノイドバルブSLN、ロックアップクラッチを制御するためのリニアソレノイドバルブSLUが設けられている。
【0033】
これらのソレノイドバルブに信号を出力して変速やライン圧あるいはアキュームレータ背圧などを制御する自動変速機用電子制御装置(T−ECU)10が設けられている。この自動変速機用電子制御装置10は、中央演算処理装置(CPU)および記憶装置(RAM、ROM)ならびに入出力インターフェースを主体とするものであって、この電子制御装置10には、制御のためのデータとしてスロットル開度、車速、エンジン水温、ブレーキスイッチからの信号、シフト装置における後述するスイッチ群によるシフトポジション信号、パターンセレクトスイッチからの信号、オーバードライブスイッチからの信号、後述するクラッチC0 の回転速度を検出するセンサからの信号、車速センサからの信号、自動変速機の油温、マニュアルシフトスイッチからの信号、ホールドモードスイッチからの信号、あるいはスポーツモードスイッチからの信号などが入力されている。
【0034】
またこの自動変速機用電子制御装置10とエンジン用電子制御装置8とは、相互にデータ通信可能に接続されており、エンジン用電子制御装置8から自動変速機用電子制御装置10に対しては、1回転当たりの吸入空気量(Q/N)などの信号が送信され、また自動変速機用電子制御装置10からエンジン用電子制御装置8に対しては、各ソレノイドバルブに対する指示信号と同等の信号および変速段を指示する信号などが送信されている。
【0035】
すなわち自動変速機用電子制御装置10は、入力されたデータや予め記憶させてある変速マップに基づいて変速段やロックアップクラッチのON/OFFを判断し、あるいはライン圧の調圧レベルなどを判断し、その判断結果に基づいて所定のソレノイドバルブに指示信号を出力し、さらにフェイルの判断やそれに基づく制御を行うようになっている。またホールドモードスイッチがON操作されている場合には、所定の前進段(例えば第3速)を設定し、かつその変速段でエンジンブレーキを効かせる摩擦係合装置を係合させる変速信号を出力するようになっている。またスポーツモードスイッチがON操作されている場合には、変速段を手動操作によって選択し、かつ全ての変速段でエンジンブレーキが効くようになっている。
【0036】
これに対してエンジン用電子制御装置8は、入力されたデータに基づいて燃料噴射量や点火時期あるいはサブスロットルバルブ5の開度などを制御することに加え、自動変速機1での変速時に燃料噴射量を削減し、あるいは点火時期を変え、もしくはサブスロットルバルブ5の開度を絞ることにより、出力トルクを一時的に低下させるようになっている。
【0037】
図2は上記の自動変速機1の歯車列の一例を示す図であり、ここに示す構成では、前進5段・後進1段の変速段を設定するように構成されている。すなわちここに示す自動変速機1は、トルクコンバータ30と、副変速部31と、主変速部32とを備えている。そのトルクコンバータ30は、ロックアップクラッチ33を有しており、このロックアップクラッチ33は、ポンプインペラ34に一体化させてあるフロントカバー35とタービンランナ36を一体に取付けた部材(ハブ)37との間に設けられている。エンジンのクランクシャフト(それぞれ図示せず)はフロントカバー35に連結され、またタービンランナ36を連結してある入力軸38は、副変速部31を構成するオーバードライブ用遊星歯車機構39のキャリヤ40に連結されている。
【0038】
この遊星歯車機構39におけるキャリヤ40とサンギヤ41との間には、多板クラッチC0 と一方向クラッチF0 とが設けられている。なお、この一方向クラッチF0 はサンギヤ41がキャリヤ40に対して相対的に正回転(入力軸38の回転方向の回転)する場合に係合するようになっている。またサンギヤ41の回転を選択的に止める多板ブレーキB0 が設けられている。そしてこの副変速部31の出力要素であるリングギヤ42が、主変速部32の入力要素である中間軸43に接続されている。
【0039】
したがって副変速部31は、多板クラッチC0 もしくは一方向クラッチF0 が係合した状態では遊星歯車機構39の全体が一体となって回転するため、中間軸43が入力軸38と同速度で回転し、低速段となる。またブレーキB0 を係合させてサンギヤ41の回転を止めた状態では、リングギヤ42が入力軸38に対して増速されて正回転し、高速段となる。
【0040】
他方、主変速部32は三組の遊星歯車機構50,60,70を備えており、それらの回転要素が以下のように連結されている。すなわち第1遊星歯車機構50のサンギヤ51と第2遊星歯車機構60のサンギヤ61とが互いに一体的に連結され、また第1遊星歯車機構50のリングギヤ53と第2遊星歯車機構60のキャリヤ62と第3遊星歯車機構70のキャリヤ72との三者が連結され、かつそのキャリヤ72に出力軸80が連結されている。さらに第2遊星歯車機構60のリングギヤ63が第3遊星歯車機構70のサンギヤ71に連結されている。
【0041】
この主変速部32の歯車列では、後進段と前進側の四つの変速段とを設定することができ、そのためのクラッチおよびブレーキが以下のように設けられている。先ずクラッチについて述べると、互いに連結されている第2遊星歯車機構60のリングギヤ63および第3遊星歯車機構70のサンギヤ71と中間軸43との間に第1クラッチC1 が設けられ、また互いに連結された第1遊星歯車機構50のサンギヤ51および第2遊星歯車機構60のサンギヤ61と中間軸43との間に第2クラッチC2 が設けられている。
【0042】
つぎにブレーキについて述べると、第1ブレーキB1 はバンドブレーキであって、第1遊星歯車機構50および第2遊星歯車機構60のサンギヤ51,61の回転を止めるように配置されている。またこれらのサンギヤ51,61(すなわち共通サンギヤ軸)とケーシング81との間には、第1一方向クラッチF1 と多板ブレーキである第2ブレーキB2 とが直列に配列されており、その第1一方向クラッチF1 はサンギヤ51,61が逆回転(入力軸38の回転方向とは反対方向の回転)しようとする際に係合するようになっている。多板ブレーキである第3ブレーキB3 は第1遊星歯車機構50のキャリヤ52とケーシング81との間に設けられている。そして第3遊星歯車機構70のリングギヤ73の回転を止めるブレーキとして多板ブレーキである第4ブレーキB4 と第2一方向クラッチF2 とがケーシング81との間に並列に配置されている。なお、この第2一方向クラッチF2 はリングギヤ73が逆回転しようとする際に係合するようになっている。
【0043】
上述した各変速部31,32の回転部材のうち副変速部31のクラッチC0 の回転数を検出するC0 センサ82と、出力軸80の回転数を検出する車速センサ83とが設けられている。
【0044】
上記の自動変速機1では、各クラッチやブレーキを図3の作動表に示すように係合・解放することにより前進5段・後進1段の変速段を設定することができる。なお、図3において○印はON状態あるいは係合状態、×印はOFF状態あるいは解放状態、◎印はロックアップクラッチのON制御状態、●印は変速中にデューティ制御することをそれぞれ示す。
【0045】
図3の作動表に示すように、副変速部31をオーバードライブ状態と直結状態とに切り換える制御と第1速および第3速でエンジンブレーキを効かせる制御とを第3ソレノイドバルブS3 で行うようになっており、そのために図4に示す油圧回路が設けられている。図4はこの発明に関係する主要部分のみを示しており、そのうちの更に特徴的な部分を模式的に示せば、図5のとおりである。
【0046】
第3ソレノイドバルブS3 は、ライン圧PL を元圧とし、OFF状態で信号圧を出力するノーマルオープンタイプのバルブであって、主として副変速部31を切換え制御するために設けられており、図4および図5に示す構成では、これを第1速と第3速とのエンジンブレーキを制御するために転用するようになっている。より具体的には、第3ソレノイドバルブS3 は、副変速部31をオーバードライブ状態に設定する第5速と後進段とでOFF制御されて信号圧(パイロット圧)を出力することに加え、ドライブ(D)レンジの第1速ないし第3速でOFF制御されて信号圧を出力するが、このDレンジの第1速および第3速では、第3ソレノイドバルブS3 の信号圧をB2 リリースコントロールバルブによっていわゆる反転制御し、これら第1速あるいは第3速でエンジンブレーキを効かせるためのブレーキB1 ,B4 への油圧の供給を遮断するようになっている。
【0047】
すなわち図5において、 3−4シフトバルブ100は、各レンジおよび変速段のそれぞれで図の下側に記号で示すように各ポートが連通させられるスプールバルブであり、第3ソレノイドバルブS3 はポート101に接続されている。このポート101は、ニュートラル(N)レンジおよび第1〜3速でポート102に連通させられ、このポート102からB2 リリースコントロールバルブ130の制御ポート131に信号圧を送るようになっている。またポート101は第4,5速およびRレンジでポート103に連通させられ、ここから後述する 4−5シフトバルブ170の制御ポート171に信号圧を送るようになっている。すなわち 3−4シフトバルブ100が第3ソレノイドバルブS3 の信号圧を、エンジンブレーキ制御系統とオーバードライブ制御系統とに切り換えて出力するようになっている。
【0048】
B2 リリースコントロールバルブ130は、4つのランドのあるスプール132を有しており、制御ポート131に信号圧が供給されることによりスプール132が図5の左半分に示す位置に下がり、また反対に制御ポート131から排圧されることによりスプール132が図5の右半分に示す位置に押し上げられるようになっている。このB2 リリースコントロールバルブ130のポートのうちエンジンブレーキ圧出力ポート133を挟んでDレンジ圧入力ポート134とエンジンブレーキレンジ圧入力ポート135とが形成されている。そして第3ソレノイドバルブS3 の信号圧が制御ポート131に印加されてスプール132が図5の左半分に示す位置にあるときに、エンジンブレーキレンジ圧入力ポート135がエンジンブレーキ圧出力ポート133に連通する。
【0049】
また第3ソレノイドバルブS3 の信号圧が制御ポート131に印加されていないことによりスプール132が図5の右半分に示す位置にあるときに、Dレンジ圧入力ポート134がエンジンブレーキ圧出力ポート133に連通する。なお、第3ソレノイドバルブS3 はDレンジの第1速ないし第3速でOFF制御されて信号圧を出力するので、この場合は、前記Dレンジ圧入力ポート134が閉じられ、またDレンジであればエンジンブレーキレンジ圧が発生していないから、エンジンブレーキ圧出力ポート133から油圧が出力されない。
【0050】
上記のエンジンブレーキ圧出力ポート133はコーストブレーキコントロールバルブ150の入力ポート151に接続されている。このコーストブレーキコントロールバルブ150は、入力された油圧を調圧して出力するバルブであり、2つのランドを形成したスプール152と、その一端側に配置したプランジャ153と、スプール152とプランジャ153との間に配置したスプリング154とを有している。そして入力ポート151側のランドにはその両端面に開口する貫通孔が形成され、出力圧をスプール152の端面に作用させるようになっている。またプランジャ153の端部にはアキュームレータ背圧コントロール圧PACC が供給され、これにより調圧レベルを変えるようになっている。そして入力ポート151に選択的に連通させられる出力ポート155から第1速あるいは第3速でのエンジンブレーキ用摩擦係合装置である第1ブレーキB1 もしくは第4ブレーキB4 に対して油圧を出力するようになっている。
【0051】
すなわちDレンジ圧の発生するDレンジでの第1速および第3速では、第3ソレノイドバルブS3 がOFF制御されて信号圧を出力していても、Dレンジ圧がB2 リリースコントロールバルブ130で遮断されるから、第1ブレーキB1 あるいは第4ブレーキB4 に油圧が送られず、これらが解放状態となるので、エジンブレーキは効かない。すなわち第3ソレノイドバルブS3 の信号圧がいわゆる反転制御される。
【0052】
これに対して第1速でエンジンブレーキを効かせるLレンジでは、第3ソレノイドバルブS3 がON制御されて信号圧を出力しないから、B2 リリースコントロールバルブ130のスプール132は図5の右半分に示す位置に押し上げられ、その結果、Dレンジ圧入力ポート134と出力ポート133とが連通してDレンジ圧が第4ブレーキB4 に送られ、これが係合する。なお、Dレンジ圧は全ての前進レンジで発生する。また第3速でエンジンブレーキを効かせる“3”レンジあるいは“2”レンジにおいても、第3ソレノイドバルブS3 がON制御されるから、上述したLレンジでの第1速の場合と同様に、コーストブレーキコントロールバルブ150を介して第1ブレーキB1 に油圧が送られてこれが係合し、エンジンブレーキを効かせることができる。
【0053】
またDレンジにおいて第3ソレイドバルブS3 がOFFフェイルした場合には、B2 リリースコントロールバルブ130のDレンジ圧入力ポート134が閉じられるからエンジンブレーキが効くことはなく、したがって変速ショックを防止することができる。
【0054】
さらにB2 リリースコントロールバルブ130のスプール132が図5の右半分に示す位置に固定されてしまういわゆるバルブスティックが生じた場合、エンジンブレーキ圧入力ポート135と出力ポート133とが常時連通するので、エンジンブレーキレンジである“3”レンジあるいは“2”レンジにおいて出力ポート133から油圧を出力でき、第3速において第1ブレーキB1 を係合させてエンジンブレーキを効かせることができる。
【0055】
なお、エンジンブレーキ圧入力ポート135に連通する油路にオリフィス136を設けてあるのは、第1ブレーキB1 と第2ブレーキB2 との干渉を避けるためであり、第1ブレーキB1 を第3速で係合させる場合、第2ブレーキB2 の係合を先行させるべくオリフィス136により油圧の供給速度を遅くする。
【0056】
つぎに図4に示す油圧回路について更に具体的に説明する。なお、作図の都合上、図4を複数の部分に分割して示す図6ないし図8を参照して以下に説明する。
【0057】
先ず、B2 リリースコントロールバルブ130について更に説明すると、図6にはB2 リリースコントロールバルブ130を図5とは上下を反転して記載してあり、前述した各ポートの接続状態に加え、B2 ポート137には第2ブレーキB2 が接続されており、このB2 ポート137に選択的に連通されるポート138にはチェックボール付きオリフィス139を介して油路140が接続されている。また第2ブレーキB2 はオリフィス141を介してこの油路140に連通されている。したがってB2 ポート137をポート138に連通させることにより、第2ブレーキB2 はオリフィス141のみならずチェックボール付きオリフィス139をも介して油路140に連通されるので、その排圧速度が増大させられる。このようにB2 リリースコントロールバルブ130は、その制御ポート131に第3ソレノイドバルブS3 の信号圧を供給し、あるいは排圧することにより、第2ブレーキB2 からの排圧速度すなわち第2ブレーキB2 の解放速度を緩急に切り換えるように構成されている。
【0058】
他方、エンジンブレーキレンジ圧入力ポート135に接続された油路142は、前述したオリフィス(ダブルオリィス)136を有するとともに、排圧方向で開くチェックボール付きオリフィス143がダブルオリフィス136に対して並列に設けられている。そしてこの油路142が後述する 1−2シフトバルブに接続されている。
【0059】
つぎに 3−4シフトバルブ100について説明すると、前述したポート101,102,103の連通状態を切り換えるスプール104は6つのランドを有しており、中間部分に形成されたブレーキポート105には第1ブレーキB1 が接続されている。またこのブレーキポート105に隣接する入力ポート106は、後述する 2−3シフトバルブを介してコーストブレーキコントロールバルブ150に連通されている。そして前述したポート103は油路107を介して 4−5シフトバルブ170の制御ポート171に連通されている。
【0060】
またこの 3−4シフトバルブ100は、第2ソレノイドバルブS2 が出力する信号圧と、後述するDレンジ圧とによって動作するよう構成されている。すなわちスプリング室に開口するホールドポート108にDレンジ圧が供給され、このホールドポート108とはスプール104を挟んで反対側の制御ポート109に第2ソレノイドバルブS2 が接続されている。なお、この第2ソレノイドバルブS2 は、ライン圧PL を元圧とし、OFF状態で信号圧を出力し、かつON状態で信号圧の出力を遮断するノーマルクローズタイプのソレノイドバルブである。
【0061】
一方、 4−5シフトバルブ170は、前記副変速部31をオーバードライブ状態(高速段)あるいは直結状態(低速段)に制御するためのバルブであって、5つのランドを有するスプール176によってポートの連通状態を切り換えるよう構成されている。これらのポートのうちライン圧油路PL を接続してある入力ポート172に対して選択的に連通されるブレーキポート173に、副変速部31におけるブレーキB0 が接続されている。また入力ポート172に対し前記ブレーキポート173とは反対側に位置する出力ポート174は、油路175を介してC0 エキゾーストバルブ190に接続されている。
【0062】
したがって油路107を介して第3ソレノイドバルブS3 の信号圧が制御ポート171に加えられると、スプール176が図6の右半分に示す位置に押し下げられ、その結果、入力ポート172がブレーキポート173に連通してブレーキB0 に油圧が供給される。これとは反対に制御ポート171から排圧されると、スプール176は図6の左半分に示す位置に押し上げられ、その結果、入力ポート172が出力ポート174に連通され、C0 エキゾーストバルブ190に油圧が送られ、クラッチC0 が係合する。なお、図6において符号210はソレノイドリレーバルブを示し、ロックアップ用リニアソレノイドバルブSLUからの信号圧の給排を制御し、また第3ブレーキB3 への油圧の給排を制御するように構成されている。なお、その他の油路の接続状態は図に示すとおりである。
【0063】
図7において、コーストブレーキコントロールバルブ150の入力ポート151には、前述したB2 リリースコントロールバルブ130のポート133に接続させた油路156が接続されており、また出力ポート155には調圧したブレーキ圧を第1ブレーキB1 あるいは第4ブレーキB4 に対して出力するための油路157が接続されている。また、これらの油路156,157はチェックボール付きオリフィス158を介して相互に接続されており、第1ブレーキB1 あるいは第4ブレーキB4 から排圧するときは、このチェックボール付きオリフィス158が開くようになっている。
【0064】
ブレーキ圧の供給先を第1ブレーキB1 あるいは第4ブレーキB4 に切り換える制御および 3−4シフトバルブ100のホールドポート108へのDレンジ圧の供給の制御は、 2−3シフトバルブ230によって行われる。 2−3シフトバルブ230は、7つのランドを有するスプール231によってポートの連通状態の切り換えを行うバルブであって、スプール231の一端側にスプリング232が設けられるとともに、この端部に開口するホールドポート233には、Lレンジ圧が供給されるようになっている。
【0065】
ブレーキ圧を供給する前記油路157が、中間部のポート234に連通されており、このポート234に対し図7での上側の出力ポート235が前述した 3−4シフトバルブ100の入力ポート106に接続されている。またポート234に対して図7での下側に位置する第2の出力ポート236は、油路237を介して 1−2シフトバルブ250に接続されている。さらにホールドポート233とはスプール231を挟んで反対側に位置する制御ポート239には、第1ソレノイドバルブS1 が接続されている。
【0066】
この第1ソレノイドバルブS1 は、OFF状態でドレインポートを閉じ、ON状態でドレインポートを開くノーマルオープンタイプのソレノイドバルブであって、ストレーナ320およびオリフィス321を介して供給されるDレンジ圧をOFF状態で制御ポート239に印加し、ON状態で排圧するようになっている。したがってLレンジ圧がホールドポート233に作用していない状態では、この 2−3シフトバルブ230は、第1ソレノイドバルブS1 によって制御される。そしてこの 2−3シフトバルブ230は、第1速、第2速、NレンジおよびRレンジでスプール231が図7の左半分に示す位置に押し上げられ、また第3速ないし第5速でスプール231が図7の右半分に示す位置に押し下げられるよう構成されている。
【0067】
したがって第1速でエンジンブレーキを効かせる場合には、ポート234が第2の出力ポート236に連通させられて、ここからブレーキ圧を出力し、また第3速でエンジンブレーキを効かせる場合にはポート234が出力ポート235に連通させられてここからブレーキ圧を 3−4シフトバルブ100を介して第1ブレーキB1 に供給するように構成されている。なお、第2ブレーキB2 はポート238に接続されている。
【0068】
さらに 2−3シフトバルブ230は、Dレンジ圧の供給されるDレンジ圧入力ポート301を備えており、ここに油路302が接続されている。またこのポート301を挟んで図の上下両側に第1Dレンジ圧出力ポート303と第2Dレンジ圧出力ポート304とが形成されている。そしてDレンジ圧入力ポート301は、第3速ないし第5速で図7の上側の第1Dレンジ圧出力ポート303に連通し、それ以外の変速段およびNレンジならびにRレンジで図7の下側の第2Dレンジ圧出力ポート304に連通するようになっている。またこの第2Dレンジ圧出力ポート304が油路305を介して前記 3−4シフトバルブ100のホールドポート108に接続されている。このDレンジ圧は後述するようにDレンジを含む前進レンジで油路302に発生する油圧であり、したがって第1速および第2速のときに 3−4シフトバルブ100のホールドポート108にDレンジ圧が 2−3シフトバルブ230を介して供給される。
【0069】
第1速でエンジンブレーキを効かせる際に係合させられる第4ブレーキB4 は、シャトルバルブ240を介して 1−2シフトバルブ250に接続されている。この 1−2シフトバルブ250は4つのランドを有するスプール251によってポートの連通状態を切り換えるバルブであって、前記 2−3シフトバルブ230の第2出力ポート236が入力ポート252に接続されており、この入力ポート252とドレインポート253とに選択的に連通される出力ポート254にシャトルバルブ240が接続されている。
【0070】
またエンジンブレーキレンジ圧を前記B2 リリースコントロールバルブ130に供給する油路142が他の出力ポート255に接続されており、この出力ポート255に選択的に連通されるエンジンブレーキポート256には、“3”レンジ圧を供給する油路257と“2”レンジ圧を供給する油路258とが接続されている。さらにスプール251をその軸線方向に押圧するスプリングを配置してある箇所に開口したホールドポート259が形成されており、このホールドポート259が前記 2−3シフトバルブ230の第1Dレンジ圧出力ポート303に接続されている。またこのホールドポート259と反対側の制御ポートには第2ソレノイドバルブS2 が接続されている。
【0071】
したがってこの 1−2シフトバルブ250のスプール251は第1速、NレンジおよびRレンジにおいて図7の右半分に示す位置に押し下げられる。この状態では、入力ポート252が出力ポート254に連通する。また第2速ないし第5速ではスプール251が図7の左半分に示す位置に押し上げられ、その結果、エンジンブレーキポート256が他の出力ポート255に連通する。なお、他の油路の接続状態は図7に示すとおりである。
【0072】
さらにマニュアルバルブ260について説明すると、このマニュアルバルブ260は、手動操作されてパーキング(P)レンジ、Rレンジ、Nレンジ、Dレンジ、“3”レンジ、“2”レンジおよびLレンジの7ポジションを設定することのできるバルブであり、ライン圧油路PL が接続された入力ポート265をPレンジ以外の各レンジに対応させて設けたポートに連通させるようになっている。すなわちNレンジを設定した場合には、図7に示すように入力ポート265に対して他のポートが遮断される。またDレンジを設定した場合には、Dレンジ圧をDポート261から出力し、また“3”レンジを設定した場合には、Dポート261および“3”ポート262とから油圧を出力し、この“3”ポートから出力される油圧がいわゆる“3”レンジ圧である。また“2”レンジを設定した場合に、Dポート261および“3”ポート262ならびに“2”ポート263とから油圧を出力するようになっている。この“2”ポート263から出力される油圧が“2”レンジ圧である。
【0073】
なお、Dポート261は第1クラッチC1 に連通され、“3”ポート262には、前述した油路257が接続され、また“2”ポート263には、前記油路258が接続されている。そしてLレンジに設定した場合には、Dポート261、“3”ポート262、“2”ポート263およびLポート264から油圧を出力し、このLポート264から出力した油圧が前記 2−3シフトバルブ230のホールドポート233に供給される。
【0074】
そしてRレンジに設定した場合には、入力ポート265がRポート267に連通し、ここからRレンジ圧が出力される。このRポート267には、特には図示しないが、リバースコントロールバルブを介してシャトルバルブ240および第4ブレーキB4 と、図示しない他のシャトルバルブおよび第2クラッチC2 とが接続されている。したがってマニュアルバルブ260によってRレンジを設定すれば、電気的な制御を行うことなく、これら第2クラッチC2 と第4ブレーキB4 とが係合して主変速部32が後進状態になる。なお、Pレンジを設定した場合には、入力ポート265が閉じられる。
【0075】
また図7で符号270はB3 コントロールバルブであって、ソレノイドリレーバルブ210を介して供給されるリニアソレノイドバルブSLUの信号圧を制御ポート271に供給することにより調圧レベルを変え、第2速を設定する際に係合させる第3ブレーキB3 への供給油圧を制御するように構成されている。このB3 コントロールバルブ270の構成は従来から知られているので、図7に主な油路の接続状態を示してその説明を省略する。
【0076】
なお、前記C0 エキゾーストバルブ190は副変速部31のクラッチC0 を制御するためのバルブであって、図8に示すように、Dレンジの第2速では第1制御ポート191に油圧が供給されることにより、第1速ないし第4速およびNレンジでライン圧PL が供給される第1入力ポート192を閉じるようになっている。またこの時、“2”レンジ圧が入力される第2入力ポート193が出力ポート194に連通されるようになっている。したがってDレンジの第2速では、油圧を出力しないためにクラッチC0 が解放され、また“2”レンジおよびLレンジでは、第2入力ポート193に“2”レンジ圧が供給されるので、クラッチC0 が係合してエンジンブレーキが効くようになっている。さらに第2制御ポート195には、リニアソレノイドバルブSLUの信号圧が供給されるようになっている。
【0077】
なお、図8において符号280はリニアソレノイドバルブSLTによって制御されるリレーバルブであり、また符号290はアキュームレータを示す。さらに符号295は、アキュームレータ背圧PACC を調圧するためのアキュームレータコントロールバルブを示す。
【0078】
さらにここで、各レンジを選択するためのシフト装置について説明する。この実施例においては、各レンジ位置を図9に示すように配列したシフトパターンのシフト装置が採用されている。その配列を簡単に説明すると、パーキング(P)レンジ位置に続けてリバース(R)レンジ位置が配置され、これらの配列方向に対して斜め方向の位置にRレンジに続けてニュートラル(N)レンジ位置が設けられている。ドライブ(D)レンジ位置は、このNレンジに対して、前記Pレンジ位置とRレンジ位置との配列方向と平行に配置され、さらに4速レンジ位置が、これらの配列方向に対して直交する方向に屈曲した位置に配置されている。さらに3速レンジ位置が、4速レンジ位置に対して、前記NレンジとDレンジとの配列方向と平行な方向に配置され、2速レンジ位置は、前記Rレンジ位置に対するNレンジ位置と同様な関係となる位置に設けられ、そしてロー(L)レンジ位置は、Dレンジ位置に対する4速レンジ位置と同様な関係となる位置に設けられている。
【0079】
これらの走行レンジのうち、Dレンジでは、図4に示す前進5段を達成することができ、これに対して4速レンジでは、オーバードライブ段である第5速のない前進4段を達成することができ、さらに3速レンジでは第3速までの変速段、2速レンジでは第2速までの変速段をそれぞれ達成することができ、そしてLレンジでは第1速のみを達成することができる。
【0080】
上記の各レンジ位置を検出し、またフェイルを判断するために、2つのスイッチ群が設けられている。その詳細は特開平5−306764号公報に記載されているとおりであり、これを簡単に説明すると、Pレンジ位置とRレンジ位置、あるいはNレンジ位置とDレンジ位置との配列方向と平行に6つのスイッチが配列されている。これらの配列方向は具体的には車両の前後方向であり、Pレンジ位置に対応する位置を最先端位置として車両の後方側に、Rレンジ位置、Nレンジ位置、Dレンジ位置、“3”レンジ位置、“2”レンジ位置にそれぞれ対応するように6つのスイッチが配列されている。これに対して他のスイッチ群として3つのスイッチが設けられている。具体的には、Pレンジ位置と4速レンジ位置とLレンジ位置とにスイッチが設けられている。
【0081】
これらのスイッチは前記自動変速機用電子制御装置10に接続され、6つのスイッチからなる第1のスイッチ群からの出力信号と、3つのスイッチからなる第2のスイッチ群からの出力信号との論理和によって、選択されているレンジ位置(シフトポジション)を判定し、またフェイルを判定するようになっている。
【0082】
なお、レンジの判定は、他の方法によって行うこともでき、例えば各レンジ位置を直線的に配列してある周知のシフト装置においては、Dレンジ位置以外の各レンジ位置にスイッチを設けておき、これらのレンジはそれぞれに対応したスイッチからの信号によって判定し、Dレンジについては、いずれのスイッチからも信号が出力されないことにより判定することとしてもよい。このような構成であれば、電気的なフェイルによっていずれのスイッチからも電子制御装置10に信号が入力されない場合には、Dレンジが設定されるので、走行を確保し、またフェイルセーフを確立できる。
【0083】
上記の制御装置によれば、後進段を設定するためのシフトソレノイドバルブS1 ,S2 ,S3 の通電パターンとDレンジの第1速を設定するためのシフトソレノイドバルブS1 ,S2 ,S3 の通電パターンとが同一である。先ずDレンジの第1速について説明すると、マニュアルバルブ260でDレンジを設定することにより、Dレンジ圧が発生する。図3の作動表から知られるように、第1クラッチC1 は前進レンジで常に係合するようになっており、具体的にはDレンジ圧が第1クラッチC1 に送られる。この状態で第1ソレノイドバルブS1 がON制御されて信号圧を出力せず、これに対して第2および第3のソレノイドバルブS2 ,S3 がOFF制御されてそれぞれ信号圧を出力する。
【0084】
したがって 2−3シフトバルブ230の制御ポート239に信号圧が印加されないので、そのスプール231が図7の左半分に示す位置に押し上げられる。すなわちDレンジ圧入力ポート301が第2Dレンジ圧出力ポート304に連通し、油路302から供給されたDレンジ圧がこれらのポート301,304ならびに油路305を介して 3−4シフトバルブ100のホールドポート108に供給される。
【0085】
Dレンジの第1速では、この 3−4シフトバルブ100の制御ポート109に第2ソレノイドバルブS2 の信号圧が入力されているが、そのスプール104に作用する軸線方向力は、第2ソレノイドバルブS2 の信号圧によるよりも、Dレンジ圧とスプリング力とによる力の方が大きいので、スプール104が図6の左半分に示す位置に押し上げられる。その結果、第3ソレノイドバルブS3 の信号圧が供給されているポート101がポート102に連通されてこの信号圧がB2 リリースコントロールバルブ130のホールドポート131に供給される。これに対して 4−5シフトバルブ170の制御ポート171に連通されているポート103がドレインに連通され、したがって 4−5シフトバルブ170の制御ポート171から排圧される。
【0086】
そのため 4−5シフトバルブ170のスプール176が図6の左半分に示す位置に押し上げられ、ブレーキポート173がドレインに連通されて、ここに連通されているブレーキB0 が解放される。これに対して入力ポート172が出力ポート174に連通するから、ライン圧PL がここからC0 エキゾーストバルブ190およびリレーバルブ280を介してクラッチC0 に供給され、このクラッチC0 が係合する。すなわち副変速部31が低速段(直結状態)になる。なお、第2クラッチC2 はブレーキレンジ圧を元圧とするから解放状態となる。また主変速部32におけるブレーキB1 〜B4 は解放状態となる。
【0087】
これらのブレーキのうち第1速でエンジンブレーキ状態を設定するための第4ブレーキB4 について説明すると、Dレンジの第1速では第3ソレノイドバルブS3 がOFF制御されてその信号圧が 3−4シフトバルブ100を介してB2 リリースコントロールバルブ130の制御ポート131に入力される。その結果、B2 リリースコントロールバルブ130のスプール132が図4あるいは図6の右半分に示す位置に押し上げられてDレンジ圧の供給されるポート134を遮断する。そのためにDレンジ圧はコーストブレーキコントロールバルブ150に送られないので、第4ブレーキB4 は解放されたままとなり、エンジンブレーキが効くことはない。したがってDレンジの第1速を設定するにあたって、第3ソレノイドバルブS3 がたとえOFFフェイルしたとしても、第4ブレーキB4 が係合することはないので、第1速からの変速あるいは第1速への変速の際に変速ショックが悪化するなどの不都合は生じない。
【0088】
なお、第1速でエンジンブレーキを効かせる必要のあるLレンジにおいては、第3ソレノイドバルブS3 がON制御されて信号圧を出力しないから、B2 リリースコントロールバルブ130の制御ポート131から排圧される。その結果、スプール132が図4あるいは図6の左半分に示す位置に押し下げられるので、Dレンジ圧がポート134およびポート133を介してコーストブレーキコントロールバルブ150に出力され、ここから 2−3シフトバルブ230および 1−2シフトバルブ250ならびにシャトルバルブ240を介して第4ブレーキB4 に油圧が供給される。すなわち第4ブレーキB4 が係合してエンジンブレーキを効かせることができる。
【0089】
また一方、Dレンジの第3速を設定する際にも第3ソレノイドバルブS3 がOFF制御されるから、第1速の場合と同様に、B2 リリースコントロールバルブ130のポート134が閉じられてDレンジ圧はカットされる。したがって第1ブレーキB1 に油圧が供給されず、これが解放されたままとなるので、エンジンブレーキが効くことはない。
【0090】
これに対して第3速でエンジンブレーキを効かせる“3”レンジおよび“2”レンジでは、第3ソレノイドバルブS3 がON制御されるから、B2 リリースコントロールバルブ130の制御ポート131から排圧され、その結果、Dレンジ圧がポート134およびポート133を介してコーストブレーキコントロールバルブ150に供給され、ここで調圧されたエンジンブレーキ圧が 2−3シフトバルブ230および 3−4シフトバルブ100を介して第1ブレーキB1 に供給され、これが係合することによりエンジンブレーキを効かせることができる。
【0091】
この“3”レンジあるいは“2”レンジの第3速において、第3ソレノイドバルブS3 がOFFフェイルした場合、B2 リリースコントロールバルブ130の制御ポート131に油圧が供給されるために、Dレンジ圧の入力されているDレンジ圧入力ポート134が閉じられる替わりに、エンジンブレーキレンジ圧の供給されているエンジンブレーキレンジ圧入力ポート135が出力ポート133に連通するので、ここからエンジンブレーキレンジ圧がコーストブレーキコントロールバルブ150に供給される。その結果、ここで調圧されたエンジンブレーキ圧が第1ブレーキB1 に供給されてこれが係合するので、たとえ第3ソレノイドバルブS3 がOFFフェイルしてもエンジンブレーキを効かせることができる。
【0092】
なお、B2 リリースコントロールバルブ130のエンジンブレーキレンジ圧入力ポート135にエンジンブレーキレンジ圧を供給する場合、ダブルオリフィス136を介して供給することになるので、第1ブレーキB1 の油圧の立ち上がりを緩和することができ、その結果、第1ブレーキB1 と第2ブレーキB2 との干渉を避けることができる。
【0093】
上述した自動変速機Aにおいても、非駆動レンジであるNレンジから走行レンジであるDレンジにシフト装置を操作した場合、発進時であれば、車速がほぼ零であるから、第1速が設定される。またその直前のNレンジにおいても、シフトソレノイドバルブS1 ,S2 ,S3 の通電パターンは、第1速を設定する状態となっている。これは、具体的には、第1ソレノイドバルブS1 がON、第2ソレノイドバルブS2 および第3ソレノイドバルブS3 がOFFの状態である。そしてこの通電パターンは、Rレンジと同様であり、したがって電気的なフェイルによってDレンジをRレンジに誤判定しても通電パターンが同一であるために、第1速でエンジンブレーキが効くことはない。
【0094】
これに対してヒルホールドモードが選択されている場合、すなわち前述したホールドモードスイッチがON操作されている場合には、Nレンジでの通電パターンおよびDレンジにマニュアルシフトした場合の制御が、上記の通常時とは異なる。ここでヒルホールドモードは、Dレンジにおいて坂道発進時に車両が後退しないようブレーキを係合させるモードであり、図10に示す変速マップが採用される。すなわち図10の(A)は通常の変速マップであり、車速Vとスロットル開度θとをパラメータとして第1速ないし第5速の変速段領域が設定されている。これに対して図10の(B)はヒルホールドモードでの変速パターンであって、第3速ないし第5速の変速段領域が設定されている。したがってヒルホールドモードでは発進時の変速段として第3速が設定され、またその場合、車両の後退を防止するためにエンジンブレーキ用の第1ブレーキB1 が係合させられる。
【0095】
以下、ヒルホールドモードが選択されている場合の制御例を説明する。図11はその制御ルーチンの一例を示すフローチャートであって、入力信号の処理(ステップ1)を行った後、ヒルホールドモードスイッチがON操作されているか否かが判断される(ステップ2)。ヒルホールドモードスイッチがOFFであれば特に制御を行うことなくこのルーチンから抜け、またヒルホールドモードスイッチがON操作されていれば、ヒルホールド用Nレンジソレノイドパターンを設定する(ステップ3)。
【0096】
NレンジにおけるシフトソレノイドバルブS1 ,S2 ,S3 の通常時における通電パターンは、車速に応じたパターンとされ、したがって車速がほぼ零である発進時においては第1ソレノイドバルブS1 がON、第2ソレノイドバルブS2 、および第3ソレノイドバルブS3 がOFFとされる。これに対してヒルホールドモードスイッチがON操作されている場合には、図12に示すように第1ソレノイドバルブS1 がOFF、第2ソレノイドバルブS2 がON、第3ソレノイドバルブS3 がOFFに設定される。したがってこの状態ではライン圧が 4−5シフトバルブ170およびC0 エキゾーストバルブ190ならびにリレーバルブ280を介して副変速部31におけるクラッチC0 に供給され、これが係合する。
【0097】
なおこのNレンジにおける通電パターンにおいて第3ソレノイドバルブS3 がOFFであって信号圧を出力するが、第2ソレノイドバルブS2 がON制御されて信号圧を出力しないため、切換弁である 3−4シフトバルブ100のスプール104が図6における左半分に示す位置に押し上げられ、第3ソレノイドバルブS3 の出力する信号圧をB2 リリースコントロールバルブ130に送る。したがって副変速部31が高速段になることはない。
【0098】
ステップ3に続くステップ4において、ヒルホールド用Dレンジソレノイドパターンを設定する。前述したようにヒルホールドモードではエンジンブレーキの効く状態の第3速を発進用の変速段とするから、たとえDレンジであってもエンジンブレーキ用の摩擦係合装置を係合させることになる。したがってこのヒルホールド用Dレンジソレノイドパターンとしては、“3”レンジにおける第3速の通電パターンが採用され、第1ソレノイドバルブS1 がOFF、第2ソレノイドバルブS2 および第3ソレノイドバルブS3 がそれぞれONに制御される。これは図12に示すとおりであり、したがってマニュアルバルブ260がDレンジ位置に設定されることにより、第1クラッチC1 に油圧が送られてこれが係合し、また図7に示すように 2−3シフトバルブ230のスプール231が左半分に示す位置に押し下げられることにより、第2ブレーキB2 にDレンジ圧が供給されてこれが係合する。
【0099】
さらに第3ソレノイドバルブS3 がON制御されて信号圧を出力しないことにより、B2 リリースコントロールバルブ130のスプール132が図6の左半分に示す位置に押し下げられ、その結果、Dレンジ圧がこのB2 リリースコントロールバルブ130およびコーストブレーキコントロールバルブ150ならびに 2−3シフトバルブ230から 3−4シフトバルブ100を介して第1ブレーキB1 に供給され、これが係合する。すなわち係合させられるブレーキが、通常時の第3速に対して一つだけ多くなる。
【0100】
なお、第3速においては第3ソレノイドバルブS3 はエンジンブレーキ状態を制御するために使用され、したがって第1ソレノイドバルブS1 と第2ソレノイドバルブS2 との2つのソレノイドバルブが実質的にシフトソレノイドバルブとして機能する。そしてこの第3速におけるこれら第1ソレノイドバルブS1 と第2ソレノイドバルブS2 との通電パターンはNレンジにおける通電パターンと同一になる。したがって、NレンジからDレンジにマニュアルシフトした場合のこれらのソレノイドバルブS1 ,S2 の切換が生じないため、制御上有利であり、また信頼性を向上させることができる。
【0101】
NレンジおよびDレンジにおけるソレノイドパターンを上述のように設定した後、NレンジからDレンジへのシフトが行われたか否かを判断する(ステップ5)。この判断は、図9に示すシフト装置においてはスイッチ群の出力する信号に基づく論理和から判断することができ、またシフトポジションを直線的に配列した通常のシフト装置においては、例えば全てのシフトポジションスイッチが信号を出力しなくなることによりDレンジが選択されたことを判断することができる。
【0102】
ステップ5で否定判断された場合には、特に制御を行うことなくリターンし、また肯定判断された場合には、ブレーキがON状態か否かを判断する(ステップ6)。ここでブレーキは、フットブレーキとサイドブレーキとの少なくともいずれか一方であって、ブレーキ操作されていれば第1クラッチC1 と第2ブレーキB2 との係合処理を実行する(ステップ7)。具体的にはシフトレバーの操作によってマニュアルバルブ260が切り替わることにより第1クラッチC1 に油圧を供給すると共に、第1ソレノイドバルブS1 が信号圧を出力することにより 2−3シフトバルブを切り換え動作させて、第2ブレーキB2 にDレンジ圧を供給しこれを係合させる。
【0103】
ステップ7の制御の実行と同時にタイマーTをスタートさせ、そのカウント値を予め定めた時間T1 以上になるまでステップ7の制御を継続する(ステップ8)。そして予め定めた時間T1 が経過したことによりステップ8で肯定判断された場合、第1ブレーキB1 の係合切換制御を実行する(ステップ9)。具体的には第3ソレノイドバルブS3 をON制御してその信号圧の出力を止める。その結果、B2 リリースコントロールバルブ130の制御ポート131に油圧が作用しなくなるから、そのスプール132が図6の左半分に示す位置に押し下げられる。そしてDレンジ圧の入力ポート134が出力ポート133に連通するためにDレンジ圧が第1ブレーキB1 に供給されこれが係合する。
【0104】
この時点では第1クラッチC1 と第2ブレーキB2 に対して既に油圧が供給され始めてから所定時間T1 が経過しており、したがってヒルホールド状態を達成するための第1ブレーキB1 に油圧を供給しても、第1クラッチC1 や第2ブレーキB2 の係合圧の一時的な低下が生じることはない。すなわち、主変速部32にトルクを入力するための第1クラッチC1 の係合圧の制御が、外乱を受けることなく適正に行われ、したがってDレンジにマニュアルシフトすることに伴うショックを防止することができる。
【0105】
一方、ステップ6で否定判断された場合、すなわちブレーキ操作されていない場合には、ヒルホールド状態を保持する必要があるから、第1クラッチC1 および第2ブレーキB2 ならびに第1ブレーキB1 の3つの摩擦係合装置に対して油圧を供給し、これらを係合させる(ステップ10)。この場合、第3速を設定するための2つの摩擦係合装置(第1クラッチC1 、および第2ブレーキB2 )に加えてエンジンブレーキ状態とするための第1ブレーキB1 を係合させることになるため、第1クラッチC1 の圧力低下によるショックが生じる可能性があるが、ヒルホールドを優先するために、第1ブレーキB1 にも同時に油圧を供給する。したがって坂道発進の際の車両の後退を防止することができる。
【0106】
なお、上記の例ではブレーキ操作されているときに第1ブレーキB1 の係合の遅延制御を実行することとしたが、これに代えて油温が高いときには第1ブレーキB1 の係合の遅延制御を実行し、油温が低い場合には第1クラッチC1 および第2ブレーキB2 ならびに第1ブレーキB1 の3つの摩擦係合装置を同時に係合させるように制御してもよい。また図11に示す例では、所定時間T1 の経過後に第1ブレーキB1 の係合制御を実行するよう構成してあるが、これに代えて回転数センサーからの信号に基づいて第1クラッチC1 および第2ブレーキB2 の係合を判断し、その後に第1ブレーキB1 の係合処理を実行することとしてもよい。
【0107】
上述した図11に示す例では、第3ソレノイドバルブS3 をOFF状態からON状態に切り換えることにより、ヒルホールド用の第1ブレーキB1 を係合させるように構成してあるから、ヒルホールドモードでの第3速を設定してある状態でシフトポジションスイッチのフェイルなどにより一時的にNレンジ信号が出力された場合には、第3ソレノイドバルブS3 がOFF状態に切り替わることに伴って第1ブレーキB1 が一時的に解放させられる可能性がある。このような不都合を解消するよう構成した例を以下に説明する。
【0108】
図13はその目的のために採用される係合作動表の一部を示す図であり、Nレンジでのソレノイドパターンが、Dレンジでのヒルホールドギヤ段(第3速)でのパターンと同様に、第1ソレノイドバルブS1 がOFF、第2および第3のソレノイドバルブS2 ,S3 がONに設定されている。また手動変速モード(スポーツモード)や“3”レンジなどのエンジンブレーキを効かせる状態での第3速を設定するソレノイドパターンが、ヒルホールドモードでの第3速と同様のソレノイドパターンとされている。
【0109】
係合作動表を図13に示すように構成しておくことにより、前述した図11に示すステップ3では、図13のNレンジのソレノイドパターンが採用され、またこれに続くステップ4では、図13のヒルホールドギヤ段(第3速)のソレノイドパターンが設定される。したがってヒルホールドモードでの第3速を設定している状態で、電気的なフェイルによって一時的にNレンジの誤判定が生じた場合、Nレンジのソレノイドパターンが出力されるが、これは図13に示すように、ヒルホールドモードでの第3速と同じであり、ソレノイドパターンが切り替わらない。すなわち第3ソレノイドバルブS3 がON状態に維持されるので、B2 リリースコントロールバルブ130がDレンジ圧をコートスブレーキコントロールバルブ150に出力し、さらにDレンジ圧がここから 2−3シフトバルブ230から 4−5シフトバルブ100を介して第1ブレーキB1 に供給され、この第1ブレーキB1 が係合状態に維持される。その結果、レンジ判定のフェイルに伴って第1ブレーキB1 が一時的に解放され、もしくはその係合圧が低下してショックが生じることが防止される。
【0110】
上述した例はヒルホールドモードでの第3速を設定する場合の例であるが、スポーツモード(手動変速モード)で第3速が選択された場合もほぼ同様に制御される。図14はその例を示しており、入力信号の処理(ステップ20)を行った後に、スポーツモードでの第3速が選択されているか否かの判断を行い(ステップ21)、肯定判断された場合には、スポーツモード対応のNレンジソレノイドパターンを設定する(ステップ22)。このソレノイドパターンは、図13に示すとおりであり、第1ソレノイドバルブS1 がOFF、第2および第3のソレノイドバルブS2 ,S3 がONである。
【0111】
またスポーツモード対応のDレンジソレノイドパターンを設定する(ステップ4−1)。これは、前述したとおり、ヒルホールドモードでの第3速およびNレンジと同様のソレノイドパターンである。そしてこれに続くステップ24において第3速を設定するために第1クラッチC 1および第1ブレーキB1 ならびに第2ブレーキB2 を係合させる制御を実行する。
【0112】
このようにして設定されるスポーツモードでの第3速のソレノイドパターンは、Nレンジと同じであるから、この第3速での走行中に例えば電気的なフェイルによって一時的にNレンジが誤判定されたとしても、上述したヒルホールドモードでの第3速の場合と同様に、第1ブレーキB1 が解放されたり、その係合圧が低下したりすることがないので、ショックが防止される。
【0113】
なお、この発明は上述した各実施例に限定されないのであって、図2に示すギヤトレイン以外のギヤトレインを備えた自動変速機や図4に示す油圧回路以外の油圧回路を備えた自動変速機を対象とした制御装置に適用することができる。また上記の実施例では、エンジンブレーキの効く所定の前進段としてヒルホールドモードでの第3速およびスポーツモードでの第3速を挙げたが、この発明は、エンジンブレーキレンジやスノーモードでの第3速以外の前進段で上記実施例と同様に制御することとしてもよい。そして上記の実施例では、特定の走行モードを設定するための摩擦係合装置への油圧の供給の遅延制御を、ヒルホールドモードで実行することとしたが、この発明におけるこの種の遅延制御は他の特定の走行モードにおいて実行することとしてもよい。
【0114】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1ないし請求項3に記載した発明の制御装置によれば、発進用変速段としてエンジンブレーキ用の摩擦係合装置を追加して係合させる変速段を設定する走行モードが選択可能であって、非駆動レンジからのシフトに伴ってそのエンジンブレーキ用摩擦係合装置に対する油圧の供給を遅延させるから、発進用変速段を設定するための摩擦係合装置の油圧の制御が適正に行われ、シフトショックを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施例を模式的に示すブロック図である。
【図2】この発明で対象とする自動変速機の歯車変速機構を主として示すスケルトン図である。
【図3】各走行レンジおよび変速段でのソレノイドバルブのON・OFF状態および各摩擦係合装置の係合・解放状態を示す図表である。
【図4】この発明の一実施例の主要な油圧回路部分を示す図である。
【図5】この発明にかかる主要油圧回路部分を取り出して概略的に示す部分油圧回路図である。
【図6】図4に示す油圧回路の一部を示す図である。
【図7】図4に示す油圧回路の他の部分を示す図である。
【図8】図4に示す油圧回路の更に他の部分を示す図である。
【図9】シフト装置における各レンジ位置の配列を示す図である。
【図10】Dレンジの通常の変速パターンとDレンジのホールドモードでの変速パターンとを示す線図である。
【図11】ヒルホールドモードが選択されている状態でのNレンジからDレンジへのシフトの際の第1ブレーキの係合の遅延制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図12】ヒルホールドモードギヤ段(第3速)を設定するための部分的な係合作動表を示す図表である。
【図13】Nレンジのソレノイドパターンをヒルホールドモードギヤ段およびエンジンブレーキの効く第3速のソレノイドパターンと同一にした部分的な係合作動表を示す図表である。
【図14】スポーツモードでの第3速が選択された場合に制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1 自動変速機
19 自動変速機用電子制御装置
31 副変速部
32 主変速部
100 3−4シフトバルブ
S1 ,S2 ,S3 ソレノイドバルブ
Claims (3)
- 所定の変速段でエンジンブレーキ用の摩擦係合装置を選択的に係合させることができ、かつその変速段を発進用変速段とする走行モードを選択することのできる自動変速機の制御装置において、
非駆動レンジから走行レンジに切り換えて前記所定の変速段を設定するための摩擦係合装置を係合させるとともに前記エンジンブレーキ用の摩擦係合装置を係合させる場合に、前記変速段を設定するための摩擦係合装置への油圧の供給に対して、前記エンジンブレーキ用摩擦係合装置に対する油圧の供給を遅延させるよう構成されていることを特徴とする自動変速機の制御装置。 - 所定の前進段で車両を後退させないように摩擦係合装置を係合させるヒルホールドモードを設定することのできる自動変速機の制御装置において、
非駆動レンジからヒルホールドモードでの前記所定の前進段を設定する走行レンジにレンジを切り換えて前記所定の前進段を設定するための摩擦係合装置を係合させるとともに前記摩擦係合装置を係合させてヒルホールドモードを設定する場合に、その前進段を設定するための摩擦係合装置への油圧の供給に対して、前記ヒルホールドモードで係合させられる前記摩擦係合装置への油圧の供給を遅延させるように構成されていることを特徴とする自動変速機の制御装置。 - 後進状態と複数の前進状態とを設定する主変速部と高低二段に切り換えることのできる副変速部とを備え、所定の制御弁が出力する信号圧を、前記副変速部を制御する信号圧と、所定の前進段で車両の後退を阻止するべく係合させられるヒルホールド用摩擦係合装置を係合させる信号圧とに切換弁で切り換えて使用し、かつ所定の前進レンジで前記ヒルホールド用摩擦係合装置を係合させる走行モードを選択することのできる自動変速機の制御装置において、
前記走行モードが選択されている状態で、非駆動レンジから前記前進レンジに切り換えられた場合に、前記所定の前進段を設定するための摩擦係合装置への油圧の供給に対して、前記ヒルホールド用摩擦係合装置への油圧の供給を遅延させるように前記切換弁を切り換える手段を備えていることを特徴とする自動変速機の制御装置。
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