JP3631106B2 - 噴射ノズル - Google Patents
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Description
【発明が属する技術分野】
本発明は、例えば、車両のヘッドランプの汚れを除去する洗浄液の噴射用のノズルで、特に、使用時に所定位置までノズルの本体部分がスライド移動するタイプの噴射ノズルに関する。
【0002】
【従来の技術】
車両のヘッドランプに付着した汚れ等を除去するための装置としては、ヘッドランプの表面に洗浄液を吹きかけて汚れ等を除去するヘッドランプクリーナがあり、その一例が実開平6−29960号に開示されている。以下、この実開平6−29960号に開示されたヘッドランプクリーナについて簡単に説明する。
【0003】
このヘッドランプクリーナは車両のバンパに取り付けられたノズルケースを備えている。このノズルケースはその一部が略筒形状とされており、バンパに形成された孔を貫通している。このノズルケースの筒状部分の一端側には洗浄液噴射ノズルが収容されている。また、ノズルケースの筒状部分の他端側には接続管の一端側が挿入されている。接続管の一端側の外周部には、その外周方向に沿って周条が形成されており、ノズルケースの他端側の内側に配置されたパッキンに食い込んだ状態で密着している。パッキンはノズルケースの筒状部分の内周部分にも密着しており、ノズルケースの筒状部分の軸周りに接続管が回動可能な状態で接続管の外周部とノズルケースの筒状部分の内周部との間をシールしている。
【0004】
この接続管の他端側はモータポンプ等の駆動手段並びに洗浄液を貯留するタンク等へ接続されており、接続管へ供給された洗浄液はノズルケースの内部を通過して洗浄液噴射ノズルに供給され、洗浄液噴射ノズルから噴射される。
【0005】
また、このヘッドランプクリーナでは、上記のようにノズルケースの筒状部分に対して接続管が回動自在にである。接続管はその軸方向中間部にて屈曲しており、ノズルケースの筒状部分に対して接続管を回動させることで接続管の他端側の軸方向を変更できるようになっている。したがって、接続管の他端部に接続されるホース等の位置や向きに応じて適宜に接続管を回動させることで、接続管とホースとを無理なく接続できるようになっている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述したようなヘッドランプクリーナの噴射ノズルには、通常は車体側に収納され、或いは、車体から突出していてもその突出量が極めて少ない位置に設けられ、洗浄液を噴射する際に予め設定された噴射位置までノズルの本体部分が変位する構成の噴射ノズルがある。この種の噴射ノズルは、底部側で洗浄液のタンクやモータポンプに接続されたシリンダを備えている。このシリンダには筒状のピストンが摺動自在に収容されている。ピストンの先端側にはノズルの本体部分が取り付けられていると共に、ノズルの本体部分の内部とピストンの内部との間には、ピストンの内圧が所定の大きさ以上になると開放するチェックバルブが設けられている。
【0007】
モータポンプが作動するとシリンダ及びピストン内部に洗浄液が供給されるが、ピストンの内圧が所定の大きさ以上になるまではチェックバルブがノズルの本体部分の内部とピストンの内部との間を閉塞しているため、シリンダの内圧が上昇するとピストンがシリンダから押し出され、これにより、所定の噴射位置までノズルの本体部分が変位する。所定の噴射位置でそれ以上のピストンの移動が規制されると、シリンダ及びピストンの内圧が更に上昇し、これにより、ノズルの本体部分の内部とピストンの内部との間が開放され、ノズルの本体部分から洗浄液が噴射される。
【0008】
ここで、この種の噴射ノズルでは、シリンダの底部に一体形成された接続管にホース等が接続されてこのホース等を介してモータポンプやタンクに接続される。したがって、シリンダの軸方向に対して接続管の軸方向を傾斜させれば、実開平6−29960号に開示された接続管のように、シリンダの回動により接続管の向きが変更されるため、接続管とホースとを無理なく接続できる。しかしながら、このような噴射ノズルでは、シリンダにピストンを収容することでシリンダがピストンを摺動自在に保持する構成であるため、シリンダをその軸周りに回動させるとピストンも共に回動してしまい、ノズルの本体部分の向きが変わってしまう。
【0009】
本発明は、上記事実を考慮して、ノズル本体の変位が可能で且つ接続管等の連結部分とホース等とを無理なく連結できる噴射ノズルを得ることが目的である。
【0010】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の噴射ノズルは、有底筒形状のシリンダと、前記シリンダに収容されて前記シリンダ内での圧力の上昇により前記シリンダに対して相対的に前記シリンダの開口側へスライドする中空の筒状のピストンと、前記シリンダの開口側での前記ピストンの端部及び前記シリンダの底部外側の何れか一方に設けられ、前記何れか一方の内部を通過した流体を噴射するノズル本体と、前記ピストン及び前記シリンダのうち、前記ノズル本体が設けられた側を前記シリンダ及び前記ピストンの軸周りに回動規制する規制手段と、前記シリンダ及び前記ピストンのうち前記ノズル本体が設けられていない側の軸方向に沿った変位を制限した状態で前記軸周りに回動自在に保持する保持手段と、前記ピストン及び前記シリンダのうち、前記ノズル本体が設けられていない側で且つ前記シリンダの内部と前記ピストンの内部との連通部分とは反対側の軸方向端部に形成されると共に、前記ノズル本体が設けられていない側の軸方向に対して自らの軸方向が傾斜した筒状に形成されて、前記ノズル本体が設けられていない側の内部に前記流体を供給する供給部と、を備えている。
【0011】
上記構成の噴射ノズルでは、供給部から直接或いはピストンの内部を介してシリンダの内部に流体が供給されるとシリンダ内の内圧が上昇する。
【0012】
ここで、ピストンにノズル本体が設けられている構成であれば、ピストンとノズル本体との間には弁が設けられており、シリンダにノズル本体が設けられている構成であれば、シリンダとノズル本体との間には弁が設けられているため、シリンダ内の内圧が所定の大きさ未満であれば弁が開くことはなく、この状態で更に流体がシリンダ内に供給されればシリンダの開口端側へ向けてピストンがシリンダに対して相対的にスライド移動する。
【0013】
すなわち、シリンダが固定されピストンが可動であるならば、ピストンがシリンダの開口端から抜け出る方向へスライド移動し、ピストンが固定されシリンダが可動であるならば、シリンダの内底がシリンダ内の圧力上昇に伴い押圧されてシリンダの内底がピストンの端部から離間する如くシリンダがスライド移動する(シリンダを基準にしてみればピストンがシリンダの開口端から抜け出る方向へ移動する)。これにより、ノズル本体が予め設定された噴射位置へ向けてスライド移動する。
【0014】
シリンダの内圧が所定の大きさとなると、ノズル本体が予め設定された噴射位置に達すると共に、弁が開き、ノズル本体へ流体が供給されてノズル本体から流体が噴射される。
【0015】
このように、本噴射ノズルでは、ノズル本体がスライド移動するため、使用しない場合にはノズル本体をシリンダ及びピストンのうちのノズル本体が設けられていない側へ移動させておくことができ、例えば、壁等の遮蔽手段の裏側にノズル本体を隠したりケース等の収納手段の内部にノズル本体を収納しておくことができる。
【0016】
また、本噴射ノズルでは、シリンダ及びピストンのうちのノズル本体が設けられた側は、規制手段によって自らの軸周りの回動が規制される。このため、組付時等においてノズル本体の向きが不用意に変更されることがなく、したがって、確実に所定の方向へ流体を噴射できる。
【0017】
これに対し、シリンダ及びピストンのうちのノズル本体が設けられていない側は、保持手段によって軸方向に沿った変位が制限されるものの、自らの軸周りに関しては回動可能に保持される。このノズル本体が設けられていない側には供給部が一体形成されており、ノズル本体が設けられていない側をその軸周りに回動させると、供給部もまたノズル本体が設けられていない側の軸周りに回動する。
【0018】
ここで、供給部は筒状に形成されているものの、その軸方向はノズル本体が設けられていない側の軸方向に対して傾斜している。このため、ノズル本体が設けられていない側をその軸周りに回動させて供給部の向きを変えても、ノズル本体が設けられていない側の向きが変わらない。したがって、ノズル本体が設けられていない側をその軸周りに回動させることで、供給部の向きを変えることができ、例えば、組み付けに際して好適な方向に供給部が向くまでノズル本体が設けられていない側を回動させることにより組み付け性等の向上を図ることが可能となる。
【0019】
請求項2記載の噴射ノズルは、請求項1記載の本発明において、前記保持手段は、各々が連結された状態で前記ノズル本体が設けられた側が貫通する孔の内周部を形成する切欠部を有し、各々が連結された状態で所定の取付部位に固定されて直接或いは間接的に前記シリンダ及びピストンを支持する一対のフレームパーツを備え、前記規制手段は、前記ノズル本体が設けられた側の外周部及び前記孔の内周部の何れか一方から突出形成され、何れか他方に形成された係合溝の内側に入り込む係合部を含む構成である、ことを特徴としている。
【0020】
上記構成の噴射ノズルでは、一対のフレームパーツが一体的に連結された状態で所定の取付部位に固定されることでシリンダ及びピストンが一対のフレームパーツにより支持される。
【0021】
また、一対のフレームパーツの各々には切欠部が形成されており、一対のフレームパーツが連結されると各切欠部が繋がって孔となり、シリンダ及びピストンのうち、ノズル本体が設けられた側がこの孔を貫通する。ここで、孔の内周部(すなわち、切欠部の少なくとも何れか1つ)及びノズル本体が設けられた側の外周部の何れか一方からは係合部が突出形成されており、何れか他方に形成された係合溝に入り込んでいる。ノズル本体が設けられた側が自らの軸周りに回動しようとすると、係合溝の内壁及び係合部の何れか一方に何れか他方が干渉する。これにより、ノズル本体が設けられた側の回動、ひいては、ノズル本体の回動が規制される。
【0022】
さらに、組み立て面から見ると、上述したような孔に上述した係合部又は係合溝が形成されたシリンダ或いはピストンを軸方向に貫通させることに比べて、ノズル本体の略軸直交方向から一対のフレームパーツを連結させて収容する方が容易であるため、組み立て工程が簡素化される。
【0023】
【発明の実施の形態】
<本実施の形態の構成>
図1には本発明の一実施の形態に係る噴射ノズル10に適用した分解斜視図が示されており、図2には本噴射ノズル10の断面図が示されている。
【0024】
(フレーム18の構成)
図1及び図2に示されるように、噴射ノズル10は一対のフレームパーツ14、16により構成された保持手段としてのフレーム18を備えている。フレーム18のフレームパーツ14は長手方向に対して直交した方向に沿って切った断面が略半円形状に湾曲しており、その長手方向一方の端部では、略半円形状の縦壁20が形成されている。また、フレームパーツ14の長手方向他方の端部からはフレームパーツ14の長手方向に対して直交し、且つ、フレームパーツ14の外側へ向けて略矩形板状の取付片22が延出されている。取付片22にはその厚さ方向に貫通した1乃至複数個の貫通孔24が形成されており、これらの貫通孔24にボルト等の締結手段が貫通する。貫通孔24を貫通した締結手段は、例えば、車両のヘッドライト近傍に設けられた支持体に形成された貫通孔(何れも図示省略)をも貫通して締結固定される。
【0025】
一方、フレームパーツ16もまたフレームパーツ14と同様に断面略半円形状で、その長手方向一端部には縦壁26が形成され、長手方向一端部には取付片28が形成されている。また、フレームパーツ16の幅方向(周方向)両端部近傍及びフレームパーツ16の湾曲部分とは接していない側の縦壁26の端部近傍では肉厚が他の部分よりも薄く形成されており、フレームパーツ16の内側ではこの薄肉の部分が段差30となっている。
【0026】
この段差30には、フレームパーツ14の幅方向(周方向)両端部及びフレームパーツ14の湾曲部分とは接していない側の縦壁20の端部から延出された薄肉の嵌合片32が嵌まり込む。嵌合片32が段差30に嵌まり込んだ状態では、各フレームパーツ14、16の長手方向に対して直交する方向に沿って切った断面が略円形の略円筒状で、しかも、縦壁20と縦壁26とがフレーム18の軸方向一端の底部34で且つ取付片22、28側が開口端とされた略有底円筒形状となる。
【0027】
また、フレームパーツ14の外周部には略半リング形状(概ね円形のリングを二つに割った形状)の固定部36が1つ乃至フレームパーツ14の長手方向に沿って複数個形成されている。この固定部36の周方向両端部からは固定部36の内外周に対する接線方向で且つフレームパーツ14の開口方向へ向けて係合爪38が突出形成されている。
【0028】
一方、フレームパーツ16の外周部には略半リング形状の固定部40が上述した固定部36に対応して形成されている。この固定部40の長手方向両端部にはフレームパーツ16の外方へ向けて略矩形板状の固定片42が延出されている。これらの固定片42にはその厚さ方向(より詳細にはフレームパーツ14とフレームパーツ16とを嵌合させた状態における係合爪38の突出方向)へ向けて貫通した矩形の係合孔44が形成されており、フレームパーツ14とフレームパーツ16とが嵌合した状態では係合爪38が係合孔44を貫通した状態で嵌め合わされ、フレームパーツ16から離間する方向へのフレームパーツ14の移動を制限する。
【0029】
なお、本実施の形態では、固定部36、40をフレームパーツ14、16に形成した(すなわち、固定部36をフレームパーツ14に予め一体に形成し、固定部40をフレームパーツ16に予め一体に形成した)構成であったが、固定部36、40をフレームパーツ14、16とは別体で構成してもよい。しかしながら、固定部36、40をフレームパーツ14、16に形成した構成の方が部品点数を増加させずに済むというメリットがあるうえ、固定部36、40をフレームパーツ14、16へ取り付けるといった作業を省くことができるというメリットもある。
【0030】
さらに、フレームパーツ16には一対の排水孔46、48が形成されている。排水孔46はフレームパーツ16の軸方向(長手方向)中間部でフレームパーツ16の内周部側と外周側とを貫通しており、排水孔48はフレームパーツ16の縦壁26側でフレームパーツ16の内周部側と外周側とを貫通している。排水孔46、48は何れもフレーム18が車体の所定位置に組み付けられた状態で概ね上下方向に貫通する孔となる。
【0031】
また、上述した取付片22には1乃至複数個の係合爪50が形成されている。係合爪50はその基端部が取付片22の裏面(底部34側の面)で取付片22に繋がっており、先端部は取付片22の外周端部のうち、フレームパーツ14とフレームパーツ16とを嵌合させた状態で取付片28と接する側の端部よりも取付片28側へ向けて突出している。
【0032】
この係合爪50に対応して取付片28には係合孔52が形成されている。係合孔52は取付片28の厚さ方向に貫通した矩形の孔で、フレームパーツ14をフレームパーツ16へ嵌合させた状態では係合爪50の先端側が係合孔52へ入り込み、その内周部がフレームパーツ16からフレームパーツ14が離間する方向への係合爪50の変位を制限する。
【0033】
以上の構成のフレーム18の内部にはシリンダとしての可動シリンダ60が収容されている。
【0034】
(可動シリンダ60の構成)
可動シリンダ60はその外径寸法がフレーム18の内径寸法よりも充分に小さく、フレーム18の底部34とは反対側の端部が底部62とされた略有底円筒形状に形成されている。この可動シリンダ60に対応して上述した取付片22と取付片28にはそれぞれ略半円形状の切欠部64、66が形成されている。フレームパーツ14、16が嵌合した状態では切欠部64と切欠部66とで内径寸法が可動シリンダ60の外径寸法よりも僅かに大きな孔としての円孔68となり、可動シリンダ60は円孔68を貫通してフレーム18の外側へ向けて延びることができる。
【0035】
図1及び図3に示されるように、可動シリンダ60の外周部には可動シリンダ60の軸方向に沿って長手とされた係合部として規制手段を構成するリブ70が形成されている。このリブ70に対応して切欠部64には係合溝として規制手段を構成する溝72が形成されており、少なくとも可動シリンダ60が円孔68を貫通した状態ではリブ70が溝72の内側を貫通している。
【0036】
なお、本実施の形態では、リブ70及び溝72は何れも1つであったが、図4に示されるように可動シリンダ60の外周部周りに所定角度毎(図4の態様では90度毎)にリブ70を形成し、これに応じて円孔68の内周部(すなわち、切欠部64、66)に溝72を形成してもよい。
【0037】
また、図1及び図2に示されるように、可動シリンダ60の開口端側にはフランジ74が形成されている。フランジ74は全体的にリング状でその外径寸法は可動シリンダ60の外径寸法よりも充分に大きく且つフレーム18の内径寸法よりも僅かに小さい。すなわち、上述した円孔68の内周部が底部62側で可動シリンダ60(すなわち、可動シリンダ60)の径方向の変位(可動シリンダ60の軸方向に対して直交する方向への変位)を制限すると共に、フレーム18の内周部がフランジ74に干渉することで可動シリンダ60の径方向の変位(可動シリンダ60の軸方向に対して直交する方向への変位)を制限する。したがって、基本的には可動シリンダ60の移動の方向はフレーム18の開口方向(軸方向)に沿った方向に限定される。
【0038】
また、フレーム18内部の取付片22、28側にはカップ76が収容されている。カップ76は外径寸法がフレーム18の内径寸法よりも僅かに小さく、内径寸法が可動シリンダ60の外径寸法よりも充分に大きな有底円筒形状でその開口端はフレーム18の底部34側へ向いている。カップ76の底部には可動シリンダ60の外径寸法よりも大きな孔が形成されており、この孔を可動シリンダ60が貫通している。
【0039】
また、可動シリンダ60の外側で且つフレーム18の内側には圧縮コイルスプリング78が配置されている。圧縮コイルスプリング78はその形状を円筒形状とみなした場合、外径寸法がカップ76の内径寸法よりも僅かに小さく、内径寸法が可動シリンダ60の外径寸法よりも大きい。圧縮コイルスプリング78はその一端がカップ76の底部に当接してカップ76を取付片22、28へ圧接されており、他端がフランジ74に当接してフレーム18の底部34側へ押圧している。カップ76は取付片22、28に当接していることで基本的に動くことができないため、結果的に圧縮コイルスプリング78はその付勢力でフランジ74を介して可動シリンダ60(すなわち、可動シリンダ60)を底部34側へ付勢している。
【0040】
また、図2に示されるように、上述したフランジ74の内周部には環状の溝80が形成されており、その内側にはゴムや比較的柔軟で弾性を有する合成樹脂材により形成されたリング状のOリング(オーリング)82が配置されている。さらに、この可動シリンダ60の内側にはピストンとしての固定ピストン84が可動シリンダ60の軸方向に沿って相対的に摺動自在(スライド移動自在)で且つ可動シリンダ60の中心軸線周り回動自在にに収容されている。
【0041】
(固定ピストン84の構成)
図1及び図2に示されるように、固定ピストン84は外径寸法が可動シリンダ60の内径寸法よりも僅かに小さな円柱形状とされている。したがって、この固定ピストン84によっても可動シリンダ60の変位は自らの軸方向にのみ制限されている。
【0042】
また、図2及び図9に示されるように、固定ピストン84の外周部のうち、上述したフランジ74に対応した部分では上述したOリング82が圧接している。Oリング82は弾性変形して溝80の底部と固定ピストン84の外周部の双方へ圧接し密着することで可動シリンダ60の内周部と固定ピストン84の外周部との間をシールしている。
【0043】
フレーム18の底部側の固定ピストン84の外周部には環状の溝86が形成されている。この溝86の部分に対応してフレームパーツ14の縦壁20には半円径の切欠部88が形成されており、フレームパーツ16の縦壁26には半円径の切欠部90が形成されている。これらの切欠部88、90はフレームパーツ14とフレームパーツ16とを嵌め合わせた状態で底部34の円孔92となる。円孔92はその内径寸法が溝86での本体の外径寸法よりも極僅かに大きい程度とされ、固定ピストン84は溝86の部分で円孔92を貫通している。
【0044】
また、フレーム18の底部34には円孔92と同心の環状の段部94が形成されており、この段部94では底部34の肉厚が他の部分よりも薄い。この段部94にはリング状のシール96が嵌め込まれている。シール96はその一方の端面が段部94に密着していると共に、他方の端面が段部94と対向する側の溝86の内壁及び溝86の底部に密着し、固定ピストン84が円孔92の中心軸線周りに回動自在の状態で円孔92をシールしている。
【0045】
さらに、円孔92を貫通してフレーム18の外部に露出した固定ピストン84の一端部には供給部としての連結部98が形成されている。
【0046】
連結部98は固定ピストン84よりも外径寸法が充分に小さな円筒状に形成されており、その内部は固定ピストン84の軸方向端部にて開口した供給孔102に連通している。また、図2及び図9の一点鎖線Aで示される連結部98の軸線は、同じく図2の一点鎖線Bで示される固定ピストン84の軸線に対して0度以上90度未満の角度θ1で傾斜している。さらに、この連結部94の外周部には固定ピストン84とは反対側へ向けて漸次外形寸法が小さくなる係合環100が形成されている。
【0047】
この係合環100は内径寸法が連結部98の外径寸法程度とされたホースやチューブ等の管状部材104の内側に連結部98が挿入された際に、管状部材104の内周部に係合環100が食い込んで連結部98が管状部材104から抜けることを防止する。この図示しない管状部材104は連結部98とは反対側で直接或いは間接的にモータポンプ及び洗浄液が溜められたタンク(何れも図示省略)へ接続されており、モータポンプが作動することでタンク内の洗浄液が管状部材104へ供給され、更に、連結部98の内部に供給される。
【0048】
また、上述した固定ピストン84には供給孔102が形成されている。供給孔102は一端が連結部98の内部と連通し、他端が可動シリンダ60の底部62側の固定ピストン84の端部で開口している。
【0049】
(ノズル110及びチェックバルブ12の構成)
一方、図1及び図2に示されるように、上述した可動シリンダ60の底部62の外側側方にはノズル本体としてのノズル110が設けられている。ノズル110は略半球形状に形成されており、その外周一部には噴射口112が形成されている。このノズル110にはチェックバルブ12を構成するボディ114が形成されている。
【0050】
図2及び図5に示されるように、ボディ114は外径寸法が上述した可動シリンダ60の外径寸法よりも小さな略円柱形状とされ、その内側には弁収容部116が形成されている。
【0051】
図6に示されるように、弁収容部116はノズル110の本体部分(略半球形状の部分)とは反対側のボディ114の軸方向端部で開口した有底の孔でボディ114の外周部と略同軸とされており、その内側には球状弁118が収容されている。球状弁118はその外形状が球状とされており、且つ、その外径寸法は弁収容部116の内径寸法よりも充分に小さい。
【0052】
また、弁収容部116の内周部からは弁収容部116の軸心へ向けて複数の凸部120が突出形成されている。各凸部120は弁収容部116の軸方向に沿って長手方向とされた棒状若しくは板状で、弁収容部116の内周方向に沿って所定間隔毎に形成されている。これらの凸部120の先端(弁収容部116の軸心側の端部)を通る仮想円の直径寸法は、上述した球状弁118の外径寸法よりも僅かに大きく、球状弁118はこれらの凸部120の先端によって弁収容部116の軸方向に対して直交する方向への変位が制限された状態で弁収容部116の軸方向に沿って移動可能に弁収容部116に収容されている。
【0053】
ここで、上述したように複数の凸部120は弁収容部116の内周方向に沿って所定間隔毎に形成されているため、弁収容部116の内周方向に沿って互いに隣り合う凸部120同士の間には隙間が形成される。これらの隙間は洗浄液流路122とされ、ここに上述した洗浄液が流れる。
【0054】
また、各凸部120は弁収容部116の底部側には連続してスプリング保持片124が形成されている。スプリング保持片124は基本的に各凸部120と同様に弁収容部116の内周部から弁収容部116の軸心へ向け突出形成された棒状部若しくは板状部であるが、弁収容部116の内周部からの突出寸法が各凸部120よりも大きく、スプリング保持片124の先端部を通る仮想円は、弁収容部116と略同軸ではあるものの直径寸法が球状弁118の外径寸法よりも小さくなる。したがって、球状弁118は、基本的に凸部120よりもスプリング保持片124側へ移動することはできない。
【0055】
なお、スプリング保持片124に関してこれまで凸部120とスプリング保持片124を別の部位のように説明してきたが、これは機能上、便宜的に別部位として説明したものである。もちろん、スプリング保持片124と凸部120とを真に別部位として形成してもよいが、図5に示されるように、実質的には凸部120の一部(弁収容部116の底部側の部分)における弁収容部116の内周部からの突出寸法を大きくしただけでのもので構わない。
【0056】
さらに、図5に示されるように、弁収容部116の内側には圧縮コイルスプリング126が収容されている。圧縮コイルスプリング126はその形状を円筒形状とみなした場合、内径寸法が球状弁118の外径寸法よりも充分に小さく、且つ、外径寸法が上述したスプリング保持片124の先端部を通る仮想円の直径寸法よりも僅かに小さい。
【0057】
圧縮コイルスプリング126は球状弁118と弁収容部116の底部との間に配置されており、その一端は球状弁118へ当接しいると共に、他端は弁収容部116のスプリング保持片124側に入り込んで弁収容部116の底部へ当接し、球状弁118を弁収容部116の開口端側へ向けて付勢している。上述したように、圧縮コイルスプリング126の形状を円筒とみなした場合の外径寸法はスプリング保持片124の先端部を通る仮想円の直径寸法よりも僅かに小さいため、スプリング保持片124側では各スプリング保持片124の先端部によって弁収容部116の内径方向に沿った変位が制限されている。
【0058】
また、ボディ114の内部にはボディ114の外周部と同軸の洗浄液流路128が形成されている。洗浄液流路128は弁収容部116と略同軸とされ、その内径寸法は上述したスプリング保持片124の先端部を通る仮想円の直径寸法よりも小さい。これに対し、洗浄液流路128の他端部はノズル110の本体部分側で屈曲して噴射口112に連通している。
【0059】
さらに、ボディ114の外周部には環状の溝130が形成されており、この溝130にはゴムや比較的柔軟で弾性を有する合成樹脂材により形成されたリング状のOリング(オーリング)132が嵌め込まれている。
【0060】
また、ボディ114に対応して上述した可動シリンダ60には筒体134が形成されている。筒体134は可動シリンダ60と底部の外側で可動シリンダ60と同軸的に形成されると共に可動シリンダ60の底部62を底とする有底円筒状部で、その内径寸法はボディ114の外径寸法よりも僅かに大きく、その内側にボディ114を嵌挿できる。さらに、可動シリンダ60の底部62の略中央には底部62の厚さ方向に沿って貫通した透孔136が形成されており、筒体134内と可動シリンダ60内とが連通している。したがって、ボディ114を筒体134に嵌挿した状態では、透孔136及び筒体134内を介して可動シリンダ60内と弁収容部116とが連通可能であると共に、筒体134及びボディ114の軸方向に沿って透孔136と球状弁118とが対向する(すなわち、概ね透孔136の軸線の仮想延長線上に球状弁118の中心が位置する)。また、上述したOリング132はボディ114を筒体134に嵌挿した状態で溝130の底部と筒体134の内周部とからの押圧力で弾性変形しつつ溝130の底部と筒体134の内周部へ密着してボディ114の外周部と筒体134の内周部との間をシールする。
【0061】
さらに、筒体134の内側にはゴムや比較的柔軟で弾性を有する合成樹脂材により形成されたシール138が配置されている。シール138は内径寸法が球状弁118の外径寸法よりも充分に小さな孔が透孔136に対して同軸的に形成されたリング状の部材で、外径寸法は筒体134の内径寸法よりも僅かに小さく、弁収容部116の内径寸法よりも充分に大きい。したがって、筒体134内にボディ114を嵌挿した状態では底部62とボディ114の軸方向端面とで挟まれて少なくともボディ114の端面に対応した部分が底部62側で底部62へ密着し、ボディ114側でボディ114の端面へ密着する。
【0062】
一方、筒体134の開口縁部からは筒体134の径方向に互いに対向する如く延出された一対のノズル保持爪140が形成されている。各ノズル保持爪140は筒体134よりも薄肉とされた基部142を備えている。基部142は一端が筒体134の開口縁のなかでも径方向外側部分で筒体134の開口縁に接続されており、このため、図5に示されるように、対となる基部142同士の間隔は筒体134の内径寸法よりも大きく、基部142と筒体134の内周部とでは筒体134の径方向に沿って段差が生じる。
【0063】
この基部142の他端には爪144が形成されている。爪144は基部142との連結部分側で基部142よりも厚肉とされ、この部分では対となる爪144同士の間隔が対となる基部142同士の間隔よりも大きい。但し、爪144は先端側へ向けて漸次薄肉とされており、筒体134の半径内方側に沿った各爪144の端面は筒体134の開口方向に沿った方向へ傾斜した斜面146となっている。
【0064】
以上の構成のノズル保持爪140に対応してボディ114外周部にはリング状の係合リング148が一体形成されている。係合リング148はその軸方向寸法が筒体134の開口縁から爪144までの間隔(すなわち、筒体134の軸方向に沿った基部142の長さ)よりも僅かに小さく、さらに、その形成位置はボディ114の端面がシール138に密着した状態でその一部がボディ114の径方向に沿って基部142と対向して筒体134の開口縁と爪144との間に入り込むようになっている。
【0065】
なお、本実施の形態では、上述したノズル110の本体部分(略半球状の部分)とボディ114とが基本的に一体の構成であるが、例えば、ノズル110の本体部分とボディ114とを別体で構成して、後に一体的に連結する構成としてもよい。その一例としては、ノズル110の本体部分及びボディ114の何れか一方に雄ねじ部を形成すると共に、何れか他方に雌ねじ部を形成し、雄ねじ部と雌ねじ部とを螺合させることでノズル110を組み立てる構成などがある。
【0066】
このように、ノズル110の本体部分とボディ114とを別体で構成した場合には、組付工数が増えるという欠点があるものの、車両の仕様、例えば、噴射ノズル10の設置位置に対するヘッドライトの位置に応じて噴射口112の位置を変えた各種のノズル110を用意しておけば、車種が異なった場合でもノズル110以外の部品を共用できたり、噴射口112から噴射される洗浄液の噴射態様が異なる各種のノズル110を用意しておけば適宜にノズル110を交換し、車両の使用環境等に最も適した噴射態様にすることが可能になる等のメリットがある。
【0067】
<本実施の形態の作用、効果>
次に、本実施の形態の作用並びに効果について本噴射ノズル10の組立面(製造面)と作動面の双方から説明する。
【0068】
(噴射ノズル10の組立工程)
本噴射ノズル10を組み立てる際には、先ず、ピストン−シリンダ組付工程で可動シリンダ60の開口端から固定ピストン84が嵌挿される。また、このピストン−シリンダ組付工程に前後してスプリング装着工程で可動シリンダ60の外側にカップ76及び圧縮コイルスプリング78が取り付けられる。このスプリング装着工程及びピストン−シリンダ組付工程の終了後には、カップ76の内底に圧縮コイルスプリング78の一端が当接し、固定ピストン84のフランジ74に圧縮コイルスプリング78の他端が当接する。
【0069】
また、上記のピストン−シリンダ組付工程及びスプリング装着工程に前後してノズル装着工程でノズル110のボディ114が筒体134へ嵌挿される。ボディ114を筒体134へ嵌挿する際には、筒体134とボディ114とが略同軸となった状態で概ねその軸線に沿ってボディ114を相対的に筒体134へ接近させて筒体134内にボディ114を挿入する。所定長さボディ114を筒体134に挿入すると、ボディ114に形成された係合リング148が爪144の斜面146へ当接する。斜面146は筒体134の半径内方側に対して筒体134の開口方向に沿った方向へ傾斜しているため、ボディ114及び筒体134の軸線に沿った方向の力を係合リング148から受けた爪144は基部142の筒体134との接続部分周りにボディ114及び筒体134の軸線から遠ざかるように回動する如く弾性変形する。この状態から更にボディ114を筒体134内に挿入すると、爪144が係合リング148の外周面に乗り上げ、更に、係合リング148よりもノズル110の本体部分側に爪144が位置することで、基部142の弾性によりノズル保持爪140が元の形状に復元する。この復元状態では、爪144の底部62側の端面とノズル110の本体部分側の係合リング148の端面とがボディ114及び筒体134の軸線方向に沿って互いに対向する。このため、この状態でボディ114を筒体134から抜き取ろうとすると、爪144が係合リング148に干渉して筒体134からのボディ114の抜き取りが規制される。これにより、筒体134とボディ114とが一体的に連結される。
【0070】
また、ピストン−シリンダ組付工程及びスプリング装着工程が終了した後にはピストン−シリンダ収容工程にて可動シリンダ60と固定ピストン84とがフレーム18の内部に収容される。
【0071】
このピストン−シリンダ収容工程では、分割状態のフレームパーツ14、16の何れか一方の内側に可動シリンダ60が収容される。このとき、フレームパーツ14、16のうち可動シリンダ60が収容された側の取付片22若しくは取付片28にカップ76の外底部を当接させられる。また、可動シリンダ60がフレームパーツ14、16の何れか一方に収容される際に、固定ピストン84の溝86がフレームパーツ14、16のうち可動シリンダ60が収容された側の切欠部88若しくは切欠部90に嵌め合わされる。
【0072】
次いで、フレームパーツ14とフレームパーツ16とが各々の断面形状である略半円形の開口が互いに対向した状態で相対的に互いに接近させられる。フレームパーツ14とフレームパーツ16とが所定距離接近すると、フレームパーツ16の段差30にフレームパーツ14の嵌合片32が嵌まり込む。また、このとき、固定部36の係合爪38が固定片42の係合孔44が貫通する。係合孔44を係合爪38が貫通した状態では、フレームパーツ14の本体部分側の係合爪38の端面が取付片28の端面と対向し、フレームパーツ14をフレームパーツ16から相対的に離間させようとすると係合爪38の端面と取付片28とが互いに干渉する。これにより、フレームパーツ14とフレームパーツ16との機械的な連結が維持される。
【0073】
また、フレームパーツ16の段差30にフレームパーツ14の嵌合片32が嵌まり込む際には取付片22の係合爪50が取付片28に乗り上げて弾性変形し、段差30に嵌合片32が嵌まり込んだ状態ではフレーム18の軸方向に沿って係合孔52と係合爪50とが対向し、係合爪50の弾性で係合爪50が元の形状に復元しつつ係合孔52に入り込む。この状態でフレームパーツ14をフレームパーツ16から相対的に離間させようとすると係合爪50の取付片22側の端面と係合孔52の内周部とが互いに干渉する。したがって、これによってもフレームパーツ14とフレームパーツ16との機械的な連結が維持される。
【0074】
以上の各工程を経た本噴射ノズル10は管状部材104連結工程にて連結部98に管状部材104の一端が連結される。なお、この管状部材104の他端には直接或いは他の接続部材を介して間接的に洗浄液を貯留するタンクやタンクに貯留された洗浄液を管状部材104側へ供給するモータポンプへ接続されるが、この管状部材104の他端側の連結(すなわち、管状部材104と上述したタンクやモータポンプ、或いは他の接続部材との連結)工程は連結部98と管状部材104との連結工程である管状部材104連結工程の前後何れでも構わない。
【0075】
ところで、固定ピストン84は可動シリンダ60に対して回動自在であり、また、フレーム18の底部34側ではシール96が溝86の内壁及び底に密着しているものの円孔92の中心軸線周りに固定ピストン84は回動自在である。したがって、管状部材104連結工程においても固定ピストン84は自らの軸線周りに自由に回動できる。しかも、リブ70が溝72に入り込んでいるため、可動シリンダ60の回動は規制されるため、可動シリンダ60を回動させることなく固定ピストン84の回動が可能である。
【0076】
ここで、本噴射ノズル10にあっては、上述したように、図2及び図9の一点鎖線Aで示される連結部98の軸線が図2及び図9の一点鎖線Bで示される固定ピストン84の軸線に対して角度θ1で傾斜しているために、固定ピストン84が自らの軸線周りに回動すると、連結部98の先端部は固定ピストン84の軸線周りに固定ピストン84の回動角度分だけ変位し、連結部98の軸線の向きも変わる。したがって、管状部材104の一端部における軸線方向に対応した位置、すなわち、例えば、図9の実線状態から二点鎖線状態まで等、適宜に固定ピストン84の軸線周りに連結部98を回動させることで連結部98と管状部材104とを容易に連結できる。しかも、この状態における連結部98の軸線方向が管状部材104の一端部での軸線方向に対応しているため、連結時及び連結後における管状部材104の屈曲や捩じれ、無理な湾曲等を防止でき、管状部材104の損傷等を防止できる。また、管状部材104に屈曲や捩じれ、無理な湾曲が生じた状態では、管状部材104の内部が極端に狭くなる可能性があり、この状態では洗浄液を円滑に流すことができないばかりか、洗浄液の水圧で管状部材104が連結部98から外れたり、管状部材104に亀裂や破裂等が生じたりする。しかしながら、本実施の形態では上述したように、連結部98への連結時において管状部材104の屈曲や捩じれ、無理な湾曲等を生じさせないため、常に洗浄液を円滑に流すことができ、また、洗浄液の水圧による管状部材104の連結部98からの脱落や管状部材104に亀裂や破裂等を防止できる。
【0077】
さらに、上述したように、連結部98を適宜に回動させることで連結部98の軸線を管状部材104の軸線方向に対応させるため、配置位置や一端部における軸線方向が異なる他の管状部材104でも適用することができる。すなわち、本噴射ノズル10では、その構成部材を基本的に多くの車種で共通して使用することができるため、大幅にコストを下げることができる。
【0078】
また、上述したように、本噴射ノズル10では、組立時において略一体すべき部材の連結は係合リング148と爪144との嵌合、嵌合片32と段差30との嵌合、係合爪38と係合孔44との嵌合、及び係合爪50と係合孔52との嵌合等で行なわれ、これらの連結に際してねじやボルト等の締結手段や接着材等を用いることはなく、極めて容易に連結でき、組立作業に熟練を要さずとも簡単に本噴射ノズル10を組み立てることができる。このため、組立工程を簡素化できると共に、固着や締結のための別の部材や特別な装置を要しないため組み立てコストを安価にでき、ひいては本噴射ノズル10の製造コストを安価にできる。
【0079】
(噴射ノズル10の作動面からの作用、効果)
次に、本噴射ノズル10及びチェックバルブ12の作動面から見た作用、効果について説明する。
【0080】
洗浄液を貯留したタンクの側に設けられたモータポンプが作動して、タンクから洗浄液を吸い上げると、この洗浄液はモータポンプの出力に対応した水圧でホースやチューブ等の管状部材104へ送られ、更に、この管状部材104を通過した洗浄液が固定ピストン84の内部、すなわち、供給孔102を通過して可動シリンダ60の内部に供給される。
【0081】
一方、可動シリンダ60の透孔136の外側(すなわち、筒体134側)では、圧縮コイルスプリング126の付勢力で球状弁118がシール138の孔へ圧接されてシール138の孔が閉塞されている。シール138はボディ114並びに底部62へ密着しており、しかも、シール138の孔は透孔136と連通しているため透孔136は球状弁118により閉塞される。
【0082】
可動シリンダ60の内部に供給された洗浄液は底部62の透孔136を通過して可動シリンダ60の外部へ出ようとするが、上述したように、透孔136は球状弁118により閉塞されているため、洗浄液は可動シリンダ60の外部に出ることができない。この状態であっても、可動シリンダ60へは洗浄液が供給され続けるため、可動シリンダ60の内部では内圧が高まり、可動シリンダ60の開口端から固定ピストン84を押し出そうとするが、固定ピストン84は溝86にてフレーム18の円孔92へ係合していることで基本的には動くことができない。したがって、可動シリンダ60の内部で洗浄液の水圧が高まることで圧縮コイルスプリング78の付勢力に抗して底部62が固定ピストン84から離間する方向へ向けて可動シリンダ60が自らの軸方向に沿って移動する。これにより、可動シリンダ60がフレーム18から突出する。
【0083】
また、このとき、洗浄液は可動シリンダ60の内周部と固定ピストン84の外周部との間を通り可動シリンダ60の開口端から漏れようともするが、可動シリンダ60の開口端側ではOリング82が可動シリンダ60の内周部と固定ピストン84の外周部との間をシールしているため、基本的には洗浄液が可動シリンダ60の開口端から漏れ出ることはない。
【0084】
さらに、可動シリンダ60の内圧が上昇すると、可動シリンダ60の軸方向中間部ではその内径寸法が拡大するように可動シリンダ60が弾性変形するが、上述したOリング82は内径寸法が拡大しないか或いは拡大量が極めて小さな可動シリンダ60の開口端に設けられている。しかも、可動シリンダ60の開口端にはフランジ74が形成されており、そのために可動シリンダ60の開口端では肉厚が他の部分よりも厚く剛性が高い。これにより、Oリング82の緊迫力が低下を防止でき、シール性を維持できる。
【0085】
上述した状態でフレーム18の外部へ可動シリンダ60が突出し続けると可動シリンダ60のフランジ74がカップ76の開口端に干渉して可動シリンダ60の突出する方向への移動が規制される。この状態から更に洗浄液が可動シリンダ60の内部に供給され続けると、可動シリンダ60の内圧が圧縮コイルスプリング126の付勢力を上回り、洗浄液が圧縮コイルスプリング126の付勢力に抗して球状弁118を押圧してシール138から離間する方向へ球状弁118を移動させる。これにより、透孔136は開放され、洗浄液は透孔136を通過して弁収容部116の内側へ流れ込み、更に、洗浄液流路128を通過してノズル110の噴射口112からヘッドランプへ向けて噴射される。
【0086】
ここで、可動シリンダ60がスライドしたり、或いは、その他の外力が作用した場合に洗浄液の水圧やそのたの外力の作用方向によっては可動シリンダ60が自らの軸周りに回転しようとすることがあり、可動シリンダ60が回転した場合には、洗浄液の噴射方向が変化してしまい、ヘッドランプへ洗浄液を噴きかけることができなくなってしまう。しかしながら、本実施の形態においては可動シリンダ60が回転しようとすると、可動シリンダ60の外周部に形成されたリブ70に溝72が干渉し、可動シリンダ60の軸周り方向に沿ったリブ70の変位、すなわち、可動シリンダ60の回転が制限される。このため、本実施の形態では確実に洗浄液をヘッドランプへ噴きかけることができる。
【0087】
一方、本実施の形態では、球状弁118は複数の凸部120によって弁収容部116の軸方向に対して直交する方向への変位が制限されているため、洗浄液の水圧による球状弁118の移動方向は弁収容部116の軸方向、すなわち、透孔136及びシール138の孔の軸方向となる。このため、モータポンプの停止等により圧縮コイルスプリング126の付勢力よりも洗浄液の水圧が低くなると、圧縮コイルスプリング126の付勢力で球状弁118は透孔136の軸方向に沿ってシール138の孔へ同軸(心)的に接近してシール138の孔を閉塞する。このように、シール138の孔及び透孔136の軸線と球状弁118の中心が略一致した状態で球状弁118がシール138へ圧接することでシール138の孔と球状弁118との間には隙間が形成されることはなく、確実に球状弁118でシール138の孔及び透孔136を閉塞できる。
【0088】
また、上記のように各凸部120で球状弁118の変位を制限しているものの、弁収容部116の内周方向に沿って各凸部120の間には隙間、すなわち、洗浄液流路122が形成されているため、洗浄液は円滑に流れることができる。
【0089】
さらに、圧縮コイルスプリング126の一端側はスプリング保持片124によって弁収容部116の内径方向に沿った変位が制限されているため、基本的に付勢方向が変化することはない。したがって、圧縮コイルスプリング126は常に球状弁118を透孔136及びシール138の孔に対して同軸(心)的に付勢でき、これによっても確実に球状弁118でシール138の孔及び透孔136を閉塞できる。
【0090】
(その他の作用、効果)
次に、組立面、作動面以外での本実施の形態の作用並びに効果について説明する。上述したように本噴射ノズル10は車体に取り付けられる。しかも、洗浄液をヘッドランプに噴きかけるという機能上、ノズル110は外部に露出できなければならず、当然、フレーム18の内部は車両の外部と連通する。このため、円孔68を介して雨水等がフレーム18の内部に浸入することがありうる。このような雨水等がフレーム18の内部に浸入し、且つ、冬季等で浸入した雨水等が冷却されて氷となると、可動シリンダ60の外周部とフレーム18の内周部とを機械的に連結してしまい、可動シリンダ60を円滑にスライドさせることができなくなる。
【0091】
しかしながら、本実施の形態では、フレームパーツ16に排水孔46、48が形成されているため、円孔68から浸入した雨水等は排水孔46にてフレーム18の外部へ排水され、また、排水孔46の側方を通過して縦壁26側まで達した雨水等は排水孔48にてフレーム18の外部へ排水される。このため、本噴射ノズル10では、フレーム18の内部で雨水等が貯留されることはなく、冬季等においても可動シリンダ60を円滑にスライドさせることができる。
【0092】
また、本実施の形態では、固定ピストン84の双方がフレーム18に収容されているため、固定ピストン84に雨水や泥等の異物が付着することはなく、しかも、使用していない状態では可動シリンダ60の内部に固定ピストン84が収容されるため、固定ピストン84に雨水や泥等の異物が付着する可能性はより一層低くなる。雨水や泥等の異物が固定ピストン84の外周部に付着した状態で可動シリンダ60がスライドすると固定ピストン84の外周部及び可動シリンダ60の内周部に傷がついたり、Oリング82を損傷したりする可能性があるが、本実施の形態では、そもそも固定ピストン84に雨水や泥等の異物が付着する可能性が極めて低いため、そのような不具合が生じることはない。
【0093】
<本実施の形態の変形例>
(凸部120に関する変形例)
なお、本実施の形態では、図6に示されるように、弁収容部116の軸線周りに90度毎に4つの凸部120を形成した構成であったが、例えば、図7に示されるように、弁収容部116の軸線周りに120度毎に3つの凸部120を形成した構成としてもよい。すなわち、単純に凸部120が球状弁118に接触して球状弁118の変位を制限するのであれば、120度毎に3つの凸部120を形成し、この3つの凸部120により球状弁118を3点支持する構成とすれば確実に球状弁118の変位を制限できる。
【0094】
また、図8に示されるように、凸部120に代えて凸部162を弁収容部116の内周部に設ける構成でもよい。この凸部162は凸部120とは異なり180度毎に2つしか形成されていないが、各々の先端部には弁収容部116の軸線側へ向けて開口した凹部164が形成されており、球状弁118はその一部が凹部164の内側に入り込む。したがって、凹部164の周方向両端側では一方の凸部162と他方の凸部162との間の距離が球状弁118の外径寸法未満となり、一対の凸部162による球状弁118の保持が解除されることはない。したがって、この構成では凸部162は2つしか形成されていないものの確実に球状弁118の変位を制限できる。
【0095】
(連結部98に関する変形例)
また、本実施の形態では、固定ピストン84の軸線方向に対する連結部98の軸線方向の傾斜角度θ1を0度以上90度未満としたが、例えば、図10に示されるように、傾斜角度θ1を90度に設定しても構わないし、90度を越える大きさに設定しても構わない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係る噴射ノズルの分解斜視図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係る噴射ノズルの側面断面図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係る噴射ノズルの正面断面図である。
【図4】本発明の一実施の形態に係る噴射ノズルの変形例を示す図3に対応した正面断面図である。
【図5】チェックバルブの要部を示す拡大側面断面図である。
【図6】図5の6−6線に沿った断面図である。
【図7】チェックバルブの変形例を示す図6に沿った断面図である。
【図8】チェックバルブの別の変形例を示す図6に沿った断面図である。
【図9】供給部が回動した際の供給部の位置並びに向きが変化した状態を示す可動ノズルの要部を拡大した断面図である。
【図10】供給部の変形例を示す図9に対応した断面図である。
【符号の説明】
10 噴射ノズル
14 フレームパーツ
16 フレームパーツ
18 フレーム(保持手段)
60 可動シリンダ(シリンダ)
64 切欠部
66 切欠部
68 円孔(孔)
70 リブ(係合部、規制手段)
72 溝(係合溝、規制手段)
84 固定ピストン(ピストン)
98 連結部(供給部)
110 ノズル(ノズル本体)
Claims (2)
- 有底筒形状のシリンダと、
前記シリンダに収容されて前記シリンダ内での圧力の上昇により前記シリンダに対して相対的に前記シリンダの開口側へスライドする中空の筒状のピストンと、
前記シリンダの開口側での前記ピストンの端部及び前記シリンダの底部外側の何れか一方に設けられ、前記何れか一方の内部を通過した流体を噴射するノズル本体と、
前記ピストン及び前記シリンダのうち、前記ノズル本体が設けられた側を前記シリンダ及び前記ピストンの軸周りに回動規制する規制手段と、
前記シリンダ及び前記ピストンのうち前記ノズル本体が設けられていない側の軸方向に沿った変位を制限した状態で前記軸周りに回動自在に保持する保持手段と、
前記ピストン及び前記シリンダのうち、前記ノズル本体が設けられていない側で且つ前記シリンダの内部と前記ピストンの内部との連通部分とは反対側の軸方向端部に形成されると共に、前記ノズル本体が設けられていない側の軸方向に対して自らの軸方向が傾斜した筒状に形成されて、前記ノズル本体が設けられていない側の内部に前記流体を供給する供給部と、
を備える噴射ノズル。 - 前記保持手段は、各々が連結された状態で前記ノズル本体が設けられた側が貫通する孔の内周部を形成する切欠部を有し、各々が連結された状態で所定の取付部位に固定されて直接或いは間接的に前記シリンダ及びピストンを支持する一対のフレームパーツを備え、
前記規制手段は、前記ノズル本体が設けられた側の外周部及び前記孔の内周部の何れか一方から突出形成され、何れか他方に形成された係合溝の内側に入り込む係合部を含む構成である、
ことを特徴とする請求項1記載の噴射ノズル。
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