JP3628291B2 - 半導体装置および半導体装置の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体装置および半導体装置の製造方法に関し、より詳細には、ゲート電極として2層のポリシリコンを備える構造の半導体装置および半導体装置の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体装置として広く採用されているMOS構造トランジスタの製造にあたっては、例えば、シリコン基板上にLOCOS構造やシャロートレンチ構造の素子分離領域およびウェルを形成した後に閾値電圧Vth調整のためのイオン注入を行ない、更に、成膜したゲート酸化膜上に、例えばポリシリコンからなるゲート電極を形成することが必要である。
【0003】
従来の一般的なポリシリコンゲート電極の形成には、先ず、ノンドープのポリシリコン層を低圧CVD法により形成し、その後、シリコン結晶中でアクセプタやドナーとして作用するボロンやリン等のドーパントをイオン注入してポリシリコン層の抵抗値制御を行なった後、リソグラフィおよびエッチング技術によって所望のゲート電極形状となるように加工する方法が採用されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、低圧CVD法で形成されるポリシリコン層は、結晶方位が相互に異なる比較的微細な結晶粒子で構成される多結晶膜であり、このような結晶構造のポリシリコン層にイオン注入を行なうと、いわゆるチャネリング効果によって、ポリシリコン層内でのイオン打ち込み深さが不均一になるという問題が生じる。
【0005】
図3は、従来の一般的なポリシリコンゲート電極の構造を説明するための図で、シリコン基板31上のゲート酸化膜32上に低圧CVD法で成膜されたポリシリコン膜33が成膜されており、このポリシリコン膜33に所望のドーパントをイオン注入することで抵抗値の制御が行なわれる。
【0006】
この場合、イオン注入されるポリシリコン膜33を構成する結晶格子の結晶面が、例えば<110>±20°といったチャネリングを生じやすい特定の結晶面である場合には、その結晶粒子に打ち込まれたイオンは結晶粒子内をチャネリングしてシリコン基板31にまで到達してしまう。
【0007】
一方、イオン注入されるポリシリコン膜33を構成する結晶格子の結晶面が、チャネリングを生じにくい結晶面である場合には、注入イオンはその結晶格子内にのみ打ち込まれシリコン基板31にまで到達することはない。
【0008】
また、イオン注入されるポリシリコン膜33を構成する結晶格子の結晶面がチャネリングを生じやすい特定の結晶面であっても、その結晶粒子の直下に存在する他の結晶粒子の結晶面がチャネリングを生じ難いものである場合には、注入されたイオンはそのようなチャネリングを生じ難い結晶面を有する結晶粒子中でチャネリングが阻止されてシリコン基板31にまで到達することはない。
【0009】
すなわち、ポリシリコン33層内の結晶粒子の配向状態によって、チャネリングを生じやすい特定の面指数を有する結晶粒子が存在する領域とチャネリングを生じ難い結晶粒子が存在する領域とで注入されたイオンの打ちこみ深さが異なり、その結果ポリシリコン層33内での深さ方向のドーパント分布にばらつきを生じ、トランジスタ特性のばらつきや再現性の低下を招いて安定的なMOSトランジスタの製造が困難になるという問題があった。
【0010】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、ポリシリコンゲート電極形成時のイオン注入深さを均一にすることにより、トランジスタ特性の変動を抑制し、安定した特性の半導体装置およびそのような半導体装置の製造を可能とする方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、このような目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、第1のポリシリコン層と、第2のポリシリコン層と、前記第1及び第2のポリシリコン層の界面の一部領域に局所的にシリコン酸化物として凝集された膜厚が0.1〜6nmのシリコン酸化膜とを含み、前記第1及び第2のポリシリコン層とを接合させて構成したポリシリコンゲート電極を備えた半導体装置であって、前記第1のポリシリコン層及び前記第2のポリシリコン層の平均結晶粒径は50nm〜200nmであり、かつ、隣接する結晶格子同士の結晶方位が互いに異なり、前記ポリシリコンゲート電極の抵抗値を制御するために前記第2のポリシリコン層中に注入されたイオンの打ち込み深さがその面内で均一であり、かつ前記イオンは前記第1のポリシリコン層下のシリコン基板にまで注入されていないことを特徴とする。
【0012】
また、請求項2に記載の発明は、ポリシリコンゲート電極を備える半導体装置の製造方法であって、ゲート酸化膜上に平均結晶粒径が50nm〜200nmの第1のポリシリコン層を形成する第1のステップと、前記第1のポリシリコン層上の全面に膜厚が0.1〜6nmのシリコン酸化膜を形成する第2のステップと、前記シリコン酸化膜上に平均結晶粒径が50nm〜200nmであり、かつ前記第1のポリシリコンに対して、隣接する結晶格子同士の結晶方位が互いに異なるように、第2のポリシリコン層を形成する第3のステップと、前記第2のポリシリコン層表面から、イオンの打ち込み深さがその面内で均一であり、かつ前記第1のポリシリコン層下のシリコン基板にまで注入されないように、前記第2のポリシリコンにイオン注入し、ポリシリコンゲート電極の抵抗値を制御する第4のステップと、前記第1のポリシリコン層と前記シリコン酸化膜と前記第2のポリシリコン層とを同時に熱処理して、前記シリコン酸化膜を前記第1のポリシリコン層と前記第2のポリシリコン層との界面の一部領域にシリコン酸化物として局所的に凝集させるとともに、前記一部領域を除く界面を接合させる第5のステップと、該第5のステップ終了後に前記第1のポリシリコン層および前記第2のポリシリコン層を所望の形状に加工することによりポリシリコンゲート電極を形成する第6のステップとを含むことを特徴とする。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施例について説明する。
【0015】
〔実施例1〕
図1は、本発明のMOSトランジスタのポリシリコンゲート電極部の構成を説明するための図で、シリコン基板11上に形成したゲート酸化膜12の上に低圧CVD法で成膜された第1のポリシリコン層13が成膜されており、第1のポリシリコン層13上に薄く成膜されたシリコン酸化膜14を挟んで、低圧CVD法で成膜された第2のポリシリコン層15を備える構造を有し、この第2のポリシリコン層15の表面から所望のドーパントをイオン注入することで、第1および第2のポリシリコン層13、15の抵抗値が制御される。
【0016】
第1のポリシリコン層13上に形成された薄い酸化膜14は特定の結晶構造を有しないアモルファスであるため、第2のポリシリコン層15を成長させる際、第1のポリシリコン層13中に既に存在している結晶粒子を核として同一の面方位に成長しようとする作用が遮断される。従って、第1のポリシリコン層13を構成する結晶格子の結晶方位と、その上に形成されている第2のポリシリコン層15を構成する結晶格子の結晶方位とは全く無関係となり、第1のポリシリコン層13と第2のポリシリコン層15との間には結晶方位の連続性がないこととなる。
【0017】
このため、第2のポリシリコン層15中の、例えば<110>±20°といったチャネリングを生じやすい特定の結晶面を有する結晶格子にイオンが注入されて、注入イオンがその結晶格子内をチャネリングし、第1のポリシリコン層13にまで突き抜けてきたイオンがあった場合でも、そのイオンが注入されることとなる第1のポリシリコン層13を構成する結晶格子もまたチャネリングを生じやすい結晶面を有することは極めて稀であるため、殆どの場合には第1のポリシリコン層13内で減速を受け、ゲート酸化膜12直下のシリコン基板11内に形成されたチャネル領域にまでドーパントが注入されることを回避できる。
【0018】
〔実施例2〕
図2は、本発明のMOSトランジスタの製造工程を説明するための図で、図2(a)はゲート酸化膜形成工程、図2(b)は第1のポリシリコン層形成工程、図2(c)は第2のポリシリコン層形成工程、図2(d)はゲート電極形成用イオン注入工程、図2(e)はゲート電極成型工程、図2(f)はLDD(Lightly Doped Drain)形成用イオン注入工程、図2(g)はサイドウォールおよびソース・ドレイン形成用イオン注入工程、そして、図2(h)は熱処理工程を示している。
【0019】
先ず、シリコン基板21をフィールド酸化して、LOCOS22、および、ゲート酸化膜23の形成を行なう(図2(a))。
【0020】
次に、温度600〜680℃の範囲で、シランガスを原料とした低圧CVD法により、厚さ150nmの第1のポリシリコン層24を堆積させる(図2(b))。このとき、形成される第1のポリシリコン層24はドーピングを行なっていないために電気的にはイントリンシックな状態であり、その平均結晶粒径は50〜200nm程度の多結晶である。
【0021】
第1のポリシリコン層24を形成した後、シリコン基板21を低圧CVD装置から大気中に取り出し、第1のポリシリコン層24の表面を、室温で1分以上大気中の酸素と接触させる。この大気中酸素との接触により、第1のポリシリコン層24の表面には膜厚0.1〜6nmの薄い自然酸化膜25が形成される。
【0022】
なお、第1のポリシリコン層24表面に薄い酸化膜25を形成する工程は、上述した方法に限定されるものではなく、例えば、シリコン基板21ごと超純水中で水洗し、その後にスピンドライヤ等の乾燥装置を用いて乾燥させることによって形成することとしても良く、或いは、過酸化水素を含有させた水溶液(例えばアンモニア:過酸化水素水:水の混合水溶液)中にシリコン基板21ごと浸漬させることによって、第1のポリシリコン層24表面を酸化させ、その後水洗して乾燥させることによって形成することとしても良く、更には、熱酸化やプラズマ酸化等の手法により積極的に酸化膜を形成することとしても良い。
【0023】
上述の酸化膜形成工程に続いて、再度、シランガスを原料とした低圧CVD法により、温度600〜680℃の範囲で、厚さ150nm、平均結晶粒径が50〜200nm程度の多結晶からなる第2のポリシリコン層26を堆積させる(図2(c))。なお、この600〜680℃の温度領域では、シランガスによって低圧CVD工程中に酸化膜25が還元されることはなく、第2のポリシリコン層26は薄い酸化膜25の上に形成されることとなる。
【0024】
次に、第2のポリシリコン層26をn型ポリシリコンゲート電極として利用するため、ドーパントであるリンを、加速電圧50keV、ドーズ量5E15cm−2の条件でイオン注入する(図2(d))。
【0025】
これに続いて、リソグラフィおよびエッチングの手法を用いて、第1および第2のポリシリコン層24、26と酸化膜25を所望の形状に加工してゲート電極を成型(図2(e))した後、LDD形成のためのイオン注入を行ない(図2(f))、更に、サイドウォール27およびソース・ドレイン形成のためのイオン注入を行なう(図2(g))。
【0026】
これらのイオン注入によって、イオンはゲート電極内部にも打ち込まれることとなるが、既に説明したように、第1のポリシリコン層24と第2のポリシリコン層26との間に設けられた酸化膜25によってこれらのポリシリコン結晶格子同士の結晶面方位の連続性が分断されているため、第1のポリシリコン層24直下のシリコン基板21表面領域に形成したチャネル部へのイオンの突き抜けは回避される。
【0027】
これらのイオン注入工程に続いて、1050℃で2分間の熱処理を行なう(図2(h))。このとき、第1のポリシリコン層24と第2のポリシリコン層26との間にある薄い酸化膜25の一部が第1および第2のポリシリコン層の界面に沿って局所的にボール状に凝集28する。このため、第1のポリシリコン層24と第2のポリシリコン層26との界面の殆どの領域において両ポリシリコン層が直接接合することなり、ゲート電極として作用するに必要な電気伝導性が担保される。
【0028】
なお、薄い酸化膜25をボール状に凝集28させるための熱処理条件は、温度950〜1200℃、熱処理時間0.5〜30分であればよく、その処理雰囲気は、不活性ガス雰囲気であっても酸化性雰囲気であっても良い。
【0029】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の半導体装置によれば、ポリシリコンゲート電極を、相互に結晶面方位が異なるポリシリコンの2層構造としたので、ゲート電極形成時のイオン注入後のドーパント注入深さが均一となり、トランジスタ特性の変動が抑制され、特性が安定したトランジスタを得ることが可能となる。
【0030】
また、本発明の半導体製造方法によれば、2つのポリシリコン層の間に一旦形成した薄い酸化膜を製造工程中に消滅させ、これらのポリシリコン層同士を直接接合させることとしたので、ポリシリコンゲート電極内部での導電性が担保でき、かつ、寄生容量成分の発生等を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のMOSトランジスタのポリシリコンゲート電極部の構成を説明するための図である。
【図2】本発明のMOSトランジスタの製造工程を説明するための図で、(a)はゲート酸化膜形成工程、(b)は第1のポリシリコン層形成工程、(c)は第2のポリシリコン層形成工程、(d)はゲート電極形成用イオン注入工程、(e)はゲート電極成型工程、(f)はLDD形成用イオン注入工程、(g)はサイドウォールおよびソース・ドレイン形成用イオン注入工程、(h)は熱処理工程を示している。
【図3】従来型のMOSトランジスタの、ポリシリコンゲート電極部の構成を説明するための図である。
【符号の説明】
11、21、31 シリコン基板
12、23、32 ゲート酸化膜
13、24 第1のポリシリコン層
14、25 シリコン酸化膜
15、26 第2のポリシリコン層
22 LOCOS
27 サイドウォール
28 シリコン酸化物のボール状凝集物
33 ポリシリコン
Claims (2)
- 第1のポリシリコン層と、第2のポリシリコン層と、前記第1及び第2のポリシリコン層の界面の一部領域に局所的にシリコン酸化物として凝集された膜厚が0.1〜6nmのシリコン酸化膜とを含み、前記第1及び第2のポリシリコン層とを接合させて構成したポリシリコンゲート電極を備えた半導体装置であって、
前記第1のポリシリコン層及び前記第2のポリシリコン層の平均結晶粒径は50nm〜200nmであり、かつ、隣接する結晶格子同士の結晶方位が互いに異なり、
前記ポリシリコンゲート電極の抵抗値を制御するために前記第2のポリシリコン層中に注入されたイオンの打ち込み深さがその面内で均一であり、かつ前記イオンは前記第1のポリシリコン層下のシリコン基板にまで注入されていないことを特徴とする半導体装置。 - ポリシリコンゲート電極を備える半導体装置の製造方法であって、
ゲート酸化膜上に平均結晶粒径が50nm〜200nmの第1のポリシリコン層を形成する第1のステップと、
前記第1のポリシリコン層上の全面に膜厚が0.1〜6nmのシリコン酸化膜を形成する第2のステップと、
前記シリコン酸化膜上に平均結晶粒径が50nm〜200nmであり、かつ前記第1のポリシリコンに対して、隣接する結晶格子同士の結晶方位が互いに異なるように、第2のポリシリコン層を形成する第3のステップと、
前記第2のポリシリコン層表面から、イオンの打ち込み深さがその面内で均一であり、かつ前記第1のポリシリコン層下のシリコン基板にまで注入されないように、前記第2のポリシリコンにイオン注入し、ポリシリコンゲート電極の抵抗値を制御する第4のステップと、
前記第1のポリシリコン層と前記シリコン酸化膜と前記第2のポリシリコン層とを同時に熱処理して、前記シリコン酸化膜を前記第1のポリシリコン層と前記第2のポリシリコン層との界面の一部領域にシリコン酸化物として局所的に凝集させるとともに、前記一部領域を除く界面を接合させる第5のステップと、
該第5のステップ終了後に前記第1のポリシリコン層および前記第2のポリシリコン層を所望の形状に加工することによりポリシリコンゲート電極を形成する第6のステップとを含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
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